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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】眼科撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/10 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61B3/10 100
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019180052
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053198
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 晃一
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-142313(JP,A)
【文献】特開2014-140489(JP,A)
【文献】特開2014-057899(JP,A)
【文献】特表2014-512242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0107960(US,A1)
【文献】特開2017-205658(JP,A)
【文献】特開2017-029282(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 - 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の組織に照射される測定光と参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて前記組織のOCTデータを取得するためのOCT光学系であって、前記組織上で前記測定光を走査するための光スキャナを有するOCT光学系と、
前記組織の正面画像を取得するための第2光学系と、
前記OCT光学系と前記第2光学系との共通光路上に配置されていることによって、前記OCT光学系と前記第2光学系との間に曲の相違を生じさせる、非対称性を持つ光学素子と、
前記光スキャナにおける振り角毎にあらかじめ定められた、前記振り角と前記正面画像上の座標との対応関係であって前記歪曲の相違に応じた非線形な対応関係、を表す対応情報に基づいて、指定されたスキャンラインに対して前記振り角を制御することによって、又は、
前記振り角の値と前記対応情報とに基づいてスキャンラインを示す曲線の前記正面画像上の位置情報を取得し更に前記曲線を前記正面画像上に重畳表示することによって、前記正面画像の座標上に前記OCTデータの取得位置を対応付ける演算制御手段と、を備える眼科撮影装置。
【請求項2】
前記対応情報は、前記光スキャナにおける振り角と画角との対応関係を表す第1対応情報と、前記正面画像上の座標と画角との対応関係を表す第2対応情報と、を含み、前記画角を介して前記光スキャナにおける振り角が前記正面画像の座標と対応付け可能となる、請求項記載の眼科撮影装置。
【請求項3】
前記演算制御手段は、前記正面画像の座標上に前記OCTデータの取得位置を対応付けることによって、前記正面画像上に前記取得位置を示すグラフィックを重畳表示させる、請求項1又は2記載の眼科撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科分野において、被検眼の組織のOCTデータを撮影する装置である、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)が広く利用されている。このような装置の一種として、OCT光学系の他に、眼底正面画像を撮影する光学系(例えば、観察光学系)を備えた装置が知られている。眼底正面画像は、例えば、OCTデータの取得位置を撮影前に計画したり、撮影後に確認したりするために利用される(特許文献1参照)。
【0003】
眼科分野のOCT撮影においては、黄斑-乳頭領域等の眼底中心部における組織の構造および厚み等が、診断・観察における関心の中心である。しかし、近年では、眼底中心部だけでなく、眼底の周辺部に対する関心が高まりつつある。これに対し、OCTデータの撮影範囲を広角化するための光学系が、例えば、本件発明者等によって提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-57899号公報
【文献】特開2019-25255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
