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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
H02M3/155 K
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019198774
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021072722
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國保 慎一郎
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0280564(US,A1)
【文献】特開2012-019683(JP,A)
【文献】特表2007-515917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第1のインダクタと、
前記第1の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第2のインダクタと、
第2の電源ノードと前記第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第1のスイッチと、第3の電源ノードと前記第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第2のスイッチとを有する第1のスイッチペアと、
前記第2の電源ノードと前記第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第3のスイッチと、前記第3の電源ノードと前記第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第4のスイッチとを有する第2のスイッチペアと、
前記第1の電源ノードから前記第1のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における前記第1のインダクタに流れる第1の電流の電流値が、第1のしきい値において減少から増加に転じ第2のしきい値において増加から減少に転じるように前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの動作を制御可能であり、前記第1の電源ノードから前記第2のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における前記第2のインダクタに流れる第2の電流の電流値が、第3のしきい値において減少から増加に転じ第4のしきい値において増加から減少に転じるように前記第3のスイッチおよび前記第4のスイッチの動作を制御可能な制御部と
を備え、
前記制御部は
記第1のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第1のサイクル時間と、前記第2のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第2のサイクル時間と、前記第1のスイッチペアの前記動作サイクルの第1の終了タイミング、および前記第2のスイッチペアの前記動作サイクルの第2の終了タイミングのタイミング差とに基づいて、前記タイミング差が所定のタイミング差になるように前記第3のしきい値および前記第4のしきい値のうちの一方を設定可能であり、
前記第3のしきい値および前記第4のしきい値が、前記第2のスイッチペアがゼロボルトスイッチング動作を行うために超過すべき所定の電流値を挟むように、前記第3のしきい値および前記第4しきい値を設定可能である
電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、さらに、前記第1のサイクル時間、前記第2のサイクル時間、および前記タイミング差に基づいて、前記タイミング差が前記所定のタイミング差になるように前記第3のしきい値および前記第4のしきい値のうちの他方を設定可能である
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の電流に基づいて前記第1のサイクル時間および前記第1の終了タイミングを検出可能であり、前記第2の電流に基づいて前記第2のサイクル時間および前記第2の終了タイミングを検出可能である
請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のサイクル時間、前記第2のサイクル時間、前記第1の電源ノードと前記第3の電源ノードの間の第1の電圧、および前記第2の電源ノードと前記第3の電源ノードの間の第2の電圧に基づいて、前記第1のインダクタの第1のインダクタンスおよび前記第2のインダクタの第2のインダクタンスを推定可能であり、前記第1のインダクタンスおよび前記第2のインダクタンスに基づいて前記第3のしきい値および前記第4のしきい値のうちの前記一方を設定可能である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第1の電流の電流値と前記第1のしきい値とを比較可能な第1のコンパレータと、
前記第1の電流の電流値と前記第2のしきい値とを比較可能な第2のコンパレータと、
前記第2の電流の電流値と前記第3のしきい値とを比較可能な第3のコンパレータと、
前記第2の電流の電流値と前記第4のしきい値とを比較可能な第4のコンパレータと
を有し、
前記第1のコンパレータおよび前記第2のコンパレータにおける比較結果に基づいて前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの動作を制御可能であり、
前記第3のコンパレータおよび前記第4のコンパレータにおける比較結果に基づいて前記第3のスイッチおよび前記第4のスイッチの動作を制御可能である
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1の電源ノードおよび前記第3の電源ノードに接続された第1の接続端子部と、
前記第2の電源ノードおよび前記第3の電源ノードに接続された第2の接続端子部と
をさらに備え、
前記第1のスイッチペアおよび前記第2のスイッチペアは、前記第1の接続端子部に供給された直流電力を変換可能であり、変換された前記直流電力を前記第2の接続端子部から出力可能である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第2の電源ノードおよび前記第3の電源ノードに接続された第1の接続端子部と
前記第1の電源ノードおよび前記第3の電源ノードに接続された第2の接続端子部と、
をさらに備え、
前記第1のスイッチペアおよび前記第2のスイッチペアは、前記第1の接続端子部に供給された直流電力に変換可能であり、変換された前記直流電力を前記第2の接続端子部から出力可能である
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
第1の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第1のインダクタと、
前記第1の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第2のインダクタと、
第2の電源ノードと前記第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第1のスイッチと、第3の電源ノードと前記第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第2のスイッチとを有する第1のスイッチペアと、
前記第2の電源ノードと前記第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第3のスイッチと、前記第3の電源ノードと前記第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第4のスイッチとを有する第2のスイッチペアと、
前記第1の電源ノードから前記第1のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における前記第1のインダクタに流れる第1の電流の電流値が、第1のしきい値において減少から増加に転じ第2のしきい値において増加から減少に転じるように前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの動作を制御可能であり、前記第1の電源ノードから前記第2のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における前記第2のインダクタに流れる第2の電流の電流値が、第3のしきい値において減少から増加に転じ第4のしきい値において増加から減少に転じるように前記第3のスイッチおよび前記第4のスイッチの動作を制御可能な制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記第1のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第1のサイクル時間と、前記第2のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第2のサイクル時間と、前記第1のスイッチペアの前記動作サイクルの第1の終了タイミング、および前記第2のスイッチペアの前記動作サイクルの第2の終了タイミングのタイミング差とに基づいて、前記タイミング差が所定のタイミング差になるように前記第3のしきい値および前記第4のしきい値のうちの一方を設定可能であり、
前記第1のサイクル時間、前記第2のサイクル時間、前記第1の電源ノードと前記第3の電源ノードの間の第1の電圧、および前記第2の電源ノードと前記第3の電源ノードの間の第2の電圧に基づいて、前記第1のインダクタの第1のインダクタンスおよび前記第2のインダクタの第2のインダクタンスを推定可能であり、前記第1のインダクタンスおよび前記第2のインダクタンスに基づいて前記第3のしきい値および前記第4のしきい値のうちの前記一方を設定可能である
電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の電力変換装置と、
前記電力変換装置に電力を供給可能な電源と
を備えた電力変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を変換する電力変換装置および電力変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置には、複数のレグを設け、各レグにおける動作のタイミングずらすことによりインターリーブ動作を行うものがある(例えば、特許文献1,2および非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-19683号公報
【文献】特開2019-22396号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】L. Huber, B. T. Irving and M. M. Jovanovic, “Open-Loop Control Methods for Interleaved DCM/CCM Boundary Boost PFC Converters”, IEEEtrans. Power Electron., vol. 23, no. 4, pp 1649-1657, July 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電力変換装置では、効率が高いことが望まれており、また、電力変換装置のサイズを小さくすることが望まれている。
【0006】
効率の向上および装置の小型化を実現することができる電力変換装置および電力変換システムを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態に係る第1の電力変換装置は、第1のインダクタと、第2のインダクタと、第1のスイッチペアと、第2のスイッチペアと、制御部とを備える。第1のインダクタは、第1の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられる。第2のインダクタは、第1の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられる。第1のスイッチペアは、第2の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第1のスイッチと、第3の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第2のスイッチとを有する。第2のスイッチペアは、第2の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第3のスイッチと、第3の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第4のスイッチとを有する。制御部は、第1の電源ノードから第1のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における第1のインダクタに流れる第1の電流の電流値が第1のしきい値において減少から増加に転じ第2のしきい値において増加から減少に転じるように第1のスイッチおよび第2のスイッチの動作を制御可能であり、第1の電源ノードから第2のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における第2のインダクタに流れる第2の電流の電流値が第3のしきい値において減少から増加に転じ第4のしきい値において増加から減少に転じるように第3のスイッチおよび第4のスイッチの動作を制御可能に構成される。上記制御部は、第1のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第1のサイクル時間と、第2のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第2のサイクル時間と、第1のスイッチペアの動作サイクルの第1の終了タイミング、および第2のスイッチペアの動作サイクルの第2の終了タイミングのタイミング差とに基づいて、タイミング差が所定のタイミング差になるように第3のしきい値および第4のしきい値のうちの一方を設定可能である。上記制御部は、第3のしきい値および第4のしきい値が、第2のスイッチペアがゼロボルトスイッチング動作を行うために超過すべき所定の電流値を挟むように、第3のしきい値および第4しきい値を設定可能である。
