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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】壁構築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/84 20060101AFI20231017BHJP
   E04G 21/12 20060101ALI20231017BHJP
   E04G 21/20 20060101ALI20231017BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231017BHJP
【FI】
E04B2/84 K
E04G21/12 105E
E04G21/12 105A
E04G21/20
B33Y10/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019224337
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021092106
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】太田 義弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 史夫
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-336945(JP,A)
【文献】特開平11-210161(JP,A)
【文献】特開2018-199939(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0295338(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/84、 2/86
E04B 1/35、 1/16
E04C 5/01
E04G 21/12、21/16、21/20、21/02
B33Y 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱及び梁によって構成された架構内に、補強材を折り畳んだ状態で設置する工程と、
3Dプリンタによって造形材料を吐出することで、前記補強材を収容する収容部を備える壁体を前記架構内に形成する工程と、
折り畳んだ状態の前記補強材を、前記壁体の前記収容部内展開する工程と、
前記収容部内に充填材を充填する工程と、
を有する壁構築方法。
【請求項2】
前記補強材は、回転治具によって互いに相対回転可能に連結された複数の鉄筋によって構成されている、請求項1に記載の壁構築方法。
【請求項3】
前記補強材は、前記架構を構成する上部梁の下面に取り付けられており、前記収容部内で下方に向かって展開される、請求項1又は2に記載の壁構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、柱及び梁によって構成された架構内に、コンクリート造の壁を構築する場合、架構内に型枠を設置して鉄筋を配筋した後、型枠内にコンクリートを現場打ちすることによって壁を構築する。このため、型枠の設置作業や鉄筋の配筋作業が大変だった。
【0003】
この問題を解決するため、近年、3Dプリンタを利用して壁等の構造物を構築する技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、3Dプリンタによって造形材料(水硬性混合物)を吐出することで、収容部(区画)を備える壁体(殻壁部)を形成し、この壁体(殻壁部)の収容部(区画)に上方から鉄筋等の補強材を挿入するとともに、コンクリート等の充填材を充填することで構造物を構築する構造物の施工方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-199939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示す構造物の施工方法によれば、3Dプリンタを利用して構造物を構築するため、型枠等の設置が不要となる。また、収容部(区画)に補強材を挿入することで、構造物の靭性を向上させることができる。しかし、柱及び梁によって構成された架構内に構造物としての壁を構築する場合等、構築する構造物の上方に他の構造物が存在する条件下では、収容部(区画)内に上方から補強材を挿入することは困難であった。
【0006】
本発明は上記事実に鑑み、架構内に壁を容易に構築することができる壁構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の壁構築方法は、柱及び梁によって構成された架構内に、補強材を折り畳んだ状態で設置する工程と、3Dプリンタによって造形材料を吐出することで、前記補強材を収容する収容部を備える壁体を前記架構内に形成する工程と、折り畳んだ状態の前記補強材を、前記壁体の前記収容部内へ展開する工程と、前記収容部内に充填材を充填する工程と、を有する。
【0008】
上記構成によれば、3Dプリンタによって壁体を形成するため、型枠等を用いずに壁体を形成することができる。また、壁体の収容部内に補強材を配置することで、壁の靭性を高めることができる。