OCT光学系と眼底正面画像を撮影する光学系との共通光路上に、非対称性を持つ光学素子が配置される場合がある。この場合、2つの光学系の間における歪曲の相違が、光学素子に起因して生じる場合があること、を本発明者は見出した。歪曲の相違の影響は、撮影範囲の中心部と比べて、周辺部において強調されやすい。その結果、正面画像の座標とOCTデータの取得位置とが、撮影範囲の全体にわたって精度良く対応付けられていない可能性があった。このような撮影範囲の全体にわたる対応精度の問題については、画角が広がるほどに明確となるところ、OCT撮影が主に眼底中心部の撮影に利用される従来の状況下では看過されていた。
【0006】
本開示は、従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、正面画像の座標とOCTデータの取得位置との対応精度が改善された眼科撮影装置を提供すること、を技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る眼科撮影装置は、被検眼の組織に照射される測定光と参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて前記組織のOCTデータを取得するためのOCT光学系であって、前記組織上で前記測定光を走査するための光スキャナを有するOCT光学系と、
前記組織の正面画像を取得するための第2光学系と、前記OCT光学系と前記第2光学系との共通光路上に配置されていることによって、前記OCT光学系と前記第2光学系との間に曲の相違を生じさせる、非対称性を持つ光学素子と、前記光スキャナにおける振り角毎にあらかじめ定められた、前記振り角と前記正面画像上の座標との対応関係であって前記歪曲の相違に応じた非線形な対応関係、を表す対応情報に基づいて、指定されたスキャンラインに対して前記振り角を制御することによって、又は、前記振り角の値と前記対応情報とに基づいてスキャンラインを示す曲線の前記正面画像上の位置情報を取得し更に前記曲線を前記正面画像上に重畳表示することによって、前記正面画像の座標上に前記OCTデータの取得位置を対応付ける演算制御手段と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、正面画像の座標とOCTデータの取得位置との対応精度が改善される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例に係る眼科撮影装置の概略構成を示した図である。
図2】眼科撮影装置の主要な光学系を示した図である。
図3】対応情報を説明するための図である。
図4】眼科撮影装置の動作を示したフローチャートである。
図5】スキャンラインを示すグラフィックが重畳表示される眼底正面画像を示した図である。
図6】測定光によってラスタースキャンされる領域を示す第2のグラフィックが重畳表示される眼底正面画像を示した図である。
図7】撮影結果の確認画面の一例を示した図である。
図8】3次元モデルを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示の実施形態を説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0011】
初めに、実施形態に係る眼科撮影装置を説明する。眼科撮影装置は、OCT光学系と、第2光学系と、演算制御手段(演算制御部)と、を有する。
【0012】
<OCT光学系>
本実施形態において、OCT光学系は、被検眼の組織のOCTデータを取得するために利用される。OCT光学系は、被検眼の組織に照射される測定光と参照光とのスペクトル干渉信号を検出する。OCTデータは、スペクトル干渉信号を処理することによって、生成および取得される。
【0013】
また、OCT光学系は、光分割部、走査部(光スキャナともいう)、検出器のうち少なくともいずれかを備えてもよい。光分割部は、OCT光源からの光を測定光と参照光とに分割する。走査部は、被検眼の組織上で測定光を走査するためのデバイスである。走査部は、互いに交差する2方向に、測定光を走査可能であってもよい。例えば、2方向の各一方に測定光を走査する2つのガルバノミラーを、走査部として備えていてもよい。検出器は、被検眼に導かれた測定光と、参照光と、を受光することによって、スペクトル干渉信号を出力する。OCT光学系は、被検眼の組織上であらかじめ定められた複数のスキャンラインに沿って、測定光を走査し、複数のスキャンラインのそれぞれのOCTデータを撮影してもよい。スキャンラインは、検者からの指示に基づいて任意の位置に設定されてもよい。また、あらかじめ定められた複数のスキャンパターンのうちいずれかが選択されることで、スキャンパターンと対応するスキャンラインが設定されてもよい。スキャンパターンとしては、ライン、クロス、マルチ、マップ、等の種々のものが知られている。
【0014】
<第2光学系>
