(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】対象物位置検出センサ
(51)【国際特許分類】
G01S 3/808 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G01S3/808
(21)【出願番号】P 2019064430
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】久米 政治
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-286402(JP,A)
【文献】特開2016-127430(JP,A)
【文献】特開2008-089312(JP,A)
【文献】特開2004-085201(JP,A)
【文献】特開平10-186029(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 1/70 - 3/86
G01S 5/16 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に反射した超音波の反射波を受信する3つ以上の複数の超音波センサを含むセンサ群と、
前記超音波センサに対する前記対象物の方向と、前記超音波センサから前記対象物までの距離とに基づいて前記対象物の位置を検出する検出部とを備え、
前記センサ群における前記複数の超音波センサはそれぞれ、同じ向きに受波面を向けられており、かつ、直線状に配設されており、
前記センサ群における、任意の2つの前記超音波センサを一つの組と定義した場合、ある一組の2つの前記超音波センサ間の距離である第一のセンサ間距離が他の一組の2つの前記超音波センサ間の距離である第二のセンサ間距離を超え、
前記検出部は、
前記超音波センサが超音波を送信してから受信するまでの時間に基づいて前記距離を算出し、
前記対象物の
方向として、前記受波面が向けられた向きを基準として前記直線状に配設されている方向に反れる角度θを検出するように設定されており、
前記ある一組の2つの前記超音波センサ間における前記各超音波センサが受信した前記反射波の位相差と、前記他の一組の2つの前記超音波センサ間における前記各超音波センサが受信した前記反射波の位相差との差分である組間位相差、前記第一のセンサ間距離と前記第二センサ間距離との差分α、前記反射波の波長λ、前記角度θが満たす式(1)に基づいて前記角度θを求めることにより、前記方向を算出する対象物位置検出センサ。
α・sinθ=λ・(組間位相差/360°) 式(1)
【請求項2】
前記検出部における前記角度θの検出範囲が、前記受波面が向けられた向きを基準として角度θmaxから角度-θmaxに設定されている場合に、
前記角度θmax、前記反射波の波長λ、及び前記差分αの関係が、下記式(2)を満たす請求項1に記載の対象物位置検出センサ。
λ≧2・α・sin(θmax) 式(2)
【請求項3】
前記センサ群は、第一の超音波センサ、第二の超音波センサ、及び第三の超音波センサからなり、
前記第一の超音波センサと前記第二の超音波センサとが前記ある一組を構成し、前記第二の超音波センサと前記第三の超音波センサとが前記他の一組を構成する請求項1または2に記載の対象物位置検出センサ。
【請求項4】
前記センサ群における前記複数の超音波センサのそれぞれの前記受波面の重心が直線上に配設されている請求項1から3のいずれか一項に記載の対象物位置検出センサ。
【請求項5】
前記センサ群として、第一方向に沿い前記3つ以上の超音波センサが配設された第一センサ群と、前記第一方向に交差する第二方向に沿い前記3つ以上の超音波センサが配設された第二センサ群と、を含み、
前記検出部は、前記第一方向における前記対象物の位置と、前記第二方向における前記対象物の位置とを検出する請求項1から4のいずれか一項に記載の対象物位置検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物位置検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、障害物検出装置(本願の対象物位置検出センサに対応)が記載されている。この障害物検出装置は、まず、複数の受信部(超音波センサの一例)で受信した反射波の包絡線波を求めてそれぞれの頂点時刻を判別し、立ち上がり推測値を求める。そして、各包絡線波の頂点時刻の関係に基づいて、候補となる包絡線波の組合せを選定する。更に、算定した組合せに対応する立ち上がり推測値に基づいて、候補となる障害物(本願の対象物に対応)の位置を算定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、超音波センサで受信した反射波の包絡線から立ち上がり推測値を求める場合、求めた立ち上がり推測値の誤差が大きくなりやすい。そのため、対象物の検出位置精度が悪くなる問題があった。包絡線に代えて複数の超音波センサで受信した反射波の位相差を用いて対象物の位置を検出する場合には、超音波センサの寸法上(直径)の問題から位相差が一周期を超えてしまうため、そのままでは精度の高い検出は困難である。そこで、対象物の検出位置精度が高い対象物位置検出センサの提供が望まれる。
