(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】工場設備の管理システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2019204909
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻 智成
(72)【発明者】
【氏名】村山 左近
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-156232(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203335(WO,A1)
【文献】特開2019-191748(JP,A)
【文献】特開2018-077637(JP,A)
【文献】特開2009-017054(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142875(US,A1)
【文献】特表2020-522074(JP,A)
【文献】特表2021-515343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場設備に設置され、前記工場設備の状態を知らせる状態信号を発信する複数の検知装置と、
前記状態信号に基づいて、所定の動作を行うデバイスと、
複数の前記検知装置と前記デバイスとを管理する管理装置と、
を備え、
複数の前記検知装置と、前記デバイスと、前記管理装置と、は相互に無線通信可能な無線通信ネットワークを形成し、
前記管理装置は、前記無線通信ネットワークにおいて、前記状態信号を伝達する伝達経路を決定
し、
前記デバイスは、撮影装置であり、
前記撮影装置は、前記無線通信ネットワークを介さないで通信可能な第二通信部を備え、
前記第二通信部は、前記状態信号が発信された時刻又は前後の何れかの時刻を含む所定期間についての、前記撮影装置によって撮影された撮影データにより構成される撮影データファイルを、前記無線通信ネットワークを介さない通信網を用いてユーザー端末に送信する、
設備管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、前記無線通信ネットワークにおいて、前記状態信号を伝達する2以上の伝達経路を決定する請求項1に記載の設備管理システム。
【請求項3】
前記状態信号は、周波数の異なる2以上の信号、又は、時間差をおいて発信される2以上の信号として伝達される請求項1又は2に記載の設備管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記無線通信ネットワークにおいて、外部電源に接続される複数の前記検知装置又は前記デバイスを経由する伝達経路を優先的に決定する請求項1-3のいずれか1項に記載の設備管理システム。
【請求項5】
前記撮影装置は、継続して撮影された
前記撮影データを一時的に記憶する第一記憶部と、
前記状態信号が発信された時刻又は前後の何れかの時刻を含む
前記所定期間についての前記撮影データにより構成される
前記撮影データファイルを記憶する第二記憶部と、
を備え、
前記第一記憶部は、新しい前記撮影データにより古い前記撮影データの書き換えを行う請求項
1-4のいずれか1項に記載の設備管理システム。
【請求項6】
前記撮影装置は
、撮影したデータを外部メモリに出力する出力部を備える請求項
1-5のいずれか1項に記載の設備管理システム。
【請求項7】
前記工場設備は、工具により被加工物を加工する加工装置であり、
前記状態信号は、前記加工装置、前記工具、前記被加工物のいずれかの異常を知らせる請求項1-
6のいずれか1項に記載の設備管理システム。
【請求項8】
前記工場設備は、稼働状況に応じて発光表示する信号灯を備え、
前記検知装置は、前記信号灯の光を検知する光検知装置である請求項1-
7のいずれか1項に記載の設備管理システム。
【請求項9】
前記管理装置は、前記状態信号を受信した際に、前記デバイスに所定の動作を開始させるトリガー信号を発信する請求項1-
8のいずれか1項に記載の設備管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場設備の管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
