(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】緩衝材用パルプチップおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/09 20060101AFI20231017BHJP
D21H 11/00 20060101ALI20231017BHJP
B02C 18/00 20060101ALI20231017BHJP
B02C 23/16 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B65D81/09
D21H11/00
B02C18/00 106B
B02C23/16
(21)【出願番号】P 2019076565
(22)【出願日】2019-04-12
【審査請求日】2021-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】中鉢 洪太
(72)【発明者】
【氏名】小林 由典
【審査官】家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-075169(JP,U)
【文献】特開2000-118571(JP,A)
【文献】特開平07-016810(JP,A)
【文献】特開2016-055618(JP,A)
【文献】実開昭58-119885(JP,U)
【文献】特開2001-098078(JP,A)
【文献】特開2000-129600(JP,A)
【文献】特開2001-234500(JP,A)
【文献】特開平07-017571(JP,A)
【文献】特開2004-262159(JP,A)
【文献】国際公開第2009/142255(WO,A1)
【文献】国際公開第2002/002643(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/09
D21H 11/00
B02C 18/00
B02C 23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緩衝材用パルプチップの製造方法であって、
ブロック状またはシート状に固められた木材由来の
パルプであるドライパルプを粉砕機によって粉砕して得られた嵩密度が70kg/m
3以上のパルプチップを前記緩衝材用パルプチップとすることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【請求項2】
請求項
1に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、前記粉砕機において、穴径が1mmから20mmの間に設定されたスクリーンメッシュを通過した大きさであることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【請求項3】
請求項
1または請求項
2に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、タッピング嵩密度を嵩密度で除した値が1.0以上1.9以下であることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【請求項4】
請求項
1から請求項
3のいずれか一項に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、前記ドライパルプは、広葉樹または針葉樹を由来としていることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【請求項5】
請求項
1から請求項
4のいずれか一項に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、再離解したカナダ標準フリーネスが400ml以上780ml以下であることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【請求項6】
請求項
1から請求項
5のいずれか一項に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、前記緩衝材用パルプチップから取り出される繊維の長さ平均繊維長が400μm以上2500μm以下であることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材用パルプチップおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発泡スチロールは、衝撃緩衝性に優れ、任意の形状に加工することが容易で、価格が安く、軽量であることから、緩衝材として広く利用されている。しかし、近年、環境問題への関心が高まるにつれて、他のプラスチック製品と同様に、使用後の処理性が問題視されている。一方、農産物等の緩衝材として使用されてきたおがくずは、バイオマス原料としての用途が増えたことから、入手困難になっている。また、古紙のシュレッダー物などが緩衝材として使用されているが、食品に接触する用途には安全面・衛生面から適していない(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、食品に接触する用途に適し、持続的に入手可能な緩衝材およびその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、木材由来のドライパルプを用いることによって、緩衝材としての有意性を見出し、特殊な加工や接着剤を用いずに前記問題点を解決するに至った。即ち、本発明は、下記の緩衝材用パルプチップに係る。
【0006】
項1:緩衝材用パルプチップであって、粉砕機によって粉砕された木材由来のドライパルプからなり、嵩密度が70kg/m3以上であることを特徴とする緩衝材用パルプチップ。
【0007】
