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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ周縁加工システム
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20231017BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231017BHJP
   B25J 5/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B24B9/14 A
B24B41/06 A
B25J5/00 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019183316
(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公開番号】P2021058947
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】100166785
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 智也
(72)【発明者】
【氏名】武市 教児
(72)【発明者】
【氏名】山本 忠正
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05454194(US,A)
【文献】特開2003-200337(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109773617(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109500690(CN,A)
【文献】中国特許第105437019(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/00 - 13/06
B24B 27/00
B24B 41/06
B25J 1/00 - 21/02
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ周縁加工システムであって、
前記眼鏡レンズを加工するための複数の工程のうち、互いに異なる工程を実行すると共に、互いに異なる筐体を有する複数の眼鏡製作用装置と、
複数の関節部を有するアーム部、および、前記アーム部に設けられて対象物の保持および保持解除を行う保持部を備え、前記関節部を介して前記アーム部を回転させることで、前記保持部に保持された前記対象物を移動させるロボットアームと、
を備え、
前記複数の眼鏡製作用装置には、
前記眼鏡レンズのレンズ面に対する適切な位置に自動的にカップを取り付けるカップ取り付け装置と、
前記カップ取り付け装置によって前記眼鏡レンズに取り付けられた前記カップを治具として、前記眼鏡レンズを装着すると共に、装着した前記眼鏡レンズの周縁を加工するレンズ加工装置と、
が含まれており、
前記ロボットアームは、前記複数の関節部の少なくともいずれかを介して前記アーム部を回転させることで、前記対象物として少なくとも眼鏡レンズを、前記カップ取り付け装置の設置位置に移動させると共に、前記カップ取り付け装置によって自動的にカップが取り付けられた前記眼鏡レンズを、前記レンズ加工装置の設置位置に移動させることを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工システム。
【請求項2】
請求項1に記載の眼鏡レンズ周縁加工システムであって、
前記ロボットアームは、設置面に対して交差する方向に延びる回転軸を中心として前記保持部を旋回移動させて、各々の前記眼鏡製作用装置に対する前記保持部の方向を合わせることで、前記眼鏡レンズを前記複数の眼鏡製作用装置間で移動させることを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工システム。
【請求項3】
請求項2に記載の眼鏡レンズ周縁加工システムであって、
前記複数の眼鏡製作用装置は、前記設置面に設置された前記ロボットアームが前記保持部を旋回移動させる際の前記回転軸を中心とする周方向に沿って、前記ロボットアームを取り囲んで配置されることを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の眼鏡レンズ周縁加工システムであって、
前記ロボットアームは、前記アーム部を載置面に対して少なくとも平行な方向に移動させるアーム移動部をさらに備えたことを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工システム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の眼鏡レンズ周縁加工システムであって、
複数の前記ロボットアームを備えたことを特徴とする眼鏡レンズ周縁加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズの周縁を加工するための眼鏡レンズ周縁加工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズの周縁を加工するための種々の技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載の眼鏡レンズ供給システムでは、1本のコンベアラインのように接続された複数のコンベアラインユニットに沿って、複数のレンズ周縁加工装置が配置されている。各々のレンズ周縁加工装置とコンベアラインユニットの間には、ロボットが配置されている。ロボットは、各々のレンズ周縁加工装置とコンベアラインユニットの間でレンズを移動させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-183633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムは、コンベアラインユニットに沿って配置された複数のレンズ周縁加工装置のいずれかにレンズを加工させることはできるものの、異なる工程を行う複数種類の装置の各々に各工程を実行させるものではない。ここで、特許文献1に記載のシステムを改良し、異なる工程を行う複数種類の装置をシステムに含めることで、複数の工程をレンズに対して実行することも考えられる。しかし、仮に特許文献1のシステムを変更したとしても、複数種類の装置はコンベアラインユニットに沿って配置される必要があり、且つ、装置とコンベアラインの位置関係もロボットの構成に応じて限定されやすい。従って、眼鏡レンズを加工するための複数の工程を容易にシステムに実行させることは、従来の技術では困難であった。
【0005】
本開示の典型的な目的は、異なる工程を実行する複数種類の装置によって、眼鏡レンズを加工するための複数の工程をより適切に実行することが可能な眼鏡レンズ周縁加工システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示における典型的な実施形態が提供する眼鏡レンズ周縁加工システムは、眼鏡レンズの周縁を加工する眼鏡レンズ周縁加工システムであって、前記眼鏡レンズを加工するための複数の工程のうち、互いに異なる工程を実行すると共に、互いに異なる筐体を有する複数の眼鏡製作用装置と、複数の関節部を有するアーム部、および、前記アーム部に設けられて対象物の保持および保持解除を行う保持部を備え、前記関節部を介して前記アーム部を回転させることで、前記保持部に保持された前記対象物を移動させるロボットアームと、を備え、前記複数の眼鏡製作用装置には、前記眼鏡レンズのレンズ面に対する適切な位置に自動的にカップを取り付けるカップ取り付け装置と、前記カップ取り付け装置によって前記眼鏡レンズに取り付けられた前記カップを治具として、前記眼鏡レンズを装着すると共に、装着した前記眼鏡レンズの周縁を加工するレンズ加工装置と、が含まれており、前記ロボットアームは、前記複数の関節部の少なくともいずれかを介して前記アーム部を回転させることで、前記対象物として少なくとも眼鏡レンズを、前記カップ取り付け装置の設置位置に移動させると共に、前記カップ取り付け装置によって自動的にカップが取り付けられた前記眼鏡レンズを、前記レンズ加工装置の設置位置に移動させる。
【0007】
本開示における眼鏡レンズ周縁加工システムによると、異なる工程を実行する複数種類の装置によって、眼鏡レンズを加工するための複数の工程がより適切に実行される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】眼鏡レンズ周縁加工システム100の概略構成を示す図である。