【0009】
また、架構内に補強材を折り畳まれた状態で予め設置しておき、架構内に3Dプリンタによって壁体を形成した後、壁体の収容部内へ補強材を展開することで、3Dプリンタによって形成された壁体の収容部に補強材を配置することができる。これにより、架構を構成する上部梁が壁体の上方に存在する場合であっても、壁体の収容部に容易に補強材を配置することができる。
【0010】
請求項2に記載の壁構築方法は、請求項1に記載の壁構築方法であって、前記補強材は、回転治具によって互いに相対回転可能に連結された複数の鉄筋によって構成されている。
【0011】
上記構成によれば、複数の鉄筋を回転治具で連結することで、回転治具を回転中心として鉄筋同士を相対回転させることができる。このため、鉄筋同士の成す角を小さくすることで、補強材を折り畳むことができ、鉄筋同士の成す角を大きくすることで、補強材を展開することができる。
【0012】
請求項3に記載の壁構築方法は、請求項1又は2に記載の壁構築方法であって、前記補強材は、前記架構を構成する上部梁の下面に取り付けられており、前記架構内において、下方に向かって展開される。
【0013】
上記構成によれば、架構を構成する上部梁の下面に補強材を取り付けることで、架構内において、重力を利用して補強材を容易に下方に向かって展開することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る壁構築方法によれば、架構内に壁を容易に構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(A)は第1実施形態に係る壁構築方法によって構築された壁を示す立面図であり、(B)はそのA-A線断面図である。
図2図1の補強材を拡大して示す立面図である。
図3】(A)は第1実施形態に係る壁構築方法の補強材設置工程を示す立面図であり、(B)はそのB-B線断面図である。
図4図2の補強材を拡大して示す立面図である。
図5】(A)は第1実施形態に係る壁構築方法の壁体形成工程(その1)を示す立面図であり、(B)はそのC-C線断面図である。
図6】(A)は第1実施形態に係る壁構築方法の補強材展開工程を示す立面図であり、(B)はそのD-D線断面図である。
図7】(A)は第1実施形態に係る壁構築方法の壁体形成工程(その2)を示す立面図であり、(B)はそのE-E線断面図である。
図8】(A)は第1実施形態に係る壁構築方法の充填材充填工程を示す立面図であり、(B)はそのF-F線断面図である。
図9】第2実施形態に係る壁構築方法によって構築された壁を示す平面断面図である。
図10】(A)、(B)は変形例に係る壁構築方法の補強材展開工程を示す立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1、第2実施形態に係る壁構築方法について、図1図10を用いて説明する。なお、図中において、矢印Xは壁の幅方向(水平方向)、矢印Yは壁の厚さ方向、矢印Zは壁の高さ方向(鉛直方向)を指す。
【0017】
<第1実施形態>
まず、本発明の第1実施形態に係る壁構築方法について、図1図8を用いて説明する。
【0018】
(壁の構成)
図1(A)に示すように、本実施形態に係る壁構築方法によって構築された壁10は、図示しない下部梁の上に打設された床スラブ12と、床スラブ12上に立設された一対の柱14と、柱14間に架け渡された上部梁16と、によって構成された架構18内に構築されている。なお、本実施形態では、柱14及び梁(上部梁16及び下部梁)は、一例としてコンクリートによって構成されているが、鉄骨等によって構成されていてもよい。
【0019】
図1(B)に示すように、壁10は、収容部20を備える筒状の壁体22と、壁体22の収容部20内に配置された複数の補強材24と、壁体22の収容部20内に充填された充填材26と、を有している。壁体22は、壁10の外周部を構成しており、本実施形態では、平面視でロの字形とされ、収容部20の4つの側面を全周に亘って取り囲んでいる。
【0020】
壁体22は、造形材料の一例としてのモルタルによって構成されている。具体的には、壁体22は、後述する3Dプリンタ34(図5(A)参照)によって速乾性のモルタルを吐出することによって形成されている。また、充填材26は、一例としてコンクリートで構成されている。
【0021】
また、補強材24は、複数の鉄筋28によって構成されている。複数の補強材24は、壁10の幅方向に所定の間隔をあけて配置されているとともに、床スラブ12と上部梁16との間において壁10の高さ方向(鉛直方向)に延びている。
【0022】
図2に示すように、各補強材24を構成する複数の鉄筋28は、互いに交差するよう組まれており、鉄筋28の交差部において鉄筋28同士が回転治具30によって互いに連結されている。回転治具30は、例えば図示しないヒンジを有する金具や伸縮性を有する結束バンド等であり、鉄筋28同士を相対回転可能に連結している。これにより、交差部における鉄筋28同士の成す角θ1が0°~180°の範囲で可変となっている。
【0023】
各補強材24の上端部及び下端部は、鉄筋28の端部を保持する保持プレート32を介して上部梁16の下面及び床スラブ12の上面にそれぞれ固定されている。なお、保持プレート32には、壁10の幅方向に延びて鉄筋28の端部が嵌合された図示しないレール溝が形成されている。これにより、保持プレート32に保持された鉄筋28の端部が、保持プレート32に沿って壁10の幅方向に移動可能となっている。