第2光学系は、被検眼の組織の正面画像を取得するために利用される。第2光学系は、第2光源からの第2光を、被検眼の組織に照射し、第2光の反射光に基づいて、正面画像を取得してもよい。正面画像は、例えば、OCTデータの取得位置の計画、設定、および、確認の少なくともいずれかに利用されてもよい。このとき、制御部によって、OCTデータの取得位置が正面画像上に重畳され、表示されてもよい。
【0015】
第2光学系は、第2光源と、検出器と、を少なくとも有する。第2光学系は、走査型の光学系であってもよいし、非走査型の光学系であってもよい。第2光と、OCT光源からの光との波長帯は、互いに異なっていてもよい。これにより、OCT光学系の光路(第1光路)と第2光学系の光路(第2光路)とは、ダイクロイックミラーによって1つの光路に結合されてもよい。これにより、ダイクロイックミラーによって、OCT光学系の光軸と、第2光学系の光軸と、が略一致されて、被検眼へ導かれる。この場合、ダイクロイックミラーと、被検眼との間に、OCT光学系の光路と第2光学系との間で共用される、対物光学系が配置されてもよい。また、OCT光学系におけるOCT光源および検出器と、第2光学系における第2光源および検出器と、は、それぞれの独立光路に配置されていてもよい。
【0016】
<OCTデータの取得位置と、正面画像の座標と、の対応付け>
ところで、ダイクロイックミラーは、光軸に対して傾斜配置されていることによって、非対称性を持つ光学素子の1つとなる。ダイクロイックミラーによって、OCT光学系および第2光学系の間において歪曲の相違が生じ得る。
【0017】
例えば、ダイクロイックミラーは、OCT光学系および第2光学系の少なくとも一方に対し、光軸に関して非対称な歪曲を生じさせる場合がある。この場合、OCT光学系における走査部の振り角と画角との関係、および、正面画像上の座標と画角との関係、とのいずれかが、非線形な関係となる。結果、OCT光学系における走査部の振り角と、正面画像上の座標との関係が非線形な関係になる。この場合、撮影範囲の中心部において正面画像上の座標とOCTデータの取得位置とを線形的に対応付けてしまうと、周辺部においては、実際のOCTデータの取得位置と、正面画像上において示される取得位置との間に、大きな誤差が生じてしまう。
【0018】
なお、近年では、広画角に撮影可能なOCTが提案されているが、この種の装置では、いっそうのこと、上記の歪曲の相違の影響が問題となりやすくなる。ここでいう広画角とは、黄斑―乳頭間に対して周辺側に位置する眼底周辺部が、OCT光学系における撮影範囲に含まれていることをいう。ここで、標準的な成人の眼底では、黄斑-乳頭間の網膜上での距離は約14mmと言われており、水平方向の撮影画角にして約47°に換算される。つまり、OCT光学系における水平方向の撮影画角が47°よりも広い場合において、歪曲の相違の影響が、問題化しやすくなる。
【0019】
また、例えば、ダイクロイックミラーに起因するOCT光学系および第2光学系の間の光軸ズレによって、歪曲の相違が生じる場合も考えられる。
【0020】
これに対し、本実施例の演算制御部は、ダイクロイックミラーのような非対称性を持つ光学素子に起因するOCT光学系と第2光学系との間の歪曲の相違を考慮して、正面画像の座標上にOCTデータの取得位置を対応付ける。これにより、正面画像上の座標と、OCTデータの取得位置とが、各位置において、良好に対応付され得る。
【0021】
この場合において、演算制御部は、あらかじめ定められた対応情報に基づいて、正面画像の座標上にOCTデータの取得位置を対応付けてもよい。このとき、正面画像の座標上にOCTデータの取得位置とが、対応情報に基づいて、非線形に対応付けられてもよい。
【0022】
対応情報は、例えば、光スキャナにおける振り角毎にあらかじめ定められた、振り角と正面画像上の座標との対応関係を表す。対応情報は、振り角と正面画像上の座標との非線形な対応関係を示すものであってもよい。
【0023】
より詳細には、対応情報は、次のような第1対応情報および第2対応情報の組み合わせであってもよい例えば、第1対応情報は、光スキャナにおける振り角毎にあらかじめ定められた、振り角と画角との対応関係を表す情報である。また、第2対応情報は、正面画像上の座標と画角との対応関係を表す情報である。第1対応情報および第2対応情報の組み合わせによって、画角を介して、光スキャナにおける振り角と正面画像の座標とが対応付け可能となる。
【0024】
なお、OCT光学系と第2光学系との間における倍率色収差も、歪曲の相違に影響を与える。これに対し、上記の対応情報を利用することによって、倍率色収差の影響についてもまとめて補正されてもよい。なお、倍率色収差は、対物光学系が屈折系である場合において、主に、対物光学系に起因して生じ得る。
【0025】
