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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】画像形成方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/22 20060101AFI20231017BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20231017BHJP
   G03G 8/00 20060101ALI20231017BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G03G15/22 103Z
G03G15/22 101Z
G03G15/01 Z
G03G8/00
G03G15/20 505
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019233119
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021101228
(43)【公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 美千代
(72)【発明者】
【氏名】平本 隆一
(72)【発明者】
【氏名】松島 香織
(72)【発明者】
【氏名】峯 知子
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-178452(JP,A)
【文献】特開2013-022891(JP,A)
【文献】特開2013-246377(JP,A)
【文献】特開2019-005965(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/22
G03G 15/01
G03G 8/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に配置された樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う工程と、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる工程と、を有し、
前記軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる工程が、粉体の配向された配向部材を画像と接触させることで粉体を転写させることにより行われる、画像形成方法。
【請求項2】
さらに記録媒体上に樹脂製画像を形成する工程を有する請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記樹脂製画像が、電子写真方式で形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う工程が、軟化剤の供給によって行われることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段と、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段と、を含み、
前記軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段が、粉体の配向された粉体保持部を有する、画像形成装置。
【請求項6】
画像データに基づいて前記記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段と、画像データに基づいてなされる軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段と、を含む請求項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
画像データに基づいて前記記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段が、記録媒体上の樹脂製画像を軟化する手段と、さらに画像データに基づいて樹脂製画像の軟化状態を調整する手段と、を含む請求項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記軟化する手段が、軟化剤供給手段を含む請求項のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド印刷市場において、特色印刷、高付加価値印刷の需要が高まっている。中でも、メタリック印刷やパール印刷に関する要望は特に大きく、多種多様な検討が行われてきた。
【0003】
その方法の一つとして、トナーを接着層として利用し、金属箔、樹脂箔を転写する方法が検討されてきた。たとえば、特許文献1では、トナー画像を形成し、トナー部にのみ転写箔を接着する方法が提案されている。この方法では、画像の一部のみに箔を転写する場合、残りの箔はすべて無駄になるという問題があった。また、ミラー調とグリッター調など複数のメタリック表現を印刷する場合、それぞれ別の箔を用意する必要があった。
【0004】
一方で、トナー中に光輝性顔料を添加する検討も行われてきた。たとえば、特許文献2では、光輝性顔料をトナーに含有させることで、必要な部分にのみメタリック画像を形成する方法が提案されている。しかし、この方法では、要求されるメタリック感、パール感には到達していない。
【0005】
これらの問題を解決するため、特許文献3で熱溶融性材料からなる画像上に塗料粉体を付着させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平01-200985号公報
【文献】特開2014-157249号公報
【文献】特開2013-178452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に開示されている画像形成方法では、メタリック画像部分とソリッド画像部分を同一記録媒体上に形成するためには、2種類以上の離れた熱特性を有する熱溶融性材料を使用する必要があった。一方で、同じまたは近い熱特性の熱溶融性材料を用いるには、ソリッド画像部と加飾下地部を同時に形成してしまうと、ソリッド画像部にも加飾材料が付着してしまうため、メタリック画像部分を先に印字したのちにソリッド画像部分を出力する方法が知られている。この方法では、工程の増加だけでなく、メタリック画像とソリッド画像が細かく入り組んでいるような画像は、位置合わせがむずかしく、著しく品位が低下する問題があった。上記ソリッド画像部分は、メタリック画像やパール画像等の加飾が施されていない樹脂製画像部分である。樹脂製画像は、電子写真方式やインクジェット法により形成された、主成分が樹脂であるトナーやインク等で形成された画像である。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、工程の増加を抑え、加飾画像(メタリック画像)とソリッド画像が細かく入り組んでいるような画像でも品位の低下を防止し得る画像形成方法、および当該画像形成方法を実施できる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は以下の手段により解決されるものである。
【0010】
1.記録媒体上に配置された樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う工程と、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる工程と、を有する画像形成方法。
【0011】
2.さらに記録媒体上に樹脂製画像を形成する工程を有する上記1に記載の画像形成方法。
【0012】
3.前記樹脂製画像が、電子写真方式で形成されることを特徴とする上記1または2に記載の画像形成方法。
【0013】
4.軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる工程が、粉体の配向された配向部材を画像と接触させることで粉体を転写させることにより行われることを特徴とする上記1~3のいずれか1つに記載の画像形成方法。
【0014】
5.樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う工程が、軟化剤の供給によって行われることを特徴とする上記1~4のいずれか1つに記載の画像形成方法。
【0015】
6.記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段と、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段と、を含む画像形成装置。
【0016】
7.画像データに基づいて前記記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段と、画像データに基づいてなされる軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段と、を含む上記6に記載の画像形成装置。
【0017】
8.画像データに基づいて記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段が、記録媒体上の樹脂製画像を軟化する手段と、さらに画像データに基づいて樹脂製画像の軟化状態を調整する手段と、を含む上記7に記載の画像形成装置。
【0018】
9.前記軟化する手段が、軟化剤供給手段を含む上記6~8のいずれか1つに記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行うことにより、樹脂製画像の一部を選択的に軟化させ、軟化した部分にのみ粉体が選択的に付着することで、同一紙面上に加飾画像(メタリック画像等)とソリッド画像を出力することが可能である。また、加飾画像部(メタリック画像部等)とソリッド画像部が細かく入り組んでいるような画像において位置ずれが発生しても、目立ちにくい画像を形成することが可能である。その結果、工程の増加を抑え、加飾画像(メタリック画像等)とソリッド画像が細かく入り組んでいるような画像でも品位の低下を防止することができる画像形成方法、および当該画像形成方法を実施できる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1Aは、記録媒体S上に形成された樹脂製画像の一部である加飾下地部上に供給された粉体の摺擦前の状態を模式的に示す図である。図1Bは、少量の軟化剤を、記録媒体S上に形成された樹脂製画像の一部である加飾下地部に供給した当該加飾下地部上の粉体の摺擦後の状態を模式的に示す図である。図1Cは、中程度の軟化剤を、記録媒体S上に形成された樹脂製画像の一部である加飾下地部に供給した当該加飾下地部上の粉体の摺擦後の状態を模式的に示す図である。図1Dは、多量の軟化剤を、記録媒体S上に形成された樹脂製画像の一部である加飾下地部に供給した当該加飾下地部上の粉体の摺擦後の状態を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態の画像形成装置のブロック図である。
図4】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成として、薄層形成転写方式に用いられる部分加飾形成部からなる画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図5】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成として、押圧方式に用いられる部分加飾形成部からなる画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図6】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成として、画像上摺擦方式に用いられる部分加飾形成部からなる画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図7】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成として、樹脂製画像を軟化剤で軟化後、加飾下地部以外の部分を加熱して軟化剤を揮発させることで加飾下地部のみを軟化剤で軟化する部分加飾形成部からなる画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図8】本発明の一実施形態の画像形成装置の構成として、画像上摺擦方式(または押圧方式)を変形又は変更した形態に用いられる部分加飾形成部からなる画像形成装置の構成を模式的に示す図である。
図9】画像形成装置の制御の一例を示すフローチャートである。
図10図10Aは、実施例1で試みたメタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像を模式的に示す図である。図10Bは、画像データ1で表される黒塗りの樹脂製画像(黒色トナー画像)を模式的に示す図である。図10Cは、画像データ2で表される樹脂製画像の一部(加飾下地部;メタリックに加飾したい部分:黒塗り部)を模式的に示す図である。図10Dは、画像データ3で表される樹脂製画像(黒色トナー画像)のうちソリッド画像部(非加飾下地部;黒塗り部)と加飾下地部(白色部)を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。さらに、本明細書において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で行う。
【0022】
[I]画像形成方法
本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、記録媒体上に配置された樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う工程(本明細書中、単に「部分軟化工程」とも称する)と、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる工程(本明細書中、単に「粉体付着工程」とも称する)と、を有するものである。かかる構成を有することにより、上記した発明の効果を有効に発現することができる。本発明の画像形成方法では、さらに記録媒体上に樹脂製画像を形成する工程(本明細書中、単に「樹脂製画像形成工程」とも称する)を有してもよい。これにより、例えば、オンデマンド印刷と加飾印刷とを組み合わせることで、樹脂製画像の形成から加飾画像の形成まで一連の操作を連続かつ制御して行うことができ、加飾画像部とソリッド画像部が細かく入り組んでいるような画像においても位置ずれを防止し、高品位な画像を形成することができる点で優れている
本発明の画像形成方法および画像形成装置により上記した発明の効果が得られるのは、下記のような作用機構によると考えられる。なお、下記の作用機構は推測によるものであり、本発明は下記作用機構に何ら制限されるものではない。
【0023】
これまでの樹脂製画像上に粉体を付着させる画像形成方法においては、ホットプレートや熱ローラを用いた記録媒体上に形成された樹脂製画像の全面加熱や、ワイヤーバー塗布、スプレー塗布の手法を用いた記録媒体上に形成された樹脂製画像の全面軟化が用いられており、意図的に樹脂製画像に軟化特性の差をつけていない限りは加飾したくない部分もすべて一様に加飾されてしまうという問題があった。
【0024】
特許文献3では、ソリッド部を形成するトナーと加飾部を形成するトナーの熱特性に差をつけ、全面を一様に加熱した際も加飾部のみが軟化するように工夫する必要があり、加飾部専用のトナーが必要であった。
【0025】
本発明では、記録媒体上に配置された樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行うことができるように、記録媒体上に加飾画像部の下地となる樹脂画像部(選択的に軟化させる部分)と、ソリッド画像部となる樹脂画像部(選択的に軟化させずに画像のまま残しておく部分)と、を(予め)同時に形成したものを用いるようにしたものである。こうすることで、特許文献3のような熱特性に大きな差のある専用のトナーを用いることなく、形成した樹脂製画像のうち加飾画像部の下地の樹脂画像部のみに軟化状態を調整する処理を行うことで部分的に軟化させ、軟化した箇所にのみ加飾用の粉体を付着させることで高品位な加飾が行えることを見出したものである。
【0026】
また、特許文献1のミラー調とグリッター調など複数のメタリック表現を印刷する場合、それぞれ別の箔を用意する必要があったとする問題についても、以下により解消できることが分かった。即ち、本発明では、樹脂製画像の一部(加飾下地部)の軟化状態によって、扁平形状の粉体の加飾下地部への侵入量を変えることができる。その結果、軟化度合いの弱い加飾下地部の内部には粉体は侵入できず、表面に並んだ状態で付着し、ミラー調の画像が得られる。一方で、軟化度合いの強い加飾下地部の場合は、加飾下地部の内部に粉体が侵入できるため、粉体の付着角度がランダムとなり、グリッター調の画像が得られる。またミラー調とグリッター調の間の金属感(質感)は、軟化度合いの調整によって、連続的に変化させることが可能となる。なお、樹脂製画像のうち、加飾画像部の下地の樹脂製画像(樹脂画像部)を「加飾下地部」ともいう。
【0027】
以下、各工程について説明する。
【0028】
(1)樹脂製画像形成工程
本発明の一実施形態に係る画像形成方法では、部分軟化工程および粉体付着工程の前に、さらに記録媒体上に樹脂製画像を形成する工程(樹脂製画像形成工程)を有していてもよい。本発明の画像形成方法では、樹脂製画像形成工程を行うことなく、別途、記録媒体上に樹脂製画像が形成されたものを用意しておいて、部分軟化工程および粉体付着工程を行ってもよい。これは、個人や印刷業者が通常の画像形成装置で記録媒体上に樹脂製画像を形成されたものを用意し、加飾加工業者(別の印刷業者)で、個人や印刷業者から持ち込まれた記録媒体上に樹脂製画像を形成されたものを本発明の部分加飾可能な画像形成装置を用いて、加飾加工として部分軟化工程および粉体付着工程を行う場合などが挙げられるが、これに制限されるものではない。好ましくは、一連の工程を行うことができる画像形成装置を用いて、樹脂製画像形成工程から部分軟化工程、粉体付着工程までを順次行うのがよい。これは、同じ画像形成装置内で、加飾部の下地の樹脂製画像およびソリッド画像部の樹脂製画像の形成と、その後の加飾部の下地の部分軟化とを行うことができるので、軟化させる箇所の位置ずれを防止するための工夫(例えば、オンデマンド印刷機で実用化されている高度な用紙搬送技術等により加飾(軟化)位置の正確性を高める工夫等)を当該装置内に組み入れることができるためである。
【0029】
樹脂製画像形成工程では、記録媒体上に樹脂製画像を形成する。記録媒体上に樹脂製画像を形成する方法については、特に制限されない。たとえば、樹脂および任意で含まれる他の成分(例えば、着色剤、離型剤等)を適当な溶媒に溶解させて得た溶液を、記録媒体の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。この場合、上記溶液の塗布は、一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布等の方法により行うことができる。
【0030】
また、記録媒体上に樹脂製画像を形成する方法としては、従来公知の方法、例えば、乾式の電子写真方式、湿式の電子写真方式、インクジェット法といった印刷方式で記録媒体上に印刷された樹脂製画像を形成する方法を適宜利用することができる。インクジェット方式および電子写真方式による画像の形成は、それぞれ公知の画像形成装置によって行うことができる。すなわち、樹脂製画像は、上記した各種塗布方法や電子写真方式やインクジェット法などの公知の画像形成方法によって記録媒体上に形成されたものであればよいが、電子写真方式で形成されたトナー画像であることが好ましく、乾式電子写真方式によって形成されたトナー画像であることがより好ましい。電子写真方式、特に乾式の電子写真方式による樹脂製画像(トナー画像)は、オンデマンド印刷が可能で、かつ他の印刷方式と比較して樹脂製画像を構成する樹脂層の厚みを厚くできるためである。例えば、加飾画像部形成用の粉体(加飾粉体ともいう)で、扁平粒子が用いられる場合、当該加飾粉体は、樹脂製画像を構成する樹脂層の上に乗った状態(扁平粒子(扁平面)が、樹脂層表面に対して、平行な状態)で付着するか、一部、または全部が樹脂の中に入り込んだ状態で固定される。樹脂層が薄い場合、扁平粒子が斜めに樹脂層に入ったときに、固定力が弱いため、樹脂層表面に対して、略平行にしか付着させることができない。そのため、加飾画像部の質感をミラー調・パール調・グロス調からグリッター調・マット調まで自在にコントロールするのが難しく、乱反射の少ないパール調、ミラー調またはグロス調の質感を表現する用途に適している。一方で、樹脂層が厚いと、扁平粒子が樹脂層表面に対して平行でない斜めの状態でも固定できるようになり、結果的に、乱反射の多いグリッター感の高い画像を形成することができるようになる。即ち、加飾画像部の質感をミラー調・パール調・グロス調からグリッター調・マット調まで自在にコントロールすることができるようになる点で好ましい。
