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  • 特許-心電計測装置 図1
  • 特許-心電計測装置 図2
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  • 特許-心電計測装置 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】心電計測装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/332 20210101AFI20231017BHJP
   A61B 5/339 20210101ALI20231017BHJP
【FI】
A61B5/332
A61B5/339
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019207138
(22)【出願日】2019-11-15
(65)【公開番号】P2021078596
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 充
(72)【発明者】
【氏名】小高 心哉
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4350164(US,A)
【文献】特開平2-154740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電波形を計測可能なセンサと、LED表示部と、前記センサを制御することで前記心電波形の計測処理を実行するとともに、該計測処理中には、前記LED表示部を制御して点滅させる制御手段とを備える心電計測装置であって、
前記制御手段は、前記センサによる前記心電波形の計測中において、前記LED表示部を点滅させる際には、前記LED表示部の輝度が時間に対して所定以上の傾きを伴って変化するように制御
前記LED表示部の、時間に対して所定以上の傾きを伴った輝度の変化が、三角波の形状又は半円形状の波となる、心電計測装置。
【請求項2】
前記制御手段は、計測対象の心拍数と同期した周期で前記LED表示部を点滅させる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の心電計測装置。
【請求項3】
前記制御手段は、1分間に40乃至60回の周期で前記LED表示部を点滅させる、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の心電計測装置。
【請求項4】
心電波形を計測可能なセンサと、LED表示部と、前記センサを制御することで前記心電波形の計測処理を実行するとともに、該計測処理中には、前記LED表示部を制御して点滅させる制御手段とを備える心電計測装置であって、
前記制御手段は、前記センサによる前記心電波形の計測中において、前記LED表示部を点滅させる際には、前記LED表示部の輝度が時間に対して所定以上の傾きを伴って変化するように、かつ、前記LED表示部の点灯時間が消灯時間よりも長くなるように、前記LED表示部を点滅させる、
ことを特徴とする心電計測装置。
【請求項5】
前記心電計測装置は、携帯型の心電計測装置である
ことを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の心電計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し、特に、心電計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値、心電波形などの、個人の身体・健康に関する情報(以下、生体情報ともいう)を計測機器によって計測し、当該計測結果を情報端末で記録、分析することで、健康管理を行うことが普及しつつある。
【0003】
上記のような計測機器の一例として、日常生活において胸部の痛みや動悸などの異常発生時にすぐに心電波形を測定する携帯型の心電計測装置が提案されており、心疾患の早期発見や適切な治療への貢献が期待されている(例えば、特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-420号公報
【文献】特開2007-105316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には本体にセンサー部、制御部、入力部、表示部、タイマ部を備え、心電波形の計測から測定中の表示、解析結果の表示、結果の記憶等を同一本体で行う携帯型の心電計測装置が記載されている。一方、特許文献2には、このような携帯型の生体情報測定器の本体にLEDを備える表示部を設け、測定中の状態情報若しくは測定した生体情報をLEDの点灯・点滅によって示すことが記載されている。このような方法で情報を表示することにより、携帯型の装置の表示部に係る構成を小型化・簡略化することが可能になり、携帯型装置の利便性を高めることが可能になる。
【0006】
しかしながら、正確な心電計測には、計測時におけるユーザーの心理的な安定性が重要であるところ、心電計測装置にこのような方法を用いた場合、LEDの点灯・点滅動作が潜在的な不安を惹起するなどユーザーの心理に悪影響を与える虞があり、正確な心電計測に影響を及ぼす可能性があるという問題がある。
【0007】
上記のような従来の技術に鑑み、本発明は、ユーザーに与える不安感を抑止して精度よく心電の計測を行うことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る心電計測装置は、
心電波形を計測可能なセンサと、LED表示部と、前記センサを制御することで前記心電波形の計測処理を実行するとともに、該計測処理中には、前記LED表示部を制御して点滅させる制御手段とを備える心電計測装置であって、
前記制御手段は、前記センサによる前記心電波形の計測中において、前記LED表示部を点滅させる際には、前記LED表示部の輝度が時間に対して所定以上の傾きを伴って変化するように制御する、
ことを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、心電の計測中にLEDの点滅によりユーザーに通知を行う場合に、穏やかな輝度の変化でLEDを点滅させることができるため、ユーザーに与える心
理的な負荷を軽減し、心電計測に与える悪影響を抑止することができる。