なお、本実施形態において、各対応情報における画角は、互いに同一の位置を基準(原点)としている。例えば、OCT光学系および第2光学系における共通光路上の一点を基準とした値であってもよい。例えば、射出瞳の位置が、基準であってもよい。
【0026】
<正面画像上へのOCTデータ取得位置の重畳表示>
演算制御部は、上記のような対応付けの結果として、正面画像上にOCTデータの取得位置を示すグラフィックを重畳表示させてもよい。グラフィックの態様は、スキャン手法に応じて種々の態様の中から適宜選択され得る。例えば、スキャンポイントを示す点状のグラフィック、スキャンラインを示す線状のグラフィック、マップスキャンの範囲を示す2次元図形のグラフィック等のうちいずれかが、適宜適用されてもよい。線状のグラフィック、および、2次元図形のグラフィックによって、被検眼の組織上における測定光の軌跡が示される。
【0027】
この場合において、演算制御部は、画角に関して等間隔に画素が並べられた正面画像を生成してもよい。該正面画像上に、OCTデータの取得位置を示すグラフィックが重畳表示される。画角に関して等間隔に画素が並べられた正面画像では、垂直方向および水平方向の各方向において、隣り合う画素間における画角の差が一定である。これにより、例えば、OCTデータの取得位置を、正面画像上の各画素に対して、精度よく対応づけることができる。
【0028】
また、演算制御部は、光軸から離れた位置に設定される、主走査線(ここでは、水平方向の走査線)に沿ったスキャンラインを、曲線によるグラフィックとして正面画像に対して重畳表示させてもよい。組織における測定光の走査位置と、正面画像上の走査位置とが、曲線を介して対応付けらられる。
【0029】
このとき、スキャンラインと対応する走査部の振り角の値と、対応情報と、に基づいて、スキャンラインを示す曲線を求めてもよい。例えば、スキャンラインの始点と終点とに対応する振り角と、該振り角と対応する正面画像上の座標位置および、該振り角の中間値と対応する正面画像上の座標位置、を通過する線を求めてもよい。該線を示すグラフィックが、眼底正面画像上に重畳表示されてもよい。
【0030】
また、演算制御部は、2点を結ぶスキャンラインを示すグラフィックとして、2点間の走査において走査部が等角速度で駆動するときの測定光の軌跡を、前述の対応情報に基づいて生成してもよい。ここで、走査部として、ガルバノミラー等の等角速度で動作可能なデバイスが適用された場合における、測定光の軌跡を、正面画像上に精度よく描画できる。
【0031】
2点は、スキャンラインの始点および終点であってもよいし、中間点を含むスキャンライン上の任意の2点であってもよい。
【0032】
<走査部の駆動制御>
以上の説明では、OCTデータの取得位置にあわせて、正面画像上に重畳される該取得位置を示すグラフィックが加工される。しかし、必ずしもこれに限られるものでは無い。例えば、OCTデータの取得位置を計画する際に、正面画像上に、任意のスキャンラインを設定可能であってもよい。例えば、スキャンラインは、正面画像上の直線によって示されてもよい。OCTデータの取得位置の計画が完了したときには、スキャンラインの各位置と対応する正面画像上の座標情報が、取得されてもよい。演算制御部は、スキャンラインの各位置と対応する正面画像上の座標情報と、対応情報と、に基づいて走査部を駆動制御してもよい。これにより、正面画像上におけるOCTの取得位置が、測定光によって精度よく眼底上でトレースされる。
【0033】
<他の非対称性を持つ光学素子について>
なお、上記説明では、非対称性を持つ光学素子として、ダイクロイックミラーを例示したが、必ずしもこれに限定されない。例えば、非対称性を持つ光学素子は、偏心して配置される対物光学系であってもよい。この場合、OCT光学系および第2光学系の光軸に対し、偏心した光軸(傾斜を含む)を対物光学系は有する。
【0034】
「実施例」
次に、一つの実施例について説明する。図に示した眼底撮影装置(OCTデバイス)1は、実施形態に係る眼科撮影装置の一種である。
【0035】
<眼底撮影装置の全体構成>
まず、図1を参照して、眼科撮影装置1(以下、「本装置1」と称する。)の概略構成を説明する。
【0036】
本装置1は、OCT光学系(干渉光学系)100と、第2光学系200と、制御部70と、を有する。本実施形態において、OCT光学系100は、被検眼Eの所定部位の断層画像を光干渉の技術を用いて非侵襲で得るために利用される。また、第2光学系200は、被検眼Eの所定部位の正面画像を得るために利用される。以下、本実施形態では、被検眼Eの所定部位は、被検眼Eの眼底部位であるものとする。
【0037】
一例として、本実施例におけるOCT光学系(干渉光学系)100と、第2光学系200と、のそれぞれは、110°の画角で、眼底を撮影可能である。なお、これは、広画角に撮影可能な光学系の一例に過ぎず、画角は、必ずしもこれに限定されない。
【0038】
