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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】摩擦撹拌接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/12 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B23K20/12 340
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019060855
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020157352
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 浩
(72)【発明者】
【氏名】真崎 邦崇
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 和也
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-137070(JP,A)
【文献】特開2012-230982(JP,A)
【文献】特開2003-181654(JP,A)
【文献】特開昭63-105850(JP,A)
【文献】特開2001-321966(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0057261(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に設置されるベース部と、
前記ベース部の上面に設けられ、前記上面に沿った1軸方向に延在するレールと、
前記1軸方向に延在し、前記レールに直接案内されて前記1軸方向に移動可能な主軸と、
前記主軸の先端に取り付けられ、ツール本体およびピンを含む接合ツールと、
前記接合ツールに対向配置され、被接合部材が設置されるステージと、
前記ステージを前記主軸に垂直な方向に移動可能なステージ移動機構と、
前記ステージを前記主軸に垂直な面に対して傾斜させるステージ傾斜機構と、
を備え、
前記主軸は、前記主軸に垂直な方向に移動する機構が設けられていなく、
前記ステージ傾斜機構は、前記ステージを前記主軸に垂直な面に対して傾斜させた状態で維持させる保持機構を有する、摩擦撹拌接合装置。
【請求項2】
前記1軸方向は水平方向における一方向である請求項1に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項3】
前記ステージ傾斜機構は、前記主軸の中心軸の延長線と垂直に交差する旋回中心軸周りに前記ステージを回転させる請求項1または2に記載の摩擦撹拌接合装置。
【請求項4】
前記ステージは、前記主軸と共通の前記ベース部に支持される請求項からのいずれか1項に記載の摩擦撹拌接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、摩擦撹拌接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、接合ツールが取り付けられる主軸が大凡鉛直に配置された摩擦撹拌接合装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-135575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の摩擦撹拌接合装置では、融点が高い被接合部材を適切に摩擦撹拌接合することができなかった。
【0005】
本開示は、融点が高い被接合部材を適切に摩擦撹拌接合することが可能な摩擦撹拌接合装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る摩擦撹拌接合装置は、地面に設置されるベース部と、ベース部の上面に設けられ、上面に沿った1軸方向に延在するレールと、1軸方向に延在し、レールに直接案内されて1軸方向に移動可能な主軸と、主軸の先端に取り付けられ、ツール本体およびピンを含む接合ツールと、接合ツールに対向配置され、被接合部材が設置されるステージと、ステージを主軸に垂直な方向に移動可能なステージ移動機構と、ステージを主軸に垂直な面に対して傾斜させるステージ傾斜機構と、を備え、主軸は、主軸に垂直な方向に移動する機構が設けられていなく、ステージ傾斜機構は、ステージを主軸に垂直な面に対して傾斜させた状態で維持させる保持機構を有する