本発明の一実施の形態に係る第2の電力変換装置は、第1のインダクタと、第2のインダクタと、第1のスイッチペアと、第2のスイッチペアと、制御部とを備える。第1のインダクタは、第1の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられる。第2のインダクタは、第1の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられる。第1のスイッチペアは、第2の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第1のスイッチと、第3の電源ノードと第1のノードとを結ぶ経路に設けられた第2のスイッチとを有する。第2のスイッチペアは、第2の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第3のスイッチと、第3の電源ノードと第2のノードとを結ぶ経路に設けられた第4のスイッチとを有する。制御部は、第1の電源ノードから第1のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における第1のインダクタに流れる第1の電流の電流値が第1のしきい値において減少から増加に転じ第2のしきい値において増加から減少に転じるように第1のスイッチおよび第2のスイッチの動作を制御可能であり、第1の電源ノードから第2のノードに向かって流れる電流を正の電流とした場合における第2のインダクタに流れる第2の電流の電流値が第3のしきい値において減少から増加に転じ第4のしきい値において増加から減少に転じるように第3のスイッチおよび第4のスイッチの動作を制御可能に構成される。上記制御部は、第1のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第1のサイクル時間と、第2のスイッチペアの動作サイクルの時間長である第2のサイクル時間と、第1のスイッチペアの動作サイクルの第1の終了タイミング、および第2のスイッチペアの動作サイクルの第2の終了タイミングのタイミング差とに基づいて、タイミング差が所定のタイミング差になるように第3のしきい値および第4のしきい値のうちの一方を設定可能である。上記制御部は、第3のしきい値および第4のしきい値が、第2のスイッチペアがゼロボルトスイッチング動作を行うために超過すべき所定の電流値を挟むように、第3のしきい値および第4しきい値を設定可能である。上記制御部は、第1のサイクル時間、第2のサイクル時間、第1の電源ノードと第3の電源ノードの間の第1の電圧、および第2の電源ノードと第3の電源ノードの間の第2の電圧に基づいて、第1のインダクタの第1のインダクタンスおよび第2のインダクタの第2のインダクタンスを推定可能であり、第1のインダクタンスおよび第2のインダクタンスに基づいて第3のしきい値および第4のしきい値のうちの一方を設定可能である
【0008】
本発明の一実施の形態に係る電力変換システムは、上記電力変換装置と、電力変換装置に電力を供給可能な電源とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施の形態に係る電力変換装置および電力変換システムによれば、第1のインダクタに流れる第1の電流の電流値が第1のしきい値において減少から増加に転じ第2のしきい値において増加から減少に転じるように第1のスイッチおよび第2のスイッチの動作を制御し、第2のインダクタに流れる第2の電流の電流値が第3のしきい値において減少から増加に転じ第4のしきい値において増加から減少に転じるように第3のスイッチおよび第4のスイッチの動作を制御し、第1のサイクル時間と、第2のサイクル時間と、タイミング差とに基づいて、そのタイミング差が所定のタイミング差になるように第3のしきい値および第4のしきい値のうちの一方を設定するようにしたので、効率の向上および装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
図2図1に示した電力変換装置の一動作例を表すタイミング波形図である。
図3図1に示したしきい値設定部の一構成例を表すブロック図である。
図4図1に示した電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
図5A図1に示した電力変換装置の一動作例を表す説明図である。
図5B図1に示した電力変換装置の他の動作例を表す説明図である。
図5C図1に示した電力変換装置の他の動作例を表す説明図である。
図5D図1に示した電力変換装置の他の動作例を表す説明図である。
図5E図1に示した電力変換装置の他の動作例を表す説明図である。
図5F図1に示した電力変換装置の他の動作例を表す説明図である。
図5G図1に示した電力変換装置の他の動作例を表す説明図である。
図5H図1に示した電力変換装置の他の動作例を表す説明図である。
図6図1に示した電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
図7図1に示した電力変換装置の一動作例を表す他のタイミング波形図である。
図8】変形例に係るしきい値設定部の一構成例を表すブロック図である。
図9】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
図10】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
図11】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
図12図11に示した制御部の一構成例を表すブロック図である。
図13図12に示したしきい値設定部の一構成例を表すブロック図である。
図14】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
図15】他の変形例に係る電力変換装置の一構成例を表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
<実施の形態>
[構成例]
図1は、本発明の一実施の形態に係る電力変換装置(電力変換装置1)の一構成例を表すものである。この電力変換装置1は、直流電圧を昇圧するDC/DC変換装置である。電力変換装置1は、入力端子T11,T12と、出力端子T21,T22とを備えている。入力端子T11,T12は直流電源PDCに接続され、出力端子T21,T22は負荷LDに接続される。電力変換装置1は、直流電源PDCから供給された直流電力を変換し、変換された直流電力を負荷LDに供給するように構成される。
【0013】
電力変換装置1は、キャパシタ18と、電圧検出部11と、電流検出部12M,12Sと、インダクタ13M,13Sと、トランジスタMH,ML,SH,SLと、キャパシタ15と、電圧検出部16と、制御部20とを備えている。
【0014】
キャパシタ18の一端は入力端子T11に導かれた電源ノードN1に接続され、他端は入力端子T12に導かれた電源ノードN3に接続される。
【0015】
電圧検出部11は、入力端子T12での電圧を基準とした、入力端子T11での電圧を電圧Vinとして検出するように構成される。電圧検出部11の一端は電源ノードN1に接続され、他端は電源ノードN3に接続される。電圧検出部11は、検出した電圧Vinに応じた信号を制御部20に供給するようになっている。
【0016】
電流検出部12Mは、インダクタ13Mに流れる電流を電流Imとして検出するように構成される。電流検出部12Mの一端は電源ノードN1に接続され、他端はインダクタ13Mの一端に接続される。電流Imは、電源ノードN1からトランジスタMHのソースおよびトランジスタMLのドレインに導かれたノードNMに向かって流れる場合に正になるように検出される。電流検出部12Mは、検出した電流Imに応じた信号を制御部20に供給するようになっている。
【0017】
電流検出部12Sは、インダクタ13Sに流れる電流を電流Isとして検出するように構成される。電流検出部12Sの一端は電源ノードN1に接続され、他端はインダクタ13Sの一端に接続される。電流Isは、電源ノードN1からトランジスタSHのソースおよびトランジスタSLのドレインに導かれたノードNSに向かって流れる場合に正になるように検出される。電流検出部12Sは、検出した電流Isに応じた信号を制御部20に供給するようになっている。
【0018】
インダクタ13Mは、インダクタンスLmを有するチョークコイルであり、インダクタ13Sは、インダクタンスLsを有するチョークコイルである。インダクタンスLmおよびインダクタンスLsは、互いにほぼ同じ値を有する。インダクタ13Mの一端は電流検出部12Mの他端に接続され、他端はノードNMに接続される。インダクタ13Sの一端は電流検出部12Sの他端に接続され、他端はノードNSに接続される。
【0019】
トランジスタMH,ML,SH,SLは、制御部20から供給されたゲート信号GMH,GML,GSH,GSLに基づいてそれぞれスイッチング動作を行うように構成される。トランジスタMH,ML,SH,SLのスイッチング周波数は、数百kHzである。トランジスタMH,ML,SH,SLは、例えばN型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いて構成される。MOSFETは、例えば、スーパージャンクションMOSFETであってもよい。
【0020】
トランジスタMHは、電源ノードN2とノードNMとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN2をノードNMに接続するように構成される。トランジスタMHのドレインは電源ノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GMHが供給され、ソースはノードNMに接続される。トランジスタMLは、電源ノードN3とノードNMとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN3をノードNMに接続するように構成される。トランジスタMLのドレインはノードNMに接続され、ゲートにはゲート信号GMLが供給され、ソースは電源ノードN3に接続される。トランジスタMHおよびトランジスタMLは、マスタレグ14Mを構成する。
【0021】
トランジスタSHは、電源ノードN2とノードNSとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN2をノードNSに接続するように構成される。トランジスタSHのドレインは電源ノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GSHが供給され、ソースはノードNSに接続される。トランジスタSLは、電源ノードN3とノードNSとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN3をノードNSに接続するように構成される。トランジスタSLのドレインはノードNSに接続され、ゲートにはゲート信号GSLが供給され、ソースは電源ノードN3に接続される。トランジスタSHおよびトランジスタSLは、スレーブレグ14Sを構成する。
【0022】
トランジスタMH,ML,SH,SLのそれぞれは、寄生ダイオードおよび寄生キャパシタを含んでいる。寄生ダイオードおよび寄生キャパシタは、トランジスタの寄生素子である。例えば、トランジスタMHでは、寄生ダイオードのアノードはトランジスタMHのソースに接続され、カソードはトランジスタMHのドレインに接続される。また、トランジスタMHでは、寄生キャパシタの一端はトランジスタMHのソースに接続され、他端はトランジスタMHのドレインに接続される。トランジスタML,SH,SLについても同様である。なお、トランジスタMH,ML,SH,SLのそれぞれのドレイン・ソース間に、寄生素子ではない別のキャパシタをさらに接続してもよい。
【0023】
キャパシタ15の一端は電源ノードN2に接続され、他端は電源ノードN3に接続される。
【0024】
電圧検出部16は、出力端子T22での電圧を基準とした、出力端子T21での電圧を電圧Voutとして検出するように構成される。電圧検出部16の一端は出力端子T21に導かれた電源ノードN2に接続され、他端は出力端子T22に導かれた電源ノードN3に接続される。電圧検出部16は、検出した電圧Voutに応じた信号を制御部20に供給するようになっている。
【0025】
制御部20は、電力変換装置1の動作を制御するように構成される。具体的には、制御部20は、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12Sから供給された電流Isに応じた信号、および電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、4個のゲート信号GMH,GML,GSH,GSLを生成する。そして、制御部20は、生成したゲート信号GMH,GML,GSH,GSLをトランジスタMH,ML,SH,SLにそれぞれ供給することにより、トランジスタMH,ML,SH,SLの動作を制御する。このようにして、制御部20は、電力変換装置1が、直流電源PDCから供給された直流電力に基づいて、電圧がより高い直流電力に変換し、変換された直流電力を負荷LDに供給するように制御する。制御部20は、しきい値設定部30と、コンパレータ22~25と、時間検出部26と、ラッチ27M,27Sと、ゲート信号生成部28M,28Sとを有している。
【0026】
しきい値設定部30は、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号、時間検出部26から供給されたサイクル時間Tm,Ts(後述)およびタイミング差ΔT(後述)についての情報に基づいて、4つの電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*,Ipk_s*,Ibtm_s*を設定するように構成される。電流しきい値Ipk_m*および電流しきい値Ibtm_m*は、マスタレグ14Mの動作に係るものであり、電流Imの上限値および下限値にそれぞれ対応している。また、電流しきい値Ipk_s*および電流しきい値Ibtm_s*は、スレーブレグ14Sの動作に係るものであり、電流Isの上限値および下限値にそれぞれ対応している。