制御部70は、CPU、および、各種メモリ等によって構成される。制御部70は、本装置1における画像処理部を兼用してもよい。
【0039】
追加的に、本装置1は、記憶部72、操作部75、および、モニタ80を、有していてもよい。各部は、制御部70と電気的に接続されていてもよい。
【0040】
本実施例において、対応情報は、あらかじめ記憶部72に記憶されていてもよい。
【0041】
操作部75は、マウスおよびタッチパネル等のポインティングデバイスであってもよいし、その他のユーザインターフェースであってもよい。
【0042】
<光学系>
次に、図2を参照して、本装置1の光学系を説明する。以下の説明では、図2に示すように、被検眼Eの奥行き方向を、Z方向(作動距離方向)、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向と、それぞれ称する。
【0043】
図2に示すように、本装置1において、OCT光学系100と、第2光学系200とは、ダイクロイックミラー160および対物光学系170を共用する。OCT光学系100と、第2光学系200とは、ダイクロイックミラー160によって、波長選択的に光路が結合/分岐される。本実施例において、OCT光学系100による測定光と第2光学系200による第2光との間で、波長帯が互いに異なっている。図2に示すように、ダイクロイックミラー160は、OCT光学系100による測定光を透過すると共に、第2光学系200による第2光を反射してもよい。
【0044】
<OCT光学系>
以下では、一例として、SD-OCTが適用された場合におけるOCT光学系100について示す。但し、必ずしもこれに限定されるものでは無い。OCT光学系100は、例えば、SS-OCTの光学系であってもよいし、その他の撮影原理によるOCT光学系であってもよい。
【0045】
図2に示す、OCT光学系100は、OCT光源110、光分割器120、検出器130、参照光学系140、および、導光光学系150、を備えている。なお、本実施例において図示および説明を省略するが、OCT光学系100は、光路長調整部、偏光調整部、および、フォーカス調整部等の各種の調整部を有していてもよい。
【0046】
SD-OCTにおいて、OCT光源110は、低コヒーレント光を発する。OCT光源110から出射された光は、光分割器120によって、測定光と参照光とに分割される。本実施例において、光分割器120は、カップラ(スプリッタ)が利用される。測定光は、導光光学系150を介して被検眼の眼底へ導かれ、参照光は、参照光学系140へ導かれる。
【0047】
図2に示す参照光学系140は、反射光学系が用いられるが、必ずしもこれに限られるものではない。例えば、参照光学系140は、透過光学系によって形成されてもよい。参照光学系140において、参照光は、図示なきミラーによって折り返され、光分割器120によって、測定光の戻り光と合波された状態で、検出器130へ入射する。
【0048】
SD-OCTにおいて、検出器130は、スペクトロメータ(分光検出器)である。検出器130は、戻り光と参照光とのスペクトル干渉信号を出力する。戻り光と、参照光とのスペクトル干渉信号に基づいて、眼底のOCTデータが取得される。
【0049】
本実施例では、光分割器120と被検眼との間に配置される光学系を、導光光学系150と称する。導光光学系150には、走査部(光スキャナ)155、ダイクロイックミラー160、対物光学系170、が配置されている。
【0050】
走査部155は、OCTデータの取得位置を、眼底上で変更するために利用される。走査部155は、測定光を、眼底(被検物)上で二次元的(XY方向)に走査させるために利用されてもよい。本実施例において、走査部155は、走査方向が互いに異なる2つの光スキャナを含んでいる。一例として、以下の説明では、X方向に走査するためのXガルバノミラーと、Y方向に走査するためのYガルバノミラーと、を有していてもよい。
【0051】
対物光学系170は、測定光の旋回点を形成し、旋回点を介して測定光を被検眼の眼底へ導く。対物光学系170に関して、走査部155は、被検眼の瞳と共役な位置に配置される。これにより、測定光は、走査部155の駆動量に応じて、瞳上の一点を旋回点として旋回される。
【0052】
なお、本開示において「共役」とは、必ずしも完全な共役関係に限定されるものではなく、「略共役」を含むものとする。即ち、眼底画像の利用目的(例えば、観察、解析等)との関係で許容される範囲で、完全な共役位置からズレて配置される場合も、本開示における「共役」に含まれる。
【0053】
<第2光学系>
第2光学系200は、被検眼の眼底の正面画像を取得するために利用される。本実施例における第2光学系200は、走査型の光学系(SLO光学系:Scanning Light Ophthalmoscope光学系)である。特に、眼底上でスポット状の光束を2次元的に走査する、2次元スキャンタイプのSLO光学系が、第2光学系200として適用された場合を説明する。