【0031】
一方、加飾粉体に扁平でない粒子を用いた場合も、樹脂層が厚い場合は粉体の埋め込み状態を変化させることができるなど、加飾画像部の質感をコントロールできるようになる点で好ましい。
【0032】
本発明の効果をより得られやすいという観点から、上記樹脂製画像は、上記したように電子写真方式、特に乾式の電子写真方式によって形成された樹脂製画像であると好ましい。電子写真方式では、感光体表面の静電潜像パターンへトナー粒子を付着させてトナー像を形成し、当該トナー像を紙などの記録媒体に転写し、定着することで、記録媒体上に樹脂製画像(トナー画像)を形成する。ここで、トナー画像を形成するトナー粒子は、一般に、結着樹脂としての熱可塑性樹脂を含む。よって、電子写真方式で形成された樹脂製画像(トナー画像)は、部分軟化工程により軟化(または溶融)しやすいことから、本発明の効果をより顕著に発揮することができると考えられる。
【0033】
さらに、本発明の一形態に係る画像形成方法において、上記樹脂製画像は、記録媒体上に定着される前の画像(未定着画像)であってもよいし、定着された画像(定着画像)であってもよい。樹脂製画像を構成する樹脂層の表面に加飾粉体を選択的に配置しやすく、選択的に配置された加飾部が十分に光沢性(任意の質感)を有する画像を形成しやすいという観点から、樹脂層は、記録媒体上に定着された定着画像であると好ましい。すなわち、本発明の一形態に係る画像形成方法は、樹脂製画像形成工程として、定着画像形成工程を含んでいると好ましい。定着画像は、その表面が均一かつ平滑に整えられている。そのため、選択的に軟化した樹脂層中への加飾粉体の埋没が抑制され、光沢性の高い画像を形成することができる。また、加飾粉体の埋没を抑制しつつ選択的に軟化した樹脂層の表面に加飾粉体を配置することができるため、多量の加飾粉体を使用する必要がなく、経済性の観点からも好ましい。
【0034】
定着画像形成工程は、公知の定着画像形成装置、特には、電子写真方式を利用した画像形成装置によって行うことができる。定着画像形成方法の一例として、トナー像が転写された記録媒体に、定着手段にて熱および圧力を加え、記録媒体上のトナー像を記録媒体上に定着させる方法が採用されうる。当該方法により形成されるトナー画像を樹脂製画像(樹脂層)として、本発明の一形態に係る画像形成方法を行うことにより、上述のように、選択的に軟化した樹脂層中への加飾粉体の埋没が抑制でき、光沢性に優れた画像を形成することができる。
【0035】
[記録媒体]
本発明の一形態に係る画像形成方法において、記録媒体は、その上に樹脂製画像を形成、配置することができれば特に制限はない。記録媒体としては、特に制限はなく、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙またはコート紙などの塗工された印刷用紙、水溶紙、市販されている和紙やはがき用紙等の紙類;ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等のプラスチックフィルム;布、皮革などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、記録媒体の色は特に限定されず、種々の色の記録媒体を使用することができる。
【0036】
一方で、記録媒体は、部分軟化工程で、軟化剤供給による部分軟化を用いる場合、軟化剤に対して耐性(すなわち、耐薬品性;詳しくは耐溶剤性)を有するものが好ましい。なお、ここでいう「耐溶剤性」とは、軟化剤供給前と後とで、記録媒体の表面状態の変化、化学変化、物理的変化のいずれもが小さいことを意味する。
【0037】
また、記録媒体は、部分軟化工程で、光照射を用いる場合、照射される光に対して耐性(すなわち、耐光性)を有するものが好ましい。なお、「耐光性」とは、光、特に紫外光の照射前と後とで、記録媒体の表面状態の変化、化学変化、物理的変化のいずれもが小さいことを意味する。
【0038】
樹脂製画像を構成する樹脂層が熱可塑性樹脂または熱溶融性樹脂を含む形態である場合には、記録媒体は、耐熱性を有するものであると好ましい。このような記録媒体を用いることにより、樹脂層および当該樹脂層上に配置される粉体が安定的に保持され、得られる加飾画像とソリッド画像の耐久性が向上する。なお、「耐熱性」とは、部分軟化工程で、光照射を用いる場合、光が照射された際に到達する最も高い記録媒体の表面温度に対し、記録媒体の表面状態の変化、化学変化、物理的変化のいずれもが小さいことを意味する。また、部分軟化工程で、サーマルヘッドでの部分加熱を用いる場合、熱に対して耐性(すなわち、耐熱性)を有するものが好ましい。また、部分軟化工程で、軟化剤供給による部分軟化を用いる場合、部分軟化工程では耐熱性は必要ないが、記録媒体上に樹脂製画像を形成する際に、「耐熱性」が求められることから、記録媒体は、耐熱性を有するものであると好ましいといえる。
【0039】
[樹脂製画像]
本発明の一形態に係る画像形成方法において、樹脂製画像は、記録媒体上に形成、配置されたものである。この樹脂製画像は、トナーやインク(固形分)からなる樹脂層により構成されている。この樹脂層は、ソリッド画像および加飾画像部の下地画像を形成する観点から、単層構成でもよいし、2層以上積層されていてもよい。記録媒体と樹脂製画像(樹脂層)との組み合わせは特に制限されず、任意のものから適宜、組み合わせることができる。
【0040】
[樹脂層]
樹脂製画像(ソリッド画像および加飾画像部の下地画像)を構成する樹脂層は、樹脂を含み、部分軟化工程における軟化方法(または手段)によって選択的に軟化するものであれば特に制限されない。この樹脂層は、樹脂以外にも、着色剤、分散剤、界面活性剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤等の他の成分を含んでいてもよい。
【0041】
樹脂層に含まれる樹脂は、当該樹脂層を選択的に軟化することにより軟化または可塑化するものであればよい。かような樹脂として、たとえば、サーマルヘッドでの部分加熱や光照射により光熱変換で生じる熱によって、可塑化する熱可塑性樹脂や溶融する熱溶融性樹脂が挙げられる。また、軟化剤の部分供給によって軟化する熱可塑性樹脂や熱溶融性樹脂を用いるのが好ましい。このように、樹脂層に含まれる樹脂は、サーマルヘッドでの部分加熱や光照射により光熱変換で生じる熱または軟化剤で軟化する必要があるため、熱可塑性樹脂を含むことが必要である。一方、硬化性樹脂は、軟化と硬化を行き来できないため単独では使用できない。また、かような樹脂は、記録媒体に樹脂製画像(樹脂層)を形成させる際に、乾式電子写真方式などでは、トナーを熱溶融して記録媒体に定着させる観点からも熱可塑性樹脂や熱溶融性樹脂を用いるのが好ましい。
【0042】
また、樹脂製画像を構成する樹脂層は、有色であってもよく、無色であっても良い。また透明であっても良いし、不透明であっても良い。有色の樹脂層は、上記した着色剤により、3原色から作り出すことができる任意の有色や黒色に着色できる。無色の樹脂層は、上記した着色剤を用いなければよい。不透明の樹脂層は、樹脂に不透明なものを用いてもよいし、透明性や光沢を消すために粉状の樹脂添加剤(酸化チタンなど)を用いてもよい。透明な樹脂層は、樹脂に透明なものを用い、透明性や光沢を消すために粉状の樹脂添加剤(酸化チタンなど)を用いなければよい。
【0043】
熱可塑性樹脂は、熱可塑性を有する公知の樹脂を用いることができ、特に制限されない。また、熱溶融性樹脂は、熱溶融性を有する公知の樹脂を用いることができ、特に制限されない。
【0044】
熱可塑性樹脂または熱溶融性樹脂の例としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂、オレフィン樹脂(環状オレフィン樹脂を含む)などのビニル樹脂;ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ハロゲン含有樹脂(ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂など)、ポリスルホン樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ポリビニルエステル樹脂(ポリ酢酸ビニルなど)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリビニルアルコール樹脂およびこれらの誘導体樹脂、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴムなど)などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂は、単独でもまたは2種以上組み合わせても使用することができる。なお、本明細書中、「(メタ)アクリル」とは、「アクリルおよび/またはメタクリル」を示すものである。
【0045】
熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂は、共重合体であってもよい。熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂が共重合体である場合の共重合体の形態は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、交互共重合体のいずれでもよい。
【0046】
また、熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂としては、合成品を用いてもよいし市販品を用いてもよい。これらの熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂を合成するための重合方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法、塊状重合法、乳化重合法、気相重合法等を挙げることができる。また、重合時に使用するラジカル重合開始剤や触媒も特に制限はなく、例えば、アゾ系またはジアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤といったラジカル重合開始剤;過酸化物触媒、チーグラー-ナッタ触媒、メタロセン触媒といった重合触媒;等を用いることができる。
【0047】
部分軟化工程における樹脂製画像を構成する樹脂層の表面状態(部分軟化状態)を制御しやすいという観点から、熱可塑性樹脂および熱溶融性樹脂は、上述の樹脂の中でも、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、スチレン-アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選択される少なくとも一種を含んでいると好ましく、スチレン-アクリル樹脂を含むとより好ましい。
【0048】
本発明でいうスチレン-アクリル樹脂とは、少なくともスチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを用いて、重合を行うことにより形成されるものである。ここで、スチレン単量体とは、CH=CH-Cの構造式で表されるスチレンの他、スチレン構造中に公知の側鎖や官能基を有する構造のものも含まれる。
【0049】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体とは、エステル結合を有する官能基を側鎖に有するものである。具体的には、CH=CHCOOR(Rはアルキル基)で表されるアクリル酸エステル単量体の他、CH=C(CH)COOR(Rはアルキル基)で表されるメタクリル酸エステル単量体などのビニル系エステル化合物が含まれる。
【0050】
また、スチレン-アクリル樹脂には、上述したスチレン単量体および(メタ)アクリル酸エステル単量体のみで形成された共重合体の他に、一般のビニル単量体(オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルケトン類、N-ビニル化合物類など)をさらに用いて形成される共重合体も含まれる。
【0051】
さらに、スチレン-アクリル樹脂には、スチレン単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体およびその他の一般のビニル単量体の他、多官能性ビニル単量体や、側鎖にイオン性解離基(カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基など)を有するビニル単量体を用いて形成される共重合体も含まれる。かようなビニル単量体の例としては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸などがある。
【0052】
樹脂層に含まれる樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に制限されないが、35~70℃の範囲が好ましく、40~60℃の範囲がより好ましい。かような範囲であれば、部分軟化工程における樹脂層の表面状態(部分軟化状態)が制御しやすくなり、加飾表現の質感の調節が容易となるという利点がある。
【0053】
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、樹脂を構成する単量体の種類の選択や、単量体の共重合比(質量比)および分子量の調節等によって、制御することができる。たとえば、スチレン-アクリル樹脂を例にとると、単量体全体に対し、ガラス転移温度の低いn-ブチルアクリレートの共重合比(質量比)を大きくすることによりガラス転移温度(Tg)を低くすることができる。また、ガラス転移温度の高いスチレンの共重合比(質量比)を大きくすることにより、ガラス転移温度(Tg)を高くすることができる。
【0054】
(樹脂のガラス転移温度(Tg)の測定方法)
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、Tg測定装置、例えば、「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)を用いて測定することができる。「ダイヤモンドDSC」を用いる場合には、まず、測定試料(樹脂)3.0mgをアルミニウム製パンに封入し、「ダイヤモンドDSC」のサンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用する。そして、昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第1昇温過程、冷却速度10℃/分で200℃から0℃まで冷却する冷却過程、および昇温速度10℃/分で0℃から200℃まで昇温する第2昇温過程をこの順に経る測定条件(昇温・冷却条件)によってDSC曲線を得る。この測定によって得られたDSC曲線に基づいて、その第2昇温過程における第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(Tg)とする。他のTg測定装置を用いる場合にも、その測定装置の仕様、取り扱い説明書に準じてTgを求めればよい。
【0055】
樹脂層に含まれる樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、好ましくは2,000~1,000,000であり、より好ましくは5,000~100,000であり、特に好ましくは10,000~50,000である。
【0056】
(樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法)
装置「HLC-8320GPC」(東ソー株式会社製)およびカラム「TSKguardcolumn」1本および「TSKgelSuperHZ-M」3本(いずれも東ソー株式会社製)を連結して用いる。カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2mL/分で流す。測定試料(樹脂)は、濃度1mg/mLになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。当該溶液の調製は、超音波分散機を用いて、室温にて5分間処理を行うことにより行う。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得、この試料溶液10μLを上記のキャリア溶媒とともに装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出する。単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成された検量線に基づいて、測定試料の分子量分布を算出する。検量線は東ソー株式会社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A-500」、「F-1」、「F-10」、「F-80」、「F-380」、「A-2500」、「F-4」、「F-40」、「F-128」、「F-700」の10サンプルから作製する。なお、試料解析におけるデータ収集間隔は300msとする。
【0057】
樹脂層中における樹脂の含有量は特に制限されないが、部分軟化工程において樹脂層の表面側を部分軟化させ、樹脂層の表面状態(部分軟化状態)を制御しやすくするという観点から、樹脂層の総質量に対して60~100質量%であると好ましく、75~95質量%であるとより好ましい。
【0058】
一方、樹脂層が樹脂と共に他の成分(例えば、着色剤、離型剤等)を含む場合、当該他の成分の含有量は特に制限されないが、部分軟化工程において樹脂層の表面側を部分軟化させ、樹脂層の表面状態(部分軟化状態)を制御しやすくするという観点から、樹脂層の総質量に対して3~40質量%であると好ましく、5~25質量%であるとより好ましい。
【0059】
上記他の成分としての着色剤は、特に制限されず、公知の染料および顔料を用いることができる。かような着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなど;C.I.ソルベントイエロー19、同44などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17などの顔料;C.I.ソルベントレッド1、同49などの染料;C.I.ピグメントレッド5、同122などの顔料;C.I.ソルベントブルー25、同36などの染料;C.I.ピグメントブルー1、同7などの顔料が挙げられるが、これらに制限されない。
【0060】
また、上記他の成分としての離型剤は、特に制限されず、公知の離型剤を用いることができる。かような離型剤としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナウバワックス、モンタンワックス、ベヘニルベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1、18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックス等が挙げられるが、これらに制限されない。
【0061】
樹脂層の厚さは、粉体が保持されるのであれば、特に制限されない。樹脂層の厚さは、均一であってもよいし、不均一であってもよい。樹脂層の厚みの目安として、扁平粉体の場合は保持される粉体厚みよりも厚く、扁平でない粉体の場合は粉体の大きさより厚いことが好ましい。例えば、樹脂層がトナーにより形成される場合(樹脂製画像を構成する樹脂層が電子写真方式によるトナー画像である場合)、記録媒体上のトナーの付着量が、0.1g/m~25.0g/mであると好ましく、1.0g/m~20.0g/mであるとより好ましい。
【0062】
(2)部分軟化工程
本発明の一実施形態に係る画像形成方法では、記録媒体上に配置された樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う工程(部分軟化工程)を有するものである。
【0063】
記録媒体上に配置された樹脂製画像のうちの一部(加飾画像部の下地の樹脂画像部のみ)に軟化状態を調整する処理を行うことで選択的(部分的)に軟化する手段としては、特に制限はなく、熱を用いるもの、光を用いるもの、軟化剤を用いるものなどが挙げられる。具体的には、従来の加熱ローラー等の全面加熱手段に代えて、サーマルヘッドでの部分加熱や光照射による軟化、軟化剤の部分供給による軟化手段が挙げられる。オンデマンド印刷やインクジェット方式による軟化剤供給、サーマルヘッドによる部分加熱、部分光照射による部分溶融すべてにおいて、グレースケールの画像データを用いて、同一画像上に複数の軟化状態を混在させることができる。