【0027】
このしきい値設定部30は、例えば、1または複数のマイクロコントローラを用いて構成される。しきい値設定部30は、例えば、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号に基づいてAD(Analog-to-Digital)変換を行うことにより、電圧Vinを示すデジタル値を求めるとともに、電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいてAD変換を行うことにより、電圧Voutを示すデジタル値を求める。しきい値設定部30は、電圧Vinを示すデジタル値、電圧Voutを示すデジタル値、サイクル時間Tm,Tsおよびタイミング差ΔTについての情報に基づいて演算処理を行うことにより4つの電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*,Ipk_s*,Ibtm_s*を設定する。しきい値設定部30は、これらの4つの電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*,Ipk_s*,Ibtm_s*に基づいてDA変換を行うことにより、電流しきい値Ipk_m*に応じた信号、電流しきい値Ibtm_m*に応じた信号、電流しきい値Ipk_s*に応じた信号、および電流しきい値Ibtm_s*に応じた信号を生成し、これらの4つの電流しきい値に応じた信号を、コンパレータ22~25にそれぞれ供給するようになっている。
【0028】
コンパレータ22は、電流しきい値Ibtm_m*に応じた信号と電流Imに応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ22は、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流しきい値Ibtm_m*に応じた信号が供給され、負入力端子には電流Imに応じた信号が供給される。そして、コンパレータ22は、比較結果に応じた信号CPout1を出力端子から出力するようになっている。
【0029】
コンパレータ23は、電流Imに応じた信号と電流しきい値Ipk_m*に応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ23は、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流Imに応じた信号が供給され、負入力端子には電流しきい値Ipk_m*に応じた信号が供給される。そして、コンパレータ23は、比較結果に応じた信号CPout2を出力端子から出力するようになっている。
【0030】
コンパレータ24は、電流しきい値Ibtm_s*に応じた信号と電流Isに応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ24は、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流しきい値Ibtm_s*に応じた信号が供給され、負入力端子には電流Isに応じた信号が供給される。そして、コンパレータ24は、比較結果に応じた信号CPout3を出力端子から出力するようになっている。
【0031】
コンパレータ25は、電流Isに応じた信号と電流しきい値Ipk_s*に応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ25は、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流Isに応じた信号が供給され、負入力端子には電流しきい値Ipk_s*に応じた信号が供給される。そして、コンパレータ25は、比較結果に応じた信号CPout4を出力端子から出力するようになっている。
【0032】
時間検出部26は、信号CPout1および信号CPout3に基づいて、例えばタイマを用いて、サイクル時間Tm,Tsおよびタイミング差ΔTを検出するように構成される。サイクル時間Tmは、マスタレグ14Mにおける動作サイクルの時間長であり、サイクル時間Tsは、スレーブレグ14Sにおける動作サイクルの時間長である。また、タイミング差ΔTは、マスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14Sの動作サイクルの終了タイミングとの間のタイミング差である。そして、時間検出部26は、サイクル時間Tm,Tsおよびタイミング差ΔTについての情報をしきい値設定部30に供給するようになっている。
【0033】
ラッチ27Mは、いわゆるSR(Set-Reset)ラッチであり、セット入力端子Sには信号CPout1が入力され、リセット入力端子Rには信号CPout2が入力される。また、ラッチ27Mは、出力端子Qから信号GML2を出力するとともに、出力端子QBから信号GMH2を出力するようになっている。信号GMH2および信号GML2は、互いに反転した論理信号である。
【0034】
ラッチ27Sは、いわゆるSRラッチであり、セット入力端子Sには信号CPout3が入力され、リセット入力端子Rには信号CPout4が入力される。また、ラッチ27Sは、出力端子Qから信号GSL2を出力するとともに、出力端子QBから信号GSH2を出力するようになっている。信号GSH2および信号GSL2は、互いに反転した論理信号である。
【0035】
ゲート信号生成部28Mは、マスタレグ14Mにおけるいわゆるデッドタイムを設定することにより、信号GMH2に基づいてゲート信号GMHを生成するとともに、信号GML2に基づいてゲート信号GMLを生成するように構成される。
【0036】
ゲート信号生成部28Sは、スレーブレグ14Sにおけるいわゆるデッドタイムを設定することにより、信号GSH2に基づいてゲート信号GSHを生成するとともに、信号GSL2に基づいてゲート信号GSLを生成するように構成される。
【0037】
図2は、定常状態における電力変換装置1の一動作例を表すものであり、(A)は電流Imの波形を示し、(B)は電流Isの波形を示し、(C)~(F)は信号CPout1~CPout4の波形をそれぞれ示し、(G)~(J)はゲート信号GMH,GML,GSH,GSLの波形をそれぞれ示す。なお、図2(G)~(J)では、説明の便宜上、ゲート信号GMH,GML,GSH,GSLにおけるデッドタイムの図示を省略している。
【0038】
図2(A)に示したように、電流Imは、電流しきい値Ibtm_m*と電流しきい値Ipk_m*との間で往復する。電流Imは、マスタレグ14Mの各動作サイクルにおいて、電流しきい値Ibtm_m*から増加し始めて電流しきい値Ipk_m*に到達し、この電流しきい値Ipk_m*において増加から減少に転じ、この電流しきい値Ipk_m*から減少し始めて電流しきい値Ibtm_m*に到達し、この電流しきい値Ibtm_m*において減少から増加に転じる。
【0039】
同様に、図2(B)に示したように、電流Isは、電流しきい値Ibtm_s*と電流しきい値Ipk_s*との間で往復する。電流Isは、スレーブレグ14Sの各動作サイクルにおいて、電流しきい値Ibtm_s*から増加し始めて電流しきい値Ipk_s*に到達し、この電流しきい値Ipk_s*において増加から減少に転じ、この電流しきい値Ipk_s*から減少し始めて電流しきい値Ibtm_s*に到達、この電流しきい値Ibtm_s*において減少から増加に転じる。
【0040】
例えば、タイミングt1において減少し始めた電流Imがタイミングt2において電流しきい値Ibtm_m*に到達すると、コンパレータ22の出力信号である信号CPout1は高レベルになる(図2(A),(C))。これにより、ラッチ27Mはセットされ、信号GML2が低レベルから高レベルに変化するとともに信号GMH2が高レベルから低レベルに変化する。これに応じて、ゲート信号GMHが高レベルから低レベルに変化し、ゲート信号GMLが低レベルから高レベルに変化する(図2(G),(H))。これにより、トランジスタMHがオン状態からオフ状態になるとともに、トランジスタMLがオフ状態からオン状態になるので、電流Imは増加し始める(図2(A))。その結果、コンパレータ22の出力信号である信号CPout1は低レベルに戻る(図2(C))。
【0041】
このようにしてタイミングt2において増加し始めた電流Imが、タイミングt5において電流しきい値Ipk_m*に到達すると、コンパレータ23の出力信号である信号CPout2は高レベルになる(図2(A),(D))。これにより、ラッチ27Mはリセットされ、信号GML2が高レベルから低レベルに変化するとともに信号GMH2が低レベルから高レベルに変化する。これに応じて、ゲート信号GMHが低レベルから高レベルに変化し、ゲート信号GMLが高レベルから低レベルに変化する(図2(G),(H))。これにより、トランジスタMHがオフ状態からオン状態になるとともに、トランジスタMLがオン状態からオフ状態になるので、電流Imは減少し始める(図2(A))。その結果、コンパレータ23の出力信号である信号CPout2は低レベルに戻る(図2(D))。
【0042】
このようにしてタイミングt5において減少し始めた電流Imは、タイミングt6において電流しきい値Ibtm_m*に到達する(図2(A))。電力変換装置1は、このようなタイミングt2~t6の動作を繰り返す。
【0043】
以上、電流Imについて説明したが、電流Isについても同様である。すなわち、例えば、タイミングt3において減少し始めた電流Isが、タイミングt4において電流しきい値Ibtm_s*に到達すると、コンパレータ24の出力信号である信号CPout3は高レベルになる(図2(B),(E))。これにより、ラッチ27Sはセットされ、信号GSL2が低レベルから高レベルに変化するとともに信号GSH2が高レベルから低レベルに変化する。これに応じて、ゲート信号GSHが高レベルから低レベルに変化し、ゲート信号GSLが低レベルから高レベルに変化する(図2(I),(J))。これにより、トランジスタSHがオン状態からオフ状態になるとともに、トランジスタSLがオフ状態からオン状態になるので、電流Isは増加し始める(図2(B))。その結果、コンパレータ24の出力信号である信号CPout3は低レベルに戻る(図2(E))。
【0044】
このようにしてタイミングt4において増加し始めた電流Isが、タイミングt7において電流しきい値Ipk_s*に到達すると、コンパレータ25の出力信号である信号CPout4は高レベルになる(図2(B),(F))。これにより、ラッチ27Sはリセットされ、信号GSL2が高レベルから低レベルに変化するとともに信号GSH2が低レベルから高レベルに変化する。これに応じて、ゲート信号GSHが低レベルから高レベルに変化し、ゲート信号GSLが高レベルから低レベルに変化する(図2(I),(J))。これにより、トランジスタSHがオフ状態からオン状態になるとともに、トランジスタSLがオン状態からオフ状態になるので、電流Isは減少し始める(図2(B))。その結果、コンパレータ25の出力信号である信号CPout4は低レベルに戻る(図2(F))。
【0045】
このようにしてタイミングt7において減少し始めた電流Isは、タイミングt8において電流しきい値Ibtm_s*に到達する(図2(B))。電力変換装置1は、このようなタイミングt4~t8の動作を繰り返す。
【0046】
このように、マスタレグ14Mの動作サイクルは、例えばタイミングt2において開始してタイミングt6において終了し、スレーブレグ14Sの動作サイクルは、例えばタイミングt4において開始してタイミングt8において終了する。しきい値設定部30は、マスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14Sの動作サイクルの終了タイミングとのタイミング差ΔTが、これらの動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、各動作サイクルにおける、スレーブレグ14Sに係る電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を順次設定する。言い換えれば、しきい値設定部30は、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14Sの動作サイクルとが、互いに180度分の位相だけずれるように、各動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を順次設定する。これにより、電力変換装置1は、2相のインターリーブ動作を行うことができるようになっている。
【0047】
図3は、しきい値設定部30の一構成例を表すものである。図2において、“k”は動作サイクルの番目の数を示し、“*”は指令値を示し、“^”は推定値を示す。しきい値設定部30は、例えば、マスタレグ14Mの“k”番目の動作サイクルにおいて、マスタレグ14Mの次の“k+1”番目の動作サイクルで使用すべき電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1]を算出し、その“k+1”番目の動作サイクルが開始したときに、算出した電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1]に応じた信号をコンパレータ22,23に供給する。同様に、しきい値設定部30は、例えば、スレーブレグ14Sの“k”番目の動作サイクルにおいて、スレーブレグ14Sの次の“k+1”番目の動作サイクルで使用すべき電流しきい値Ipk_s*[k+1],Ibtm_s*[k+1]を算出し、その“k+1”番目の動作サイクルが開始したときに、算出した電流しきい値Ipk_s*[k+1],Ibtm_s*[k+1]に応じた信号をコンパレータ24,25に供給する。しきい値設定部30は、しきい値算出部31M,31Sを有している。
【0048】
