(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】篩い分け装置の運転監視システム
(51)【国際特許分類】
B07B 1/38 20060101AFI20231017BHJP
B07B 1/42 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B07B1/38 A
B07B1/42 F
(21)【出願番号】P 2019076424
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田川 澄夫
(72)【発明者】
【氏名】信藤 慎平
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0341629(US,A1)
【文献】特開2008-161757(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0000384(US,A1)
【文献】特開2004-132769(JP,A)
【文献】特開昭54-146070(JP,A)
【文献】特開昭59-004475(JP,A)
【文献】中国実用新案第205463146(CN,U)
【文献】特開昭61-288126(JP,A)
【文献】特開2005-152684(JP,A)
【文献】特開2001-104885(JP,A)
【文献】特開昭54-154059(JP,A)
【文献】特開昭63-167222(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/38
B07B 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転揺動する
吊り下げ式の篩い分け装置の篩枠体に設けられるとともに、該篩枠体の動作状態を検知可能な動作状態検知手段と、
前記動作状態検知手段から送信される計測データに基づいて、前記篩い分け装置の運転状態を監視可能な運転監視手段と、を備え、
前記運転監視手段は、前記計測データを演算処理する計測データ演算処理部と、該計測データ演算処理部によって得られた演算処理データに基づいて、前記篩枠体の動作状態を表示可能な動作状態表示部と、を有
し、
前記動作状態検知手段は、少なくとも前記篩枠体の円運動における遠心方向の加速度を検知可能な加速度検知部と、少なくとも前記篩枠体の角速度を検知可能な角速度検知部とを有し、
前記運転監視手段の動作状態表示部は、前記演算処理データに基づいて、前記篩枠体の遠心方向の変位量と、前記篩枠体の傾斜状況とを表示可能である
ことを特徴とする篩い分け装置の運転監視システム。
【請求項2】
前記動作状態表示部は、前記篩枠体の傾斜状況をX-Y-Z軸に対する傾斜角度で表示可能である
ことを特徴とする請求項1に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【請求項3】
さらに、前記運転監視手段は、前記篩枠体の遠心方向の変位量と前記篩枠体の傾斜状況とのうち、少なくとも一方に対し、所定の閾値と比較して前記篩枠体の動作状態の異常を判定する状態判定部を有する
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、篩い分け装置の運転状態を判別可能な、篩い分け装置の運転監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粉粒体に対して篩い分け処理を行う篩い分け装置として、特許文献1に記載されているようなプランシフターがある。当該プランシフターは篩枠体を備えていて、当該篩枠体は複数のロッドによって揺動可能に吊り下げられて建屋内に設置される。
【0003】
そしてプランシフターの運転においては、篩枠体の略中心部に設けられた偏心した軸が回転することにより、篩枠体が水平方向に回転揺動し、篩い分け処理が行われるように構成されている。またプランシフターの設置時には、篩枠体の回転揺動による回転径が適正範囲内となるように、バランスウェイトの調整等が行われる。
【0004】
そして、篩枠体の回転径が適正範囲に収まっているか否かを確認するため、従来、
図6(a)に示されるように、篩枠体5の下部の角部にフェルトペンや鉛筆などの筆記具を取り付け、その下方に記録用紙をセットすることで回転円を記録し、定規等によりその回転円の径を測定していた。さらに、回転円の記録結果は、
