(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電動作業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 1/00 20060101AFI20231017BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231017BHJP
B60P 3/20 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B60K1/00
B60K1/04 Z
B60P3/20 Z
(21)【出願番号】P 2020062204
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】598051819
【氏名又は名称】メルセデス・ベンツ グループ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Mercedes-Benz Group AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 120,70372 Stuttgart,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100111143
【氏名又は名称】安達 枝里
(72)【発明者】
【氏名】高口 英彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 克彦
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-122096(JP,A)
【文献】特開2018-133968(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230286(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/035990(WO,A1)
【文献】特開2017-217944(JP,A)
【文献】特開2019-134603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B60K 1/04
B60L 1/00
B60P 1/04
B60P 3/00
B65F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の作業を実行可能な架装体を搭載し、バッテリから供給される電力により走行可能な電動作業車両であって、
車両前後方向に延びる左右一対のメインフレームと、
前記メインフレーム上にて、車両前後方向の前方部分に設けられるキャブと、
前記メインフレーム上にて、前記キャブの下面より下方に配置される電装品ユニットと、
前記架装体による前記特定の作業のための作業機を駆動する作業機駆動部と、前記バッテリの電力により前記作業機駆動部に回転動力を供給する架装用モータと、を有するPTOユニットと、を備え、
前記PTOユニットのうち、前記架装用モータは前記キャブの下面より下方にて、前記電装品ユニットが配置される空間の最下層の領域に配置され、前記作業機駆動部は前記架装用モータよりも後方に配置されることを特徴とする電動作業車両。
【請求項2】
前記架装用モータは、出力軸が後方に向くよう配置されている請求項1に記載の電動作業車両。
【請求項3】
前記電装品ユニットが配置される前記空間は、前記電装品ユニットが搭載支持される電装品支持部材を複数有する積層構造からなり、
前記架装用モータは、前記積層構造の底面を構成する前記電装品支持部材に配置されている請求項1又は2に記載の電動作業車両。
【請求項4】
前記作業機駆動部は、前記架装用モータが搭載配置される高さよりも高い位置に配置される請求項1から3のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項5】
前記作業機駆動部は、車両前後方向において前記キャブと前記架装体との間にて、前記メインフレーム上に駆動部支持部材を介して配置されている請求項1から4のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項6】
前記作業機駆動部の少なくとも一部は、前記左右一対のメインフレーム間及び/又は前記各メインフレーム上に設けられ前記架装体を支持するサブフレーム間に配置されている請求項1から5のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項7】
前記架装用モータは、前記メインフレームと連結されたモータ支持部材により支持され、
前記作業機駆動部は、前記モータ支持部材と連結された駆動部支持部材により支持されている請求項1から6のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項8】