生産ライン等における工場設備の稼働状況は、工場設備から管理装置へ発信できるようにすることで、作業者や管理者が容易に把握でき、結果として生産効率の向上に繋げることができる。しかし、既存の工場設備の稼働状況を管理装置へ発信させるには、既存の制御機器の設定変更や、新規の制御機器の追加が必要となる。既存の制御機器の設定変更としては、既存の工場設備の制御コントローラ(PLC等)のソフトウエア(ラダー回路等)の変更等である。新規の制御機器の追加としては、PLCへ入力信号を取り入れるためのリレー部品の追加等である。よって、コストや工数が増大する。
【0003】
特許文献1には、既存の工場設備に装備されている信号灯に設けられ、既存の工場設備の稼働状況を既存の工場設備から管理装置へ発信できる装置が記載されている。すなわち、この装置は、既存の工場設備の稼働状況に応じて発光表示する信号灯を検知し、検知した発光信号を管理装置に無線送信する。この装置によれば、既存の制御機器の変更や新規の制御機器の追加は不要となる。
【0004】
また、特許文献2には、工場設備の状況を撮影するカメラを設置し、遠隔地に有する遠隔操作端末機によってカメラを操作することが記載されている。これにより、遠隔地からでも工場設備の状況を把握することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-6291号公報
【文献】特開2007-79919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、工場設備において、稼働状況を把握し、工場設備に異常が生じた場合に、異常の原因を把握することは重要である。そこで、工場設備の状況を撮影することが求められる。近年、イベントデータレコーダと称される撮影装置が普及しており、ある事象の発生前後の撮影データファイルを作成することができる。当該撮影装置は、撮影データファイルの容量を少なくするために、特定の事象の発生をトリガーとして撮影データファイルの作成を行われる。
【0007】
そこで、撮影装置を工場設備に適用する場合、例えば、工場設備の異常を示す制御信号を取得し、当該制御信号の前後の状況における撮影データファイルを作成することが可能となる。これを実現するためには、工場設備の制御プログラム等を変更する必要があり、さらには工場設備と撮影装置との信号線の配策を行う必要がある。そのため、撮影装置等を含む管理システムの設置は、高コストを要し、多大な工数を要する。
【0008】
さらに、工場設備に異常が発生した場合に、当該工場設備の異常の原因を把握して対策を講じた後には、撮影装置等は不要となる。そのため、一旦撮影装置を設備に設置した後に、当該設備から撮影装置を取り外すと共に、制御プログラムの変更を再び行う場合がある。このような場合にも、再び、高コストを要し、多大な工数を要することになる。もちろん、撮影装置を工場設備に常設することも可能ではあるが、複数の工場設備が存在する場合には、対応する数のイベントデータレコーダを設置することになり、高コスト化を招来する。
【0009】
本発明は、工場設備の稼働状況を撮影することができる撮影装置を、容易に設置することができる設備管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の設備管理システムは、工場設備に設置され、前記工場設備の状態を知らせる状態信号を発信する複数の検知装置と、前記状態信号に基づいて、所定の動作を行うデバイスと、複数の前記検知装置と前記デバイスとを管理する管理装置と、を備える。複数の前記検知装置と、前記デバイスと、前記管理装置と、は相互に無線通信可能な無線通信ネットワークを形成し、前記管理装置は、前記無線通信ネットワークにおいて、前記状態信号を伝達する伝達経路を決定する。前記デバイスは、撮影装置であり、前記撮影装置は、前記無線通信ネットワークを介さないで通信可能な第二通信部を備え、前記第二通信部は、前記状態信号が発信された時刻又は前後の何れかの時刻を含む所定期間についての、前記撮影装置によって撮影された撮影データにより構成される撮影データファイルを、前記無線通信ネットワークを介さない通信網を用いてユーザー端末に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】設備管理システムの準備動作を示すフローチャートである。
【
図6A】無線通信ネットワークの一の例を示す概略図である。
【
図6B】無線通信ネットワークの他の例を示す概略図である。
【
図7】設備管理システムの処理動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.設備管理システム1の構成)
設備管理システム1の構成について、
図1を参照して説明する。設備管理システム1は、デバイスである撮影装置2aと、複数の工場設備3a-3fとを備えており、複数の工場設備3a-3fの稼働状態及び撮影装置2aの動作を管理するためのシステムである。