図2】ロボットアーム3の斜視図である。
図3】眼鏡レンズ周縁加工システム100が実行する位置記憶処理のフローチャートである。
図4】眼鏡レンズ周縁加工システム100が実行する工程制御処理のタイミングチャートである。
図5】レンズ加工装置1Cのチャック軸11C,12Cによって眼鏡レンズLEが挟み込まれて装着された状態の一例を示す図である。
図6】変容例に係る眼鏡レンズ周縁加工システム200の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<概要>
【0010】
本開示で例示する眼鏡レンズ周縁加工システムは、複数の眼鏡製作用装置とロボットアームを備える。複数の眼鏡製作用装置は、眼鏡レンズを加工するための複数の工程のうち、互いに異なる工程を実行すると共に、互いに異なる筐体を有する。ロボットアームは、アーム部と保持部を備える。アーム部は、複数の関節部を有する。保持部はアーム部に設けられており、対象物の保持および保持解除を行う。ロボットアームは、関節部を介してアーム部を回転させることで、保持部に保持された対象物を移動させる。ロボットアームは、アーム部を回転させることで、対象物として少なくとも眼鏡レンズを複数の眼鏡製作用装置間で移動させる。
【0011】
本開示で例示する眼鏡レンズ周縁加工システムによると、異なる工程を実行する別筐体の(つまり、各々の筐体が離間している)複数の眼鏡製作用装置の間で、ロボットアームによって眼鏡レンズが移動される。従って、ユーザが自ら眼鏡レンズを複数の装置間で移動させなくても、各々の装置によって複数の工程が眼鏡レンズに対して実行される。さらに、ロボットアームのアーム部は複数の関節部を有するので、回転軸が1軸のロボットまたはコンベアによって複数の装置間で眼鏡レンズを移動させる場合に比べて、複数の装置間の位置関係も限定され難い。従って、眼鏡レンズを加工するために必要な複数の工程が、複数の眼鏡製作用装置の各々によって円滑に眼鏡レンズに対して実行される。
【0012】
ロボットアームは、設置面に対して交差する方向に延びる回転軸を中心として保持部を旋回移動させて、各々の眼鏡製作用装置に対する保持部の方向を合わせることで、眼鏡レンズを複数の眼鏡製作用装置の間で移動させてもよい。この場合、作業者は、複数の眼鏡製作用装置をロボットアームに対して自由に配置することができる。つまり、コンベア等によって複数の装置間で眼鏡レンズを移動させる場合とは異なり、複数の装置の配置がさらに限定され難くなる。よって、眼鏡レンズ周縁加工システムを設置するためのスペースが限定され難くなり、設置スペースを小さくすることも容易となる。
【0013】
なお、ロボットアームは、保持部を旋回移動させて眼鏡製作用装置に対する保持部の方向を合わせる動作と、アーム部を駆動して眼鏡製作用装置と保持部の距離を変化させる動作を共に実行してもよい。この場合、複数の眼鏡製作用装置の配置がさらに限定され難くなる。
【0014】
ロボットアームの設置面は水平面であってもよい。複数の眼鏡製作用装置は、設置面に設置されたロボットアームが保持部を旋回移動させる際の回転軸(以下、「旋回軸」という)を中心とする周方向に沿って、ロボットアームを取り囲んで配置されていてもよい。この場合、例えば、コンベアに沿って複数の眼鏡製作用装置が直線上に並べられている場合に比べて、眼鏡レンズ周縁加工システムを設置するためのスペースをより容易に小さくすることができる。さらに、ロボットアームは、保持部を旋回移動させることで、ロボットアームを取り囲むように配置された複数の眼鏡製作用装置の間で眼鏡レンズを容易に移動させる(切り替える)ことができる。よって、より適切に眼鏡レンズが加工される。
【0015】
なお、3つ以上の眼鏡製作用装置が使用される場合には、複数の眼鏡製作用装置は、ロボットアームの旋回軸方向から見た場合に、眼鏡レンズに対する工程を実行する順に時計回りまたは反時計回りに配置されていてもよい。この場合、ロボットアームは、複数の眼鏡製作用装置の各々に対して、工程を実行する順に円滑に眼鏡レンズを移動させることができる。
【0016】
また、眼鏡レンズ周縁加工システムでは、複数の眼鏡製作用装置による複数の工程が行われる前の眼鏡レンズの待機位置が定められていてもよい。待機位置は、複数の眼鏡製作用装置と共に、旋回軸を中心とする周方向に沿ってロボットアームを取り囲む位置に設けられていてもよい。また、眼鏡レンズ周縁加工システムでは、複数の眼鏡製作用装置による複数の工程が完了した後に眼鏡レンズを移動させる完了位置が定められていてもよい。完了位置は、複数の眼鏡製作用装置と共に、旋回軸を中心とする周方向に沿ってロボットアームを取り囲む位置に設けられていてもよい。この場合、待機位置および完了位置の少なくともいずれかを含む眼鏡レンズ周縁加工システムの設置スペースを、より小さくすることができる。
【0017】
ロボットアームは、アーム部を載置面に対して少なくとも平行な方向に移動させるアーム移動部をさらに備えていてもよい。この場合、ロボットアームは、対象物の移動距離がアーム部の可動範囲よりも長い場合でも、アーム部自体を載置面に対して平行な方向に移動させることで、適切に対象物を移動させることができる。よって、複数の眼鏡レンズ周縁加工用装置の配置の自由度がさらに向上する。
【0018】
また、アーム移動部は、アーム部を載置面に対して垂直な方向(高さ方向)に移動させてもよい。この場合、例えば、眼鏡レンズを眼鏡製作用装置の内部に挿入する際の挿入角度等の自由度が、アーム部の高さを変えることでさらに向上する。
【0019】
ただし、ロボットアームの位置は固定されていてもよい。この場合でも、コンベア等のみを用いる場合に比べて、複数の眼鏡製作用装置の配置の自由度は十分に向上する。また、アーム移動部を用いる場合、アーム移動部は、載置面に対して平行な方向および垂直な方向の両方にアーム部を移動させてもよいし、載置面に対して平行な方向および垂直な方向の一方にのみアーム部を移動させてもよい。
【0020】
眼鏡レンズ周縁加工システムは、複数のロボットアームを備えていてもよい。この場合、複数のロボットアームの各々は独立して駆動できるので、複数の眼鏡レンズを複数のロボットアームによって並行して移動させることも可能である。よって、より円滑に複数の工程が実行される。また、複数のロボットアームの間で対象物(例えば眼鏡レンズ等)の受け渡しを行ってもよい。この場合、1つのロボットアームを用いる場合に比べて、ロボットアームによって対象物を移動させることが可能な範囲が広がる。よって、眼鏡レンズ周縁加工システムの配置の自由度がさらに向上する。
【0021】
本開示で例示する眼鏡レンズ周縁加工システムは、複数の眼鏡製作用装置、ロボットアーム、および制御部を備える。複数の眼鏡製作用装置は、眼鏡レンズを加工するための複数の工程のうち、互いに異なる工程を実行すると共に、互いに異なる筐体を有する。ロボットアームは、アーム部と保持部を備える。アーム部は、複数の関節部を有する。保持部はアーム部に設けられており、対象物の保持および保持解除を行う。ロボットアームは、関節部を介してアーム部を回転させることで、保持部に保持された対象物を移動させる。制御部は、眼鏡レンズ周縁加工システムの各種制御を司る。制御部は、位置記憶モードと移動モードを実行する。位置記憶モードでは、制御部は、複数の眼鏡製作用装置の各々について、眼鏡レンズの設置および取り出しが行われる位置である設置位置を記憶装置に記憶させる。移動モードでは、制御部は、記憶された設置位置に基づいてロボットアームの駆動を制御することで、複数の眼鏡製作用装置のうち1つの眼鏡製作用装置の設置位置から、他の眼鏡製作用装置の設置位置に眼鏡レンズを移動させる。
【0022】
本開示で例示する眼鏡レンズ周縁加工システムによると、複数の眼鏡製作用装置の各々における眼鏡レンズの設置位置が、予め記憶される。記憶されている設置位置に基づいてロボットアームの駆動が制御されることで、1つの眼鏡製作用装置の設置位置から、他の眼鏡製作用装置の設置位置に眼鏡レンズが移動される。つまり、複数の眼鏡製作用装置の配置に関わらず、各々の装置の設置位置が記憶されることで、眼鏡レンズが適切にロボットアームによって装置間で移動される(切り替えられる)。従って、複数の装置の配置の自由度が向上する。また、複数の装置の配置を変更する場合でも、ロボットアームは適切に駆動する。よって、眼鏡レンズを加工するための複数の工程が、複数の眼鏡製作用装置の各々によって円滑に眼鏡レンズに対して実行される。
【0023】
