(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ゴム被覆ヘッド及びゴム被覆コードの製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 48/34 20190101AFI20231017BHJP
B29C 48/15 20190101ALI20231017BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20231017BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
B29C48/34
B29C48/15
B29K21:00
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2019123873
(22)【出願日】2019-07-02
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】芦田 拓也
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-278092(JP,A)
【文献】特開平03-000225(JP,A)
【文献】特開2018-126935(JP,A)
【文献】特開2003-340903(JP,A)
【文献】実開昭50-012070(JP,U)
【文献】特開2018-027648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
B29C 63/00 - 63/48
B29D 30/00 - 30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続供給される少なくとも1本のコードを未加硫ゴムで被覆するためのゴム被覆ヘッドであって、
ケーシングを含み、
前記ケーシングは、
ゴム供給口と、
前記ゴム供給口から供給された未加硫ゴムが充填されるゴム充填空間と、
前記コードを前記ゴム充填空間に供給するためのコード供給口と、
前記ゴム充填空間を通って、前記未加硫ゴムで被覆された前記コードを前記ケーシングから取り出すためのコード排出口とを含み、
前記ゴム充填空間は、
前記ゴム供給口に連なって第1方向に延びる主部と、
前記主部から前記第1方向と交差する第2方向に局部的に突出する副空間とを含み、
前記コード供給口は、前記副空間
から突出する、
ゴム被覆ヘッド。
【請求項2】
前記コード供給口及び前記コード排出口は、前記コードを前記第2方向に沿って位置している、請求項1記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項3】
前記副空間の前記第2方向と直交する断面積は、前記主部の前記第1方向と直交する断面積よりも小さい、請求項1又は2記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項4】
前記副空間の前記第2方向と直交する断面積は、前記コードの断面積の25倍以上である、請求項1ないし3のいずれかに記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項5】
前記副空間は、前記主部から円柱状に突出している、請求項1ないし4のいずれかに記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項6】
前記副空間は、予め定められた内径を維持したまま前記主部から突出する部分を含む、請求項5記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項7】
前記コード供給口は、前記副空間の軸中心線上に形成されている、請求項5又は6記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項8】
前記コードは、タイヤ補強用のワイヤーである、請求項1ないし7のいずれかに記載のゴム被覆ヘッド。
【請求項9】
連続供給される少なくとも1本のコードを未加硫ゴムで被覆するためのゴム被覆コードの製造装置であって、
ゴム押出口から前記未加硫ゴムを押し出すためのゴム押出機と、
前記ゴム押出口に接続される請求項1ないし8のいずれかに記載の前記ゴム被覆ヘッドと、
前記ゴム被覆ヘッドの前記コード供給口に、前記コードを連続して供給するためのコード供給装置とを含む、
