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特許7367519多相コンバータの制御装置、多相コンバータシステム、及び電源システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】多相コンバータの制御装置、多相コンバータシステム、及び電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
H02M3/155 W
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019233409
(22)【出願日】2019-12-24
(65)【公開番号】P2021103907
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】金子 智彦
【審査官】白井 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030285(JP,A)
【文献】特開2017-022843(JP,A)
【文献】特開2017-158372(JP,A)
【文献】特開2019-126182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00~ 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれスイッチング素子を有し互いに並列に接続されたm(mは3以上の整数)相のコンバータ回路を備えた多相コンバータの制御装置において、
前記多相コンバータへの入力電流値が増大するほど、オンオフ制御が実行される前記スイッチング素子の数を増大させることにより前記コンバータ回路の駆動相数を増大させるとともに、前記駆動相数をn(n<mである2以上の整数であって且つmの約数以外の整数)とするn相駆動又は前記駆動相数をmとするm相駆動に前記多相コンバータを制御する駆動相数制御部と、
m相の前記スイッチング素子の各オンタイミングを規定した位相パターンである第1及び第2パターンを記憶した記憶部と、
前記多相コンバータの停止中に前記第1又は前記第2パターンを選択する選択部と、
選択された前記第1又は第2パターンに規定された前記スイッチング素子のオンタイミングに従って、前記駆動相数の前記スイッチング素子に対して周期が略同じであり且つデューティ比も略同じとなるように前記オンオフ制御を実行するオンオフ制御部と、
所定時間内において前記n相駆動に制御されると予測される時間に対する前記m相駆動に制御されると予測される時間の割合である時間割合に相関する予測相関値を予測する予測部と、を備え、
前記第1パターンは、m相の前記スイッチング素子の各オンタイミングを互いに異なるタイミングとなるように規定し、
前記第2パターンは、m相の前記スイッチング素子の各オンタイミングを互いに異なるタイミングとなるように規定し、
前記オンオフ制御では、前記第1及び第2パターンのいずれによる前記m相駆動であっても、常時少なくとも一つの前記スイッチング素子がオンであって且つ少なくとも一つのスイッチング素子がオフとなるように制御され、
前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された2つの前記スイッチング素子のオンタイミングの位相差のうちの最大値と360°/nとの差分の絶対値は、前記第1パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された2つの前記スイッチング素子のオンタイミングの位相差のうちの最大値と360°/nとの差分の絶対値よりも小さく、
前記選択部は、前記時間割合が第1閾値以上であることを前記予測相関値が示す場合には、前記第1パターンを選択し、前記時間割合が前記第1閾値以下である第2閾値未満であることを前記予測相関値が示す場合には、前記第2パターンを選択し、
前記オンオフ制御部は、前記第2パターンによる前記n相駆動では、(m-n)相の前記スイッチング素子のオンオフ制御を停止し、
(m-n)=1の場合に前記第2パターンによる前記n相駆動でオンオフ制御が停止される(m-n)相の前記スイッチング素子は、前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された3つの前記スイッチング素子のうち最初にオンにされる前記スイッチング素子と最後にオンにされる前記スイッチング素子とのオンタイミングの位相差が最小となる場合での前記最初にオンにされる前記スイッチング素子と前記最後にオンにされる前記スイッチング素子の間でオンにされる前記スイッチング素子であり、