項2:項1に記載の緩衝材用パルプチップであって、前記粉砕機において、穴径が1mmから20mmの間に設定されたスクリーンメッシュを通過した大きさであることを特徴とする緩衝材用パルプチップ。
【0008】
項3:項1または項2に記載の緩衝材用パルプチップであって、タッピング嵩密度を嵩密度で除した値が1.0以上1.9以下であることを特徴とする緩衝材用パルプチップ。
【0009】
項4:項1から項3のいずれか一項に記載の緩衝材用パルプチップであって、前記ドライパルプは、広葉樹または針葉樹を由来としていることを特徴とする緩衝材用パルプチップ。
【0010】
項5:項1から項4のいずれか一項に記載の緩衝材用パルプチップであって、再離解したカナダ標準フリーネスが400ml以上780ml以下であることを特徴とする緩衝材用パルプチップ。
【0011】
項6:緩衝材用パルプチップの製造方法であって、木材由来のドライパルプを粉砕機によって粉砕して、嵩密度が70kg/m3以上のパルプチップを得る工程を含むことを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【0012】
項7:項6に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、前記粉砕機において、穴径が1mmから20mmの間に設定されたスクリーンメッシュを通過した大きさであることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【0013】
項8:項6または項7に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、タッピング嵩密度を嵩密度で除した値が1.0以上1.9以下であることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【0014】
項9:項6から項8のいずれか一項に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、前記ドライパルプは、広葉樹または針葉樹を由来としていることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【0015】
項10:項6から項9のいずれか一項に記載の緩衝材用パルプチップの製造方法であって、再離解したカナダ標準フリーネスが400ml以上780ml以下であることを特徴とする緩衝材用パルプチップの製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の緩衝材用パルプチップおよびその製造方法では、食品に接触する用途に適し、持続的に入手可能な緩衝材を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明における緩衝材用パルプチップ(以下、単にパルプチップともいう)の嵩密度は、70kg/m3以上である。パルプチップの嵩密度は、80kg/m3以上であることが好ましく、130kg/m3以上であることがより好ましい。パルプチップは、その嵩密度を70kg/m3以上とすることで、十分な緩衝効果が得られる。また、粉砕パルプの取り扱い時の粉塵量を抑えることができる。
【0018】
緩衝材用パルプチップの嵩密度は、上面が開口した100cm3の容器の上側の開口縁部に対して13.5cmの高さとなる位置からパルプチップを自由落下させて、容器の上側の開口縁部までパルプチップを入れたときの容器内のパルプチップの重量を測定し、1m3当たりの嵩密度を算出したものである。
【0019】
本発明では、ドライパルプを粉砕機によって粉砕しているため、梱包する直前に粉砕して使用することができ、シート状のドライパルプを購入することによって、おがくずと比べて輸送面においてコストを抑えて作業効率を高めることができる。また、プラスチック製の緩衝材と異なり、適度に水分を保持・吸収できることから、穀物と比べて水分量が多く腐敗しやすいやまいも等の芋類、ゆり根等の根菜類の貯蔵と輸送管理に好適に用いることができる。
【0020】
緩衝材用パルプチップを製造するときに使用される粉砕機は、せん断力で細かくするタイプの粉砕機であればよく、例えば、カッターミル式の粉砕機を好ましく用いることができる。カッターミル式の粉砕機は、回転刃と固定刃とによってドライパルプを連続的にせん断して粉砕する公知の粉砕機である。このようなカッターミル式の粉砕機では、ドライパルプが徐々に細かくせん断されていき、パルプチップが所定の大きさまで小さくなると、パルプチップがスクリーンメッシュの穴を通過して回収される。また、カッターミル式の粉砕機の他に、二本あるいは三本のロール刃で粉砕する二軸式、三軸式やシュレッダー等の粉砕機を用いても良い。
【0021】
緩衝材用パルプチップは、粉砕機において、穴径が1mmから20mmの間に設定されたスクリーンメッシュを通過した大きさであることが好ましい。スクリーンメッシュの穴径は、3mmから15mmであることがより好ましい。スクリーンメッシュの穴径が大きい程、回収されるパルプチップの大きさが大きくなる。つまり、大きい穴径のスクリーンメッシュを通過したパルプチップは粗い粒度となっている。スクリーンメッシュを1mm以上とすることによって、粗い粗度としてクッション性を向上することができる。一方、スクリーンメッシュを20mm以下とすることによって、粗大になり過ぎずに、充填性や作業性を高めてクッション性を向上できる。
【0022】
緩衝材用パルプチップは、タッピング嵩密度を嵩密度で除した値が1.0以上1.9以下であることが好ましい。この比率は、1.05以上1.85以下であることがより好ましく、1.1以上1.8以下であることがさらに好ましく、1.1以上1.4以下であることが特に好ましい。
【0023】
ドライパルプ自体には、衝撃吸収性の点で難があるが、粉砕して得られるパルプチップは、その表面繊維の絡み合いと大きさによって、集合体として構造的なクッション性を発揮することができる。パルプチップの集合体として、タッピング嵩密度と嵩密度の比率を設定することによって、緩衝効果を向上できる。また、ドライパルプの粉砕時やパルプチップの取り扱い時に粉塵量を抑制できる。比率を好ましい範囲とするには、例えばスクリーンメッシュの径の大きさを調整する方法が挙げられる。