【0054】
本実施例において、第2光学系200は、正面画像として観察画像を取得する観察光学系を兼用する。観察画像は、動画像であり、リアルタイムにモニタ80へ表示されてもよい。また、所定のトリガ(例えばレリーズ信号)に基づいて取得される正面画像が、撮影画像としてメモリ72へ保存されてもよい。
【0055】
第2光学系200は、第2光源210、ビームスプリッタ220、走査部230、ダイクロイックミラー160、対物光学系170、および、検出器(受光素子)240、を有する。第2光源210は、第2光として、赤外光および可視光を出射してもよい。赤外光は、観察画像を取得する際に、出射されてもよい。第2光は、ビームスプリッタ220、走査部230、ダイクロイックミラー160、対物光学系170、を順に通過し、被検眼の眼底に導かれる。
【0056】
ビームスプリッタ220は、穴開きミラーであってもよいし、ハーフミラーであってもよい。
【0057】
走査部230は、第2光を、眼底上でXY方向に走査させるためのデバイスである。本実施例では、眼底上で第2光をラスタースキャンするために、走査部230が利用される。本実施例において、走査部230は、高速に駆動する主走査用光スキャナと、副走査用光スキャナと、を含む。主走査用光スキャナには、例えば、レゾナントスキャナや、ポリゴンミラーが利用されてもよい。副走査用光スキャナには、例えば、ガルバノミラー等が利用されてもよい。
【0058】
走査部230は、対物光学系170に関して、被検眼の瞳と共役な位置に配置される。これにより、被検眼の瞳には、第2光の旋回点が形成され、第2光は旋回点を中心として旋回される。
【0059】
第2光の眼底反射光は、投光時の経路を遡って、ビームスプリッタ220へ導かれる。本実施例では、ビームスプリッタ220によって反射された光が、検出器240によって受光される。2次元スキャンタイプのSLO光学系において、検出器240は点受光素子であってもよい。また、検出器240とビームスプリッタ220との間の眼底共役位置には、図示なき共焦点絞りが配置されていてもよい。
【0060】
検出器240からの受光信号は、制御部70へと入力される。制御部70は、検出器240からの受光信号に基づいて眼底の正面画像が生成され、取得される。
【0061】
<対応情報について>
本実施例において、ダイクロイックミラー160は、各光学系100,200の光軸Lに対して傾斜配置されている。第2光がダイクロイックミラー160を通過する際、ダイクロイックミラー160の表面において、光線が屈折する。第2光学系200において、ダイクロイックミラー160に対し、Y走査方向に関して光軸L1に対称な2本の光束が入射した場合、2本の光線はダイクロイックミラー160において非対称に折れ曲がる。その結果、走査部230におけるYガルバノミラーの振り角と正面画像の座標との対応関係が、Y走査方向に関して非線形なものとなる。つまり、第2光学系200における収差に対し、非対称な歪曲が与えられる。一方、測定光は、ダイクロイックミラー160の表面で反射される前後で、走査部150におけるYガルバノミラーの振り角とOCTデータの取得位置との対応関係は、Y走査方向に関して線形である。よって、本実施例では、OCT光学系100における走査部150の振り角と、正面画像の座標との対応関係が、Y走査方向に関して非線形なものとなっている。
【0062】
これに対し、本実施例では、対応情報を利用することによって、正面画像の座標とOCTデータの取得位置とが適正に対応付けられる。
【0063】
本実施例では、対応情報として、OCT用対応情報(本実施例における第1対応情報)と、SLO用対応情報(本実施例における第2対応情報)と、が記憶部72に記憶されている。
【0064】
OCT用対応情報は、OCT光学系100における走査部150の振り角(x,y)と画角(Θx,Θy)との対応関係を、画角毎に示す(図3参照)。同様に、SLO用対応情報は、第2光学系200における走査部230の振り角(x,y)と画角(Θx,Θy)との対応関係を、画角毎に示す。SLO用対応情報における走査部230の振り角(x,y)は、正面画像上の座標と1対1で対応する。つまり、本実施例のSLO用対応情報は、画角(Θx,Θy)と正面画像上の座標との対応関係が示されている。
【0065】
このようなOCT用対応情報と、SLO用対応情報と、の各々は、振り角と画角との対応関係が、画角毎に各々規定されたルックアップテーブルであってもよい。また、振り角と画角との対応関係が規定された関数であってもよい。
【0066】
本実施例における対応情報は、例えば、光線追跡法によるシミュレーションに基づく情報であってもよい。また、例えば、画角校正用の模型眼を用いたキャリブレーションに基づく情報であってもよい。この場合、対応情報は、装置毎に固有の情報であってもよい。