(m-n)≧2の場合に前記第2パターンによる前記n相駆動でオンオフ制御が停止される(m-n)相の前記スイッチング素子は、前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された2つの前記スイッチング素子の組み合わせを除いた前記スイッチング素子であって、前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された3つの前記スイッチング素子のうち最初にオンにされる前記スイッチング素子と最後にオンにされる前記スイッチング素子とのオンタイミングの位相差のうち、小さい順に選択した(m-n)相の位相差のそれぞれの、前記最初にオンにされる前記スイッチング素子と前記最後にオンにされる前記スイッチング素子の間でオンにされる前記スイッチング素子である、多相コンバータの制御装置。
【請求項2】
前記第2閾値は、前記第1閾値と同じ値である、請求項1の多相コンバータの制御装置。
【請求項3】
m=3であってn=2である、請求項1又は2の多相コンバータの制御装置。
【請求項4】
m=4であってn=3、又はm=6であってn=4である、請求項1又は2の多相コンバータの制御装置。
【請求項5】
前記多相コンバータに入力電流を供給する電池を電力源として走行する車両の走行予定経路に関する走行予定経路情報を取得する経路取得部を備え、
前記予測部は、前記走行予定経路情報に基づいて、前記電池が前記多相コンバータに供給すると予想される予測電流値を前記予測相関値として予測する、請求項1乃至4の何れかの多相コンバータの制御装置。
【請求項6】
前記n相駆動に制御された時間及び前記m相駆動に制御された時間に関する履歴情報を取得する履歴取得部を備え、
前記予測部は、前記履歴情報に基づいて前記予測相関値を予測する、請求項1乃至5の何れかの多相コンバータの制御装置。
【請求項7】
前記多相コンバータに入力電流を供給する電池を電力源として走行する車両の運転モードに関する運転モード情報を取得する運転モード取得部を備え、
前記予測部は、前記運転モード情報に基づいて前記予測相関値を予測する、請求項1乃至6の何れかの多相コンバータの制御装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかの多相コンバータの制御装置と、
前記多相コンバータと、を備えた多相コンバータシステム。
【請求項9】
請求項8の多相コンバータシステムと、
前記多相コンバータに入力電流を供給する電源と、を備えた電源システム。
【請求項10】
前記電源は、燃料電池である、請求項9の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相コンバータの制御装置、多相コンバータシステム、及び電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数相のコンバータ回路を備えた多相コンバータが知られている。特許文献1では、このようなコンバータ回路の駆動相数が変化している際に、各コンバータ回路のスイッチングの位相差が略一定となるように位相を制御することにより、多相コンバータでのリップル電流を抑制して損失が低減されている。特許文献2では、コンバータ回路のスイッチングの位相を予め設定し、電流指令値に応じて一部のコンバータ回路のスイッチングを停止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-60303号公報
【文献】特開2014-30285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、コンバータ回路の駆動相数を変化させつつ各スイッチング素子の位相もその駆動相数に対応して変化させる必要があるため、スイッチング素子の位相の制御が複雑となる。特許文献2によれば、一部のコンバータ回路のスイッチングが停止されることにより、多相コンバータでのリップル電流が増大して損失が増大する場合がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、簡易な制御によりリップル電流による損失の増大を抑制できる多相コンバータの制御装置、多相コンバータシステム、及び電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、それぞれスイッチング素子を有し互いに並列に接続されたm(mは3以上の整数)相のコンバータ回路を備えた多相コンバータの制御装置において、前記多相コンバータへの入力電流値が増大するほど、オンオフ制御が実行される前記スイッチング素子の数を増大させることにより前記コンバータ回路の駆動相数を増大させるとともに、前記駆動相数をn(n<mである2以上の整数であって且つmの約数以外の整数)とするn相駆動又は前記駆動相数をmとするm相駆動に前記多相コンバータを制御する駆動相数制御部と、m相の前記スイッチング素子の各オンタイミングを規定した位相パターンである第1及び第2パターンを記憶した記憶部と、前記多相コンバータの停止中に前記第1又は前記第2パターンを選択する選択部と、選択された前記第1又は第2パターンに規定された前記スイッチング素子のオンタイミングに従って、前記駆動相数の前記スイッチング素子に対して周期が略同じであり且つデューティ比も略同じとなるように前記オンオフ制御を実行するオンオフ制御部と、所定時間内において前記n相駆動に制御されると予測される時間に対する前記m相駆動に制御されると予測される時間の割合である時間割合に相関する予測相関値を予測する予測部と、を備え、前記第1パターンは、m相の前記スイッチング素子の各オンタイミングを互いに異なるタイミングとなるように規定し、前記第2パターンは、m相の前記スイッチング素子の各オンタイミングを互いに異なるタイミングとなるように規定し、前記オンオフ制御では、前記第1及び第2パターンのいずれによる前記m相駆動であっても、常時少なくとも一つの前記スイッチング素子がオンであって且つ少なくとも一つのスイッチング素子がオフとなるように制御され、前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された2つの前記スイッチング素子のオンタイミングの位相差の最大値と360°/nとの差分の絶対値は、前記第1パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された2つの前記スイッチング素子のオンタイミングの位相差の最大値と360°/nとの差分の絶対値よりも小さく、前記選択部は、前記時間割合が第1閾値以上であることを前記予測相関値が示す場合には、前記第1パターンを選択し、前記時間割合が前記第1閾値以下である第2閾値未満であることを前記予測相関値が示す場合には、前記第2パターンを選択し、前記オンオフ制御部は、前記第2パターンによる前記n相駆動では、(m-n)相の前記スイッチング素子のオンオフ制御を停止し、(m-n)=1の場合に前記第2パターンによる前記n相駆動でオンオフ制御が停止される(m-n)相の前記スイッチング素子は、前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された3つの前記スイッチング素子のうち最初にオンにされる前記スイッチング素子と最後にオンにされる前記スイッチング素子とのオンタイミングの位相差が最小となる場合での前記最初にオンにされる前記スイッチング素子と前記最後にオンにされる前記スイッチング素子の間でオンにされる前記スイッチング素子であり、(m-n)≧2の場合に前記第2パターンによる前記n相駆動でオンオフ制御が停止される(m-n)相の前記スイッチング素子は、前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された2つの前記スイッチング素子の組み合わせを除いた前記スイッチング素子であって、前記第2パターンによる前記m相駆動で順にオンにされることが規定された3つの前記スイッチング素子のうち最初にオンにされる前記スイッチング素子と最後にオンにされる前記スイッチング素子とのオンタイミングの位相差のうち、小さい順に選択した(m-n)相の位相差のそれぞれの、前記最初にオンにされる前記スイッチング素子と前記最後にオンにされる前記スイッチング素子の間でオンにされる前記スイッチング素子である、多相コンバータの制御装置によって達成できる。
【0007】
前記第2閾値は、前記第1閾値と同じ値であってもよい。
【0008】
m=3であってn=2でもよい。
【0009】
m=4であってn=3、又はm=6であってn=4でもよい。
【0010】
前記多相コンバータに入力電流を供給する電池を電力源として走行する車両の走行予定経路に関する走行予定経路情報を取得する経路取得部を備え、前記予測部は、前記走行予定経路情報に基づいて、前記電池が前記多相コンバータに供給すると予想される予測電流値を前記予測相関値として予測してもよい。
【0011】
前記n相駆動に制御された時間及び前記m相駆動に制御された時間に関する履歴情報を取得する履歴取得部を備え、前記予測部は、前記履歴情報に基づいて前記予測相関値を予測してもよい。
【0012】
前記多相コンバータに入力電流を供給する電池を電力源として走行する車両の運転モードに関する運転モード情報を取得する運転モード取得部を備え、前記予測部は、前記運転モード情報に基づいて前記予測相関値を予測してもよい。
【0013】
上記の目的は、前記多相コンバータの制御装置と、前記多相コンバータと、を備えた多相コンバータシステムによっても達成できる。
【0014】
上記の目的は、前記多相コンバータシステムと、前記多相コンバータに入力電流を供給する電源と、を備えた電源システムによっても達成できる。
【0015】
前記電源は、燃料電池であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡易な制御によりリップル電流による損失の増大を抑制できる多相コンバータの制御装置、多相コンバータシステム、及び電源システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、車両に搭載された燃料電池システムの概略構成図である。
図2図2は、昇圧コンバータの回路構成を示す図である。
