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特許7367509眼科測定装置、眼科測定システム、および眼科測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】眼科測定装置、眼科測定システム、および眼科測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/103 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61B3/103
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019225722
(22)【出願日】2019-12-13
(65)【公開番号】P2021094083
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】滝井 通浩
(72)【発明者】
【氏名】八谷 将典
(72)【発明者】
【氏名】清水 一成
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536091(JP,A)
【文献】特開2012-075647(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0050643(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼を測定するための眼科測定装置であって、
眼内レンズが挿入された前記被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する測定手段と、
前記被検眼に挿入された眼内レンズに関する眼内レンズ情報として、前記被検眼に挿入された眼内レンズの回折構造に対応する可視光と赤外光のずれ量を取得する取得手段と、
前記ずれ量に基づいて前記眼屈折力の測定結果を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする眼科測定装置。
【請求項2】
記補正手段は、眼内レンズの種類に応じて設定された前記ずれ量に基づいて、前記測定結果を補正することを特徴とする請求項1に記載の眼科測定装置。
【請求項3】
被検眼を測定する眼科測定装置と、
前記被検眼に挿入された眼内レンズに関する眼内レンズ情報を記憶する管理サーバーと、を含む眼科測定システムであって、
前記管理サーバーは、
被検者を識別するための識別情報に紐づいた状態で前記眼内レンズ情報を記憶する記憶手段を備え、
前記眼科測定装置は、
眼内レンズが挿入された前記被検眼の眼屈折力を測定する測定手段と、
前記識別情報を取得し、前記管理サーバーの前記記憶手段から前記識別情報に紐づく前記眼内レンズ情報として、前記被検眼に挿入された眼内レンズの回折構造に対応する可視光と赤外光のずれ量を取得する取得手段と、
前記ずれ量に基づいて前記眼屈折力の測定結果を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする眼科測定システム。
【請求項4】
被検眼を測定するための眼科測定装置において実行される眼科測定プログラムであって、前記眼科測定装置のプロセッサによって実行されることで、
眼内レンズが挿入された前記被検眼の眼屈折力を測定する測定ステップと、
前記被検眼に挿入された眼内レンズに関する眼内レンズ情報として、前記被検眼に挿入された眼内レンズの回折構造に対応する可視光と赤外光のずれ量を取得する取得ステップと、
前記ずれ量に基づいて前記眼屈折力の測定結果を補正する補正ステップと、を前記眼科測定装置に実行させることを特徴とする眼科測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、被検眼の眼屈折力を測定するための眼科測定装置、眼科測定システム、および眼科測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼科測定装置としては、例えば、被検眼の眼底に測定光束を投光し、眼底からの反射光束を受光素子で受光することによって被検眼の眼屈折力を他覚的に測定するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-147570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の装置において、眼内レンズが挿入された被検眼を測定した場合、取得された他覚測定値が、自覚的に測定された自覚測定値と異なることがあった。
【0005】