図6(b)に示されるような回転速度に対する適正な円の大きさを示したグラフと照らし合せることで、篩枠体5の回転径が適正範囲内に収まっているか否かの確認を行うといった、極めて原始的な手法を採用していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような確認方法では、プランシフターの運転中に粉粒体の流量や負荷が変化した場合、さらに、プランシフターの構成部材の異常に基づく、篩枠体の回転径の異常変動が発生していても、即座に気づくことができないといった問題があった。その結果、篩枠体の回転径が適正範囲からはずれた状態でプランシフターの運転を続けたことにより、篩の処理能力の低下や、部材の破損、過負荷にともなう部材の急速な劣化といった問題が生じていた。
【0007】
また、プランシフターの運転を開始してから篩枠体の回転揺動が安定するまで、20分以上を要する上に、回転径が適正範囲内で安定しているか否かは、用紙に記録された回転円の目視確認に頼っていた。このため、他の設備との調整が長引くといった問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、運転中のプランシフターなどの篩い分け装置の異常を即時に検知することが可能であるとともに、当該篩い分け装置の運転状態を常時監視することのできる、篩い分け装置の運転監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る発明は、回転揺動する篩い分け装置の篩枠体に設けられるとともに、該篩枠体の動作状態を検知可能な動作状態検知手段と、前記動作状態検知手段から送信される計測データに基づいて、前記篩い分け装置の運転状態を監視可能な運転監視手段と、を備え、前記運転監視手段は、前記計測データを演算処理する計測データ演算処理部と、該計測データ演算処理部によって得られた演算処理データに基づいて、前記篩枠体の動作状態を表示可能な動作状態表示部と、を有することを特徴とする篩い分け装置の運転監視システム。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、前記動作状態検知手段は、少なくとも前記篩枠体の円運動における遠心方向の加速度を検知可能な加速度検知部を有することを特徴とする請求項1に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、前記運転監視手段の動作状態表示部は、前記演算処理データに基づいて、前記篩枠体の遠心方向の変位量を表示可能であることを特徴とする請求項2に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【0012】
本願請求項4に係る発明は、前記動作状態検知手段は、少なくとも前記篩枠体の角速度を検知可能な角速度検知部を有することを特徴とする請求項1に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【0013】
本願請求項5に係る発明は、前記運転監視手段の動作状態表示部は、前記演算処理データに基づいて、前記篩枠体の傾斜状況を表示可能であることを特徴とする請求項4に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【0014】
本願請求項6に係る発明は、前記動作状態検知手段は、前記篩枠体の円運動における遠心方向の加速度を検知可能な加速度検知部と、前記篩枠体の角速度を検知可能な角速度検知部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【0015】
本願請求項7に係る発明は、前記運転監視手段の動作状態表示部は、前記演算処理データに基づいて、前記篩枠体の遠心方向の変位量と、前記篩枠体の傾斜状況を表示可能であることを特徴とする請求項6に記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【0016】
本願請求項8に係る発明は、さらに、前記運転監視手段は、前記篩枠体の遠心方向の変位量と前記篩枠体の傾斜状況とのうち、少なくとも一方に対し、所定の閾値と比較して前記篩枠体の動作状態の異常を判定する状態判定部を有することを特徴とする請求項2、4、6のいずれかに記載の篩い分け装置の運転監視システム。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、回転揺動する篩い分け装置の篩枠体5の動作状態を検知可能な動作状態検知手段(動作状態検知ユニット7)が篩枠体5に設けられ、該動作状態検知手段(動作状態検知ユニット7)から計測データが運転監視手段(運転監視装置9)に送信される。そして、運転監視手段(運転監視装置9)の計測データ演算処理部として機能する制御部911では、受信した篩枠体5の計測データに基づく篩枠体5の動作状態等に関する表示内容が、動作状態表示部として機能するタッチパネル91を有する表示画面に表示されるように構成されている。