(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】弾性クローラ及び芯材
(51)【国際特許分類】
B62D 55/253 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B62D55/253 B
B62D55/253 C
(21)【出願番号】P 2019160672
(22)【出願日】2019-09-03
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 良輔
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-092077(JP,U)
【文献】特開2001-010554(JP,A)
【文献】国際公開第2005/002952(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 55/253
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性クローラであって、
弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、
前記クローラ本体内にクローラ周方向に間隔を空けて配され、かつ前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材とを含み、
前記芯材は、クローラ幅方向に延びる芯材本体と、前記芯材本体のクローラ周方向の第1端面及び第2端面からそれぞれ突出する複数の脱輪防止突起とを含み、
前記脱輪防止突起のそれぞれには、クローラ周方向に延びる少なくとも1本の溝部と、前記溝部のクローラ厚さ方向の両側の前記溝部でない部分とが形成されて
おり、
前記脱輪防止突起は、前記第1端面から突出する一対の第1突起と、前記第2端面から突出し、かつクローラ周方向に隣接する前記芯材の一対の前記第1突起の間に進入可能な一対の第2突起とを含み、
前記第1突起は、クローラ幅方向の内側の第1面が、クローラ周方向に隣接する前記芯材の前記第2突起のクローラ幅方向の外側の第2面に対向して配されており、
前記溝部は、前記第1面に形成された第1溝部と、前記第2面に形成された第2溝部とを含む、
弾性クローラ。
【請求項2】
クローラ周方向に隣接する一対の前記芯材が捻れるような外力が前記クローラ本体に作用したときに、
前記第1溝部は、対向する前記第2面の前記第2溝部ではない部分にかみ合い、
前記第2溝部は、対向する前記第1面の前記第1溝部ではない部分にかみ合う、請求項
1に記載の弾性クローラ。
【請求項3】
前記クローラ本体内に配され、かつ前記芯材よりもクローラ外周側を通ってクローラ周方向に延びるコードからなる抗張体をさらに含み、
前記脱輪防止突起のクローラ外周側の部分は、前記抗張体よりもクローラ外周側に位置する、請求項
1又は2に記載の弾性クローラ。
【請求項4】
弾性クローラに用いられる芯材であって、
クローラ幅方向に延びる芯材本体と、
前記芯材本体のクローラ周方向の第1端面及び第2端面からそれぞれ突出する複数の脱輪防止突起とを含み、
前記脱輪防止突起のそれぞれには、クローラ周方向に延びる少なくとも1本の溝部と、前記溝部のクローラ厚さ方向の両側の前記溝部でない部分とが形成されて
おり、
前記脱輪防止突起は、前記第1端面から突出する一対の第1突起と、前記第2端面から突出し、かつクローラ周方向に並べられたときに、一対の前記第1突起の間に進入可能な一対の第2突起とを含み、
前記溝部は、前記第1突起のクローラ幅方向の内側に形成された第1溝部と、前記第2突起のクローラ幅方向の外側に形成された第2溝部とを含む、
芯材。
【請求項5】
前記第1溝部と前記第2溝部とは、互いの断面形状が同一である、請求項
4に記載の芯材。
【請求項6】
前記溝部は、前記脱輪防止突起のそれぞれに1本形成される、請求項
4又は5に記載の芯材。
【請求項7】
弾性クローラに用いられる芯材であって、
クローラ幅方向に延びる芯材本体と、
前記芯材本体のクローラ周方向の第1端面及び第2端面からそれぞれ突出する複数の脱輪防止突起とを含み、
前記脱輪防止突起のそれぞれには、クローラ周方向に延びる少なくとも1本の溝部と、前記溝部のクローラ厚さ方向の両側の前記溝部でない部分とが形成されており、
前記溝部は、前記脱輪防止突起のそれぞれに複数本形成される
、
芯材。
【請求項8】
前記脱輪防止突起のクローラ外周側の外端部は、前記芯材本体のクローラ外周側の外面よりもクローラ外周側に位置する、請求項