本開示は、従来の問題点に鑑み、眼内レンズの挿入眼であっても眼屈折力を精度よく測定できる眼科測定装置、眼科測定システム、および眼科測定プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0007】
(1) 被検眼を測定するための眼科測定装置であって、
眼内レンズが挿入された前記被検眼の眼屈折力を他覚的に測定する測定手段と、
前記被検眼に挿入された眼内レンズに関する眼内レンズ情報として、前記被検眼に挿入された眼内レンズの回折構造に対応する可視光と赤外光のずれ量を取得する取得手段と、
前記ずれ量に基づいて前記眼屈折力の測定結果を補正する補正手段と、
を備えることを特徴とする。
(2) 被検眼を測定する眼科測定装置と、
前記被検眼に挿入された眼内レンズに関する眼内レンズ情報を記憶する管理サーバーと、を含む眼科測定システムであって、
前記管理サーバーは、
被検者を識別するための識別情報に紐づいた状態で前記眼内レンズ情報を記憶する記憶手段を備え、
前記眼科測定装置は、
眼内レンズが挿入された前記被検眼の眼屈折力を測定する測定手段と、
前記識別情報を取得し、前記管理サーバーの前記記憶手段から前記識別情報に紐づく前記眼内レンズ情報として、前記被検眼に挿入された眼内レンズの回折構造に対応する可視光と赤外光のずれ量を取得する取得手段と、
前記ずれ量に基づいて前記眼屈折力の測定結果を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
(3) 被検眼を測定するための眼科測定装置において実行される眼科測定プログラムであって、前記眼科測定装置のプロセッサによって実行されることで、
眼内レンズが挿入された前記被検眼の眼屈折力を測定する測定ステップと、
前記被検眼に挿入された眼内レンズに関する眼内レンズ情報として、前記被検眼に挿入された眼内レンズの回折構造に対応する可視光と赤外光のずれ量を取得する取得ステップと、
前記ずれ量に基づいて前記眼屈折力の測定結果を補正する補正ステップと、を前記眼科測定装置に実行させることを特徴とする。

【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、眼内レンズ挿入眼であっても、精度よく眼屈折力を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】眼科測定システムの概略図である。
図2】眼科測定装置の外観構成図である。
図3】光学系及び制御系の概略構成図である。
図4】補正テーブルを示す図である。
図5】測定値のずれについて説明するための図である。
図6】管理サーバーに記憶された患者情報の一例である。
図7】制御動作を示すフローチャートである。
図8】測定結果の表示画面の一例である。
図9】測定結果の表示画面の一例である。
図10】分節型IOLの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
以下、本開示に係る実施形態について説明する。本実施形態の眼科測定装置(例えば、眼科測定装置1)は、被検眼を測定する装置である。例えば眼科測定装置は、被検眼の眼屈折力(屈折度数)を他覚的に測定する。眼科測定装置は、測定部(例えば、測定部100)と、取得部(例えば、制御部70)と、補正部(例えば、制御部70)を備える。
【0011】
測定部は、例えば被検眼の眼屈折力を測定する。眼屈折力は、例えば球面情報(例えば、球面度数、等)または乱視情報(例えば、柱面度数、乱視軸角度、等)であってもよいし、波面収差情報であってもよい。測定部は、例えば測定光学系(例えば、測定光学系200)を備える。測定光学系は被検眼に測定光を投光し、被検眼で反射した測定光を受光することによって眼屈折力に応じたパターン像を取得する。パターン像は、例えば被検眼の眼屈折力に応じてサイズまたは形状等が変化する。パターン像は、リング像であってもよい。リング像は、例えば測定光がリング(円環)状に集光した状態で測定光学系の受光素子によって受光された像である。また、パターン像は複数の点像(例えば、ハルトマン像)であってもよい。
【0012】
取得部は、被検眼の眼内レンズ(IOL)情報を取得する。IOL情報は、例えば被検眼に挿入されたIOLに関する情報である。IOL情報は、IOLの設計条件に応じた情報であってもよく、例えば、IOLの銘柄、モデル番号、タイプ(分節型、回折型など)などのIOLの種類に関する情報であってもよい。IOL情報には、例えばIOLの度数、またはIOLが挿入された向き(IOLの光軸回りの回転角度)などの情報が含まれてもよい。
【0013】
補正部は、IOL情報に基づいて眼屈折力の測定結果を補正する。例えば補正部は、IOL情報に基づいて、球面度数、柱面度数、乱視軸角度、波面収差等を補正してもよい。これによって、本実施形態の眼科測定装置は、IOL挿入眼を測定する場合であっても、より適正な測定結果を取得することができる。