前記作業機駆動部は、コンプレッサである請求項1から7のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【請求項9】
前記作業機駆動部は、油圧ポンプである請求項1から7のいずれか一項に記載の電動作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、トラック等の商用車の分野においても内燃機関を備えず、電動モータのみによって駆動する電動トラックの開発が行われている(特許文献1参照)。
【0003】
内燃機関を駆動源とするトラック同様、このような電動トラックにおいても、塵芥車両、冷凍車両、冷蔵車両、ダンプ車両、ミキサ車両、消防車両など、電動トラックの車体に特定作業が可能な架装体を架装した電動作業車両への開発要求がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電動作業車両には、架装体に動力を供給するために、モータを含む架装用電動補機(いわゆるPTO: Power Take Off)ユニットが搭載されるが、通常、既存の電動トラックに対してPTOユニットを追加するためレイアウト上の制約を受ける。
【0006】
例えば、内燃機関を駆動源とするトラックにおけるエンジンルームに相当するキャブ下領域は、電動トラックの場合、車両駆動用のコンポーネント等が搭載されており、PTOユニットを搭載するスペースは限定される。また、製造コストの観点から、PTOユニットを必要とする電動作業車両と、PTOユニットを必要としない一般の電動トラックとの間で、電装部品の搭載レイアウトは共通化させたいという要求がある。
【0007】
また、キャブ下領域のレイアウト制限を考慮して、キャブと荷台との間のキャブバックスペースにPTOユニットを搭載することも考えられる。しかし、この場合、PTOユニットが大型であるとキャブバックスペースを確保するために、荷台前面を後方にレイアウトさせる必要が生じ、結果として荷台長さの減少、即ち積載量の減少を招くという問題が生じる。
【0008】
以上から、本願の解決すべき課題は、PTOユニットを搭載する場合におけるキャブ下領域のレイアウト変更への影響を低減しつつ、PTOユニット搭載による荷台長さ(積載量)の減少を防ぐことができる電動作業車両を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0010】
(1)本適用例に係る電動作業車両は、特定の作業を実行可能な架装体を搭載し、バッテリから供給される電力により走行可能な電動作業車両であって、車両前後方向に延びる左右一対のメインフレームと、前記メインフレーム上にて、車両前後方向の前方部分に設けられるキャブと、前記メインフレーム上にて、前記キャブの下面より下方に配置される電装品ユニットと、前記架装体による前記特定の作業のための作業機を駆動する作業機駆動部と、前記バッテリの電力により前記作業機駆動部に回転動力を供給する架装用モータと、を有するPTOユニットと、を備え、前記PTOユニットのうち、前記架装用モータは前記キャブの下面より下方にて、前記電装品ユニットが配置される空間の最下層の領域に配置され、前記作業機駆動部は前記架装用モータよりも後方に配置される。
【0011】
架装用モータを電装品ユニットが配置される空間の最下層の領域に配置することで、電装品ユニットのレイアウトへの影響を抑えつつ、架装用モータを搭載することができる。また、架装体の作業機を駆動する作業機駆動部については、架装用モータより後方に配置することで、作業機との距離を近づけ、架装体側のレイアウトへの影響も抑えることができる。
【0012】
これにより、架装用モータにより作業機駆動部を駆動するPTOユニットを搭載する場合において、キャブ下領域のレイアウト変更への影響を低減しつつ、PTOユニット搭載による荷台長さ(積載量)の減少を防ぐことができる。
【0013】
(2)上記適用例に係る電動作業車両は、上記(1)において、前記架装用モータは、出力軸が後方に向くよう配置されていてもよい。これにより、軸方向に長い架装用モータであっても、左右のメインフレームの間隔によらずキャブ下領域に容易に配置することができる。
【0014】
(3)上記適用例に係る電動作業車両は、上記(1)又は(2)において、前記電装品ユニットが配置される前記空間は、前記電装品ユニットが搭載支持される電装品支持部材を複数有する積層構造からなり、前記架装用モータは、前記積層構造の底面を構成する前記電装品支持部材に配置されていてもよい。これにより、電装品支持部材及び架装体のレイアウトへの影響を抑えつつ、架装用モータを配置することできる。
【0015】
(4)本適用例に係る電動作業車両は、上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記作業機駆動部は、前記架装用モータが搭載配置される高さよりも高い位置に配置されていてもよい。