【0064】
(1)サーマルヘッドでの部分加熱による軟化
サーマルヘッドは、微小発熱体を整列配置し、画像データに対応した通電により、選択的に発熱体を加熱するという機構であるため、樹脂製画像の任意の場所を選択的に加熱することで軟化させることができる。こうしたサーマルヘッドでの部分加熱による軟化では、サーマルヘッドを記録媒体上の樹脂製画像表面に触れる(圧接する)ように配置することで、記録媒体上に配置された樹脂製画像のうちの一部(加飾画像部の下地の樹脂画像部のみ)を選択的に加熱(軟化)することができる。なお、サーマルヘッドを固定し、記録媒体を搬送させながら部分加熱を行ってもよいし、搬送中の記録媒体を所定の位置で停止させ、サーマルヘッドを走査(移動)させながら部分加熱(軟化)を行ってもよい。また、サーマルヘッドは、記録媒体全体をカバーするように配置してもよいし、記録媒体の一部(例えば、媒体の搬送方向に対し垂直な方向(幅方向))をカバーするように配置してもよいなど、特に制限されるものではない。
【0065】
(2)光照射による光熱変換を利用した部分加熱による軟化
本形態の光照射では、光熱変換を利用して樹脂製画像の一部(加飾下地部)の表面を軟化させる。この際、樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面に配置された粉体の配向は、樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面の状態(軟らかさ)に依存して変化する。したがって、光の照射量(積算光量)に依存して、樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面の状態を制御することにより、粉体の配向を制御することができ、粉体による反射特性を種々変更できる。よって、光の照射量、照射範囲を制御することにより、同一の粉体で異なる質感の光沢感を有する画像を形成することができる。
【0066】
また、光照射により加飾の質感および加飾範囲を制御することができるため、異なる質感の光沢感を付与するために加飾材やトナーを変更する必要がなく、異なる質感の光沢感を有する画像を簡便な方法で形成することができ、また、画像形成装置の構成や制御が簡便になる。
【0067】
さらに、本発明の一形態に係る画像形成方法では、光照射により樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面の状態を制御するため、加飾画像(粉体を配置する部分)とソリッド画像(非加飾画像;粉体を配置しない部分)とが細かく入り組んでいるような画像でも品位を低下させることなく、同一紙面上に描画、加飾することができる。加えて、同一紙面上において、樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面の状態を微細に、且つ連続的に変えることも可能となるため、より表現力に優れた画像形成が可能となるという利点も有する。
【0068】
こうした光照射による光熱変換を利用した部分加熱による軟化では、光照射装置を記録媒体上の樹脂製画像表面よりも上部(非接触)に配置することで、記録媒体上に配置された樹脂製画像のうちの一部(加飾画像部の下地の樹脂画像部のみ)を選択的に光照射し、照射された光エネルギーが熱変換されることで光照射部のみを部分加熱することができる。なお、光照射装置を固定し、記録媒体を搬送させながら光照射による部分加熱による軟化を行ってもよいし、搬送中の記録媒体を所定の位置で停止させ、光照射装置を走査(移動)させながら光照射による部分加熱を行ってもよい。また、光照射装置は、記録媒体全体をカバーするように配置してもよいし、記録媒体の一部(例えば、媒体の搬送方向に対し垂直な方向(幅方向))をカバーするように配置してもよいなど、特に制限されるものではない。
【0069】
(3)軟化剤の部分供給による軟化
軟化剤の部分供給による軟化では、軟化剤供給手段、例えば、インクジェット方式によりインクジェットヘッドを記録媒体上の樹脂製画像表面よりも上部(非接触)に配置し、記録媒体上に配置された樹脂製画像のうちの一部(加飾画像部の下地の樹脂画像部のみ)に軟化剤(インク)を選択的に噴射(供給)することで、軟化剤供給部のみを部分軟化することができる。なお、インクジェットヘッドを固定し、記録媒体を搬送させながら軟化剤供給による部分軟化を行ってもよいし、搬送中の記録媒体を所定の位置で停止させ、インクジェットヘッドを走査(移動)させながら軟化剤供給による部分軟化を行ってもよい。また、インクジェットヘッドは、記録媒体全体をカバーするように配置してもよいし、記録媒体の一部(例えば、媒体の搬送方向に対し垂直な方向(幅方向)をカバーするように配置してもよいなど、特に制限されるものではない。
【0070】
(4)樹脂製画像を軟化剤で軟化後、加飾下地部以外に対する部分加熱による加飾下地部の軟化
さらに、本実施形態では、記録媒体上に配置された樹脂製画像のうちの一部(加飾画像部の下地の樹脂画像部;加飾下地部ともいう)に軟化状態を調整する処理を行う手段としては、記録媒体上の樹脂製画像の一部(加飾下地部)を含む部分域又は全面を軟化する手段と、さらに画像データ(粉体処理する位置を選択したデータ)、例えば、粉体処理する位置に対応する複数の画素からなるページ画像データに基づいて樹脂製画像の軟化状態を調整する手段と、を有するものであってもよい。記録媒体上の樹脂製画像の一部(加飾下地部)を含む部分又は全面を軟化する手段としては、例えば、軟化剤を樹脂製画像の一部(加飾下地部)を含む部分域又は全面表面全体に供給して軟化させる手段が挙げられる。さらに画像データに基づいて樹脂製画像の軟化状態を調整する手段としては、前記軟化させる手段で軟化させた部分域又は全面のうち、加飾画像部の下地の樹脂画像部以外の部分(非加飾下地部ともいう)を、画像データに基づいて、サーマルヘッドや光照射により部分加熱する手段(軟化状態を調整する手段)が挙げられる。当該部分加熱する手段(軟化状態を調整する手段)により非加飾部の軟化剤を加熱して部分乾燥(硬化)させることで、樹脂製画像のうちの一部(加飾下地部)が選択的に軟化した状態となるように調整することができる。軟化剤を樹脂製画像の一部(加飾下地部)を含む部分域又は全面に供給する手段には、上記したインクジェット方式や溶液の塗布に用いる技術を適用することができる。具体的には、インクジェット方式、一般的に用いられるグラビア塗布、ロール塗布、ブレード塗布、エクストルージョン塗布、ディップ塗布、スピンコート等の方法により行うことができる。均一に供給でき、さらに樹脂製画像と非接触状態で軟化剤を供給できるインクジェット方式を用いるのが好ましい。サーマルヘッドや光照射による部分加熱手段は、上記したサーマルヘッドや光照射による部分軟化手段を適用することができる。
【0071】
上記した記録媒体上に配置された樹脂製画像のうちの一部(加飾下地部)に軟化状態を調整する処理を行う手段のうち、軟化時間の調整しやすさの観点から、軟化剤の部分供給による軟化手段を用いるのが好ましい。
【0072】
以下、好適な軟化手段である、軟化剤の部分供給による軟化手段につき、詳しく説明する。
【0073】
軟化剤を樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面に部分供給すると、加飾下地部の樹脂層を構成する樹脂が部分的に溶解するか、または、樹脂が膨潤することにより、加飾下地部の樹脂層表面側が軟化する。軟化した樹脂層(軟化樹脂部)は、軟化により生じた接着力(粘着力)を有するため、軟化樹脂部に供給された粉体を接着する。このように、本実施形態の画像形成方法は、樹脂製画像の一部(加飾下地部)に軟化剤を部分供給することにより、軟化した樹脂層に生じる接着力を利用して樹脂層(軟化樹脂部)に粉体を接着させている。したがって、記録媒体が変形したり、粉体(加飾体)に予期せぬ劣化、変色または変形が生じたりするような温度への加熱なしで画像の一部を選択的に加飾することが可能となるため、耐熱性の低い記録媒体や粉体を用いた加飾画像の形成が可能となる。
【0074】
[軟化剤]
本発明の一形態に係る画像形成方法の部分軟化工程に用いられる軟化剤は、樹脂製画像(樹脂層)を軟化させることができれば特に制限はない。軟化剤の例には、炭素数4以上のアルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、またはそれらを含む溶液などが含まれ、具体的には、アジピン酸イソブチル、酢酸エチル、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、またはそれらを含む溶液などが含まれる。それぞれ単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。軟化効果のない物質と混合して用いることもできる。樹脂製画像を構成する樹脂の種類にもよるが、樹脂製画像がトナー画像の場合は、水;エタノール、イソプロピルアルコール等の炭素数3以下の低級アルコール類などが軟化効果のない物質として挙げられる。軟化効果のない物質と混合することで、軟化状態の調整、軟化時間の調整、軟化剤の嵩増しなどの効果が得られる。
【0075】
[軟化剤を部分供給する手段]
軟化剤の部分供給は、軟化剤が樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面に部分供給できれば特に制限されない。軟化剤を部分供給する手段としては、上記したように、インクジェット方式による部分供給(塗布)などを用いることができる。部分軟化工程の前に粉体付着工程を行うと、加飾下地部表面と粉体とが隙間なく密着した箇所では、後から軟化剤を供給しても粉体表面に供給されるだけで密着箇所の加飾下地部を軟化できず密着箇所の粉体も接着できず、記録媒体を出力後、密着箇所の粉体が剥離し、加飾ムラが生じる場合があるため、部分軟化工程は、樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面に粉体を供給する工程(粉体付着工程)の前に行うことが好ましい。サーマルヘッドによる部分加熱や光照射による軟化の場合も、部分軟化工程の前に粉体付着工程を行うと、サーマルヘッドが接着されていない粉体と接触するため、粉体がサーマルヘッドに引きずられたり(粉体のスジができたり)、粉体が加熱されて劣化したり、粉体下部の加飾下地部に十分に熱が伝わらないなどの問題が生じやすくなったり、光照射の場合も部分軟化工程の前に粉体付着工程を行うと、光照射により光が粉体に照射され、粉体下部の加飾下地部までは十分に熱が伝わらないなどの問題が生じやすいという観点からも部分軟化工程は、樹脂製画像の一部(加飾下地部)表面に加飾粉体を供給する工程(粉体付着工程)の前に行うことが好ましい。
【0076】
軟化剤は、樹脂製画像の加飾下地部内に設定した部分領域ごとに供給量が調整されて、樹脂製画像の加飾下地部内に複数の軟化状態を存在させるように供給されてもよい。軟化状態が異なる領域間では、供給された粉体の付着状態が異なり、結果として得られる加飾効果(特に質感)が異なるため、樹脂製画像の加飾下地部内に複数の加飾効果(異なる質感)をつくり出すことができるようになる。
【0077】
また、軟化剤の供給量は、加飾下地部の樹脂層(樹脂の種類)、粉体、所望の加飾効果等に応じて任意に調整されればよく特に制限されない。例えば、軟化剤は所定の膜厚(加飾下地部表面に形成される軟化剤の液膜又は液滴の厚さ)になるように調整されて部分供給されてもよい。供給された軟化剤の膜厚は、特に制限されないが、例えば、0.1μm~10μmが好ましく、0.5μm~5μmがさらに好ましく、1μm~3μmがさらに好ましい。また、例えば、ミラー調またはパール調の加飾効果を得るという観点から、軟化剤の膜厚は0.7μm~1.3μmが好ましく、グリッター調の加飾効果を得るという観点から、軟化剤の膜厚は2μm~4μmが好ましく、ミラーまたはパール調の加飾効果と、グリッター調の加飾効果との間の加飾効果を得るという観点から、軟化剤の膜厚は1.3μmより多く2μmより少ないことが好ましい。供給された軟化剤の膜厚は、軟化剤が揮発する前に、好ましくは供給直後(供給から10秒以内)に、キーエンス社製レーザー顕微鏡VK-250の膜厚測定モードで測定することができる。
【0078】
また、軟化剤の供給量は、インクジェット方式による部分供給では、上記した軟化剤の膜厚調整に代えて、1ドットあたりの供給量を調整してもよい。この場合、軟化剤の供給量は、例えば、1ドットあたり1~20plが好ましく、1~10plがより好ましく、1~5plがさらに好ましい。また、例えば、ミラー調またはパール調の加飾効果を得るという観点から、軟化剤の供給量は、1ドットあたり1~2plが好ましく、グリッター調の加飾効果を得るという観点から、軟化剤の供給量は、1ドットあたり4~6plが好ましく、ミラーまたはパール調の加飾効果と、グリッター調の加飾効果との間の加飾効果を得るという観点から、軟化剤の供給量は、1ドットあたり2~4plが好ましい。ここで、本明細書中、1ドットのサイズは、12μmとする。軟化剤の供給量の調整により、樹脂製画像表面から軟化剤が浸透する深さ(供給量に比例)を調整することができ、上記したように異なる質感を表現することができる。さらに軟化剤の供給量の調整により軟化時間を調整することができる。これにより、軟化剤供給により樹脂製画像が接着性を有する時間を調整することで、粉体が付着されるまで樹脂製画像の接着性を保持させることができる。また後続の記録媒体が出力されるまでに軟化した樹脂製画像を乾燥(硬化)させことで連続して加飾印刷することができる。
【0079】
(樹脂製画像の補助的な加熱)
本発明の一形態に係る画像形成方法の部分軟化工程では、樹脂製画像(樹脂層)の一部(加飾下地部)の軟化状態を調整するために軟化剤の部分供給に加えて、記録媒体上の樹脂製画像を記録媒体(樹脂製画像が形成されていない下面)側から間接的かつ補助的に加熱してもよい。樹脂製画像の間接的かつ補助的な加熱は、記録媒体の温度が当該記録媒体に変形が生じる温度より低くなるように、または粉体の温度が当該粉体に劣化、変色もしくは変形が生じる温度よりも低い温度となるように行う。樹脂製画像の間接的かつ補助的な加熱は、軟化剤が部分供給された後に行われてもよいし、軟化剤が部分供給される前に行われてもよいし、軟化剤の部分供給と同時でもよい。樹脂製画像の間接的かつ補助的な加熱により樹脂製画像の一部(加飾下地部)の軟化を促進したり、軟化後の乾燥を促進するなど、軟化時間の調整に利用することができる。記録媒体(樹脂製画像が形成されていない下面)側から間接的かつ補助的に加熱するには、適当な加熱手段、例えば、ヒーター(図8の加熱部(ヒーター75)参照)などを用いることができる。
【0080】
(3)粉体付着工程
本発明の一実施形態に係る画像形成方法では、軟化した樹脂製画像(加飾下地部)の上に粉体を付着させる工程(粉体付着工程)を有するものである。本形態における粉体付着工程は、特に制限はなく、例えば、(1)特開2013-178452号公報に記載されている方法(粉体を供給する方法)や(2)平滑な転写部材上に配向させたものを樹脂製画像上に転写させるなどの方法などを用いることができる。
【0081】
軟化した樹脂製画像である加飾下地部の上に加飾粉体を付着させる方法としては、具体的には、上記(1)の方法として、樹脂製画像全面に加飾粉体を供給し、軟化した加飾下地部に加飾粉体を付着(接着)させる方法が挙げられる。この方法では、軟化していない樹脂製画像(非加飾下地部)上の未接着粉体を回収する(取り除く)方法を併用するのが好ましい。あるいは上記(2)の方法として、予め粉体が配向された配向部材を、樹脂製画像と接触させることで、軟化した加飾下地部にのみ粉体を転写させる方法が挙げられる。この場合、軟化していない樹脂製画像(非加飾下地部)に粉体が転写されないため、上記(1)のような軟化していない樹脂製画像(非加飾下地部)上の未接着粉体を回収する(取り除く)方法を併用しなくてもよい。但し、本形態では、上記した手段に制限されるものではない。
【0082】
[粉体]
粉体付着工程で用いられる粉体に関しては、求められる最終画像によって適宜選択をすることが可能である。例えば、ゴールド、シルバーなどのメタリック画像であれば金属光沢を有する粉体、画像の質感変更であれば、ガラスフレーク、ガラスビーズ、蓄光画像であれば蓄光顔料、エンボス画像であれば、熱膨張性マイクロカプセルなどの熱応答性材料など各種粉体が使用できる。これらの粉体は、部分軟化工程により部分軟化した樹脂製画像の加飾下地部表面に付着するものであれば特に制限されない。加飾粉体は粒子が集合したものであり、実質的に軟化剤に溶解せず、自身だけで記録媒体に定着する能力を有しないものである。粉体は、部分軟化した樹脂製画像(加飾下地部)に供給され、接着されることにより、当該粉体および樹脂製画像の加飾下地部の色合いに応じた特殊な外観を当該樹脂製画像に付与する。樹脂製画像の加飾下地部の色合いがブラック(黒色)で、加飾粉体が金属光沢を有する粉体(ゴールド粉体やシルバー粉体)の場合、人の目には、加飾部が金属光沢のあるゴールドやシルバーの画像として映る。また、樹脂製画像の加飾下地部の色合いがマゼンタで、加飾粉体が金属光沢を有する粉体(シルバー粉体)の場合、人の目には、加飾部がマゼンタパール風の画像として映る。また、樹脂製画像の加飾下地部の色合いがクリア(無色透明)で、加飾粉体が金属光沢を有する粉体(シルバー粉体)の場合、人の目には、加飾部が金属光沢のあるシルバーの画像として映る。さらに、樹脂製画像の加飾下地部の色合いがブラック(黒色)で、加飾粉体がシルバー(銀被覆ガラス末)の場合、人の目には、加飾部が金属光沢の質感を有するシルバーの画像として映る。これらは、人の視覚効果を利用したものであり、加飾粉体と樹脂製画像の加飾下地部の色合いとの関係により、メタリック風の画像やパール風等、求められる最終画像に応じて適宜付与することができる。
【0083】
上記粉体の粒子は、磁性粒子であってもよいし、非磁性粒子でもよい。上記粒子の形状は、球形粒子であってもよいし、非球形粒子であってもよい。また、粉体は、合成品であってもよいし市販品であってもよい。さらに、粉体は、異なる二種以上の材料の粒子の混合品であってもよい。なお、粉体はトナーではない。
【0084】
また、上記粉体は、粒子が被覆されたものでもよい。例えば、粒子は金属粒子であり、当該金属とは異なる金属、金属酸化物または樹脂でその表面が被覆されている金属粒子であってもよい。また粒子は金属酸化物粒子であり、金属、当該金属酸化物とは異なる金属酸化物または樹脂でその表面が被覆されている金属酸化物粒子であってもよい。さらに、粒子は樹脂粒子であり、金属、金属酸化物または当該樹脂とは異なる樹脂でその表面が被覆されている樹脂粒子であってもよい。また、粉体は、金属を板状に延展させて粉砕したもの(非球形粒子)やそれを種々の材料で被覆したもの、樹脂フィルム(片)やガラス(フレークやビーズ)に金属を蒸着または湿式コーティングしたもの(非球形粒子)などでもよい。質感を自在に調整し得る観点からは、球形粒子よりも非球形粒子、特に扁平な粒子形状が好ましい。メタリック画像を得るためには、金属粒子は金属を含有することが好ましいが、金属の含有量は0.2質量%以上100質量%以下が好ましい。
【0085】
非球形粒子は、球形粒子以外の粒子である。球形粒子は、その断面形状または投影形状の平均円形度が0.970以上である粒子である。なお、当該平均円形度は、公知の方法によって求めることができ、あるいはカタログ値であってもよい。
【0086】
非球形粒子は、扁平な粒子形状を有することが、樹脂製画像(樹脂層)の表面に沿って粉体を配向させて付着させる観点から好ましい。非球形粒子の「扁平な粒子形状」とは、非球形粒子における最大長さを長径、当該長径に直交する方向における最大長さを短径、長径および短径の両方に直交する方向の最少長さを厚み、とするときに、厚みに対する短径の比率(短径/厚み)が5以上である形状であること、を意味する。
【0087】
非球形粒子の厚みは、非球形粒子の配向した付着による外観効果を十分に発現させる観点から、0.2~10μmであることが好ましく、0.2~3.0μmであることがより好ましい。厚みが小さすぎると、樹脂製画像(樹脂層)の表面に付着した非球形粒子の長径方向および短径方向を含む非球形粒子の平面方向が樹脂製画像(樹脂層)の表面方向に実質的に沿う良好な配向状態が十分に形成されないことがある。非球形粒子の厚みが大きすぎると、画像をこすった時に粉体が取れてしまうことがある。
【0088】
非球形粒子の材料は、制限されない。当該非球形粒子は、最終画像の所望の外観としてパール調またはミラー調からグリッター調の外観を発現させる観点から、金属粒子であることが好ましく、あるいは金属酸化物粒子であることが好ましい。
