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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/00 20060101AFI20231017BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B60C15/00 K
B60C5/14 Z
B60C15/00 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019213473
(22)【出願日】2019-11-26
(65)【公開番号】P2021084485
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】野中 謙次
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074834(JP,A)
【文献】特開2002-337516(JP,A)
【文献】特開2015-155263(JP,A)
【文献】特開平11-192821(JP,A)
【文献】特開2014-234073(JP,A)
【文献】特開2014-226977(JP,A)
【文献】特開2003-063217(JP,A)
【文献】特開平10-329515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14、15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
それぞれにビードコアが埋設されている一対のビード部と、前記一対のビード部間を延びる空気非透過性のインナーライナーとを含み、
前記インナーライナーのタイヤ半径方向の内端は、前記一対のビード部それぞれにおいて、前記ビードコアのタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向の内側に位置し、
前記一対のビード部のビードベース径は、前記空気入りタイヤが装着される正規リムのリム径の99.7%未満であり、
カーカスプライをさらに含み、
前記カーカスプライは、前記一対のビード部のそれぞれのビードコア間を延びる本体部と、前記それぞれのビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側へ折り返された折返し部とを含み、
前記ビード部のタイヤ軸方向の最大厚さをWとし、
前記ビードコアのタイヤ半径方向の中間位置高さでの前記カーカスプライの本体部のタイヤ軸方向の内面から前記折返し部のタイヤ軸方向の外面までのカーカス厚さをWaとしたときに、比W/Waが1.20以上である、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記インナーライナーは、前記一対のビード部の少なくとも一方において、前記ビードコアのタイヤ半径方向内側を通ってタイヤ軸方向外側に延びる第1延長部を備える、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記インナーライナーの前記第1延長部は、前記ビードコアのタイヤ軸方向の外端をタイヤ軸方向外側に越えて延びる、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記インナーライナーは、前記第1延長部からタイヤ半径方向外側に延びる第2延長部を備える、請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記インナーライナーの前記第2延長部のタイヤ半径方向の外端は、ビードベースラインよりもタイヤ半径方向の外側に位置する、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記中間位置高さにおいて、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側のビードゴム厚さをWbとしたときに、比W/Wbが4.50よりも大きい、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ビードコアのタイヤ軸方向の中間位置において、前記折返し部のタイヤ半径方向内側のビードゴム厚さdが2~5mmである、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記ビード部は、前記ビードコアのタイヤ軸方向の中間位置よりもタイヤ軸方向の外側かつ前記ビードコアのタイヤ半径方向の中間位置高さよりもタイヤ半径方向の内側で、ビード基準面から外側に突出する突部を有する、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記突部は、前記ビードコアのタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向の内側、かつ、前記ビードコアのタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の外側に設けられる、請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記空気入りタイヤは、自動二輪車用である、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コアを備える一対のビードと、一方のビードと他方のビードとの間に架け渡されたカーカスと、上記カーカスの内側に位置するインナーライナーとを備えた空気入りタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-74834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気入りタイヤでは、タイヤの空気圧を長期間保つこと(以下、単に「耐エアリーク性」という場合がある。)