【0024】
(施工手順)
次に、本実施形態の壁構築方法の施工手順について説明する。本実施形態の壁構築方法は、補強材設置工程と、壁体形成工程と、補強材展開工程と、充填材充填工程と、を有している。
【0025】
図3(A)に示すように、補強材設置工程では、架構18を構成する上部梁16の下面に、図示しないアンカー等によって保持プレート32を接合することにより、保持プレート32を介して複数の補強材24を設置する。
【0026】
図4に示すように、各補強材24は、折り畳まれた状態、すなわち鉄筋28同士の成す角θ2が最小となった状態となっている。なお、このとき、補強材24は、図示しないロック機構によって折り畳まれた状態で保持されており、展開が防止されている。
【0027】
補強材24の設置が完了した後、図5(A)、図5(B)に示すように、壁体形成工程では、3Dプリンタ34を用いて架構18内に壁体22を形成する。図5(A)に示すように、3Dプリンタ34は、架台36と、架台36の上面に設けられた旋回台38と、旋回台38に取り付けられたロボットアーム40と、旋回台38及びロボットアーム40を制御する図示しない制御部と、を有している。
【0028】
架台36は、車輪等の移動機構36Aを備えており、架構18の周囲において壁10(図1(A)参照)の幅方向に移動可能となっている。また、ロボットアーム40は、伸縮自在な多関節型のアームであり、旋回台38によって架台36に対して旋回可能となっている。さらに、ロボットアーム40の先端部には、モルタルを吐出する吐出口40Aが設けられている。
【0029】
図示を省略するが、3Dプリンタ34の架台36には、モルタルを一時貯留する貯留部と、貯留部と吐出口40Aとを連通するチューブと、貯留部のモルタルを吐出口40Aへ供給するポンプと、が設けられている。
【0030】
また、3Dプリンタ34の貯留部には、外部のミキサー車等の図示しない材料供給装置から貯留部へモルタルを供給する図示しない材料供給管が接続されている。材料供給装置から供給されたモルタルは、3Dプリンタ34の架台36内の貯留部に一時貯留され、ポンプによって吐出口40Aに供給される。
【0031】
3Dプリンタ34に壁体22を形成する旨の指示を入力すると、3Dプリンタ34の制御部は、3Dプリンティング処理を実行して壁体22を自動で形成する。具体的には、3Dプリンタ34は、壁体22の3次元データを読み込み、3次元データに基づいて、壁体22を複数の層に細分化した2次元データ(断面データ)を生成する。
【0032】
その後、この2次元データに基づいて、吐出口40Aからモルタルを吐出して壁体22の2次元形状を構築する。そして、構築された2次元形状の層上に、続く層の2次元データに基づいてモルタルを一層ずつ順に積層していくことで、図5(B)に示すように、収容部20を備える3次元形状の壁体22を架構18内に形成していく。
【0033】
なお、このとき、充填材26(図1(B)参照)を収容部20内に充填するための図示しない充填口や、補強材24を引張るための紐を挿入したり、補強材24を床スラブ12に固定したりするための図示しない貫通穴等を、壁体22の下端部に適宜形成しておく。また、壁体22に接する柱14の内周面等は、壁体22との付着性を高めるために、予め目荒らし等を施しておくことが好ましい。
【0034】
その後、図6(A)に示すように、壁形成工程において、上部梁16の下面と壁体22の上面との間の隙間42が所定幅になった際、壁形成工程を一時中断して補強材展開工程を実施する。
【0035】
具体的には、隙間42を利用して、補強材24の展開を防止していた図示しないロック機構のロックを外す。そして、壁体22の下端部に形成された図示しない貫通穴を利用して、補強材24を下方から図示しない紐等で引っ張ることで、図6(B)に示すように、折り畳んだ状態の補強材24を壁体22の収容部20内へ展開する。すなわち、補強材24を構成する鉄筋28同士の成す角θ1(図2参照)を、成す角θ2(図4参照)よりも大きくする。
【0036】
補強材24の展開後は、壁体22の下端部に形成された図示しない貫通穴を利用して、補強材24の下端部に取り付けられた保持プレート32(図6(A)参照)を、図示しないアンカー等によって床スラブ12に固定する。
【0037】
なお、補強材24は、紐等を利用せずに自重によって(重力のみを利用して)落とすことで展開してもよい。また、補強材24の下端部に取り付けられた保持プレート32は、必ずしも床スラブ12に固定させる必要はない。
【0038】
補強材24の展開が完了した後、壁形成工程の続きを実施する。すなわち、図7(A)に示すように、3Dプリンタ34によってモルタルを吐出し、上部梁16の下面と壁体22の上面との間に形成された隙間42(図6(A)参照)を、壁体22の両面側からそれぞれ埋めることにより、架構18内に形成された壁体22を完成させる。なお、このとき、収容部20に充填される充填材26(図1(B)参照)が排出される図示しない排出口を、壁体22の上端部に形成しておく。
【0039】