【0024】
緩衝材用パルプチップのタッピング嵩密度は、100mlのメスシリンダーにパルプチップを10g投入し、パルプチップの体積が低下しなくなるまでメスシリンダーの底をタッピングした後、平らになった表面の目盛りを読んで体積を測定する。その後、単位体積(1m3)当たりの重量を算出することでタッピング嵩密度が求められる。
【0025】
緩衝材用パルプチップは、粉砕機によって粉砕された木材由来のドライパルプからなる。かかるドライパルプは、広葉樹または針葉樹を由来としていることが好ましい。チップとしたときの嵩密度が低く輸送コストの観点から、ドライパルプが広葉樹を由来としていることがより好ましい。ドライパルプは、広葉樹および針葉樹の少なくとも一方を原料としており、ブロック状またはシート状に固められている。このドライパルプを粉砕機によって粉砕してパルプチップを製造する。食品と接触する用途には、パルプとしてはクラフトパルプまたは溶解パルプが好ましい。クラフトパルプとしては、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラトパルプ(NBKP)等を挙げることができる。
【0026】
緩衝材用パルプチップの再離解したJIS P 8121-2に基づくカナダ標準フリーネス(CSF)は、特に限定されないが400ml以上780ml以下であることが好ましく、450ml以上750ml以下であることがより好ましい。カナダ標準フリーネスを400ml以上とすることによって、適度に水分を保持・吸収できる。一方、カナダ標準フリーネスが780mlよりも大きい木材パルプは、汎用的に市販されている中にはなく、そういったパルプを使用するとコストが増加してしまう。本発明では、緩衝材用パルプチップが再離解したカナダ標準フリーネスの測定が不可能とならない程度の繊維長となるように粉砕されたものであることが好ましい。パルプチップから取り出した繊維の長さ平均繊維長は、400μm以上であることが好ましく、450μm以上であることがより好ましい。一方、長さ平均繊維長は2500μm以下が好ましい。それ以上の長さの木材パルプは、汎用的に市販されている中にはなく、そのようなパルプを使用するとコストが増加してしまう。長さ平均繊維長は、繊維分析器(メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボver4.0)を用いて測定した値である。
【0027】
広葉樹および針葉樹の種類は特に限定されるものではない。広葉樹の樹種としては、特に限定されないが、例えばEucalyptus(ユーカリ類)、Fagus(ブナ類)、Quercus(ナラ、カシ等)、Beluta(カバ類)、Acacia(アカシア類)等が挙げられる。具体的には、例えば、広葉樹としては、Acacia mangium(アカシアマンギューム)、A.auriculiformis(アカシアアウリカルフォルミス)、A.catechu(アカシアカテキュー)、A.decurrens(アカシアデカレンス)、A.holosericea(アカシアホロセリシア)、A.leptocarpa(アカシアレプトカルパ)、A.maidenii(アカシアマイデニアイ)、A.mearnsii(アカシアメランシー)、A.melanoxylon(アカシアメラノキシロン)、A.neriifolia(アカシアネリフォーラ)、A.silvestris(アカシアシリベストリス)、A.peregrinalis(アカシアペレグリナリス)、A.aulacocarpa(アカシアアウラコカルパ)、又はA.crassicarpa(アカシアクラシカルパ)等やこれらの交雑種(hybrid:ハイブリッド)であるアカシア材や、Eucalyptus camaldulensis(ユーカリカマルドレンシス)、E.deglupta(ユーカリデグルプタ)、E.globulus(ユーカリグロブラス)、E.grandis(ユーカリグランディス)、E.maculata(ユーカリマキュラータ)、E.punctata(ユーカリパンクタータ)、E.saligna(ユーカリサリグナ)、E.tereticornis(ユーカリテレニコルニス)、E.urophylla(ユーカリユーロフィラ)等やこれらの交雑種(hybrid:ハイブリッド)であるユーカリ材が挙げられる。「A.」はアカシアの略、「E.」はユーカリの略である。
また、針葉樹としては、White Spruce(ホワイトスプルース)、Black Spruce(ブラックスプルース)、若しくはHemlock(ヘムロック)等のとうひ若しくはつが類樹木、White Fir(ホワイトファー)、Douglas Fir(ダグラスファー)、若しくはBalsam Fir(バルサムファー)等のもみ類樹木、Aspen(アスペン)等のポプラ類樹木、Southern Pine(サザンパイン)、Radiata Pine(ラジアータパイン)、Lodgepole Pine(ロッジポールパイン)、若しくはElliot Pine(エリオットパイン)等のまつ類樹木、またはRed Ceder(レッドシーダー)等の杉類樹木等が好ましく使用される。
【実施例】
【0028】
本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0029】
実施例1
広葉樹由来(ユーカリ)の晒クラフトパルプを原料としたドライパルプ(水分が約7%)を用いた。この大きさ60cm×80cmのパルプシート(密度が850kg/m3)をカッターミル式の粉砕機で粉砕した。粉砕機スクリーン径を調整し、パルプチップは穴径が3mmのスクリーンメッシュを通過した大きさとした。パルプチップの嵩密度は90kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は1.69であり、長さ平均繊維長は483μmであり、カナダ標準フリーネスは500mlであった。