このような本発明の特徴的な構成により、篩い分け装置の運転開始から運転中を含め、常に運転状態に異常がないか運転監視装置9によって監視することが可能となり、篩の処理能力の低下や、部材の破損、過負荷にともなう部材の劣化などを未然に防ぐことが可能となる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、さらに、動作状態検知手段(動作状態検知ユニット7)が、篩枠体5の円運動における遠心方向の加速度を検知可能な加速度検知部(3軸加速度センサ71)を有しているので、篩枠体5の円運動の状態を精度良く検知することが可能となっている。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、さらに、運転監視手段(運転監視装置9)に、動作状態表示部(タッチパネル91を有する表示画面)が設けられ、篩枠体5の遠心方向の変位量が表示されるので、篩枠体5の動作状態を容易に把握することが可能となっている。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、さらに、動作状態検知手段(動作状態検知ユニット7)が、篩枠体5の角速度を検知可能な角速度検知部(3軸角速度センサ72)を有しているので、篩枠体5の傾斜状態を精度良く検知することが可能となっている。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、さらに、運転監視手段(運転監視装置9)の動作状態表示部(タッチパネル91を有する表示画面)には、篩枠体5の傾斜状況が表示されるので、篩枠体5の傾斜状況を容易に把握することが可能となっている。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、さらに、動作状態検知手段(動作状態検知ユニット7)が、篩枠体5の円運動における遠心方向の加速度を検知可能な加速度検知部(3軸加速度センサ71)と、篩枠体5の角速度を検知可能な角速度検知部(3軸角速度センサ72)とを有しているので、篩枠体5の円運動の状態及び篩枠体5の傾斜状態を精度良く検知することが可能となっている。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、さらに、運転監視手段(運転監視装置9)の動作状態表示部(タッチパネル91を有する表示画面)は、制御部911で処理された演算処理データに基づいて、篩枠体5の遠心方向の変位量と、篩枠体5の傾斜状況を表示可能に構成されているので、一目して篩枠体5の運転状態を把握することが可能となっている。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、さらに、運転監視手段(運転監視装置9)は、篩枠体5の遠心方向の変位量と篩枠体5の傾斜状況とのうち、少なくとも一方に対し、所定の閾値と比較して篩枠体5の動作状態の異常を判定する状態判定部(制御部911)を有しているので、篩い分け装置に生じた異常をタイムリーに把握して、運転停止するなどの処置が可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態において、(a)は慣性センサユニットを取り付けたプランシフターの斜視図であり、(b)は運転監視装置の斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態において、(a)は慣性センサユニットの装置ブロック図であり、(b)は運転監視装置の装置ブロック図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態における、運転監視装置の表示態様の一例を示したモニタの正面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態における、運転監視装置の表示態様の一例を示したモニタの正面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態における、慣性センサユニットの装置ブロック図である。
【
図6】プランシフターにおける回転揺動を記録する、(a)は従来型の回転径記録装置の斜視図であり、(b)は適正揺動範囲の確認シートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明のプランシフターの運転監視システムにおける実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
[第1の実施形態]
以下、本発明に係る第1の実施形態について、
図1~4を参照しつつ説明する。