なお、設置位置を含む種々の位置(以下、「記憶対象位置」という)を眼鏡レンズ周縁加工システムが記憶装置に記憶させるための具体的な方法は、適宜選択できる。一例として、本開示の眼鏡レンズ周縁加工システムでは、ロボットアームに対する記憶対象位置の相対的な位置関係が記憶される。詳細には、作業者は、ロボットアームの関節部を手動で回転させて、ロボットアームの保持部を記憶対象位置に配置した状態で、操作部等によって記憶指示を眼鏡レンズ周縁加工システムに入力する。制御部は、記憶指示が入力された際の保持部の位置を、記憶対象位置として記憶装置に記憶させる。以上の動作が繰り返されることで、複数の記憶対象位置が適切に記憶装置に記憶される。ただし、記憶対象位置を記憶する方法を変更することも可能である。例えば、作業者が操作部を操作して、記憶対象位置を眼鏡レンズ周縁加工システムに入力することで、記憶対象位置が記憶装置に記憶されてもよい。
【0024】
移動モードにおいて、制御部は、複数の眼鏡製作用装置およびロボットアームの各々との間で通信を行うことで、複数の眼鏡製作用装置およびロボットアームの各々の状態を判断し、判断した状態に基づいて、複数の眼鏡製作用装置およびロボットアームの各々に対して駆動指示を出力してもよい。例えば、複数の眼鏡製作用装置およびロボットアームの各々は、制御部によって指示された動作が完了した場合に、完了通知を制御部に出力してもよい。制御部は、駆動させる装置(複数の眼鏡製作用装置およびロボットアームの少なくともいずれか)から未だ完了通知が入力されていない場合には、駆動指示の出力を待機する。制御部は、駆動させる装置から完了通知が入力されており、装置が稼働停止中であると判断した場合に、装置に駆動指示を出力する。この場合、眼鏡レンズ周縁加工システムは、各装置の状態に基づいて、適切なタイミングで駆動指示を出力することができる。
【0025】
制御部は、位置記憶モードにおいて複数の眼鏡製作用装置による複数の工程が行われる前の眼鏡レンズの待機位置を、記憶装置に記憶させてもよい。制御部は、移動モードにおいて、記憶装置に記憶された待機位置および設置位置に基づいてロボットアームの駆動を制御することで、待機位置から、複数の眼鏡製作用装置のうち最初に眼鏡レンズに対する工程を実行する眼鏡製作用装置の設置位置に、眼鏡レンズを移動させてもよい。この場合、待機位置に設置された眼鏡レンズが、ロボットアームによって自動的に眼鏡製作用装置の設置位置に移動されて、眼鏡レンズに対する複数の工程が実行される。よって、作業者は、より容易に眼鏡レンズを眼鏡レンズ周縁加工システムに加工させることができる。
【0026】
ただし、待機位置から最初の眼鏡製作用装置への眼鏡レンズの移動制御を省略することも可能である。この場合でも、作業者は、最初の眼鏡製作用装置の設置位置に眼鏡レンズを設置するだけで、容易に眼鏡を眼鏡レンズ周縁加工システムに製作させることができる。
【0027】
制御部は、位置記憶モードにおいて、複数の眼鏡製作用装置による複数の工程が完了した後に眼鏡レンズを移動させる位置である完了位置を、記憶装置に記憶させてもよい。制御部は、移動モードにおいて、記憶装置に記憶された設置位置および完了位置に基づいてロボットアームの駆動を制御することで、複数の眼鏡製作用装置のうち最後に眼鏡レンズに対する工程を実行した眼鏡製作用装置の設置位置から、完了位置に眼鏡レンズを移動させてもよい。この場合、複数の工程が完了した眼鏡レンズが、ロボットアームによって自動的に完了位置に移動される。よって、作業者は、複数の工程が完了した眼鏡レンズをより容易に取り扱うことができる。
【0028】
ただし、最後の眼鏡製作用装置から完了位置への眼鏡レンズの移動制御を省略することも可能である。この場合でも、作業者は、最後の眼鏡製作用装置の設置位置から眼鏡レンズを取り出すだけで、容易に眼鏡レンズを取り扱うことができる。また、待機位置と完了位置は同じ位置であってもよいし、異なる位置であってもよい。
【0029】
制御部は、位置記憶モードにおいて、設置位置に加えて、ロボットアームによって移動される眼鏡レンズの移動経路上の通過位置を、記憶対象位置としてさらに記憶装置に記憶させてもよい。制御部は、移動モードにおいて、記憶装置に記憶された設置位置および通過位置に基づいてロボットアームの駆動を制御することで、通過位置を通過させて眼鏡レンズを移動させてもよい。この場合、適切な通過位置が記憶装置に記憶されることで、眼鏡レンズが適切な経路を通過して移動する。従って、例えば、移動中の眼鏡レンズが装置の筐体等に衝突して落下する可能性等も低下する。眼鏡レンズを設置位置に移動させる経路と、設置位置から眼鏡レンズを移動させる経路の各々を、適切な経路に設定することも可能である。よって、より円滑に眼鏡レンズが加工される。
【0030】
複数の眼鏡製作用装置には、カップ取り付け装置とレンズ加工装置が含まれていてもよい。カップ取り付け装置は、眼鏡レンズのレンズ面にカップを取り付ける。レンズ加工装置は、カップ取り付け装置によって眼鏡レンズに取り付けられたカップにチャック軸を装着することで眼鏡レンズを装着すると共に、装着した眼鏡レンズの周縁を加工する。この場合、カップ取り付け装置によって眼鏡レンズにカップが取り付けられた後、ロボットアームによって眼鏡レンズがカップ取り付け装置からレンズ加工装置に移動され、眼鏡レンズの周縁が加工される。よって、眼鏡レンズを加工するための少なくとも2つの工程が、複数の装置を含む眼鏡レンズ周縁加工システムによって円滑に実行される。
【0031】
制御部は、カップ取り付け装置によってカップが取り付けられたレンズ面上の位置(以下、「カップ位置」という)の情報を取得してもよい。制御部は、レンズ加工装置の設置位置に眼鏡レンズを移動させる際に、カップ位置の情報に基づいて、レンズ加工装置のチャック軸とカップ位置が一致する設置位置に眼鏡レンズを移動させてもよい。つまり、制御部は、カップ位置に基づいて、眼鏡レンズを移動させるレンズ加工装置の設置位置を調整してもよい。この場合、眼鏡レンズに応じて変化するカップ位置に関わらず、レンズ加工装置のチャック軸がカップに適切に装着される。よって、より円滑に眼鏡レンズが加工される。
【0032】
なお、カップ位置の情報に基づいて眼鏡レンズを移動させるための具体的な方法も、適宜選択できる。例えば、記憶装置には、レンズ面の基準位置(例えばレンズ面の中心等)にカップが取り付けられた場合の、レンズ加工装置における眼鏡レンズの設置位置が記憶されてもよい。この場合、制御部は、カップ位置の情報に基づいて、レンズ面の基準位置に対してカップ位置がずれている方向および距離を取得し、ずれている方向および距離が相殺されるように、眼鏡レンズを移動させるレンズ加工装置の設置位置を調整してもよい。
【0033】
制御部は、カップ取り付け装置によって眼鏡レンズに取り付けられたカップの、眼鏡レンズに対する取付角度の情報を取得してもよい。制御部は、レンズ加工装置の設置位置に眼鏡レンズを移動させる際に、取り付け角度の情報に基づいて、カップが取り付けられた眼鏡レンズの設置位置における角度を設定してもよい。この場合、眼鏡レンズに応じて変化するカップの取付角度に関わらず、レンズ加工装置のチャック軸がカップに適切に装着される。よって、より円滑に眼鏡レンズが加工される。
【0034】
なお、カップの取付角度の情報に基づいて、レンズ加工装置の設置位置における眼鏡レンズの角度を設定するための具体的な方法も、適宜選択できる。例えば、カップが基準角度で(例えば、光軸に対して平行な角度で)眼鏡レンズに取り付けられた場合の、レンズ加工装置の設置位置における眼鏡レンズの角度の情報が、記憶装置に記憶されるレンズ加工装置の設置位置の情報に含まれていてもよい。この場合、制御部は、カップの取付角度の情報に基づいて、基準角度と取付角度のずれを取得し、角度のずれが相殺されるように、レンズ加工装置の設置位置における眼鏡レンズの角度が調整されてもよい。
【0035】
なお、眼鏡レンズ周縁加工システムに使用する複数の眼鏡製作用装置は、カップ取り付け装置とレンズ加工装置の2つに限定されない。例えば、カップ取り付け装置とレンズ加工装置に加えて、眼鏡レンズの光学特性を測定するレンズメータが、眼鏡レンズ周縁加工システムに含まれていてもよい。この場合、まず、レンズメータは、眼鏡レンズの周縁を加工するための複数の工程のうちの1つであるレンズ測定工程を実行する。次いで、カップ取り付け装置は、眼鏡レンズを加工するための工程のうちの1つである加工準備工程を実行する。次いで、レンズ加工装置は、加工工程を実行する。つまり、レンズメータ、カップ取り付け装置、およびレンズ加工装置が眼鏡レンズ周縁加工装置に含まれる場合には、眼鏡レンズ周縁加工装置は、眼鏡レンズを加工するための複数の工程として、レンズ測定工程、加工準備工程、および加工工程を実行する。