【0007】
また、1軸方向は水平方向における一方向であってもよい。
【0010】
また、ステージ傾斜機構は、主軸の中心軸の延長線と垂直に交差する旋回中心軸周りにステージを回転させてもよい。
【0011】
また、ステージは、主軸と共通のベース部に支持されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、融点が高い被接合部材を適切に摩擦撹拌接合することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態による摩擦撹拌接合装置の概略側面図である。
図2】摩擦撹拌接合装置の概略平面図である。
図3】接合ツールを説明する説明図である。
図4】ステージを傾斜させた場合の摩擦撹拌接合装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、本実施形態による摩擦撹拌接合装置1の概略側面図であり、図2は、摩擦撹拌接合装置1の概略平面図である。図1および図2では、X軸、Y軸およびZ軸を図示のように定義している。つまり、Y軸は、鉛直方向となっており、X軸およびZ軸は、水平方向となっており、X軸、Y軸およびZ軸は、互いに直交している。
【0016】
摩擦撹拌接合装置1は、ベース部10、主軸12、接合ツール14、主軸駆動機構16、摺動機構18、ステージ20、ステージ移動機構22およびステージ傾斜機構24を含む。図1では、説明の便宜のため、主軸12、摺動機構18およびステージ移動機構22の一部を透視して示している。
【0017】
ベース部10は、水平方向の寸法に対して鉛直方向の寸法が小さな台である。ベース部10は、地面26に設置される。ベース部10は、摩擦撹拌接合装置1の各部を支持する。
【0018】
主軸12は、円柱状に形成される。主軸12は、Z軸方向に延在している。つまり、主軸12は、水平に配置される。
【0019】
主軸12の軸方向(Z軸方向)の先端には、接合ツール14が取り付けられる。接合ツール14については、後に詳述する。以後、主軸12の軸方向中央から接合ツール14に向かう方向を前方と呼び、主軸12の軸方向中央から接合ツール14とは反対側に向かう方向を後方と呼ぶ場合がある。
【0020】
主軸駆動機構16は、主軸支持部30、軸受32、主軸駆動装置34、回転伝達部36を含む。主軸支持部30は、例えば、略直方体状に形成される。主軸12は、主軸支持部30を貫通している。主軸支持部30内には、軸受32が設けられる。主軸支持部30は、軸受32を通じて主軸12を中心軸周りに回転可能に支持する。なお、主軸支持部30には、摩擦撹拌接合により温度が上昇した主軸12を冷却する冷却機構が設けられてもよい。
【0021】
主軸駆動装置34は、例えば、回転軸にトルクを発生させるモータである。主軸駆動装置34は、その回転軸が主軸12と平行になるように配置される。
【0022】
回転伝達部36は、駆動装置側プーリ40、主軸側プーリ42およびベルト44を含む。駆動装置側プーリ40は、主軸駆動装置34の回転軸に接続される。主軸側プーリ42は、主軸12における主軸支持部30よりも後方に接続される。ベルト44は、駆動装置側プーリ40および主軸側プーリ42に巻き掛けられる。ベルト44は、駆動装置側プーリ40の回転にしたがって主軸側プーリ42を回転させる。つまり、回転伝達部36は、主軸駆動装置34で発生したトルクを主軸12に伝達する。
【0023】
摺動機構18は、レール50、摺動プレート52、案内部54、回転軸56、Z軸駆動装置58、減速機60、スラスト軸受62、ボールねじ64、連結部66およびロードセル68を含む。
【0024】
レール50は、略角柱状に形成され、ベース部10の上面に2個設けられる。2個のレール50は、X軸方向に互いに離隔しており、Z軸方向に互いに平行して延在している。つまり、レール50は、ベース部10の上面に沿った1軸方向に延在する。1軸方向は、具体的には、水平方向における一方向(Z軸方向)である。
【0025】
摺動プレート52は、長方形の平板状に形成され、ベース部10上に水平に配置される。摺動プレート52の上面には、主軸支持部30および主軸駆動装置34が設置される。主軸12、主軸支持部30および主軸駆動装置34は、摺動プレート52のX軸方向中央付近に位置する。また、主軸12は、レール50が延在する1軸方向に延在している。
【0026】
また、摺動プレート52の下面の4隅には、レール50に係合する案内部54が設けられる。摺動プレート52、主軸12および主軸駆動機構16は、一体的に、レール50に沿ってZ軸方向に摺動可能である。