しきい値算出部31Mは、電圧Vin,Voutに基づいて、マスタレグ14Mに係る電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1]を算出するように構成される。その際、しきい値算出部31Mは、電流しきい値Ibtm_m*[k+1]が、マスタレグ14Mにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、しきい値Ibtm_m*[k+1]を算出するようになっている。ここで、マスタレグ14Mにおけるしきい値Icmdcは、例えば負の値であり、マスタレグ14MがZVS(Zero Voltage Switching)動作を行うために超過すべき電流Imの値であり、インダクタンスLmなどによりあらかじめ決定される。
【0049】
しきい値算出部31Sは、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm,Ts、およびタイミング差ΔTに基づいて、スレーブレグ14Sに係る電流しきい値Ipk_s*[k+1],Ibtm_s*[k+1]を算出するように構成される。その際、しきい値算出部31Sは、電流しきい値Ibtm_s*[k+1]が、スレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_s*[k+1]を算出するようになっている。ここで、スレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcは、例えば負の値であり、スレーブレグ14SがZVS動作を行うために超過すべき電流Isの値であり、インダクタンスLsなどによりあらかじめ決定される。しきい値算出部31Sは、インダクタンス推定部32と、しきい値推定部33と、時間推定部34と、インターリーブ制御部35とを有している。
【0050】
インダクタンス推定部32は、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm[k-1],Ts[k-1]、電流しきい値Ipk_m*[k-1],Ibtm_m*[k-1],Ipk_s*[k-1],Ibtm_s*[k-1],Ibtm_m*[k-2],Ibtm_s*[k-2]に基づいて、インダクタンスLmの推定値である推定インダクタンスLm^、およびインダクタンスLsの推定値である推定インダクタンスLs^を算出するように構成される。ここで、サイクル時間Tm[k-1]は、マスタレグ14Mの“k-1”番目の動作サイクルにおけるサイクル時間Tmであり、サイクル時間Ts[k-1]は、スレーブレグ14Sの“k-1”番目の動作サイクルにおけるサイクル時間Tsである。電流しきい値Ipk_m*[k-1],Ibtm_m*[k-1]は、マスタレグ14Mの“k-1”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*である。電流しきい値Ibtm_m*[k-2]は、マスタレグ14Mの“k-2”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ibtm_m*である。電流しきい値Ipk_s*[k-1],Ibtm_s*[k-1]は、スレーブレグ14Sの“k-1”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*である。電流しきい値Ibtm_s*[k-2]は、スレーブレグ14Sの“k-2”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ibtm_s*である。
【0051】
例えば、インダクタンス推定部32は、例えば、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm[k-1]、電流しきい値Ipk_m*[k-1],Ibtm_m*[k-1],Ibtm_m*[k-2]に基づいて、推定インダクタンスLm^を算出することができる。すなわち、例えば、図2(A)に示したように、電流Imは、マスタレグ14Mの各動作サイクルにおいて、電流しきい値Ibtm_m*から増加し始めて電流しきい値Ipk_m*に到達し、この電流しきい値Ipk_m*から減少し始めて電流しきい値Ibtm_m*に到達する。例えば、“k-1”番目の動作サイクルでは、サイクル時間Tm[k-1]の間に、電流Imは、電流しきい値Ibtm_m*[k-2]から増加し始めて電流しきい値Ipk_m*[k-1]に到達し、その電流しきい値Ipk_m*[k-1]から減少し始めて電流しきい値Ibtm_m*[k-1]に到達する。この電流Imの増加率および減少率は、電圧Vin,VoutおよびインダクタンスLmにより定まる。よって、インダクタンス推定部32は、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm[k-1]、電流しきい値Ipk_m*[k-1],Ibtm_m*[k-1],Ibtm_m*[k-2]に基づいて、インダクタンスLmを推定することにより、推定インダクタンスLm^を算出することができる。
【0052】
同様に、インダクタンス推定部32は、例えば、電圧Vin,Vout、サイクル時間Ts[k-1]、電流しきい値Ipk_s*[k-1],Ibtm_s*[k-1],Ibtm_s*[k-2]に基づいて、推定インダクタンスLs^を算出することができる。
【0053】
しきい値推定部33は、電流しきい値Ipk_m*[k],Ibtm_m*[k]に基づいて、電流しきい値Ipk_m*[k+1]の推定値である推定しきい値Ipk_m^[k+1]、および電流しきい値Ibtm_m*[k+1]の推定値である推定しきい値Ibtm_m^[k+1]を算出するように構成される。ここで、電流しきい値Ipk_m*[k],Ibtm_m*[k]は、マスタレグ14Mの“k”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*である。電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1]は、マスタレグ14Mの“k+1”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*である。
【0054】
例えば、しきい値推定部33は、電流しきい値Ipk_m*[k]をそのまま推定しきい値Ipk_m^[k+1]として用いるとともに、電流しきい値Ibtm_m*[k]をそのまま推定しきい値Ibtm_m^[k+1]として用いてもよい。また、しきい値推定部33は、電流しきい値Ipk_m*[k],Ibtm_m*[k]に加え、さらに他のパラメータにも基づいて、推定しきい値Ipk_m^[k+1],Ibtm_m^[k+1]を算出してもよい。
【0055】
時間推定部34は、電圧Vin,Vout、推定インダクタンスLm^,Ls^、タイミング差ΔT[k-1]、電流しきい値Ipk_m*[k],Ibtm_m*[k],Ipk_s*[k],Ibtm_s*[k]、および推定しきい値Ipk_m^[k+1],Ibtm_m^[k+1]に基づいて、サイクル時間Tm[k]の推定値である推定サイクル時間Tm^[k]、サイクル時間Ts[k]の推定値である推定サイクル時間Ts^[k]、サイクル時間Tm[k+1]の推定値である推定サイクル時間Tm^[k+1]、およびタイミング差ΔT[k]の推定値である推定タイミング差ΔT^[k]を算出するように構成される。ここで、タイミング差ΔT[k-1]は、マスタレグ14Mの“k-1”番目の動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14Sの“k-1”番目の動作サイクルの終了タイミングとの間のタイミング差である。電流しきい値Ipk_s*[k],Ibtm_s*[k]は、スレーブレグ14Sの“k”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*である。
【0056】
例えば、時間推定部34は、上述したインダクタンス推定部32の算出原理と同様の算出原理を用いて、推定サイクル時間Tm^[k],Ts^[k],Tm^[k+1]および推定タイミング差ΔT^[k]を算出することができる。
【0057】
インターリーブ制御部35は、電圧Vin,Vout、推定サイクル時間Tm^[k],Ts^[k],Tm^[k+1]、および推定タイミング差ΔT^[k]に基づいて、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14Sの動作サイクルとが、互いに180度分の位相だけずれるように、電流しきい値Ipk_s*[k+1],Ibtm_s*[k+1]を算出するように構成される。
【0058】
ここで、インダクタ13Mは、本開示における「第1のインダクタ」の一具体例に対応する。インダクタ13Sは、本開示における「第2のインダクタ」の一具体例に対応する。トランジスタMHは、本開示における「第1のスイッチ」の一具体例に対応し、トランジスタMLは、本開示における「第2のスイッチ」の一具体例に対応する。マスタレグ14Mは、本開示における「第1のスイッチペア」の一具体例に対応する。トランジスタSHは、本開示における「第3のスイッチ」の一具体例に対応し、トランジスタSLは、本開示における「第4のスイッチ」の一具体例に対応する。スレーブレグ14Sは、本開示における「第2のスイッチペア」の一具体例に対応する。電源ノードN1は、本開示における「第1の電源ノード」の一具体例に対応し、電源ノードN2は、本開示における「第2の電源ノード」の一具体例に対応し、電源ノードN3は、本開示における「第3の電源ノード」の一具体例に対応する。ノードNMは、本開示における「第1のノード」の一具体例に対応する。ノードNSは、本開示における「第2のノード」の一具体例に対応する。入力端子T11,T12は、本開示における「第1の接続端子部」の一具体例に対応する。出力端子T21,T22は、本開示における「第2の接続端子部」の一具体例に対応する。制御部20は、本開示における「制御部」の一具体例に対応する。コンパレータ22は、本開示における「第1のコンパレータ」の一具体例に対応する。コンパレータ23は、本開示における「第2のコンパレータ」の一具体例に対応する。コンパレータ24は、本開示における「第3のコンパレータ」の一具体例に対応する。コンパレータ25は、本開示における「第4のコンパレータ」の一具体例に対応する。
【0059】
電流Imは、本開示における「第1の電流」の一具体例に対応する。電流Isは、本開示における「第2の電流」の一具体例に対応する。電流しきい値Ibtm_m*は、本開示における「第1のしきい値」の一具体例に対応し、電流しきい値Ipk_m*は、本開示における「第2のしきい値」の一具体例に対応し、電流しきい値Ibtm_s*は、本開示における「第3のしきい値」の一具体例に対応し、電流しきい値Ipk_s*は、本開示における「第4のしきい値」の一具体例に対応する。しきい値Icmdcは、本開示における「所定の電流値」の一具体例に対応する。サイクル時間Tmは、本開示における「第1のサイクル時間」の一具体例に対応し、サイクル時間Tsは、本開示における「第2のサイクル時間」の一具体例に対応し、タイミング差ΔTは、本開示における「タイミング差」の一具体例に対応する。電圧Vinは、本開示における「第1の電圧」の一具体例に対応する。電圧Voutは、本開示における「第2の電圧」の一具体例に対応する。
【0060】
[動作および作用]
続いて、本実施の形態の電力変換装置1の動作および作用について説明する。
【0061】
(全体動作概要)
まず、図1を参照して、電力変換装置1の全体動作概要を説明する。電圧検出部11は、電源ノードN3での電圧を基準とした、電源ノードN1での電圧を電圧Vinとして検出する。電流検出部12Mは、インダクタ13Mに流れる電流を電流Imとして検出する。電流検出部12Sは、インダクタ13Sに流れる電流を電流Isとして検出する。トランジスタMH,ML,SH,SLは、ゲート信号GMH,GML,GSH,GSLに基づいてそれぞれスイッチング動作を行う。電圧検出部16は、電源ノードN3での電圧を基準とした、電源ノードN2での電圧を電圧Voutとして検出する。制御部20は、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12Sから供給された電流Isに応じた信号、および電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、4個のゲート信号GMH,GML,GSH,GSLを生成する。
【0062】
(詳細動作)
まず、マスタレグ14Mの動作について、詳細に説明する。
【0063】
図4は、マスタレグ14Mの一動作例を表すものであり、(A)はゲート信号GMHの波形を示し、(B)はゲート信号GMLの波形を示し、(C)はノードNMの電圧VNMの波形を示し、(D)は電流Imの波形を示す。図4(A),(B)には、デッドタイムTdを描いている。
【0064】
図5A~5Hは、マスタレグ14Mの動作状態を表すものである。なお、図5A~5Hでは、説明の便宜上、マスタレグ14Mの動作を説明するために必要なもののみを図示しており、負荷LDの代わりに直流電源PDC2を接続している。図5A~5Hでは、電源ノードN3を接地しており、トランジスタMH,MLを、オン状態またはオフ状態を示すスイッチを用いて描いている。
【0065】
タイミングt11~t12の期間P1では、図4に示したように、ゲート信号GMHは低レベルであり、ゲート信号GMLは高レベルである(図4(A),(B))。よって、トランジスタMHはオフ状態であり、トランジスタMLはオン状態である。トランジスタMLがオン状態であるので、ノードNMの電圧は0Vである(図4(C))。すなわち、電源ノードN1の電圧VinはノードNMの電圧よりも高い。図5Aに示したように、電流Iは、直流電源PDC、インダクタ13M、オン状態であるトランジスタML、直流電源PDCの順に流れる。このようにして、インダクタ13Mに流れる電流Imは、0(ゼロ)から増加する(図4(D))。
【0066】
そして、タイミングt12において、ゲート信号GMLが高レベルから低レベルに変化することにより(図4(B))、トランジスタMLはオン状態からオフ状態に変化する。これにより、タイミングt12~t13の期間P2において、図5Bに示したように、電流Iが、直流電源PDC、インダクタ13M、オフ状態であるトランジスタMLの寄生キャパシタ、直流電源PDCの順に流れるとともに、直流電源PDC、インダクタ13M、オフ状態であるトランジスタMHの寄生キャパシタ、直流電源PDC2、直流電源PDCの順に流れる。このようにして、トランジスタMLの寄生キャパシタが充電されるとともに、トランジスタMHの寄生キャパシタが放電され、ノードNMの電圧VNMが上昇する(図4(C))。そして、この期間P2において、電流Imは減少し始める(図4(D))。