【0010】
また、前記LED表示部の、時間に対して所定以上の傾きを伴った輝度の変化は、三角波の形状、或いは半円形状の波となってもよい。
【0011】
また、前記制御手段は、計測対象の心拍数と同期した周期で前記LED表示部への電圧の印加を行うようにしてもよい。このような構成であれば、計測を行うユーザーは自身の心拍と同期したリズムで点滅するLEDにより、より心理的に安定した状態となることが期待できる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記LED表示部への電圧の印加を1分間に40乃至60回の周期で行うようにしてもよい。また、前記制御手段は、前記LED表示部の点灯時間が消灯時間よりも長くなるように、前記LED表示部への電圧の印加を行うようにしてもよい。
【0013】
また、前記心電計測装置は、携帯型の心電計測装置であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ユーザーに与える不安感を抑止して精度よく心電の計測を行うことができる心電計測装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す六面図である。図1Aは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す正面図である。図1Bは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す背面図である。図1Cは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す左側面図である。図1Dは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す右側面図である。図1Eは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す平面図である。図1Fは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す底面図である。
図2図2は、実施形態に係る携帯型心電計測装置の機能構成を説明するブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る携帯型心電計測装置における心電波形計測処理の流れを示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係る携帯型心電計測装置において計測状態を示すLEDの点灯パターンの波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
(心電計測装置)
図1は、本実施形態における携帯型心電計10の構成を示す図である。図1Aは本体の正面を示す正面図であり、同様に図1Bは背面図、図1C左側面図、図1Dは右側面図、図1Eは平面図、図1Fは底面図、となっている。
【0018】
携帯型心電計10の底面には、心電計測時に身体の左側に接触させる左側電極12aが設けられており、反対側面の上面側には、同様に右手人差し指の腹を接触させる第一右側電極12bと、右手人指し指の中節を接触させる第二右側電極12cが設けられている。
なお、第一右側電極12bはGND電極としての機能を果たす電極である。
【0019】
心電計測時には、右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、第一右側電極12b、第二右側電極12cに正しく接触するように携帯型心電計10の上面部に配置する。そのうえで、左側電極を所望の計測法に対応する一の皮膚に接触させる。例えば、いわゆるI誘導で計測を行う場合には、左側電極を左手の掌に当てて接触させ、いわゆるV4誘導で計測を行う場合には、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の肌に接触させる。
【0020】
また、携帯型心電計10の左側面には各種の操作部、及びインジケータが配置されている。具体的には、電源スイッチ16、電源LED16a、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信ボタン17、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19、等を備えている。
【0021】
また、携帯型心電計10の正面には、計測状態通知LED13、解析結果通知LED14、が設けられ、携帯型心電計10の背面には、バッテリーの収容口、電池カバー15が配置されている。
【0022】
また、図2には携帯型心電計10の機能構成を示すブロック図が記載されている。図2に示すように、携帯型心電計10は制御部101、電極部12、アンプ部102、AD(Analog to Digital)変換部103、タイマ部104、記憶部105、表示部106、操作部107、電源部108、通信部109、解析部110の各機能部を備える構成となっている。
【0023】
制御部101は、携帯型心電計10の制御を司る手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成される。制御部101は、操作部107を介してユーザーの操作を受け付けると、所定のプログラムに従って心電計測、情報通信など各種の処理を実行するように携帯型心電計10の各構成要素を制御する。なお、所定のプログラムは後述の記憶部105に保存され、ここから読み出される。
【0024】
また、制御部101は、機能モジュールとして、心電波形の解析を行う解析部110を備えている。解析部110は計測された心電波形について、波形の乱れの有無などを解析し、少なくとも計測時の心電波形が正常か否かの結果をアウトプットする。
【0025】
電極部12は、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cからなり、心電波形の検出するセンサとして機能する。アンプ部102は、電極部12から出力された信号を増幅する機能を有している。AD変換部103は、アンプ102で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、制御部101へ伝送する機能を有している。
【0026】
タイマ部104はRTC(Real Time Clock)を参照して、時間を計測する機能を有している。後述するように、例えば、心電計測時に計測終了までの時間をカウントし、これをアウトプットする。