4ないし7のいずれか1項に記載の芯材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状の弾性クローラ及び弾性クローラ用の芯材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴム等の弾性体からなるクローラ本体に、複数の芯材を埋設した弾性クローラが知られている。芯材は、クローラ幅方向の補強材として機能し、クローラ周方向に間隔を空けて埋設されている。又抗張体は、クローラ周方向の補強材として機能し、前記芯材よりもクローラ外周側を通ってクローラ周方向にのびるコードから構成されている。この種の弾性クローラは、隣り合う芯材間でクローラ幅方向のずれが発生して、芯材が車体の転輪が外れて、脱輪を起こすという問題が生じることがあった。
【0003】
下記特許文献1には、脱輪防止のために、芯材に、クローラ周方向の一方側に突出する一対の第1突起と、他方側に突出する一対の第2突起とを設けることが記載されている。この弾性クローラでは、クローラ周方向で隣り合う一方側の芯材の第1突起が、他方側の芯材の第2突起にクローラ幅方向で重なり合うことで、芯材間のクローラ幅方向のずれが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、突起物への乗り上げ時や旋回時などに作用する外力により、隣り合う芯材間に屈曲や捻れ等が生じてしまうと、第1突起と第2突起との係合が外れて、弾性クローラが車体側の駆動輪、遊動輪、転輪等から外れる脱輪が発生してしまうことがある。このような屈曲や捻れ等に起因する脱輪対策としては、第1突起及び第2突起を大型化すること等が案出されるが、芯材重量の増加を招くことになり、更なる改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、芯材重量の増加を抑えながら、屈曲や捻れ等に起因する脱輪を抑制し得る弾性クローラを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、弾性クローラであって、弾性体からなる無端帯状のクローラ本体と、前記クローラ本体内にクローラ周方向に間隔を空けて配され、かつ前記弾性体よりも硬質の材料からなる芯材とを含み、前記芯材は、クローラ幅方向に延びる芯材本体と、前記芯材本体のクローラ周方向の第1端面及び第2端面からそれぞれ突出する複数の脱輪防止突起とを含み、前記脱輪防止突起のそれぞれには、クローラ周方向に延びる少なくとも1本の溝部が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の弾性クローラにおいて、前記脱輪防止突起は、前記第1端面から突出する一対の第1突起と、前記第2端面から突出し、かつクローラ周方向に隣接する前記芯材の一対の前記第1突起の間に進入可能な一対の第2突起とを含み、前記第1突起は、クローラ幅方向の内側の第1面が、クローラ周方向に隣接する前記芯材の前記第2突起のクローラ幅方向の外側の第2面に対向して配されており、前記溝部は、前記第1面に形成された第1溝部と、前記第2面に形成された第2溝部とを含むのが望ましい。
【0009】
本発明の弾性クローラにおいて、クローラ周方向に隣接する一対の前記芯材が捻れるような外力が前記クローラ本体に作用したときに、前記第1溝部は、対向する前記第2面の前記第2溝部ではない部分にかみ合い、前記第2溝部は、対向する前記第1面の前記第1溝部ではない部分にかみ合うのが望ましい。
【0010】
本発明の弾性クローラにおいて、前記クローラ本体内に配され、かつ前記芯材よりもクローラ外周側を通ってクローラ周方向に延びるコードからなる抗張体をさらに含み、前記脱輪防止突起のクローラ外周側の部分は、前記抗張体よりもクローラ外周側に位置するのが望ましい。
【0011】
本発明は、弾性クローラに用いられる芯材であって、クローラ幅方向に延びる芯材本体と、前記芯材本体のクローラ周方向の第1端面及び第2端面からそれぞれ突出する複数の脱輪防止突起とを含み、前記脱輪防止突起のそれぞれには、クローラ周方向に延びる少なくとも1本の溝部が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の芯材において、前記脱輪防止突起は、前記第1端面から突出する一対の第1突起と、前記第2端面から突出し、かつクローラ周方向に並べられたときに、一対の前記第1突起の間に進入可能な一対の第2突起とを含み、前記溝部は、前記第1突起のクローラ幅方向の内側に形成された第1溝部と、前記第2突起のクローラ幅方向の外側に形成された第2溝部とを含むのが望ましい。
【0013】
本発明の芯材において、前記第1溝部と前記第2溝部とは、互いの断面形状が同一であるのが望ましい。
【0014】