ゴム被覆コードの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードを未加硫ゴムで被覆するためのゴム被覆ヘッド等に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、スチールコードにゴムをコーティングするための装置を提案している。この装置は、スチールコードを通過させる複数の貫通孔が設けられたバッフルと、バッフルの先端部に取り付けられるダイプレートと、ダイプレートを通過するスチールコードに未加硫のゴムを供給する押出しヘッドとを含んで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の装置では、スチールコードにゴムをコーティングすることができるものの、スチールコードへのゴム付き性能の向上については、さらなる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、コードへのゴム付き性能を向上しうるゴム被覆ヘッド等を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、連続供給される少なくとも1本のコードを未加硫ゴムで被覆するためのゴム被覆ヘッドであって、ケーシングを含み、前記ケーシングは、ゴム供給口と、前記ゴム供給口から供給された未加硫ゴムが充填されるゴム充填空間と、前記コードを前記ゴム充填空間に供給するためのコード供給口と、前記ゴム充填空間を通って、前記未加硫ゴムで被覆された前記コードを前記ケーシングから取り出すためのコード排出口とを含み、前記ゴム充填空間は、前記ゴム供給口に連なって第1方向に延びる主部と、前記主部から前記第1方向と交差する第2方向に局部的に突出する副空間とを含み、前記コード供給口は、前記副空間に形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記コード供給口及び前記コード排出口は、前記コードを前記第2方向に沿って位置していてもよい。
【0008】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記副空間の前記第2方向と直交する断面積は、前記主部の前記第1方向と直交する断面積よりも小さくてもよい。
【0009】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記副空間の前記第2方向と直交する断面積は、前記コードの断面積の25倍以上であってもよい。
【0010】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記副空間は、前記主部から円柱状に突出していてもよい。
【0011】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記副空間は、予め定められた内径を維持したまま前記主部から突出する部分を含んでもよい。
【0012】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記コード供給口は、前記副空間の軸中心線上に形成されていてもよい。
【0013】
本発明に係る前記ゴム被覆ヘッドにおいて、前記コードは、タイヤ補強用のワイヤーであってもよい。
【0014】
本発明は、連続供給される少なくとも1本のコードを未加硫ゴムで被覆するためのゴム被覆コードの製造装置であって、ゴム押出口から前記未加硫ゴムを押し出すためのゴム押出機と、前記ゴム押出口に接続される請求項1ないし8のいずれかに記載の前記ゴム被覆ヘッドと、前記ゴム被覆ヘッドの前記コード供給口に、前記コードを連続して供給するためのコード供給装置とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明のゴム被覆ヘッドは、未加硫ゴムが充填されるゴム充填空間として、ゴム供給口に連なって第1方向に延びる主部と、前記主部から前記第1方向と交差する第2方向に局部的に突出する副空間とを含んでいる。前記コードを前記ゴム充填空間に供給するためのコード供給口は、前記副空間に形成されている。このような副空間では、前記コード供給口から供給される前記コードに、前記未加硫ゴムが連続して被覆されるため、前記副空間での前記未加硫ゴムの圧力が相対的に低くなる。前記未加硫ゴムは、圧力の低い方へと流れる性質があるため、前記ゴム充填空間において、前記第1方向に沿った前記未加硫ゴムの主たる流れに、前記第2方向へ向かう流れを連続して生成することができる。これにより、本発明のゴム被覆ヘッドは、前記副空間に連続して流れる前記未加硫ゴムに、前記コードを接触させることができるため、前記コードへの前記未加硫ゴムのゴム付き性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のゴム被覆コードの製造装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】ゴム押出機及びゴム被覆ヘッドの一例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の他の実施形態の副空間の一例を示す断面図である。