図3図3Aは、パターンAによる3相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図3Bは、パターンAによる3相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図4図4Aは、パターンAによる2相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図4Bは、パターンAによる2相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図5図5Aは、パターンAによる1相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図5Bは、パターンAによる1相駆動でのリアクトル電流を示したグラフである。
図6図6Aは、パターンBによる3相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図6Bは、パターンBによる3相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図7図7Aは、パターンBによる2相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図7Bは、パターンBによる2相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図8図8Aは、パターンA及びBでのリップル電流の大きさを比較した表であり、図8Bは、パターンA及びBでの位相及び位相差を示した図である。
図9図9は、パターン選択制御の一例を示したフローチャートである。
図10図10A及び図10Bは、算出された予測電流値の推移を示したグラフの一例である。
図11図11は、図10A及び図10Bで示した予測電流値とその予測電流値に制御される時間の関係を示したグラフである。
図12図12は、第1変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。
図13図13は、第2変形例での燃料電池システムの構成図である。
図14図14は、第2変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。
図15図15Aは、パターンCによる3相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図15Bは、パターンCによる3相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図16図16Aは、パターンCによる2相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフであり、図16Bは、パターンCによる2相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図17図17Aは、パターンA~Cのリップル電流の大きさを比較した表であり、図17Bは、パターンCの位相及び位相差を示した図である。
図18図18は、第3変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。
図19図19Aは、パターンDによる3相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図19Bは、パターンDによる3相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図20図20Aは、パターンDによる2相駆動でのスイッチング素子の動作を示したグラフであり、図20Bは、パターンDによる2相駆動でのリアクトル電流と昇圧コンバータの出力電流を示したグラフである。
図21図21Aは、パターンA~Dのリップル電流の大きさを比較した表であり、図21Bは、パターンDの位相及び位相差を示した図である。
図22図22は、第4変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。
図23図23は、第5変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。
図24図24は、第6変形例での昇圧コンバータの回路構成を示す図である。
図25図25は、パターンE~Gの位相及び位相差を示した図である。
図26図26は、第7変形例での昇圧コンバータの回路構成を示す図である。
図27図27は、パターンH~Jの位相及び位相差を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[燃料電池システムの概略構成]
図1は、車両に搭載された燃料電池システム1の概略構成図である。燃料電池システム1は、ECU(Electronic Control Unit)4、二次電池(以下、BATと称する)7、バッテリコンバータ(以下、BDCと称する)8、インバータ(以下、INVと称する)9、燃料電池スタック(以下、FCと称する)10、昇圧コンバータ(以下、FDCと称する)20、及びナビゲーション装置50を含む。尚、図1には示していないが、燃料電池システム1は、FC10に酸化剤ガス及び燃料ガスをそれぞれ供給する酸化剤ガス供給系及び燃料ガス供給系を備えている。また、車両には、走行用のモータMや、車輪W、アクセル開度センサ5、及びイグニッションスイッチ6を備えている。