図1に示すように、設備管理システム1は、少なくとも1つの撮影装置2aと、複数の工場設備3a-3fと、複数の信号灯4a-4fと、複数の検知装置5a-5fと、管理装置6とを備える。
【0013】
撮影装置2aと、複数の工場設備3a-3fと、管理装置6とは、相互に無線通信可能な無線通信ネットワークXを形成する。無線通信ネットワークXとは、撮影装置2aと、工場設備3a-3fと、管理装置6とを相互に無線通信により接続する通信網である。管理装置6は、無線通信ネットワークXを介して、撮影装置2a及び工場設備3a-3fと信号の送受信を行い、これらの機器を管理する。
【0014】
工場設備3a-3fは、工具により被加工物Wの加工する加工装置である。加工には、切削加工、塑性加工、焼入れ処理等が含まれる。工場設備3a-3fとしては、他に被加工物Wの組立等を行う生産装置、被加工物Wを搬送する搬送装置、被加工物Wの検査を行う検査装置等を含んでもよく、搬送装置等を含む複数の工場設備3a-3fからなる生産ラインとしてもよい。
【0015】
複数の信号灯4a-4fのそれぞれは、複数の工場設備3a-3fのそれぞれに1つずつ取り付けられている。信号灯4a-4fは、作業者および管理者が遠方から視認できるようにするために、工場設備3a-3fの天板の上に設けられている。信号灯4a-4fは、発光によって、取り付けられている工場設備3a-3fの稼働状態を表示する。つまり、信号灯4a-4fは、工場設備3a-3fの稼働状況に応じて発光表示する。信号灯4a-4fは、複数色の発光が可能に構成されている。
【0016】
例えば、信号灯4a-4fは、中空円筒状の半透明のプラスチックケースを3段積層し、各プラスチックケースの内部にLED等の光源を配置した構成となっている。各プラスチックケースは、例えば上層から順に赤色、黄色、緑色に点灯または点滅する。ただし、信号灯4a-4fは、3色に限られず、3色よりも少ない1、2色としても良いし、3色より多い4、5色等としてもよい。また、表示色は、赤色、黄色、緑色以外の種々の色としてもよい。
【0017】
信号灯4a-4fは、色や発光方法によって工場設備3a-3fの稼働状況を示す。例えば、赤色に連続点灯したときは異常であることを示し、黄色に連続点灯したときは運転準備状態であることを示し、緑色に連続点灯したときは正常な処理を実行中であることを示す。なお、運転準備状態の場合には、正常な処理の実行を開始する前において被加工物Wの搬入中である場合や、メンテナンス中である場合などが含まれる。また、信号灯4a-4fは、赤色に点滅したときには、工場設備3a-3fに被加工物Wが搬入されていないことを示す。特に、工場設備3a-3fが、工具により被加工物Wを加工する加工装置である場合、工具、被加工物W、又は、加工装置自体に異常が発生したことを、赤色の発光により示す。なお、点灯および点滅の対象は、設定により適宜変更可能である。例えば、工場設備3a-3fによっては、点滅の設定を設けないようにすることも可能である。
【0018】
複数の検知装置5a-5fのそれぞれは、複数の信号灯4a-4fのそれぞれに1つずつ取り付けられている。検知装置5a-5fは、取り付けられている信号灯4a-4fの発光信号の変化を検知し、検知した発光信号の変化情報を状態信号として無線送信する。検知装置5a-5fは、対応する工場設備3a-3fおよび信号灯4a-4fに対して独立して機能する。ただし、検知装置5a-5fは、工場設備3a-3fと電力線のみ接続されて、工場設備3a-3fを介して電力供給されるようにしてもよい。もちろん、検知装置5a-5fが、独立した電源を有し、工場設備3a-3fとは完全に独立して配置されるようにしてもよい。
【0019】
撮影装置2aは、撮影ユニット21を備え、動画の撮影を行う。
図1においては、撮影装置2aが工場設備3fの近傍に設置され、工場設備3fの周囲を撮影対象とする例を記載する。撮影装置2aの設置場所及び撮影対象は、特に限定されず、任意の箇所に設置可能である。例えば、工場設備3a-3fの内部や計器類、又は、作業場全体を撮影対象としてもよい。
【0020】
デバイスである撮影装置2aは、検知装置5a-5fの状態信号に基づいて、所定の動作を行う。撮影装置2aは、状態信号の有無にかかわらず、継続して撮影を行い、撮影された撮影データを第一記憶部231に一時的に記憶する。そして、状態信号が発信された場合には、状態信号が発信された時刻又は前後の何れかの時刻を含む対象期間についての撮影データにより構成される撮影データファイルを作成し、第二記憶部232に記憶する。対象期間とは、例えば、状態信号が発信される前のみの所定期間、状態信号が発信された後のみの所定期間、状態信号が発信される前後を含む所定期間の何れかである。本実施形態においては、対象期間は、状態信号が発信される前後を含む所定期間としている。状態信号が発信される前の撮影データは、第一記憶部231に一時的に記憶された撮影データから抽出することができる。状態信号が発信された後の撮影データは、撮影ユニット21から直接取得してもよいし、第一記憶部231に一時的に記憶された撮影データから抽出してもよい。