【
図7】本発明のさらに他の実施形態の副空間の一例を示す断面図である。
【
図8】(a)は、実施例1の未加硫ゴムの流線を示す図、(b)は、比較例1の未加硫ゴムの流線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明のゴム被覆コードの製造装置の一例を示す斜視図である。本実施形態のゴム被覆コードの製造装置(以下、単に「製造装置」ということがある。)1は、連続供給される少なくとも1本のコード2を、未加硫ゴム3で被覆するためのものである。コード2としては、未加硫ゴム3で被覆されるものであれば、特に限定されない。本実施形態のコード2としては、タイヤ補強用のワイヤー(例えば、ビードワイヤー等)である場合が例示される。
【0018】
本実施形態の製造装置1は、ゴム押出機6と、ゴム被覆ヘッド7と、コード供給装置8とを含んで構成されている。さらに、本実施形態の製造装置1は、コード回収装置9と、コンピュータ等で構成された制御装置10とを含んでいる。なお、製造装置1は、このような構成に限定されるわけではない。製造装置1には、例えば、これらの装置とは異なる装置を含んで構成されてもよい。
【0019】
図2は、ゴム押出機6及びゴム被覆ヘッド7の一例を示す斜視図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。ゴム押出機6は、シリンダー11と、スクリュー軸12(
図3に示す)とを含んで構成されている。
【0020】
シリンダー11は、円柱状に形成されている。このシリンダー11は、例えば、床に固定された基部13(
図1及び
図2に示す)に支持されている。
図3に示されるように、シリンダー11の内部には、未加硫ゴム3を押し出すためのチャンバー14が設けられている。本実施形態のチャンバー14は、シリンダー11の長手方向に沿って水平にのびている。シリンダー11の第1方向(未加硫ゴム3が押し出される方向)D1の上流側には、未加硫ゴム3が連続して投入される投入口15(
図1及び
図2に示す)が設けられている。一方、シリンダー11の第1方向(押出方向)D1の下流側には、
図3に示されるように、未加硫ゴム3が押し出される(吐出される)ゴム押出口16が設けられている。このゴム押出口16には、ゴム被覆ヘッド7のゴム供給口27が接続されている。
【0021】
スクリュー軸12は、シリンダー11のチャンバー14の内部に配されている。本実施形態のスクリュー軸12は、図示しない駆動装置によって、水平軸回りに回転可能に構成されている。このスクリュー軸12の回転によって、ゴム押出機6は、投入口15(
図1及び
図2に示す)に投入された未加硫ゴム3を、ゴム押出口16に向かって定量的に押し出すことができる。ゴム押出口16に押し出された未加硫ゴム3は、ゴム被覆ヘッド7のゴム供給口27を介して、ゴム被覆ヘッド7のゴム充填空間28に供給される。未加硫ゴム3の押出速度(スクリュー軸12の回転数)は、例えば、駆動装置に接続された制御装置10(
図1に示す)によって制御される。
【0022】
図1に示されるように、コード供給装置8は、ゴム被覆ヘッド7のコード供給口29(
図2に示す)に、コード2を連続して供給するためのものである。コード供給装置8は、第1リール(巻き枠)17と、第1リール17を回転可能に支持する第1支持部18とを含んで構成されている。コード供給装置8から供給されるコード2は、例えば、ガイドローラ19を介して、ゴム被覆ヘッド7のコード供給口29(
図2に示す)に案内される。
【0023】
第1リール17には、未加硫ゴム3で被覆される前のコード2が、予め巻き付けられている。第1リール17の個数については、適宜設定することができ、例えば、未加硫ゴム3で同時に被覆させるコード2の本数に応じて設定することができる。本実施形態では、4本のコード2を、未加硫ゴム3で同時に被覆させている。このため、コード供給装置8には、4個の第1リール17が設けられる。これらの第1リール17は、第1支持部18に取り外し可能に支持されている。
【0024】