【0067】
第2光学系200における非対称な歪曲の影響(つまり、Y方向に関する走査部230の振り角と正面画像の座標との対応関係の非線形性)は、SLO用対応情報に基づいて補正できる。例えば、一定の振り角毎に走査線を取得した正面画像を、SLO用対応情報に基づいて、画角(Θx,Θy)に関して対称な座標系で表現されるように、座標変換してもよい。このとき、少なくともY方向に関して非線形な座標変換が行われる。なお、画像処理に限らず、Y方向に関する走査部230の制御パラメータにおいて、SLO用対応情報が考慮されてもよい。この場合、画角(Θx,Θy)に関して対称な座標系で表現される眼底正面画像が取得されるように、Y方向に関する走査部230の制御パラメータを、SLO用対応情報に基づいて逆算してもよい。
【0068】
なお、OCT光学系100と第2光学系200との間における倍率色収差の相違も、正面画像の座標とOCTデータの取得位置との対応関係の誤差に、影響を及ぼす。これに対し、上記の対応情報を利用することによって、倍率色収差の影響についてもまとめて補正され得る。第2光学系200において第2光源210が複数の波長の光を出射する場合、波長成分毎(チャンネル毎)に倍率色収差の影響は異なるので、SLO用対応情報は、波長成分毎に用意されていてもよい。
【0069】
<動作説明>
次に、図4に示すフローチャートを参照しつつ、実施例に係る本装置1の動作を説明する。
【0070】
まず、OCT光学系100および第2光学系200の各々で眼底が撮像可能な状態となるように各部の調整が行われる(S1)。また、第2光学系200を介して観察画像として眼底正面画像の取得が開始される(S2)。各部の調整(S1)では、例えば、アライメント調整、OCT光学系100および第2光学系200におけるフォーカス調整、OCT光学系100における偏光調整、光路長調整等が適宜行われてもよい。
【0071】
<OCTデータの取得位置の計画>
次に、OCTデータの取得位置が、設定されてもよい(S3)。本実施例では、スキャンラインとして取得位置が設定される。スキャンラインは、例えば、画面に表示される眼底の正面画像を介した操作入力に基づいて設定されてもよい。このとき表示される眼底の正面画像は、第2光学系200を介して取得されたものである。また、眼底の正面画像として、観察画像が表示されてもよい。
【0072】
眼底正面画像は、画角(Θx,Θy)に関して対称な座標系で表現されるように、SLO用対応情報に基づいて補正されたうえで表示される。このような眼底正面画像では、座標と画角との対応関係が、SLO用対応情報に基づいて既知の関係となる。一例として、本実施例では、画角に関して等間隔に画素が並べられた眼底正面画像が表示される。
【0073】
操作入力は、正面画像上でスキャンラインの始点と終点とを少なくとも設定するものであってもよい。この場合、始点と終点との位置に応じて、OCT光学系100における走査部150の制御パラメータ(入力)が定められる。前述の通り、眼底正面画像における各座標と画角との対応関係は既知であるため、眼底正面画像上でスキャンラインが設定された場合、そのスキャンライン上の各座標と対応する画角の値を得ることができる。OCT用対応情報には、OCT光学系100における走査部150の振り角(x,y)と画角(Θx,Θy)との対応関係が示されているので、スキャンライン上の各座標と対応する走査部150の振り角(x,y)を得ることができる。これを走査部150の制御パラメータとして取得することで、設定されたスキャンラインに対して測定光を精度よく走査できる。
【0074】
また、予め定められた複数のスキャンパターンの中からいずれかが選択されてもよい。この場合、スキャンパターンの選択操作が、操作部75を介して入力される。スキャンパターンとしては、例えば、ラスタースキャン(マップスキャン)、互いに離間した複数の走査ラインを走査するマルチスキャン、複数の走査ラインが互いに交差するクロススキャン、複数の走査ラインが放射状に形成されるラジアルスキャン等が挙げられる。本実施例において、走査部150の制御パラメータは、スキャンパターン毎にあらかじめ定められていてもよい。スキャンパターンを構成する各スキャンラインの始点および終点と対応する走査部150振り角、および、その間の駆動速度が、制御パラメータとして、あらかじめ定められている。
【0075】
眼底の正面画像を介してスキャンラインを設定する際には、眼底の正面画像と共に、該正面画像に対してスキャンラインを示すグラフィック501が重畳表示される。本実施例では、このとき、グラフィック501は、必ずしも直線によって示されず、曲線として示される場合がある。すなわち、本実施例では、2つのガルバノスキャナの各々を等角速度に駆動するときの測定光の軌跡上にある正面画像の各座標を、OCT用対応情報およびSLO用対応情報に基づいて求め、各座標を通過する直線または曲線を、グラフィック501として表示してもよい。これにより、本実施例では、走査部150における2つのガルバノスキャナの各々を等角速度に駆動させたときのスキャンラインが、グラフィック501よって精度よく表示される。