図1(a)の斜視図に示されるように、本実施形態の篩い分け装置であるプランシフター1は、略立方体形状の篩枠体5が、4本のロッド3によって建屋内の梁などから、揺動可能に吊り下げて設けられ、当該篩枠体5内の略中央には、アンバランスウェイト52を備えた軸51が、鉛直方向を回転軸として設けられている。
【0028】
また、篩枠体5内の下部には、図示されるようにモータ54が固定され、モータ54下部の回転軸に軸着されたモータプーリ55と、軸51の下部に軸着された駆動プーリ53とが、ベルト56により連結されている。そして、モータ54の駆動にともない、ベルト56を介してモータ54からの動力が伝達された軸51が回転を行うことで、篩枠体5は水平面(
図1におけるX-Y面)における遠心方向に回転揺動される仕組みとなっている。
【0029】
(動作状態検知ユニット)
さらに、本実施形態の篩枠体5は、その外側面下部の角部近傍に、図示される態様で動作状態検知手段として動作状態検知ユニット7が設けられている。当該動作状態検知ユニット7は、センサ70を備えており、当該センサ70は、加速度検知部として3軸加速度センサ71と、角速度検知部として3軸角速度センサ72とが設けられている。これにより、篩枠体5の静止状態における傾斜状況や、篩枠体5の動作状態における傾斜状況、回転数、遠心方向の変位量などがCPU711等によって演算出力されるように構成されている。
【0030】
図2(a)には、上記した動作状態検知ユニット7のブロック図が示されている。図示されるように、本実施形態の動作状態検知ユニット7は、センサ70、CPU711、リアルタイムクロック712、電源回路713、バッテリ714、外部電源コネクタ715、無線通信モジュール731、有線通信I/F732、有線通信コネクタ733などから構成されており、上記センサ70は、3軸加速度センサ71と3軸角速度センサ72とから構成されている。
【0031】
3軸加速度センサ71及び3軸角速度センサ72によって計測された計測データは、計測データ演算処理部として機能するCPU711によってリアルタイムクロック712からの情報とあわせて演算処理が行われる。そして、演算処理によって得られた演算処理データは、無線通信モジュール731を介して、Bluetooth(登録商標)やWi‐Fi(登録商標)などの汎用の無線通信手段により、運転監視手段として機能する運転監視装置9に対してリアルタイムで送信されるように構成されている。このような構成によれば、通信線の設置の手間が省かれ、さらに、任意の場所でプランシフター1の運転状態をモニタリングすることが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態の動作状態検知ユニット7は、
図2(a)に示されるように、無線通信モジュール731のほかに、有線通信I/F732も備えられている。したがって、有線通信コネクタ733を介して有線通信により、動作状態検知ユニット7からの計測データを運転監視装置9に送信することも可能である。
【0033】
また、本実施形態における動作状態検知ユニット7の給電は、電源回路713に接続されているバッテリ714により行われている。このような構成により、電源ラインの設置の手間が省けるとともに、設置場所周辺の電源の有無を考慮することなく、動作状態検知ユニット7を篩枠体5に設置することが可能である。
【0034】
さらに、本実施形態における動作状態検知ユニット7は、外部電源からの給電が可能な外部電源コネクタ715を併せて備えているため、バッテリ714と外部電源のいずれかの給電方法を選択して使用することが可能となっている。
【0035】
(運転監視装置)
続いて、
図1(b)には、本実施形態における運転監視装置9の全体斜視図が示され、
図2(b)には、上記運転監視装置9のブロック図が示されている。各図に示されるように、本実施形態の運転監視装置9は、タッチパネル91を介して動作状態検知ユニット7から送信された演算処理データに基づくプランシフター1の運転状態を監視可能に構成されている。
【0036】
また、
図2(b)に示されるように、本実施形態の運転監視装置9は、タッチパネル91、制御部911、無線通信モジュール931などから構成されており、前述した動作状態検知ユニット7から送信された篩枠体5の動作状態に基づく演算処理データが、無線通信モジュール931を介して運転監視装置9の制御部911に送られるように構成されている。
【0037】
そして、制御部911では、受信した篩枠体5の動作状態に基づく演算処理データに対して解析処理が行われ、篩枠体5の動作状態等に関する表示内容が、動作状態表示部として機能するタッチパネル91を有する表示画面に表示されるように構成されている。なお、運転監視装置9に図示しないバッテリを内蔵させて、プランシフター1の運転管理者等が携帯できるように構成することも可能であるし、プランシフター1の設置場所近傍の任意の場所や、設備の集中管理室などに取り付けることも可能である。