コード2の供給が完了した第1リール17は、第1支持部18から取り外される。そして、コード2が巻き付けられた新たな第1リール17が、第1支持部18に取り付けられる。
【0025】
コード回収装置9は、未加硫ゴム3で被覆されたコード2(即ち、ゴム被覆コード4)を回収するためのものである。コード回収装置9は、ゴム被覆コード4を巻き取るための第2リール21と、第2リール21を回転可能に支持する第2支持部22と、第2リール21を回転駆動させる第2駆動装置23とを含んで構成されている。
【0026】
第2リール21の個数については、適宜設定することができ、例えば、未加硫ゴム3で被覆されたコード2(即ち、ゴム被覆コード4)の本数に応じて設定することができる。本実施形態では、4本のコード2を未加硫ゴム3で被覆させているため、4個の第2リール21が設けられている。これらの第2リール21は、第2支持部22に取り外し可能に支持される。
【0027】
本実施形態の第2駆動装置23は、各第2リール21を回転させて、ゴム被覆コード4を巻き取るためのものである。第2駆動装置23は、第2支持部22に設けられている。第2リール21の回転数は、第2駆動装置23に接続された制御装置10(
図1に示す)によって制御される。
【0028】
第2リール21には、先ず、第1リール17のコード2の先端側が固定される。そして、第2リール21は、第2駆動装置23による回転により、ガイドローラ24を介して、ゴム被覆コード4を巻き取ることができる。このゴム被覆コード4の巻き取りによって、コード供給装置8は、第1リール17を回転させて、ゴム被覆ヘッド7のコード供給口29(
図2に示す)に、コード2を連続して供給することができる。
【0029】
ゴム被覆コード4の巻き取りが完了した第2リール21は、第2支持部22から取り外されて、例えば、生タイヤの製造等に用いられる。そして、第2支持部22には、ゴム被覆コード4を巻き取る前の新たな第2リール21が、第2支持部22に取り付けられる。
【0030】
図2に示されるように、ゴム被覆ヘッド7は、連続供給される少なくとも1本のコード2を、未加硫ゴム3で被覆するためのものである。ゴム被覆ヘッド7は、ケーシング26を含んで構成されている。本実施形態のゴム被覆ヘッド7には、上下方向で並べられた複数本(本例では、4本)のコード2が連続して供給されているが、水平に並べられた複数本のコード2が連続して供給されてもよい。
図4は、ゴム被覆ヘッド7の一例を示す斜視図である。
図5は、
図4のB-B断面図である。なお、
図5では、ゴム被覆ヘッド7に上級されたコード2、及び、ゴム被覆コード4を二点鎖線で示している。
【0031】
ケーシング26は、ゴム供給口27と、ゴム充填空間28と、コード供給口29と、コード排出口30とを含んで構成されている。
【0032】
ゴム供給口27は、ケーシング26において、第1方向D1の他方側(即ち、未加硫ゴム3の押出方向の上流側)で開口している。
図3に示されるように、ゴム供給口27は、ゴム押出機6のゴム押出口16に接続されている。これにより、ゴム供給口27は、ゴム押出口16から押し出される未加硫ゴム3を、ゴム充填空間28に供給することができる。ゴム供給口27の形状は、例えば、ゴム押出機6のゴム押出口16の形状に基づいて形成することができる。
図4に示されるように、本実施形態のゴム供給口27は、正面視において、上下に円弧を有する縦長矩形状に形成されている。
【0033】
ゴム充填空間28は、ゴム供給口27から供給された未加硫ゴム3(
図3に示す)が充填される。
図4及び
図5に示されるように、ゴム充填空間28は、主部31と、副空間32とを含んで構成されている。主部31及び副空間32は、未加硫ゴム3が行き来可能に連通している。主部31及び副空間32は、ケーシング26において、一体に形成されていてもよいし、ケーシング26の分解によって分離可能に形成されてもよい。
【0034】
主部31は、ゴム供給口27に連なって第1方向D1に延びている。
図5に示されるように、本実施形態の主部31は、第1方向D1の一方側(即ち、未加硫ゴム3の押出方向の下流側)の端部33で終端している。本実施形態の端部33には、
図3及び
図5に示されるように、ゴム充填空間28内の未加硫ゴム3(
図3に示す)を大気中に放出させるための開口部34と、開口部34を開閉可能なリリーフ弁35とが設けられている。なお、これらの開口部34及びリリーフ弁35は、省略されてもよい。
【0035】
図4及び
図5に示されるように、本実施形態の主部31は、第1部分37と、第2部分38とを含んで構成されている。
【0036】