【0016】
作業機駆動部は、架装体の特定の作業の内容により、様々な作業機器に変更され得る。キャブ下領域のレイアウト変更への影響を考慮して架装用モータを電装品ユニットが配置される空間の最下層の領域に配置した場合、耐水性が低い機器であった場合、水位が高い場所を走行する際に故障してしまう虞があることから、作業機駆動部でも要求される耐水性が高くなり、機器選定の自由度が低下する。
【0017】
しかしながら、本適用例に係る電動作業車両によれば、作業機駆動部は架装用モータより後方であって、かつ、架装用モータが搭載配置される高さよりも高い位置に配置される。これにより、作業機駆動部に対して要求される耐水性が低くくなり、比較的耐水性が低い機器であっても選定することができるようになる。
【0018】
(5)上記適用例に係る電動作業車両は、上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記作業機駆動部は、車両前後方向において前記キャブと前記架装体との間にて、前記メインフレーム上に駆動部支持部材を介して配置されてもよい。これにより、電装品ユニット及び架装体のレイアウトへの影響を抑えつつ、作業機駆動部を配置することできる。また、メインフレームより高い位置に作業機駆動部が配置されることで、作業機駆動部に対する地面からの飛び石や水はねの影響を抑制することができる。
【0019】
(6)上記適用例に係る電動作業車両は、上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記作業機駆動部の少なくとも一部は、前記左右一対のメインフレーム間及び/又は前記各メインフレーム上に設けられ前記架装体を支持するサブフレーム間に配置されてもよい。
【0020】
一般的にキャブと荷台との間のキャブバックスペース周辺におけるメインフレーム間やサブフレーム間は機器レイアウト上活用されにくく、デットスペースとなりやすい空間である。しかしながら、適用例に係る電動作業車両では、このような空間に作業機駆動部を配置することから、PTOユニットを搭載する場合におけるキャブ下領域のレイアウト変更への影響を与えない。また、キャブと荷台との間のキャブバックスペースにPTOユニットの全てを搭載しようとする場合と比して、キャブバックスペースの増加を招くこともなく、PTOユニットを搭載することが可能となる。
【0021】
(7)上記適用例に係る電動作業車両は、上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記架装用モータは、前記メインフレームと連結されたモータ支持部材により支持され、前記作業機駆動部は、前記モータ支持部材と連結された駆動部支持部材により支持されてもよい。このように、架装用モータと作業機駆動部とが、連結された支持部材上にて支持されることで、架装用モータと作業機駆動部との間の振動のずれを緩和することができ、架装用モータの回転動力をより確実に作業機駆動部に伝達することができる。
【0022】
(8)本適用例に係る電動作業車両は、上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記作業機駆動部は、コンプレッサであってもよい。これにより、コンプレッサを駆動するPTOユニットを搭載する場合においても、キャブ下領域のレイアウト変更への影響を低減しつつ、PTOユニット搭載による荷台長さ(積載量)の減少を防ぐことができる。
【0023】
(9)本適用例に係る電動作業車両は、上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記作業機駆動部は、油圧ポンプであってもよい。これにより、油圧ポンプを駆動するPTOユニットを搭載する場合においても、キャブ下領域のレイアウト変更への影響を低減しつつ、PTOユニット搭載による荷台長さ(積載量)の減少を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電動作業車両の側面図である。
【
図2】車体及びPTOユニットの構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電動作業車両の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する内容に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において任意に変更して実施することが可能である。また、実施の形態の説明に用いる図面は、いずれも構成部材を模式的に示すものであって、理解を深めるべく部分的な強調、拡大、縮小、または省略などを行っており、構成部材の縮尺や形状等を正確に表すものとはなっていない場合がある。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電動作業車両1の側面図である。電動作業車両1は、走行用の構成部分としての車体10、車体10に架装される架装体20、及び架装体20を駆動するPTOユニット30からなる電動車両であり、特定の作業を行う作業車両である。ここで、電動作業車両1は、本実施形態においては冷凍車として説明することとするが、塵芥車両、ダンプ車両、ミキサ車両、消防車両、又はクレーン車など、その他の作業車両であってもよい。