【0038】
また、
図2(b)に示されるように、本実施形態における運転監視装置9は、動作状態検知ユニット7と同様に有線通信I/F932が設けられている。したがって、動作状態検知ユニット7の有線通信I/F732と、運転監視装置9の有線通信I/F932とを有線接続するようにして、演算処理データの送受信を行うことも可能である。このような構成によれば、電波の受信環境や運転監視装置9の設置場所に影響を受けることなく、確実に演算処理データの送受信を行うことが可能である。
【0039】
また、本実施形態における運転監視装置9は、
図1(b)及び
図2(b)に示されるような専用の無線通信端末以外にも、施設や設備の運用管理に使用されるPCや、タブレット端末、スマートフォンなどの汎用の通信機器を利用し、運転監視アプリケーションをインストールするなどして運転監視装置9とすることも可能である。
【0040】
(プランシフターの運転監視方法)
続いて、本実施形態におけるプランシフター1の運転監視方法について説明する。本実施形態では、
図1(a)の斜視図に示されるように、篩枠体5に予め動作状態検知ユニット7が設置され、プランシフター1が運転される前に、篩枠体5を4本のロッド3で吊り下げながら当該篩枠体5が略水平に設置される。
【0041】
篩枠体5が略水平に設置され、運転を開始すると、動作状態検知ユニット7から演算処理データが運転監視装置9に送信され、当該運転監視装置9によってプランシフター1の運転状態が監視される。
【0042】
図3には、運転監視装置9における表示態様の一例が示されている。詳細に説明すると、モニタ画面には3つのリサージュ図が表示され、
図1(a)で示したX-Y-Z座標における篩枠体5の変位量が表示されている。すなわち、左端のX-Yリサージュ図には、現在の篩枠体5の円運動の状況が太い実線によって表示されており、併せて、その変位量がX-Yリサージュ図の下方に、[X=-38.8~38.4mm]、[Y=-38.2~38.1mm]、[Z=-0.47~0.47mm]と、表示されている。そして、これらのリサージュ図及び変位量の表示は、リアルタイムで更新表示されるように構成されている。
【0043】
また、上記X-Yリサージュ図には、図示されるように破線で示された限界変位量が表示され、さらに、X-Yリサージュ図の右斜め下方には、回転数[N=220rpm]における限界変位量として、[X=-43.0~43.0mm]、[Y=-43.0~43.0mm]が表示されている。なお、限界変位量は、篩枠体5の回転数に応じて変わるため、現在の回転数がリアルタイムに表示されるとともに、限界変位量についても常に更新表示されるように構成されている。
【0044】
さらに、X-Yリサージュ図の右側には、Y-Z座標における篩枠体5の変位量を示したY-Zリサージュ図と、X-Z座標における篩枠体5の変位量を示したX-Zリサージュ図とが表示され、リアルタイムで篩枠体5の上下方向(Z軸)の変位量を把握可能に構成されている。なお、
図3に示される例では、Z軸方向に大きな変位がないことがリサージュ図に実線で表示され、さらにその下方にZ軸と、X軸方向及びY軸方向の変位が90度の角度であることを示す[θxz=90.0°]、[θyz=90.0°]が表示されている。このような表示態様によって容易に篩枠体5の動作状態を判断することが可能となっている。
【0045】
また、
図3に示されるように、運転監視装置9のタッチパネル91の表示画面上部には、プランシフター1の運転状態が表示される表示領域が設けられていて、篩枠体5の動作状態が適正範囲内に収まっていることを示す「安定運転中」といった表示が行われるように構成されている。
【0046】
また、本実施形態の運転監視装置9は、篩枠体5の変位量と、閾値となる限界変位量とが比較され、検知された変位量が適正範囲外と判定された場合には、運転状態の表示を「安定運転中」から「異常運転検知」に変更して警告を行うように構成されている。なお、このとき、運転監視装置9にスピーカーを設けて警報音が鳴るようにしてもよい。このように構成することで、より迅速に運転状態の異変を把握することができる。
【0047】
続いて、
図4には篩枠体5の姿勢状体を表示した運転監視装置9における表示態様が示されている。すなわち、モニタ画面の左側には立体形状の篩枠体5を模した画像が表示されており、動作状態検知ユニット7の計測データに基づく篩枠体5の傾斜状況をリアルタイムで更新表示可能に構成されている。
【0048】
