(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】センサ付き構造部材
(51)【国際特許分類】
G01L 1/14 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G01L1/14 A
G01L1/14 B
(21)【出願番号】P 2019188499
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 陽平
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-272289(JP,A)
【文献】特表2017-527830(JP,A)
【文献】特開2019-105553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/00-1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面から内方へ向かって凹む凹部が
前記外面全周に亘って環状に設けられた構造部材本体と、
前記凹部に充填された弾性部材と、
前記弾性部材に埋め込まれ、前記弾性部材の変形を検出する1又は複数のセンサと、を備える
センサ付き構造部材。
【請求項2】
前記弾性部材は、誘電性を有する弾性素材により構成され、
前記1又は複数のセンサは、弾性変形可能であるとともに前記弾性部材の内部において互いに対向する一対の電極層と、前記弾性部材の一部からなり前記一対の電極層間に介在した誘電層と、を含む
請求項
1に記載のセンサ付き構造部材。
【請求項3】
前記一対の電極層は、前記弾性部材の外面に沿って設けられる
請求項
2に記載のセンサ付き構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付き構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
構造部材に外力が加わったときに生じる歪みは、歪みゲージ等によって検出、測定されることがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
歪みゲージは、歪みの検出対象である構造部材の外面に設けられ、構造部材の外面に生じる微小変位を検出することで、歪みを検出する。
歪みゲージは、構造部材の外面における微小範囲の歪みを検出することはできるが、広範囲の歪みを検出するのは困難である。
仮に、構造部材の外面において比較的広範囲を検出対象として歪みを検出しようとすると、その検出対象の面に多数の歪みゲージを設ける必要がある。歪みゲージそれぞれには信号を取り出すためのリード線が接続されるため、多数の歪みゲージを設ければ、多数のリード線を配線する必要が生じ、構成が複雑化してしまう。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、構造部材の歪みを広範囲から検出することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記目的を達成するための本発明であるセンサ付き構造部材は、外面から内方へ向かって凹む凹部が設けられた構造部材本体と、前記凹部に充填された弾性部材と、前記弾性部材に埋め込まれ、前記弾性部材の変形を検出する1又は複数のセンサと、を備える。
【0007】
上記構成のセンサ付き構造部材によれば、構造部材本体に設けられた凹部に充填された弾性部材の変形を、弾性部材に埋め込まれたセンサによって検出するので、構造部材本体に生じる歪みを、弾性部材を介して検出することができる。
つまり、弾性部材に伝搬する構造部材本体に生じる歪みを、弾性部材を変形させる凹部の内面を通じて検出することができる。この結果、例えば、歪みゲージを用いた場合と比較して、構造部材本体の歪みを広範囲から検出することができる。
【0008】
(2)また、上記センサ付き構造部材において、前記凹部は、前記外面全周に亘って環状に設けられていてもよい。
この場合、弾性部材を構造部材本体の全周に亘らせることができる。よって、センサを構造部材本体の周囲のうちの任意の位置に配置することが可能となり、構造部材本体に生じる歪みをより詳細に検出することができる。