【0036】
ただし、レンズ測定工程および加工準備工程の一方を省略することも可能である。例えば、レンズ加工装置がカップを介さずに眼鏡レンズを装着する場合、および、眼鏡レンズにカップを取り付ける機能がレンズ加工装置に含まれている場合等には、カップ取り付け装置による加工準備工程は省略されてもよい(つまり、眼鏡レンズ周縁加工システムはカップ取り付け装置を備えていなくてもよい)。また、眼鏡レンズの光学特性等が予め判明している場合等には、レンズメータによるレンズ測定工程は省略されてもよい。また、ロボットアームは、眼鏡レンズに加えて、カップおよび眼鏡フレーム等の少なくともいずれかを対象物として移動させてもよい。
【0037】
<実施形態>
(システム構成)
以下、本開示における典型的な実施形態の1つについて、図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100のシステム構成について説明する。本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100は、複数の眼鏡製作用装置1(1A,1B,1C)、ロボットアーム3(3A,3B)、および制御装置5を備える。
【0038】
複数の眼鏡製作用装置1は、眼鏡レンズの周縁を加工するための複数の工程のうち、互いに異なる工程を実行する。また、複数の眼鏡製作用装置1の各々は、互いに異なる筐体を有する。複数の眼鏡製作用装置1の各々は、各種制御を司る制御部(図示せず)と、記憶装置(図示せず)とを備える。各々の記憶装置には、眼鏡製作用装置1が後述する工程制御処理(図4参照)を実行するための眼鏡レンズ周縁加工プログラム等が記憶されている。本実施形態では、複数の眼鏡製作用装置1には、レンズメータ1A、カップ取り付け装置(ブロッカー)1B、およびレンズ加工装置(レンズエッジャー)1Cが含まれる。
【0039】
レンズメータ1Aは、眼鏡レンズの光学特性を測定する。また、本実施形態のレンズメータ1Aは、眼鏡レンズの光学中心等を測定することも可能である。レンズメータ1Aは、眼鏡レンズの光学特性等を測定するための測定光学系(例えば、シャックハルトマン光学系等)を備える。また、本実施形態のレンズメータ1Aは、測定光学系によって測定された眼鏡レンズの光学中心等の位置に印点を施す印点機構を備える。レンズメータ1Aが実行する工程は、眼鏡レンズの周縁を加工するための複数の工程の1つであるレンズ測定工程の一例である。
【0040】
レンズメータ1Aは、設置位置10Aに設置された眼鏡レンズに対して、眼鏡レンズを加工するための光学特性の測定工程を実行する。測定工程が完了すると、眼鏡レンズは設置位置10Aから取り出される。本実施形態のレンズメータ1Aは、設置位置10Aに設置された眼鏡レンズに対して、光学特性の測定工程等を自動で実行することができる。例えば、レンズメータ1Aは、設置位置10Aに設置された眼鏡レンズの位置を変化させながら、光学特性を自動的に測定してもよい。また、レンズメータ1Aは、設置位置10Aに設置された眼鏡レンズに対して測定光を走査(スキャン)させることで、光学特性を自動的に測定してもよい。
【0041】
カップ取り付け装置1Bは、眼鏡レンズのレンズ面にカップを取り付ける。眼鏡レンズに取り付けられたカップは、レンズ加工装置1Cに眼鏡レンズを設置(装着)するための治具として使用される。詳細には、レンズ加工装置1Cは、眼鏡レンズを挟み込んで保持するチャック軸をカップに装着することで、眼鏡レンズを装着する。カップ取り付け装置1Bは、例えば、レンズメータ1Aによって眼鏡レンズの光学中心等に施された印点等を基準として、眼鏡レンズにカップを取り付ける。本実施形態のカップ取り付け装置1Bは、内蔵するカメラによって印点の位置を自動的に検出し、眼鏡レンズとカップの相対的な位置関係を調整してカップを取り付けることで、眼鏡レンズに対する適切な位置にカップを自動的に取り付けることができる。眼鏡レンズの適切な位置に自動的にカップを取り付けるための技術には、例えば、特開2019-100928号公報に開示された技術等を採用できる。なお、カップ取り付け装置1Bには、眼鏡フレームの形状(玉型形状)を測定する眼鏡枠形状測定装置(トレーサー)の機能が設けられていてもよい。カップ取り付け装置1Bが実行する工程は、眼鏡レンズの周縁を加工するための複数の工程の1つである加工準備工程の一例である。
【0042】
カップ取り付け装置1Bは、設置位置10Bに設置された眼鏡レンズに対して、眼鏡レンズを加工するためのカップの取付工程を実行する。取付工程が完了すると、眼鏡レンズは設置位置10Bから取り出される。
【0043】
また、カップ取り付け装置1Bは、眼鏡レンズに対してカップを取り付けたレンズ面上の位置の情報(以下、「カップ位置の情報」という)を、制御装置5に出力することができる。さらに、カップ取り付け装置1Bは、眼鏡レンズに取り付けたカップの、眼鏡レンズに対する角度の情報(以下、「取付角度の情報」という)を、制御装置5に出力することができる。なお、カップ位置の情報および取付角度の情報の少なくとも一方は、予め記憶装置(例えば、制御装置5の記憶装置52等)に記憶されていてもよい。
【0044】
レンズ加工装置1Cは、眼鏡レンズに取り付けられたカップにチャック軸を装着(挿入)し、眼鏡レンズを挟み込んで保持する(チャックする)。レンズ加工装置1Cは、チャック軸によって保持した眼鏡レンズの周縁を、眼鏡フレームの玉型形状に加工する。つまり、レンズ加工装置1Cは、眼鏡レンズの周縁を加工する加工工程を実行する。レンズ加工装置1Cは、加工具(例えば、砥石およびカッター等の少なくともいずれか)を備え、眼鏡枠形状測定装置(図示せず)によって取得された眼鏡フレームの玉型形状のデータに基づいて、眼鏡レンズの周縁を加工する。
【0045】
レンズ加工装置1Cは、設置位置10Cにおいてチャック軸に装着された眼鏡レンズに対して、周縁の加工工程を実行する。加工工程が完了すると、眼鏡レンズは設置位置10Cから取り出される。
【0046】
ロボットアーム3は、対象物を保持して移動させる。本実施形態では、ロボットアーム3が移動させる対象物には眼鏡レンズが含まれる。ただし、眼鏡レンズ以外の対象物(例えば、眼鏡フレームおよびカップ等の少なくともいずれか)も、ロボットアーム3によって移動されてもよい。また、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100は、複数のロボットアーム3(詳細には、ロボットアーム3Aおよびロボットアーム3B)を備える。複数のロボットアーム3の各々は独立して駆動できるので、複数の眼鏡レンズを複数のロボットアーム3によって並行して(同時に)移動させることも可能である。また、複数のロボットアーム3の間で対象物(本実施形態では眼鏡レンズ)を受け渡すことも可能である。よって、眼鏡レンズを製作する工程がより円滑になる。
【0047】
図2を参照して、本実施形態のロボットアーム3について説明する。本実施形態のロボットアーム3はアーム部30を備える。アーム部30は、複数の関節部を有し、関節部を介して各部位を回転させることで姿勢を変えることができる。詳細には、本実施形態のロボットアーム3のアーム部30は、ベース31、ショルダ32、下アーム33、第1上アーム34、第2上アーム35、手首36、および保持部37を備える。なお、図2では、回転軸X1~X6の軸周りの方向を図示することで、それぞれの回転軸X1~X6を示す。
【0048】
ベース31は、アーム部30の全体を支持する。ショルダ32は、第1関節部J1を介してベース31の上部に接続されている。ショルダ32は、基台40(詳細は後述する)に対して交差する方向(本実施形態では鉛直方向)に延びる回転軸X1を中心として、ベース31に対して回転する。下アーム33の一端部は、第2関節部J2を介してショルダ32の一部に接続されている。下アーム33は、水平方向に延びる回転軸X2を中心として、ショルダ32に対して回転する。第1上アーム34は、下アーム33のうち、ショルダ32に接続されている側とは反対側の端部に、第3関節部J3を介して接続されている。第1上アーム34は、水平方向に延びる回転軸X3を中心として、下アーム33に対して回転する。第2上アーム35は、第4関節部J4を介して、第1上アーム34の先端側(保持部37が設けられている側)に接続されている。第2上アーム35は、回転軸X4を中心として、第1上アーム34に対して回転する。手首36は、第5関節部J5を介して、第2上アーム35の先端側に接続されている。手首36は、回転軸X5を中心として、第2上アーム35に対して回転する。保持部37は、第6関節部J6を介して、手首36の先端側に接続されている。保持部37は、回転軸X6を中心として、手首36に対して回転する。なお、アーム部30の内部には、回転軸X1~X6の各々を中心として各部を回転させるためのモータ(例えばステップモータ等)が内蔵されている。
【0049】
保持部37は、対象物(例えば眼鏡レンズ等)の保持および保持解除を行う。一例として、本実施形態の保持部37は、一対の保持片の間の距離をアクチュエータによって変化させることで、対象物の保持および保持解除を行う。ただし、対象物の保持および保持解除を行うための方法を変更することも可能である。例えば、保持部37は、対象物の表面の吸着と吸着の解除を切り替えることで、対象物の保持および保持解除を切り替えてもよい。
【0050】
アーム部30(詳細には、アーム部30におけるベース部31)は、基台40に固定されている。本実施形態では、基台40は水平な設置面に載置される。基台40には、アーム部30を設置面に対して平行な方向に移動させるアーム移動部41が設けられている。アーム移動部41が駆動することで、アーム部30の全体が設置面上を平行移動する。なお、アーム移動部41の構成は適宜選択できる。例えば、アーム移動部41は、車輪と、車輪を回転させるモータを備えてもよい。また、ベルトコンベア等がアーム移動部として機能してもよい。また、基台40(アーム部30)は、設置面に固定されていてもよい(詳細は後述する)。この場合、設置面は、鉛直方向に延びる壁面等であってもよい。
【0051】
本実施形態のロボットアーム3は、各種制御(例えば、各部を回転させるモータ、および、保持部37を駆動するアクチュエータの制御等)を司る制御部39を備える。また、ロボットアーム3は、後述する工程制御処理(図4参照)を実行するための眼鏡レンズ周縁加工プログラム等を記憶する記憶装置を備える。
【0052】
さらに、ロボットアーム3は、アーム部30における各部の角度(例えば、ベース31に対するショルダ32の角度、および、ショルダ32に対する下アーム33の角度等)を検出するための検出部(例えばエンコーダ等)を備える。検出部によってアーム部30の各部の角度の全てが検出されることで、アーム部30の先端部に設けられた保持部37の位置が割り出される。従って、例えば、作業者が手動でアーム部30の各部の角度を調整し、保持部37の位置を所望の位置に移動させた場合でも、ロボットアーム3の制御部39は、移動した保持部37の位置(例えば、基台40に対する保持部37の位置)を検出することが可能である。なお、ロボットアームの詳細な構成の一例は、例えば、特開2019-141970等に記載されている。
【0053】
図2に示すように、本実施形態のロボットアーム3は設置面に対して交差する方向(本実施形態では、水平な設置面に対して垂直に交差する鉛直方向)に延びる回転軸(旋回軸)X1を中心として、保持部37を旋回移動させることができる。従って、コンベア等によって複数の装置間で眼鏡レンズを移動させる場合とは異なり、複数の眼鏡製作用装置1の配置が限定され難くなる。また、本実施形態のロボットアーム3は、保持部37を旋回移動させて眼鏡製作用装置1に対する保持部37の方向を合わせる動作と、アーム部30を駆動して眼鏡製作用装置1と保持部37の距離を変化させる動作を、共に実行することができる。よって、複数の眼鏡製作用装置1の配置の自由度がさらに向上する。
【0054】
図1の説明に戻る。制御装置5は、眼鏡レンズ周縁加工システム100の全体の制御を司る。一例として、本実施形態の制御装置5にはパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)が用いられている。しかし、PC以外のデバイス(例えば、サーバ、タブレット端末、スマートフォン等の少なくともいずれか)が制御装置5として使用されてもよい。また、複数の眼鏡製作用装置1およびロボットアーム3の少なくともいずれかの制御部が、眼鏡レンズ周縁加工システム100の全体の制御を司る制御部として機能してもよい。また、複数のデバイスの制御部が協働して、眼鏡レンズ周縁加工システム100の全体の制御を司ってもよい。
【0055】
制御装置5は、各種制御処理を行うCPU(コントローラ)51と、記憶装置(NVM)52を備える。記憶装置52には、後述する位置記憶処理(図3参照)および工程制御処理(図4参照)を実行するための眼鏡レンズ周縁加工プログラム、および、各々の眼鏡製作用装置1A~1Cにおける設置位置10A~10Cの情報等が記憶される。制御装置5は、有線通信、無線通信、およびネットワーク等の少なくともいずれかを介して、複数の眼鏡製作用装置1およびロボットアーム3に接続されている。
【0056】
また、制御装置5は、操作部6および表示部7に接続されている。操作部6は、作業者(ユーザ等)が各種指示を眼鏡レンズ周縁加工システム100に入力するために、ユーザによって操作される。操作部6には、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等の少なくともいずれかを使用できる。なお、操作部6と共に、または操作部6に代えて、各種指示を入力するためのマイク等が使用されてもよい。表示部7は、各種画像を表示する。なお、制御装置5に外部接続される操作部6および表示部7の代わりに、制御装置5が備える操作部および表示部が用いられてもよいことは言うまでもない。
【0057】
(工程の概要)
図1を参照して、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100が眼鏡レンズに対して実行する複数の工程の概要について説明する。前述したように、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100では、レンズメータ1Aによる光学特性の測定工程(レンズ測定工程)、カップ取り付け装置1Bによるカップの取付工程(加工準備工程)、および、レンズ加工装置1Cによる眼鏡レンズ周縁の加工工程の順で、眼鏡レンズに対する複数の工程が実行される。つまり、本実施形態では、複数の眼鏡製作用装置1のうち、最初に眼鏡レンズに対する工程を実行する眼鏡製作用装置1は、レンズメータ1Aとなる。また、複数の眼鏡製作用装置1のうち、最後に眼鏡レンズに対する工程を実行する眼鏡製作用装置1は、レンズ加工装置1Cとなる。
【0058】
以下では、レンズメータ1Aにおける眼鏡レンズの設置位置10Aを、第1設置位置10Aという。カップ取り付け装置1Bにおける眼鏡レンズの設置位置10Bを、第2設置位置10Bという。レンズ加工装置1Cにおける眼鏡レンズの設置位置10Cを、第3設置位置10Cという。
【0059】
本実施形態では、複数の眼鏡製作用装置1による複数の工程が行われる前の眼鏡レンズは、予め定められた待機位置8に設置される。詳細には、作業者は、眼鏡レンズ周縁加工システム100に加工させる眼鏡レンズをトレイ(図示せず)に載置した状態で、トレイを待機位置8に設置する。また、複数の眼鏡製作用装置1による複数の工程が完了した後の眼鏡レンズは、予め定められた完了位置9(本実施形態では、完了位置9に設置されたトレイ)に移動される。待機位置8および完了位置9は、複数の眼鏡製作用装置1が設置される位置から離間している。なお、待機位置8と完了位置9は同じ位置であってもよい。
【0060】
本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100によって眼鏡レンズの周縁の加工処理が実行される場合、まず、ロボットアーム3Aは、待機位置8の近傍の第1作業位置P1にアーム部30自体を移動させた状態で、待機位置8のトレイに設置された眼鏡レンズを保持する。次いで、ロボットアーム3Aは、複数の眼鏡製作用装置1の近傍の第2作業位置P2にアーム部30自体を移動させて、レンズメータ1Aの第1設置位置10Aに眼鏡レンズを設置する。レンズメータ1Aによる光学特性の測定工程が完了すると、ロボットアーム3Aは、第2作業位置P2において、レンズメータ1Aの第1設置位置10Aから、カップ取り付け装置1Bの第2設置位置10Bに眼鏡レンズを移動させる。その後、ロボットアーム3Aは、次の眼鏡レンズの加工に備えて、アーム部30自体を第1作業位置P1に移動させる。
【0061】
カップ取り付け装置1Bによるカップの取付工程が完了すると、ロボットアーム3Bは、複数の眼鏡製作用装置1の近傍の第3作業位置P3にアーム部30自体を移動させた状態で、カップ取り付け装置1Bの第2設置位置10Bから、レンズ加工装置1Cの第3設置位置10Cに眼鏡レンズを移動させる。レンズ加工装置1Cによる眼鏡レンズ周縁の加工工程が完了すると、ロボットアーム3Bは、第3作業位置P3において、レンズ加工装置1Cの第3設置位置10Cに設置されている眼鏡レンズを保持した後、完了位置9の近傍の第4作業位置P4にアーム部30自体を移動させて、眼鏡レンズを完了位置9のトレイに載置する。