【0014】
補正部は、例えばIOLの種類に応じて設定された補正量に基づいて、眼屈折力の測定結果を補正してもよい。IOLの種類によって眼屈折力のずれ量が異なるため、IOLの種類毎に設定された補正量に応じて眼屈折力の測定結果を補正してもよい。これによって、被検眼の適正な眼屈折力を容易に取得することができる。また、補正部は、例えば、IOLの設計条件に応じて設定された補正量に基づいて、眼屈折力の測定結果を補正してもよい。これによって、IOLの設計条件によって測定値がずれる場合であっても、より適した測定結果を取得できる。
【0015】
なお、補正部は、被検眼に挿入されたIOLにおいて、IOLの向きに応じて設定された補正量に基づいて眼屈折力の測定結果を補正してもよい。これによって、柱面度数または乱視軸角度等を容易に補正することができる。
【0016】
なお、取得部は、管理サーバー(例えば、管理サーバー900)から眼内レンズ情報を取得してもよい。管理サーバーは、例えば、被検眼のIOL情報を記憶する。これによって、眼科測定装置に被検者のIOL情報が記憶されていない場合であっても、管理サーバーから取得した眼内レンズ情報に基づいて眼屈折力を補正することができる。
【0017】
なお、取得部は、被検者を識別するための識別情報(例えば、ID、識別番号など)を取得してもよい。この場合、取得部は、識別情報によって被検者と紐づけられた眼内レンズ情報を取得してもよい。例えば管理サーバーは、識別情報によって被検者とIOL情報を紐づけた状態で記憶している。そこで眼科測定装置は、被検者の識別情報を管理サーバーに送信することで、管理サーバーから識別情報と紐づくIOL情報を受信してもよい。
【0018】
なお、本装置は、入力受付部(例えば、制御部70)を備えてもよい。入力受付部は、検者からの操作入力を受け付ける。例えば、入力受付部は、検者の操作によって操作部(例えば、操作部76)から出力された操作信号を受け付ける。この場合、取得部は、入力受付部によって受け付けられた操作入力に基づいて眼内レンズ情報を取得してもよい。これによって、眼科測定装置は、管理サーバー等と接続していない状態であっても眼屈折力の測定結果を補正することができる。
【0019】
なお、本装置は、表示制御部(例えば、制御部70)を備えてもよい。表示制御部は、表示部(例えば、表示部75)にIOL選択画面を表示させる。IOL選択画面は、例えば、被検眼に挿入された眼内レンズの種類を選択するための画面である。IOL選択画面によって、検者は被検眼に挿入された眼内レンズの種類を容易に指定することができる。
【0020】
なお、本装置は、出力部を備えてもよい。出力部は、例えば、表示部、プリンタなどであってもよい。例えば出力部は、補正前の測定結果と、補正後の測定結果の両方を出力する。例えば、出力部は、補正前後の測定結果を表示画面に並べて表示してもよいし、印刷用紙に併記して印刷してもよい。これによって、検者は、測定結果がどの程度補正されたのかを容易に確認することができる。
【0021】
なお、本装置は、報知部を備えてもよい。報知部は、例えば、表示部、プリンタ、スピーカ、ライトなどであってもよい。例えば報知部は、測定結果が補正済みであることを報知してもよい。これによって、検者は、測定結果が補正済みか否かを容易に把握することができる。
【0022】
<実施例>
以下、本開示に係る実施例について説明する。図1に示すように、本実施例の眼科測定システム1000は、眼科測定装置1と、管理サーバー900等によって構成される。眼科測定装置1は、被検眼を測定するための装置である。管理サーバー900は、白内障手術等の患者情報を記憶し、管理する。
【0023】
<眼科測定装置>
図2は眼科測定装置1の外観構成図である。眼科測定装置1は、例えば、基台2、顔支持部3、駆動部4、表示部75、操作部76、および測定部100等を備える。顔支持部3は、基台2に固定され、被検者の顔を支持する。駆動部4は、測定部100を基台2に対してXYZ方向に駆動させる。表示部75は、各種の情報(例えば、被検眼の観察像、被検眼の測定結果、等)を表示する。操作部76は、各種の設定を行う。本実施例では、タッチパネル付きの表示部75が操作部76を兼用する。測定部100は、後述する光学系を収納する。なお、本実施例では、図2のように眼科測定装置1の左右方向をX方向、上下方向をY方向、前後方向をZ方向として表す。
【0024】