【0027】
回転軸56は、円柱状に形成され、外周面にねじ溝が形成される。回転軸56は、摺動プレート52の鉛直下方に配置される。回転軸56は、摺動プレート52のX軸方向中央付近に位置し、Z軸方向に延在する。回転軸56は、中心軸周りに回転可能にベース部10に支持される。
【0028】
回転軸56の後方側端には、Z軸駆動装置58、減速機60およびスラスト軸受62が設けられる。Z軸駆動装置58は、例えば、回転軸56を回転させるモータである。減速機60は、Z軸駆動装置58に対する回転軸56の回転速度を減速させ、回転軸56の回転数を減少させる。スラスト軸受62は、回転軸56の軸方向の力を支持する。
【0029】
ボールねじ64は、円筒状に形成される。回転軸56は、ボールねじ64内を貫通している。ボールねじ64と回転軸56との間には、ボールが収容される。ボールねじ64は、回転軸56の回転にしたがって軸方向(Z軸方向)に移動可能である。
【0030】
摺動プレート52の下面には、鉛直下方に延びる連結部66が設けられる。ロードセル68は、ボールねじ64の前方側の面と連結部66の後方側の面との間に挟まれている。ボールねじ64は、ロードセル68および連結部66を通じて摺動プレート52に連結されている。ロードセル68は、Z軸方向の力(主軸12の軸方向の力)を計測する。
【0031】
Z軸駆動装置58が減速機60およびスラスト軸受62を通じて回転軸56を所定方向(例えば、時計回り)に回転させると、ボールねじ64は、Z軸に沿って前方に移動する。そうすると、摺動プレート52は、ボールねじ64、ロードセル68および連結部66を通じて、Z軸に沿って前方(ボールねじ64と同方向)に摺動する。その結果、主軸12、主軸駆動機構16および主軸12に取り付けられた接合ツール14は、摺動プレート52とともにZ軸に沿って前方に移動する。
【0032】
また、Z軸駆動装置58が回転軸56を反対方向(例えば、反時計回り)に回転させると、ボールねじ64は、Z軸に沿って後方に移動する。そうすると、摺動プレート52は、ボールねじ64、ロードセル68および連結部66を通じて、Z軸に沿って後方(ボールねじ64と同方向)に摺動する。その結果、主軸12、主軸駆動機構16および主軸12に取り付けられた接合ツール14は、摺動プレート52とともにZ軸に沿って後方に移動する。
【0033】
このように、摺動機構18は、ベース部10に対して主軸12を軸方向に摺動可能に連結している。これにより、主軸12は、レール50に案内されて1軸方向(Z軸方向)に移動可能である。また、摺動機構18は、主軸12および主軸12に取り付けられた接合ツール14の位置の移動方向を1軸(Z軸)に拘束している。つまり、主軸12および接合ツール14の位置は、軸方向にしか移動せず、例えば、X軸方向およびY軸方向には移動しない。また、摩擦撹拌接合装置1では、主軸12および接合ツール14の位置を移動させる移動機構が摺動機構18のみである。
【0034】
ステージ20は、主軸12に取り付けられた接合ツール14に対してZ軸方向に対向配置される。ステージ20は、正方形または長方形の平板状に形成される。ステージ20は、正面が接合ツール14に対向するように、鉛直に起立して配置される。ステージ20における正面には、被接合部材70が設置される。ステージ20は、ステージ移動機構22およびステージ傾斜機構24を通じてベース部10に支持される。つまり、ステージ20および主軸12は、共通のベース部10に支持される。
【0035】
ステージ移動機構22は、Y軸移動機構80およびX軸移動機構82を含む。Y軸移動機構80は、Y軸支持プレート90、レール92、案内部94、回転軸96、Y軸駆動装置98、減速機100、スラスト軸受102およびボールねじ104を含む。
【0036】
Y軸支持プレート90は、平板状に形成される。Y軸支持プレート90は、ステージ20に対して主軸12とは反対側(ステージ20の背面側)に位置する。Y軸支持プレート90は、ステージ20に離隔して対向配置される。
【0037】
レール92は、Y軸支持プレート90からステージ20に向かって起立している。レール92は、Y軸支持プレート90に2個設けられる。2個のレール92は、X軸方向に互いに離隔しており、Y軸方向に互いに平行して延在している。案内部94は、ステージ20の背面に2個設けられる。2個の案内部94は、X軸方向に互いに離隔しており、Y軸方向に互いに平行して延在している。案内部94は、レール92に係合する。ステージ20は、Y軸支持プレート90に対してレール92に沿ってY軸方向に摺動可能である。