【0062】
(各装置の配置)
図1を参照して、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100における各装置の配置について説明する。本実施形態では、複数の眼鏡製作用装置1は、設置面に設置されたロボットアーム3(詳細には、第2作業位置P2に配置されたロボットアーム3A、および、第3作業位置P3に配置されたロボットアーム3B)が保持部37を旋回軸X1(図2参照)を中心として旋回移動させる際の、旋回軸X1を中心とする周方向に沿って、ロボットアーム3を取り囲むように配置されている。従って、コンベア等に沿って複数の眼鏡製作用装置1が直線上に並べて配置されている場合に比べて、眼鏡レンズ周縁加工システム100を設置するためのスペースを容易に小さくすることができる。さらに、前述したように、ロボットアーム3は、保持部37を旋回移動させることで、ロボットアーム3を取り囲むように配置された複数の眼鏡製作用装置1の間で眼鏡レンズを容易に移動させることができる。
【0063】
詳細には、本実施形態では、複数の眼鏡製作用装置1は、ロボットアーム3の旋回軸X1の方向(つまり、本実施形態では上方)から見た場合に、眼鏡レンズに対する工程を実行する順に、時計回りまたは反時計回り(本実施形態では時計回り)に配置されている。つまり、本実施形態では、最初にレンズ測定工程を実行するレンズメータ1A、2番目に加工準備工程を実行するカップ取り付け装置1B、および、最後に加工工程を実行するレンズ加工装置1Cが、順に時計回りに配置されている。従って、ロボットアーム3は、複数の眼鏡製作用装置1の各々に対して、工程を実行する順に円滑に眼鏡レンズを移動させることができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、眼鏡レンズの待機位置8および完了位置9も、複数の眼鏡製作用装置1と共に、旋回軸X1を中心とする周方向に沿ってロボットアーム3を取り囲むように設けられている。詳細には、眼鏡レンズが移動される順(つまり、待機位置8、レンズメータ1A、カップ取り付け装置1B、レンズ加工装置1C、および完了位置9の順)に、それぞれの位置が時計回りまたは反時計回り(本実施形態では時計回り)に配置されている。従って、眼鏡レンズ周縁加工システム100を設置するためのスペースをより小さくすることが可能である。
【0065】
(位置記憶処理)
図3を参照して、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100が実行する位置記憶処理について説明する。位置記憶処理では、ロボットアーム3に対象物(本実施形態では眼鏡レンズ)を移動させるために必要な複数の位置(記憶対象位置)を、記憶装置(例えば、制御装置5の記憶装置52等)に記憶させるための処理が実行される。位置記憶処理は、記憶対象位置を記憶させるための位置記憶モードが設定されている際に実行される。記憶対象位置には、複数の眼鏡加工用装置1の各々における眼鏡レンズの設置位置10A~10Cが含まれる。また本実施形態では、待機位置8および完了位置9も記憶対象位置に含まれる。さらに、本実施形態では、ロボットアーム3によって移動される眼鏡レンズの移動経路上の通過位置も、記憶対象位置に含まれる。
【0066】
本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100では、制御装置5のCPU51は、位置記憶処理の開始指示(つまり、位置記憶モードの実行指示)を入力すると、記憶装置52に記憶された眼鏡レンズ周縁加工プログラムに従って、図3に例示する位置記憶処理を実行する。ただし、前述したように、位置記憶処理は、制御装置5のCPU51以外の制御部によって実行されてもよいし、複数の制御部が協働することで実行されてもよい。
【0067】
まず、CPU51は、待機位置8の設定を作業者に指示するための画面を表示部7に表示させる(S1)。S1では、例えば、「保持部を待機位置に移動させて、位置を記憶させて下さい」等のメッセージが、表示部7に表示されてもよい。次いで、CPU51は、待機位置8の記憶処理を実行する(S2)。本実施形態では、作業者は、ロボットアーム3Aを第1作業位置P1に位置させた状態で、アーム部30の関節部J1~J6を手動で回転させて、保持部37を待機位置8(詳細には、待機位置8に設置されるトレイ上の眼鏡レンズの位置)に移動させる。次いで、作業者は、操作部(例えば、制御装置5に接続された操作部6、または、ロボットアーム3Aの操作部等)を操作することで、待機位置の記憶指示を入力する。S2では、CPU51は、記憶指示が入力された際の、ロボットアーム3Aのアーム部30自体の位置を、第1作業位置P1として記憶装置52に記憶させる。さらに、CPU51は、記憶指示が入力された際の保持部37の位置(保持部37の角度も含まれる)を、第1作業位置P1を基準とする待機位置8として記憶装置52に記憶させる。
【0068】
次いで、CPU51は、待機位置8からレンズメータ1Aの第1設置位置10Aまでの設定を作業者に指示するための画面を、表示部7に表示させる(S3)。S3では、例えば、「レンズメータの設置位置までのレンズの通過位置をn箇所記憶させた後、レンズメータの設置位置を記憶させて下さい」等のメッセージが、表示部7に表示されてもよい。CPU51は、待機位置8から第1設置位置10Aまでの第1経路上における、n箇所(n≧1)の眼鏡レンズの通過位置を、記憶装置52に記憶させる(S4)。本実施形態では、作業者は、眼鏡レンズを保持する保持部37が適切な第1経路を通過するように、ロボットアーム3Aのアーム部30自体の位置、およびアーム部30の保持部37の位置を手動で移動させながら、位置の記憶指示をn回入力する。S4では、CPU51は、記憶指示が入力される毎に、アーム部30自体の位置と保持部37の位置を記憶装置52に記憶させる。その結果、第1経路上のn箇所の通過位置が記憶される。次いで、CPU51は、第1設置位置10Aの記憶処理を実行する(S5)。作業者は、ロボットアーム3Aを第2作業位置P2に位置させた状態で、保持部37を手動で第1設置位置10Aに移動させて、記憶指示を入力する。S5では、CPU51は、記憶指示が入力された際のアーム部30自体の位置を、第2作業位置P2として記憶させる。また、CPU51は、記憶指示が入力された際の保持部37の位置(保持部37の角度も含まれる)を、第2作業位置P2を基準とする第1設置位置10Aとして記憶させる。
【0069】
次いで、CPU51は、レンズメータ1Aの第1設置位置10Aからカップ取り付け装置1Bの第2設置位置10Bまでの設定を作業者に指示するための画面を、表示部7に表示させる(S6)。CPU51は、第1設置位置10Aから第2設置位置10Bまでの第2経路上における、n箇所(n≧1)の眼鏡レンズの通過位置を、記憶装置52に記憶させる(S7)。本実施形態のS7の処理は、アーム部30自体の位置を第2作業位置P2に固定した状態で行われる。次いで、CPU51は、第2設置位置10Bの記憶処理を実行する(S8)。S6~S8の処理の主な流れは、前述したS3~S5の処理と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0070】
次いで、CPU51は、カップ取り付け装置1Bの第2設置位置10Bからレンズ加工装置1Cの第3設置位置10Cまでの設定を作業者に指示するための画面を、表示部7に表示させる(S9)。CPU51は、第2設置位置10Bから第3設置位置10Cまでの第3経路上における、n箇所(n≧1)の眼鏡レンズの通過位置を、記憶装置52に記憶させる(S10)。作業者は、ロボットアーム3Bを第3作業位置P3に位置させた状態で、保持部37が適切な第3経路を通過するように手動で保持部37を移動させながら、位置の記憶指示をn回入力する。S10では、CPU51は、記憶指示が入力される毎に、保持部37の位置を通過位置として記憶させる。次いで、CPU51は、第3設置位置10Cの記憶処理を実行する(S11)。
【0071】
なお、本実施形態では、S10およびS11では、カップ取り付け装置1Bによって、眼鏡レンズの基準位置(例えば、レンズ面の中心等)に、基準角度(例えば、光軸に平行な角度等)でカップが取り付けられた場合の、眼鏡レンズの通過位置および第3設置位置10Cが記憶される。