【0021】
管理装置6は、無線通信ネットワークXを介して複数の検知装置5a-5fから状態信号を無線受信する。管理装置6は、状態信号に基づいて、複数の工場設備3a-3fのそれぞれが、どのような稼働状態であるかを判定する。管理装置6は、状態信号に基づいて、デバイスである撮影装置2aの動作が必要であると判断した場合には、トリガー信号を発信し、撮影装置2aに所定の動作を開始させる。
【0022】
また、管理装置6は、受信した発光信号の変化情報に基づいて複数の工場設備3a-3fの稼働状況をグラフ、図形等を用いて視認しやすく表示画面63に表示する。管理装置6は、例えば、工場の管理室に設置されており、管理者や作業者によって閲覧可能となる。つまり、管理者や作業者は、管理装置6を確認することにより、複数の工場設備3a-3fの稼働状態を把握することが可能となる。また、管理装置6は、例えば、上記の他に、ウエアラブル端末を用いることもできる。この場合、管理者および作業者は、任意の位置において、複数の工場設備3a-3fの稼働状態を把握できる。
【0023】
(2.検知装置5a-5fの構成)
検知装置5a-5fの構成について、
図2Aおよび
図2Bを参照して説明する。検知装置5a-5fは、3つのセンサ51a,51b,51cと、3つの発電装置52a,52b,52cと、装置本体53と、フレキシブル配線基板54、アンテナ55とを備える。
【0024】
3つのセンサ51a,51b,51cのそれぞれは、信号灯4a-4fの各光源に対応した位置に配置される。3つのセンサ51a,51b,51cのそれぞれは、各光源からの光の明るさに関する物理量を検出(取得)する。明るさに関する物理量には、照度(単位面積(1m2)当たりに入射する光束(lx(ルクス)))、光束(単位時間当たりに通過する光量(lm(ルーメン)))、光度、輝度などが含まれる。3つのセンサ51a,51b,51cのそれぞれは、例えば、0V-2V(光量または光束で変化する)の光検知信号を出力するフォトダイオードである。
【0025】
3つの発電装置52a,52b,52cのそれぞれは、信号灯4a-4fの各光源に対応した位置であって、3つのセンサ51a、51b、51cのそれぞれの近傍に配置される。3つの発電装置52a,52b,52cのそれぞれは、信号灯4a-4fの各光源からの光で発電する。3つの発電装置52a,52b,52cのそれぞれは、例えば、結晶シリコン型等の太陽電池である。
【0026】
装置本体53は、信号灯4a-4fの上端に取り付けられており、3つのセンサ51a,51b,51cおよび3つの発電装置52a,52b,52cに電気的に接続されている。装置本体53は、電源を備えており、3つのセンサ51a,51b,51cのそれぞれによる信号灯4a-4fの各光源の発光信号の変化情報の取得の制御を行う。さらに、装置本体53は、3つの発電装置52a,52b,52cのそれぞれによる発電の制御、および、各種情報の無線送信制御を行う。
【0027】
フレキシブル配線基板54は、装置本体53の側方に接続されており、且つ、信号灯4a-4fに沿って下方に延びるように設けられている。つまり、フレキシブル配線基板54は、信号灯4a-4fの各光源に対向するように配置されている。フレキシブル配線基板54には、上述した3つのセンサ51a,51b,51cおよび3つの発電装置52a,52b,52cが取り付けられている。アンテナ55は、装置本体53に取り付けられている。
【0028】
(3.検知装置5a-5fの回路構成)
検知装置5a-5fの回路構成について
図3を参照して説明する。検知装置5a-5fは、上述したように、装置本体53を備える。装置本体53は、3つのセンサ51a,51b,51cと、3つの発電装置52a,52b,52cと、アンテナ55と電気的に接続されている。
【0029】
装置本体53は、
図3に示すように、コントローラ531、第一電源532、第二電源533、充電回路534、電源切替回路535、および、無線インターフェース536を備える。コントローラ531は、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成されている。コントローラ531は、3つのセンサ51a,51b,51cによる発光信号の変化情報の取得制御、状態信号である発光信号の変化情報の送信制御、充電回路534から第二電源533の電圧モニタ情報の取得、電源切替回路へのHi/Lo信号の出力制御等を実行する。