【0009】
(3)また、上記センサ付き構造部材において、前記弾性部材は、誘電性を有する弾性素材により構成され、前記1又は複数のセンサは、弾性変形可能であるとともに前記弾性部材の内部において互いに対向する一対の電極層と、前記弾性部材の一部からなり前記一対の電極層間に介在した誘電層と、を含んでいてもよい。
この場合、センサを静電容量型センサとして構成できる。よって、センサの静電容量の変化から弾性部材の変形を検出し、構造部材本体の歪みを検出することができる。
【0010】
(4)上記センサ付き構造部材において、前記一対の電極層は、前記弾性部材の外面に沿って設けられることがある。
弾性部材の外面側は、構造部材本体の歪みに起因する弾性部材の変形が最も大きく現れる。このため、一対の電極層を弾性部材の外面に沿って設けることで、センサの感度が高められる。
【0011】
(5)また、上記センサ付き構造部材において、前記1又は複数のセンサは、前記弾性部材に含められた粉状又は繊維状の磁性材料と、前記弾性部材の内部に設けられたコイルと、を含んでいてもよい。
この場合、コイルのインダクタンスの変化から弾性部材の変形を検出し、構造部材本体の歪みを検出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、構造部材本体の歪みを広範囲から検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るセンサ付き構造部材を示す図である。
【
図3】
図3は、センサの部分を拡大した構造部材本体の断面図であり、
図3(a)は、構造部材本体の軸方向に沿った断面図、
図3(b)は、
図3(a)中のA-A線における矢視断面図である。
【
図4】
図4は、センサに接続される検出回路の構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5(a)は、第1実施形態の変形例を示すセンサ付き構造部材の断面図であり、
図5(b)は、第1実施形態の他の変形例を示すセンサ付き構造部材の断面図である。
【
図6】
図6(a)は、第2実施形態に係るセンサ付き構造部材を示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)中のB-B線における矢視断面図である。
【
図7】
図7は、第3実施形態に係るセンサ付き構造部材を示す図であり、
図7(a)は、構造部材本体の径方向に沿った断面図、
図7(b)は、構造部材本体の軸方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
〔第1実施形態について〕
図1は、第1実施形態に係るセンサ付き構造部材を示す図である。
このセンサ付き構造部材1は、円柱形状の部材であり、例えば、機械装置等を構成する構造部材として用いることができる。
図1中、センサ付き構造部材1は、構造部材本体2と、センサ4とを備える。構造部材本体2は、機械構造用鋼や、アルミニウム合金、樹脂等によって円柱形状に形成された部材であり、上述の構造部材として用いられる部材である。
センサ4は、構造部材本体2に設けられており、構造部材本体2に対して外力が作用したときに構造部材本体2に生じる歪みを検出する機能を有する。
構造部材本体2には、弾性部材5が、周方向に沿って環状に設けられている。
センサ4は、弾性部材5に設けられている。本実施形態のセンサ4は、弾性部材5の変形を静電容量の変化として検出する静電容量型センサである。
【0015】
センサ4には、リード線6を介して検出回路8が接続されている。検出回路8は、処理装置10に接続されている。
検出回路8は、センサ4からの出力を受け付け、構造部材本体2の歪みを示す出力信号を処理装置10へ与える。処理装置10は、与えられた出力信号に基づいた情報処理を行う。
【0016】
図2は、構造部材本体2の要部拡大図である。
構造部材本体2には、構造部材本体2の円筒状の外面2aから内方へ向かって凹む凹部12が設けられている。
凹部12は、外面2aの周方向に沿って全周に亘って環状に設けられている。
弾性部材5は、凹部12に充填されている。なお、
図2では、各部の理解を容易にするために、弾性部材5を省略して示している。