【0089】
非球形粉体の例には、サンシャインベビー クロムパウダー、オーロラパウダー、パールパウダー(いずれも株式会社GGコーポレーション製)、ICEGEL ミラーメタルパウダー(株式会社TAT製)、ピカエース MCシャインダスト、エフェクトC(株式会社クラチ製、「ピカエース」は同社の登録商標)、PREGEL マジックパウダー、ミラーシリーズ(有限会社プリアンファ製、「PREGEL」は同社の登録商標)、Bonnailシャインパウダー(株式会社ケイズプランイング製、「BON NAIL」は同社の登録商標)、メタシャイン(日本板硝子株式会社製、同社の登録商標)、エルジーneo(尾池工業株式会社製、同社の登録商標)、アストロフレーク(日本防湿工業株式会社製、岡崎一の登録商標)、アルミニウム顔料(東洋アルミニウム株式会社製)、Pоwdal(SCHLENK社製)が含まれる。
【0090】
粉体は熱応答性材料からなる粒子を含んでもよい。熱応答性材料とは、熱による刺激をきっかけに膨張、収縮、変形などの形状の変化、顕色、消色、変色などの色の変化を起こす材料である。熱応答性材料の例には、熱膨張性マイクロカプセル、感温カプセルなどが含まれる。熱膨張性マイクロカプセルの例には、マツモトマイクロスフェアー(松本油脂製薬株式会社製)、クレハマイクロスフェアー(株式会社クレハ製)などが、感温カプセルの例には、感温染料カプセル(株式会社日本カプセルプロダクツ製)が含まれる。
【0091】
熱応答性材料は樹脂製画像の表面に供給された後、例えば、後述の配向させる工程の後に加熱されてもよい。熱応答性材料は加熱されると、上記のように膨張などの熱応答を起こす。これにより、例えば、エンボス調の加飾効果などが得られる。
【0092】
粉体は蓄光顔料からなる粒子を含んでもよい。蓄光とは、光(電磁波)(例:可視光やUV光など)を蓄えて、光照射を止めても発光する物質の性状をいう。なお、蓄光性を持つ物質が暗所で発光する際の光を「燐光(りんこう)」という。蓄光顔料とは、明るい状況下で蓄えた光を暗闇で一定時間継続的に放出する顔料として知られている。蓄光顔料の例には、高輝度蓄光顔料 α-Vega(エルティーアイ株式会社製)、無機蓄光顔料LCG1S(シンロイヒ株式会社製)などが含まれる。
【0093】
粉体の供給は、粉体の性状に応じて公知の装置を用いて行うことが可能であり、例えば、特許文献2に記載されている粉体供給手段を用いて行うことが可能である。粉体の供給は、上記したように部分軟化工程後に行えばよい。部分軟化工程前に行う場合には、上記したような問題が生じやすくなるためである。
【0094】
本実施形態では、粉体付着工程において、粉体の配向を変えることで加飾部の質感を任意に調整することができる。粉体を配向させるには、粉体を摺擦する処理(単に、「摺擦処理」または「配向処理」ともいう)を行えばよいし、粉体を配向させない場合には、上記したような配向処理を行うことなく樹脂製画像の一部に粉体を付着させればよい。
【0095】
(押圧方式;粉体を配向させない方式)
粉体を配向させない場合には、配向処理を行うことなく樹脂製画像の一部に粉体を付着させればよい。詳しくは、部分軟化工程において、樹脂製画像を構成する樹脂層の一部(加飾下地部)を、粉体を付着できる接着力(粘着力)を持つ状態とする。次に、図1Aに示すように、粉体付着工程において、前記樹脂層の一部または全面に扁平状の粒子からなる粉体Pを供給する。このとき、図1Aに示すように、樹脂製画像を構成する樹脂層100上に粉体Pが無秩序に供給される。この状態で押圧することで、図1Dに示すように、樹脂層100中の部分軟化した加飾下地部100aのみに粉体Pの一部が入り込み、無秩序な状態のまま付着する。そのため形成された加飾部は、粉体Pが配向されず無秩序な状態である。その結果、グリッター調の表現が可能となる(実施例13参照)。なお、樹脂層全面に扁平状の粒子からなる粉体Pを供給した場合には、加飾下地部以外に供給され接着(付着)されていない余剰な粉体は、押圧後、適当な方法、例えば、粘着ローラーで除去または回収すればよい。上記押圧方式において、軟化により接着性を有する樹脂層の一部(加飾下地部)のみに粉体を供給するのが好ましい。余剰の粉体を回収する必要がないためである。また再利用、コスト低減、ひいては環境保護等の観点からは余剰の粉体を回収し再利用するのが好ましい。回収ローラーに付着した粉体は、水や溶媒などを噴霧して粘着性を弱めたのち、ブレードなどを用いて掻き落として再利用してもよいが、これらの方法に制限されるものではない。
【0096】
(画像上摺擦方式;画像上の粉体を配向処理する方式)
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、部分軟化工程において、樹脂製画像を構成する樹脂層の一部(加飾下地部)を、粉体を付着できる接着力(粘着力)を持つ状態とする。次に粉体付着工程において、前記樹脂層の一部または全面に扁平状の粒子からなる粉体を供給する(図1A参照)。画像上摺擦方式においては、ここで樹脂層の一部または全面に接している粉体を摺擦する処理を行う。図1Bに示すように、樹脂製画像(樹脂層)100の一部または全面の粉体Pを摺擦すると、樹脂層100の表面上に供給された粉体Pが摺擦によって、樹脂層100の表面に平らに配向して付着される。そのため形成された加飾部は、粉体Pが配向された状態である。その結果、金属光沢をもつミラー調、パール調の表現が可能となる(実施例2参照)。上記画像上摺擦方式においても、軟化により接着性を有する樹脂層の一部(加飾下地部)のみに粉体を供給するのが好ましい。余剰の粉体を回収する必要がないためである。
【0097】
一方で、樹脂層100をさらに軟化した状態(例えば、軟化剤の供給量を増やして樹脂層内部(深部)まで軟化剤が浸潤した状態)にすると、同じように摺擦処理を行っても、図1Dに示されるように、粉体Pの一部が樹脂層100の内部に入り込んだ状態となる。その結果、グリッター調の表現が可能となる(実施例3参照)。
【0098】
なお、図1Cは、樹脂層100の軟化状態が図1Bの場合と図1Dの場合との間である場合であり、軟化剤の供給量により調節することができる。その結果、ミラー調またはパール調と、グリッター調との間の表現が可能となる。
【0099】
(薄層形成転写方式;粉体の配向された配向部材を、部分軟化後の樹脂製画像と接触させて粉体を転写する方式)
次に、本発明の一実施形態に係る画像形成方法は、部分軟化工程において、樹脂製画像を構成する樹脂層の一部(加飾下地部)を、粉体を付着できる接着力(粘着力)を持つ状態とする。粉体付着工程において、薄層形成転写方式では、粉体の配向された配向部材を画像と接触させることで粉体を転写させることにより行われることを特徴とするものである。詳しくは、予め、粉体の配向された配向部材を作製しておく。例えば、粘着によって粉体を保持する粉体保持面を有する粉体保持部材を用い、前記粉体保持面上に扁平状の粒子からなる粉体を供給し、この粉体を摺擦処理することで、粉体の配向された配向部材を作製する。次に、粉体の配向された配向部材を、部分軟化後の樹脂製画像と接触させて粉体をより強い接着力を持つ加飾下地部に転写させる。これにより、図1Bに示すように、樹脂層100の一部(加飾下地部)表面に粉体Pが平らに配向した状態で付着され加飾画像101が形成される。そのため形成された加飾部(加飾画像または加飾画像部ともいう)は、粉体Pが配向された状態である。その結果、金属光沢をもつミラー調、パール調の表現が可能となる(実施例1参照)。上記薄層形成転写方式においては、軟化により接着力を持つ加飾下地部のみに粉体が転写(付着)されることから、余剰の粉体が生じないことから、回収処理も不要である。
【0100】
粉体保持部材は粉体を保持できるものであれば特に制限はない。粉体保持部材の形状は、例えば、シート、ローラー、ベルトなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。粉体保持部材に使用する材料としては、変形追従性のある素材が好ましく、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、アクリルゴムなどが挙げられるが、これらに限定されない。部分軟化を軟化剤で行う場合は、軟化剤によって溶解、膨潤が起こらないもの、部分軟化を加熱によって行う場合は、耐熱性のある素材を使用することが好ましい。表面は平滑であることが好ましいが粉体保持性、離型性、粉体の配向性などを考慮して適宜変更することが可能である。また、種々の目的で表面処理、コーティングなどを行うことができる。
【0101】
(粉体を配向させる処理)
粉体を配向させる処理は、樹脂製画像を構成する樹脂層や粉体保持部材の粉体保持面に接している粉体の向きを揃えるようにする処理であり、粉体の向きを揃えることができれば、当該配向処理は特に制限されない。配向は、例えば、摺擦すること、風圧を利用することによって行うことができ、粉体が磁性粒子を含むものであれば、磁力を利用することによって行うこともできる。以下、配向処理として「摺擦」による処理を例にとり説明する。
【0102】
[摺擦]
摺擦とは、記録媒体上の樹脂製画像(樹脂層)の表面や粉体保持部材の粉体保持面に接触した摺擦部材を当該表面に沿って樹脂製画像や粉体保持部材に対して相対的に移動させることを意味する。摺擦には押圧が伴うことが、樹脂製画像や粉体保持部材の表面に粉体を配向させる観点、および、樹脂製画像や粉体保持部材に対する粉体の接着を強める観点から好ましい。「押圧」とは、樹脂製画像や粉体保持部材の表面に対して交差する方向(例えば垂直方向)に樹脂製画像や粉体保持部材の表面を押すことを意味する。
【0103】
摺擦において、樹脂製画像や粉体保持部材に対する摺擦部材の相対的な速度は、遅すぎると樹脂製画像や粉体保持部材の表面に沿う粉体の配向が不十分となり、最終画像におけるミラー調やパール調などの加飾部の外観を表現しにくくなるが、グリッター調に近い加飾部の外観を表現することができるため特に制限されるものではない。速すぎると粉体の付着が不十分となることがあり、樹脂製画像や粉体保持部材の表面に沿う粉体の配向が不十分となり、最終画像におけるミラー調やパール調などの加飾部の外観の明瞭さが低下することがあるが、マゼンタパール調などのように下地画像(マゼンタ等)が加飾部全体の色調等に寄与するような加飾部外観を表現することができるため特に制限されるものではない。樹脂製画像や粉体保持部材の表面における粉体の付着と配向とを十分に行うことで、ミラー調やパール調などの加飾部の外観を表現する観点からは、相対的な速度差は、5mm/秒~500mm/秒であることが好ましく、70mm/秒~130mm/秒であることがより好ましい。
【0104】
また、摺擦において、樹脂製画像や粉体保持部材の表面における摺擦部材の接触幅は、狭すぎると摺擦部材が樹脂製画像や粉体保持部材の表面に沿って移動する際に粉体の向きのばらつきが生じやすく、樹脂製画像や粉体保持部材に付着する粉体の配向が不十分になることがあり、接触幅が広すぎると、記録媒体の搬送が難しくなる。樹脂製画像や粉体保持部材の表面に付着する粉体の所期(所望)の配向性および記録媒体の搬送性を十分に実現する観点から、接触幅は、樹脂製画像や粉体保持部材に対する摺擦部材の移動方向の長さであり、記録媒体の全幅をカバーする長さであればよいが、1mm~1000mmであることが好ましく、1mm~200mmであることがより好ましい。
【0105】
また、押圧力が低すぎると、粉体の付着強度が弱くなることがあり、高すぎると、樹脂製画像や粉体保持部材自体が乱れることがあり、また、樹脂製画像や粉体保持部材を搬送や回転する際のトルクが高くなることがある。樹脂製画像や粉体保持部材の搬送や回転の円滑な実現かつ省力化の観点、樹脂製画像に形成されている画像や粉体保持部材の粉体保持面に配向される粉体の保持の観点、および、粉体の付着強度を高める観点から、押圧力は、樹脂製画像や粉体保持部材の表面に対して1~30kPaであるが好ましく、7~13kPaであることがより好ましい。
【0106】
摺擦部材は、回転部材であってもよいし、往復運動する部材または固定されている部材のような非回転部材であってもよい。摺擦部材は、略水平な表面を有する樹脂製画像やドラム状の回転面(粉体保持面)を有する粉体保持部材の表面に接して水平方向に、当該表面に対して相対的に移動可能な部材であってもよいし、略水平な表面を有する樹脂製画像やドラム状の回転面(粉体保持面)を有する粉体保持部材の表面に接して、当該表面に対して垂直な方向を回転軸として相対的に回転する部材であってもよいし、上記樹脂製画像や粉体保持部材の表面に接する回転自在なローラーであってもよい。
【0107】
摺擦部材は、樹脂製画像や粉体保持部材を押圧しながらその表面が樹脂製画像(樹脂層)や粉体保持部材の表面に対して相対的に移動自在に構成される。摺擦部材による摺擦は、例えば、搬送されている樹脂製画像や回転されている粉体保持部材を固定された摺擦部材で摺擦することによって、あるいは、樹脂製画像の搬送速度や粉体保持部材の回転速度よりも遅い速度で回転するローラーで摺擦することによって、あるいは、樹脂製画像の搬送方向や粉体保持部材の回転方向とは逆の方向に回転するローラーで摺擦することによって、あるいは、樹脂製画像の搬送方向や粉体保持部材の回転方向に対してその回転軸が斜めとなる向きに配置された回転自在なローラーで摺擦することによって、あるいは、樹脂製画像や粉体保持部材の表面上を往復運動する部材で摺擦することによって、あるいは、樹脂製画像や粉体保持部材の表面に垂直な方向を回転軸として回転する部材で摺擦することによって行うことが可能である。
【0108】
よって、摺擦部材は、樹脂製画像(樹脂層)や粉体保持部材の表面を押圧しながら樹脂製画像や粉体保持部材に対して相対的に異なる方向へ移動自在に構成されていればよい。
【0109】
また、摺擦部材は、柔軟性を有することが好ましい。摺擦部材の柔軟性は、例えば、押圧時に、樹脂製画像や粉体保持部材の表面の形状に追従可能な程度に摺擦部材の表面が変形する程度の柔らかさ(変形追従性)である。このような柔軟性を有する摺擦部材の例には、スポンジおよびブラシが含まれる。
【0110】
[II]画像形成装置
本発明の一実施形態に係る画像形成装置は、記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段と、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段と、を含む。好ましくは、画像データに基づいて前記記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段と、画像データに基づいてなされる軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段と、を含む。また、前記の「画像データに基づいて記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段」は、記録媒体上の樹脂製画像を軟化する手段と、さらに画像データに基づいて樹脂製画像の軟化状態を調整する手段と、を含むものであってもよい。上記した「画像データ」としては、例えば、粉体処理する位置に対応する複数の画素からなるページ画像データなどが挙げられる。すなわち、上記した「画像データに基づいて」の部分は、軟化させたい部分や軟化度合いのデータを画像データとして、インクジェットヘッドや、サーマルヘッド、光照射装置に入力することを指している。軟化時間、軟化状態の調整は、軟化剤を用いる場合、軟化剤の射出量、軟化剤の種類、軟化剤の配合比、軟化剤と軟化効果のない物質との配合比などで調整することが可能である。サーマルヘッドの場合は、加熱時間、加熱温度など、光照射の場合は、照射時間、照射強度などによって樹脂製画像層の温度を調整することで調整することが可能である。その中で、画像データとして入力して出力の変更ができるものは、軟化剤の射出量、サーマルヘッドの加熱温度、光の照射強度などである。また上記の「前記樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段(部分軟化手段ともいう)」は、上記画像形成方法で説明したように、サーマルヘッドや光照射等の部分加熱手段、軟化剤供給手段等が挙げられるが、軟化時間の調整しやすさの観点から、軟化剤供給手段を有するのが好ましい。以下、好適な部分軟化手段である、軟化剤供給手段を用いた画像形成装置につき、詳しく説明する。
【0111】
本発明の一実施形態に係る画像形成装置について図2図3を用いて説明する。画像形成装置1は、図2図3に示されるように、制御部50、樹脂製画像形成部60、部分加飾形成部70、およびデータ受付部80を有する。制御部50は、各種処理を実行する。樹脂製画像形成部60は、記録媒体上に樹脂製画像(樹脂層)を形成する部分である。部分加飾形成部70は、樹脂製画像形成部60で形成された樹脂製画像の表面を処理して加飾する部分である。データ受付部80は、樹脂製画像、および加飾画像位置を記述した画像データ等、各種データや入力データを受け付ける。
【0112】
樹脂製画像形成部60は、公知のカラープリンタと同様の構成を有している。樹脂製画像形成部60は、画像読取部、画像形成部、用紙搬送部、給紙部、および定着部27を有する。
【0113】
画像読取部は、光源11、光学系12、撮像素子13、および画像処理部14を有する。
【0114】
画像形成部は、イエロー(Y)トナーからなる画像を形成する画像形成部、マゼンタ(M)トナーからなる画像を形成する画像形成部、シアン(C)トナーからなる画像を形成する画像形成部、ブラック(K)トナーからなる画像を形成する画像形成部、および、中間転写ベルト26を有する。なお、Y、M、CおよびKは、トナーの色を表している。
【0115】
画像形成部は、回転体としての感光体ドラム21、ならびにその周囲に配置された帯電部22、光書込部23、現像装置24およびドラムクリーナー25を有している。中間転写ベルト26は、複数のローラーにより巻回され、走行可能に支持されている。
【0116】
用紙搬送部は、送り出しローラー31、さばきローラー32、搬送ローラー33、ループローラー34、レジストローラー35、排紙ローラー36および用紙反転部37を備える。給紙部は、記録媒体Sを収容している複数の給紙トレイ41、42、43を有する。
【0117】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、およびROM(Read Only Memory)を有する。CPUは、ROMに記憶されたプログラムにしたがって、樹脂製画像形成部60の画像読取部、画像形成部、用紙搬送部、給紙部、等の構成要素、および部分加飾形成部70等を制御し、演算結果などをRAMに記憶する。また、制御部50は、外部から受信された印刷データを解析して、ビットマップ形式の画像データを生成し、画像データに基づく画像(加飾下地部およびソリッド画像部)を記録媒体S上に形成する制御を行う。上記プログラムには、部分加飾形成部70における軟化剤の供給位置(加飾下地部)および軟化剤供給量(加飾画像の質感や軟化時間)を調整するためのプログラム、および、摺擦条件(加飾画像の質感)を設定するためのプログラムが含まれている。
【0118】
また、制御部50は、通信部としても機能するデータ受付部80を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で、各種データの送受信を行う。制御部50は、例えば、外部の装置から送信された画像データ、または、データ受付部80が、タッチパネル等を介して受け付けた、形成すべき加飾画像に関する入力されたデータを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて記録媒体Sに画像を形成させる。通信部の機能は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0119】
樹脂製画像形成部60によって形成された樹脂製画像は、部分加飾形成部70に搬送され加飾される。
【0120】
(1)薄層形成転写方式(粉体の配向された配向部材を、部分軟化後の樹脂製画像と接触させて粉体を転写する方式)に用いられる部分加飾形成部の形態