【0030】
第一電源532は、主電源であって、例えば、交換可能な電池等、例えば充電式の乾電池である。第二電源533は、副電源であって、主電源である第一電源532を補助する役割を有する。ただし、第二電源533を主電源とし、第一電源532を副電源としてもよい。第二電源533は、キャパシタにより構成されている。第二電源533は、3つの発電装置52a,52b,52cにより発電された電力を、充電回路534によって充電される。
【0031】
充電回路534は、3つの発電装置52a,52b,52cの発電制御を実行し、発電された電力を取得し、第二電源533に充電する。さらに、充電回路534は、第二電源533の電圧モニタ情報を、コントローラ531へ出力する。
【0032】
電源切替回路535は、コントローラ531によって、第二電源533の電力を出力する状態と、第二電源533の電力を出力しない状態とを切り替える。コントローラ531は、充電回路534から取得した電圧モニタ情報が所定値より低い場合にはHi信号を出力し、この場合、電源切替回路535は、第二電源533の電力を出力する状態にする。つまり、第二電源533の電圧が低い場合には、第一電源532が電力を供給する。一方、コントローラ531は、取得した電圧モニタ情報が所定値以上の場合にはLo信号を出力し、この場合、電源切替回路535は、第二電源533の電力を出力しない状態にする。このとき、第二電源533は、充電のみの状態となる。
【0033】
無線インターフェース536は、コントローラ531から送信処理の指令が出された場合に、3つのセンサ51a,51b,51cによって取得された状態信号を、アンテナ55を介して無線送信する。
【0034】
(4.撮影装置2aの構成)
撮影装置2aの構成について、
図1および
図4を参照して説明する。
図4には、設備管理システム1を構成する検知装置5a-5f、撮影装置2a、および、管理装置6を示す。ただし、
図4には、検知装置5a-5fの構成は、コントローラ531および無線インターフェース536のみ(
図3参照)を示す。
【0035】
撮影装置2aは、工場設備3fの近傍に配置され、工場設備3fの周辺を撮影対象としている。撮影装置2aは、撮影ユニット21、無線インターフェース22、及び、記憶部23を備える。無線インターフェース22は、複数の検知装置5a-5f及び管理装置6のそれぞれの無線インターフェース536、62と相互に無線通信可能な無線通信ネットワークXを形成する。無線インターフェース22は、検知装置5a-5fに設けられる無線インターフェース536と同様のものを用いることができる。
【0036】
撮影ユニット21は、イベントデータレコーダである。すなわち、撮影ユニット21は、設定された事象が発生した場合に、工場設備の稼働状況を撮影する。詳細には、撮影ユニット21は、状態信号が発信されていない間にも、撮影対象の撮影を継続する。継続して撮影された撮影データは、記憶部23の第一記憶部231に一時的に記憶される。第一記憶部231は、新しく撮影した撮影データにより、古い撮影データの書き換えを行い、常に一定量の撮影データが蓄積されるように、撮影データを一時保存する。
【0037】
そして、状態信号に基づいて、状態信号が発信された時刻又は前後の何れかの時刻を含む対象期間についての撮影データにより構成される撮影データファイルを作成し、第二記憶部232に記憶する。対象期間とは、例えば、状態信号が発信される前のみの所定期間、状態信号が発信された後のみの所定期間、状態信号が発信された前後を含む所定期間の何れかである。本実施形態においては、対象期間は、状態信号が発信された前後を含む所定期間としている。状態信号が発信される前の撮影データは、第一記憶部231に一時的に記憶された撮影データから抽出することができる。状態信号が発信された後の撮影データは、撮影ユニット21から直接取得してもよいし、第一記憶部231に一時的に記憶された撮影データから抽出してもよい。
【0038】
状態信号に基づくとは、検知装置5a-5fが発信した状態信号を受信した場合に限らず、状態信号を基に他の装置により増幅、変換された信号を受信した場合も含む。本実施形態においては、管理装置6により発信されたトリガー信号を受信した場合に、所定の対象期間の撮影データファイルの作成及び記憶を行う。
【0039】