【0067】
そして、タイミングt13において、ノードNMの電圧が電圧Voutよりも寄生ダイオードの順方向電圧分だけ高い電圧に到達すると、トランジスタMHの寄生ダイオードがオン状態になり、ノードNMの電圧VNMの上昇が停止する(図4(C))。これにより、タイミングt13~t14の期間P3において、図5Cに示したように、電流Iは、直流電源PDC、インダクタ13M、オフ状態であるトランジスタMHの寄生ダイオード、直流電源PDC2、直流電源PDCの順に流れる。電流Imは引き続き減少し続ける(図4(D))。
【0068】
そして、タイミングt14において、ゲート信号GMHが低レベルから高レベルに変化することにより(図4(A))、トランジスタMHはオフ状態からオン状態に変化する。これにより、タイミングt14~t15の期間P4において、図5Dに示したように、電流Iは、直流電源PDC、インダクタ13M、オン状態であるトランジスタMH、直流電源PDC2、直流電源PDCの順に流れる。電流Imは引き続き減少し続ける(図4(D))。このように、一つ前の期間P3において、トランジスタMHの寄生ダイオードをオン状態にし、この期間P4においてトランジスタMHをオン状態にすることにより、トランジスタMHをZVS動作させることができる。
【0069】
そして、タイミングt15において、電流Imが0(ゼロ)に到達し、減少し続ける(図4(D))。これにより、タイミングt15~t16の期間P5において、図5Eに示したように、電流Iは、直流電源PDC、直流電源PD2、オン状態であるトランジスタMH、インダクタ13M、直流電源PDCの順に流れる。
【0070】
そして、タイミングt16において、ゲート信号GMHが高レベルから低レベルに変化することにより(図4(A))、トランジスタMHはオン状態からオフ状態に変化する。これにより、タイミングt16~t17の期間P6において、図5Fに示したように、電流Iは、直流電源PDC、オフ状態であるトランジスタMLの寄生キャパシタ、インダクタ13M、直流電源PDCの順に流れるとともに、直流電源PDC、直流電源PDC2、オフ状態であるトランジスタMHの寄生キャパシタ、インダクタ13M、直流電源PDCの順に流れる。このようにして、トランジスタMHの寄生キャパシタが充電されるとともに、トランジスタMLの寄生キャパシタが放電され、ノードNMの電圧VNMが下降する(図4(C))。そして、この期間P6において、電流Imは増加し始める(図4(D))。
【0071】
そして、タイミングt17において、ノードNMの電圧が0Vよりも寄生ダイオードの順方向電圧分だけ低い電圧に到達すると、トランジスタMLの寄生ダイオードがオン状態になり、ノードNMの電圧VNMの下降が停止する(図4(C))。これにより、タイミングt17~t18の期間P7において、図5Gに示したように、電流Iは、直流電源PDC、オフ状態であるトランジスタMLの寄生ダイオード、インダクタ13M、直流電源PDCの順に流れる。電流Imは引き続き増加し続ける(図4(D))。
【0072】
そして、タイミングt18において、ゲート信号GMLが低レベルから高レベルに変化することにより(図4(B))、トランジスタMLはオフ状態からオン状態に変化する。これにより、タイミングt18~t19の期間P8において、図5Hに示したように、電流Iは、直流電源PDC、オン状態であるトランジスタML、インダクタ13M、直流電源PDCの順に流れる。電流Imは引き続き増加し続ける(図4(D))。このように、一つ前の期間P7において、トランジスタMLの寄生ダイオードをオン状態にし、この期間P8においてトランジスタMLをオン状態にすることにより、トランジスタMLをZVS動作させることができる。
【0073】
そして、タイミングt19において、電流Imが0(ゼロ)に到達し、増加し続ける(図4(D))。これにより、期間P1(図5A)と同様に、タイミングt15~t16の期間P5において、電流Iは、直流電源PDC、インダクタ13M、オン状態であるトランジスタML、直流電源PDCの順に流れる。
【0074】
マスタレグ14Mは、このようなタイミングt11~t19の動作を繰り返す。以上、マスタレグ14Mの動作を例に説明したが、スレーブレグ14Sの動作についても同様である。
【0075】
このように、電力変換装置1では、トランジスタをオフ状態からオン状態に変化させる際、トランジスタの寄生ダイオードがオン状態である期間においてトランジスタをオン状態に変化させるようにしたので、ZVS動作を実現できるので、効率を高めることができる。
【0076】
また、電力変換装置1では、トランジスタの寄生ダイオードのリカバリが生じないようにした。すなわち、仮に、期間P4のように、電流Imが正である期間において、トランジスタMHをオフ状態にするとともにトランジスタMLをオン状態にすると、トランジスタMHの寄生ダイオードに過渡的にリカバリ電流が流れ、損失が生じてしまう。電力変換装置1では、期間P5以降において、電流Imが負になってから、トランジスタMHをオフ状態にするとともにトランジスタMLをオン状態にしたので、トランジスタMHの寄生ダイオードにこのリカバリ電流が生じない。よって、電力変換装置1では、損失を抑えることができる。
【0077】
次に、制御部20の動作について詳細に説明する。
【0078】
図6は、サイクル時間Tm,Tsおよびタイミング差ΔTの検出動作の一例を表すものであり、(A)は電流Imの波形を示し、(B)は電流Isの波形を示し、(C)は信号CPout1の波形を示し、(D)は信号CPout3の波形を示す。
【0079】
電流Imが減少して電流しきい値Ibtm_m*に到達すると、電流Imは減少から増加に転じるとともに信号CPout1にパルスが生じる(図6(A),(C))。同様に、電流Isが減少して電流しきい値Ibtm_s*に到達すると、電流Isは減少から増加に転じるとともに信号CPout3にパルスが生じる(図6(B),(D))。時間検出部26は、これらの信号CPout1,CPout3に基づいて、サイクル時間Tm,Tsおよびタイミング差ΔTを検出する。この図6では、“k-1”番目の動作サイクルにおけるサイクル時間Tm[k-1],Ts[k-1]およびタイミング差ΔT[k-1]、“k”番目の動作サイクルにおけるサイクル時間Tm[k],Ts[k]およびタイミング差ΔT[k]、“k+1”番目の動作サイクルにおけるサイクル時間Tm[k+1],Ts[k+1]およびタイミング差ΔT[k+1]を図示している。そして、時間検出部26は、サイクル時間Tm,Tsおよびタイミング差ΔTについての情報をしきい値設定部30に供給する。
【0080】
図7は、4つの電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*,Ipk_s*,Ibtm_s*の設定動作の一例を表すものであり、(A)は電流Imの波形を示し、(B)は電流Isの波形を示す。
【0081】
しきい値設定部30は、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号、時間検出部26から供給されたサイクル時間Tm,Tsおよびタイミング差ΔTについての情報に基づいて、4つの電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*,Ipk_s*,Ibtm_s*を設定する。この図6では、“k-2”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_m*[k-2],Ibtm_m*[k-2],Ipk_s*[k-2],Ibtm_s*[k-2]、“k-1”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_m*[k-1],Ibtm_m*[k-1],Ipk_s*[k-1],Ibtm_s*[k-1]、“k”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_m*[k],Ibtm_m*[k],Ipk_s*[k],Ibtm_s*[k]、“k+1”番目の動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1],Ipk_s*[k+1],Ibtm_s*[k+1]を図示している。
【0082】
しきい値設定部30は、例えば、マスタレグ14Mの“k-1”番目の動作サイクルにおいて、電圧Vin,Voutに基づいて、マスタレグ14Mの次の“k”番目の動作サイクルで使用すべき電流しきい値Ipk_m*[k],Ibtm_m*[k]を算出する。その際、しきい値設定部30は、電流しきい値Ibtm_m*[k]が、マスタレグ14Mにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、しきい値Ibtm_m*[k]を算出する。そして、しきい値設定部30は、図7(A)に示したように、その“k”番目の動作サイクルが開始したときに、算出した電流しきい値Ipk_m*[k],Ibtm_m*[k]に応じた信号をコンパレータ22,23に供給する。
【0083】
また、しきい値設定部30は、例えば、スレーブレグ14Sの“k-1”番目の動作サイクルにおいて、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm[k-2],Ts[k-2]、および時間ΔT[k-2]に基づいて、スレーブレグ14Sの次の“k”番目の動作サイクルで使用すべき電流しきい値Ipk_s*[k],Ibtm_s*[k]を算出する。その際、しきい値設定部30は、電流しきい値Ibtm_s*[k]が、スレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_s*[k]を算出する。そして、しきい値設定部30は、図7(B)に示したように、その“k”番目の動作サイクルが開始したときに、算出した電流しきい値Ipk_s*[k],Ibtm_s*[k]に応じた信号をコンパレータ24,25に供給する。
【0084】
マスタレグ14Mの“k”番目の動作サイクルにおいて、電流Imは、電流しきい値Ibtm_m*[k-1]から増加し始めて電流しきい値Ipk_m*[k]に到達し、この電流しきい値Ipk_m*[k]から減少し始めて電流しきい値Ibtm_m[k]*に到達する。時間検出部26は、信号CPout1に基づいて、電流Imが、このように電流しきい値Ibtm_m*[k-1]から増加し始めてから電流しきい値Ibtm_m[k]*に到達するまでの時間をサイクル時間Tm[k]として検出する。
【0085】
同様に、スレーブレグ14Sの“k”番目の動作サイクルにおいて、電流Isは、電流しきい値Ibtm_s*[k-1]から増加し始めて電流しきい値Ipk_s*[k]に到達し、この電流しきい値Ipk_ms[k]から減少し始めて電流しきい値Ibtm_s[k]*に到達する。時間検出部26は、信号CPout3に基づいて、電流Isが、このように電流しきい値Ibtm_s*[k-1]から増加し始めてから電流しきい値Ibtm_s[k]*に到達するまでの時間をサイクル時間Ts[k]として検出する。また、時間検出部26は、信号CPout1,CPout3に基づいて、マスタレグ14Mの“k”番目の動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14Sの“k”番目の動作サイクルの終了タイミングとの間のタイミング差を、タイミング差ΔT[k]として検出する。
【0086】
次に、しきい値設定部30は、例えば、マスタレグ14Mの“k”番目の動作サイクルにおいて、電圧Vin,Voutに基づいて、マスタレグ14Mの次の“k+1”番目の動作サイクルで使用すべき電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1]を算出する。その際、しきい値設定部30は、電流しきい値Ibtm_m*[k+1]が、スレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_m*[k+1]を算出する。そして、しきい値設定部30は、図7(A)に示したように、その“k+1”番目の動作サイクルが開始したときに、算出した電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1]に応じた信号をコンパレータ22,23に供給する。
【0087】
また、しきい値設定部30は、例えば、スレーブレグ14Sの“k”番目の動作サイクルにおいて、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm[k-1],Ts[k-1]、および時間ΔT[k-1]に基づいて、スレーブレグ14Sの次の“k+1”番目の動作サイクルで使用すべき電流しきい値Ipk_s*[k+1],Ibtm_s*[k+1]を算出する。その際、しきい値設定部30は、電流しきい値Ibtm_s*[k+1]が、スレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_s*[k+1]を算出する。そして、しきい値設定部30は、図7(B)に示したように、その“k+1”番目の動作サイクルが開始したときに、算出した電流しきい値Ipk_s*[k+1],Ibtm_s*[k+1]に応じた信号をコンパレータ24,25に供給する。
【0088】
マスタレグ14Mの“k+1”番目の動作サイクルにおいて、電流Imは、電流しきい値Ibtm_m*[k]から増加し始めて電流しきい値Ipk_m*[k+1]に到達し、この電流しきい値Ipk_m*[k+1]から減少し始めて電流しきい値Ibtm_m[k+1]*に到達する。時間検出部26は、信号CPout1に基づいて、電流Imが、このように電流しきい値Ibtm_m*[k]から増加し始めてから電流しきい値Ibtm_m[k+1]*に到達するまでの時間をサイクル時間Tm[k+1]として検出する。
【0089】