第1部分37は、ゴム供給口27に連なって第1方向D1の一方側に延びている。本実施形態の第1部分37の第1方向D1と直交する断面45(
図4に示す)は、ゴム供給口27と同様に、上下に円弧を有する縦長矩形状に形成されている。一般に、流体(
図3に示した未加硫ゴム3を含む)は、物体(壁)の形状に沿って流れる性質を有している。したがって、第1部分37は、その円弧に沿って、未加硫ゴム3を円滑に流すことができるため、未加硫ゴム3の滞留を抑制することができる。これにより、本実施形態のゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、未加硫ゴム3のゴム焼けを防ぐことができる。
【0037】
本実施形態の第1部分37は、その断面45(
図4に示す)が上下に円弧を有する縦長矩形状に形成されているため、上下の広い範囲に未加硫ゴム3(
図3に示す)が供給される。これにより、第1部分37は、上下に並べられて供給される複数本のコード2(
図2に示す)に対して、未加硫ゴム3を効果的に接触させることができる。
【0038】
図4及び
図5に示されるように、第2部分38は、第1部分37に連なり、かつ、第1方向D1の一方側に向かって延びている。本実施形態の第2部分38は、正面視での上下方向の長さ及び左右方向の長さを漸減させながら、第1部分37から第1方向D1の一方側に向かって延び、かつ、第1方向D1の端部33(
図5に示す)で終端している。
【0039】
第2部分38の第1方向D1と直交する断面(図示省略)は、第1部分37の断面45(
図4に示す)と同様に、上下に円弧を有する縦長矩形状に形成されている。これにより、第2部分38は、これらの円弧に沿って、未加硫ゴム3(
図3に示す)を円滑に流すことができるため、未加硫ゴム3の滞留を抑制することができる。したがって、本実施形態のゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、未加硫ゴム3のゴム焼けを防ぐことができる。
【0040】
図4及び
図5に示されるように、副空間32は、主部31から第1方向D1と交差する第2方向D2に局部的に突出している。本実施形態の副空間32は、主部31の第1部分37から第2方向D2に局部的に突出している。このような副空間32は、
図5に示されるように、ゴム充填空間28において、第1方向D1に沿った未加硫ゴム3の主たる流れS1に、第2方向D2へ向かう新たな流れS2を生成することができる。そして、本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3が局所的に突出する副空間32に流れることにより、未加硫ゴム3の一部を副空間32に集約させることができる。
【0041】
図4に示されるように、本実施形態の副空間32は、主部31から円柱状に突出している。これにより、副空間32は、第2方向と直交する断面46(
図4で二点鎖線で示す)において、円弧を有する円形状に形成されている。したがって、副空間32は、未加硫ゴム3(
図3に示す)を円弧に沿って円滑に流すことができるため、未加硫ゴム3の滞留を抑制することができる。これにより、本実施形態のゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、未加硫ゴム3のゴム焼けを防ぐことができる。
【0042】
図5に示されるように、本実施形態の副空間32は、予め定められた内径L1を維持したまま、主部31から突出する部分(以下、単に「同径部」ということがある。)40を含んでいる。本明細書において、「内径L1を維持する」には、製造上の軽微なバラツキ(誤差)等が許容されるものとする。このような同径部40は、例えば、内径L1が漸減する場合(図示省略)に比べて、第2方向へ向かう未加硫ゴム3の流れに対する摩擦を小さくすることができる。したがって、同径部40は、未加硫ゴム3の滞留を抑制することができる。
【0043】
副空間32の個数については、適宜設定することができ、例えば、ゴム充填空間28に供給されるコード2の本数に応じて設定することができる。本実施形態では、4本のコード2がゴム充填空間28に供給されるため、4個の副空間32が設けられている。本実施形態の副空間32は、複数のコード2と同様に、上下方向で並べられている。
【0044】
図4及び5に示されるように、コード供給口29は、コード2をゴム充填空間28に供給するためのものである。コード供給口29は、ゴム充填空間28とケーシング26の外部との間を連通させており、ケーシング26の任意の位置に形成することができる。