【0038】
回転軸96は、円柱状に形成され、外周面にねじ溝が形成される。回転軸96は、ステージ20とY軸支持プレート90との間に位置する。回転軸96は、ステージ20のX軸方向中央付近に位置し、Y軸方向に延在する。回転軸96は、中心軸周りに回転可能にY軸支持プレート90に支持される。
【0039】
回転軸96の鉛直上方側端には、Y軸駆動装置98、減速機100およびスラスト軸受102が設けられる。Y軸駆動装置98は、例えば、回転軸96を回転させるモータである。減速機100は、Y軸駆動装置98に対する回転軸96の回転速度を減速させる。スラスト軸受102は、回転軸96の軸方向の力を支持する。
【0040】
ボールねじ104は、円筒状に形成される。ボールねじ104は、ステージ20の背面に連結される。回転軸96は、ボールねじ104内を貫通している。ボールねじ104と回転軸96との間には、ボールが収容される。ボールねじ104は、回転軸96の回転にしたがって軸方向(Y軸方向)に移動可能である。
【0041】
Y軸駆動装置98が減速機100およびスラスト軸受102を通じて回転軸96を回転させると、ボールねじ104は、Y軸支持プレート90に対してY軸に沿って移動する。そうすると、ステージ20は、ボールねじ104を通じてY軸に沿って(ボールねじ104と同方向に)摺動する。
【0042】
X軸移動機構82は、X軸支持プレート110、レール112、案内部114、回転軸116、X軸駆動装置118、減速機120、スラスト軸受122およびボールねじ124を含む。
【0043】
X軸支持プレート110は、平板状に形成される。X軸支持プレート110は、Y軸支持プレート90に対してステージ20とは反対側に位置する。X軸支持プレート110は、Y軸支持プレート90に離隔して対向配置される。
【0044】
レール112は、X軸支持プレート110からY軸支持プレート90に向かって起立している。レール112は、X軸支持プレート110に2個設けられる。2個のレール112は、Y軸方向に互いに離隔しており、X軸方向に互いに平行して延在している。案内部114は、Y軸支持プレート90のX軸支持プレート110側の面に2個設けられる。2個の案内部114は、Y軸方向に互いに離隔しており、X軸方向に互いに平行して延在している。案内部114は、レール112に係合する。Y軸支持プレート90は、X軸支持プレート110に対してレール112に沿ってX軸方向に摺動可能である。
【0045】
回転軸116は、円柱状に形成され、外周面にねじ溝が形成される。回転軸116は、Y軸支持プレート90とX軸支持プレート110との間に位置する。回転軸116は、Y軸支持プレート90のY軸方向中央付近に位置し、X軸方向に延在する。回転軸116は、中心軸周りに回転可能にX軸支持プレート110に支持される。
【0046】
回転軸116の一方側端には、X軸駆動装置118、減速機120およびスラスト軸受122が設けられる。X軸駆動装置118は、例えば、回転軸116を回転させるモータである。減速機120は、X軸駆動装置118に対する回転軸116の回転速度を減速させる。スラスト軸受122は、回転軸116の軸方向の力を支持する。
【0047】
ボールねじ124は、円筒状に形成される。ボールねじ124は、Y軸支持プレート90のX軸支持プレート110側の面に連結される。回転軸116は、ボールねじ124内を貫通している。ボールねじ124と回転軸116との間には、ボールが収容される。ボールねじ124は、回転軸116の回転にしたがって軸方向(X軸方向)に移動可能である。
【0048】
X軸駆動装置118が減速機120およびスラスト軸受122を通じて回転軸116を回転させると、ボールねじ124は、X軸支持プレート110に対してX軸に沿って移動する。そうすると、Y軸支持プレート90は、ボールねじ124を通じてX軸に沿って(ボールねじ124と同方向に)摺動する。その結果、ステージ20は、Y軸移動機構80とともに、X軸支持プレート110に対してX軸に沿って移動する。
【0049】
このように、ステージ移動機構22は、ステージ20を主軸12に垂直な方向(X軸方向およびY軸方向)に移動可能である。
【0050】
ステージ傾斜機構24は、旋回中心部130、円筒部132、旋回プレート134、ボールリフタ136、リブ138、リブ140、ロッド142、シリンダ144および旋回駆動装置146を含む。
【0051】