撮影装置2aは、さらに、無線通信ネットワークXを介さないで通信可能な第二通信部24を備える。第二通信部24は、5G回線や無線LAN回線等の大容量通信網であることが好ましい。第二通信部24は、第二記憶部232に記憶した撮影データファイルをPCや携帯端末等のユーザー端末7に送信する。また、撮影装置2aは、さらに、出力部25を備え、撮影データファイルを外部メモリ251に出力する。
【0040】
撮影装置2aは、外部電源に接続され、電力を供給されることが好ましい。撮影装置2aは、動画の撮影や、第二通信部による通信等を行うため、検知装置5a-5fに比べて、電力の消費量が大きくなりやすい。撮影装置2aが外部電源に接続されることにより、後述のように、無線通信ネットワークXにおいて、内蔵するバッテリー又は発電装置から電力を得る他の機器の電力消費を抑制することができ。撮影装置2aは、外部電源の他に、予備バッテリーを内蔵してもよい。
【0041】
(5.管理装置6の構成)
管理装置6の構成について、
図1および
図4を参照して説明する。
図4には、設備管理システム1を構成する検知装置5a-5f、撮影装置2a、および、管理装置6を示す。ただし、
図4には、検知装置5a-5fの構成は、コントローラ531および無線インターフェース536のみ(
図3参照)を示す。
【0042】
管理装置6は、管理コントローラ61と、無線インターフェース62と、表示画面63とを備える。管理コントローラ61は、無線インターフェース62の通信の制御、無線通信ネットワークXの構築及び伝達経路の決定、状態信号の分析、トリガー信号の生成、表示画面63の制御等を行う。無線インターフェース62は、撮影装置2及び検知装置5a-5fのそれぞれの無線インターフェース22、536と相互に無線通信を行い、無線通信ネットワークXを形成する。
【0043】
無線インターフェース62は、無線通信ネットワークXを介して、検知装置5a-5fが発信した状態信号を無線受信する。状態信号は、管理コントローラ61に送られ、管理コントローラ61は、状態信号に基づいて、複数の信号灯4a-4fのそれぞれが、どの種類の色に関する情報であるか、さらには、連続点灯状態、点滅状態、連続消灯状態の何れであるかを判定する。管理コントローラ61は、状態信号に基づいて、撮影装置2aの動作が必要であると判断した場合には、トリガー信号を生成する。トリガー信号は、無線インターフェース62により、無線通信ネットワークXに送信され、撮影装置2aに届けられる。
【0044】
また、管理コントローラ61は、受信した状態信号に基づいて複数の工場設備3a-3fの稼働状況をグラフ、図形等を用いて視認しやすく表示画面63に表示する。管理装置6は、例えば、工場の管理室に設置されており、管理者や作業者によって閲覧可能となる。つまり、管理者や作業者は、管理装置6を確認することにより、複数の工場設備3a-3fの稼働状態を把握することが可能となる。また、管理装置6は、例えば、上記の他に、ウエアラブル端末を用いることもできる。この場合、管理者および作業者は、任意の位置において、複数の工場設備3a-3fの稼働状態を把握できる。
【0045】
(6.設備管理システム1の処理動作)
まず、設備管理システム1の処理動作について、特に準備段階である状態信号の伝達経路の決定について、
図5、
図6A、および、
図6Bを参照して説明する
【0046】
状態信号の伝達経路は、定期的に、又は、管理者や作業者の操作により決定される。管理装置6の管理コントローラ61は、撮影装置2a及び検知装置5a-5fに対して、試験信号を送信するよう命令を出す(PS1)。撮影装置2a及び検知装置5a-5fは、無線インターフェース22、536を介して、近傍に位置する他の機器と試験信号の通信を開始する。試験信号は、複数の撮影装置2a及び検知装置5a-5fを経由して、又は、直接管理装置6に送信される(PS2)。管理装置6の管理コントローラ61は、受信した試験信号の通信強度から、各機器に対して適切な伝達経路を決定する(PS3)。
【0047】
図6Aに撮影装置2a及び検知装置5a-5fにより形成される無線通信ネットワークXにおける、伝達経路の一例を示す。図中太線で示す経路が適切な伝達経路である。管理装置6に対して比較的近い位置に設置される検知装置5a、5bは、他の機器を経由せずに直接に管理装置6と通信を行う。検知装置5c、5dは、検知装置5aを経由して管理装置6と通信を行い、検知装置5e、5fは、検知装置5bを経由して管理装置6と通信を行う。管理装置6に対して遠い位置に設置される撮影装置2aは、検知装置5fを経由し、さらに、検知装置5bを経由して管理装置6と通信を行う。伝達経路の決定は、単に機器間の距離によって決定されるものではない。例えば、検知装置5aと検知装置5cの間に障害物があると、通信しにくい、又は、通信できない状態となる。この場合、検知装置5cは、検知装置5d、5aの順で経由して、障害物を迂回するように管理装置6と通信を行うことができる。