図4に示されるように、本実施形態のコード供給口29は、側面視において円形状に形成されており、その内径L2が、コード2の外径L3(
図5に示す)よりも大きく形成されている。コード供給口29には、例えば、コード2を整列させて供給可能なバッフル(図示省略)等が取り付けられてもよい。
【0045】
図5に示されるように、コード排出口30は、ゴム充填空間28を通って、未加硫ゴム3で被覆されたコード2(ゴム被覆コード4)を、ケーシング26から取り出すためのものである。コード排出口30は、ゴム充填空間28とケーシング26の外部との間を連通させており、ケーシング26の任意の位置に形成することができる。
図4に示されるように、本実施形態のコード排出口30は、側面視において円形状に形成されている。
図5に示されるように、コード排出口30の内径L4は、コード2の外径L3よりも大きく形成されている。
【0046】
本実施形態のコード排出口30は、コード2を被覆した未加硫ゴム3を、一定の外径に成形するダイ(口金)として構成されている。コード排出口30の内径L4は、未加硫ゴム3の被覆厚さに応じて適宜設定することができ、例えば、コード2の外径L3の1.1~1.4倍に設定することができる。
【0047】
コード供給口29の個数、及び、コード排出口30の個数は、ゴム充填空間28に供給されるコード2の本数に応じて設定される。
図2に示されるように、本実施形態では、4本のコード2がゴム充填空間28に供給される。このため、
図4に示されるように、コード供給口29及びコード排出口30が4個ずつ設けられている。
【0048】
そして、本実施形態のゴム被覆ヘッド7では、
図4及び
図5に示されるように、コード供給口29が、副空間32に形成されている。これにより、副空間32では、コード供給口29から供給されるコード2に、未加硫ゴム3が連続して被覆されるため、副空間32での未加硫ゴム3の圧力が相対的に低くなる。未加硫ゴム3は、圧力の低い方へと流れる性質があるため、ゴム充填空間28において、第1方向D1に沿った未加硫ゴム3の主たる流れS1に、第2方向D2(副空間32)へ向かう流れS2を連続して生成することができる。これにより、本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、副空間32に連続して流れる未加硫ゴム3に、コード2を接触させることができる。したがって、本実施形態のゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能を向上させることができる。
【0049】
さらに、ゴム被覆ヘッド7は、未加硫ゴム3が連続して流れ込む副空間32が、主部31に対してコード供給口29側(即ち、コード2の流れ方向(第2方向D2)の上流側)に設けられている。このため、ゴム被覆ヘッド7は、ゴム充填空間28にコード2が供給された直後から、副空間32に流れ込む未加硫ゴム3にコード2を接触させることができる。さらに、本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、副空間32が設けられていない(即ち、主部31のみ設けられた)ゴム被覆ヘッド(図示省略)に比べて、コード2への未加硫ゴム3の接触時間を大きくすることができる。したがって、本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能を効果的に向上させることができる。
【0050】
上記作用を効果的に発揮させるために、コード供給口29及びコード排出口30は、コード2を第2方向D2に沿って位置しているのが望ましい。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、主部31から副空間32に向かって未加硫ゴム3が流れる第2方向D2に沿って、コード2をゴム充填空間28に通過させることができる。したがって、ゴム被覆ヘッド7は、コード2への未加硫ゴム3の接触時間を大きくすることができ、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能をさらに向上させることができる。
【0051】
さらに、コード供給口29は、
図4及び
図5に示されるように、副空間32の軸中心線C1上に形成されるのが望ましい。これにより、