【0027】
車体10は、メインフレーム11、バッテリ12、走行用駆動ユニット13、車輪14、及びキャブ15を含む。
【0028】
メインフレーム11は、キャブ15や架装体20の他、車体10に搭載されるその他の重量物を支持するフレームである。バッテリ12は、車体10の走行駆動、及び電動作業車両1に搭載される電動補機類の駆動に必要な電力を供給する電力供給源である。走行用駆動ユニット13は、詳細を後述するように、バッテリ12から供給される電力を車体10の走行用動力に変換して車輪14に伝達する。車輪14は、メインフレーム11に懸架され、キャブ15の車高方向(図中のZ方向)の下方に設けられる前輪14F、及び走行用駆動ユニット13により駆動される後輪14Rを含む。キャブ15は、運転席等を含む構造体であり、メインフレーム11の車両長手方向(図中のX方向)の前方部分に設けられている。
【0029】
架装体20は、本実施形態においては、冷凍車用架装システムであり、冷凍積載部21、冷凍機22、サブフレーム23を含む。
【0030】
冷凍積載部21は、電動作業車両1によって搬送される荷物等が積載される構造体であり、庫内を低温に維持することにより当該荷物等を冷凍する。冷凍機22は、冷凍作業のための作業機であり、冷凍用コンデンサを含み、冷媒が供給されることにより冷凍積載部21の庫内を冷却する。サブフレーム23は、メインフレーム11上であって、キャブ15よりも後方にて、冷凍積載部21との間に介在し、冷凍積載部21を間接的にメインフレーム11に固定支持する支持部材である。
【0031】
PTOユニット30は、バッテリ12から供給される電力を回転動力に変換して架装体20の冷凍機22を駆動する。本実施形態においては、PTOユニット30は、詳細を後述するように、バッテリ12の電力により回転駆動する架装用モータ31と、ベルト32を介して架装用モータ31の回転動力が伝達されて駆動するコンプレッサ33(作業機駆動部)とを有している。そして、コンプレッサ33が回転駆動することで、冷凍機22に冷媒を供給している。より具体的には、PTOユニット30は、冷凍積載部21のキャブ15に対向する面に沿って設けられる冷媒回路30aを通して冷凍機22に冷媒を循環させている。
【0032】
次に、車体10の構成について、より具体的に説明する。
図2は、車体10及びPTOユニット30の構成を示す斜視図である。より詳しくは、
図2は、架装体20を取り外した状態の電動作業車両1を左斜め後方から俯瞰したときの斜視図である。
【0033】
メインフレーム11は、電動作業車両1の車両長手方向Xに沿って延在し、互いに車幅方向Yに対して平行に配置される一対の左メインフレーム11L及び右メインフレーム11Rからなる。左メインフレーム11L及び右メインフレーム11Rは、車幅方向Yに延びる複数のクロスメンバ16(
図2では1つのみ図示)により連結され、所謂ラダーフレームを構成している。なお、
図2には図示されていないが、サブフレーム23も車両長手方向Xに沿って延在しており、左メインフレーム11L上に配置された左サブフレーム23L、右メインフレーム11R上に配置された右サブフレーム23Rからなる。
【0034】
バッテリ12は、上記したように、車体10の走行駆動、及び電動補機類の駆動に必要な電力を供給する二次電池であり、双方に必要とされる電力を蓄えるために比較的大型で大容量のバッテリモジュール(図示せず)を内部に複数備える。また、バッテリ12は、車両長手方向Xに対して前方及び後方にそれぞれ独立して電力を供給できるよう構成されている。
【0035】
ここで、本実施形態におけるバッテリ12は、車幅方向Yにおける左メインフレーム11Lと右メインフレーム11Rとの間に配置される略直方体形状の部分と、車高方向Zにおけるメインフレーム11の下方に配置される略直方体形状の部分とが一体となった形状を有し、車両長手方向Xに垂直な平面における断面形状が逆T型となる形状を備えている。そして、バッテリ12は、上下2つの部分の幅の違いにより生じる段差部を左メインフレーム11L及び右メインフレーム11Rがそれぞれ通るように配置される。これにより、バッテリ12は、架装体20よりも下方のスペースを有効に利用して、バッテリ容量を増加させている。尚、バッテリ12の形状は、これに限定されるものではなく、必要なバッテリ容量や車体10のレイアウトに応じて適宜変更することができる。
【0036】