【0030】
実施例2
実施例1において、穴径を3mmに代えて6mmとした以外は実施例1と同様にしてパルプチップを得た。パルプチップの嵩密度は127kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は1.54であり、長さ平均繊維長は532μmであり、カナダ標準フリーネスは517mlであった。
【0031】
実施例3
実施例1において、穴径を3mmに代えて8mmとした以外は実施例1と同様にしてパルプチップを得た。パルプチップの嵩密度は138kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は1.42であり、長さ平均繊維長は584μmであり、カナダ標準フリーネスは459mlであった。
【0032】
実施例4
実施例1において、穴径を3mmに代えて10mmとした以外は実施例1と同様にしてパルプチップを得た。パルプチップの嵩密度は160kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は1.30であり、長さ平均繊維長は577μmであり、カナダ標準フリーネスは469mlであった。
【0033】
実施例5
実施例1において、穴径を3mmに代えて15mmとした以外は実施例1と同様にしてパルプチップを得た。パルプチップの嵩密度は151kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は1.21であり、長さ平均繊維長は593μmであり、カナダ標準フリーネスは490mlであった。
【0034】
実施例6
実施例1において、広葉樹に代えて針葉樹由来(ダグラスファー)の晒クラフトパルプを原料とし(パルプシートの密度が830kg/m3)、穴径を3mmに代えて15mmとした以外は実施例1と同様にしてパルプチップを得た。パルプチップの嵩密度は223kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は1.26であり、長さ平均繊維長は2370μmであり、カナダ標準フリーネスは747mlであった。
【0035】
比較例1
実施例1におけるパルプシートを粉砕せずに緩衝材とした。
【0036】
比較例2
実施例1において、穴径を3mmに代えて0.15mmとした以外は実施例1と同様にしてパルプチップを得た。パルプチップの嵩密度は63kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は2.10であり、長さ平均繊維長は244μmであった。繊維長が短いため、カナダ標準フリーネスの測定が不可能であった。
【0037】
比較例3
実施例1において、穴径を3mmに代えて0.5mmとした以外は実施例1と同様にしてパルプチップを得た。パルプチップの嵩密度は39kg/m3であり、タッピング嵩密度と嵩密度の比率は1.95であり、長さ平均繊維長は385μmであった。繊維長が短いため、カナダ標準フリーネスの測定が不可能であった。
【0038】
かくして得られた緩衝材用パルプチップについて、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
【0039】
・嵩密度
上面が開口した100cm3の容器の上側の開口縁部に対して13.5cmの高さとなる位置からパルプチップを自由落下させて、容器の上側の開口縁部までパルプチップを入れたときの容器内のパルプチップの重量を測定し、1m3当たりの嵩密度を算出した。
【0040】
・タッピング嵩密度
100mlのメスシリンダーにパルプチップを10g投入し、パルプチップの体積が低下しなくなるまでメスシリンダーの底をタッピングした後、平らになった表面の目盛りを読んで体積を測定した。その後、単位体積(1m3)当たりの重量を算出した。
【0041】
・長さ平均繊維長
パルプチップを離解して繊維を取り出すときには、水で3%に分散させたパルプチップを離解機に投入し、離解機で15分間離解させて、繊維が含まれたスラリーを形成した。そして、パルプチップから取り出した多数の繊維の平均繊維長を測定した。繊維分析器(メッツォオートメーション社製、カヤーニファイバーラボver4.0)を用いた。
【0042】
・落下試験
パルプチップを充填した包装箱(段ボール箱)にやまいも5本を収納し、落下試験機を用いて高さ23cmから自由落下させた。宅配便等による配送時には、包装箱の積み降ろしの際に大きな荷重が包装箱に加わることから、通常の配送では最大10回程度の積み降ろしが生じることを想定し、10回の自由落下を繰り返した。その後、内容物の外観を目視観察し、内容物の損傷の有無によって、下記の基準で評価した。なお、比較例1の未粉砕パルプシートは、包装箱の底面、側面の大きさに合わせて適宜裁断し、充填を行った。
A:外皮に傷・へこみがみられず、損傷がない。
B:外皮に傷・へこみがみられる。
C:外皮に傷・へこみがみられ、皮が剥げる等の損傷がみられる。
【0043】
・粉塵量
パルプチップを包装箱に充填する際の粉塵量を目視で評価した。少量の発生までは実用上問題のないレベルであった。
【0044】
表1の結果から分かるように、実施例1から実施例6のパルプチップは、落下試験における損傷がなく、緩衝材として優れていた。また、粉塵量が少なく、作業効率を高めることができた。すなわち、木材由来のドライパルプからなり、食品に接触する用途に好適に使用可能であり、持続的に入手可能な緩衝材であった。一方、比較例1では緩衝効果が劣り、シートの充填では密度が高いため、包装箱全体の重量が重くなって配送には不適であった。比較例1および比較例2のパルプチップは、嵩密度が低く、衝撃を受けた際に緩衝材がつぶれやすく、つぶれた後は緩衝効果に劣るものであった。比較例2および比較例3のパルプチップでは、ドライパルプのパルプチップの取り扱い時に粉塵が多量に発生した。
【0045】