同様に、スレーブレグ14Sの“k+1”番目の動作サイクルにおいて、電流Isは、電流しきい値Ibtm_s*[k]から増加し始めて電流しきい値Ipk_s*[k+1]に到達し、この電流しきい値Ipk_ms[k+1]から減少し始めて電流しきい値Ibtm_s[k+1]*に到達する。時間検出部26は、信号CPout3に基づいて、電流Isが、このように電流しきい値Ibtm_s*[k]から増加し始めてから電流しきい値Ibtm_s[k+1]*に到達するまでの時間をサイクル時間Ts[k+1]として検出する。また、時間検出部26は、信号CPout1,CPout3に基づいて、マスタレグ14Mの“k+1”番目の動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14Sの“k+1”番目の動作サイクルの終了タイミングとの間のタイミング差を、タイミング差ΔT[k+1]として検出する。
【0090】
制御部20は、このような動作を繰り返す。しきい値設定部30は、タイミング差ΔTが、これらの動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、各動作サイクルにおける、スレーブレグ14Sに係る電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を順次設定する。言い換えれば、しきい値設定部30は、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14Sの動作サイクルとが、互いに180度分の位相だけずれるように、各動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を順次設定する。これにより、電力変換装置1は、2相のインターリーブ動作を行うことができる。
【0091】
以上のように、電力変換装置1では、インダクタLmに流れる電流Imが電流しきい値Ibtm_m*において減少から増加に転じ電流しきい値Ipk_m*において増加から減少に転じるようにマスタレグ14MのトランジスタMH,MLの動作を制御するとともに、インダクタLsに流れる電流Isが電流しきい値Ibtm_s*において減少から増加に転じ電流しきい値Ipk_s*において増加から減少に転じるようにスレーブレグ14SのトランジスタSH,SLの動作を制御するようにした。そして、電力変換装置1では、マスタレグ14Mの動作サイクルのサイクル時間Tm、スレーブレグ14Sの動作サイクルのサイクル時間Ts、およびマスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングとスレーブレグ14Sの動作サイクルの終了タイミングとのタイミング差ΔTに基づいて、このタイミング差ΔTがこれらの動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、スレーブレグ14Sに係る電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を設定するようにした。これにより、電力変換装置1では、電流Im,Isの電流範囲を、例えば、ZVS動作を実現できる電流範囲や、寄生ダイオードのリカバリが生じないような電流範囲に設定することができる。その結果、電力変換装置1では、効率を高めることができる。
【0092】
また、電力変換装置1では、電流しきい値Ibtm_m*が、マスタレグ14Mにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_m*を設定するとともに、電流しきい値Ibtm_s*が、スレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_s*を設定するようにした。すなわち、電流しきい値Ipk_m*および電流しきい値Ibtm_m*がマスタレグ14Mにおけるしきい値Icmdcを挟むにように、電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_mを設定するとともに、電流しきい値Ipk_s*および電流しきい値Ibtm_s*がスレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcを挟むにように、電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_sを設定するようにした。これにより、電流Imは、マスタレグ14Mにおけるしきい値Icmdcを超過し、電流Isは、マスタレグ14Mにおけるしきい値Icmdcを超過するので、マスタレグ14Mおよびスレーブレグ14Sは、ともにZVS動作を行うことができるので、効率を高めることができる。
【0093】
また、電力変換装置1では、マスタレグ14Mの動作サイクルのサイクル時間Tm、スレーブレグ14Sの動作サイクルのサイクル時間Ts、およびマスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングとスレーブレグ14Sの動作サイクルの終了タイミングとのタイミング差ΔTに基づいて、このタイミング差ΔTがこれらの動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、スレーブレグ14Sに係る電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を設定するようにした。これにより、電流Imおよび電流Isの合計電流に含まれるリップル電流を低減することができるので、キャパシタ18に流れる電流を少なくすることができる。その結果、電力変換装置1では、キャパシタ18を小型化することができるので、電力変換装置1を小型化することができる。
【0094】
また、電力変換装置1では、推定インダクタンスLm^,Ls^を算出するようにしたので、インダクタ13M,13Sに特性ばらつきがある場合でも、その特性ばらつきに応じた電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を設定することができる。これにより、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14Sの動作サイクルとが、互いに180度分の位相だけずれるように動作させることができるので、効果的にインターリーブ動作を行うことができるとともに、キャパシタ18を小型化することができるので電力変換装置1を小型化することができる。
【0095】
また、電力変換装置1では、電流Imと電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*とを直接比較するとともに、電流Isと電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*とを直接比較するようにした。これにより、電流Imの電流範囲を電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*により直接的に制御するとともに、電流Isの電流範囲を電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*により直接的に制御することができるので、マスタレグ14Mおよびスレーブレグ14Sが、より確実にZVS動作を行うように制御することができるため、効率を高めることができる。
【0096】
また、電力変換装置1では、アナログ回路であるコンパレータ22~25を設け、コンパレータ22,23が電流Imと電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*とを比較するとともに、コンパレータ24,25が電流Isと電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*とを比較するようにした。これにより、例えば、電流Im,IsをAD変換して処理を行う場合に比べて、短い応答時間で制御を行うことができる。
【0097】
[効果]
以上のように本実施の形態では、インダクタLmに流れる電流が電流しきい値Ibtm_m*と電流しきい値Ipk_m*との間を往復するようにマスタレグのトランジスタの動作を制御するとともに、インダクタLsに流れる電流が電流しきい値Ibtm_s*と電流しきい値Ipk_s*との間を往復するようにスレーブレグのトランジスタの動作を制御するようにした。そして、マスタレグの動作サイクルのサイクル時間、スレーブレグの動作サイクルのサイクル時間、およびマスタレグの動作サイクルの終了タイミングとスレーブレグの動作サイクルの終了タイミングとのタイミング差に基づいて、このタイミング差がこれらの動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、スレーブレグに係る電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を設定するようにした。これにより、インダクタLm,Lsに流れる電流の範囲を、ZVS動作を実現できる電流範囲や、寄生ダイオードのリカバリが生じないような電流範囲に設定することができるので、効率を高めることができる。
【0098】
本実施の形態では、電流しきい値Ibtm_m*が、マスタレグにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_m*を設定するとともに、電流しきい値Ibtm_s*が、スレーブレグにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、電流しきい値Ibtm_s*を設定するようにしたので、ZVS動作を実現できるため、効率を高めることができる。
【0099】
本実施の形態では、マスタレグの動作サイクルのサイクル時間、スレーブレグの動作サイクルのサイクル時間、およびマスタレグの動作サイクルの終了タイミングとスレーブレグの動作サイクルの終了タイミングとのタイミング差に基づいて、このタイミング差がこれらの動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、スレーブレグに係る電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を設定するようにしたので、電力変換装置を小型化することができる。
【0100】
本実施の形態では、推定インダクタンスLm^,Ls^を算出するようにしたので、インダクタに特性ばらつきがある場合でも、その特性ばらつきに応じた電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*を設定することができるので、効果的にインターリーブ動作を行うことができるとともに、電力変換装置を小型化することができる。
【0101】
本実施の形態では、電流Imと電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*とを直接比較するとともに、電流Isと電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*とを直接比較するようにしたので、マスタレグおよびスレーブレグが、より確実にZVS動作を行うように制御することができるため、効率を高めることができる。
【0102】
[変形例1]
上記実施の形態では、タイミング差ΔTが動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、スレーブレグ14Sに係る2つの電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*の両方を設定するようにしたが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、2つの電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*のうちの一方を設定してもよい。以下に、2つの電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*のうちの電流しきい値Ipk_s*を設定する例について、詳細に説明する。
【0103】
図8は、本変形例に係るしきい値設定部30Aの一構成例を表すものである。しきい値設定部30Aは、しきい値算出部31MAと、しきい値算出部31SAとを有している。
【0104】
しきい値算出部31MAは、電圧Vin,Voutに基づいて、電流しきい値Ipk_m*[k+1],Ibtm_m*[k+1]を算出するように構成される。その際、しきい値算出部31MAは、電流しきい値Ibtm_m*[k+1]が、マスタレグ14Mおよびスレーブレグ14Sにおけるしきい値Icmdcより低い値になるように、しきい値Ibtm_m*[k+1]を算出するようになっている。しきい値設定部30Aでは、マスタレグ14Mにおける電流しきい値Ibtm_m*[k+1]を、スレーブレグ14Sにおける電流しきい値Ibtm_s*[k+1]としても用いるようになっている。
【0105】
しきい値算出部31SAは、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm,Ts、およびタイミング差ΔTに基づいて、スレーブレグ14Sに係る電流しきい値Ipk_s*[k+1]を算出するように構成される。しきい値算出部31SAは、インターリーブ制御部35Aとを有している。インターリーブ制御部35Aは、電圧Vin,Vout、推定サイクル時間Tm^[k],Ts^[k],Tm^[k+1]、および推定タイミング差ΔT^[k]に基づいて、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14Sの動作サイクルとが、互いに180度分の位相だけずれるように、電流しきい値Ipk_s*[k+1]を算出するように構成される。
【0106】
なお、この例では、タイミング差ΔTが動作サイクルの時間長の半分と等しくなるように、2つの電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*のうちの電流しきい値Ipk_s*を設定したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、2つの電流しきい値Ipk_s*,Ibtm_s*のうちの電流しきい値Ibtm_s*を設定してもよい。
【0107】
[変形例2]
上記実施の形態では、図1に示したように、電源ノードN1および電源ノードN3に直流電源PDCを接続したが、これに限定されるものではない。これに代えて、電源ノードN1および電源ノードN2に直流電源PDCを接続してもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0108】