また、バッテリ12は、複数のバッテリ支持部材12aにより、車幅方向Yの外側からメインフレーム11に弾性的に懸架されている。さらに、バッテリ12は、車両長手方向Xの前方領域に「出力端子」としての配電部12bが設けられている。そして、配電部12bは、高電圧ケーブル12cを介してPTOユニット30や後述する電装品ユニット40に電力を供給する。
【0037】
より具体的には、配電部12bは、バッテリ12からPTOユニット30や電装品ユニット40を含む各電動補機に配電する所謂PDU(Power Distribution Unit)である。配電部12bは、本実施形態においては、車幅方向Yにおける左メインフレーム11Lと右メインフレーム11Rとの間、且つバッテリ12のハウジングの車両長手方向Xにおける前方の外装面に設けられている。尚、配電部12bの位置はこれに限られるものではなく、例えば、バッテリ12の上面中央部や、バッテリ12の前方の外装面よりも車両長手方向Xの前方に離間する位置に独立して設けられていてもよい。この場合には、配電部12bは、配線によりバッテリ12の本体と接続されることになる。また、配電部12bは、バッテリ12のハウジングの内部において、車両長手方向Xにおける前方の内装面に設けられてもよく、バッテリ12のハウジングの車両長手方向Xにおける前方の外装面から高電圧ケーブル12cを延在させてもよい。
【0038】
走行用駆動ユニット13は、走行用インバータ13a、走行用モータ13b、減速機13cを含み、上記したようにバッテリ12から供給される電力を車体10の走行用動力に変換する。より具体的には、走行用駆動ユニット13は、バッテリ12から供給される直流電力を適宜走行に適した交流電力に変換して走行用モータ13bに供給し、走行用モータ13bにおいて生成される回転動力を減速機13cにおいて減速させて、デファレンシャル及びリアアクスルを介して後輪14Rを駆動することにより車体10を走行させる。
【0039】
ここで、キャブ15は、図示しないが前端下部がメインフレーム11に上下に回動可能に支持されており、チルト可能なキャブマウント構造をなしている。キャブ15の後端下部は、左メインフレーム11L及び右メインフレーム11Rを架橋するように設けられた逆U字状のキャブブリッジ17にて図示しない弾性支持部材を介して支持されている。
【0040】
ここで、
図3及び
図4を参照すると、
図3には
図1のA-A線に沿う断面図が、
図4には
図3のB-B線に沿う断面図が示されている。
【0041】
図3、
図4に示すように、キャブ15の下面15aより下方には、従来のキャブオーバ型のエンジントラックにおけるエンジンルームに相当するキャブ下領域18が形成されている。また、
図4に示すように、キャブ15の背面15bと、架装体20の前面、即ち冷凍積載部21の前面21aとの間にはキャブバックスペース19が形成されており、本実施形態では、キャブ下領域18からキャブバックスペース19にかけて、PTOユニット30と、電装品ユニット40が収容されている。
【0042】
詳しくは、キャブ下領域18において、一対のメインフレーム11に積層構造の電装品支持部材50が設けられている。電装品支持部材50は複数の支持部材からなり、各メインフレーム11の車幅方向内側に取り付けられたベースプレート51に、それぞれ車高方向Z上方に延びる支柱52が前後に設けられている。そして、支柱52の上部において、左右の支柱間に亘って上段ビーム53が車幅方向Yに延びている。また上段ビーム53より車高方向Zの下側に、左右の支柱間に亘って中段ビーム54が車幅方向Yに延びている。また、各ベースプレート51の下部には、下段ブラケット55が前後に設けられており、各下段ブラケット55にダンパ56を介して、底面プレート57が支持されている。このように電装品支持部材50は、上段、中段、下段の3層構造のやぐら状をなしている。
【0043】
電装品ユニット40は、電装品支持部材50の上段及び中段に設けられている。電装品ユニット40は、主に車両駆動用の1又は複数の電装品からなり、例えば高電圧ケーブル12cを介して配電部12bから供給される直流電力を交流電力に変換する高電圧インバータ41や、走行用のバッテリ12からの直流電力を低電圧に変換するDC-DCコンバータ42、車両の各種制御を行う制御ユニット43等を有している。高電圧インバータ41は配線12dを介して架装用モータ31と接続されている。なお、電装品の種類はこれに限られるものではなく、これらの電装品を備えていなくてもよいし、他の電装品を含んでもよい。
【0044】
また、電装品支持部材50の下段に相当する底面プレート57(モータ支持部材)は、メインフレーム11よりも低い位置に配置されており、当該底面プレート57上の中央よりも車幅方向Yの右側にPTOユニット30の架装用モータ31が設けられている。つまり、架装用モータ31は、電装品支持部材50のうち最も低い位置に配置されている。架装用モータ31は車両長手方向Xの長く、後方に向けて出力軸が延びており、当該出力軸にはモータ側プーリ31aが取り付けられている。
【0045】