本発明の芯材において、前記溝部は、前記脱輪防止突起のそれぞれに1本形成されるのが望ましい。
【0015】
本発明の芯材において、前記溝部は、前記脱輪防止突起のそれぞれに複数本形成されるのが望ましい。
【0016】
本発明の芯材において、前記脱輪防止突起のクローラ外周側の外端部は、前記芯材本体のクローラ外周側の外面よりもクローラ外周側に位置するのが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る弾性クローラにおいて、脱輪防止突起のそれぞれには、クローラ周方向に延びる少なくとも1本の溝部が形成されている。このような弾性クローラは、隣接する芯材間に屈曲や捻れ等が生じたときにも溝部がかみ合うことで脱輪防止突起間の外れが発生し難くなる。このため、本発明の弾性クローラは、芯材の重量の増加を抑えながら、脱輪を抑制することが可能になる。
【0018】
本発明に係る芯材において、脱輪防止突起のそれぞれには、クローラ周方向に延びる少なくとも1本の溝部が形成されている。このような芯材は、隣接する芯材間に屈曲や捻れ等が生じたときにも溝部がかみ合うことで脱輪防止突起間の外れが発生し難くなる。このため、本発明の芯材は、重量の増加を抑えながら、脱輪を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の弾性クローラの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】クローラ周方向に並べられた芯材の斜視図である。
【
図4】クローラ周方向に並べられた芯材の平面図である。
【
図6】
図5において隣接する芯材間に捻れが生じたときの断面図である。
【
図7】他の実施形態の脱輪防止突起の断面図である。
【
図8】
図7において隣接する芯材間に捻れが生じたときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき詳細に説明される。
図1は、本実施形態の弾性クローラ1を示す斜視図である。
図1に示されるように、本実施形態の弾性クローラ1は、ゴム等の弾性体からなる無端帯状のクローラ本体2と、クローラ本体2内に配される複数の芯材3と、クローラ本体2内に配される抗張体4とを含んでいる。抗張体4は、芯材3よりもクローラ外周側Zoを通ってクローラ周方向Xに延びるコードからなるのが望ましい。
【0021】
本明細書において、クローラ周方向Xは、弾性クローラ1の回転方向であり、
図1の符号Xで示される方向に相当する。また、クローラ幅方向Yは、弾性クローラ1が車両に装着されるときの駆動輪の軸方向であり、
図1の符号Yで示される方向に相当する。さらに、クローラ厚さ方向Zは、クローラ周方向X及びクローラ幅方向Yに直交する方向であり、
図1の符号Zで示される方向に相当する。クローラ厚さ方向Zのうち、無端帯状の弾性クローラ1の内側はクローラ内周側Zi、外側はクローラ外周側Zoとされる。
【0022】
本実施形態のクローラ本体2は、略一定の幅を有してクローラ周方向Xに連続して延びている。クローラ本体2のクローラ外周側Zoの外面2oには、例えば、クローラ周方向Xに間隔を有して配列される複数本のラグ5が設けられている。ラグ5は、クローラ幅方向Yに延び、不整地走行時のトラクション性を高めるのに適している。
【0023】
クローラ本体2のクローラ内周側Ziの内面2iには、例えば、複数の突起6aからなりクローラ周方向Xにのびる2列の突起列6が形成されている。2列の突起列6間には、例えば、車体側の駆動輪、遊動輪、転輪等が案内される。なお、突起6aは、芯材3に設けられるガイド突起10により補強されるのが望ましい。このような突起列6は、弾性クローラ1の脱輪を抑制することに役立つ。
【0024】
芯材3は、弾性クローラ1に好適に用いられ、クローラ幅方向Yの補強材として機能している。本実施形態の芯材3は、クローラ本体2内にクローラ周方向Xに間隔を空けて配されている。このような芯材3は、クローラ本体2の形状を保持しつつ、車体側の駆動輪、遊動輪等への巻き付けを許容することができる。
【0025】
芯材3は、クローラ本体2を構成する弾性体よりも硬質の材料からなるのが望ましい。芯材3の硬質の材料としては、例えば、鋼、鋳鉄等の金属材料が好適に採用される。なお、芯材3の全体が、クローラ本体2内に配されている必要はなく、その一部分、例えばガイド突起10がクローラ本体2から露出していてもよい。
【0026】
図2は、クローラ周方向Xに並べられた芯材3の斜視図である。
図2に示されるように、本実施形態の芯材3は、クローラ幅方向Yに延びる芯材本体7と、芯材本体7のクローラ周方向Xの第1端面S1及び第2端面S2からそれぞれ突出する複数の脱輪防止突起8とを含んでいる。
