(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】床構造
(51)【国際特許分類】
E04B 5/40 20060101AFI20231017BHJP
E04B 5/02 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
E04B5/40 H
E04B5/02 C
(21)【出願番号】P 2019214965
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】名塚 彰
(72)【発明者】
【氏名】植村 敏正
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-183833(JP,A)
【文献】特開2003-247332(JP,A)
【文献】特開2010-229808(JP,A)
【文献】特開2016-001048(JP,A)
【文献】特開平03-081453(JP,A)
【文献】特開平10-185013(JP,A)
【文献】特開2011-012438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/40
E04B 5/02
E04B 5/48
E03C 1/12-1/126
E03C 1/30-1/308
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の内外を連通する配管が上下に通る床の構造であって、
軽量気泡コンクリートからなり、梁に支持される複数の床材と、
前記配管が通る貫通穴を有し、
上方へ開口する縦断面略コ字形の板状、または上方へ開口する箱状に形成されるとともに、隣接する床材間に上下に開口して形成される開口部に設けられる受材と
、
前記受材の内部に前記貫通穴を残して打設されたコンクリートからなるコンクリート材と、を備え、
前記受材には、当該受材の底部から上方へ立設し、内穴が前記貫通穴と連通する筒状の筒部が設けられ、
前記筒部は、上下方向へ開口するとともに、上端の高さが前記複数の床材の上面の高さと略同一であることを特徴とする床構造。
【請求項2】
前記受材には、互いに外方へ離隔するように延出して、前記床材または前記梁への取付部が設けられており、
前記取付部を介して、前記受材が前記床材または前記梁に設けられる
ことを特徴とする請求項
1に記載の床構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の床構造に関するものであり、特に、屋内に空気を給気する給気管や屋外に空気を排気する排気管などの配管が貫通して通される床の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示される床貫通部構造では、軽量気泡コンクリートからなる床板に貫通形成された穴に貫通治具がはめ込まれた状態で床板に固定され、貫通治具の給水管貫通部材に給水管が挿通されると共に、貫通治具の排水管規制部に貫通して設けられた接続部材を介して排水管が通される。この床貫通部構造では、床を貫通するようにして給水管および排水管を配管するために、軽量気泡コンクリートからなる床板に貫通して穴が形成されている。
【0003】
通常、床板が軽量気泡コンクリートから形成される場合、床板の強度低下を招くので、床板に貫通穴を形成するのは好ましくない。やむを得ず貫通穴を形成する際には、貫通穴をできるだけ小さく形成することが必要である。典型的には、貫通穴の直径は、50mm以下とされる。
【0004】
従って、特許文献1に開示される床貫通部構造は、床板が軽量気泡コンクリートから形成される床において、給排水管などの配管の直径が50mmを超える場合に用いることができない。すなわち、屋内外を連通して空気を給排気する配管であるダクト管の場合、給排水管よりも明らかに太く形成されて、前述した規定よりも太く形成されるので、床板に貫通穴を形成する従来の床貫通部構造を用いることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、軽量気泡コンクリートからなる床材を有する床において、床材に貫通穴を形成することなく、床を貫通するようにして配管を通すことができる床構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る床構造は、建物の内外を連通する配管が上下に通る床の構造であって、軽量気泡コンクリートからなり、梁に支持される複数の床材と、前記配管が通る貫通穴を有し、上方へ開口する縦断面略コ字形の板状、または上方へ開口する箱状に形成されるとともに、隣接する床材間に上下に開口して形成される開口部に設けられる受材と、前記受材の内部に前記貫通穴を残して打設されたコンクリートからなるコンクリート材と、を備え、前記受材には、当該受材の底部から上方へ立設し、内穴が前記貫通穴と連通する筒状の筒部が設けられ、前記筒部