【0072】
次いで、CPU51は、レンズ加工装置1Cの第3設置位置10Cから完了位置9までの設定を作業者に指示するための画面を、表示部7に表示させる(S12)。CPU51は、第3設置位置10Cから完了位置9までの第4経路上における、n箇所(n≧1)の眼鏡レンズの通過位置を、記憶装置52に記憶させる(S13)。CPU51は、完了位置9の記憶処理を実行する(S14)。その結果、ロボットアーム3Bの第4作業位置P4、および、第4作業位置P4を基準とする完了位置9が、記憶装置52に記憶される。
【0073】
(工程制御処理)
図4を参照して、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100が実行する工程制御処理について説明する。工程制御処理では、ロボットアーム3A,3Bによって眼鏡レンズを移動させる処理、および、複数の眼鏡製作用装置1の各々によって眼鏡レンズの周縁を加工するための工程を実行する処理が行われる。工程制御処理は、移動モード(眼鏡レンズを移動させると共に、複数の眼鏡製作用装置1に各工程を実行させるモード)が設定されている際に、各装置の記憶装置に記憶された眼鏡レンズ周縁加工プログラムに従って、各装置の制御部によって実行される。
【0074】
まず、制御装置5のCPU51は、眼鏡レンズの周縁の加工を開始させる指示の入力を受け付ける(S21)。作業者は、眼鏡レンズが載置されたトレイを待機位置8(図1参照)に設置した状態で操作部6を操作することで、加工開始指示を制御装置5に入力する。CPU51は、S21で加工開始指示が入力されると、ロボットアーム3Aおよびレンズメータ1Aが共に稼働停止中であるか否かを判断する。後述する完了通知(S24、S27、およびS30の少なくともいずれか)が稼働指示(S22,S25、およびS38)の後に入力されておらず、ロボットアーム3Aおよびレンズメータ1Aの少なくとも一方が稼働中であれば、待機状態とされる。ロボットアーム3Aおよびレンズメータ1Aが共に稼働停止中であれば、CPU51は、第1移動指示をロボットアーム3Aに出力(送信)する(S22)。第1移動指示とは、前述した第1経路を通じて、待機位置8からレンズメータ1Aの第1設置位置10Aへ眼鏡レンズを移動させる指示である。
【0075】
ロボットアーム3Aの制御部39は、第1移動指示を受信すると、位置記憶処理(図3参照)で記憶された第1作業位置P1、第2作業位置P2、待機位置8、第1設置位置10A、および第1経路上の通過位置に基づいて、アーム部30およびアーム移動部41の駆動を制御することで、待機位置8から第1設置位置10Aに眼鏡レンズを移動させる(S23)。詳細には、ロボットアーム3Aの制御部39は、アーム部30自体を第1作業位置P1に移動させた状態で、待機位置8に設置されている眼鏡レンズを保持部37に保持させる。次いで、制御部39は、眼鏡レンズに第1経路上の通過位置を通過させつつ、アーム部30自体を第2作業位置P2に移動させて、眼鏡レンズをレンズメータ1Aの第1設置位置10Aに移動させる。制御部39は、保持部37による眼鏡レンズの保持を解除させることで、眼鏡レンズを第1設置位置10Aに設置する。
【0076】
なお、前述したように、ロボットアーム3は、保持部37を旋回移動させて各位置に対する保持部37の方向を合わせる動作と、アーム部30を駆動して各位置と保持部37の距離を変化させる動作を、共に実行する。よって、各位置の配置に関わらず、眼鏡レンズが適切に移動される。
【0077】
ロボットアーム3Aの制御部39は、第1設置位置10Aへの眼鏡レンズの移動が完了した旨を、制御装置5に通知する(S24)。制御装置5のCPU51は、眼鏡レンズの光学特性の計測開始指示を、レンズメータ1Aに送信する(S25)。レンズメータ1Aの制御部は、第1設置位置10Aに設置された眼鏡レンズの光学特性を測定し、眼鏡レンズの光学中心等の位置に印点を施す(S26)。S26の処理が完了すると、レンズメータ1Aの制御部は、処理の完了を制御装置5に通知する(S27)。
【0078】
制御装置5のCPU51は、S27で送信された完了通知を受信すると、ロボットアーム3Aおよびカップ取り付け装置1Bが共に稼働停止中であるか否かを判断する。ロボットアーム3Aおよびカップ取り付け装置1Bの少なくとも一方が稼働中であれば、待機状態とされる。ロボットアーム3Aおよびカップ取り付け装置1Bが共に稼働停止中であれば、CPU51は、第2移動指示をロボットアーム3Aに送信する(S28)。第2移動指示とは、前述した第2経路を通じて、レンズメータ1Aの第1設置位置10Aからカップ取り付け装置10Bの第2設置位置10Bへ眼鏡レンズを移動させる指示である。
【0079】
ロボットアーム3Aの制御部39は、第2移動指示を受信すると、位置記憶処理(図3参照)で記憶された第2作業位置P2、第1設置位置10A、第2設置位置10B、および第2経路上の通過位置に基づいて、アーム部30およびアーム移動部41の駆動を制御することで、第1設置位置10Aから第2設置位置10Bに眼鏡レンズを移動させる(S29)。詳細には、ロボットアーム3Aの制御部39は、アーム部30自体を第2作業位置P2に移動させた状態で、第1設置位置10Aに設置されている眼鏡レンズを保持部37に保持させる。次いで、制御部39は、眼鏡レンズに第2経路上の通過位置を通過させつつ、眼鏡レンズをカップ取り付け装置1Bの第2設置位置10Bに移動させる。ここで、ロボットアーム3Aは、旋回軸X1(図2参照)を中心に保持部37を旋回移動させることで、眼鏡レンズを第1設置位置10Aから第2設置位置10Bに移動させる。制御部39は、保持部37による眼鏡レンズの保持を解除させることで、眼鏡レンズを第2設置位置10Bに設置する。
【0080】
ロボットアーム3Aの制御部39は、第2設置位置10Bへの眼鏡レンズの移動が完了した旨を、制御装置5に通知する(S30)。制御装置5のCPU51は、カップの取付開始指示をカップ取り付け装置1Bに送信する(S31)。カップ取り付け装置1Bの制御部は、レンズメータ1Aによって施された印点の位置に基づいて、眼鏡レンズのレンズ面にカップを取り付ける(S32)。S32の処理が完了すると、カップ取り付け装置1Bの制御部は、処理の完了通知と共に、カップ位置の情報と取付角度の情報を、制御装置5に通知する(S33)。前述したように、カップ位置の情報とは、眼鏡レンズに対してカップを取り付けたレンズ面上の位置の情報である。また、取付角度の情報とは、眼鏡レンズに取り付けたカップの、眼鏡レンズに対する角度の情報である。
【0081】
制御装置5のCPU51は、S33で送信された完了通知、カップ位置の情報、および取付角度の情報を受信すると、レンズ加工装置1Cの第3設置位置10B、および、第3設置位置10Bにおける眼鏡レンズの角度を設定する(S34)。なお、カップ位置の情報および取付角度の情報の少なくとも一方は、予め記憶装置(例えば、制御装置5の記憶装置52等)に記憶されていてもよい。この場合、CPU51は、記憶装置に記憶されている情報を取得すればよい。
【0082】
図5を参照して、カップ位置の情報と取付角度の情報に基づいて、眼鏡レンズの第3設置位置10Cおよび角度を設定する方法の一例について説明する。前述したように、レンズ加工装置1Cは、一対のチャック軸11C,12Cによって眼鏡レンズLEを挟み込むことで、レンズLEを装着する。詳細には、レンズ加工装置1Cは、カップ取り付け装置1Bによって眼鏡レンズLEに取り付けられたカップ60に、チャック軸11Cを装着することで、眼鏡レンズLEを装着する。ここで、カップ60が、眼鏡レンズLEの基準位置BC(図5に示す例では、レンズ面の中心)に、基準角度(図5に示す例では、光軸に平行な角度)で常に装着される場合には、眼鏡レンズLEの第3設置位置10Cおよび角度を調整する必要は無い。しかし、眼鏡レンズLEに対するカップ60の取付位置および角度は変化する。カップ60の取付位置および角度に応じて、眼鏡レンズLEの第3設置位置10Cおよび角度を調整しない場合、チャック軸11Cがカップ60に装着されない可能性がある。
【0083】
CPU51は、S33で送信されたカップ位置の情報に基づいて、レンズ加工装置1Cのチャック軸11Cと、眼鏡レンズLEに取り付けられたカップ60の位置が一致するように、第3設置位置10Cを設定(調整)する。一例として、本実施形態の位置記憶処理(図3参照)では、眼鏡レンズLEの基準位置BCに基準角度でカップ60が取り付けられた場合の、眼鏡レンズLEの第3設置位置10C、および、第3設置位置10Cにおける眼鏡レンズLEの角度が記憶されている。CPU51は、S33で送信されたカップ位置の情報に基づいて、眼鏡レンズLEの基準位置BCに対してカップ60の位置がずれている方向および距離を取得し、ずれている方向および距離が相殺されるように、眼鏡レンズLEの第3設置位置11Cを調整する。