【0005】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、対象物の検出位置精度が高い対象物位置検出センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る対象物位置検出センサの特徴構成は、対象物に反射した超音波の反射波を受信する3つ以上の複数の超音波センサを含むセンサ群と、前記超音波センサに対する前記対象物の方向と、前記超音波センサから前記対象物までの距離とに基づいて前記対象物の位置を検出する検出部とを備え、前記センサ群における前記複数の超音波センサはそれぞれ、同じ向きに受波面を向けられており、かつ、直線状に配設されており、前記センサ群における、任意の2つの前記超音波センサを一つの組と定義した場合、ある一組の2つの前記超音波センサ間の距離である第一のセンサ間距離が他の一組の2つの前記超音波センサ間の距離である第二のセンサ間距離を超え、前記検出部は、前記超音波センサが超音波を送信してから受信するまでの時間に基づいて前記距離を算出し、前記対象物の方向として、前記受波面が向けられた向きを基準として前記直線状に配設されている方向に反れる角度θを検出するように設定されており、前記ある一組の2つの前記超音波センサ間における前記各超音波センサが受信した前記反射波の位相差と、前記他の一組の2つの前記超音波センサ間における前記各超音波センサが受信した前記反射波の位相差との差分である組間位相差、前記第一のセンサ間距離と前記第二センサ間距離との差分α、前記反射波の波長λ、前記角度θが満たす式(1)に基づいて前記角度θを求めることにより、前記方向を算出する点にある。
α・sinθ=λ・(組間位相差/360°) 式(1)
【0007】
上記構成によれば、センサ群における、第一のセンサ間距離が第二のセンサ間距離を超えている。これにより、第一のセンサ間距離から第二のセンサ間距離を差し引いた差分(以下、差分αと称する)と、一方の一組の超音波センサ間における反射波の位相差から他方の一組の超音波センサ間における反射波の位相差を差し引いた位相差の差分(以下、組間位相差と称する)とに基づいて、対象物からの反射波につき、受波面が向けられた向きに沿う方向と、複数の超音波センサの配列された方向(以下、配列方向と記載する)とに沿う仮想面における超音波センサへの入射角度を、対象物の方向として検出することができる。このように位相差に基づいて対象物の方向を検出することで、検出位置精度を高めることができる。
【0008】
なお、対象物位置検出センサと対象物との距離は、超音波センサにより超音波を送信し、その反射波を受信して、超音波を送信してから反射波を受信するまでの時間と音速とに基づいて障害物までの距離を測定するいわゆるタイム・オブ・フライト(Time-Of-Flight、TOF)法により求めることができる。したがって、上記構成によれば、対象物の方向と対象物との距離とにより、対象物の位置を検出することができる。
【0009】
以下では、上記仮想面における反射波の入射角度につき、受波面が向けられた向きに沿う方向から複数の超音波センサの配列された方向(以下、配列方向と記載する)に反れる角度を、角度θと記載する場合がある。
【0010】
本発明に係る対象物位置検出センサの更なる特徴構成は、前記角度θの検出範囲が、前記受波面が向けられた向きを基準として角度θmaxから角度-θmaxに設定されている場合に、前記角度θmax、前記反射波の波長λ、及び前記差分αの関係が、下記式(2)を満たす点にある。
λ≧2・α・sin(θmax) 式(2)
【0011】
組間位相差の絶対値が180°を超えると、差分αと組間位相差とのみに基づいて角度θを求めることができないが、上記構成によれば、組間位相差の絶対値が180°以下になるため、差分αと組間位相差とのみに基づいて角度θを求めることができる。
【0012】
本発明に係る対象物位置検出センサの更なる特徴構成は、前記センサ群は、第一の超音波センサ、第二の超音波センサ、及び第三の超音波センサからなり、前記第一の超音波センサと前記第二の超音波センサとが前記ある一組を構成し、前記第二の超音波センサと前記第三の超音波センサとが前記他の一組を構成する点にある。
【0013】
上記構成によれば、第一の超音波センサ、第二の超音波センサ、及び第三の超音波センサの高々3つのセンサのみで、正確に角度θを求めることができる。
【0014】
本発明に係る対象物位置検出センサの更なる特徴構成は、前記センサ群における前記複数の超音波センサのそれぞれの前記受波面の重心が直線上に配設されている点にある。
【0015】
上記構成のごとく超音波センサのそれぞれの受波面の重心を直線上に配設することで、角度θを求める場合の精度が向上する。
【0016】