【0048】
管理装置6は、2以上の複数の伝達経路を決定することが好ましい。複数の伝達経路の内、最も通信強度が大きい経路を主伝達経路として使用し、その他の経路を副伝達経路として使用することができる。副伝達経路は、例えば、主伝達経路上のいずれかの機器に不具合が発生した場合や、伝達経路を一度決定した後に、主伝達経路上に予期せぬ障害物が設置された場合等に通信手段を確保することができる。
図6Aに、副伝達経路の一例を破線で示す。例えば、検知装置5cは、検知装置5d、5bを経由して管理装置6と通信を行い、検知装置5fは、検知装置5e、5aを経由して管理装置6と通信を行う。撮影装置2aは、検知装置5fを経由せずに、検知装置5bのみを経由して管理装置6と通信を行う。さらに、検知装置5a、5b間も相互に経由する伝達経路を設定する。このような副伝達経路を決定しておくと、主伝達経路上のいずれかの箇所で通信の障害が発生した場合にも、すべての機器が管理装置6と通信可能となる。主伝達経路と副伝達経路は、経路上の一部が同一であっても構わない。
【0049】
管理装置6は、無線通信ネットワークXにおいて外部電源に接続される撮影装置又は検知装置を経由する伝達経路を優先する。
図6Bに検知装置5a、5bの中間に、外部電源に接続される撮影装置2bを備える場合の伝達経路の一例を示す。検知装置5a、5b、5c、5eは、撮影装置2bを経由して管理装置6と通信を行う。検知装置5cは、検知装置5a、撮影装置2bを経由して管理装置6と通信を行う。検知装置5fは、検知装置5b、撮影装置2bを経由して管理装置6と通信を行う。撮影装置2aは、検知装置5f、5b、撮影装置2bを経由して管理装置6と通信を行う。外部電源に接続される機器は、内蔵するバッテリー又は発電装置により電力を得る機器に比べて、電力を豊富に使用することが可能であり、伝達経路の安定化、長期稼働に有利である。伝達経路を決定するにあたり、外部電力に接続される機器の通信強度を大きくすると、当該機器を経由する経路の通信強度が大きくなり、優先的に選択される。また、管理装置6のプログラムにおいて、外部電力に接続される機器をあらかじめ指定し、当該機器を経由する経路を優先してもよい。
【0050】
決定された伝達経路は、管理装置6の管理コントローラ61により管理され、後述する状態信号の送受信、及び、トリガー信号の送受信の際に、信号の伝達先を指定する。
【0051】
次に、設備管理システム1の処理動作について、特に検知装置5a-5f、撮影装置2aおよび管理装置6の処理動作について、
図7を参照して説明する。
【0052】
検知装置5a-5fが、信号灯4a-4fの発光信号の変化を検知する(S1)。このときの発光信号の変化とは、赤色が連続点灯した場合のみならず、信号灯4a-4fの発光信号の変化全てを含む。続いて、検知装置5a-5fは、無線インターフェース536を介して、状態信号である信号灯4a-4fの発光信号の変化情報を無線送信する(S2)。
【0053】
そうすると、管理装置6の管理コントローラ61が、無線インターフェース62を介して、検知装置5a-5fから状態信号を無線受信する(S3)。管理装置6の管理コントローラ61が、無線受信した状態信号に基づいて、工場設備3a-3fの状態を判定し、条件を満たす場合に、撮影装置2aに撮影データファイルを作成し、記憶させるトリガー信号を生成する(S4)。トリガー信号は、無線インターフェース62を介して無線送信される(S5)。
【0054】
状態信号の送信S2及びトリガー信号の送信S4は、2以上の異なる伝達経路により伝達されるか、周波数の異なる2以上の信号又は時間差をおいて発信される2以上の信号により伝達されることが好ましい。上記のように2以上の方法により、状態信号及びトリガー信号を伝達することにより、伝達漏れを防ぐことができる。
【0055】
撮影装置2aの撮影ユニット21は、無線インターフェース22を介して、トリガー信号を無線受信する(S6)。ところで、撮影装置2aの撮影ユニット21は、トリガー信号を受信するまでの期間も撮影対象の撮影を継続している。継続して撮影された撮影データは、記憶部23の第一記憶部231に一時的に記憶される。第一記憶部231は、新しく撮影した撮影データにより、古い撮影データの書き換えを行い、常に一定量の撮影データが蓄積されるように、撮影データを一時保存する。そして、撮影ユニット21がトリガー信号を無線受信すると、第一記憶部231に一時的に記憶された撮影データから、状態信号が発信された時刻又は前後の何れかの時刻を含む対象期間についての撮影データを抽出し、撮影データファイルを作成する(S7)。作成された撮影データファイルは、第二記憶部232に記憶される。