加えて、本実施形態のモニタ画面の右側には、
図4に示されるように、3次元ベクトル図を模した画像を表示する表示領域が設けられており、動作状態検知ユニット7の計測データに基づくX-Y-Z軸に対する傾斜状況を、3次元ベクトル図によりリアルタイムで更新表示している。さらに、当該3次元ベクトル図の下方には、正常状態からの傾斜角度を表示可能に構成しており、
図4に示される例では、[X:-1.0°]、[Y:-1.0°]として、現在の篩枠体5の傾斜角度が表示されている。
【0049】
なお、
図4に示されるモニタ画面においても、
図3の表示態様と同様に、「安定運転中」などの状態表示が行われるように構成されており、篩枠体5の傾斜角度が許容閾値を超えた場合は「異常運転検知」などの状態表示に変更されるよう構成されている。また併せて、警報音による報知を行うようにすることも可能である。
【0050】
以上、本発明の第1の実施形態について説明したが、上記したような特徴的な構造により、プランシフター1の運転開始から終了までの間、リアルタイムで篩枠体5の運転状態が把握可能に構成されているので、大きな故障や事故などを未然に防ぐことが可能となるとともに、適切なタイミングで機械、器具の調整や交換が可能となるので、プランシフター1の維持コストを大幅に低減することも可能となっている。
【0051】
また、前述した従来技術では、篩枠体5の下部の角部に測定器具を取り付けるスペースが必要であり、さらに当該箇所でなければ篩枠体5の動作状態を確認できなかったが、本発明では動作状態検知ユニット7を篩枠体5のどこに取り付けても当該篩枠体5の動作状態を検知することが可能であり、取り付け箇所に制限を受けることもない。
【0052】
また、前述した従来技術では、篩枠体5の下部の角部に筆記具を取り付けていたため、篩枠体5が運転中に傾いてしまった場合は、記録用紙に回転円を記録できない事態が発生していたが、本発明は筆記具等を一切使用せずに篩枠体5の動作状態が検知されるので、従来に比べて確実に且つ精度良く動作状態を監視することが可能となる。
【0053】
[第2の実施形態]
以下、本発明に係る第2の実施形態について、
図5に示される動作状態検知ユニット7の装置ブロック図に基づいて説明する。なお、前述の第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0054】
前述の第1の実施形態では、動作状態検知ユニット7の電源としてバッテリ714を配置していたが、二次電池は充電の必要があるため、適当なタイミングで別の充電済みバッテリ714と交換するか、バッテリ714にアダプタなどを接続し充電を行わなければ継続して動作状態検知ユニット7を使用できない。したがって、バッテリ714の交換時もしくは充電中は、プランシフター1を運転できないといった問題がある。
【0055】
そこで、本第2の実施形態では、
図5に示されるようにバッテリ714を、振動発電器751とキャパシタ752に代えて適用したものである。このような構成によれば、振動発電器751が篩枠体5の回転動作により発電を行い、発電した電力を電源回路713を介してキャパシタ752に蓄電させることが可能となっている。そして、キャパシタ752に蓄電された電力は、電源回路713を介して動作状態検知ユニット7の電源として給電される。したがって、バッテリ714への充電作業によって、プランシフター1の運転が制限を受けるようなことを防ぐとともに、常にプランシフター1の運転状態を監視することが可能となる。
【0056】
[その他の実施形態]
本発明のプランシフター1の運転監視システムは、前述の各実施形態に必ずしも限定されるものではなく、例えば以下のようなものも含まれる。
【0057】
例えば、前述の各実施形態では、動作状態検知ユニット7を篩枠体5に予め設置するとともに、地面に対して水平に設けるように構成したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、篩枠体5に後付けしたり、適宜交換可能に設けてもよい。また、その際、必ずしも地面に対して水平に取り付ける必要はなく、例えば、動作状態検知ユニット7にリセットスイッチ等を設けて、設置が完了した篩枠体5に動作状態検知ユニット7を設置した後、基準となる初期の篩枠体5の姿勢を初期位置として設定するように構成することが可能である。このような機能を備えることで、動作状態検知ユニット7を設置する手間を大幅に削減することが可能となる。
【0058】
また、動作状態検知ユニット7を篩枠体5に直接設置するのではなく、取付治具などの部材を介して設置することも可能である。このような構成によれば、篩枠体5から離間した位置に設けられた動作状態検知ユニット7による計測が可能となり、プランシフター1の運転状態における、軸51やモータ54が発する振動による影響が低減され、さらに、篩枠体5の変位量をより精度よく把握することが可能となる。