【0019】
FC10は、燃料ガスと酸化剤ガスの供給を受けて発電する。FC10は、固体高分子電解質型の単セルを複数積層している。単セルは、電解質膜の両面に電極を配置した発電体である膜電極接合体と、膜電極接合体を挟持する一対のセパレータと、を備える。電解質膜は、スルホン酸基を有するフッ素系樹脂材料又は炭化水素系樹脂材料で形成された固体高分子膜であり、湿潤状態において良好なプロトン伝導性を有する。電極は、カーボン担体と、スルホン酸基を有する固体高分子であって湿潤状態で良好なプロトン伝導性を有するアイオノマーと、を含んで構成されている。カーボン担体には、発電反応を促進させるための触媒(例えば白金又は白金-コバルト合金など)が担持されている。各単セルには、反応ガスや冷却水を流すためのマニホールドが設けられている。マニホールドを流れる反応ガスは、各単セルに設けられたガス流路を介して、各単セルの発電領域に供給される。
【0020】
FDC20は、FC10からの出力される直流電圧を所定の昇圧比に昇圧して、FC10の出力電力をINV9に供給するDC/DCコンバータであり、電力変換器の一例である。INV9は、入力された直流電力を三相交流電力に変換してモータMへ供給する。モータMは、車輪Wを駆動して車両を走行させる。BDC8は、双方向のDC/DCコンバータである。すなわち、BDC8は、FDC20によって調整された直流電圧を降圧し、又はBAT7の直流電圧を昇圧してBAT7の出力電力をINV9に供給する。なお、必ずしもBDC8を備える必要はなく、この場合にはINV9が電力変換器として機能する。BAT7は、FC10の電力を蓄電可能である。
【0021】
ECU4は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含む。ECU4は、アクセル開度センサ5、イグニッションスイッチ6、電流センサ10A、電圧センサ10V、FDC20、BDC8、ナビゲーション装置50が電気的に接続されている。ナビゲーション装置50の記憶装置には、地図データや車両1の過去の走行履歴等が記憶されている。また、ナビゲーション装置50は、車両の位置情報を取得するGPS(Global Positioning System)受信機を内蔵している。ECU4は、アクセル開度センサ5の検出値等に基づいて、FC10の出力電力を制御する。また、ECU4は、電流センサ10Aが測定したFC10の出力電流値、及び電圧センサ10Vが測定したFC10の出力電圧値を取得する。また、ECU4は、FDC20を制御する制御装置の一例であり、詳しくは後述するが、駆動相数制御部、記憶部、選択部、オンオフ制御部、及び予測部を備え、これらはECU4のCPU、ROM、及びRAMにより機能的に実現される。尚、ECU4とFDC20とは、多相コンバータシステムの一例であり、ECU4とFDC20とFC10とは、電源システムの一例である。
【0022】
[FDCの回路構成]
図2は、FDC20の回路構成を示す図である。図2には、FC10とINV9についても示している。FDC20は、m相式の多相コンバータであり、本実施例ではm=3である。従って、FDC20は、3個のコンバータ回路20a~20cとコンデンサ24とを備えている。尚、mは3以上の整数であればよい。コンバータ回路20aは、リアクトル21a、電流センサ22a、及びインテリジェントパワーモジュール(IPM:Intelligent Power Module)23aを含む。コンバータ回路20bは、リアクトル21b、電流センサ22b、及びIPM23bを含む。コンバータ回路20cは、リアクトル21c、電流センサ22c、及びIPM23cを含む。IPM23aは、スイッチング素子36a及びダイオード37aを含む。IPM23bは、スイッチング素子36b及びダイオード37bを含む。IPM23cは、スイッチング素子36c及びダイオード37cを含む。尚、スイッチング素子36a~36cを、本明細書ではそれぞれSW36a~36cと称する。
【0023】
リアクトル21aと電流センサ22aとダイオード37aは、直列に接続されている。同様に、リアクトル21bと電流センサ22bとダイオード37bも直列に接続されている。リアクトル21cと電流センサ22cとダイオード37cも直列に接続されている。直列に接続されたこれらの部品は、FC10の正極側とINV9の正極側との間で並列に接続されている。これにより、リアクトル21a~21c、IPM23a~23cのそれぞれを流れる電流値を小さくして発熱を抑制することができる。SW36aは、リアクトル21aとダイオード37aとの間と、FC10の負極側との間に接続されている。同様に、SW36bは、リアクトル21bとダイオード37bとの間と、FC10の負極側との間に接続されている。SW36cは、リアクトル21cとダイオード37cとの間と、FC10の負極側との間に接続されている。リアクトル21a~21cは、例えば構成や性能も同じ同一部品であるが、これに限定されない。電流センサ22a~22cは、リアクトル21a~21cに下流側で接続されているが、これに限定されず上流側で接続されていてもよい。FC10とリアクトル21a~21cは、バスバー又はケーブル等の導電部材でそれぞれ電気的に接続されている。