【0056】
第二記憶部232に記憶した撮影データファイルは、第二通信部24により、無線通信ネットワークXを介さない通信網を用いてユーザー端末に送信される(S8)。撮影データファイルは、撮影装置2aにより取得された画像データを含むため、無線通信ネットワークXにより伝達される信号データよりもデータ容量が大きくなる。画像データ画像データの伝達を無線通信ネットワークXと切り離すことにより、無線通信ネットワークXの負荷を低減し、信号の伝達を安定して行うことができる。また、第二記憶部232に記憶した撮影データファイルは、出力部25から外部メモリ251に出力することができる(S9)。作業者や管理者は、USBメモリ等の外部メモリ251を用いて、撮影データファイルを持ち出すことが可能である。
【0057】
(7.効果)
本発明の設備管理システム1を構成する撮影装置2a、検知装置5a-5f、管理装置6は、無線通信ネットワークXを介して無線通信を行う。従って、各機器は有線接続される必要はない。つまり、撮影装置2a、検知装置5a-5f、管理装置6は、独立して任意の位置に配置することが可能となる。さらに、撮影装置2aは、工場設備3a-3fの制御信号を取得する必要がないため、工場設備3a-3fの制御プログラム等の変更が不要となる。このことからも、設備管理システム1の設置が容易となる。
【0058】
撮影装置2a及び検知装置5a-5fは、工場設備3a-3fに対して独立して配置されると共に、工場設備3a-3fの制御プログラムに対して独立して動作する。従って、撮影装置2a及び検知装置5a-5fは、工場設備3a-3fに対して後付けが容易となる。その結果、工場設備3a-3fの稼働状況を撮影することが可能な設備管理システム1の設置を、低コストにすることができる。さらに、例えば、工場設備3a-3fに工場設備3a-3fおよび撮影装置2aを一時的に設置することも容易となる。
【0059】
また、無線通信ネットワークXは、撮影装置2a、検知装置5a-5f、管理装置6が、相互に通信可能であり、それぞれの機器が、各種信号の中継点の役割を果たす。これにより、無線通信ネットワークXにおいて、様々な伝達経路を選択することが可能である。例えば、障害物等により、ある経路が無線通信しにくい、又は、無線通信できない状態となった場合に、障害物を迂回するように通信することが可能であり、無線通信を安定して行うことができる。
【0060】
さらに、本発明の設備管理システムは、状態信号及びトリガー信号を送信する際に、2以上の異なる伝達経路により伝達するか、周波数の異なる2以上の信号又は時間差をおいて発信される2以上の信号により伝達する。上記のように2以上の方法により、状態信号及びトリガー信号を伝達することにより、予期せぬ伝達漏れを防ぐことができる。
【0061】
また、撮影装置2aは、状態信号の発信前又は状態信号の発信後の少なくとも一方を対象期間として、撮影データファイルを作成している。特に、撮影装置2aの対象期間は、状態信号の発信前後を含むものとしている。このように、信号灯4aの状態信号の発信前後である一部期間のみを、撮影データファイルとして作成するため、撮影データファイルを必要な稼働状況のみを対象とすることができる。従って、無駄に長期間の撮影データを記録する必要がなくなる。
【0062】
(変形例)
上記の実施形態では、検知装置5a-5fは、工場設備3a-3fに設けられた信号灯4a-4fの光を検知する光検知装置の例を示した。本発明の検知装置は、上記の光検知装置に限定されない。例えば、検知装置を人感センサとし、立入禁止区域への人の進入を検知したり、振動又は音検知器とし、工場設備の異常振動又は異常音を検知する構成としてもよい。
【0063】
また、状態信号に基づいて所定の動作を行うデバイスとしては、動画を撮影する撮影装置2a-2bの例を示した。本発明のデバイスは、撮影装置に限定されない。例えば、音声発信器や光発信器として、別室で作業する作業者等に、工場設備の異常を知らせる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1:設備管理システム、 2a-2b:撮影装置、 21:撮影ユニット、 22:無線インターフェース、 23:記憶部、 231:第一記憶部、 232:第二記憶部、 24:第二通信部、 25:出力部、 251:外部メモリ、 3a-3f:工場設備、 4a-4f:信号灯、 5a-5f:検知装置、 531:コントローラ、 536:無線インターフェース、 6:管理装置、 61:管理コントローラ、 62:無線インターフェース、 63:表示画面、 7:ユーザー端末、 W:被加工物、 X:無線通信ネットワーク