は、上下方向へ開口するとともに、上端の高さが前記複数の床材の上面の高さと略同一であることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明に係る床構造は、前記受材には、互いに外方へ離隔するように延出して、前記床材または前記梁への取付部が設けられており、前記取付部を介して、前記受材が前記床材または前記梁に設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る床構造によれば、軽量気泡コンクリートからなる床材間に上下に開口して形成される開口部に受材が設けられ、その受材に形成された貫通穴を貫通するようにして、建物の内外を連通する配管が通される。従って、床材間に形成される隙間を貫通するようにして、空気を給排気するダクト管である配管を配置することができる。これにより、軽量気泡コンクリートからなる床材に貫通穴を形成する必要がないので、床材の強度低下を招くことなく配管を配置することができる。
【0011】
また、本発明に係る床構造によれば、受材内に打設されたコンクリートからなるコンクリート材を備えるので、床の受材が配置される箇所の耐火性を確保することができる。
【0012】
さらに、本発明に係る床構造によれば、受材が取付部を介して床材または梁に設けられるので、受材を容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の床構造の一実施例を示す概略斜視図である。
【
図3】
図1の床構造に用いられる受材を示す概略斜視図である。
【
図4】
図1の床構造に用いられる受材の変形例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の床構造の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1および
図2は、本発明の床構造の一実施例を示す図であり、
図1は概略斜視図、
図2は概略縦断面図である。本実施例の床構造1は、ホテルなどの宿泊施設である建物の内外を連通する配管2が上下に貫通するようにして通される床の構造であって、梁3に支持される複数の床材4と、配管2が通る貫通穴5を有する受材6と、受材6の内部に設けられるコンクリート材7とを備える。ここでは、配管2,2の内、一方の配管2が厨房内に屋外から空気を供給する給気管であり、他方の配管2が厨房内の空気を屋外へ排出する排気管であり、給気管の給気口および排気管の排気口が建物の屋上に開口して形成されている。従って、本実施例の床構造1は、建物の厨房よりも上の階の配管スペースの床部に適用される。
【0016】
各床材4は、平面視略四角形の板状で、軽量気泡コンクリートから形成されている。この軽量気泡コンクリートからなる複数の床材4は、端部同士が互いに対応するようにして、梁3上に配置される。この際、各床材4は、板面を上下に向けた状態で、隣接する梁3,3の上端部間を架け渡すようにして設けられる。
【0017】
本実施例では、梁3上に複数の床材4を並べる際に、床材4を設けないことで、隣接する床材4,4間に上下に開口する開口部8が形成される。すなわち、開口部8は、複数の床材4で囲まれることで形成され、その複数の床材4の端面で囲まれた内穴を有している。図示例では、開口部8は、左右方向を長手方向とする平面視略長方形状に形成される。
【0018】
図3は、受材を示す概略斜視図である。この図に示されるように、受材6は、上方へ開口する箱状に形成されている。具体的には、受材6は、左右方向を長手方向とする平面視略長方形の有底容器状に形成されている。有底容器状の受材6の底部には、配管2が通る貫通穴5が形成されている。本実施例では、前述したように二つの配管2,2が設けられるので、受材6には二つの貫通穴5,5が形成されている。この二つの貫通穴5,5は、配管2が角筒状であるので、平面視略四角形状に形成されている。
【0019】
受材6には、互いに外方へ離隔するように延出して、床材4への取付部9が設けられる。本実施例では、受材6の左側壁10の上端部に、左方へ延出して平面視略四角形の板状の取付部9が設けられる一方、受材6の右側壁11の上端部に、右方へ延出して平面視略四角形の板状の取付部9が設けられる。これにより、受材6の左右の側壁10,11の上端部が正面視略L字形状に形成される。
【0020】
また、受材6には、上下方向へ開口する筒部12が設けられる。筒部12は、その内穴が受材6に形成された貫通穴5と連通するようにして配置される。この際、筒部12は、貫通穴5を取り囲むようにして受材6の底部に立設される。従って、配管2は、受材6に形成された貫通穴5および筒部12を貫通して、上下方向へ沿って配置される。なお、本実施例では、貫通穴5が平面視略四角形状に形成されているので、筒部12は、上下方向へ開口する角筒状に形成されている。
【0021】