【0084】
また、CPU51は、S33で送信された取付角度の情報に基づいて、カップ60が取り付けられた眼鏡レンズLEの、第3設置位置10Cにおける角度を設定(調整)する。一例として、本実施形態では、CPU51は、S33で送信された取付角度の情報に基づいて、基準角度(光軸に平行な角度)と取付角度のずれを取得し、取得した角度のずれが相殺されるように、設置位置11Cにおける眼鏡レンズLEの角度を調整する。
【0085】
図4の説明に戻る。制御装置5のCPU51は、ロボットアーム3Bおよびレンズ加工装置1Cが共に稼働停止中であるか否かを判断する。ロボットアーム3Bおよびレンズ加工装置1Cの少なくとも一方が稼働中であれば、待機状態とされる。ロボットアーム3Bおよびレンズ加工装置1Cが共に稼働停止中であれば、CPU51は、第3移動指示と、S34で設定した第3設置位置11Cおよび角度を、ロボットアーム3Bに送信する(S35)。第3移動指示とは、前述した第3経路を通じて、カップ取り付け装置1Bの第2設置位置10Bからレンズ加工装置1Cの第3設置位置10Cへ眼鏡レンズを移動させる指示である。
【0086】
ロボットアーム3Bの制御部39は、第3移動指示を受信すると、位置記憶処理(図3参照)で記憶された第3作業位置P3、第2設置位置10B、および第3経路上の追加位置と、S35で送信された第3設置位置11Cおよび角度に基づいて、第2設置位置11Bから第3設置位置10Cへ眼鏡レンズを移動させる(S36)。詳細には、ロボットアーム3Bの制御部39は、アーム部30自体を第3作業位置P3に移動させた状態で、第2設置位置10Bに設置されている眼鏡レンズを保持部37に保持させる。次いで、制御部39は、眼鏡レンズに第3経路上の通過位置を通過させつつ、S35で送信された第3設置位置10Cに、指定された角度で眼鏡レンズを移動させる。制御部39は、保持部37による眼鏡レンズの保持を解除させることで、眼鏡レンズを第3設置位置10Cに設置する。なお、制御部39は、眼鏡レンズに第3経路上の通過位置を通過させる際にも、カップ位置の情報および取付角度の情報を考慮してもよい。
【0087】
ロボットアーム3Bの制御部39は、第3設置位置10Cへの眼鏡レンズの移動が完了した旨を、制御装置5に通知する(S37)。制御装置5のCPU51は、眼鏡レンズの加工開始指示をレンズ加工装置1Cに送信する(S38)。レンズ加工装置1Cの制御部は、眼鏡枠形状測定装置(図示せず)によって測定された玉型形状に従って、眼鏡レンズの周縁を加工する(S39)。S39の処理が完了すると、レンズ加工装置1Cの制御部は、処理の完了通知を制御装置5に送信する(S40)。
【0088】
制御装置5のCPU51は、S40で送信された完了通知を受信すると、ロボットアーム3Bが稼働停止中であるか否かを判断する。ロボットアーム3Bが稼働中であれば、待機状態とされる。ロボットアーム3Bが稼働停止中であれば、CPU51は、第4移動指示をロボットアーム3Bに送信する(S41)。第4移動指示とは、前述した第4経路を通じて、レンズ加工装置1Cの第3設置位置10Cから完了位置9へ眼鏡レンズを移動させる指示である。
【0089】
ロボットアーム3Bの制御部39は、第4移動指示を受信すると、第3作業位置P3、第4作業位置P4、第3設置位置10C、完了位置9、および第4経路上の通過位置に基づいて、アーム部30およびアーム移動部41の駆動を制御することで、第3設置位置10Cから完了位置9に眼鏡レンズを移動させる(S42)。ロボットアーム3Bの制御部39は、完了位置9への眼鏡レンズの移動が完了した旨を、制御装置5に通知する(S43)。
【0090】
以上説明したように、本実施形態の眼鏡レンズ周縁加工システム100では、異なる工程を実行する別筐体の複数の眼鏡製作用装置1の間で、ロボットアーム3によって眼鏡レンズが移動される。さらに、ロボットアーム3のアーム部30は複数の関節部J1~J6を有するので、回転軸が1軸のロボットまたはコンベア等によって眼鏡レンズを移動させる場合に比べて、複数の眼鏡製作用装置1の間の位置関係が限定され難い。
【0091】
図2に示したように、本実施形態のロボットアーム3は、設置面(基台40)に対して交差する方向に延びる回転軸(例えば回転軸X1等)を中心として保持部37を旋回移動させて、各々の眼鏡製作用装置1に対する保持部37の方向を合わせることができる。従って、コンベア等によって複数の装置間で眼鏡レンズを移動させる場合とは異なり、複数の装置の配置がさらに限定され難くなる。
【0092】
(変容例)
図6を参照して、上記実施形態の変容例の1つについて説明する。図6は、変容例に係る眼鏡レンズ周縁加工システム200の平面図である。図6に示す変容例では、上記実施形態で用いられているレンズメータ1A、カップ取り付け装置1B、レンズ加工装置1C、ロボットアーム3と同じデバイスが用いられている。しかし、上記実施形態では2つのロボットアーム3A,3Bが用いられているのに対し、図6に示す変容例では1つのロボットアーム3が用いられている。このように、眼鏡レンズ周縁加工システムで使用されるロボットアーム3の数は1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、上記実施形態のロボットアーム3A,3Bは設置面上を移動するが、図6に示す変容例ではロボットアーム3は固定されている。このように、ロボットアーム3のアーム部30の位置は固定されていてもよい。
【0093】
図6に示す変容例では、複数の眼鏡製作用装置1は、設置位置が固定されたロボットアーム3の旋回軸X1を中心とする周方向に沿って、ロボットアーム3を取り囲むように配置されている。よって、眼鏡レンズ周縁加工システム200を設置するためのスペースが小さくなる。
【0094】
また、図6に示す変容例では、ロボットアーム3の旋回軸X1の方向(つまり、本実施形態では上方)から見た場合に、眼鏡レンズに対する工程を実行する順に、時計回りまたは反時計回り(本実施形態では時計回り)に配置されている。つまり、最初にレンズ測定工程を実行するレンズメータ1A、2番目に加工準備工程を実行するカップ取り付け装置1B、および、最後に加工工程を実行するレンズ加工装置1Cが、順に時計回りに配置されている。従って、ロボットアーム3は、旋回軸X1を中心として保持部37を旋回移動させることで、複数の眼鏡製作用装置1の各々に対して、工程を実行する順に円滑に眼鏡レンズを移動させることができる。
【0095】
さらに、図6に示す変容例では、眼鏡レンズの待機位置8および完了位置9(図6では同じ位置)も、複数の眼鏡製作用装置1と共に、旋回軸X1を中心とする周方向に沿ってロボットアーム3を取り囲むように設けられている。詳細には、眼鏡レンズが移動される順(つまり、待機位置8、レンズメータ1A、カップ取り付け装置1B、レンズ加工装置1C、および完了位置9の順)に、それぞれの位置が時計回りに配置されている。従って、眼鏡レンズ周縁加工システム200を設置するためのスペースをより小さくすることが可能である。
【0096】
上記実施形態および変容例で開示された技術は一例に過ぎない。従って、上記実施形態および変容例で例示された技術を変更することも可能である。例えば、上記実施形態および変容例で例示された複数の技術の一部のみを、眼鏡レンズ周縁加工システムに採用してもよい。また、ロボットアーム3は、水平な設置面でなく、鉛直方向に延びる壁面等に固定されていてもよい。また、上記実施形態および変容例では、ロボットアーム3は、1つの眼鏡製作用装置1の設置位置10から、他の眼鏡製作用装置1の設置位置10に、眼鏡レンズを直接移動させる。しかし、ロボットアーム3は、複数の設置位置10の間で眼鏡レンズを移動させる途中で、他の位置(例えば、待機位置8または完了位置9のトレイ等)に眼鏡レンズを一旦移動させてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1 眼鏡製作用装置
1A レンズメータ
1B カップ取り付け装置
1C レンズ加工装置
3 ロボットアーム
5 制御装置
10A 第1設置位置
10B 第2設置位置
10C 第3設置位置
11C,12C チャック軸
30 アーム部
37 保持部
39 制御部
40 基台
41 アーム移動部
51 CPU
52 記憶装置
60 カップ
100、200 眼鏡レンズ周縁加工システム
J1~J6 関節部
X1 旋回軸
LE 眼鏡レンズ
図1
図2
図3
図4
図5
図6