旋回中心部130は、円柱状に形成され、ベース部10の上面から鉛直上方に突出する。旋回中心部130の中心軸は、Y軸方向に延びる。以後、旋回中心部130の中心軸およびその延長線を、旋回中心軸と呼ぶ場合がある。旋回中心部130は、大凡ステージ20の鉛直下方に位置する。旋回中心部130は、旋回中心部130の旋回中心軸と、主軸12の中心軸の延長線とが垂直に交差するように設けられる。換言すると、旋回中心部130は、鉛直上方から旋回中心部130を見たときに、旋回中心部130の中心が主軸12の中心軸の延長線上に位置するように設けられる(図2参照)。
【0052】
円筒部132は、円筒状に形成され、内部に旋回中心部130が収容されるように、旋回中心部130の周囲に配置される。円筒部132の中心軸は、旋回中心部130の旋回中心軸に重なる。円筒部132は、旋回中心部130に対して旋回中心軸周りに回転可能である。
【0053】
旋回プレート134は、平板状に形成され、水平に配置される。旋回プレート134は、円筒部132の外周面に接続される。旋回プレート134は、旋回中心部130に対して主軸12とは反対側に位置する。旋回プレート134は、旋回中心部130および円筒部132を通じて旋回中心軸周りに回転可能(旋回可能)である。
【0054】
ボールリフタ136は、ベース部10と旋回プレート134との間に設けられる。ベース部10は、ボールリフタ136を通じて旋回プレート134を水平方向に移動可能(旋回可能)に支持する。
【0055】
X軸支持プレート110は、旋回プレート134の上面に設置される。X軸支持プレート110は、旋回プレート134の上面から鉛直上方に起立している。X軸支持プレート110に対してY軸支持プレート90とは反対側には、平板状のリブ138が複数設けられる。リブ138は、X軸支持プレート110および旋回プレート134の各々に垂直に接続される。
【0056】
旋回プレート134の上面におけるX軸支持プレート110と円筒部132との間には、平板状のリブ140が2個設けられる。リブ140は、円筒部132、旋回プレート134およびX軸支持プレート110に接続される。2個のリブ140は、円筒部132からX軸支持プレート110に向かってX軸方向に広がるように設けられる。
【0057】
ロッド142、シリンダ144および旋回駆動装置146は、旋回プレート134に対して旋回中心部130とは反対側に設けられる。ロッド142の一部はシリンダ144に挿入される。ロッド142は、シリンダ144に対して摺動可能である。ロッド142におけるシリンダ144とは反対側端は、旋回プレート134から突出する突出部148に連結される。旋回駆動装置146は、例えば、シリンダ144に対してロッド142を摺動させるモータである。
【0058】
旋回駆動装置146がロッド142をシリンダ144に没入する方向に移動させると、旋回プレート134は、水平を維持した状態で、旋回駆動装置146に向かう方向(図2の時計回り方向)に回転(旋回)する。そうすると、旋回プレート134に支持されるX軸移動機構82、Y軸移動機構80およびステージ20は、旋回プレート134と同方向(図2の時計回り方向)に回転する。その結果、ステージ20は、主軸12に垂直な面に対して図2の時計回り方向に傾斜する。
【0059】
旋回駆動装置146がロッド142をシリンダ144から突出する方向に移動させると、旋回プレート134は、水平を維持した状態で、旋回駆動装置146から離れる方向(図2における反時計回り方向)に回転(旋回)する。そうすると、旋回プレート134に支持されるX軸移動機構82、Y軸移動機構80およびステージ20は、旋回プレート134と同方向(図2の反時計回り方向)に回転する。その結果、ステージ20は、主軸12に垂直な面に対して図2の反時計回り方向に傾斜する。このように、ステージ傾斜機構24は、ステージ20を主軸12に垂直な面に対して傾斜させる。
【0060】
図3は、接合ツール14を説明する説明図である。接合ツール14は、コンベンショナル型に構成される。具体的には、接合ツール14は、ツール本体150およびピン152を含む。ツール本体150は、例えば、円柱状に形成される。ツール本体150の先端面には、円柱状のピン152が設けられる。ピン152の外径は、ツール本体150の外径よりも小さい。ピン152の中心軸は、ツール本体150の中心軸に重なる。ピン152の外周面には、ねじ溝が形成される。ツール本体150の先端面におけるピン152の周囲は、ショルダ154として機能する。また、ツール本体150におけるピン152とは反対側は、主軸12に連結される。
【0061】