【0027】
本実施形態の脱輪防止突起8のそれぞれには、クローラ周方向Xに延びる少なくとも1本の溝部9が形成されている。このような芯材3は、隣接する芯材3間に、クローラ幅方向Y及びクローラ厚さ方向Zの外力が同時に作用するような屈曲や捻れ等が生じたときにも溝部9がかみ合うことで脱輪防止突起8間の外れが発生し難くなる。このため、本実施形態の芯材3は、重量の増加を抑えながら、脱輪を抑制することが可能になる。
【0028】
また、このような芯材3がクローラ周方向Xに並べられた弾性クローラ1は、隣接する芯材3間に上述の屈曲や捻れ等が生じたときにも溝部9がかみ合うことで脱輪防止突起8間の外れが発生し難くなる。このため、本実施形態の弾性クローラ1は、芯材3の重量の増加を抑えながら、脱輪を抑制することが可能になる。
【0029】
図3は、クローラ周方向Xから見た芯材3の正面図であり、
図4は、クローラ周方向Xに並べられた芯材3のクローラ内周側Ziから見た平面図である。
図3及び
図4に示されるように、より好ましい態様として、芯材本体7は、クローラ幅方向Yの中央に配される係合部7Aと、係合部7Aのクローラ幅方向Yの両外側に配される翼部7Bとを含んでいる。係合部7Aは、例えば、駆動輪の歯溝部とかみ合うように形成されている。
【0030】
芯材3は、芯材本体7のクローラ内周側Ziの内面7iからクローラ厚さ方向Zに突出する一対のガイド突起10を含むのが望ましい。ガイド突起10は、例えば、係合部7Aのクローラ幅方向Y両側で立ち上がっている。このようなガイド突起10は、その間で駆動輪、遊動輪、転輪等を挟んでガイドするのに好適である。
【0031】
本実施形態の脱輪防止突起8は、第1端面S1から突出する一対の第1突起8Aと、第2端面S2から突出する一対の第2突起8Bとを含んでいる。一対の第1突起8A及び一対の第2突起8Bは、それぞれ、例えば、クローラ幅方向Yに間隔を隔てて配されている。一対の第2突起8Bは、クローラ周方向Xに隣接する芯材3の一対の第1突起8Aの間に進入可能であるのが望ましい。
【0032】
本実施形態の第1突起8Aは、クローラ幅方向Yの内側の第1面8aが、クローラ周方向Xに隣接する芯材3の第2突起8Bのクローラ幅方向Yの外側の第2面8bに対向して配されている。
【0033】
このような脱輪防止突起8は、クローラ周方向Xに隣接する芯材3にクローラ幅方向Yの外力が作用したとしても、一方側の第1面8aと他方側の第2面8bとが接触して、芯材3間の横ずれ(クローラ幅方向Yのずれ)を抑制することができる。このため、本実施形態の脱輪防止突起8は、弾性クローラ1の脱輪を抑制することができる。
【0034】
図3に示されるように、本実施形態の脱輪防止突起8のクローラ外周側Zoの外端部8oは、芯材本体7のクローラ外周側Zoの外面7oよりもクローラ外周側Zoに位置している。本実施形態では、溝部9が、クローラ厚さ方向Zにおいて、芯材本体7の外面7oを含む位置に形成されている。脱輪防止突起8の外端部8oは、抗張体4よりもクローラ外周側Zoに位置するのが望ましい。このような脱輪防止突起8は、隣接する芯材3間の屈曲や捻れ等に合わせて動く範囲が小さくなり、脱輪防止突起8間の外れが発生し難くなる。
【0035】
図3及び
図4に示されるように、溝部9は、第1突起8Aのクローラ幅方向Yの内側に形成された第1溝部9Aと、第2突起8Bのクローラ幅方向Yの外側に形成された第2溝部9Bとを含むのが望ましい。本実施形態の溝部9は、第1面8aに形成された第1溝部9Aと、第2面8bに形成された第2溝部9Bとを含んでいる。
【0036】
図5は、
図4のA-A線の断面図である。
図5に示されるように、本実施形態の第1溝部9Aと第2溝部9Bとは、互いの断面形状が同一である。すなわち、第1溝部9Aの溝底のクローラ厚さ方向Zの長さL1は、第2溝部9Bの溝底のクローラ厚さ方向Zの長さL2に等しい。また、第1面8aの第1溝部9Aではない部分8cのクローラ厚さ方向Zの長さL3は、第2面8bの第2溝部9Bではない部分8dのクローラ厚さ方向Zの長さL4に等しい。このような溝部9は、かみ合ったときのバランスが良好であり、芯材3の重量の増加を抑えることに役立つ。
【0037】
第1溝部9Aの溝深さd1は、好ましくは、第1突起8Aの幅w1の5%~25%である。第1溝部9Aの溝深さd1が第1突起8Aの幅w1の5%よりも小さいと、隣接する芯材3間に屈曲や捻れ等が生じたときに溝部9がかみ合わないおそれがある。第1溝部9Aの溝深さd1が第1突起8Aの幅w1の25%よりも大きいと、第1突起8Aの耐久性が低下するおそれがある。
【0038】