【0076】
同様に、マップスキャンの範囲が、正面画像上の2次元領域に対して設定される場合は、マップスキャンの外延と対応する正面画像の各座標を、OCT用対応情報およびSLO用対応情報に基づいて求め、各座標によって囲まれる領域を、グラフィック502として表示してもよい(図6参照)。
【0077】
<OCTデータの撮影>
スキャンラインの設定後、設定されたスキャンラインに沿って、眼底上で測定光を走査させ、OCTデータを撮影する(S4)。このとき、本実施例では、スキャンラインの始点―終点間において、2つのガルバノスキャナの各々を等角速度に駆動させる。これにより、正面画像上でスキャンラインが重畳された眼底領域が、精度よく測定光によってトレースされる。
【0078】
<撮影結果の表示>
撮影されたOCTデータは、モニタ80上に表示されてもよい(S5)。このとき、OCTデータと共に、眼底正面画像およびOCTデータの取得位置(ここではスキャンライン)を示すグラフィックが示されてもよい。グラフィックは、撮影の際にOCTデータと対応付けられた取得位置情報、および予め記憶部72に記憶される対応情報に基づいて表示されてもよい。グラフィックは、<OCTデータの取得位置の計画>と同様にして、眼底正面画像上に重畳表示されてもよい。例えば、取得位置情報として、スキャンラインの始点と終点とに対応する振り角が、撮影の際に取得され、OCTデータと対応付けられていてもよい。該振り角と対応する正面画像上の座標位置および、該振り角の中間値と対応する正面画像上の座標位置、を通過する線を求めてもよい。該線を示すグラフィックを、眼底正面画像上に重畳表示してもよい。
【0079】
複数ラインのOCTデータが撮影され、そのうち一部がモニタ80上に表示される場合、モニタ上には、その一部のOCTデータのスキャンラインを示すグラフィックが、少なくとも表示される。例えば、図7において示すように、複数のスキャンラインのそれぞれを示す複数のグラフィック601~605が重畳表示されてもよく、この場合、モニタ80においてOCTデータとして表示中と対応するグラフィック(図7では符号604で示す)が、他のグラフィックに対して異なる態様で表示されてもよい。
【0080】
「変容例」
以上、実施形態および実施例に基づいて説明を行ったが、本開示を実施するうえで、実施形態および実施例の内容は、適宜変更することができる。
【0081】
例えば、上記実施例における<OCTデータの取得位置の計画>、<撮影結果の表示>において、OCTデータの取得位置を示すグラフィックが重畳表示される眼底正面画像として、観察画像を例示したが、必ずしもこれに限られるものではない。観察画像に限らず、第2光学系による撮影画像上にOCTデータの取得位置を示すグラフィックが重畳表示されてもよい。また、他の撮影装置によって撮影された被検眼の眼底正面画像が、本装置1へ予めインポートされていることで、その眼底正面画像上にOCTデータの取得位置を示すグラフィックが重畳表示されてもよい。この場合、他の撮影装置による眼底正面画像における各領域(座標)は、第2光学系による眼底正面画像における各領域(座標)と、対応付けられており、対応関係を示す情報(第3対応情報という)を有していることが望ましい。第1~第3対応情報を利用して、他の撮影装置による眼底正面画像上の座標と、OCTデータの取得位置との対応関係を特定できる。
【0082】
また、上記実施例において正面画像は、画角に関して等間隔に画素が並べられるものとして説明した。画角に関して等間隔に画素が並べられる場合、正面画像は、図8に示すような3次元眼底モデルによって表示されてもよい。3次元眼底モデルの各領域は、予め各領域と画角とが対応付けられている。3次元眼底モデルを介して表示されることによって、眼底に対するスキャンラインの位置をより適切に検者に把握させることができる。
【0083】
また、例えば、上記実施例において、第2光学系は、観察面上でスポット状に集光される光を、2次元的に走査するものであった。但し、必ずしもこれに限られるものではなく、第2光学系は、いわゆるスリットスキャン(ラインスキャン)光学系であってもよいし、非走査型の光学系であってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 眼科撮影装置
70 演算制御部
100 OCT光学系
160 ダイクロイックミラー
200 第2光学系
E 被検眼
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8