壁体22の形成後、図8(A)に矢印M1で示すように、壁体22の下端部に形成された図示しない充填口から、壁体22の収容部20内に充填材26を圧入する(図8(B)参照)。このとき、図8(A)に矢印M2で示すように、壁体22の上端部に形成された図示しない排出口からの充填材26の排出を確認することで、収容部20全体に充填材26を行き渡らせることができる。
【0040】
そして、収容部20に充填された充填材26を固化させることで、壁体22の収容部20内に補強材24が配置され、かつ収容部20内に充填材26が充填された壁10を構築することができる。なお、上記の手順は一例であり、手順が異なったり、他の手順が含まれたりしていても構わない。
【0041】
(作用効果)
本実施形態の壁構築方法は、架構18内に補強材24を折り畳んだ状態で設置する補強材設置工程と、3Dプリンタ34によってモルタルを吐出することで、収容部20を備える壁体22を形成する壁体形成工程と、を有している。また、本実施形態の壁構築方法は、折り畳んだ状態の補強材24を壁体22の収容部20内へ展開する補強材展開工程と、収容部20内に充填材26を充填する充填材充填工程と、を有している。
【0042】
本実施形態によれば、3Dプリンタ34によって壁体22を形成するため、型枠等を用いずに壁体22を形成することができるとともに、壁体22の形成精度を高めることができる。
【0043】
また、地震時に作用する水平力に対して、本実施形態の壁10は、モルタルによって構成された壁体22とコンクリートによって構成された充填材26とが、架構18の対角の圧縮束で抵抗するとともに、補強材24によってひび割れに抵抗する。これにより、壁10の靭性を高めることができる。
【0044】
また、架構18内に補強材24を折り畳まれた状態で予め設置しておき、架構18内に3Dプリンタ34によって壁体22を形成した後、壁体22の収容部20内へ補強材24を展開することで、壁体22の収容部20に補強材24を配置することができる。
【0045】
これにより、架構18を構成する上部梁16が壁体22の上方に存在する場合であっても、壁体22の収容部20に容易に補強材24を配置することができる。また、3Dプリンタ34によって壁体22を形成する際に、補強材24を避ける必要がないため、壁体22の上端部以外の部分を架構18の片側から形成することが可能となる。
【0046】
また、本実施形態によれば、回転治具30によって互いに相対回転可能に連結された複数の鉄筋28によって補強材24が構成されている。このように、複数の鉄筋28を回転治具30で連結することで、回転治具30を回転中心として鉄筋28同士を相対回転させることができる。このため、鉄筋28同士の成す角θ1を小さくすることで、補強材24を折り畳むことができ、鉄筋28同士の成す角θ2を大きくすることで、補強材24を展開することができる。
【0047】
また、本実施形態によれば、補強材24は、架構18を構成する上部梁16の下面に取り付けられており、架構18内において下方に向かって展開される。このように、補強材24を下方に向かって展開することで、例えば補強材24を床スラブ12から上方に引上げて展開する構成と比較して、重力を利用して(重力に従って)補強材24を容易に展開することができる。
【0048】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る壁構築方法について、図9を用いて説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0049】
(壁の構成)
第1実施形態の壁構築方法では、壁10を架構18内に新設していたのに対し、本実施形態の壁構築方法では、架構18内に設けられた既設壁48に沿って壁50を構築する。具体的には、図9に示すように、本実施形態の壁50は、架構18内に設けられた既設壁48の一方の面に沿って構築されており、壁50によって既設壁48が増打ちされている。
【0050】
第1実施形態と同様に、壁50は、収容部52を備える壁体54と、壁体54の収容部52内に配置された複数の補強材56と、壁体54の収容部52内に充填された充填材58と、によって構成されている。壁体54は、造形材料としてのモルタルによって構成されており、充填材58は、コンクリートによって構成されている。また、補強材56は、図示しない回転治具によって連結された複数の鉄筋60によって構成されている。
【0051】
なお、第1実施形態では、4つの側面を取り囲む壁体22によって収容部20が区画されていたのに対し、本実施形態では、3つの側面を取り囲む壁体54と1つの側面を覆う既設壁48とによって収容部52が区画されている。
【0052】
(施工手順)
本実施形態の壁50を構築する場合、第1実施形態と同様に、まず、補強材設置工程において、架構18を構成する図示しない上部梁の下面に折り畳んだ状態の複数の補強材56を設置する。
【0053】
そして、壁体形成工程において、図示しない3Dプリンタによってモルタルを吐出して積層していくことにより、架構18内に壁体54を形成する。このとき、本実施形態では、既設壁48の一方の面に沿って、平面視でコの字形の壁体54を形成し、壁体54と既設壁48との間に収容部52を形成する。
【0054】
壁形成工程において壁体54を途中まで形成した後、補強材展開工程において、折り畳んだ状態の補強材56を、壁体54の収容部52内へ展開する。その後、壁形成工程の続きを実施することで、収容部52内に補強材56が配置された壁体54を架構18内に形成する。