図3は眼科測定装置1の光学系及び制御系の概略構成図である。例えば、測定部100は、測定光学系200、固視標光学系300、指標投影光学系400、観察光学系500、等を備える。測定光学系200は、被検眼Eの眼屈折力(例えば、球面度数、柱面度数、乱視軸角度、等)を他覚的に測定する。固視標光学系300は、被検眼Eに対して固視標を呈示する。指標投影光学系400は、被検眼EのZ方向を検出するためのアライメント指標を投影する。観察光学系500は、被検眼Eの前眼部を撮像する。
【0025】
<測定光学系>
例えば、測定光学系200は、投光光学系210と、受光光学系220と、を備える。投光光学系210は、被検眼Eにおける瞳孔の中心部を介して、被検眼Eの眼底Efにスポット状の測定光束を投影する。受光光学系220は、眼底Efにより反射された測定光束の反射光束を、瞳孔の周辺部を介してリング状に取り出す。
【0026】
例えば、投光光学系210は、光源211、リレーレンズ212、ホールミラー213、プリズム214、駆動部215、対物レンズ216、等を備える。光源211は、測定光学系200の光軸N1上に配置され、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。例えば、光源211としては、LED(Light Emitting Diode)、SLD(Superluminescent Diode)、等を用いることができる。ホールミラー213の開口部は、瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。プリズム214は瞳孔と共役な位置から外れた位置に配置され、プリズム214を通過する光束を光軸N1に対して偏心させる。なお、プリズム214に代えて、光軸N1上に平行平面板を斜めに配置してもよい。駆動部215は、光軸N1を中心として、プリズム214を回転駆動させる。
【0027】
測定光源211は、瞳孔を介して眼底Efにスポット状の測定指標を投影するために利用される。光源211は、被検者に眩しさを感じさせにくい赤外域の光を発することが望ましい。但し、必ずしもこれに限られるものではない。また、本実施例において、光源211は、被検眼Eの徹照像を撮影するための照明光源としても用いられる。即ち、光源211から出射された光束(照明光)の眼底反射光によって、被検眼Eの瞳孔内が照明される。
【0028】
例えば、受光光学系220は、対物レンズ216、プリズム214、ホールミラー213、リレーレンズ221、全反射ミラー222、受光絞り223、コリメータレンズ224、リングレンズ225、撮像素子226、等を備える。対物レンズ216、プリズム214、及びホールミラー213は、投光光学系210と共用される。リレーレンズ221及び全反射ミラー222は、ホールミラー213の反射方向に配置される。受光絞り223、コリメータレンズ224、リングレンズ225、及び撮像素子226は、全反射ミラー222の反射方向に配置される。受光絞り223は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。リングレンズ225は、瞳孔と光学的に共役な位置関係となっている。例えば、リングレンズ225は、円筒レンズがリング状に形成されたレンズ部と、レンズ部以外に遮光用のコーティングが施された遮光部と、から構成される。撮像素子226は、眼底Efと光学的に共役な位置関係となっている。例えば、撮像素子226としては、CCD(Charged-Coupled Devices)、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)、等を用いることができる。例えば、撮像素子226からの出力信号は、制御部70に入力される。
【0029】
なお、被検眼Eと対物レンズ216との間には、ビームスプリッタ230が配置されている。ビームスプリッタ230は、固視標光学系300からの測定光束を被検眼Eへと導き、被検眼Eの前眼部からの反射光束を観察光学系500へと導く。
【0030】
上記の構成において、光源211から出射された測定光束は、リレーレンズ212、ホールミラー213、プリズム214、対物レンズ216、及びビームスプリッタ230を経て、眼底Ef上にスポット状の測定光束を投影する。これによって、眼底Ef上に点光源像が形成される。このとき、プリズム214が光軸N1周りに回転され、ホールミラー213の開口部の瞳投影像(瞳上での投影光束)は高速に偏心回転される。眼底Efにて測定光束が反射された反射光束は、ビームスプリッタ230、対物レンズ216、及びプリズム214を介して、ホールミラー213に反射される。反射光束は、さらに、リレーレンズ221を介して全反射ミラー222に反射され、受光絞り223の位置に集光する。コリメータレンズ224及びリングレンズ225によって、リング状の像が撮像素子226に結像する。
【0031】