【0059】
また、動作状態検知ユニット7内に設けられた3軸加速度センサ71と、3軸角速度センサ72に加えて、1軸加速度センサを篩枠体5の四隅に、センサの感度軸が鉛直方向となるようにそれぞれ設けてもよい。このような構成によれば、篩枠体5の縦軸方向の変位量をより詳細に把握することが可能となる。なお、上記1軸加速度センサの取付け位置は篩枠体5の四隅以外にも、篩枠体5とロッド3の係止部にそれぞれ設けるようにしてもよく、これにより、4本設けられているロッド3の変位状態を個々に把握することが可能となる。
【0060】
また、上記した篩枠体5の四隅ないしロッド3の係止部にそれぞれ設けられる1軸加速度センサに代えて、3軸加速度センサ、もしくは3軸加速度センサと3軸角速度センサを併せて設けるようにしてもよく、このような構成によれば、動作状態検知ユニット7内に設けられた3軸加速度センサ71や3軸角速度センサ72が故障した場合でも、他の複数のセンサにより篩枠体5の正確な変位量を把握することが可能となる。
【0061】
また、前述の各実施形態では、動作状態検知ユニット7内に3軸加速度センサ71と3軸角速度センサ72を設けたが、回転運動の状態を検知するのみであれば、X軸方向に感度軸を有する加速度センサと、Yに軸方向に感度軸を有する加速度センサとを設けることにより、回転運動の状態を監視することも可能である。
【0062】
また、動作状態検知ユニット7の電源として、モータ54の電源から給電するようにしてもよく、このような構成によれば、バッテリ714の充電や交換、電源ラインの設置工事等を行う必要がなく、常にプランシフター1の運転状況を監視することが可能となる。
【0063】
また、動作状態検知ユニット7にスピーカーや発光装置を設けるようにしてもよく、このような構成によれば、篩枠体5の変位量が適正範囲外となった場合に、タッチパネル91を携行していない近傍の作業員に対して警報音や警告灯で異変を知らせることができ、迅速に対処することが可能となる。
【0064】
また、前述の実施形態では、運転監視装置9をプランシフター1の近傍に設けたり、運転管理者が携帯する例を示したが、必ずしもこのような構成に限定されるものではなく、例えば、運転制御室等のような場所に、複数のプランシフター1の運転監視装置9を設置して運転状況を一斉に監視できるように構成することも可能である。このような構成によれば、少ない人員で複数のプランシフター1の運転状況を監視することが可能となる。
【0065】
また、運転監視装置9における監視状況に応じて、異常時には自動的にプランシフター1の運転を停止するように構成することも可能である。
【0066】
また、前述の実施形態では、動作状態検知ユニット7を篩枠体5の下方角部に設置したが、他の箇所に設けることを必ずしも否定するものではなく、篩枠体5の任意の箇所に、動作状態検知ユニット7を設置することが可能である。ただし、プランシフター1の運転状況を把握する上で、篩枠体5の変位量を精度よく把握するためには、動作状態検知ユニット7を篩枠体5の下方角部に設置することが望ましい。
【0067】
また、上記した各実施形態においては、所謂プランシフターにおける実施の形態を実施例として説明したが、必ずしも本発明はプランシフターに限られるものではなく、篩枠体が回転揺動されるものであれば、本発明を適用することが可能である。
【0068】
また、上記した各実施形態は適宜組み合わせて本発明の篩い分け装置の運転監視システムを構成することが可能である。
【0069】
また、本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。また、上記各実施形態に記載された具体的な数値範囲、デバイスの寸法形状・機能等は本発明の課題を解決する範囲において変更が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 プランシフター
3 ロッド
5 篩枠体
7 動作状態検知ユニット
9 運転監視装置
51 軸
52 アンバランスウェイト
53 駆動プーリ
54 モータ
55 モータプーリ
56 ベルト
70 センサ
71 3軸加速度センサ
72 3軸角速度センサ
91 タッチパネル
711 CPU
712 リアルタイムクロック
713 電源回路
714 バッテリ
715 外部電源コネクタ
731 無線通信モジュール
732 有線通信I/F
733 有線通信コネクタ
751 振動発電器
752 キャパシタ
911 制御部
931 無線通信モジュール
932 有線通信I/F
933 有線通信コネクタ