PTOユニット30のコンプレッサ33は、キャブバックスペース19に配置されている。詳しくは、左右一対のメインフレーム11に亘って車幅方向に延びた支持プレート58(駆動部支持部材)が架け渡されており、当該支持プレート58上の中央よりも車幅方向Yの左側にコンプレッサ33が設けられている。コンプレッサ33の車両長手方向Xの長さは、キャブバックスペース19に収まる長さであり、架装体20の冷凍積載部21及びサブフレーム23より前方に位置している。
【0046】
コンプレッサ33の入力軸にはコンプレッサ側プーリ33aが設けられている。当該コンプレッサ側プーリ33aと、モータ側プーリ31aにはベルト32が巻き付けられており、架装用モータ31の回転動力がベルト32を介してコンプレッサ33に伝達可能である。
【0047】
このように構成された電動作業車両1は、バッテリ12の電力が電装品ユニット40の高電圧インバータ41を介して架装用モータ31に供給され、架装用モータ31により回転動力に変換される。架装用モータ31により発生する回転動力はベルト32を介してコンプレッサ33に伝達され、当該コンプレッサ33の駆動により冷媒回路30aを通して冷媒が冷凍機22へ供給され、冷凍機22による作業が実行される。
【0048】
以上のように、本発明の第1実施形態に係る電動作業車両1は、キャブ下領域18において、PTOユニット30の架装用モータ31を電装品ユニット40が配置される空間の最下層の領域に配置されることで、電装品ユニット40のレイアウトへの影響を抑えつつ、架装用モータ31を搭載することができる。また、架装体20の冷凍機22を駆動するコンプレッサ33については、架装用モータ31より車両長手方向Xの後方に配置することで、冷凍機22との距離を近づけ、架装体20側のレイアウトへの影響も抑えることができる。
【0049】
これにより、架装用モータ31によりコンプレッサ33を駆動するPTOユニット30を搭載する場合において、キャブ下領域18のレイアウト変更への影響を低減しつつ、PTOユニット30搭載による荷台長さ(積載量)の減少を防ぐことができる。
【0050】
また、架装用モータ31は、出力軸が後方に向くよう配置されていることで、軸方向に長い架装用モータ31であっても、左右のメインフレーム11の間隔によらずキャブ下領域18に容易に配置することができる。
【0051】
また、電装品ユニット40が配置される空間は、電装ユニット40が搭載支持される電装品支持部材を複数有する積層構造からなり、架装用モータ31は、積層構造の底面を構成する電装品支持部材である底面プレート57に配置されている。これにより、電装品ユニット40及び架装体20のレイアウトへの影響を抑えつつ、架装用モータ31を配置することできる。
【0052】
また、コンプレッサ33は、架装用モータ31が搭載配置される高さよりも高い位置に配置されていることで、コンプレッサ33に要求される耐水性が低くなり、比較的耐水性が低い機器であっても選定することができるようになる。
【0053】
さらに、コンプレッサ33は、車両長手方向Xにおいてキャブ15と架装体20との間のキャブバックスペース19にて、メインフレーム11上に支持プレート58を介して配置されている。これにより、電装品ユニット40及び架装体20のレイアウトへの影響を抑えつつ、コンプレッサ33を配置することできる。また、メインフレーム11より高い位置にコンプレッサが配置されることで、コンプレッサ33に対する地面からの飛び石や水はねの影響を抑制することができる。したがって、本実施形態のようなPTOユニット30のレイアウトは、特に架装用モータ等に比べて耐久性や防水性の低い作業機駆動部を有する場合に適している。
【0054】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の電動作業車両2は、PTOユニット60が、上記した第1実施形態における電動作業車両1のPTOユニット30と異なる。以下、第1実施形態と異なる部分について説明することとし、第1実施形態と共通する構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
図5は本発明の第2実施形態に係る電動作業車両2の側面図であり、
図6は
図5のC-C線に沿う断面図、
図7は
図6のD-D線に沿う断面図である。
【0056】
図5に示す第2実施形態に係る電動作業車両2は、油圧により塵芥作業機24を駆動する架装体20を備えた塵芥作業車両である。塵芥作業車両におけるPTOユニット60は、架装用モータ61の回転動力をギアボックス62を介して油圧ポンプ63に伝達し、当該油圧ポンプ63により生成した油圧により塵芥作業機24を駆動する。
【0057】
詳しくは、
図6、
図7に示すように、キャブ下領域18において、第1実施形態と同様に、一対のメインフレーム11に積層構造の電装品支持部材50が設けられており、電装品ユニット40が当該電装品支持部材50の上段及び中段に設けられている。
【0058】