について、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、耐エアリーク性を向上することができる空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、それぞれにビードコアが埋設されている一対のビード部と、前記一対のビード部間を延びる空気非透過性のインナーライナーとを含み、前記インナーライナーのタイヤ半径方向の内端は、前記一対のビード部それぞれにおいて、前記ビードコアのタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向の内側に位置し、前記一対のビード部のビードベース径は、前記空気入りタイヤが装着される正規リムのリム径の99.7%未満である。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記インナーライナーが、前記一対のビード部の少なくとも一方において、前記ビードコアのタイヤ半径方向内側を通ってタイヤ軸方向外側に延びる第1延長部を備える、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記インナーライナーの前記第1延長部が、前記ビードコアのタイヤ軸方向の外端をタイヤ軸方向外側に越えて延びる、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記インナーライナーが、前記第1延長部からタイヤ半径方向外側に延びる第2延長部を備える、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記インナーライナーの前記第2延長部のタイヤ半径方向の外端が、ビードベースラインよりもタイヤ半径方向の外側に位置する、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、カーカスプライをさらに含み、前記カーカスプライは、前記一対のビード部のそれぞれのビードコア間を延びる本体部と、前記それぞれのビードコアの回りをタイヤ軸方向の内側から外側へ折り返された折返し部とを含み、前記ビード部のタイヤ軸方向の最大厚さをWとし、前記ビードコアのタイヤ半径方向の中間位置高さでの前記カーカスプライの本体部のタイヤ軸方向の内面から前記折返し部のタイヤ軸方向の外面までのカーカス厚さをWaとしたときに、比W/Waが1.20以上である、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記中間位置高さにおいて、前記折返し部のタイヤ軸方向の外側のビードゴム厚さをWbとしたときに、比W/Wbが4.50よりも大きい、のが望ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードコアのタイヤ軸方向の中間位置において、前記折返し部のタイヤ半径方向内側のビードゴム厚さdが2~5mmである、のが望ましい。
【0014】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビード部が、前記ビードコアのタイヤ軸方向の中間位置よりもタイヤ軸方向の外側かつ前記ビードコアのタイヤ半径方向の中間位置高さよりもタイヤ半径方向の内側で、ビード基準面から外側に突出する突部を有する、のが望ましい。
【0015】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記突部が、前記ビードコアのタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向の内側、かつ、前記ビードコアのタイヤ軸方向の外端よりもタイヤ軸方向の外側に設けられる、のが望ましい。
【0016】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記空気入りタイヤが、自動二輪車用である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、インナーライナーのタイヤ半径方向の内端が、ビードコアのタイヤ半径方向の内端よりもタイヤ半径方向の内側に位置するので、ビードコアの内側を通る空気の漏れを抑制できる。また、ビード部のビードベース径は、正規リムのリム径の99.7%未満であるので、前記ビード部と前記正規リムとの間の締付け力が高められ、これらの間からの空気の漏れを抑制できる。したがって、本発明の空気入りタイヤは、優れた耐エアリーク性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の空気入りタイヤのタイヤ子午線断面図である。