図9は、本変形例に係る電力変換装置1Bの一構成例を表すものである。電力変換装置1Bは、入力端子T31,T32と、キャパシタ18Bと、電圧検出部11Bと、制御部20Bとを備えている。入力端子T31,T32は直流電源PDCに接続される。キャパシタ18Bの一端は、入力端子T31に導かれた電源ノードN2に接続され、他端は、入力端子T32に導かれた電源ノードN1に接続される。電圧検出部11Bは、入力端子T32での電圧を基準とした、入力端子T31での電圧を電圧Vinとして検出するように構成される。電圧検出部11Bの一端は電源ノードN2に接続され、他端は電源ノードN1に接続される。制御部20Bは、上記実施の形態に係る制御部20と同様に、電圧検出部11Bから供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12Sから供給された電流Isに応じた信号、および電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、4個のゲート信号GMH,GML,GSH,GSLを生成することにより、トランジスタMH,ML,SH,SLの動作を制御するように構成される。
【0109】
ここで、トランジスタMLは、本開示における「第1のスイッチ」の一具体例に対応し、トランジスタMHは、本開示における「第2のスイッチ」の一具体例に対応する。トランジスタSLは、本開示における「第3のスイッチ」の一具体例に対応し、トランジスタSHは、本開示における「第4のスイッチ」の一具体例に対応する。電源ノードN1は、本開示における「第1の電源ノード」の一具体例に対応し、電源ノードN3は、本開示における「第2の電源ノード」の一具体例に対応し、電源ノードN2は、本開示における「第3の電源ノード」の一具体例に対応する。入力端子T31,T32は、本開示における「第1の接続端子部」の一具体例に対応する。
【0110】
[変形例3]
上記実施の形態では、図1に示したように、インダクタLm,Lsの後段にマスタレグ14Mおよびスレーブレグ14Sを配置したが、これに限定されるものではない。これに代えて、例えば、インダクタLm,Lsの前段にマスタレグ14Mおよびスレーブレグ14Sを配置してもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0111】
図10は、本変形例に係る電力変換装置1Cの一構成例を表すものである。この電力変換装置1Cは、直流電圧を降圧するDC/DC変換装置である。電力変換装置1Cは、入力端子T41,T42と、出力端子T51,T52とを備えている。入力端子T41,T42は直流電源PDCに接続され、出力端子T51,T52は負荷LDに接続される。電力変換装置1Cは、直流電源PDCから供給された直流電力を変換し、変換された直流電力を負荷LDに供給するように構成される。
【0112】
電力変換装置1Cは、キャパシタ18Cと、電圧検出部11Cと、トランジスタMH,ML,SH,SLと、インダクタ13M,13Sと、電流検出部12M,12Sと、キャパシタ15Cと、電圧検出部16Cと、制御部20Cとを備えている。
【0113】
キャパシタ18Cの一端は入力端子T41に導かれた電源ノードN2に接続され、他端は入力端子T42に導かれた電源ノードN3に接続される。
【0114】
電圧検出部11Cは、入力端子T42での電圧を基準とした、入力端子T41での電圧を電圧Vinとして検出するように構成される。電圧検出部11Cの一端は電源ノードN2に接続され、他端は電源ノードN3に接続される。
【0115】
トランジスタMHは、電源ノードN2とノードNMとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN2をノードNMに接続するように構成される。トランジスタMHのドレインは電源ノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GMHが供給され、ソースはノードNMに接続される。トランジスタMLは、電源ノードN3とノードNMとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN3をノードNMに接続するように構成される。トランジスタMLのドレインはノードNMに接続され、ゲートにはゲート信号GMLが供給され、ソースは電源ノードN3に接続される。トランジスタMHおよびトランジスタMLは、マスタレグ14Mを構成する。
【0116】
トランジスタSHは、電源ノードN2とノードNSとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN2をノードNSに接続するように構成される。トランジスタSHのドレインは電源ノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GSHが供給され、ソースはノードNSに接続される。トランジスタSLは、電源ノードN3とノードNSとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN3をノードNSに接続するように構成される。トランジスタSLのドレインはノードNSに接続され、ゲートにはゲート信号GSLが供給され、ソースは電源ノードN3に接続される。トランジスタSHおよびトランジスタSLは、スレーブレグ14Sを構成する。
【0117】
インダクタ13Mの一端はノードNMに接続され、他端は電流検出部12Mの一端に接続される。インダクタ13Sの一端はノードNSに接続され、他端は電流検出部12Sの一端に接続される。
【0118】
電流検出部12Mは、インダクタ13Mに流れる電流を電流Imとして検出するように構成される。電流Imは、ノードNMから電源ノードN1に向かって流れる場合に正になるように検出される。電流検出部12Sは、インダクタ13Sに流れる電流を電流Isとして検出するように構成される。電流Isは、ノードNSから電源ノードN1に向かって流れる場合に正になるように検出される。
【0119】
キャパシタ15Cの一端は電源ノードN1に接続され、他端は電源ノードN3に接続される。
【0120】
電圧検出部16Cは、出力端子T52での電圧を基準とした、出力端子T51での電圧を電圧Voutとして検出するように構成される。電圧検出部16Cの一端は出力端子T51に導かれた電源ノードN1に接続され、他端は出力端子T52に導かれた電源ノードN3に接続される。
【0121】
制御部20Cは、上記実施の形態に係る制御部20と同様に、電圧検出部11Cから供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12Sから供給された電流Isに応じた信号、および電圧検出部16Cから供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、4個のゲート信号GMH,GML,GSH,GSLを生成することにより、トランジスタMH,ML,SH,SLの動作を制御するように構成される。
【0122】
ここで、入力端子T41,T42は、本開示における「第1の接続端子部」の一具体例に対応する。出力端子T51,T52は、本開示における「第2の接続端子部」の一具体例に対応する。電圧Voutは、本開示における「第1の電圧」の一具体例に対応する。電圧Vinは、本開示における「第2の電圧」の一具体例に対応する。
【0123】
[変形例4]
上記実施の形態では、図1に示したように、マスタレグ14Mおよび1つのスレーブレグ14Sを設けたが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、複数のスレーブレグ14Sを設けてもよい。以下に、2つのスレーブレグ14Sを設ける例について詳細に説明する。
【0124】
図11は、本変形例に係る電力変換装置1Dの一構成例を表すものである。電力変換装置1Dは、キャパシタ18と、電圧検出部11と、電流検出部12M,12SA,12SBと、インダクタ13M,13SA,13SBと、トランジスタMH,ML,SHA,SLA,SHB,SLBと、キャパシタ15と、電圧検出部16と、制御部20Dとを備えている。
【0125】
電流検出部12SAは、インダクタ13SAに流れる電流を電流IsAとして検出するように構成される。電流IsAは、電源ノードN1からトランジスタSHAのソースおよびトランジスタSLAのドレインに導かれたノードNSAに向かって流れる場合に正になるように検出される。電流検出部12SBは、インダクタ13SBに流れる電流を電流IsBとして検出するように構成される。電流IsAは、電源ノードN1からトランジスタSHBのソースおよびトランジスタSLBのドレインに導かれたノードNSBに向かって流れる場合に正になるように検出される。
【0126】
インダクタ13SAは、インダクタンスLsAを有するチョークコイルであり、インダクタ13SBは、インダクタンスLsBを有するチョークコイルである。インダクタンスLm、インダクタンスLsA、およびインダクタンスLsBは、互いにほぼ同じ値を有する。インダクタ13SAの一端は電流検出部12SAの他端に接続され、他端はノードNSAに接続される。インダクタ13SBの一端は電流検出部12SBの他端に接続され、他端はノードNSBに接続される。
【0127】
トランジスタSHAは、電源ノードN2とノードNSAとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN2をノードNSAに接続するように構成される。トランジスタSHAのドレインは電源ノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GSHAが供給され、ソースはノードNSAに接続される。トランジスタSLAは、電源ノードN3とノードNSAとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN3をノードNSAに接続するように構成される。トランジスタSLAのドレインはノードNSAに接続され、ゲートにはゲート信号GSLAが供給され、ソースは電源ノードN3に接続される。トランジスタSHAおよびトランジスタSLAは、スレーブレグ14SAを構成する。
【0128】
トランジスタSHBは、電源ノードN2とノードNSBとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN2をノードNSBに接続するように構成される。トランジスタSHBのドレインは電源ノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GSHBが供給され、ソースはノードNSBに接続される。トランジスタSLBは、電源ノードN3とノードNSBとの間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN3をノードNSBに接続するように構成される。トランジスタSLBのドレインはノードNSBに接続され、ゲートにはゲート信号GSLBが供給され、ソースは電源ノードN3に接続される。トランジスタSHBおよびトランジスタSLBは、スレーブレグ14SBを構成する。
【0129】
制御部20Dは、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12SAから供給された電流IsAに応じた信号、電流検出部12SBから供給された電流IsBに応じた信号、および電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、6個のゲート信号GMH,GML,GSHA,GSLA,GSHB,GSLBを生成するように構成される。
【0130】
図12は、制御部20Dの一構成例を表すものである。制御部20Dは、しきい値設定部30Dと、コンパレータ22,23,24A,25A,24B,25Bと、時間検出部26Dと、ラッチ27M,27SA,27SBと、ゲート信号生成部28M,28SA,28SBとを有している。
【0131】
しきい値設定部30Dは、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号、時間検出部26Dから供給されたサイクル時間Tm,TsA,TsBおよびタイミング差ΔTA,ΔTBについての情報に基づいて、6つの電流しきい値Ipk_m*,Ibtm_m*,Ipk_sA*,Ibtm_sA*,Ipk_sB*,Ibtm_sB*を設定するように構成される。電流しきい値Ipk_sA*および電流しきい値Ibtm_sA*は、スレーブレグ14SAの動作に係るものであり、電流IsAの上限値および電流IsAの下限値にそれぞれ対応している。電流しきい値Ipk_sB*および電流しきい値Ibtm_sB*は、スレーブレグ14SBの動作に係るものであり、電流IsBの上限値および電流IsBの下限値にそれぞれ対応している。
【0132】
コンパレータ24Aは、電流しきい値Ibtm_sA*に応じた信号と電流IsAに応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ24Aは、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流しきい値Ibtm_sA*に応じた信号が供給され、負入力端子には電流IsAに応じた信号が供給される。そして、コンパレータ24Aは、比較結果に応じた信号CPout3を出力端子から出力するようになっている。
【0133】
コンパレータ25Aは、電流IsAに応じた信号と電流しきい値Ipk_sA*に応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ25Aは、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流IsAに応じた信号が供給され、負入力端子には電流しきい値Ipk_sA*に応じた信号が供給される。そして、コンパレータ25Aは、比較結果に応じた信号CPout4を出力端子から出力するようになっている。
【0134】
コンパレータ24Bは、電流しきい値Ibtm_sB*に応じた信号と電流IsBに応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ24Bは、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流しきい値Ibtm_sB*に応じた信号が供給され、負入力端子には電流IsBに応じた信号が供給される。そして、コンパレータ24Bは、比較結果に応じた信号CPout5を出力端子から出力するようになっている。