【0027】
記憶部105は、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置を含んで構成され、アプリケーションプログラム、計測心電波形、解析結果などの各種の情報を記憶する。また、RAMに加えて、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を備えていても良い。
【0028】
表示部106は、前述の電源LED16a、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19などを含んで構成され、LEDの点灯、点滅などによって装置の状態をユーザーに伝達する。また、操作部107は、電源スイッチ16、通信ボ
タン17等を含み、ユーザーからの入力操作を受け付け、制御部101に操作に応じた処理を実行させるための機能を有する。
【0029】
電源部108は、装置の稼働に必要な電力を供給するバッテリーを含んで構成される。バッテリーは、例えばリチウムイオンバッテリーなどの二次電池であっても良いし、一次電池としても良い。
【0030】
通信部109は、無線通信用のアンテナを含み、少なくともBLE通信により、情報処理端末などの他の機器と通信する機能を有する。また、有線による通信のための端子を備えていても良い。
【0031】
(携帯型心電計を用いた心電計測処理)
次に、心電計測を行う際の携帯型心電計10の動作について、図1図2及び図3に基づいて説明する。図3は、携帯型心電計10を用いて心電計測を行う際の処理の手順を示すフローチャートである。
【0032】
ユーザーはまず、計測に先立ち、電源スイッチ16を操作し携帯型心電計10の電源をONにする。そうすると、電源LEDが点灯して電源がONであることを表示する。そして、右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、12b、12cに接触させ、計測を行う箇所の肌に、12aを接触させる。そうすると、制御部101は電極部12を介して接触状態を検出し(S1101)、正しく電極が接触された状態で所定時間が経過したか否かを判定する処理を行う(S1102)。ここで、制御部101は所定時間が経過していないと判断すれば所定時間が経過するまで同じ処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断すると、ステップS1103に進み、実際の心電計測を実行する。
【0033】
制御部101は、心電計測を行っている間は、随時計測値を記憶部105に保存するとともに、本体正面の計測状態通知LED13を所定のリズムで点滅させることにより、心電計測中であることを表示する(S1104)。ここで、計測状態通知LED13の点滅について図4に基づいて詳細に説明する。図4に示す各波形は、計測状態通知LED13への電圧の印加の態様を示している。
【0034】
一般的に、正確な心電計測には、計測時におけるユーザーの心理的な安定性が重要であるところ、例えば図4のDに示すような波形でLEDに電圧を印加して点滅させると、点灯と消灯とが急激に切り替わり、チカチカとした点滅動作となる。このような警告灯のような点滅の仕方であると、これを目にしたユーザーの不安感、緊張感を惹起する虞があり、そのような心理状態で計測を行うと、正確な心電計測ができない可能性がある。
【0035】
そのため、本実施形態に係る携帯型心電計10においては、制御部101は、図4のA、Bのように三角波の形状の波形、或いは図4のCのように半円状の波形として例示するように、計測状態通知LED13の輝度が時間に対して所定以上の傾きを伴って変化するように制御することで、LEDを穏やかに点滅させるようにしている。さらに、図4A図4B図4Cに示すように、制御部101は計測状態通知LED13を、点灯時間が消灯時間よりも長くなるように点滅させるよう制御を行う。これにより、心電計測中であることを通知するLEDの点滅を見ても、ユーザーは不安感を感じにくく、正確な心電計測に資することが可能になる。また、計測時のユーザーの心拍と同期した周期で点滅を行うようにしても良い。
【0036】
心電計測の処理の流れの説明に戻ると、制御部101はステップS1105で、心電計測の時間が所定の計測時間(例えば30秒)を経過したか否かを判定する処理を行う。ここで、まだ所定の時間を経過していないと判断した場合には、ステップS1103に戻って以降の処理を繰り返す。一方、所定の計測時間が経過したと判断した場合には、計測を終了するとともに、計測状態通知LED13の点滅を終了する処理を行う(ステップS1
106)。
【0037】
次に、制御部101の解析部110により、記憶部105に保存された計測データ(心電波形)の解析が行われ(S1107)、解析結果は、心電波形と共に長期記憶装置に保存される(S1108)。そして、制御部101は、解析結果通知LED14により、解析の結果を表示して(S1109)、一連の処理を終了する。なお、解析結果の表示は、例えば、心電波形に異常がみられる場合のみLEDを点灯するのであっても良いし、解析結果に応じた点灯・点滅方法によりLEDを点灯させるようにしても良い。
【0038】
以上のような構成の本実施形態に係る携帯型心電計10によれば、心電計測中であることを示すLEDが、穏やかな輝度の変化で点滅するため、ユーザーに与える不安感を抑止することができる。
【0039】
<その他>
上記の実施形態の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。
【0040】
例えば、LEDの点灯、点滅を用いた各種の通知は、LEDの表示色を変更することにより、通知内容を示すようにしてもよい。このような構成によれば、通知内容を多様化することも可能になる。
【0041】
また、上記の実施形態の携帯型心電計は、BLE通信機能を備える構成となっていたが、通信機能は必須の構成ではなく、通信機能を備えない心電計とすることも可能である。
【符号の説明】
【0042】
10・・・携帯型心電計
13・・・計測状態通知LED
14・・・解析結果通知LED
15・・・電池カバー
16・・・電源スイッチ
16a・・・電源LED
17・・・通信ボタン
17a・・・BLE通信LED
18・・・メモリー残表示LED
19・・・電池交換LED
図1
図2
図3
図4