摩擦撹拌接合装置1では、接合したい2つの被接合部材70の端面同士が付け合わされる。2つの被接合部材70が付け合わされた境界部分は、接合したい接合線となる。摩擦撹拌接合装置1では、接合ツール14を軸周りに回転させながら、接合ツール14のピン152を被接合部材70における接合線部分に挿入させる。そうすると、接合ツール14の摩擦熱と回転により、被接合部材70におけるピン152の周囲が塑性流動して撹拌される。図3では、塑性流動している領域を領域A1で示している。
【0062】
被接合部材70が塑性流動して撹拌されると、2つの被接合部材70の境界において、2つの被接合部材70が撹拌されて一体化される。そして、接合線に沿って接合ツール14を進行させると、塑性流動領域(領域A1)は、ピン152とともに進行方向に移動する。一方、接合ツール14に対して進行方向とは反対方向では、撹拌されて一体化された被接合部材70が冷えて固まる。これにより、2つの被接合部材70が摩擦撹拌接合される。
【0063】
また、接合ツール14が上述のようなコンベンショナル型の場合、接合ツール14は、被接合部材70の法線(一点鎖線C10)に対して傾斜した姿勢で被接合部材70に挿入される。具体的には、接合ツール14の中心軸(一点鎖線C12)は、被接合部材70の法線(一点鎖線C10)に対して、ピン152側が相対的に接合ツール14の進行方向側に位置するように傾斜する。そうすると、進行方向とは反対側のショルダ154は、進行方向側に比べ、被接合部材70側に没入する。これにより、進行方向とは反対側のショルダ154は、塑性流動化した被接合部材70を押さえつけるようになり、塑性流動化した被接合部材70が溢れ出ることを抑制する。このように接合ツール14を傾斜させることで、接合部の仕上がりを滑らかにすることができる。
【0064】
図4は、ステージ20を傾斜させた場合の摩擦撹拌接合装置1の概略平面図である。図4では、旋回プレート134を時計回り方向に角度θだけ回転させた状態を示している。以下、図4を参照して、摩擦撹拌接合装置1の動作および操作を説明する。
【0065】
摩擦撹拌接合装置1の操作者は、まず、ステージ20に被接合部材70をセットする。次に、操作者は、接合開始位置が主軸12の中心軸の延長線上に位置するように、X軸移動機構82およびY軸移動機構80を動作させてステージ20を移動させる。
【0066】
次に、操作者は、接合ツールの傾斜角度が所定角度(例えば、角度θ)になるように、ステージ傾斜機構24を動作させる。具体的には、操作者は、旋回駆動装置146を動作させて、旋回プレート134を時計回り方向に角度θだけ回転させる。これにより、ステージ20は、主軸12に垂直な面に対して時計回り方向に角度θだけ傾斜する。そうすると、主軸12および接合ツール14の中心軸は、ステージ20(被接合部材70)の法線に対して、相対的に反時計回り方向に角度θだけ傾斜する。その結果、接合ツール14の傾斜角度が角度θとなる。
【0067】
次に、操作者は、摺動機構18を動作させて、摺動プレート52をステージ20に向かう方向に摺動させる。これにより、接合ツール14が被接合部材70に接近する。
【0068】
なお、接合開始位置の位置合わせ、接合ツール14の傾斜角度の設定、および、接合ツール14のZ軸方向の位置合わせは、例示した順番とは異なる順番に行ってもよい。
【0069】
次に、操作者は、主軸駆動機構16を動作させて主軸12および接合ツール14を回転させつつ、摺動機構18を動作させて接合ツール14のピン152を被接合部材70に挿入させる。図4には、この時の状態が示されている。
【0070】
次に、操作者は、X軸移動機構82を動作させて、接合ツール14に対してステージ20を、図4の矢印D10で示すステージ移動方向に移動させる。そうすると、接合ツール14は、被接合部材70に対して相対的に、図4の矢印D12で示す接合ツール進行方向に移動する。矢印D12で示す接合ツール進行方向は、矢印D10で示すステージ移動方向とは反対方向である。このようにして接合ツール14が相対的に移動することで、ステージ20に設置された被接合部材70は、接合線に沿って摩擦撹拌接合される。
【0071】
なお、摩擦撹拌接合装置1は、主軸駆動装置34、摺動機構18、ステージ移動機構22およびステージ傾斜機構24を自動制御する制御部を備えてもよい。また、このような制御部は、主軸12の軸方向の力をロードセル68で計測しつつ、その力が所定値に維持されるように、主軸駆動装置34およびZ軸駆動装置58を自動制御してもよい。
【0072】