【0135】
コンパレータ25Bは、電流IsBに応じた信号と電流しきい値Ipk_sB*に応じた信号とを比較するように構成される。コンパレータ25Bは、例えばアナログ回路により構成され、正入力端子には電流IsBに応じた信号が供給され、負入力端子には電流しきい値Ipk_sB*に応じた信号が供給される。そして、コンパレータ25Bは、比較結果に応じた信号CPout6を出力端子から出力するようになっている。
【0136】
時間検出部26Dは、信号CPout1,CPout3,CPout5に基づいて、例えばタイマを用いて、サイクル時間Tm,TsA,TsBおよびタイミング差ΔTA,ΔTBを検出するように構成される。サイクル時間TsAは、スレーブレグ14SAにおける動作サイクルの時間長であり、サイクル時間TsBは、スレーブレグ14SBにおける動作サイクルの時間長である。また、タイミング差ΔTAは、マスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14SAの動作サイクルの終了タイミングとの間のタイミング差であり、タイミング差ΔTBは、マスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14SBの動作サイクルの終了タイミングとの間のタイミング差である。
【0137】
ラッチ27SAは、いわゆるSRラッチであり、セット入力端子Sには信号CPout3が入力され、リセット入力端子Rには信号CPout4が入力される。また、ラッチ27SAは、出力端子Qから信号GSLA2を出力するとともに、出力端子QBから信号GSHA2を出力するようになっている。
【0138】
ラッチ27SBは、いわゆるSRラッチであり、セット入力端子Sには信号CPout5が入力され、リセット入力端子Rには信号CPout6が入力される。また、ラッチ27SBは、出力端子Qから信号GSLB2を出力するとともに、出力端子QBから信号GSHB2を出力するようになっている。
【0139】
ゲート信号生成部28SAは、スレーブレグ14SAにおけるいわゆるデッドタイムを設定することにより、信号GSHA2に基づいてゲート信号GSHAを生成するとともに、信号GSLA2に基づいてゲート信号GSLAを生成するように構成される。
【0140】
ゲート信号生成部28SBは、スレーブレグ14SBにおけるいわゆるデッドタイムを設定することにより、信号GSHB2に基づいてゲート信号GSHBを生成するとともに、信号GSLB2に基づいてゲート信号GSLBを生成するように構成される。
【0141】
図13は、しきい値設定部30Dの一構成例を表すものである。しきい値設定部30Dは、マスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14SAの動作サイクルの終了タイミングとのタイミング差ΔTAが、これらの動作サイクルの時間長の“1/3”と等しくなるように、各動作サイクルにおける、スレーブレグ14SAに係る電流しきい値Ipk_sA*,Ibtm_sA*を順次設定する。言い換えれば、しきい値設定部30Dは、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14SAの動作サイクルとが、互いに120度分の位相だけずれるように、各動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_sA*,Ibtm_sA*を順次設定する。また、しきい値設定部30Dは、マスタレグ14Mの動作サイクルの終了タイミングと、スレーブレグ14SBの動作サイクルの終了タイミングとのタイミング差ΔTBが、これらの動作サイクルの時間長の“2/3”と等しくなるように、各動作サイクルにおける、スレーブレグ14SBに係る電流しきい値Ipk_sB*,Ibtm_sB*を順次設定する。言い換えれば、しきい値設定部30Dは、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14SBの動作サイクルとが、互いに240度分の位相だけずれるように、各動作サイクルにおける電流しきい値Ipk_sB*,Ibtm_sB*を順次設定する。これにより、電力変換装置1Dは、3相のインターリーブ動作を行うことができるようになっている。
【0142】
しきい値設定部30Dは、しきい値算出部31M,41SA,41SBを有している。
【0143】
しきい値算出部41SAは、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm,TsA、およびタイミング差ΔTAに基づいて、スレーブレグ14SAに係る電流しきい値Ipk_sA*[k+1],Ibtm_sA*[k+1]を算出するように構成される。このしきい値算出部41SAの構成は、上記実施の形態に係るしきい値算出部31S(図3)と同様である。しきい値算出部41SAのインターリーブ制御部35は、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14SAの動作サイクルとが、互いに120度分の位相だけずれるように、電流しきい値Ipk_sA*[k+1],Ibtm_sA*[k+1]を算出するように構成される。
【0144】
しきい値算出部41SBは、電圧Vin,Vout、サイクル時間Tm,TsB、およびタイミング差ΔTBに基づいて、スレーブレグ14SBに係る電流しきい値Ipk_sB*[k+1],Ibtm_sB*[k+1]を算出するように構成される。このしきい値算出部41SBの構成は、上記実施の形態に係るしきい値算出部31S(図3)と同様である。しきい値算出部41SBのインターリーブ制御部35は、マスタレグ14Mの動作サイクルと、スレーブレグ14SBの動作サイクルとが、互いに240度分の位相だけずれるように、電流しきい値Ipk_sB*[k+1],Ibtm_sB*[k+1]を算出するように構成される。
【0145】
[変形例5]
上記実施の形態では、本技術をDC/DC変換装置に適用したが、これに限定されるものではなく、これに代えて、例えば、AC/DC変換装置に適用してもよい。以下に、本変形例について詳細に説明する。
【0146】
図14は、本変形例に係る電力変換装置1Eの一構成例を表すものである。この電力変換装置1Eは、交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換装置である。電力変換装置1Eは、入力端子T61,T62を備えている。入力端子T61,T62は交流電源PACに接続される。電力変換装置1Eは、交流電源PACから供給された交流電力を直流電力に変換し、変換された直流電力を負荷LDに供給するように構成される。
【0147】
電力変換装置1Eは、整流部17Eと、キャパシタ18と、電圧検出部11と、電流検出部12M,12Sと、インダクタ13M,13Sと、トランジスタMH,ML,SH,SLと、キャパシタ15と、電圧検出部16と、制御部20Eとを備えている。
【0148】
整流部17Eは、交流電力を直流電力に変換するように構成される。整流部17Eは、4つのダイオードD1~D4を有している。ダイオードD1のアノードはダイオードD2のカソードおよび入力端子T61に接続され、カソードは電源ノードN1に接続される。ダイオードD2のアノードは電源ノードN3に接続され、カソードはダイオードD1のアノードおよび入力端子T61に接続される。ダイオードD3のアノードはダイオードD4のカソードおよび入力端子T62に接続され、カソードは電源ノードN1に接続される。ダイオードD4のアノードは電源ノードN3に接続され、カソードはダイオードD3のアノードおよび入力端子T62に接続される。
【0149】
制御部20Eは、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12Sから供給された電流Isに応じた信号、および電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、4個のゲート信号GMH,GML,GSH,GSLを生成するように構成される。
【0150】
図15は、本変形例に係る他の電力変換装置1Fの一構成例を表すものである。この電力変換装置1Fは、交流電力を直流電力に変換するAC/DC変換装置である。電力変換装置1Fは、入力端子T71,T72を備えている。入力端子T71,T72は交流電源PACに接続される。電力変換装置1Fは、交流電源PACから供給された、例えば60Hzの交流電力を直流電力に変換し、変換された直流電力を負荷LDに供給するように構成される。
【0151】
電力変換装置1Fは、キャパシタ19Fと、電圧検出部11Fと、電流検出部12M,12Sと、インダクタ13M,13Sと、トランジスタMH,ML,SH,SL,PH,PLと、キャパシタ15と、電圧検出部16と、制御部20Fとを備えている。
【0152】
キャパシタ19Fの一端は入力端子T71に導かれた電源ノードN1に接続され、他端は入力端子T72に導かれた電源ノードN4に接続される。
【0153】
電圧検出部11Fは、入力端子T72での電圧を基準とした、入力端子T71での電圧を電圧Vinとして検出するように構成される。電圧検出部11Fの一端は電源ノードN1に接続され、他端は電源ノードN4に接続される。
【0154】
トランジスタPHは、電源ノードN2と電源ノードN4との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN2を電源ノードN4に接続するように構成される。トランジスタPHのドレインは電源ノードN2に接続され、ゲートにはゲート信号GPHが供給され、ソースは電源ノードN4に接続される。トランジスタPLは、電源ノードN3と電源ノードN4との間の経路に設けられ、オン状態になることにより電源ノードN3を電源ノードN4に接続するように構成される。トランジスタPLのドレインは電源ノードN4に接続され、ゲートにはゲート信号GPLが供給され、ソースは電源ノードN3に接続される。トランジスタPHおよびトランジスタPLは、極性切替レグ14Pを構成する。
【0155】
制御部20Fは、電力変換装置1の動作を制御するように構成される。
【0156】
具体的には、制御部20Fは、電圧Vinに基づいて、入力された交流電力が正相である場合には、ゲート信号GPHを低レベルにするとともにゲート信号GPLを高レベルにすることにより、トランジスタPHをオフ状態にするとともにトランジスタPLをオン状態にする。これにより、電源ノードN4は、トランジスタPLを介して電源ノードN3に接続される。そして、制御部20Fは、上記実施の形態の場合と同様に、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12Sから供給された電流Isに応じた信号、および電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、4個のゲート信号GMH,GML,GSH,GSLを生成する。
【0157】
また、制御部20Fは、電圧Vinに基づいて、入力された交流電力が逆相である場合には、ゲート信号GPLを低レベルにするとともにゲート信号GPHを高レベルにすることにより、トランジスタPLをオフ状態にするとともにトランジスタPHをオン状態にする。これにより、電源ノードN4は、トランジスタPHを介して電源ノードN2に接続される。そして、制御部20Fは、上記実施の形態の場合と同様に、電圧検出部11から供給された電圧Vinに応じた信号、電流検出部12Mから供給された電流Imに応じた信号、電流検出部12Sから供給された電流Isに応じた信号、および電圧検出部16から供給された電圧Voutに応じた信号に基づいて、4個のゲート信号GMH,GML,GSH,GSLを生成する。
【0158】
[その他の変形例]
また、これらの変形例のうちの2以上を組み合わせてもよい。
【0159】
以上、実施の形態および変形例を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれらの実施の形態等には限定されず、種々の変形が可能である。
【0160】
例えば、上記実施の形態等では、2相や3相のインターリーブ動作の例について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば4相以上を用いてインターリーブ動作を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0161】
1,1B,1C,1D,1E,1F…電力変換装置、11,11B,11C,11F…電圧検出部、12M,12S,12SA,12SB…電流検出部、13M,13S,13SA,13SB…インダクタ、14M…マスタレグ、14P…極性切替レグ、14S,14SA,14SB…スレーブレグ、15,15C…キャパシタ、16,16C…電圧検出部、17E…整流部、18E…キャパシタ、19F…キャパシタ、20,20B,20C,20D,20E,20F…制御部、22~25,24A,24B,25A,25B…コンパレータ、26,26D…時間検出部、27M,27S,27SA,27SB…ラッチ、28M,28S,28SA,28SB…ゲート信号生成部、30,30A,30D…しきい値設定部、31M,31MA,31S,31SA,41SA,41SB…しきい値算出部、32…インダクタンス推定部、33…しきい値推定部、34…時間推定部、35,35A…インターリーブ制御部、CPout1~CPout6…信号、D1~D4…ダイオード、GMH,GML,GSH,GSHA,GSHB,GSL,GSLA,GSLB…ゲート信号、Ibtm_m*,Ibtm_s*,Ipk_m*,Ipk_mA*,Ipk_mB*,Ipk_s*,Ipk_sA*,Ipk_sB*…電流しきい値、Im,Is,IsA,IsB…電流、Lm,Ls…インダクタンス、MH,ML,PH,PL,SH,SHA,SHB,SL,SLA,SLB…トランジスタ、NM,NS,NSA,NSB…ノード、N1~N4…電源ノード、PAC…交流電源、PDC…直流電源、Td…デッドタイム、Tm,Ts,TsA,TsB…サイクル時間、T11,T12,T31,T32,T41,T42,T61,T62…入力端子、T21,T22,T51,T52…出力端子、Vin,Vout…電圧、ΔT,ΔTA,ΔTB…タイミング差。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15