なお、測定光学系200は上記の構成に限らず、被検眼Eの眼底Efに測定光束を投影する投光光学系と、眼底Efにより反射された測定光束の反射光束を受光する受光光学系と、を有する測定光学系であればよい。例えば、測定光学系200は、眼底Efにスポット指標を投影し、シャックハルトマンセンサを用いて、眼底Efにおけるスポット指標の反射光束を検出する測定光学系であってもよい。
【0032】
<固視標光学系>
例えば、固視標光学系300は、光源301、固視標板302、投光レンズ303、駆動部304、ハーフミラー305、対物レンズ306、駆動部307、等を備える。光源301は、ビームスプリッタ230により光軸N1と同軸にされた光軸N2上に配置される。固視標板302は、被検眼Eの他覚眼屈折力を測定する際に用いる。駆動部307は、固視標板302の位置を光軸N2方向へ移動させることによって、被検眼Eに呈示する固視標の呈示位置を移動させることができる。また、駆動部307は、光源301及び固視標板302を光軸N2方向へ移動させることで、被検眼Eに雲霧をかけることができる。例えば、駆動部307としては、アクチュエータ(例えば、ステッピングモータ等)と、基準位置となるフォトインタラプタと、が併用されてもよい。
【0033】
<指標投影光学系>
指標投影光学系400は、第1指標投影光学系と、第2指標投影光学系と、を備える。第1指標投影光学系は、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標を投影する。第2指標投影光学系は、被検眼Eの角膜に有限遠のアライメント指標を投影する。
【0034】
例えば、第1指標投影光学系は、点光源401a及び401b、コリメータレンズ402a及び402b、等を有する。なお、便宜上、図2では第1指標投影光学系の一部のみを図示している。点光源401a及び401bは、近赤外光を発する光源であってもよい。コリメータレンズ402a及び402bは、点光源から発せられた光束を平行光束(略平行光束)にする。これらの点光源及びコリメータレンズは、光軸N1を中心とした同心円上に45度間隔で複数個が配置され、光軸N1を通る垂直平面を挟んで左右対称となっている。これによって、被検眼Eの角膜に無限遠のアライメント指標が投影される。
【0035】
例えば、第2指標投影光学系は、点光源403a及び403bを有する。なお、便宜上、図2では第2指標投影光学系の一部のみを図示している。点光源403a及び403bは、近赤外光を発する光源であってもよい。例えば、これらの点光源は、第1指標投影光学系が有する点光源とは異なる位置に配置される。これによって、被検眼Eに有限遠のアライメント指標が投影される。
【0036】
なお、本実施例においては、第1指標投影光学系及び第2指標投影光学系の光源として点状の光源を用いる構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、光源はリング状の光源やライン状の光源を用いるようにしてもよい。また、第2指標投影光学系は、被検眼Eの前眼部を照明する前眼部照明、被検眼Eの角膜形状を測定する指標、等としても用いることができる。
【0037】
<観察光学系>
例えば、観察光学系500は、対物レンズ306、ハーフミラー305、撮像レンズ501、撮像素子502、等を備える。対物レンズ306及びハーフミラー305は、固視標光学系300と共用される。撮像レンズ501及び撮像素子502は、ハーフミラー305の反射方向に配置される。撮像素子502は、被検眼Eの前眼部と光学的に共役な位置関係となっている。この撮像素子502によって、被検眼Eの前眼部の正面画像が撮像される。前眼部画像の一種である徹照像も、撮像素子502によって撮像される。例えば、撮像素子502からの出力は、制御部70及び表示部75に入力される。なお、観察光学系500は、指標投影光学系400によって被検眼Eの角膜に形成されたアライメント指標像を検出する光学系を兼ね、制御部70によってアライメント指標像の位置を検出する。
【0038】
<制御部>
例えば、制御部70は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等を備える。CPUは、眼科測定装置1における各部の駆動を制御する。RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。ROMには、CPUが実行する各種プログラム等が記憶されている。なお、制御部70は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0039】
制御部70には、駆動部4、表示部75(操作部76)、不揮発性メモリ74(以下、メモリ74)、等が電気的に接続される。また、制御部70には、測定部100が備える各光源、各撮像素子、各駆動部、等が電気的に接続される。