ここで、従来の被接合部材70は、主にアルミニウムであった。これに対し、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、アルミニウムよりも融点が高い金属(以下、高融点材料と呼ぶ場合がある)の摩擦撹拌接合を行うことができる。
【0073】
高融点材料は、例えば、ニッケルをベースとした合金であるインコネル(登録商標)およびチタンなどである。アルミニウムの融点は、660℃であるが、インコネル(登録商標)およびチタンの融点は、1000℃を超える。被接合部材70の融点が高くなると、被接合部材70を塑性流動化させるための摩擦熱がより多く必要となる。つまり、高融点材料の場合、被接合部材70に高い摩擦熱を発生させるために、主軸12のトルクを大きくする必要がある。
【0074】
また、インコネル(登録商標)およびチタンのような高融点材料は、一般的に、アルミニウムに比べ、硬度が高い(硬い)。被接合部材70の硬度が高くなると、接合ツール14を被接合部材70に挿入させる力がより多く必要となる。つまり、硬度が高い材料の場合、接合ツール14を被接合部材70に押し付ける(挿入させる)ための主軸12の軸方向の力を大きくする必要がある。
【0075】
高融点材料の場合、このような主軸12のトルクおよび軸方向の力は、アルミニウムの場合に比べ、十数倍以上になることもある。
【0076】
接合ツールがコンベンショナル型の従来の摩擦撹拌接合装置では、主軸が大凡鉛直方向に配置され、主軸を移動可能に支持する主軸移動機構が、門型の支持部の上部に連結されていた。このような門型構成では、接合ツールから主軸、主軸移動機構および門型の支持部を経由して地面までの力の伝達経路が長い。このため、門型構成では、主軸のトルクおよび軸方向の力を仮に大きくした場合、被接合部材によって生じる反力によって接合ツールを適切に支持できなくなる。その結果、従来の摩擦撹拌接合装置では、接合ツールの位置が乱れて、摩擦撹拌接合が適切に行えないことを本願発明者は見出した。
【0077】
これに対し、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1は、主軸12が水平に配置され、主軸12が摺動機構18およびベース部10を通じて地面26に支持される。これにより、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、門型構成に比べ、接合ツール14から地面26までの力の伝達経路が短い。また、主軸12は、高さが低く水平方向に広いベース部10によって地面26に支持されている。このため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、主軸12のトルクおよび軸方向の力を大きくすることで被接合部材70によって大きな反力が生じたとしても、接合ツール14を適切に支持することができる。その結果、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、被接合部材70として高融点材料を用いても、接合ツール14の位置の乱れを抑制でき、適切に摩擦撹拌接合を行うことが可能となる。
【0078】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、接合ツール14に対向配置されるステージ20が、主軸12に垂直な方向に移動される。一方、主軸12は、主軸12に垂直な方向に移動する機構が設けられていない。このため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1は、主軸12のトルクおよび軸方向の力が大きくなっても、主軸12および接合ツール14の位置を安定させることができる。また、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、主軸12を垂直な方向に移動させる機構を主軸12側に設けないことで、接合ツール14から地面26までの力の伝達経路をより短くすることができる。