図4に示すように、薄層形成転写方式に用いられる部分加飾形成部70aとしては、記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の一部(加飾下地部)に、例えば、装飾用の粉体であって、光沢を有する粉体Pを配向させて貼り付けることによって加飾画像(例えば、ミラー調やパール調などの画像、加飾部ともいう)101を形成するためのものであり、記録媒体Sの搬送方向xに対して樹脂製画像形成部60の下流側であって、後段に配置されている。このような部分加飾形成部70aは、一例として記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段(部分軟化手段)の1つである軟化剤供給手段として軟化剤供給部91、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段(単に「粉体付着手段」ともいう)として、円筒状の粉体保持部材等からなる粉体保持部93、粉体保持部93の周囲に配置された粉体供給部材等からなる粉体供給部94、摺擦ローラー等の摺擦部材からなる摺擦部95および対向ローラー等の対向部材等からなる対向部96を備え、さらに粉体回収部97、および必要に応じてヒーター等の加熱部(不図示)を備えている。以下、これらの各部材の構成を説明する。なお、ここで用いられる加飾画像形成用の粉体(加飾粉体)の構成については、画像形成方法において説明した通りである。
【0121】
(軟化剤供給部91)
軟化剤供給部91は、樹脂製画像形成部60によって記録媒体Sの主面上に形成された形成された樹脂製画像100の表面の一部(加飾下地部)100aのみに軟化剤90を選択的に供給する。軟化剤供給部91は、軟化剤を供給することができれば特に制限されない。軟化剤供給部91の例には、インクジェットヘッドを備えたインクジェット装置などを用いることができる。
【0122】
粉体供給部94は、樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに粉体Pを供給する。粉体供給手段は、公知の手段を用いることができ、例えば、特許文献3に記載されている粉体供給手段を用いることができる。好ましくは以下に説明する構成である。
【0123】
(粉体保持部93)
粉体保持部93は、円筒状のものであって、駆動モーターによって円筒状の軸を中心として回転するものであり、円筒状の側周表面を粉体保持面93aとしている。この粉体保持部93の粉体保持面93aは、粘着性を有し、次に説明する粉体Pを粘着によって保持する。
【0124】
このような粉体保持面93aは、粘着力(凝着力ともいう)が28kPa以上であることが好ましく、これにより以降の実施例で示されるように粉体Pを良好に保持することが可能である。また粉体保持面93aの粘着力の上限は、軟化剤供給部91による軟化剤の部分供給により樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aが粘着力を発現した場合に、粉体保持面93aから樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに対して粉体が選択的に転写される。したがって、粉体保持面93aの粘着力の上限は、470kPa以下、好ましくは350kPa以下であり、これにより粉体保持面93aから樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに対して粉体を選択的に転写させることが可能である。このような粉体保持面93aを構成する材料としては、一例として、フッ素ゴム、シリコーンゴム、およびウレタンゴムなどが例示できるが、これらのゴム材料に限定されることはなく、粉体を保持することが可能な粘着力を有していれば、他の樹脂材料や金属材料であってもよい。
【0125】
またこのような粉体保持部93は、記録媒体Sの搬送経路上における軟化剤供給部91の下流側で、かつ記録媒体Sにおいて樹脂製画像100が形成された主面側に配置されている。粉体保持部93は、記録媒体Sに向かう側において記録媒体Sの搬送方向xに沿った方向に回転する構成となっている。なお、軟化剤供給部91によって樹脂製画像100の表面の一部(加飾下地部)100aのみに軟化剤90を選択的に供給して軟化させ粘着性を発現させる場合、あるいは、加熱部(ヒーター)(不図示)を備える構成の場合には、粉体保持部93にも熱が伝わるため、粉体保持部93を構成する材料、特に粉体保持面93aを構成する材料は、耐熱性を有することが好ましい。このような材料としては、上述したゴム材料のなかでは、シリコーンゴムが好適に用いられる。
【0126】
(粉体供給部94)
粉体供給部94は、粉体保持部93の粉体保持面93aに粉体Pを供給するためのものであって、円筒状の粉体保持部93の軸方向に沿って設けられている。このような粉体供給部94は、粉体Pを貯蔵する貯蔵容器等からなる貯蔵部94aと、貯蔵部94a内に収容された搬送部材等からなる搬送部94bとを有する。
【0127】
このうち貯蔵部94aは、円筒状の粉体保持部93の粉体保持面93aの軸方向に沿って配置された開口部を有する。
【0128】
また搬送部94bは、例えば、回転する円柱形状のブラシやスポンジ、さらにはスクリュー形状のものなど、粉体Pを粉体保持面93aに搬送(供給)するのに適した形状の部材からなるものである。この搬送部94bは、円筒状の粉体保持部93の回転方向と逆方向に回転することにより、貯蔵部94a内に貯蔵された粉体Pを貯蔵部94aの開口部にまで搬送し、粉体保持部93の粉体保持面93aに粉体Pを供給する。
【0129】
なお、粉体供給部94は、このような構成に限定されることはなく、例えば、貯蔵94a内に貯蔵された粉体Pに、粉体保持部93の粉体保持面93aを直接、接触させる構成のものであってもよい。
【0130】
(摺擦部95)
摺擦部95は、円筒状の粉体保持部93の粉体保持面93aに、粉体供給部94からの粉体Pの供給部分を摺擦することにより、粉体保持部93の粉体保持面93aにおいて粉体Pを配向させるためのものであり、粉体保持部93の回転方向に対して粉体供給部94の下流側に配置されている。またこの摺擦部95は、粉体回収部95aを備えているのが好ましい。
【0131】
この摺擦部95は、円筒形状を有し、粉体保持面93aに当接する状態で配置されたことにより、回転する粉体保持部93の粉体保持面93aを摺擦する構成となっている。また摺擦部95の側周面であって、粉体保持面93aを摺擦する面は、粉体Pを収容するための空隙を有する材料で構成されていることが好ましい。このような材料としては、例えばブラシ、スポンジまたは不織布のような多孔質材料が用いられる。
【0132】
また摺擦部95は、回転する粉体保持部93の粉体保持面93aを摺擦することにより、粘着性を有する粉体保持面93aに供給された粉体Pのうち、粉体保持面93aに粘着していない余分な粉体Pを除去する。この際、摺擦部95の側周面の空隙に、余分な粉体Pを捕捉する。
【0133】
これにより、粘着性を有する粉体保持面93aには、1層分の粉体Pが直接粘着された状態で残されることになる。この際、粉体Pが非球形状であれば、粉体保持面93aにおいて粉体Pが摺擦部95によって摺擦されることにより、粉体保持面93aに対する粉体Pの方向性を揃えることができる。このように、薄層形成転写方式に用いられる部分加飾形成部70aでの上記「粉体の配向された配向部材」は、粉体保持面93aに粉体Pが配向された粉体保持部93が該当する。
【0134】
また摺擦部95は、円筒形状の軸を中心にして回転する構成であることが好ましい。これにより、空隙に捕捉されて収容された粉体Pを回転方向に運搬し続けることができるため、粉体保持面93aと摺擦部95とのニップ部に粉体Pが堆積することがなく、粉体保持面93aから余分な粉体Pを除去する効果が高くなる。またこれにより、摺擦部95による粉体保持面93aの摺擦性を安定化させることが可能である。
【0135】
さらに摺擦部95の回転方向が粉体保持部93の回転方向と同一方向であれば、粉体保持部93に対する摺擦部95の相対速度がより高速化され、摺擦部95によって粉体保持部93の粉体保持面93aをより高速で摺擦することができ、より高い摺擦効果を得ることが可能になる。
【0136】
また、粉体保持部93の粉体保持面93aに対する摺擦部95の押圧力[N]は、1~10kPaが好ましく、1~5kPaがより好ましい。押圧力[N]が1kPa以上であれば、粉体保持部93の軸方向における押圧が安定となる。一方、押圧力[N]が10kPa以下であれば、摺擦部95を回転させるためのトルクが大きくなりすぎることもなく、摺擦部95の駆動ムラの発生を防止し、摺擦部95および粉体保持部93の材料劣化を抑制することができる。
【0137】
また、摺擦部95に設けられた粉体回収部95aは、摺擦部95の側周面に対向して配置され、摺擦部95の側周面の空隙に収容された粉体Pを回収する。このような粉体回収部95aは、エアー吸引方式のものでもよいし、ローラーやブレード形態の部材を摺擦部95の側周面に当接させ、摺擦部95の側周面を構成する材料の復元力によって空隙から粉体Pをはじき出す構成のものであってもよい。
【0138】
摺擦部95に対してこのような粉体回収部95aを設けることにより、摺擦部95による粉体Pの除去効果を持続させることが可能になり、摺擦部95による粉体保持面93aの摺擦性を長期に維持することが可能である。なお、以上のような摺擦部95は、粉体供給部94における搬送部94bを兼ねる構造であってもよい。
【0139】
(対向部96)
対向部96は、粉体保持部93の粉体保持面93aに粘着保持された粉体Pを、記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに転写させるためのものである。この対向部96は、ローラー状のものであり、粉体保持部93との間に記録媒体Sを挟持するニップ部を構成する。これにより、軟化剤供給部91からの軟化剤射出による加飾下地部100aのみへの部分供給によって軟化させて強粘着性を発現した加飾下地部100aに対し、粉体保持部93の粉体保持面93aに配向した状態で粘着保持された粉体Pが当接して押圧され、粉体保持面93aから樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに配向した状態の粉体Pが転写される。即ち、粉体保持面93aが有する粘着性よりも、軟化剤によって軟化させた加飾下地部表面の粘着性の方が、粘着力が非常に強いため、粉体保持面93aに粘着保持された粉体Pは、軟化された加飾下地部の表面に当接して押圧されることで、すべて加飾下地部の表面に転写されることになる。ここで、軟化させた加飾下地部100aの表面の粘着力は、粉体保持面93aの粘着力を上回るように、それぞれの粘着力を調整すればよい。粘着力は、JIS Z 0237:2009に沿って測定することができる。また樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aは、軟化剤供給部91を通過し(この間に軟化剤が供給され)、その後、粉体が転写された後は、供給された軟化剤が経時的に揮発して硬化することになる。かかる硬化によって樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aは接着性(接着固化現象)が発現し、加飾下地部100aに転写された粉体Pが接着保持される。これにより、接着材料としての樹脂等によって構成された樹脂層(例えば、トナー等)からなる樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aの表面に、加飾機能を有する粉体Pが配向した状態で貼り付けられた加飾画像(例えば、ミラー調やパール調等の光沢を有するメタリック画像やパール画像等)101を得ることができる。これにより、同一記録媒体(紙面)上に、加飾画像101とグリッド画像102とを出力(プリントアウト)することができる。
【0140】
(粉体回収部97)
粉体回収部97は、粉体保持部93と対向部96とのニップ部を通過した記録媒体S上の余分な粉体Pを回収するためのものである。この粉体回収部97は、記録媒体Sの搬送経路上における粉体保持部93と対向部96とのニップ部の下流側で、かつ記録媒体Sにおいて樹脂製画像100が形成された側に配置される。ここで、記録媒体S上の余分な粉体Pとは、樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに接着保持されていない粉体Pである。
【0141】
このような粉体回収部97は、例えば、エアー吸引によって粉体Pを吸引する構成のものが例示されるが、これに限定されることはない。
【0142】
(2)押圧方式(粉体を配向させない方式)に用いられる部分加飾形成部の形態
図5に示す押圧方式に用いられる部分加飾形成部70bでは、図4に示す薄層形成転写方式に用いられる部分加飾形成部70aのうち、摺擦部95および粉体回収部95aを用いない以外は、図4に示す構成と同様にしたものである。したがって、図5では、特に断らない限り、図4と同じ構成部材には、同じ符号を付している。
【0143】
詳しくは、図5に示す押圧方式に用いられる部分加飾形成部70bとしては、記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の一部(加飾下地部)に、例えば、装飾用の粉体であって、光沢を有する粉体Pを配向させずに貼り付けることによって加飾画像(例えば、グリッター調の画像)101を形成するためのものであり、記録媒体Sの搬送方向xに対して樹脂製画像形成部60の下流側であって、後段に配置されている。このような部分加飾形成部70bは、一例として記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段(部分軟化手段)の1つである軟化剤供給手段として軟化剤供給部91、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段(単に「粉体付着手段」ともいう)として、摺擦部95および粉体回収部95aを備えることなく、円筒状の粉体保持部材等からなる粉体保持部93、粉体保持部93の周囲に配置された粉体供給部材等からなる粉体供給部94、対向ローラー等の対向部材等からなる対向部96を備え、さらに粉体回収部97、および必要に応じてヒーター等の加熱部(不図示)を備えている。以下、これらの各部材の構成を説明する。なお、ここで用いられる加飾用の粉体の構成については、画像形成方法において説明した通りである。
【0144】
図5に示す部分加飾形成部70bにおいては、軟化剤供給部91、粉体供給部94、粉体保持部93、粉体保持面93a、粉体供給部94、貯蔵部94a、搬送部94b、対向部96および粉体回収部97に関しては、図4に示す薄層形成転写方式に用いられる部分加飾形成部70aで説明したのと同様である。また、摺擦部95および粉体回収部95aは備えていない。
【0145】
そのため、粉体供給部94の搬送部94bが、円筒状の粉体保持部93の回転方向と逆方向に回転することにより、貯蔵部94a内に貯蔵された粉体Pを貯蔵部94aの開口部にまで搬送し、粉体保持部93の粉体保持面93aに粉体Pを供給することで、粘着保持される。
【0146】
次に、対向部96では、粉体保持部93の粉体保持面93aに粘着保持された粉体Pを、記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに転写させる。これにより、軟化剤供給部91からの軟化剤射出による加飾下地部100aのみへの部分供給によって軟化させて粘着性を発現した加飾下地部100aに対し、粉体保持部93の粉体保持面93aに、配向していない状態で粘着保持された粉体Pが当接して押圧され、粉体保持面93aから樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに配向していない状態の粉体Pが転写される。また樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aは、軟化剤供給部91を通過し(この間に軟化剤が供給され)、その後、配向していない状態の粉体Pが転写された後は、供給された軟化剤が経時的に揮発して硬化することになる。かかる硬化によって樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aは接着性が発現し、加飾下地部100aに転写された、配向していない状態の粉体Pが接着保持される。これにより、接着材料としての樹脂等によって構成された樹脂層(例えば、トナー等)からなる樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aの表面に加飾機能を有する粉体Pが配向していない状態で貼り付けられた加飾画像(例えば、グリッター調等の光沢を有する画像等)101を得ることができる。これにより、同一記録媒体(紙面)上に、加飾画像101とグリッド画像102とを出力(プリントアウト)することができる。
【0147】
(3)画像上摺擦方式(画像上の粉体を配向処理する方式)に用いられる部分加飾形成部の形態
図6に示す画像上摺擦方式に用いられる部分加飾形成部70cでは、図4に示す薄層形成転写方式に用いられる部分加飾形成部70aのうち、摺擦部95および粉体回収部95aを、記録媒体Sの搬送経路上における粉体保持部93と対向部96とのニップ部の下流側、かつ粉体回収部97の上流側で、更に記録媒体Sにおいて樹脂製画像100が形成された側に摺擦部95’および粉体回収部95a’として配置し、摺擦部95’の対向部96’を備えた以外は、図4に示す構成と同様にしたものである。したがって、図6では、特に断らない限り、図4と同じ構成部材には、同じ符号を付している。
【0148】
詳しくは、図6に示す画像上摺擦方式に用いられる部分加飾形成部70cとしては、記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の一部(加飾下地部)に、例えば、装飾用の粉体であって、光沢を有する粉体Pを配向させて貼り付けることによって加飾画像(例えば、ミラー調やパール調の画像)101を形成するためのものであり、記録媒体Sの搬送方向xに対して樹脂製画像形成部60の下流側であって、後段に配置されている。このような部分加飾形成部70は、一例として記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段(部分軟化手段)の1つである軟化剤供給手段として軟化剤供給部91、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段(単に「粉体付着手段」ともいう)として、円筒状の粉体保持部材等からなる粉体保持部93、粉体保持部93の周囲に配置された粉体供給部材等からなる粉体供給部94、対向ローラー等の対向部材等からなる対向部96、摺擦部95’を備え、さらに粉体回収部97、および必要に応じてヒーター等の加熱部(不図示)を備えている。以下、これらの各部材の構成を説明する。なお、ここで用いられる加飾用の粉体の構成については、画像形成方法において説明した通りである。
【0149】
図6に示す部分加飾形成部70cにおいては、軟化剤供給部91、粉体供給部94、粉体保持部93、粉体保持面93a、粉体供給部94、貯蔵部94a、搬送部94b、対向部96および粉体回収部97に関しては、図4に示す薄層形成転写方式に用いられる部分加飾形成部70aで説明したのと同様である。
【0150】
そのため、粉体供給部94の搬送部94bが、円筒状の粉体保持部93の回転方向と逆方向に回転することにより、貯蔵部94a内に貯蔵された粉体Pを貯蔵部94aの開口部にまで搬送し、粉体保持部93の粉体保持面93aに粉体Pを供給することで、粘着保持される。
【0151】
次に、対向部96では、粉体保持部93の粉体保持面93aに粘着保持された粉体Pを、記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに転写させる。これにより、軟化剤供給部91からの軟化剤射出による加飾下地部100aのみへの軟化剤の部分供給によって軟化させて粘着性を発現した加飾下地部100aに対し、粉体保持部93の粉体保持面93aに、配向していない状態で粘着保持された粉体Pが当接して押圧され、粉体保持面93aから樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに配向していない状態の粉体Pが転写される。
【0152】
(摺擦部95’)
摺擦部95’は、記録媒体S上の樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに転写された無配向の粉体Pを摺擦することにより、加飾下地部100a上の粉体Pを配向させるためのものであり、粉体保持部93と対向部96とのニップ部の下流側、かつ粉体回収部97の上流側で、更に記録媒体Sにおいて樹脂製画像100が形成された側に配置されている。またこの摺擦部95’は、粉体回収部95a’を備えているのが好ましい。
【0153】
この摺擦部95’は、円筒形状を有し、記録媒体S上の樹脂製画像100の加飾下地部100aの表面に当接する状態で配置されたことにより、搬送される記録媒体S上の樹脂製画像100の加飾下地部100aの表面を摺擦する構成となっている。また摺擦部95’の側周面であって、加飾下地部100aの表面を摺擦する面は、粉体Pを収容するための空隙を有する材料で構成されていることが好ましい。このような材料としては、例えばブラシ、スポンジまたは不織布のような多孔質材料が用いられる。