【0040】
メモリ74は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、メモリ74としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、着脱可能なUSBメモリ、等を用いることができる。
【0041】
本実施例のメモリ74には、測定値を補正するための補正データが予め記憶されている。制御部70は、多焦点IOLが挿入された被検眼を測定する場合、メモリ74に記憶された補正データを用いて測定値を補正する。これによって、多焦点IOLの挿入眼において他覚屈折度数(他覚値)を自覚屈折度数(自覚値)と同程度の値に補正することができる。補正データは、例えば、IOLの種類毎に設定された補正量である。補正データは、例えば、IOLの銘柄毎に設定されてもよいし、IOLモデル番号毎に設定されてもよい。図4に示すように、メモリ74には、IOLの種類と、それに対応する測定値の補正量が補正テーブルとして記憶される。
【0042】
<測定値のずれについて>
自覚値と他覚値がずれる原因の1つとして、色収差が挙げられる。自覚値は、可視光(緑色付近の波長)の影響が支配的である。しかしながら、他覚測定に用いられる測定光が可視光でない場合、または緑色から離れた波長(例えば、赤色など)の可視光を含む場合、被検眼およびIOLを通過する測定光の曲がり具合が自覚測定のときとは異なってしまうため、自覚値と他覚値にずれが生じてしまう。
【0043】
例えば、遠用度数(遠方を見るための屈折度数)を出すために回折構造をもったIOLの場合、特に0次以外の光で遠用度数を出す設計になっているIOLの場合、可視光と赤外光とで光の曲がり具合が異なる。図5に示すように、ある回折構造を持ったIOLにおいて、赤外光の回折効率は1次回折が支配的になる。この場合、眼科測定装置1では、1次の回折光によって他覚値が算出される。1次の回折光の場合、可視光に対して赤外光の方がより大きく曲げられる。すなわち、軸上の色収差が発生していることになる。通常、眼屈折力測定では回折の色収差を考慮した値算出をしていない。この色収差の影響によって、図5の場合、赤外光で算出する他覚値は可視光での測定値に対して近視寄りの値が算出されることになる。この度数ずれは、IOLの設計および測定光の波長帯によって決定される。そのため、ある眼科測定装置によってあるIOLを測定すれば、屈折度数のずれ量は決まった値となる。
【0044】
屈折度数のずれ量は、IOLの回折の設計によって異なる。例えば、遠用度数の設計にどの次数の回折を使用するか、またはどの材質を使用するか等の設計条件によって、近視または遠視のどちら側にどれだけ補正するのかが変わってくる。本実施例では、予め実験またはシミュレーション等によってIOLの種類毎に可視光と赤外光とのずれ量を求めておき、これに基づいてメモリ74に記憶させる補正量を決定する。
【0045】
<管理サーバー>
管理サーバー900は、眼科測定装置1と接続されている(図1参照)。管理サーバー900は、一般的なコンピュータ、またはタブレットコンピュータなどであってもよいし、眼科測定装置1とは別の眼科装置などであってもよい。また、管理サーバー900は、患者情報を管理する管理システムの一部であってもよい。管理サーバー900は、例えば、どの被検眼にどのIOLが挿入されたのかを記憶する。例えば図6に示すように、管理サーバー900は、患者毎に登録された患者番号(患者ID)と、IOLの種類等を含むIOL情報とを紐づけた状態で記憶している。なお、管理サーバー900は、IOL情報として、IOLの度数またはIOLの向き(IOLの光軸回りの回転角度)などを記憶してもよい。
【0046】
<制御動作>
続いて、眼科測定装置1の制御動作を図7に基づいて説明する。なお、以下の説明では、白内障手術によってIOLを挿入した後の被検者(患者)の眼屈折力を測定する場合を例に挙げる。
【0047】
(ステップS1:患者番号取得)
まず、検者は、操作部76を操作して被検者の患者番号を入力する。制御部70は、操作部76からの操作入力を受け付け、被検者の患者番号を取得する。これによって、制御部70は、どの患者の他覚値を測定するかを認識する。なお、検者は、バーコードリーダ等の機器を利用して患者番号を入力してもよい。
【0048】
(ステップS2:IOL情報取得)
制御部70は、被検者の患者番号を取得すると、患者番号に基づいてIOL情報を取得する。例えば、制御部70は、患者番号を管理サーバー900に送信し、IOL情報を要求する。管理サーバー900は、制御部70から患者番号を受信すると、患者番号に紐づくIOL情報を読み出し、制御部70に送信する。これによって、制御部70は被検眼に挿入されたIOLの種類などの情報を取得する。