弾性部材5は、凹部12に充填されることで、環状に形成される。また、弾性部材5は、構造部材本体2の外面2aに対して面一となるように形成される。
弾性部材5は、誘電性を有する弾性素材により形成される。誘電性を有する弾性素材としては、シリコーンゴムや、ウレタンゴム、ニトリルゴム等のエラストマーが用いられる。
センサ4は、一対のシート部材14を含む。一対のシート部材14は、例えば、銅箔により形成されるシート状(帯状)の部材であり、弾性部材5によって保持される。一対のシート部材14には、リード線6が接続される。
【0017】
図3(a)及び
図3(b)は、センサ4の部分を拡大した構造部材本体2の断面図である。
図3(a)は、構造部材本体2の軸方向に沿った断面図、
図3(b)は、
図3(a)中のA-A線における矢視断面図である。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、凹部12に充填された弾性部材5は、凹部12の内面を構成する底面12a、及び内側面12bに密着している。また、弾性部材5の外面5aは、構造部材本体2の外面2aに対して面一に形成されている。
【0018】
一対のシート部材14は、矩形帯状の部材であり、長手方向の一端が弾性部材5に埋め込まれて弾性部材5の内部に位置している。これにより、一対のシート部材14は弾性部材5によって保持されている。
【0019】
センサ4は、弾性部材5に埋め込まれたセンサ本体16と、センサ本体16から外部へ突出した一対の端子部18とを有する。
一対の端子部18は、一対のシート部材14において弾性部材5の外面5aから外部へ突出している他端部分により構成される。一対の端子部18は、センサ本体16からの信号を取り出すための端子であり、リード線6が接続される。
【0020】
センサ本体16は、弾性部材5の内部において所定の間隔を置いて互いに対向する一対の矩形状の電極層20と、一対の電極層20の間に介在した誘電層22とを含んでいる。つまり、センサ本体16は、面状の容量素子を構成している。
【0021】
一対の電極層20は、一対のシート部材14において弾性部材5に埋め込まれ弾性部材5の内部に位置する一端部分により構成される。よって、一対の電極層20は、弾性部材5の外面5aに沿って設けられる。
一対の電極層20は、上述のように一対のシート部材14の一部であり、銅箔により構成される。よって、一対の電極層20は、弾性部材5の弾性変形に応じて弾性変形可能である。一対の電極層20は、一対の電極層20の面方向が構造部材本体2の軸方向に直交する面に沿うように配置されている。なお、電極層20の面方向とは、シート状の電極層20の一面及びその裏面が広がる方向をいう。
誘電層22は、弾性部材5と同じ弾性素材により形成されており、弾性部材5の一部からなる。
【0022】
このセンサ本体16は、弾性部材5に埋め込まれているため、弾性部材5の変形に応じて変形する。センサ本体16は、変形すると、その変形に応じて一対の電極層20の間隔や面積に変化が生じる。よって、センサ本体16の静電容量は、弾性部材5の変形に応じて変化する。これにより、センサ本体16は、弾性部材5の変形を静電容量の変化として出力する。
センサ本体16は、面状であるので、弾性部材5が3次元的に変形したとしても、その変形を検出することができる。
【0023】
ここで、構造部材本体2に外力が作用することで構造部材本体2に歪みが生じると、その歪みに応じて弾性部材5にも変形が生じる。
センサ本体16は、この構造部材本体2の歪みに起因する弾性部材5の変形を検出し、静電容量の変化として出力する。これにより、センサ本体16は、構造部材本体2の歪みを検出することができる。
【0024】
弾性部材5は、凹部12に充填されることで、凹部12の底面12a及び内側面12bに接触している。構造部材本体2の歪みは、凹部12の底面12a及び内側面12bから弾性部材5へ伝搬し、弾性部材5に3次元的な変形を生じさせる。
本実施形態では、このような弾性部材5の3次元的な変形を弾性部材5に埋め込まれたセンサ本体16によって検出するので、構造部材本体2に生じる歪みを、弾性部材5を介して検出することができる。