本発明に係る対象物位置検出センサの更なる特徴構成は、前記センサ群として、第一方向に沿い前記3つ以上の超音波センサが配設された第一センサ群と、前記第一方向に交差する第二方向に沿い前記3つ以上の超音波センサが配設された第二センサ群と、を含み、
前記検出部は、前記第一方向における前記対象物の位置と、前記第二方向における前記対象物の位置とを検出する点にある。
【0017】
上記構成によれば、対象物からの反射波につき、受波面が向けられた向きに沿う方向と、第一方向とに沿う仮想面における第一センサ群の超音波センサへの入射角度を、対象物の位置として検出することができる。また、対象物からの反射波につき、受波面が向けられた向きに沿う方向と、第二方向とに沿う仮想面における第二センサ群の超音波センサへの入射角度を、対象物の位置として検出することができる。これにより、第一方向と第二方向とにおける対象物の位置を検出できる。
【発明の効果】
【0018】
対象物の検出位置精度が高い対象物位置検出センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】センサ本体における超音波センサの配列を示す図
【
図3】第一センサ群における反射波の受信と障害物Tの位置検出を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図3に基づいて、本発明の実施形態に係る対象物位置検出センサついて説明する。
【0021】
〔検出器の構成について〕
図1には、対象物位置検出センサの一例として障害物T(対象物の一例)の検出器1の全体構成を示している。検出器1は、一例として、車両(図示せず)の障害物検出器として用いられる。検出器1は、超音波センサ11,12,13,14,15(複数の超音波センサの一例、以下、超音波センサ11~15と記載する)が配設されたセンサ本体2と、制御部8(検出部の一例)や、所定の電気信号を発信および受信する送受波回路(図示せず)を有する制御本体9とを備えている。超音波センサ11~15のうちのいずれか一つを意味する場合、単に、センサと記載する。
【0022】
超音波センサ11~15は、超音波振動子(図示せず)と、超音波振動子が発信した超音波Wを外部へ発信し、外部の超音波(例えば、超音波Wの反射波R)を受信する振動板(図示せず)の送受波面S(受波面の一例)などを備えている。超音波センサ11~15は、制御本体9から送信される電気信号に対応する所定の波長λ(所定の周波数)の超音波Wを外部に発信し、受信した反射波Rなどに対応する電気信号を制御本体9へ送信する。送受波面Sは、本実施形態では円形状である。本実施形態の超音波センサ11~15はそれぞれ同一規格のものである。
【0023】
超音波センサ11~15は、一例として、円筒状の本体を有する。当該本体の直径は、一例として、12mmである。
【0024】
超音波センサ11~15が発信する超音波Wの所定の周波数は、一例として58kHzである。この場合、音速を340m/secと仮定すると、超音波Wの波長λは、約5.86mmである。以下では、超音波センサ11~15が発信する超音波Wの波長λを、単に波長λと記載する。
【0025】
センサ本体2は、超音波センサ11~15が基板などに固定されたユニットである。センサ本体2では、超音波センサ11~15が、それぞれの送受波面Sが同一の向きになるように配設されている。センサ本体2では、超音波センサ11~15が、それぞれ所定の間隔を隔てて配設されている。
【0026】
図2には、センサ本体2の超音波センサ11~15を、送受波面Sが向く側から見た平面図であり、センサ本体2における超音波センサ11~15の配列を示している。本実施形態では、超音波センサ11~15は、防振ゴムなどの制振材10で被覆された状態で基板などに固定されている。なお、制振材10は、必須の部材では無い。
【0027】
センサ本体2には、超音波センサ11,12,13が第一方向に沿い配設されている。第一方向は、本実施形態では一例として、水平方向である。以下では、超音波センサ11,12,13(それぞれ、第一の超音波センサ、第二の超音波センサ、及び第三の超音波センサの一例)の群を第一センサ群G1と称する。
【0028】
また、センサ本体2には、超音波センサ14,12,15(それぞれ、第一の超音波センサ、第二の超音波センサ、及び第三の超音波センサの他の一例)が第二方向に沿い配設されている。第二方向は、本実施形態では一例として、垂直方向である。以下では、超音波センサ14,12,15の群を第二センサ群G2と称する。
【0029】
図2中、仮想線Aは、第一方向に沿う直線である。超音波センサ11,12,13のそれぞれの送受波面Sの中心(重心)は、仮想線Aと重複している。超音波センサ11,12間の距離(第一のセンサ間距離)は距離mに設定されており、超音波センサ12,13間の距離(第二のセンサ間距離)は距離nに設定されている。距離mは、距離nよりも大きく、その差は差分αである。距離mは例えば23.6mmであり、距離nは例えば21.0mmである。この場合、差分αは2.6mmである。