【0049】
(ステップS3:アライメント)
次いで、制御部70は、指標投影光学系400が備える点光源を点灯させる。これによって、被検眼Eの角膜にアライメント指標像が投影される。検者は、顔支持部3に顔を固定させて、固視標板302に形成された固視標を観察するよう被検者に指示する。被検眼Eの前眼部には、無限遠と有限遠のアライメント指標像が投影される。被検眼Eの前眼部は、観察光学系500が備える撮像素子502により検出され、前眼部画像が表示部75に表示される。制御部70は、前眼部画像から検出されたアライメント指標の位置関係に基づいて、被検眼Eに対する測定部100のアライメントのずれ量を検出する。制御部70は、検出したずれ量に基づいて駆動部4を制御し、測定部100を3次元的に駆動させて被検眼Eに対するアライメントを行う。もちろん、検者が操作部76を操作することによって、手動でアライメントを行ってもよい。
【0050】
(ステップS4:測定画像取得)
次いで、制御部70は被検眼Eの眼屈折力を測定するための測定画像を取得する。例えば、制御部70は、光源211によって被検眼Eに測定光を照射する。測定光は眼底Efに到達し、眼底Efで反射された後にリングレンズ225を介して撮像素子226に到達する。これによって、撮像素子226は、パターン像(リング像)を測定画像として取得する。取得されたリング像は、メモリ74に記憶される。リング像は、被検眼Eの眼屈折力に応じてサイズまたは形状等が変化する。例えば、被検眼Eが遠視の場合は球面度数に応じて拡大されたリング像が取得され、被検眼Eが近視の場合は球面度数に応じて縮小されたリング像が取得される。また、被検眼Eが乱視の場合、柱面度数に応じて楕円形状となり、乱視軸角度に応じて傾斜したリング像が取得される。
【0051】
(ステップS5:眼屈折力算出)
制御部70は、取得された測定画像に基づいて眼屈折力を算出する。例えば、制御部70は、細線化によって各経線方向におけるリング像の位置を特定する。例えば、リング像の位置は、輝度信号のピーク値や重心位置等を求めることにより特定してもよい。制御部70は、特定したリング像の位置に基づいて、最小二乗法等により楕円フィッティングを行い、近似された楕円の形状から各経線方向の眼屈折力を求める。制御部70は、眼屈折力を求めると、メモリ74に記憶させる。
【0052】
(ステップS6:測定値の補正)
制御部70は、算出された眼屈折力の測定値を補正する。例えば制御部70は、ステップS2において取得したIOLの種類に応じた補正量をメモリ74に記憶された補正テーブルから読み出し、ステップS5において算出した眼屈折力を補正する。例えば、測定値が-0.75Dで補正量が-0.5Dだった場合、測定値から補正量が減算(または加算)され、補正後の測定値は-0.25Dとなる。制御部70は、補正した測定値をメモリ74に記憶させる。
【0053】
(ステップS7:結果出力)
制御部70は、補正した測定値をメモリ74から呼び出し、補正結果として出力する。例えば、制御部70は、補正結果を表示部75に表示させる。図8に示すように、制御部70は、補正前の測定値と補正後の測定値の両方を表示させてもよい。例えば、制御部70は、補正前の球面度数(SPH)、柱面度数(CYL)、乱視軸角度(AXIS)とともに、補正後のSPH、CYL、AXISを表示画面に並べて表示してもよい。また、制御部70は、被検眼に挿入されたIOL情報(例えば、種類など)を画面上に表示させてもよい。もちろん、補正が不要のIOLの場合は、補正結果を表示させなくてもよい。
【0054】
以上のように、本実施例の眼科測定装置1によれば、IOLの種類等に応じて、IOL挿入眼ごとに他覚屈折度数を補正することができるため、従来よりも正確な測定結果を取得できる。
【0055】
なお、前述のように、補正前後の測定値の両方を表示させない場合、表示させた測定値が補正済みか否かを報知してもよい。例えば図9に示すように、制御部70は、測定値が補正済みの場合に測定値の付近に補正マーク701を表示させ、測定値が補正前の場合に補正マーク701を非表示にすることによって、測定値が補正済みか否かを示してもよい。もちろん、制御部70は測定値が補正済みの場合に補正マーク701を非表示にし、測定値が補正前の場合に補正マーク701を表示することによって測定値が補正済みか否かを示してもよい。これによって、表示された測定値が補正済みか否かを容易に把握することができる。なお、検者への報知の方法は、表示部75への表示に限らず、スピーカ、ランプ、プリンタなどを用いて検者に報知してもよい。
【0056】