つまり、構造部材本体2の歪みを、弾性部材5を変形させる凹部12の底面12a及び内側面12bを通じて検出することができる。この結果、例えば、歪みゲージを用いて構造部材本体2の歪みを検出する場合と比較して、構造部材本体2の歪みを広範囲から検出することができる。
【0025】
また、歪みゲージを用いて構造部材本体2の歪みを広範囲から検出しようとする場合、多数の歪みゲージを外面2aに設ける必要があり、多数のリード線を配線することで構成が複雑化してしまう。
これに対して、本実施形態では、多数のセンサを配置する必要がなく、簡易な構成で構造部材本体2の歪みを広範囲から検出することができるので、低コスト化が可能である。
【0026】
さらに、センサ本体16(センサ4)は、構造部材本体2の歪みにより3次元的に変形する弾性部材5の変形を検出するので、センサ本体16が検出すべき歪みの方向を設定する際の自由度を高めることができ、簡易な構成で構造部材本体2の歪みをより詳細に検出することができる。
【0027】
本実施形態では、一対の電極層20は、一対の電極層20の面方向が構造部材本体2の軸方向に直交する面に沿うように配置されている。このため、センサ本体16は、弾性部材5に生じる変形のうち、主として構造部材本体2の軸方向に沿う変形を検出する。
弾性部材5に生じる軸方向に沿う変形は、構造部材本体2に軸方向に沿った引張応力又は圧縮応力が作用したとき、及び構造部材本体2に曲げ応力が作用したときに生じる。
【0028】
これに対して、例えば、一対の電極層20を、一対の電極層20の面方向が構造部材本体2の軸方向に対して斜め方向に傾斜する面に沿うように設ければ、センサ本体16は、弾性部材5に生じる変形のうち、主として前記斜め方向に交差する交差方向に沿う変形を検出することができる。
弾性部材5に生じる前記交差方向に沿う変形は、構造部材本体2に軸方向周りにねじり応力が作用したときに生じる。
【0029】
よって、一対の電極層20を構造部材本体2の軸方向に対して斜め方向に傾斜する面に沿うように設ければ、構造部材本体2に引張応力、圧縮応力、及び曲げ応力が作用したときに生じる構造部材本体2の歪みの他、軸方向周りにねじり応力が作用したときに生じる歪みも検出することができる。
【0030】
また、上述したように、一対の電極層20は、弾性部材5の外面5aに沿って設けられる。弾性部材5の外面5a側は、構造部材本体2の歪みに起因する弾性部材の変形が最も大きく現れる。このため、一対の電極層20を外面5a側に沿って設けることで、センサ4の感度が高められる。
【0031】
また、本実施形態では、凹部12を設けその内部に弾性部材5を充填すれば、センサ4を設けることができるので、既存の構造部材に凹部12を設ければ、センサ4を設けることができる。
【0032】
また、本実施形態では、凹部12を外面2aの全周に亘って環状に設けたので、構造部材本体2は、凹部12を挟んで軸方向一方側の第1部材と、軸方向他方側の第2部材とに分けて考えることができる。第1部材と第2部材とは、凹部12を形成することで外周径が外面2aより小さくなっている柱部によって接続されていると考えることができる。これにより、前記柱部を中心にして第1部材と第2部材との間でより大きな歪みを生じさせることができ、構造部材本体2の歪みをより適切に検出することができる。
【0033】
図4は、センサ4に接続される検出回路8の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、センサ4に接続される検出回路8は、電圧印加回路8aと、出力回路8bとを含む。
電圧印加回路8aは、センサ本体16が有する一対の電極層20のうちの一方の電極層20に接続されており、一方の電極層20に所定周波数の交流電圧を印加する。
出力回路8bは、一対の電極層20のうちの他方の電極層20に接続されている。他方の電極層20からは、一方の電極層20に印加される交流電圧に応じた信号であるセンサ信号が出力される。
出力回路8bは、このセンサ信号を受け付け、センサ信号に対して整流、包絡線検波等を行い、センサ本体16の静電容量の変化を示す出力信号を出力し、処理装置10へ与える。
【0034】