【0154】
また摺擦部95’は、搬送される記録媒体S上の樹脂製画像100の加飾下地部100aの表面を摺擦することにより、軟化させて粘着性を発現した加飾下地部100aの表面に転写された粉体Pのうち、軟化により粘着性を有する加飾下地部100aの表面に付着していない余分な粉体Pを除去する。この際、摺擦部95’の側周面の空隙に、余分な粉体Pを捕捉する。
【0155】
摺擦部95’により摺擦された加飾下地部100aの表面には、1層分の粉体Pが直接粘着し配向された状態で残されることになる。この際、粉体Pが非球形状であれば、加飾下地部100aの表面において粉体Pが摺擦部95’によって摺擦されることにより、加飾下地部100aの表面に対する粉体Pの方向性を揃えることができる。
【0156】
また摺擦部95’は、円筒形状の軸を中心にして回転する構成であることが好ましい。これにより、空隙に捕捉されて収容された粉体Pを回転方向に運搬し続けることができるため、加飾下地部100aの表面と摺擦部95’とのニップ部に粉体Pが堆積することがなく、加飾下地部100aの表面から余分な粉体Pを除去する効果が高くなる。またこれにより、摺擦部95’による加飾下地部100aの表面の摺擦性を安定化させることが可能である。
【0157】
さらに摺擦部95’の回転方向が加飾下地部100aの表面の搬送方向と同一方向であれば、加飾下地部100aの表面に対する摺擦部95’の相対速度がより高速化され、摺擦部95’によって加飾下地部100aの表面をより高速で摺擦することができ、より高い摺擦効果を得ることが可能になる。
【0158】
また、加飾下地部100aの表面に対する摺擦部95’の押圧力[N]は、1~10kPaが好ましく、1~5kPaがより好ましい。押圧力[N]が1kPa以上であれば、加飾下地部100aの表面における押圧が安定となる。一方、押圧力[N]が10kPa以下であれば、摺擦部95’を回転させるためのトルクが大きくなりすぎることもなく、摺擦部95’の駆動ムラの発生を防止し、摺擦部95’の材料劣化を抑制することができる。
【0159】
また、摺擦部95’に設けられた粉体回収部95a’は、円筒形状の摺擦部95’の側周面に対向して配置され、摺擦部95’の側周面の空隙に収容された粉体Pを回収する。このような粉体回収部95a’は、エアー吸引方式のものでもよいし、ローラーやブレード形態の部材を摺擦部95’の側周面に当接させ、摺擦部95’の側周面を構成する材料の復元力によって空隙から粉体Pをはじき出す構成のものであってもよい。
【0160】
円筒形状の摺擦部95’に対してこのような粉体回収部95a’を設けることにより、摺擦部95’による粉体Pの除去効果を持続させることが可能になり、摺擦部95’による加飾下地部100aの表面の摺擦性を長期に維持することが可能である。
【0161】
(対向部96’)
摺擦部95’の対向部96’は、摺擦する際に、記録媒体S上の樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aに、適切な摺擦力が加えられるように備えられている。対向部96’の構成は、上記した粉体保持部93の対向部96と同様のものを適宜利用することができる。この対向部96’は、ローラー状のものであり、円筒形状の摺擦部95との間に記録媒体Sを挟持するニップ部を構成する。これにより、加飾下地部100aの表面に非配向の状態で粘着保持された粉体Pが当接(挟持)されて押圧され、加飾下地部100a表面の粉体Pが配向した状態になる。
【0162】
また樹脂製画像100の加飾下地部100aは、軟化剤供給部91を通過し(この間に軟化剤が供給され)、その後、粉体が転写、摺擦(配向)された後は、供給された軟化剤が経時的に揮発して硬化することになる。かかる硬化によって樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aは接着性が発現し、加飾下地部100aに転写、摺擦(配向)された粉体Pが接着保持される。これにより、接着材料としての樹脂等によって構成された樹脂層(例えば、トナー等)からなる樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aの表面に、加飾機能を有する粉体Pが配向した状態で貼り付けられた加飾画像(例えば、ミラー調やパール調等の光沢を有するメタリック画像やパール画像等)101を得ることができる。これにより、同一記録媒体(紙面)上に、加飾画像101とグリッド画像102とを出力(プリントアウト)することができる。
【0163】
(粉体回収部97)
粉末回収部97は、粉末保持部93と対向部96とのニップ部を通過し、さらに摺擦部95’と対向部96’とのニップ部を通過した記録媒体S上の余分な粉末Pを回収するためのものである。この粉末回収部97は、記録媒体Sの搬送経路上における粉末保持部93と対向部96とのニップ部、および摺擦部95’と対向部96’とのニップ部の下流側で、かつ記録媒体Sにおいて樹脂製画像100が形成された側に配置される。ここで、記録媒体S上の余分な粉末Pとは、樹脂製画像100に接着保持されていない粉末Pであることとする。
【0164】
このような粉末回収部97は、例えばエアー吸引によって粉末Pを吸引する構成のものが例示されるが、これに限定されることはない。
【0165】
(4)樹脂製画像を軟化剤で軟化後、加飾下地部以外を部分加熱して加飾下地部のみを軟化剤で軟化する部分加飾形成部の形態
本形態においては、図7に示すように、部分加飾形成部70dとして、記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の一部(加飾下地部)に、例えば、装飾用の粉体であって、光沢を有する粉体Pを無配向または配向させて貼り付けることによって加飾画像(例えば、ミラー調、パール調、グリッター調などの画像)101を形成するためのものであり、記録媒体Sの搬送方向xに対して樹脂製画像形成部60の下流側であって、後段に配置されている。このような部分加飾形成部70dは、一例として、記録媒体上の樹脂製画像の一部に軟化状態を調整する処理を行う手段として、記録媒体上の樹脂製画像を軟化する手段と、さらに画像データ、例えば、粉体処理する位置に対応する複数の画素からなるページ画像データに基づいて樹脂製画像の軟化状態を調整する手段とを備える。このうち、記録媒体上の樹脂製画像を軟化する手段として、軟化剤供給部91を備える。また画像データ、例えば、粉体処理する位置に対応する複数の画素からなるページ画像データに基づいて、樹脂製画像の軟化状態を調整する手段として、データに基づいて樹脂製画像(の形成領域)のうち加飾下地部以外を部分加熱するサーマルヘッドを備える。こうして樹脂製画像の軟化状態を調整することで、樹脂製画像の一部(加飾下地部)のみを軟化剤で軟化することができる。次に、軟化した樹脂製画像の上に粉体を付着させる手段(粉体付着手段)としては、上記(1)~(3)の各方式を用いることができる。図7では、上記(1)で説明した円筒状の粉体保持部材等からなる粉体保持部93と、粉体保持部93の周囲に配置された粉体供給部材等からなる粉体供給部94、摺擦ローラー等の摺擦部材からなる摺擦部95および対向ローラー等の対向部材等からなる対向部96を備え、さらに粉体回収部97、および必要に応じてヒーター等の加熱部(不図示)を備えている。但し、本形態では、上記(1)の方式に何ら制限されるものではなく、上記(2)、(3)の方式を適用してもよい。以下、これらの各部材の構成を説明する。なお、ここで用いられる加飾用の粉体の構成については、画像形成方法において説明した通りである。また、図7でも、特に断らない限り、図4と同じ構成部材には、同じ符号を付している。
【0166】
(軟化剤供給部91)
本形態の軟化剤供給部91は、樹脂製画像形成部60によって記録媒体Sの主面上に形成された樹脂製画像100の表面全体に軟化剤90を供給する。軟化剤供給部91は、軟化剤を供給することができれば特に制限されない。軟化剤供給部91の例には、インクジェット装置などを用いることができる。この他にも一般的な塗布装置、例えば、グラビア塗布装置、ロール塗布装置、ブレード塗布装置などを用いてもよい。
【0167】
(サーマルヘッド92)
本形態のサーマルヘッド92は、画像データに基づき、樹脂製画像100の表面全体に供給された軟化剤のうち、樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100a以外の軟化剤を部分加熱して揮発させ、軟化前の状態に戻す(硬化する)ために、備えられている。このサーマルヘッド92は、軟化剤供給部91の下流側で、かつ粉体供給部94の上流側に、記録媒体S上の樹脂製画像100の表面に圧接(当接)するように配置されている。
【0168】
また、サーマルヘッド92は、記録媒体Sの幅方向に帯状に配置されている。これにより、記録媒体Sの幅方向に走査させる必要がなく、サーマルヘッド92を固定しても、記録媒体Sがサーマルヘッド92を通過することで、自動的に樹脂製画像100の表面全体を(部分加熱の)対象範囲とすることができる。例えば、サーマルヘッドに取り付けられた発熱素子アレイを樹脂製画像100の表面に圧接させ、画像データに合わせて、ドットサイズに対応する各発熱素子を発熱させることで部分加熱を行うことができる。ただし、発熱素子アレイに限定されるものではない。また、サーマルヘッドには、従来用いられていた構成、例えば、発熱素子の温度が上昇を抑えるための冷却手段として、放熱用のヒートシンク、さらにヒートシンクに送風する冷却ファンなどを取り付けてもよい。また、サーマルヘッドの待機時に予備加熱するための加熱手段として、加熱用ヒータなどを設けてもよい。
【0169】
加飾下地部100a以外の軟化剤の部分加熱を行うためには、サーマルヘッド92の各発熱素子を画像データに応じた温度に発熱させることが必要である。かかる温度としては、軟化剤が揮発できる温度以上で、かつ樹脂製画像が加熱により溶融しない温度以下とする必要があることから、使用する軟化剤の揮発温度や樹脂製画像中の樹脂の軟化温度などによって適宜設定すればよく、好ましくは40~100℃の範囲、より好ましくは40~80℃の範囲である。各発熱素子のサイズ(加熱範囲)は、軟化剤供給時のドットサイズ(概ね113μmに相当)と同じでもよいし、あるいは25~31400μmの範囲、好ましくは50~250μmの範囲としてもよい。
【0170】
さらにサーマルヘッド92は、異なる厚さの記録媒体Sや樹脂製画像100の組み合わせに応じて、上下方向に制御できる機構が備えられているのが好ましい。例えば、当該機構としては、対象物である樹脂製画像100表面までの距離や位置等を測ることができるレーザーやセンサーなどと、当該距離や位置情報に基づく出力データ(サーマルヘッド92を上下方向に可動させるモーターの駆動量等)によりサーマルヘッド92を上下方向に可動させる機構などが挙げられるがこれらに制限されるものではない。これにより、搬送される記録媒体Sの主面上に形成された形成された樹脂製画像100に対し、画像データに基づき、サーマルヘッド92を搬送速度に合わせて時間ごとに加熱する位置を自動制御することで、樹脂製画像100の加飾下地部100a以外を部分加熱することができる。これにより、加飾下地部100a以外の軟化剤を揮発させて軟化前の状態に戻す(硬化する)ことができ、樹脂製画像100の加飾下地部100aのみに軟化剤が残ることで軟化状態を保持することができ、上記(1)~(3)(以下の(3a)、(2a)を含む。以下、同様。)の軟化剤供給部91で樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aのみに軟化剤を供給して軟化させたのと同じ状態とすることができる。よって、サーマルヘッド92の下流側に備える構成は、上記(1)~(3)の軟化剤供給部91の下流側のいずれかの構成(方式)を適宜組み合わせればよい。上記(4)のサーマルヘッドによる部分加熱に変えて、軟化剤に非接触な加熱手段を用いてもよい。軟化剤に非接触な加熱手段としては、光照射(例えば、レーザー照射)による光熱変換により部分加熱する手段、あるいは記録媒体Sの裏面(樹脂製画像が形成されていない面)側からサーマルヘッドを当てたり、光(レーザー光など)を当てて(照射して)部分加熱する手段を適用することもできる。
【0171】
このように、上記(1)~(4)に示す各形態では、あくまで本発明の実施形態を説明するためのものであり、これらの形態の単純な変形及び変更は、本技術分野で通常の知識を有する者によって容易に実施可能であり、このような変形や変更は、いずれも本発明の技術範囲に含まれるものである。1例として、以下に、上記(3)、(2)の方式の単純な変形又は変更を加えた他の形態(3a)、(2a)につき説明するが、このように単純な変形及び変更は、いずれも本発明の技術範囲に含まれるものである。よって、図8では、特に断らない限り、図7と同じ構成部材には、同じ符号を付している。
【0172】
(3a)画像上摺擦方式(3)を変形又は変更した形態
図8に示す部分加飾形成部70eは、軟化剤供給手段として軟化剤供給部91、粉体供給手段として粉体供給部94、摺擦ローラからなる摺擦部95”、さらにヒーター75、および粉体回収部97を有する。
【0173】
軟化剤供給部91は、上記(3)の方式で説明したのと同様である。なお、上記(3)の方式とは異なる上記(4)の方式を適用してもよい。即ち、上記したように軟化剤供給部91とサーマルヘッド92を組み合わせて樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aを軟化剤で軟化した状態にしてもよい。
【0174】
粉体供給部94は、樹脂製画像100の表面全体に粉体を供給する。粉体供給手段は、公知の手段を用いることができ、例えば特許文献3に記載されている粉末供給手段を用いることができる。
【0175】
粉体供給部94は、粉体Pを収容するための容器(貯蔵部)94aと、容器94aの開口部まで粉体Pを搬送するための搬送スクリュー(搬送部)94bと、粉体Pを容器94aから取り出すためのブラシローラー(取出部)94cと、ブラシローラー94cに保持される粉体Pを弾き飛ばすためのフリッカー(弾き飛し部)94dとを有する。粉体Pは、例えば、前述した扁平な粒子形状を有する非球形粉体である。
【0176】
容器94aの開口部は、ブラシローラー94cに保持される粉体Pの量を規制するために、ブラシローラー94cのブラシの先端に接触する大きさに形成されている。フリッカー94dは、板状の部材であり、ブラシローラー94cと接触する位置に配置されている。ブラシローラー94cへのフリッカー94dの食い込み量は、例えば粉体Pの供給量やブラシの偏摩耗などを考慮して決めることができ、ブラシローラー94cのブラシ毛長やブラシ密度は、例えば、粉体Pの供給量やそのボタ落ちなどを考慮して決めることができる。
【0177】
フリッカー94dは、ブラシローラー94cと接触する位置に固定されていてもよいが、ブラシローラー94cの停止時にフリッカー94dがブラシローラー94cから離間するように、フリッカー94dが移動可能に構成されていてもよい。
【0178】
摺擦ローラーからなる摺擦部95”は、記録媒体Sの搬送方向と垂直な方向であり、かつ記録媒体Sの表面(紙面)に対して垂直な方向に回転軸を有し、図中の矢印の方向へ回転自在に構成されており、付勢部材(不図示)により付勢されるように構成されている。摺擦ローラーからなる摺擦部95”は、例えば、円筒状の芯金と、その外周面上に配置されている樹脂製のスポンジなどの弾性層とを有している。摺擦ローラーからなる摺擦部95”の軸方向の長さは、記録媒体Sの幅よりも長い。
【0179】
なお、摺擦部95”は図8においては摺擦ローラーとして示されているが、摺擦部95”は摺擦ができれば特に制限されず、往復運動する部材であってもよいし、樹脂製画像100の表面に対して垂直な方向を回転軸として回転する部材であってもよいし、固定されている部材であってもよい。なお、摺擦部95”にも、上記(1)などの方式に用いた粉体回収部95aを組み合わせてよい。
【0180】
ヒーター75は、例えば、軟化剤供給部91の前の位置、軟化剤供給部91に対向する位置、粉体供給部94に対向する位置、摺擦ローラーからなる摺擦部95”に対向する位置などに設けられる。また、ヒーター75は、例えば、摺擦ローラーからなる摺擦部95”の後の位置に設けられる。ヒーター75は、例えばホットプレートである。ヒーター75は、加熱により、樹脂製画像100を構成する樹脂層を軟化しない程度の温度に予熱、保温したり、軟化剤の揮発速度(軟化時間)を調整したり、プロセス速度を上げたり、平板なヒーター75上に樹脂製画像100が形成された記録媒体Sを安定に保持し、記録媒体のたわみ等生じないようにするなどの種々の目的のために、記録媒体や粉体が劣化や変質しない温度で、かつ樹脂製画像が軟化しない温度等に配慮した範囲で用いられることがある。
【0181】
粉体回収部97は、例えば、粉体供給部94から供給された粉体Pのうちの余剰の粉体Pを吸引するための集粉器である。集粉器は、記録媒体Sの搬送路から適当な高さの位置で吸引口が開口するように配置されており、例えば、粉体Pを吸引するが記録媒体Sを吸引しない適度な出力で運転するように構成されている。
【0182】
(2a)押圧方式(2)を変形又は変更した形態
本形態では、画像上摺擦方式(3)を変形又は変更した形態(3a)において、図8に示す部分加飾形成部70eのうち、摺擦ローラーからなる摺擦部95”に変えて、通常の押圧(圧接)ローラー98を備えた構成とする。これにより、摺擦、配向されることなく、無配向の粉体Pを樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aのみに付着(接着)させることができる。
【0183】
次に、樹脂製画像がどのように形成され、形成された樹脂製画像がどのように加飾されるかの一実施形態を図2図8および図9を用いて説明する。図2の画像形成装置1において、制御部50は、樹脂製画像形成部60、および部分加飾形成部70の動作を制御する。
【0184】
画像読取部では、光源11から照射された光は、読取面に載置された原稿に照射され、その反射光は光学系12のレンズおよび反射鏡を介して、読取り位置に移動した撮像素子13に結像する。撮像素子13は、原稿からの反射光の強度に応じて電気信号を生成する。生成された電気信号は、画像処理部14において、アナログ信号からデジタル信号に変換された後、補正処理、フィルター処理、画像圧縮処理等が施され、画像データとして画像処理部14のメモリに記憶される。こうして、画像読取部は、原稿の画像を読み取り、画像データを記憶する。
【0185】
画像形成部では、感光体ドラム21は、ドラムモーターにより所定の速度で回転する。帯電部22は、感光体ドラム21の表面を所望の電位に帯電させ、光書込部23は、画像データに基づいて、画像情報信号を感光体ドラム21に書き込み、感光体ドラム21に画像情報信号に基づく潜像を形成する。そして潜像は現像装置24により現像され、感光体ドラム21上に可視画像であるトナー像が形成される。このようにして、YMCKの各画像形成部の感光体ドラム21に、それぞれ、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの未定着のトナー画像が形成される。こうして、画像形成部は、電子写真方式の画像形成プロセスを用いてトナー画像を形成する。
【0186】
YMCKの各画像形成部により形成された各色のトナー画像は、走行する中間転写ベルト26上に一次転写部により逐次転写される。こうして、中間転写ベルト26上に、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックの各色のトナー層が重畳したカラートナー画像が形成される。
【0187】
用紙搬送部では、記録媒体Sは、送り出しローラー31およびさばきローラー32によって給紙部の給紙トレイ41、42、43から一枚ずつ搬送経路に送り出される。搬送経路に送り出された記録媒体Sは、搬送ローラー33によって搬送経路に沿ってループローラー34およびレジストローラー35を経て2次転写ローラーに搬送される。そして、記録媒体S上に中間転写ベルト21上のカラートナー画像が転写される。
【0188】
カラートナー画像が転写された記録媒体Sに、定着部27にて熱と圧力とが加えられることにより、記録媒体S上のカラートナー画像がカラートナー層として記録媒体Sに定着される。こうして、記録媒体S上に樹脂製画像(樹脂層)100が作製される。樹脂製画像(樹脂層)100を有する記録媒体Sは、排紙ローラー36を経て部分加飾形成部70eに送られる。
【0189】
なお、定着がなされた記録媒体Sを用紙反転部37に導いて記録媒体Sの表裏を反転して排出することができる。これにより、記録媒体Sの両面に画像を形成することができる。
【0190】