図2図1の左側のビード部の拡大図である。
図3図1の左側のビード部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある。)1の非リム組み状態のタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。本実施形態では、好ましいタイヤ1として、自動二輪車用タイヤが示される。なお、本発明のタイヤ1は、自動二輪車用に限定されるものではなく、乗用車用や重荷重用に適用することができる。
【0020】
タイヤ1は、例えば、路面と接地する踏面2aを有するトレッド部2と、トレッド部2の両端からタイヤ半径方向の内側に配される一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3に連なった一対のビード部4とを含んでいる。各ビード部4には、ビードコア5が埋設されている。
【0021】
前記「非リム組み状態」とは、本明細書では、ビードコア5のタイヤ軸方向の外側で正規リムRと接するビード部4の外側面4a、4a間のタイヤ軸方向の距離を、リムRのリム幅Wtと一致するようにビード部4を保持した状態をいう。以下、特に言及されない場合、タイヤ1の各部の寸法等はこの非リム組み状態で測定された値である。
【0022】
前記「正規リム」Rとは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば"Design Rim" 、或いはETRTOであれば"Measuring Rim"である。正規リムRは、以下、単に「リム」という場合がある。
【0023】
本実施形態のリムRは、一対のベースRaと、ベースRaのタイヤ軸方向の外端に連なってタイヤ半径方向外側にのびる一対のフランジRbとを含んでいる。
【0024】
トレッド部2は、本実施形態では、キャンバー角が大きい旋回時においても十分な接地面積が得られるように、トレッド部2の踏面2aが、タイヤ半径方向外側に凸で円弧状に湾曲してのびている。
【0025】
本実施形態のタイヤ1は、ビードコア5と、ビードコア5間を延びるカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向外側、かつ、トレッド部2の内部に配されるベルト層7とを具えている。ビードコア5及びベルト層7は、公知の態様が適宜採用される。
【0026】
カーカス6は、少なくとも1枚、本実施形態では、タイヤ半径方向の内外に2枚のカーカスプライ6A、6Bで形成されている。カーカスプライ6A、6Bのそれぞれは、例えば、タイヤ赤道Cに対して75~90°の角度で傾けて配列されたカーカスコードをゴム材料(図示省略)で被覆して形成されている。
【0027】
各カーカスプライ6A、6Bは、例えば、本体部6aと折返し部6bとを含んでいる。本体部6aは、例えば、各ビードコア5間をトロイド状に延びている。折返し部6bは、例えば、本体部6aに連なりかつビードコア5の回りをタイヤ軸方向の内側から外側へ折り返されている。各折返し部6bは、例えば、ビードコア5よりもタイヤ半径方向の外側に延びている。
【0028】
本実施形態のタイヤ1は、一対のビード部4間を延びる空気非透過性のインナーライナー9をさらに含んでいる。インナーライナー9は、例えば、タイヤ1の内腔面1bを形成している。インナーライナー9は、本実施形態では、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体を含むエラストマー組成物から形成されている。
【0029】
図2は、ビード部4の拡大図である。図2に示されるように、インナーライナー9は、例えば、タイガム層10を介して、カーカス6の本体部6aに接合されている。タイガム層10は、例えば、天然ゴムリッチのゴム配合が採用され、優れた粘着性を有している。
【0030】
ビード部4は、本実施形態では、外側面4aと、外側面4aに連なりかつリムRのベースRaと接するビード底面4bと、ビード底面4bに連なり、リムRとは非接触な内側面4cとを含んでいる。
【0031】
本実施形態の外側面4aは、ビードベースラインBLよりもタイヤ半径方向外側に位置しかつタイヤ半径方向にのびている。外側面4aは、例えば、リムRのフランジRbと接する。ビードベースラインBLは、正規リムRのリム径Da(JATMA参照)を規定するタイヤ軸方向線である。
【0032】
本実施形態のビード底面4bは、ビードトウ点13とビードヒール点14との間に形成される。ビードトウ点13は、ビード部4のタイヤ半径方向の内端かつタイヤ軸方向の内端である。ビードヒール点14は、正規状態において、タイヤ1の外表面とビードベースラインBLとが交差する点である。ビード底面4bは、例えば、ビードトウ点13からタイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向外側へ傾斜している。ビード底面4bは、本実施形態では、タイヤ半径方向内側へ滑らかな凸の円弧状部を含んでいる。