そして、電装品支持部材50の下段に相当する底面プレート57上にPTOユニット60の架装用モータ61が設けられている。つまり、第2実施形態においても架装用モータ61は、電装品支持部材50のうち最も低い位置に配置されている。架装用モータ61は車両長手方向Xの長く、後方に向けて出力軸が延びており、当該出力軸にはギアボックス62が取り付けられている。ギアボックス62は、内部の複数のギアを介して架装用モータ61からの回転動力を油圧ポンプ63に適した回転数及びトルクに変換して、油圧ポンプ63との連結シャフト64に出力するよう構成されている。
【0059】
PTOユニット60の油圧ポンプ63は、キャブバックスペース19に配置されている。詳しくは、架装用モータ61を支持している底面プレート57から、後方に連結プレート59aが延びており、当該連結プレート59aの後端からポンプ支持ブラケット59bが立設している。油圧ポンプ63は、前面がポンプ支持ブラケット59bに連結されることで、底面プレート57から連結プレート59aを介してポンプ支持ブラケット59bに支持されている。油圧ポンプ63は、車両長手方向Xにおいてキャブバックスペース19から架装体20を支持するサブフレーム23の前部にかけて位置しており、車幅方向Yにおいて中央よりも右側に位置しており、車高方向Zにおいて架装用モータ61よりも高く、メインフレーム11からサブフレーム23にかけて配置されている。そして、油圧ポンプ63は、図示しない油圧回路を介して塵芥作業機24に接続されており、油圧ポンプ63の駆動により発生した油圧が塵芥作業機24に供給される。
【0060】
このように第2実施形態に係る電動作業車両2においても、キャブ下領域18において、PTOユニット60の架装用モータ61を電装品ユニット40よりも下方に配置することで、電装品ユニット40のレイアウトへの影響を抑えつつ、架装用モータ61を搭載することができる。また、架装体20の塵芥作業機24を駆動する油圧ポンプ63については、架装用モータ61より車両長手方向Xの後方に配置することで、塵芥作業機24との距離を近づけ、架装体20側のレイアウトへの影響も抑えることができる。
【0061】
これにより、架装用モータ31によりコンプレッサ33を駆動するPTOユニット60を搭載する場合において、キャブ下領域18のレイアウト変更への影響を低減しつつ、PTOユニット60搭載による荷台長さ(積載量)の減少を防ぐことができる。
【0062】
その他にも、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、第2実施形態における油圧ポンプ63は、左右一対のメインフレーム11間及びサブフレーム23間に配置されている。一般的にキャブバックスペース周辺におけるメインフレーム間やサブフレーム間は機器レイアウト上活用されにくく、デットスペースとなりやすい空間である。しかしながら、本実施形態に係る電動作業車両2では、このような空間に油圧ポンプ63を配置することから、PTOユニット60を搭載する場合におけるキャブ下領域18のレイアウト変更への影響を与えない。また、キャブバックスペース19にPTOユニット60全てを搭載しようとする場合と比して、キャブバックスペース19の増加を招くこともなく、PTOユニット60を搭載することが可能となる。
【0063】
また、架装用モータ61はメインフレーム11と連結された底面プレート57により支持され、油圧ポンプ63は、底面プレート57と連結された連結プレート59a及びポンプ支持ブラケット59bにより支持されている。このように、架装用モータ61と油圧ポンプ63とが、連結された支持部材上にて支持されることで、架装用モータ61と油圧ポンプ63との間の振動のずれを緩和することができ、架装用モータ61の回転動力をより確実に油圧ポンプ63に伝達することができる。
【0064】
以上で本発明の実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0065】
上記実施形態では、バッテリ12が左右一対のメインフレーム11間に配置されているが、バッテリをメインフレームの車幅方向外側に配置してもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、電装品支持部材50の下段に相当する底面プレート57上には、PTOユニット30、60の架装用モータ31、61のみが設けられているが、他の電装品が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1、2 電動作業車両
10 車体
11 メインフレーム
12 バッテリ
12b 配電部
15 キャブ
20 架装体
30 PTOユニット
31 架装用モータ
32 ベルト
33 コンプレッサ(作業機駆動部)
40 電装品ユニット
50 電装品支持部材
60 PTOユニット
61 架装用モータ
62 ギアボックス
63 油圧ポンプ(作業機駆動部)