制御部50による部分加飾形成部70eでの制御の一例を説明する。この例では、軟化剤供給量を3段階で選択する例を示すが、無段階(設定値の最低値から最高値までの間の任意の値を選択する形態)であってもよい。
【0191】
たとえば、制御部50は、図9に示すように、最終画像のうち、加飾画像部分につき、所望の表現(例えば、加飾画像部分の質感;ミラー調やグリッター調など)が、例えば、制御部50に入力されるタッチパネルなどを用いて作業者によって選択される(ステップ101)と、入力された表現(加飾画像部分の質感)が、光沢のあるミラー調またはパール調であるか否かを判断する(ステップ102)。入力された表現がミラー調・パール調である場合は、制御部50は、少量の軟化剤供給量を選択し(ステップ103)、軟化剤供給部91からの軟化剤の供給量を少量に制御する(ステップ104)。これにより、樹脂製画像(樹脂層)100の内部(深部)まで軟化されないため、樹脂製画像100の内部(深部)まで粉体Pが入り込まないため、摺擦部95”により図1Bに示すように粉体Pをほぼ完全に配向することができる。なお、樹脂製画像100の加飾下地部100aが単一の質感でなくてもよく、各所の加飾下地部100aごとに上記と同様の操作を行って、複数の質感(ミラー調・パール調・グロス調からグリッター調・マット調まで)を表現してもよい。更に各所の加飾下地部100aごとにゴールド、シルバー、パール、蛍光など粉末Pの種類なども適宜選択して供給できるようにしてもよい。この場合には、各粉末ごとに、別々の部分加飾形成部70を設けてもよいし、1つの部分加飾形成部70内部に軟化剤供給部から粉体回収部までのセットを複数配置してもよい。また上記では加飾画像部分の質感を変更してもよい。
【0192】
(軟化剤供給部91)
加飾画像部分の質感を変更するのに、軟化剤供給量を変える例を示したが、樹脂製画像部の膜厚を厚くしておき、摺擦部での摺擦条件や対向部との挟持力などを調整して、図1に示すように完全に配向した状態から無配向な状態まで(ミラー調・パール調・グロス調からグリッター調・マット調まで)を表現してもよいなど、各種装置部の動作や使用条件などを調整することで、加飾画像部分の質感を変更してもよい。
【0193】
制御部50は、入力された表現(加飾画像部分の質感)が乱反射のない光沢のあるミラー調・パール調ではない場合では、当該表現が光沢のないグリッター調であるか否かを判断する(ステップ105)。入力された表現がグリッター調である場合は、制御部50は、多量の軟化剤供給量を選択し(ステップ106)、軟化剤供給部91からの軟化剤の供給量を多量に制御する(ステップ104)。これにより、樹脂製画像(樹脂層)100の内部(深部)まで軟化されるため、樹脂製画像100の内部(深部)まで粉体Pが入り込むため、摺擦部95”によっても図1Dに示すように粉体Pをほぼ無配向することができる。なお、入力された表現がグリッター調である場合は、制御部50は、上記ステップ106、104を行うとともに、摺擦部95”の摺擦ローラーを摺擦させることなく、単に押圧(圧接)だけ行うように選択し、摺擦ローラーを押圧ローラーとして動作させもよい。
【0194】
制御部50は、入力された表現(加飾画像部分の質感)が乱反射の少ない光沢のあるミラー調・パール調と乱反射の多い光沢のグリッター調の間である場合は、中程度の量の軟化剤供給量を選択し(ステップ107)、軟化剤供給部91からの軟化剤供給量を中程度の量に制御する(ステップ104)。これにより、樹脂製画像(樹脂層)100の内部(やや深く)まで軟化されるため、樹脂製画像100の内部(やや深く)まで粉体Pが入り込むため、摺擦部95”によって図1Cに示すように粉体Pをある程度配向させることができる。
【0195】
なお、制御部50は、入力された表現(加飾画像部分の質感)に応じて、軟化剤の供給量を制御せずにヒータ75による加熱の有無および程度を制御してもよいし、軟化剤の供給量ならびにヒータ75による加熱の有無および程度の両方を制御してもよい。
【0196】
軟化剤供給部91による軟化剤の供給により、樹脂製画像(樹脂層)100の一部(加飾下地部)100aは、所望の軟化状態に調整され、加飾下地部100aの表面に粘着力が生じる。
【0197】
粉体供給部94では、容器94aに収容されている粉体Pが搬送スクリュー94bによってブラシローラー94cまで搬送される。ブラシローラー94cは、例えば、反時計回りに回転し、かつ粉体Pを捕捉する。ブラシローラー94cに捕捉された粉体Pはフリッカー94dによって弾き飛ばされ、記録媒体Sおよび樹脂製画像(樹脂層)100上に散布される。
【0198】
摺擦ローラーからなる摺擦部95”は、記録媒体Sに向けて付勢されているとともに、図中の矢印方向に回転している。摺擦ローラーからなる摺擦部95”は、記録媒体Sの搬送方向とは反対の向きに回転している。摺擦ローラーからなる摺擦部95”は、樹脂製画像100上の粉体Pを適度な押圧力(例えば、10kPa程度)で押圧しつつ回転し、よって摺擦ローラーからなる摺擦部95”の表面は、粉体Pが供給されている樹脂製画像100の表面を摺擦する。樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aの表面は、軟化剤の選択的な供給により粘着性を有し、かつ粉体Pが供給され、かつ摺擦ローラーからなる摺擦部95”で摺擦されることから、加飾下地部100aの表面には、この表面に沿う方向に粉体Pが配列して付着する。
【0199】
より詳しくは、粉体Pは、図1Aに示すように、樹脂製画像100の表面に供給された状態では、配向していない。しかしながら、粉体Pは、扁平な粒子形状を有している。このため、長軸と短軸とを含む平面(厚さ方向に直交する平面)に沿って配列しやすい。加えて、樹脂製画像100のうち、軟化剤が選択的に供給された加飾下地部100a上の粉体Pは、摺擦ローラーからなる摺擦部95”によって適度に押圧されながら摺擦される。樹脂製画像100のうち軟化剤が選択的に供給されていない加飾下地部100a以外の部分のように粘着性がない部分(粉体Pが付着しない部分)は、摺擦部95”の摺擦によって、樹脂製画像100の表面に付着しないため、下流側の粉体回収部97で回収される。このため、粉体Pは、図1Bに示されるように、加飾下地部100aの表面に沿って、当該表面上に配列して付着する。これにより、同一紙面上に加飾画像(光沢のあるミラー調・パール調のメタリック画像等)とソリッド画像を出力(プリントアウト)することができる。
【0200】
図9のステップ105で中程度の量の軟化剤供給量が選択された場合では、軟化剤供給時における加飾下地部100aはより軟化する。このため、粉体Pは、摺擦時においてその一部が加飾下地部100aの内部に押し込まれる。よって、粉体Pは、図1Cに示されるように、例えば、その一部が加飾下地部100aの表面に沿って配置し、残部がランダムな向きで加飾下地部100aの内部に押し込まれる。
【0201】
図9のステップ105で多量の軟化剤供給量が選択された場合、多量の軟化剤供給により樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100aはより一層軟化する。このため、軟化した加飾下地部100a上に供給された粉体Pは、摺擦時において加飾下地部100aの内部により押し込まれやすくなる。よって、粉体Pは、図1Dに示すように、例えば、ランダムな向きで加飾下地部100aの内部に押し込まれる。これにより、同一紙面上に加飾画像(グリッター調のメタリック画像等)とソリッド画像を出力(プリントアウト)することができる。
【0202】
粉体Pが供給された樹脂製画像100を有する記録媒体Sは、例えば、その後の工程で、加飾下地部100a上に供給された軟化剤が揮発し、加飾下地部100aが固化(硬化)することで、粉体Pは、樹脂製画像100の一部(加飾下地部)100a上に固定され、その結果、記録媒体S、樹脂製画像100(加飾下地部100aを含む)および加飾下地部上の粉体Pの加飾画像層、をこの順で有する画像が最終的に形成される。ただし、加飾下地部上の粉体Pによる加飾画像層は、摺擦時等に押圧されることで、樹脂製画像100中のソリッド画像部と加飾画像層とは、ほぼ面一にすることもできるなど、視覚効果以外にも、五感の一つである手触り感による効果により、紙幣のように凹凸のないすべすべした面一(フラット)な手触り感が好まれる場合、あるいはクリスマスカード等のデコレーションカードのように加飾画像層が盛り上がっていて加飾画像層が強調される手触り感が好まれる場合など、使用者の要望に応して、押圧力を調整して、手触り感や視覚効果等を調整することもできる。
【0203】
なお、記録媒体S上に散布された粉体Pのうち、加飾下地部100a以外の樹脂製画像100やその周辺の記録媒体Sが露出している部分に存在する余剰の粉体Pは、粉体回収部97による空気の流れにより粉体回収部97に吸引され、記録媒体S、樹脂製画像100および上記搬送路から除去、回収される。
【0204】
最終画像の一部(加飾下地部100a上)に形成された加飾画像では、摺擦条件に応じて前述した図1B図1Dに示す粉体Pの存在状態が保存される。よって、例えば、少量の軟化剤供給量で形成された最終画像の一部を占める加飾画像では、上記摺擦によって粉体Pが粘着性を有する加飾下地部100a上の表面に倒れ、粉体Pの平面方向と上記表面とが実質的に平行になり、加飾下地部100aの粘着性による接着力が発揮される加飾下地部100a上の粉体Pのみが加飾下地部100aに付着して上記表面上に残る。
【0205】
こうして、粉体Pは、摺擦によって実質的に一層で加飾下地部100aの表面に付着する。加飾下地部100aの表面は、Pによってその全てが覆われることはない。たとえば、当該表面における非球形粉体Pによる隠蔽率は、60%程度である。そのため、例えば、加飾下地部がマゼンタ画像の場合、ここにシルバー粉体を付着させた場合、マゼンタパール調の加飾画像が得られる(実施例8参照)。マゼンタパール調の加飾画像が得られることは、非球形粉体Pによる隠蔽率が60%程度であることの表れである。一方、加飾下地部がブラック画像の場合、ここにシルバーやゴールド粉体を付着させた場合、シルバーやゴールド光沢の加飾画像が得られる。これらは、いずれも色の視覚効果(例えば、明度対比、色相対比、彩度対比、補色対比、縁辺対比、同化効果、色陰現象、面積効果など)を利用したものである。
【0206】
したがって、最終画像では、ソリッド画像と加飾画像との色の視覚効果、すなわち、粉体Pと、当該粉体Pで隠蔽されていない加飾下地部(下地画像)とで構成される加飾画像による視覚効果と、記録媒体Sおよび加飾画像部以外の樹脂製画像の視覚効果とが合わさった外観として、同一紙面上に、ミラー調またはパール調の加飾画像とソリッド画像で構成される、フルカラープリンターでさえ表現できない極めて優美な色調(メタリック感、ミラー調からグリッター調までの光沢感、蛍光感等)や立体感等を持つ外観が得られる。
【0207】
また、多量の軟化剤供給量で摺擦してなる加飾画像とソリッド画像で構成される最終画像の作製において粉体Pを用いると、粉体Pの一部または全部は、加飾下地部100aの内部に入りこんだ状態で固定化される。このため、当該最終画像の一部を占める加飾画像は、グリッター調(乱反射の多い金属光沢)の外観を呈する。
【0208】
ミラー調・パール調からグリッター調までの所望の外観は、通常の方法によって決定することが可能であり、例えば、複数の当業者による、基準画像と対比する官能試験結果をスコアの平均値で表示する方法や、あるいは光沢度の測定、詳しくは、反射光測定装置におけるメインピークの半値幅、によって決めることが可能である。当該半値幅が小さい程、ミラー調、パール調の外観を呈し、当該半値幅が大きい程、グリッター調の外観を呈する。
【0209】
なお、上記画像形成装置は、図示の実施形態では、電子写真方式のカラープリンタと合体しているが、分離して構成されていてもよい。あるいは、上記画像形成装置は、上記カラープリンタ内に組み込まれ、当該カラープリンタと一体的に構成されていてもよい。
【実施例
【0210】
以下、本実施形態の具体的な実施例を比較例とともに説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0211】
<ブラックトナー及びブラック現像剤の作製>
(1)ブラック着色剤微粒子分散液の調製
n-ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、着色剤(カーボンブラック:モーガルL)15質量部を徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM-0.8」(エムテクニック株式会社製)を用いて分散処理を行って、ブラック着色剤微粒子分散液を調製した。
【0212】
ブラック着色剤微粒子分散液中のブラック着色剤微粒子は、体積基準のメディアン径が220nmであった。なお、体積基準のメディアン径は、「MICROTRAC UPA-150」(HONEYWELL社製)を用い、下記測定条件下で測定したものである。
【0213】
サンプル屈折率:1.59
サンプル比重:1.05(球状粒子換算)
溶媒屈折率:1.33
溶媒粘度:0.797(30℃)、1.002(20℃)
0点調整:測定セルにイオン交換水を投入し調整した。
【0214】
(2)コア部用樹脂粒子の作製
下記に示す第1段重合、第2段重合および第3段重合を経て多層構造を有するコア部用樹脂粒子を作製した。
【0215】
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器にポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。
【0216】
上記界面活性剤水溶液中に、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃に昇温させた後、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて反応容器中に滴下した。
【0217】
スチレン 532質量部
n-ブチルアクリレート 200質量部
メタクリル酸 68質量部
n-オクチルメルカプタン 16.4質量部。
【0218】
上記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子〔A1〕を作製した。
【0219】
(b)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物よりなる単量体混合液を投入し、離型剤としてパラフィンワックス「HNP-57」(日本精蝋株式会社製)93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。
【0220】
スチレン 101.1質量部
n-ブチルアクリレート 62.2質量部
メタクリル酸 12.3質量部
n-オクチルメルカプタン 1.75質量部。
【0221】
一方、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を調製し、98℃に加熱した。この界面活性剤水溶液中に樹脂粒子〔A1〕を32.8質量部(固形分換算)添加し、さらに、上記パラフィンワックスを含有する単量体混合液を添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エムテクニック株式会社製)で8時間混合分散した。混合分散により分散粒子径が340nmの乳化粒子を含有する乳化粒子分散液を調製した。
【0222】
次いで、この乳化粒子分散液に過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌を行うことで重合(第2段重合)を行って樹脂粒子〔A2〕を作製した。
【0223】
(c)第3段重合
樹脂粒子〔A2〕に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0224】
スチレン 293.8質量部
n-ブチルアクリレート 154.1質量部
n-オクチルメルカプタン 7.08質量部。
【0225】
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って重合(第3段重合)を行い、重合終了後、28℃に冷却してコア部用樹脂粒子を作製した。
【0226】
(3)シェル用樹脂粒子の作製
コア部用樹脂粒子の作製における第1段重合で使用された単量体混合液を以下のものに変更した以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行ってシェル用樹脂粒子を作製した。
【0227】
スチレン 624質量部
2-エチルヘキシルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 56質量部
n-オクチルメルカプタン 16.4質量部。
【0228】
(4)ブラックトナー及びブラック現像剤の作製
(a)コア部の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア部用樹脂粒子 420.7質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
ブラック着色剤微粒子分散液 300質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8乃至11に調整した。
【0229】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温させ、上記粒子の会合を行った。この状態で精密粒度分布測定装置「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)を用いて会合粒子の粒子径測定を行い、会合粒子の体積基準メディアン径が5.8μmになった時に、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加して会合を停止させた。
【0230】
会合停止後、さらに、熟成処理として液温を70℃にして1時間にわたり加熱撹拌を行うことにより融着を継続させてコア部を作製した。
【0231】
コア部の平均円形度をフロー式粒子像分析装置「FPIA2100」(シスメックス株式会社製)で測定したところ、0.912だった。
【0232】
(b)シェルの形成
次に、上記液を65℃にしてシェル用樹脂粒子50質量部(固形分換算)を添加し、さらに、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、70℃まで昇温させて1時間にわたり撹拌を行った。この様にして、コア部の表面にシェル用樹脂粒子を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行ってシェルを形成させた。
【0233】
この後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加してシェル形成を停止した。さらに、8℃/分の速度で30℃に冷却して生成した粒子をろ過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェルを有するブラックトナー粒子を作製した。
【0234】
(c)ブラックトナーの作製
ブラックトナー粒子に下記外添剤を添加して、「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業株式会社製)にて外添処理を行い、ブラックトナーを作製した。
【0235】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ微粒子 0.6質量部
n-オクチルシラン処理した二酸化チタン微粒子 0.8質量部。
【0236】
なお、ヘンシェルミキサによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
【0237】
(d)ブラック現像剤の作製
このブラックトナーに、メチルメタクリレートとシクロヘキシルメタクリレート樹脂で被覆した体積平均粒子径40μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%のブラック現像剤を作製した。
【0238】
<マゼンタトナー及びマゼンタ現像剤の作製>
(1)マゼンタ着色剤微粒子分散液の調製
上記「(1)ブラック着色剤微粒子分散液の調製」において、ブラック着色剤(カーボンブラック:モーガルL)に変えて、マゼンタ着色剤(C.I.ピグメントレッド122)を用いた以外は同様にして、マゼンタ着色剤微粒子分散液を調製した。
【0239】
マゼンタ着色剤微粒子分散液中のマゼンタ着色剤微粒子は、体積基準のメディアン径が130nmであった。
【0240】
(2)コア部用樹脂粒子の作製、(3)シェル用樹脂粒子の作製及び(4)マゼンタトナー及びマゼンタ現像剤の作製