処理装置10は、例えば、パーソナルコンピュータ等であり、検出回路8から与えられる出力信号に基づいて、構造部材本体2における歪みを検出する。処理装置10には、出力信号の信号レベルや、出力信号の経時波形、これら信号レベル及び経時波形を数値解析した解析データといった出力データと、構造部材本体2の歪みの有無や歪み量といった歪みの状態を示す歪みデータとを対応付けるためのテーブル等が記憶されている。
処理装置10は、出力信号が与えられると、与えられた出力信号から、出力データを取得し、前記テーブルを参照することで、歪みデータを取得し、外部へ出力することができる。
また、処理装置10が、出力信号の信号レベルと、静電容量値とを対応付けるためのデータを記憶している場合、処理装置10は、センサ本体16の静電容量を求めることができる。
【0035】
図5(a)は、第1実施形態の変形例を示すセンサ付き構造部材1の断面図である。
本変形例では、センサ4を構造部材本体2の周方向に沿って複数(図例では3つ)設けた場合を示している。
本変形例では、各センサ4は、センサ本体16のみによって構成されており、全体が弾性部材5の内部に埋め込まれている。
この場合、周方向に沿って複数のセンサ4を配置したので、構造部材本体2に生じる歪みについてより多くの情報を得ることができ、構造部材本体2の歪みをより詳細に検出することができる。
【0036】
また、本変形例では、各センサ4(一対の電極層20)が、各センサ4の面方向が構造部材本体2の軸方向に直交する面に沿うように配置されているが、上述のように、構造部材本体2の軸方向に対して斜め方向に傾斜する面に沿うように設けてもよい。
【0037】
また、凹部12を外面2aの全周に亘って環状に設けているので、弾性部材5を構造部材本体2の全周に亘らせ環状に形成することができる。これにより、
図5(a)に示すように複数のセンサ4を周方向に配置したり、構造部材本体2の周囲のうちの任意の位置にセンサ4を配置することが可能となり、構造部材本体2に生じる歪みをより詳細に検出することができる。
【0038】
図5(b)は、第1実施形態の他の変形例を示すセンサ付き構造部材1の断面図である。
本変形例では、センサ4を弾性部材5の外面5aに沿って線状に設けた場合を示している。
本変形例では、アーチ状に形成された2つのセンサ4を組み合わせることで、構造部材本体2の周方向ほぼ全周に亘ってセンサ4が配置されている。
この場合においても、周方向に沿って配置された各センサ4から構造部材本体2に生じる歪みについてより多くの情報を得ることができ、構造部材本体2の歪みをより詳細に検出することができる。
【0039】
本実施形態では、センサ本体16の電極層20を銅箔によって構成した場合を例示したが、電極層20は、導電性を有する弾性素材によって形成されていればよく、例えば、導電性材料を含有した弾性素材をもちいてもよい。導電性材料としては、例えば、粉末状あるいは繊維状のカーボン素材や、導電性金属の粉末が用いられる。弾性素材としては、シリコーンゴムや、ウレタンゴムが用いられる。
【0040】
また、本実施形態では、センサ本体16の誘電層22を、弾性部材5と同じ弾性素材により形成した場合を例示したが、弾性部材5と異なる、誘電性を有する弾性素材により形成してもよい。
【0041】
〔第2実施形態について〕
図6(a)は、第2実施形態に係るセンサ付き構造部材1を示す図であり、
図6(b)は、
図6(a)中のB-B線における矢視断面図である。
本実施形態のセンサ付き構造部材1は、構造部材本体2が板状である点、及び凹部12が板状の構造部材本体2の一面2eに設けられている点において、第1実施形態と相違する。
【0042】
本実施形態の凹部12は、矩形板状の構造部材本体2の一面2eから内方へ向かって凹むように設けられている。凹部12は、一面2eにおいて矩形状に開口するように設けられている。
本実施形態のセンサ4(センサ本体16)は、凹部12のほぼ全域に亘る大きさの矩形状とされており、凹部12に充填された弾性部材5によって保持されている。センサ4(一対の電極層20)は、一面2eにほぼ平行となるように設けられている。
本実施形態においても、構造部材本体2のたわみやねじれによって生じる構造部材本体2の歪みをセンサ4によって詳細に検出することができる。
【0043】
〔第3実施形態について〕
図7(a)及び
図7(b)は、第3実施形態に係るセンサ付き構造部材1を示す図である。