図5に示されるように、ゴム被覆ヘッド7は、副空間32の軸中心線C1を境に、主部31から副空間32に向かう未加硫ゴム3の流れS2と、コード2の流れとともに副空間32から主部31に向かう未加硫ゴム3の流れS3とをバランスよく生成することができる。したがって、ゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、未加硫ゴム3の滞留を防ぐことができるため、未加硫ゴム3のゴム焼けを防ぎつつ、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能を向上させることができる。
【0052】
副空間32の第2方向D2と直交する断面積(
図4に示した断面46の断面積であり、以下、単に「副空間32の断面積」ということがある。)は、主部31の第1方向と直交する断面積(
図4に示した断面45の断面積であり、以下、単に「主部31の断面積」ということがある。)よりも小さいのが望ましい。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、副空間32に流れ込む未加硫ゴム3の量に対して、コード2に被覆される未加硫ゴム3の量の割合を大きくできるため、副空間32内の未加硫ゴム3の圧力を効果的に低くすることができる。したがって、ゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、副空間32に未加硫ゴム3を効果的に供給することができるため、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能を向上させることができる。
【0053】
副空間32の断面積は、主部31の断面積の3%~15%に設定されるのが望ましい。副空間32の断面積が主部31の断面積の15%以下に設定されることにより、未加硫ゴム3の圧力を低くして、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能を効果的に向上させることができる。一方、副空間32の断面積が主部31の断面積の3%以上に設定されることにより、ゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、副空間32での未加硫ゴム3の滞留を抑制することができるため、未加硫ゴム3のゴム焼けを防ぐことができる。
【0054】
副空間32の断面積は、コード2の断面積の25倍以上に設定されるのが望ましい。これにより、ゴム被覆ヘッド7は、多くの未加硫ゴム3を副空間32に供給することができるため、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能を向上させることができる。一方、副空間32の断面積が大きいと、副空間32において、コード2に被覆されなかった未加硫ゴム3が滞留して、未加硫ゴム3のゴム焼けが生じるおそれがある。このような観点より、副空間32の断面積は、コード2の断面積の100倍以下に設定されるのが望ましい。
【0055】
上述したように、本実施形態のコード排出口30は、コード2を被覆した未加硫ゴム3を一定の外径に成形するダイ(口金)として構成されている。このようなコード排出口30は、コード2を被覆した未加硫ゴム3に、コード2から未加硫ゴム3を剥離させる方向へのせん断応力を作用させる傾向がある。本実施形態のコード排出口30は、ケーシング26に形成されているため、例えば、ケーシング(主部)から第2方向D2に突出する従来のダイプレート(図示省略)に比べて、コード2を被覆した未加硫ゴム3にせん断応力が作用する領域を最小限に抑えることができる。したがって、本実施形態のゴム被覆ヘッド7は、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能の低下を防ぐことができる。このような作用を効果的に発揮させるために、コード排出口30の厚さW1(
図5に示す)は、9.95~10.05mmに設定されるのが望ましい。
【0056】
図5に示されるように、これまでの実施形態の副空間32は、内径L1を維持したまま主部31から突出する同径部40のみで構成されたが、このような態様に限定されない。
図6は、本発明の他の実施形態の副空間32の一例を示す断面図である。
図7は、本発明のさらに他の実施形態の副空間32の一例を示す断面図である。
【0057】
図6に示されるように、副空間32は、内径L1を漸減させながら、主部31から突出する部分(以下、単に「漸減部」ということがある。)42のみで構成されてもよい。また、