【0030】
図2中、仮想線Bは、第二方向に沿う直線である。超音波センサ14,12,15のそれぞれの送受波面Sの中心(重心)は、仮想線Bと重複している。超音波センサ14,12間の距離は距離jに設定されており、超音波センサ12,15間の距離は距離kに設定されている。本実施形態では距離jは距離mと等しい。また、本実施形態では距離kは距離nと等しい。
【0031】
センサ本体2は、超音波センサ11~15の少なくとも一つのセンサ(本実施形態では一例として超音波センサ12)が発信した超音波Wが障害物T(対象物の一例)に反射して生じた反射波Rを、超音波センサ11~15の全てのセンサで受信する。超音波センサ11~15は、反射波Rを受信すると、反射波Rに対応する電気信号を制御本体9(
図1参照)に送信する。本実施形態では、一例として超音波センサ12が発信した超音波Wの反射波Rを、超音波センサ11~15の全てのセンサで受信するように構成されている。
【0032】
超音波センサ11~15は、それぞれ所定の間隔を隔てて配設されているため、障害物Tから超音波センサ11~15のそれぞれまでの距離は、それぞれ異なる。そのため、超音波センサ11~15はそれぞれ、反射波Rを異なるタイミングで受信する。具体的には、障害物Tから近いセンサほど、早いタイミングで反射波Rを受信する。一方、障害物Tから遠いセンサほど、遅いタイミングで反射波Rを受信する。そのため、超音波センサ11~15が受信する反射波Rには、障害物Tと超音波センサ11~15との距離に対応して位相ズレが生じる。
【0033】
制御本体9は、制御部8の指令に基づいて、送受波回路により、センサ(一例として、超音波センサ12)から所定の超音波Wを発信させるための電気信号を生成してセンサに送信する。制御本体9は、反射波Rの受信によりセンサから出力された電気信号を送受波回路に入力し、制御部8により当該電気信号から所定の情報を取得する。制御部8は、超音波センサ11~15が受信した反射波Rの位相ズレを求め、これら位相ズレに基づいて、障害物Tの位置を検出する。
【0034】
〔第一センサ群における検出について〕
図3に基づいて、第一センサ群G1における反射波Rの受信と、障害物Tの位置検出について説明する。
図3には、超音波センサ11,12,13、仮想線A、超音波センサ11,12,13の送受波面Sが向く方向に沿う、送受波面Sの軸心P、超音波センサ11,12,13のそれぞれに入射する所定の波長の反射波Rが伝搬する軌跡である伝搬路r、及び障害物Tを図示している。この説明では、説明の簡便のため、障害物Tの少なくとも一部が、仮想線Aと軸心Pとを含む平面と重複する場合を図示して説明する。障害物Tが仮想線Aと軸心Pとを含む平面と重複しない場合は、障害物T、伝搬路r、及び伝搬路rでセンサに入射する超音波Wの反射波Rのそれぞれについては、これらを当該平面に正射影した場合におけるそれぞれの射影像に基づけばよい。
【0035】
図3中、角度θは、伝搬路rと軸心Pとの交差角度である。すなわち、障害物Tは、第一センサ群G1から見て、軸心Pから仮想線Aに沿う方向に角度θだけ反れた位置に存在している。
【0036】
図3中、超音波センサ11と超音波センサ12との組(ある一組の一例)につき、障害物Tに対する超音波センサ11の距離と、障害物Tに対する超音波センサ12の距離との差を距離差d12と定義する。なお、距離差d12は、m・sinθに等しい。
【0037】
図3中、超音波センサ12と超音波センサ13との組(他の一組の一例)につき、障害物Tに対する超音波センサ12の距離と、障害物Tに対する超音波センサ13の距離との差を距離差d23と定義する。なお、距離差d23は、n・sinθに等しい。
【0038】
距離差d12はm・sinθに等しく、距離差d23はn・sinθに等しいため、距離差d12と距離差d23との差を相対距離差と定義した場合、距離mと距離nの差は差分αなので、相対距離差は、α・sinθに等しい。
【0039】
検出器1では、検出器1における角度θの検出範囲が角度θmaxから角度-θmaxに設定されている場合に、波長λ、角度θmax、及び差分αの関係が、下記式(1)を満たすように設定されている。
λ≧2・α・sin(θmax) 式(1)
【0040】
つまり、検出器1では、検出器1における角度θの検出範囲において、相対距離差の絶対値の最大値が1/2λ以下になるように設定されている。
【0041】
本実施形態における検出器1では、一例として、角度θmaxを90°に設定している。すなわち、検出器1における角度θの検出範囲を90°から-90°に設定しており、sin(θmax)の値は、1である。上述のごとく、本実施形態における差分αは2.6mmであり、波長λは約5.86mmであるから、差分αは1/2λ以下、すなわち波長λは差分αの二倍以上となり、上記式(1)を満たしている。
【0042】