受材6は、隣接する床材4,4間の隙間である開口部8に設けられる。具体的には、開口部8に受材6の箱状部分がはめ込まれた状態で、左側の取付部9が受材6の左側に配置される床材4の上面にビスなどで固定されると共に、右側の取付部9が受材6の右側に配置される床材4の上面にビスなどで固定される。なお、
図2に示されるように、有底容器状の受材6は、その深さが床材4の厚みよりも小さく形成されている。本実施例では、受材6の深さが床材4の厚みの半分程度とされる。
【0022】
コンクリート材7は、受材6の内部に打設されたコンクリートからなる。このコンクリートは、受材6に形成された貫通穴5を残して、受材6の内部に打設される。すなわち、受材6に形成された貫通穴5は、コンクリートによって閉じられない。本実施例では、前述したように筒部12が設けられるので、受材6の内部にコンクリートを流し込むだけで、貫通穴5を残してコンクリートが打設される。
【0023】
本実施例の床構造1の場合、軽量気泡コンクリートから形成される床材4,4間の隙間である開口部8に受材6が設けられ、その受材6を介して給気管および排気管が配置される。従って、床材4に貫通穴を形成することなく、建物の床を貫通して上下階にわたって、給気管および排気管を設けることができる。軽量気泡コンクリートからなる床材に貫通穴をやむを得ず形成する場合には、貫通穴の直径が50mm以下とされるが、本実施例では、前述したように床材4に貫通穴が形成されないので、直径が50mmよりも太い配管2を建物の上下階にわたって設置することができる。
【0024】
また、本実施例の床構造1の場合、受材6の内部にコンクリート材7が設けられる。従って、受材6が配置される部分の耐火性を確保することができる。しかも、本実施例の場合、コンクリート材7の厚さに対応する受材6の深さが床材4の厚さの半分程度とされるので、コンクリートにかかるコストを低減することができる。また、コンクリート材7の厚さを薄くできるので、受材6がコンクリート材7の重さにより変形するのを防止することができる。さらに、本実施例の床構造1の場合、受材6は、取付部9,9が対応する床材4の上面に載せ置かれた状態で固定される。従って、受材6を開口部8に容易に設置することができる。
【0025】
本発明の床構造は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。たとえば、前記実施例では、受材6は、上方へ開口する箱状に形成されたが、これに限定されるものではなく、たとえば、上方へ開口する縦断面略コ字形の板状に形成してもよい。
図4は、受材の変形例を示す概略斜視図である。
【0026】
本変形例の受材6は、上方へ開口する正面視略コ字形の板状で、左右方向を長手方向とする平面視略長方形状に形成されている。コ字形の受材6の開放両端部13,13の上端部には、互いに外方へ離隔するようにして、床材4への取付部9が設けられる。本実施例では、取付部9は、平面視略四角形の板状に形成されている。また、受材6の底部には、前記実施例と同様にして、貫通穴5および筒部12が形成されている。このような構成の受材6は、コ字形状部分が床材4,4間の開口部8にはめ込まれた状態で、左側の取付部9が受材6の左側に配置される床材4の上面にビスなどで固定されると共に、右側の取付部9が受材6の右側に配置される床材4の上面にビスなどで固定される。
【0027】
受材6の内部には、コンクリート材7が設けられる。すなわち、受材6のコ字形状部分の内部にコンクリートが打設されて、受材6にコンクリート材7が設けられる。この際、筒部12が設けられるので、貫通穴5を残してコンクリートを打設することができる。
【0028】
また、前記実施例および前記変形例では、受材6に形成される貫通穴5が平面視略四角形状とされると共に、筒部12が角筒状とされたが、貫通穴5を平面視円形状に形成すると共に、筒部12を円筒状に形成してもよい。また、前記実施例および前記変形例では、給気管と排気管とが通されるので、貫通穴5とその貫通穴5に連通する筒部12とが二箇所に形成されたが、受材6に形成される貫通穴5および筒部12のセットの数は適宜に変更可能である。
【0029】
さらに、前記実施例および前記変形例では、受材6は、取付部9を介して床材4に設けられたが、これに限定されるものではなく、取付部9を介して梁3に設けてもよい。この場合、受材6は、左側の取付部9が受材6の左側に配置される梁3の上側のフランジ14にボルトナットなどで固定されると共に、右側の取付部9が受材6の右側に配置される梁3の上側のフランジ14にボルトナットなどで固定される。すなわち、受材6には、互いに外方へ離隔するようにして、梁3への取付部9が設けられる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の床構造は、軽量気泡コンクリートからなる床材を介して配管が通される床に好適に適用される。
【符号の説明】
【0031】
1 床構造
2 配管
3 梁
4 床材
5 貫通穴
6 受材
7 コンクリート材
8 開口部
9 取付部