図7(a)は、構造部材本体2の径方向に沿った断面図、
図7(b)は、構造部材本体2の軸方向に沿った断面図である。なお、
図7(a)では、弾性部材5を省略して示している。
本実施形態のセンサ付き構造部材1は、センサ4が、コイル30を含み、このコイル30のインダクタンスの変化に基づいて弾性部材5の変形を検出するように構成されている点において、第1実施形態及び第2実施形態と相違する。
【0044】
本実施形態の弾性部材5には、磁性材料32が含められる。磁性材料32は、粉状である。磁性材料32としては、アモルファスCoFeSiB合金からなる磁性ワイヤを粉状にしたものが用いられる。弾性部材5を形成する際に、磁性材料32は、弾性部材5を構成する弾性素材に混練され分散される。これにより、磁性材料32を含む弾性部材5を得ることができる。
コイル30は、直径0.1mm以下のエナメル線をらせん状に形成した部材である。コイル30は、弾性部材5に埋め込まれて保持される。なお、
図7(a)及び
図7(b)では、コイル30の大きさを実際よりも大きく誇張して示している。
【0045】
本実施形態のセンサ4は、磁性材料32と、コイル30とを含んで構成される。コイル30は、弾性部材5に埋め込まれ保持されているので、弾性部材5の変形に応じて変形する。
本実施形態のセンサ4は、コイル30が変形することによってインダクタンスに変化が生じる。これにより、センサ4は、弾性部材5の変形をインダクタンスの変化として出力する。
さらに、弾性部材5に含まれる磁性材料32は、コイル30周囲の透磁率を高めるので、コイル30が変形することによるインダクタンスの変化を相対的に大きくすることができる。これにより、センサ4は、弾性部材5の微小な変形をインダクタンスの変化として出力することができる。
【0046】
センサ4には、第1実施形態と同様、検出回路8及び処理装置10が接続される。検出回路8は、センサ4に交流電圧を印加する。検出回路8は、交流電圧を印加したときのセンサ4の両端電圧及びセンサ4に流れる電流を検知しこれらの位相差に基づいてセンサ4のインダクタンスの変化を出力信号として出力する。
処理装置10は、与えられた出力信号から、歪みデータを取得し、外部へ出力する。
【0047】
本実施形態においても、センサ4が、凹部12に充填された弾性部材5の変形を検出するので、簡易な構成で構造部材本体2の歪みをより詳細に検出することができる。
【0048】
本実施形態では、粉状の磁性材料32を弾性部材5に含めた場合を例示したが、粉状の磁性材料32に代えて、繊維状の磁性材料32を用いるもともできる。繊維状の磁性材料32は、例えば、コイル30の内周側に挿通されて配置される。この場合においても、磁性材料32は、コイル30が変形することによるインダクタンスの変化を相対的に大きくすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、一つのコイル30を弾性部材5に埋め込んだ場合を例示したが、複数のコイル30を埋め込み、周方向に並べて配置してもよい。
【0050】
〔その他〕
なお、本発明は、上記実施形態に限定されることはない。
上記第1実施形態及び第3実施形態では、構造部材本体2を円柱形状に形成した場合を例示したが、構造部材本体2の形状は、特に限定されることはなく、角柱形状であってもよいし、異形断面を有する柱形状であってもよい。
【0051】
また、上記第1実施形態及び第3実施形態では、凹部12を構造部材本体2の外面2a全周に亘って環状に設けた場合を例示したが、凹部12は、構造部材本体2において歪みを測定する必要がある位置に設けることができる。よって、例えば、外面2aに軸方向に対して傾斜する方向に有底孔状の凹部12を設け、その中にセンサ本体16を埋め込んでもよい。また、構造部材本体2の円筒状の外面2aではなく、軸方向両端の端面に凹部12を設けてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 センサ付き構造部材 2 構造部材本体 2a 外面
2e 一面 4 センサ 5 弾性部材
5a 外面 12 凹部 12a 底面
12b 内側面 20 電極層 22 誘電層
30 コイル 32 磁性材料