超音波センサ11に受信された反射波Rの位相と超音波センサ12に受信された反射波Rの位相との位相差(ただし、-90°から90°)を以下では第一位相差と定義する。また、超音波センサ12に受信された反射波Rの位相と超音波センサ13に受信された反射波Rの位相との位相差(ただし、-90°から90°)を以下では第二位相差と定義する。さらに、第一位相差と第二位相差との差を組間位相差と定義する。この場合、上述のごとく、検出器1では相対距離差の絶対値の最大値が1/2λ以下になるように設定されているため、組間位相差を求めると、-180°から180°以下(組間位相差の絶対値が180°以下)になる。
【0043】
組間位相差が求まると、相対距離差は、λ・(組間位相差/360°)で得られる。相対距離差はα・sinθに等しく、差分αは既知であるため、差分αと相対距離差とにより角度θを求めることができる。
【0044】
制御部8は、既知の差分αと、超音波センサ11,12,13がそれぞれ受信した反射波Rの位相から相対距離差を求め、差分αと相対距離差とにより、障害物Tの位置として、軸心Pと仮想線Aとに重複する平面上において第一センサ群G1から見て、障害物Tが軸心Pから仮想線Aに沿う方向に反れた角度θを求める。
【0045】
〔第二センサ群における検出について〕
第二センサ群G2における検出は、第一センサ群G1における検出と同様に行う。第二センサ群G2では、第一センサ群G1における超音波センサ11,12,13を第二センサ群G2における超音波センサ14,12,15に置き換えた場合と同様である。
【0046】
制御部8は、第二センサ群G2における既知の差分αと、超音波センサ14,12,15がそれぞれ受信した反射波Rの位相から第二センサ群G2における相対距離差を求め、第一センサ群G1の場合と同様に、障害物Tの位置として、軸心Pと仮想線Bとに重複する平面上において第二センサ群G2から見て、障害物Tが軸心Pから仮想線Bに沿う方向に反れた角度を求める。
【0047】
このようにして、制御部8は、軸心P、仮想線A、及び仮想線Bの三軸で定義される空間での障害物Tの位置を求める。
【0048】
以上のようにして、検出位置精度が高い対象物位置検出センサを提供することができる。すなわち、検出器1は、超音波センサの直径が大きくてセンサ間距離を小さくすることができない場合にも、組間位相差を利用して角度θを検出可能であり、超音波センサを近接して配設したのと同じ効果を得ることができる。また、検出器1は、位相差により角度θを検出するため、例えば特許文献1に記載されるような、包絡線を用いて障害物Tの位置を検出する装置よりも、高い検出精度で障害物Tの位置を検出することができる。
【0049】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、センサ本体2には超音波センサ11~15が配設されている場合を例示して説明した。しかし、センサ本体2は、少なくとも超音波センサ11,12,13(第一センサ群G1)、もしくは超音波センサ14,12,15(第二センサ群G2)を備えていればよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、第一センサ群G1は超音波センサ11,12,13の群である場合を例示して説明したが、第一センサ群G1として、4つ以上のセンサを含めてもよい。第二センサ群G2についても同様である。
【0051】
(3)上記実施形態では、第一センサ群G1や第二センサ群G2のセンサの送受波面Sの中心(重心)が、仮想線Aや仮想線Bと重複している場合を説明した。しかし、第一センサ群G1や第二センサ群G2のセンサの送受波面Sが少なくとも仮想線Aや仮想線Bと重複して直線状に配設されていれば足りる。
【0052】
(4)上記実施形態では、特に角度θmaxが90°である場合を例示して説明したが、角度θmaxは60°、45°、30°、15°など、0°を超え、90°以下の値を取り得る。
【0053】
(5)上記実施形態では、距離mは、距離nよりも大きく、距離jは距離mと等しく、また、距離kは距離nと等しい場合を説明した。しかし、距離j,kは、それぞれ距離m,nと等しい場合に限られない。距離jが距離kよりも大きければ良い。
【0054】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、対象物位置検出センサに適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 :検出器(対象物位置検出センサ)
2 :センサ本体
8 :制御部(検出部)
11 :超音波センサ
12 :超音波センサ
13 :超音波センサ
14 :超音波センサ
15 :超音波センサ
A :仮想線(直線)
B :仮想線(直線)
G1 :第一センサ群
G2 :第二センサ群
P :軸心(受波面が向けられた向き)
R :反射波(超音波)
S :送受波面(受波面)
T :障害物(対象物)
W :超音波
j :距離(センサ間距離)
k :距離(センサ間距離)
m :距離(センサ間距離)
n :距離(センサ間距離)
α :差分
θ :角度
θmax :角度