上記「(2)コア部用樹脂粒子の作製、(3)シェル用樹脂粒子の作製及び(4)ブラックトナー及びブラック現像剤の作製」において、ブラック着色剤微粒子分散液に変えて、マゼンタ着色剤微粒子分散液を用いた以外は同様にして、マゼンタトナー粒子、マゼンタトナー及びマゼンタ現像剤を作製した。
【0241】
<クリアトナー及びクリア現像剤の作製>
(1)コア部用樹脂粒子の作製、(2)シェル用樹脂粒子の作製及び(3)クリアトナー及びクリア現像剤の作製
上記「(2)コア部用樹脂粒子の作製、(3)シェル用樹脂粒子の作製及び(4)ブラックトナー及びブラック現像剤の作製」において、ブラック着色剤微粒子分散液を用いなかった以外は同様にして、クリアトナー粒子、クリアトナー及びクリア現像剤を作製した。
【0242】
<実施例1>
図10Aに示すような、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を試みた。全体の大きさは2cm×4cm、左側のストライプ部は、メタリック画像部、ソリッド画像部の幅がそれぞれ0.2cmになるように形成した。右側の正方形は、メタリック画像部が1cm×1cmになるように形成するものとした。
【0243】
(下地画像形成工程)
王子製紙株式会社製「OKトップコート+157gsm」を記録媒体とし、フルカラーデジタル印刷システムAccurioPress(登録商標)C3080(コニカミノルタ株式会社製)を出力機として用いた。この出力機にブラック現像剤を収納し、記録媒体をセットし、図10Bに示す画像データ1のデータを入力した。記録媒体上に、画像データ1に基づきブラックトナーを用いて全体(2cm×4cm)を黒塗りした樹脂製画像(黒色トナー画像)を形成(印刷)し、出力(プリントアウト)した。これにより、データ1の画像を印刷した記録媒体を取り出した。
【0244】
(画像の部分軟化工程)
軟化剤供給装置として、コニカミノルタ株式会社製のインクジェットヘッドKM1024SHBをインクジェットコントロールシステムIJCS-1に接続したインクジェットプリンタを使用した。軟化剤としてアジピン酸イソブチルを用いた。この軟化剤をインクジェットプリンタのインクカートリッジに充填し、データ1の画像を印刷した記録媒体をセットし、インクジェットコントロールシステムに、図10Cに示す画像データ2のデータを入力した。樹脂製画像(黒色トナー画像)の一部(加飾下地部;メタリックに加飾したい部分:図Cの黒塗り部)表面に、画像データ2に基づき、軟化剤を1ドットあたり6plで射出供給しながら描画し、加飾下地部を軟化した。
【0245】
(粉体付着工程)
粉体として尾池工業株式会社製メタリックパウダー「エルジーneo#325SILVER」を摺擦部材としてメイクパフ(株式会社グレース製 ラミージュメイクアップスポンジ スクエア型)を用いてシリコーンゴムシートに摺擦配向させたものを作製しておき、軟化剤を部分供給した画像の上に、粉体を配向した面とトナー画像面とを合わせるように重ねた。ゴムシートの上から200kPaで10秒間押圧し、シリコーンゴムシートを剥離した。表1ではこの操作(工程)を薄層形成転写と記載した。
【0246】
軟化剤を射出供給した画像データ2の通り加飾下地部(メタリックに加飾したい部分:図10Cの黒塗り部)表面に粉体が付着し、軟化剤を射出供給していない黒色トナー画像部(ソリッド画像部)、黒色トナー画像のない白紙部(記録媒体)には粉体は付着しなかった。その結果、図10Aに示すように、粉体が付着しているメタリック画像部(シルバー;図10Aのハッチング部)と、粉体の付着していないソリッド画像部(ブラック:図10Aの黒塗り部)が共存していることを確認した。メタリック画像部は、摺擦配向することで、ミラー調であった。
【0247】
また、画像データ1、2に基づき、形成した全体画像中(2cm×4cmの枠内)には、メタリック画像部とソリッド画像部との間に白紙部は存在せず、品位が落ちることはなかった。
【0248】
なお、本実施例では、上記出力機でデータ1の画像を印刷した記録媒体を取り出し、別途、インクジェットプリントシステムで軟化剤を供給する方式(一度用紙を取り出して加飾する方式)で実施した。しかしながら、インラインオプションとして、上記出力機にインクジェットプリントシステムを直結するパターン(データ1の画像を印刷した記録媒体を取り出すことなく連続して加飾する方式)で行ってもよい。後者の場合にも本実施例(前者)と同様の効果が得られる。なお、後者の方が、品位の低下を防止する上で有利である。一方、前者の方式(本実施例)は、出力機と上記軟化剤供給装置のメーカーが異なり、インラインオプションとして、上記出力機に上記軟化剤供給装置のインクジェットプリントシステムを直結できない場合などに適している。
【0249】
<実施例2>
実施例1の粉体付着工程を下記の通り変更した以外は実施例1と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。
【0250】
(粉体付着工程)
粉体として尾池工業株式会社製メタリックパウダー「エルジーneo#325SILVER」を付着させた摺擦部材のメイクパフ(株式会社グレース製 ラミージュメイクアップスポンジ スクエア型)を用いて、軟化剤を部分供給した画像面を摺擦した。表ではこの工程を画像上摺擦と記載した。
【0251】
その後、粘着ローラーで余剰な粉体を回収したところ、実施例1と同様の画像が得られた。
【0252】
<実施例3>
軟化剤及びその供給量を表1のとおりに変更した以外は実施例2と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。
【0253】
なお、表1で「射出量2倍」とあるのは、軟化剤を1ドットあたり6plで射出供給したものを、2倍の12plで射出供給したものをいう。
【0254】
<実施例4~7>
軟化剤及びその供給量を表1のとおりに変更した以外は実施例1と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。実施例4~7の軟化剤では、軟化剤由来のわずかな臭気が確認された。
【0255】
なお、実施例6は、軟化剤として、アジピン酸イソブチルと、軟化効果のない物質であるエタノールとを1:1(体積比)で混合したものを用いた。またTHFは、テトラヒドロフランの略号である。
【0256】
<実施例8>
ブラック現像剤に変えてマゼンタ現像剤を用い、樹脂製画像の形成に使用するトナーを表1の記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。ソリッド画像部はマゼンタ、メタリック画像部はマゼンタパール風の画像が得られた。
【0257】
<実施例9>
ブラック現像剤に変えてクリア現像剤を用い、樹脂製画像の形成に使用するトナーを表1の記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。ソリッド画像部はクリアトナーによる透かし画像、メタリック画像部はシルバーの画像が得られた。
【0258】
<実施例10>
使用する粉体を表1の記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。ソリッド画像部はブラック、メタリック画像部はゴールドの画像が得られた。
【0259】
<実施例11>
使用する粉体を表1の記載の通りに変更した以外は実施例1と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行ったところ、実施例1と同様の画像が得られた。
【0260】
<実施例12>
使用する粉体を表1の記載の通りに変更した以外は実施例2と同様にして、加飾部(加飾したい画像部分)とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行ったところ、軟化剤供給部(加飾したい画像部分)にのみ粉体の熱膨張性マイクロカプセル(未膨張)が付着していることを確認した。
【0261】
<実施例13>
実施例1の粉体付着工程を下記の通り変更した以外は実施例1と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。
【0262】
(粉体付着工程)
粉体として尾池工業株式会社製メタリックパウダー「エルジーneo#325SILVER」をシリコーンゴムシート上に供給し、振動マッサージ器を用いて粉体が配向しないように均一に引き延ばして付着させたものを作製しておき、軟化剤を部分供給した画像の上に、粉体が付着した面とトナー画像面とを合わせるように重ねた。ゴムシートの上から200kPaで10秒間押圧し、シリコーンゴムシートを剥離した。表1ではこの操作(工程)を押圧と記載した。
【0263】
<実施例14>
軟化剤の供給量を表1のとおりに変更した以外は実施例13と同様にして、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像の形成を行った。
【0264】
<実施例15>
画像の部分軟化工程を下記のように変えたことを除き、実施例1と同様にして、画像の形成を行った。
【0265】
(画像の軟化工程)
第一理化学株式会社製のバーコーターNo.2を用い、軟化剤のアジピン酸イソブチルを樹脂製画像(黒色トナー画像)全面に塗布供給して軟化させた。樹脂製画像(黒色トナー画像)上に塗布された軟化剤の膜厚(加飾下地部表面に形成される軟化剤の液膜又は液滴の厚さ)は、4.3μmであった。塗布された軟化剤が揮発する前に、実際には供給から30秒以内に、キーエンス社製レーザー顕微鏡VK-250の膜厚測定モードで軟化剤の膜厚を測定した。
【0266】
次に、部分加熱装置として、京セラ株式会社製のサーマルヘッドKBT-303-24BBD4-STAを自作のコントロールシステムに接続した装置を使用し、当該装置に樹脂製画像(黒色トナー画像)全面に軟化剤が塗布された記録媒体をセットし、コントロールシステムに、図10Dに示す画像データ3のデータを入力した。樹脂製画像(黒色トナー画像)のうちソリッド画像部(非加飾下地部;図10Dの黒塗り部)の部分の軟化剤を、画像データ3に基づき、サーマルヘッドにより部分加熱して瞬時に揮発、乾燥させて接着性をなくさせ、加飾下地部(図10Dの白色部)のみが軟化(接着性を保持)したままの状態とした。
【0267】
上記操作により、実施例1と同様に、樹脂製画像の加飾下地部にのみ軟化剤が供給された状態が得られた。そのため、この加飾下地部にのみ軟化剤が供給された画像の上に、粉体を薄層形成転写することで、実施例1と同様に、メタリック画像部とソリッド画像部とが同一紙面上に存在する画像を形成することができた。
【0268】
<比較例1>
画像の部分軟化工程を下記のように変えたことを除き、実施例1と同様にして、画像の形成を行った。
【0269】
(画像の軟化工程)
第一理化学株式会社製のバーコーターNo.2を用い、軟化剤のアジピン酸イソブチルを樹脂製画像(黒色トナー画像)全面に塗布供給して軟化させた。
【0270】
樹脂製画像全面に塗布供給されたため、軟化剤を供給した画像の上に、粉体を薄層形成転写することで、加飾したい部分以外も加飾され、樹脂製画像全面が加飾されたため、ソリッド画像部と共存させることはできなかった。
【0271】
<比較例2>
(下地画像形成工程)
下地画像である加飾下地部(メタリックに加飾したい部分:図10Cの黒塗り部)を、図10Cに示す画像データ2の通りに形成し、出力したことを除き、比較例1と同様にして、トナー画像部のみの形成を行った。
【0272】
(画像の軟化工程)
第一理化学株式会社製のバーコーターNo.2を用い、軟化剤のアジピン酸イソブチルを、トナー画像部と追い刷りでソリッド画像部を形成予定の白紙部とを含む全面(2cm×4cm)に塗布供給して、トナー画像部を軟化させた。
【0273】
(粉体付着工程)
尾池工業株式会社製メタリックパウダー「エルジーneo#325SILVER」を摺擦部材としてメイクパフ(株式会社グレース製 ラミージュメイクアップスポンジ スクエア型)を用いてシリコーンゴムシートに摺擦配向させたものを作製しておき、軟化剤を供給したトナー画像部と白紙部を含む全面(2cm×4cm)に、粉体を配向した面とトナー画像面とを合わせるように重ねた。ゴムシートの上から200kPaで10秒間押圧し、シリコーンゴムシートを剥離した。
【0274】
バーコーターで全面塗布した領域では、トナー画像部以外の白紙部にも軟化剤が塗布供給されるが、粉体を転写させる前に白紙部に樹脂成分が存在しなかったため、白紙部に粉体は転写されなかった。そのため、画像データ2の通り加飾下地部(メタリックに加飾したい部分:図Cの黒塗り部)表面に粉体が付着したメタリック画像部のみが形成され、軟化剤を射出供給した白紙部には粉体は付着しなかった。
【0275】
再度、出力機にメタリック画像部のみが形成された記録媒体をセットし、画像データ3のデータを入力した。メタリック画像部のみの形成した記録媒体上に、図10Dに示す画像データ3のデータに基づき、粉体の付着していない白紙部(図10Dの黒塗り部)にブラックトナーを用いてソリッド画像部(ブラック)を形成し、出力した。メタリック画像部はシルバー、ソリッド画像部はブラックの画像が得られた。位置を合わせるのが難しく、画像左のストライプ部のメタリック画像部とソリッド画像部との間に白紙(記録媒体)が見える画像となった。
【0276】
(評価方法)
(1)目視でメタリック画像部(実施例12は、加飾部(加飾したい画像部分)とソリッド部とが共存しているか確認した。メタリック画像部とソリッド画像部が共存している場合は良好(表1では「○」)とし、共存していない場合は不良(表1では「×」)とした。結果を表1の「メタリック部、ソリッド部共存」の欄に示す。
【0277】
(2)目視でメタリック画像部(実施例12は除く)の外観(質感)につき、光が反射する金属光沢のあるミラー調か、光が乱反射するグリッター調かを確認した。結果を表1の「メタリック部外観」の欄に示す。
【0278】
(3)画像左側のストライプ部に関して、白紙(記録媒体)の露出部の有無を確認した。白紙(記録媒体)の露出がない場合は良好(表1では「○」)とし、白紙(記録媒体)の露出がある場合は不良(表1では「×」)とした。結果を表1の「微細加飾部」の欄に示す。
【0279】
(4)実験をしていて、軟化剤由来の臭気が感じられるか確認した。臭気が感じられない場合は良好(表1では「○」)とし、わずかな臭気が感じられる(不快に感じない)場合はやや良好(表1では「△」)とし、臭気が感じられる(不快に感じる)場合は不良(表1では「×」)とした。結果を表1の「臭気」の欄に示す。
【0280】
(5)軟化剤を塗布してから5秒以内に粉体が付着しなくなったものを「短」、10秒以内に粉体が付着しなくなったものを中、粉体が付着しなくなるまでに20秒以上かかったものを「長」とした。結果を表1の「軟化時間」の欄に示す。
【0281】
実施例1~15および比較例1~2の画像形成に用いた粉体、トナー、軟化方法、軟化剤、粉体付着方法および上記(1)~(5)の評価結果を以下の表1に示す。
【0282】
【表1】
【0283】
表1の「粉体」の欄において、実施例1~9、13~15、比較例1~2の「エルジーneo#325SILVER」及び実施例10の「エルジーneo#325S-GOLD」は、いずれも「尾池工業株式会社製」である。また実施例11の「メタシャイン(登録商標)ME2025PS」は、「日本板硝子株式会社製、フレーク形状のガラスを基材とする光輝性無機顔料;銀被覆ガラス末」である。実施例12の「マツモトマイクロスフェア(登録商標)F-35D」は、「松本油脂製薬株式会社製、熱膨張性マイクロカプセル」である。
【0284】
表1から明らかなように、実施例1~15では、記録媒体上の樹脂製画像を選択的に軟化させることにより、樹脂製画像の一部を選択的に軟化させ、軟化した部分にのみ粉体が選択的に付着することで、同一紙面上に加飾画像(メタリック画像等)とソリッド画像を出力することができるのを確認できた。また、加飾画像部(メタリック画像部等)とソリッド画像部が細かく入り組んでいるような画像において位置ずれが発生しても、目立ちにくい画像を形成することができるのを確認できた。その結果、工程の増加を抑え、加飾画像(メタリック画像等)とソリッド画像が細かく入り組んでいるような画像でも品位の低下を防止することができるのを確認できた。
【0285】
一方、比較例1の全面軟化方式では、同一紙面上に加飾画像(メタリック画像等)とソリッド画像を出力することができなかった。また比較例2の追い刷り方式では、加飾画像部(メタリック画像部)とソリッド画像部が細かく入り組んでいるような画像において位置ずれが発生し、著しく品位が低下することが確認できた。
【0286】
また、実施例1と実施例3の比較では、軟化剤の供給量を変更することで、樹脂製画像の軟化度合いを変えることができ、ミラー調からグリッター調まで様々な表現の加飾画像を形成できることが確認できた。
【0287】
また、実施例1と実施例2の比較では、粉体を配向させる方式が異なるが、いずれもミラー調の加飾画像を形成できることが確認できた。一方、実施例1、2の粉体配向方式に対し、実施例13、14の粉体を配向させない方式では、軟化剤の供給量の違い(軟化度合いの違い)によらず、グリッター調の加飾画像を形成できることが確認できた。
【0288】
また、実施例1と実施例15の比較では、部分軟化方式が異なるが、いずれもミラー調の加飾画像を形成できることが確認できた。
【0289】
また、実施例1と実施例4~7の比較では、軟化剤の種類を変更しても、加飾画像の質感への影響はなく、いずれもミラー調の加飾画像を形成できることが確認できた。また、実施例4~5、7の軟化剤では、実施例1の軟化剤に比べて軟化時間が短くなるように調整できることが確認できた。また実施例6の軟化剤でも、軟化効果のない物質と混合した場合にも、その混合比率を変えることで軟化時間を調整できる(実施例5に比べ軟化時間を延ばせる)ことが確認できた。このことから、部分軟化から粉体付着までをより短時間で、微細加飾部を高精細に再現できることから、画像装置の小型化や単位時間当たりの加飾処理枚数を高めることができることが分かった。一方、実施例4~7の軟化剤では、軟化剤由来のわずかな臭気が確認された。若干の臭気に関しては、換気又は排気装置等を備えた環境を用意することで十分に解消することができるため、軟化時間を自在に調整する方法として、軟化剤の種類変更は有用である。
【0290】
また、実施例1、8~12から、トナー(現像剤)を変えたり、粉体を変えることで、同一紙面上に、様々な、加飾画像(シルバーやゴールドのメタリック画像やマゼンタパール風の画像やエンボス画像等)とソリッド画像(フルカラー画像)との組み合わせを表現できることが確認できた。ここで、実施例8のマゼンタパール風の画像は、メタリック粉体(シルバー)による隠蔽率は、60%程度であるため、下地の画像が見えている。マゼンタをはじめ、有彩色の場合は、特定の波長に吸収があり、色のついた反射光が目に入る。その色のついた反射光とメタリック粉体からくる白色(全波長ほぼ同じ反射率)の反射光の合わさったものが視認されるため、マゼンタパール風のように色がついて見えると推測される。一方で、実施例1のように下地の画像が黒、使用する粉体がシルバーの場合は、表面反射以外の光は吸収されるため、メタリック粉体からくる白色光だけ視認されるため、シルバーに見えることになる。実施例9のように、白の場合(白い紙にクリアトナーの場合を含む)は、白い部分からの白色光とメタリック粉体からくる白色光の混ざった光を見るため、シルバーに見えることになる。
【符号の説明】
【0291】
1 画像形成装置、
11 光源、
12 光学系、
13 撮像素子、
14 画像処理部、
21 感光体ドラム、
22 感光体ドラムの周囲に配置された帯電部、
23 光書込部、
24 現像装置、
25 ドラムクリーナー、
26 中間転写ベルト、
27 定着部、
31 送り出しローラー、
32 さばきローラー、
33 搬送ローラー、
34 ループローラー、
35 レジストローラー、
36 排紙ローラー、
37 用紙反転部、
41、42、43 記録媒体Sを収容している複数の給紙トレイ、
50 制御部
60 樹脂製画像形成部、
70a、70b、70c、70d、70e 部分加飾形成部、
75 ヒーター、
80 データ受付部
90 軟化剤、
91 軟化剤供給部、
92 サーマルヘッド、
93 粉体保持部、
93a 粉体保持面、
94 粉体供給部、
94a 貯蔵部(容器)、
94b 搬送部(搬送スクリュー)、
94c ブラシローラー(取出部)、
94d フリッカー(弾き飛し部)、
95、95’、95” 摺擦部、
95a 粉体回収部、
96、96’ 対向部、
97 粉体回収部、
98 押圧ローラー、
100 樹脂製画像、
100a 樹脂製画像の一部(加飾下地部)、
101 加飾画像、
102 グリッド画像、
P 粉体、
S 記録媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10