【0033】
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リムRにリム組みされ、かつ、正規内圧が充填され、しかも無負荷の状態である。
【0034】
前記「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0035】
内側面4cは、例えば、ビードトウ点13からタイヤ半径方向の外側に延びて、タイヤ1の内腔面1bを形成している。
【0036】
ビード部4のビードベース径Dは、リムRのリム径Daの99.7%未満である。これにより、とりわけ、ビード部4と正規リムRとの間の締付け力が高められ、これらの間からの空気の漏れを抑制できる。ビードベース径Dは、本明細書では、ビードコア5のタイヤ半径方向の中間位置高さ5hでのタイヤ1の外側面4aからタイヤ軸方向の内側へ1.5mm離間したタイヤ半径方向線yと外側面4a又はビード底面4bとの交点Pにおけるタイヤ1の直径である。
【0037】
ビードベース径Dがリム径Daに対して過度に小さくなると、リム組時等の作業のしやすさである嵌合性が悪化するおそれがある。このため、ビードベース径Dは、リム径Daの99.4%以上であるのが望ましい。
【0038】
本実施形態のビード部4には、インナーライナー9のタイヤ半径方向の内端9iが配されている。インナーライナー9の内端9iは、本実施形態では、ビードコア5のタイヤ半径方向の内端5iよりもタイヤ半径方向の内側に位置している。これにより、ビードコア5の内側を通る空気の漏れが抑制される。本実施形態では、右側のビード部4においても、インナーライナー9の内端9iが、ビードコア5のタイヤ半径方向の内端5iよりもタイヤ半径方向の内側に位置している。
【0039】
インナーライナー9の内端9iは、本実施形態では、ビードトウ点13に配されている。これにより、ビードコア5の内側を通る空気の漏れが、さらに抑制される。なお、インナーライナー9の内端9iは、ビードトウ点13に配されるものに限定されるものではない。
【0040】
インナーライナー9は、本実施形態では、ビードコア5のタイヤ半径方向の内側を通ってタイヤ軸方向の外側に延びる第1延長部15を備えている。これにより、一層、ビードコア5の内側を通る空気の漏れが抑制される。第1延長部15は、例えば、ビードコア5のタイヤ軸方向の中間位置5cよりもタイヤ軸方向の外側に延びている。
【0041】
第1延長部15は、本実施形態では、ビードコア5のタイヤ軸方向の外端5aをタイヤ軸方向の外側に越えて延びている。これにより、上述の効果が一層発揮される。本実施形態の第1延長部15は、ビード底面4bを形成している。第1延長部15は、例えば、ビードヒール点14に配されている。
【0042】
インナーライナー9は、例えば、第1延長部15からタイヤ半径方向外側に延びる第2延長部16を含んでいる。第2延長部16は、本実施形態では、タイヤ半径方向の外端16eがビードベースラインBLよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。
【0043】
第2延長部16は、例えば、外側面4aを形成している。これにより、上述の効果がより一層高く発揮される。第2延長部16のタイヤ半径方向の外端16eは、例えば、ビードコア5のタイヤ半径方向の中間位置高さ5hよりもタイヤ半径方向の外側に位置しているのが望ましい。
【0044】
図3は、ビード部4の拡大図である。図3に示されるように、タイガム層10は、本実施形態では、カーカス6の本体部6aに沿ってトロイド状に延びる基部10Aと、基部10Aに連なって折返し部6bに沿って延びる一対の外側部10Bとを含んでいる。
【0045】
タイガム層10の基部10Aは、本実施形態では、ビードコア5のタイヤ半径方向の内端5iよりもタイヤ半径方向の内側まで延びている。タイガム層10の外側部10Bは、本実施形態では、ビードコア5のタイヤ軸方向の中間位置5cよりもタイヤ軸方向の外側まで延びている。外側部10Bのタイヤ軸方向の外端10eは、例えば、ビードコア5のタイヤ軸方向の外端5aよりもタイヤ軸方向の内側に位置している。
【0046】
ビード部4のタイヤ軸方向の最大厚さWと、ビードコア5のタイヤ半径方向の中間位置高さ5hでのカーカス厚さWaとの比W/Waは、1.20以上であるのが望ましい。このようなビード部4は、ビード部4と正規リムRとの間の締付け力が過度に大きくなることを抑制して、嵌合性を高める。比W/Waが過度に大きくなると、逆に締付け力が低下して、ビード部4とリムRとの間からの空気の漏れを抑制できないおそれがある。このため、比W/Waは、2.50以下が望ましく、2.0以下がさらに望ましく、1.50以下が、一層望ましい。カーカス厚さWaは、本実施形態では、内のカーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間のタイヤ軸方向の距離である。
【0047】
中間位置高さ5hにおいて、折返し部6bのタイヤ軸方向の外側のビードゴム厚さWbと最大厚さWとの比W/Wbは、4.50よりも大きいのが望ましい。これにより、ビードコア5をタイヤ軸方向の外側に位置することができる。ベースRaは、通常、タイヤ軸方向の外側に向かってタイヤ半径方向の外側へ傾斜している。このため、ビードコア5がタイヤ軸方向の外側に配されるほど、リムRとビードコア5とのタイヤ半径方向の距離が小さくなり、これらの間の締付け力が大きくなるので、耐エアリーク性が向上する。