【0079】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、ステージ20を主軸12に垂直な面に対して傾斜させるステージ傾斜機構24が設けられている。これにより、接合ツール14は、被接合部材70の法線に対して傾斜可能である。このため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、コンベンショナル型の接合ツール14を用いて、適切に摩擦撹拌接合を行うことができる。また、主軸12には、接合ツール14を傾斜させる機構が設けられていない。このため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1は、主軸12のトルクおよび軸方向の力が大きくなっても、主軸12および接合ツール14の位置を安定させることができる。また、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、接合ツール14を傾斜させる機構を主軸12側に設けないことで、接合ツール14から地面26までの力の伝達経路をより短くすることができる。
【0080】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、主軸12の中心軸の延長線と垂直に交差する旋回中心軸周りにステージ20が回転する。このため、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、主軸12の軸方向の力をステージ20側で安定して受けることができる。
【0081】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1は、主軸12およびステージ20の両方が、共通のベース部10に一体的に支持されている。このため、主軸12側で生じる反力およびステージ20側で生じる反力は、ベース部10で互いに打ち消すように作用する。これにより、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1は、主軸12のトルクおよび軸方向の力が大きくなっても、主軸12、接合ツール14およびステージ20の位置を安定させることができる。
【0082】
以上のように、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1によれば、融点が高い被接合部材を適切に摩擦撹拌接合することが可能となる。
【0083】
また、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1では、レール50が水平方向における一方向(Z軸方向)に延在していた。しかし、レール50は、水平方向における一方向に延在する態様に限らない。つまり、主軸12の移動可能な1軸方向は、水平方向における一方向に限らず、ベース部10の上面に沿った一方向であってもよい。例えば、ベース部10の上面が水平に対して傾斜しており、レール50は、その傾斜した上面に沿って、水平面に対して傾斜していてもよい。この場合、主軸12は、水平面に対して傾斜する傾斜方向(レール50の延在方向)に延在し、レール50に案内されて、その傾斜方向に移動可能であってもよい。この態様によれば、主軸12が鉛直に支持される態様に比べ、主軸12のトルクおよび軸方向の力を大きくしつつ、接合ツール14を適切に支持することができる。その結果、この態様においても、融点が高い被接合部材を適切に摩擦撹拌接合することが可能となる。
【0084】
また、本実施形態のように主軸12を水平方向における一方向に移動可能に支持する態様は、主軸12を傾斜方向に移動可能に支持する態様に比べ、主軸12のトルクおよび軸方向の力を大きくしつつ接合ツール14を適切に支持する効果をより高くすることができる。これは、主軸12を水平方向における一方向に移動可能に支持する態様では、主軸12に生じる反力の鉛直方向成分が生じなく、水平方向成分のみであるため、主軸12に生じる反力に、より適切に抗することができるからである。
【0085】
なお、本実施形態の摩擦撹拌接合装置1は、融点が高い被接合部材70の摩擦撹拌接合に使用するだけでなく、アルミニウムなどの従来の被接合部材70の摩擦撹拌接合に使用してもよい。
【0086】
また、本実施形態において、ステージ傾斜機構24は、ステージ20を傾斜させた状態(旋回プレート134を回転させた状態)を維持させる保持機構を備えてもよい。この態様では、主軸12の軸方向の力がステージ20に与えられても、ステージ20の傾斜角度をより安定させることができる。
【0087】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本開示は、摩擦撹拌接合装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 摩擦撹拌接合装置
10 ベース部
12 主軸
14 接合ツール
18 摺動機構
20 ステージ
22 ステージ移動機構
24 ステージ傾斜機構
26 地面
70 被接合部材
図1
図2
図3
図4