第2溝部9Bの溝深さd2は、好ましくは、第2突起8Bの幅w2の5%~25%である。第2溝部9Bの溝深さd2が第2突起8Bの幅w2の5%よりも小さいと、隣接する芯材3間に屈曲や捻れ等が生じたときに溝部9がかみ合わないおそれがある。第2溝部9Bの溝深さd2が第2突起8Bの幅w2の25%よりも大きいと、第2突起8Bの耐久性が低下するおそれがある。
【0039】
本実施形態の第1溝部9Aの溝深さd1は、第2溝部9Bの溝深さd2に等しい。また、第1突起8Aの幅w1は、第2突起8Bの幅w2に等しい。このような脱輪防止突起8及び溝部9は、かみ合ったときのバランスが良好であり、芯材3の重量の増加を抑えることに役立つ。
【0040】
図6は、
図5において隣接する芯材3間に捻れが生じたときの断面図である。
図1ないし
図6に示されるように、クローラ周方向Xに隣接する芯材3間に捻れるような外力が作用したとき、すなわちクローラ幅方向Y及びクローラ厚さ方向Zの外力が同時に作用したときに、第1溝部9Aは、対向する第2面8bの第2溝部9Bではない部分8dにかみ合う。同様に、このとき、第2溝部9Bは、対向する第1面8aの第1溝部9Aではない部分8cにかみ合う。
【0041】
本実施形態の溝部9は、脱輪防止突起8のそれぞれに1本形成されている。このとき、第1溝部9Aの長さL1は、第1溝部9Aではない部分8cの長さL3よりも大きいのが望ましい。同様に、第2溝部9Bの長さL2は、第2溝部9Bではない部分8dの長さL4よりも大きいのが望ましい。このような溝部9は、隣接する芯材3間に捻れが生じたときにかみ合い易い。
【0042】
図7は、他の実施形態の脱輪防止突起18の断面図であり、
図8は、
図7において隣接する芯材3間に捻れが生じたときの断面図である。上述の実施形態に対して、脱輪防止突起18以外は同一であり、その説明が省略される。
図7は、
図5相当の断面図であり、
図8は、
図6相当の断面図である。
【0043】
図7及び
図8に示されるように、この実施形態の脱輪防止突起18は、上述の実施形態の脱輪防止突起8と同様に、芯材3の第1端面S1(
図2に示す)から突出する一対の第1突起18Aと、芯材3の第2端面S2(
図2に示す)から突出する一対の第2突起18Bとを含んでいる。
【0044】
この実施形態の脱輪防止突起18のそれぞれには、上述の実施形態の脱輪防止突起8と同様に、クローラ周方向Xに延びる溝部19が形成されている。溝部19は、脱輪防止突起18のそれぞれに複数本、この実施形態では4本形成されている。
【0045】
この実施形態においても、クローラ周方向Xに隣接する芯材3間に捻れるような外力が作用したときに、第1溝部19Aは、対向する第2面18bの第2溝部19Bではない部分18dにかみ合う。同様に、このとき、第2溝部19Bは、対向する第1面18aの第1溝部19Aではない部分18cにかみ合う。
【0046】
この実施形態の溝部19は、4本形成されているので、上述の脱輪防止突起8に比べて、第1突起18Aと第2突起18Bとのクローラ厚さ方向Zのズレが小さい状態でかみ合う。このため、隣接する芯材3間に捻れが生じたときにも、第1突起18Aと第2突起18Bとのクローラ厚さ方向Zのズレを抑制し、弾性クローラ1の耐久性を向上させることができる。また、この溝部19は、大きい外力により第1突起18Aと第2突起18Bとのズレが大きくなったときにも、一部の溝部19がかみ合うことで、脱輪防止突起18間の外れが発生し難くなる。このため、この実施形態の脱輪防止突起18は、脱輪をより確実に抑制することができる。
【0047】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施し得る。
【実施例】
【0048】
図1に示す構造を有する弾性クローラが、表1の仕様に基づいて試作された。各試作クローラが小型建設機械の走行装置に装着され、突起物への乗り上げ及び旋回を含む走行試験を行ったときの耐脱輪性について評価された。比較例及び実施例は、溝部を除いてそれぞれ脱輪防止突起の断面形状及び断面サイズは同一である。このため、実施例の芯材の重量は、比較例の芯材の重量よりも小さいものとなった。
【0049】
<耐脱輪性>
走行試験において、弾性クローラが転輪から外れて脱輪が発生した回数が測定された。結果は、5段階で表示され、数値が大きいほど脱輪発生回数が少なく、耐脱輪性に優れていることを示す。
【0050】
【0051】
評価の結果、実施例の弾性クローラは、比較例に対して、耐脱輪性に優れており、芯材の重量の増加を抑えながら、脱輪を抑制することが可能になることが確認された。
【符号の説明】
【0052】
1 弾性クローラ
2 クローラ本体
3 芯材
7 芯材本体
8 脱輪防止突起
9 溝部