【0055】
また、壁体54の形成後、壁体54に形成された図示しない充填口から、壁体54の収容部52に充填材58を充填し、収容部52に充填された充填材58を固化させることで、壁体54の収容部52に補強材56が配置され、かつ収容部52内に充填材58が充填された壁50を構築する。
【0056】
(作用効果)
本実施形態の壁構築方法によれば、第1実施形態と同様に、3Dプリンタによって壁体54を形成するため、型枠等を用いずに壁体54を形成することができる。また、壁体54の収容部52内に補強材56を配置することで、壁50の靭性を高めることができる。
【0057】
また、架構18内に補強材56を折り畳まれた状態で予め設置しておき、架構18内に3Dプリンタによって壁体54を形成した後、壁体54の収容部52内へ補強材56を展開することで、収容部52内に補強材56を容易に配置することができる。これにより、架構18を構成する上部梁が壁体54の上方に存在する場合であっても、壁体54の収容部52に容易に補強材56を配置することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、既設壁48に沿って構築された壁体54を、3Dプリンタを用いて形成している。このため、壁体54を現場打ちによって形成する構成と比較して、壁体54の形成精度を高めることができ、壁体54と既設壁48との間、及び壁体54と架構18との間に隙間が生じることを抑制することができる。
【0059】
さらに、既設壁48に沿って壁50を構築することで、既設壁48を増打ちすることができ、既設壁48を壁50によって補強することができる。また、収容部52の1つの側面を既設壁48によって区画することで、収容部52の4つの側面全てを壁体54によって区画する構成と比較して、壁体54の形成範囲を減らすことができる。
【0060】
<その他の実施形態>
以上、本発明について第1、第2実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
【0061】
例えば、上記実施形態では、上部梁16の下面に設置された補強材24を、架構18内において下方に向かって展開していたが、補強材24の展開方向は上方から下方には限らない。
【0062】
例えば図10(A)に示すように、架構18を構成する柱14の内周面に設置された複数の補強材64を、矢印N1で示すように、壁10(図1(A)参照)の幅方向に沿って水平方向に展開する構成としてもよい。また、図10(B)に示すように、床スラブ12の上面に設置された複数の補強材74を、矢印N2で示すように、上方に向かって引上げて展開する構成としてもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、壁体22、54を構成する造形材料がモルタルとされていたが、造形材料は、吐出時に流動性を有するとともに、吐出後は硬化する材料であればよく、例えば金属や樹脂、ガラス、セラミック等であってもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、壁体22、54の収容部20、52内に充填される充填材26、58がコンクリートとされていたが、充填材26、58はコンクリートに限らず、壁体22、54を構成する材料に合わせた材料を適宜選択することが可能である。
【0065】
同様に、上記実施形態では、回転治具30で連結された複数の鉄筋28、60によって補強材24、56が構成されていた。しかし、補強材24、56は、折り畳んだ状態から展開することができる部材であれば、鉄筋28、60には限らず、例えば伸縮性を有する材料によって構成された補強材を伸長させることによって展開してもよい。
【0066】
また、第1実施形態では壁体22によって収容部20が区画され、第2実施形態では壁体54と既設壁48によって収容部52が区画されていた。しかし、例えば柱14間に一対の板状の壁体を形成し、この一対の壁体と一対の柱14とによって収容部を区画する構成としてもよい。また、第2実施形態では、既設壁48の一方の面に沿って壁50を形成していたが、既設壁48の両面にそれぞれ壁50を形成する構成としてもよい。
【0067】
さらに、上記実施形態では、3Dプリンタとして、架台36に多関節型のロボットアーム40が搭載された3Dプリンタ34を例示したが、3Dプリンタの構成は上記実施形態には限らず、公知の3Dプリンタを用いることができる。また、上記実施形態では、1台の3Dプリンタ34によって壁体22、54全体を構築していたが、壁体22、54の大きさや壁体22、54を構成するモルタルの硬化速度等によって3Dプリンタの数を増やしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
10、50 壁
14 柱
16 上部梁(梁)
18 架構
20、52 収容部
22、54 壁体
24、56、64、74 補強材
26、58 充填材
28、60 鉄筋
30 回転治具
34 3Dプリンタ
図1
図2
図3
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図7
図8
図9
図10