なお、回折型IOLのずれ量は、被検者の瞳孔径によっても変化する。例えば、被検眼の瞳孔径が大きい場合は球面収差等の影響が出やすく、瞳孔径が小さく近軸光線(光軸の近くを通り、光軸とのなす角度が小さい光線)での測定になる場合は球面収差等の影響が出にくいため、測定値にずれが生じることがある。したがって、制御部70は、例えば測定時の前眼部画像を解析することによって被検眼の瞳孔径を取得し、瞳孔径の大きさに基づいて測定値の補正量を調整してもよい。
【0057】
なお、角膜曲率半径によってIOLへの光線の入射角が変化する場合も測定値がずれることがあるため、制御部70は、被検眼の角膜曲率半径によって測定値の補正量を調整してもよい。
【0058】
なお、以上の実施例では、主に回折型の多焦点IOLの挿入眼について説明したが、他のIOLが挿入されている場合も、予めメモリ74に補正データを記憶させておくことで、測定された他覚値を容易に補正することができる。例えば、図10に示すように、屈折度数が領域(例えば、遠用部W1と近用部W2)ごとに異なる分節型のIOLが挿入されている場合、屈折度数が遠/近で分割された測定値の平均が算出されるため、遠用度数としてはSPHが小さく、CYLが発生した度数として算出される。このため、制御部70は、この屈折度数のずれ量に応じて予めメモリ74に記憶させておいた補正量に基づいて遠用度数(SPH,CYL,AXIS)を補正してもよい。もちろん、制御部70は、遠用度数だけでなく近用度数(近方を見るための屈折度数)を算出してもよい。この場合、メモリ74は、遠用度数を算出するための補正量と、近用度数を算出する補正量をそれぞれ記憶してもよい。なお、分節型のIOLの場合、被検眼に挿入されたIOLの向き(IOLの光軸回りの回転角度)によって乱視の方向が変化する。したがって、制御部70は、IOLの向きに応じて設定された補正量に基づいて、CYL,AXISを補正してもよい。
【0059】
なお、以上の説明において、制御部70は、表示部75によって測定値を出力させたが、これに限らない。例えば、制御部70は、外部メモリ(例えば、USBメモリ等)への保存、別装置への送信、プリンタ等を用いた印刷などによって出力してもよい。
【0060】
なお、以上の実施例では、制御部70が患者番号に基づいて管理サーバー900からIOL情報を自動的に取得するものとしたが、検者がIOL情報を手動で入力するようにしてもよい。例えば制御部70は、IOL選択画面を表示部75に表示させてもよい。IOL選択画面は、被検者に挿入されているIOLの種類などを選択するための画面である。IOL選択画面には、例えば、様々な種類のIOLが表示され、検者は被検眼Eに挿入されたIOLを選択する。これによって、管理サーバー900等と接続されていない状態であっても、被検眼に挿入されたIOLの情報を取得することができ、これに基づいて眼屈折力の測定値を適切に補正することができる。
【0061】
なお、メモリ74に記憶されたIOL情報(IOLの種類など)と、それに対応する補正量を、後で追加できるようにしてもよい。例えば、検者が操作部76を操作することによって、IOL情報と補正量を新規に登録できるようにしてもよい。この場合、制御部70は、検者によって入力されたIOL情報と補正量をメモリ74に記憶させる。もちろん、制御部70が管理サーバー900等の外部記憶装置からIOL情報と補正量の更新情報を取得し、メモリ74の情報を自動で更新するようにしてもよい。
【0062】
なお、以上の実施例において、補正量は眼科測定装置1のメモリ74に記憶されるものとしたが、これに限らない。例えば、制御部70は、測定値を補正する際に、管理サーバー900等の外部記憶装置から被検者のIOLに応じた補正量を取得してもよい。
【0063】
なお、観察光学系500によって撮影される前眼部画像は、徹照像であってもよい。徹照像は、例えば眼底反射光によって瞳孔内を照明することによって撮影された瞳孔内画像である。この場合、制御部70は、徹照像に基づいてIOLの種類を判定してもよい。例えば、制御部70は、徹照像の輝度分布を解析し、輝度変化が生じている位置に基づいてIOLの構造を検出することで、IOLの種類を判定してもよい。制御部70は、例えば、徹照像に基づいて判定したIOLの種類に応じた補正量を自動的に取得してもよい。
【0064】
なお、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施例の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
70 制御部
74 メモリ
75 表示部
76 操作部
100 測定部
200 測定光学系
300 固視標光学系
400 指標投影光学系
500 観察光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10