【0048】
ビードゴム厚さWbを形成するゴムは、本実施形態では、インナーライナー9である。インナーライナー9による空気の漏れを抑える観点より、ビードゴム厚さWbは、0.5mm以上が望ましい。
【0049】
ビードコア5のタイヤ軸方向の中間位置5cにおいて、折返し部6bのタイヤ半径方向の内側のビードゴム厚さdは、2mm以上であるのが望ましく、また、5mm以下であるのが望ましい。これにより、嵌合性と耐エアリーク性とがバランスよく高められる。ビードゴム厚さdは、例えば、インナーライナー9とタイガム層10とで形成される。
【0050】
ビード部4は、本実施形態では、ビード基準面4sから外側に突出する突部20を有している。このような突部20は、リムRに対して大きな接地圧を生じさせるので、ビード部4とリムRとの間の締付け力を高め、これらの間からの空気の漏れを効果的に防ぐことができる。突部20は、本実施形態では、インナーライナー9で形成されている。
【0051】
突部20は、例えば、タイヤ周方向に連続して延びている。突部20は、本実施形態では、円弧状に形成されている。しかしながら、突部20は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、三角形状や矩形状でもよい。ビード基準面4sは、曲率半径が3mm以上の複数の円弧又は直線を継いで形成されるビード底面4b及び外側面4aをいう。
【0052】
突部20は、例えば、ビードコア5のタイヤ軸方向の中間位置5cよりもタイヤ軸方向の外側かつビードコア5のタイヤ半径方向の中間位置高さ5hよりもタイヤ半径方向の内側に配されている。このような突部20には、ビードコア5の締付け力が大きく作用するので、さらに、耐エアリーク性が向上する
【0053】
突部20は、例えば、ビードコア5のタイヤ半径方向の内端5iよりもタイヤ半径方向の内側、かつ、ビードコア5のタイヤ軸方向の外端5aよりもタイヤ軸方向の外側に設けられている。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。
【0054】
特に限定されるものではないが、突部20は、例えば、ビード基準面4sからの最大高さhaが、最大厚さWの2%~6%であるのが望ましい。突部20の幅w2は、最大高さhaの70%~150%が望ましい。
【0055】
突部20は、本実施形態では、フランジRbと接触することになる。一般に、フランジRbは、ベースRaよりもタイヤ1による荷重が小さく作用する。このため、突部20をフランジRbに接触するように配することで、走行時に生じる、リム組されたタイヤ1とリムRとのタイヤ周方向の位置ずれ(以下、「リムスリップ」という場合がある。)を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施され得る。
【実施例
【0057】
図1の基本構造を有するの自動二輪車用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づき試作された。そして、各テストタイヤの耐エアリーク性、嵌合性及びリムスリップ性についてテストが行われた。テスト方法は、以下の通りである。表1の「インナーライナーの内端位置」の「外側」及び「内側」は、インナーライナーのタイヤ半径方向の内端がビードコアのタイヤ半径方向の内端よりも「外側」又は「内側」にあることを意味する。
サイズ:120/70R17
リム:3.50MT
【0058】
<耐エアリーク性>
各テストタイヤが正規リムにリム組され、下記条件で室内に3か月間放置された後、空気圧が計測された。結果は、比較例1の空気圧を100とする指数で表され、数値が大きいほど耐エアリーク性が良好である。
室温:25℃
初期空気圧:250kPa
荷重:0N
【0059】
<嵌合性>
各テストタイヤが正規リムにリム組された。そして、ビード部が前記正規リムのハンプを乗り越えるときの圧力(嵌合圧)が計測された。結果は、比較例1の圧力を100とする指数で表され、数値が小さいほど嵌合性が良好である。
【0060】
<リムスリップ性>
各テストタイヤが、下記の条件で、ドラム試験機の疑似路面上を走行させられ、このときのテストタイヤとリムとの位置ずれの発生の有無がテスターの目視によって確認された。結果は、位置ずれの発生本数が3%以下のテストタイヤを「無」、位置ズレの発生本数が3%を超えるテストタイヤを「有」として表示した。
走行距離:20000km
内圧:250kPa
荷重:正規荷重の80%
速度:150km/h
【表1】
【0061】
テストの結果、実施例のテストタイヤは、比較例のテストタイヤに比して耐エアリーク性及びリムスリップ性が優れている。また、実施例のテストタイヤは、比較例のテストタイヤに比して、嵌合性が維持されている。
【符号の説明】
【0062】
1 空気入りタイヤ
4 ビード部
5 ビードコア
5i 内端
9 インナーライナー
9i 内端
R 正規リム
D ビードベース径
Da リム径
図1
図2
図3