図7に示されるように、副空間32は、同径部40と、同径部40から突出する漸減部42とを含んで構成されてもよい。このような副空間32は、漸減部42に流れ込む未加硫ゴム3の量を小さくすることができる。これにより、この実施形態では、副空間32(漸減部42)に流れ込む未加硫ゴム3の量に対して、コード2に被覆される未加硫ゴム3の量の割合を大きくできるため、副空間32内の未加硫ゴム3の圧力を効果的に低くすることができる。したがって、この実施形態のゴム被覆ヘッド7(製造装置1)は、副空間32(漸減部42)への未加硫ゴム3の流れを効果的に生成することができるため、コード2への未加硫ゴム3のゴム付き性能を向上させることができる。
【0058】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0059】
図2~
図5に示した基本構造を有するゴム被覆ヘッド、及び、
図1に示したゴム被覆コードの製造装置が試作された(実施例1~4)。実施例1~4のゴム被覆ヘッドには、未加硫ゴムが充填されるゴム充填空間に、ゴム供給口に連なって第1方向に延びる主部と、主部から第1方向と交差する第2方向に局部的に突出する副空間とを含んで構成された。
【0060】
比較のために、副空間が省略されたゴム充填空間を有するゴム被覆ヘッド、及び、
図1に示したゴム被覆コードの製造装置が試作された(比較例1~2)。そして、実施例1~4及び比較例1~2のゴム被覆ヘッドにコードを連続供給して、コードを未加硫ゴムで被覆したゴム被覆コードが製造された。
【0061】
さらに、実施例1及び比較例1のゴム被覆ヘッドについて、未加硫ゴムの流れがシミュレーションにより計算された。
図8(a)は、実施例1の未加硫ゴムの流線を示す図である。
図8(b)は、比較例1の未加硫ゴムの流線を示す図である。
【0062】
実施例1及び実施例3~4のコード排出口は、
図5に示されるように、ケーシングに設けられており、下記の厚さW1に設定された。一方、実施例2及び比較例1~2のコード排出口は、
図8(b)に示されるように、ケーシング(主部)から突出する従来のダイプレート48に設けられた。
【0063】
また、実施例3及び比較例2では、ゴム充填空間内の未加硫ゴムを開口部から大気中に放出させながら、コードに未加硫ゴムを被覆させた。一方、実施例1~2、実施例4及び比較例1では、ゴム充填空間内の未加硫ゴムを大気中に放出させることなく、ゴム充填空間中に未加硫ゴムを循環させながら、コードに未加硫ゴムを被覆させた。
【0064】
そして、実施例1~4及び比較例1~2で製造されたゴム被覆コードのゴム付き性能が評価された。ゴム付き性能は、実施例1のゴム付き具合を100とする指数で評価され、数値が大きいほど良好である。さらに、実施例1~4及び比較例1~2のゴム充填空間内において、未加硫ゴムのゴム焼けの有無が目視にて確認された。共通仕様は、次のとおりであり、テスト結果を表1に示す。
ゴム被覆コード:タイヤ補強用のワイヤー(ビードワイヤー)
コードの外径:1.20mm
コードの断面積:1.12mm2
ゴム被覆ヘッドに同時に供給されるコードの本数:4本
コード排出口の厚さW1:10.00mm
シミュレーションソフト:シーメンスPLMソフトウェア社製のSTAR-CCM+
【0065】
【0066】
テストの結果、実施例1~4は、副空間が省略された比較例1~2に比べて、連続して流れる未加硫ゴムに、コードを接触させることができるため、ゴム付き性能を向上させることができた。さらに、実施例1~4は、主部から副空間に向かう未加硫ゴムの流れと、コードの流れとともに副空間から主部に向かう未加硫ゴムの流れとをバランスよく生成することができるため、副空間が省略された比較例1~2に比べて、ゴム焼けを防ぐことができた。
【0067】
実施例1は、副空間の断面積がコードの断面積の25倍未満の実施例4に比べて、多くの未加硫ゴムを副空間に供給することができるため、コードへの未加硫ゴムのゴム付き性能を向上させることができた。
【0068】
実施例1~2は、未加硫ゴムを大気中に放出させる実施例3に比べて、ゴム充填空間中に未加硫ゴムを循環させることができるため、ゴム付き性能をさらに向上させることができた。さらに、実施例1は、ケーシング(主部)から突出する従来のダイプレート48に設けられた実施例2に比べて、コードを被覆した未加硫ゴムにせん断応力が作用する領域を小さくできるため、ゴム付き性能をさらに向上させることができた。
【0069】
さらに、未加硫ゴムの流れを計算したシミュレーションにおいて、
図8(a)に示した実施例1は、第1方向に沿った未加硫ゴムの主たる流れに、第2方向へ向かう新たな流れを生成することができるため、
図8(b)に示した比較例1に比べて、ゴム付き性能を向上できることを確認できた。
【符号の説明】
【0070】
2 コード
7 ゴム被覆ヘッド
27 ゴム供給口
28 ゴム充填空間
29 コード供給口
31 主部
32 副空間