【0024】
ECU4は、SW36a~36cのそれぞれを、例えば同じ一定の周期でオンオフを切り替える。SW36a~36cのオンオフが切り替えられることにより、SW36a~36cをそれぞれ流れる電流が制御される。SW36a~36cのオンオフは、SW36a~36cに供給されるパルス信号のデューティ比に基づいて制御される。デューティ比とは、オンオフの1周期に占めるオン状態の時間の割合である。ECU4は、電流センサ22a~22cで検出された電流値や目標昇圧比に基づいて、このデューティ比を決定する。
【0025】
SW36aがオンになると、FC10からリアクトル21aを介してSW36aに電流が流れ始め、リアクトル21aに直流励磁による磁気エネルギが蓄積される。SW36aがオフになると、オンの期間にリアクトル21aに蓄積された磁気エネルギは、電流として、ダイオード37aを介して、INV9に出力される。従って、SW36a~36cの各デューティ比を制御することによって、リアクトル21a~21cのそれぞれに蓄積されるエネルギー(時間平均)を制御することができ、リアクトル21a~21cのそれぞれに平均的に流れる電流(実効電流)を制御することができる。
【0026】
SW36aがオフにされたときにリアクトル21aに蓄積された磁気エネルギによって生じる誘導電圧は、FC10の出力電圧に重ね合わされ、INV9にはFC10の出力電圧よりも高い電圧が印加される。SW36b及び36c、及びリアクトル21b及び21cについても同様である。ECU4は、SW36a~36cが順次オンとなるように制御信号を送信し、FC10の出力電圧に、順次誘導電圧が重ね合わせられる。これによって、INV9に入力される電圧が、FC10の出力電圧より高く維持される。尚、コンデンサ24は、ダイオード37a~37cとINV9の正極側との間と、INV9の負極側との間に接続されており、電圧変動を低減する役割を果たす。
【0027】
ECU4は、コンバータ回路20a~20cのSW36a~36cの位相を規定した位相パターンとして、パターンA又はBを選択する。パターンAでのSW36a~36cのそれぞれの位相は、0°、120°、240°である。パターンBでのSW36a~36cのそれぞれの位相は、0°、180°、270°である。これらの位相は、スイッチング素子のオンタイミングを規定している。パターンA及びBは、予めECU4のROMに記憶されている。ECU4のROMは記憶部の一例である。パターンA及びBについては詳しくは後述する。
【0028】
ここで、ECU4は、SW36a~36cを略同じ周期で且つ略同じデューティ比でオンオフ制御する。ここで略同じ周期とは、SW36a~36cの各周期が完全一致していることに限定されない趣旨であり、オンオフが繰り返されるSW36a~36cの各位相差が所定期間内でほぼ変化しない程度に周期がずれていてもよい。例えば、SW36a~36cへの駆動信号の送信速度にばらつきなどがある場合には、各周期が完全に一致しない場合があるからである。略同じデューティ比とは、SW36a~36cの各デューティ比が完全一致していることに限定されない趣旨であり、例えば、リアクトル21a~21cのそれぞれに流れるリアクトル電流の1周期内での平均値が略同じとみなせる所定範囲内にあれば、各デューティ比が完全一致していなくてもよい。例えば、リアクトル21a~21cのそれぞれとFC10とを接続するバスバーの抵抗値にばらつきなどがあり、各デューティ比を完全一致させると、各リアクトル電流の平均値が略同じとはみなせない程度に異なる可能性があるからである。
【0029】
また、ECU4は、電流センサ10Aにより測定されたFDC20への入力電流値を取得し、FDC20への入力電流値が増大するほどコンバータ回路20a~20cの駆動相数も増大させる処理を実行する。具体的には、SW36a~36cの何れか一つのみをオンオフ制御する1相駆動、SW36a~36cの何れか2つをオンオフ制御する2相駆動、SW36a~36cの全てをオンオフ制御する3相駆動の間で切り替えられる。このような処理は、駆動相数制御部及びオンオフ制御部が実行する処理の一例である。
【0030】
尚、ECU4は、FDC20への入力電力値が増大するほど、又はFDC20への入力電圧値が低下するほど、コンバータ回路20a~20cの駆動相数を増大させてもよい。また、FDC20からの目標出力電流値が増大するほど、又はFDC20からの目標出力電力値が増大するほど、FDC20からの目標出力電圧値が増大するほど、コンバータ回路20a~20cの駆動相数を増大させてもよい。尚、上記の何れの場合も、FC10の発電電力が増大してFDC20への入力電流値が増大する場合に相当するからである。
【0031】
[パターンA及びB(m=3、n=2)]
次に、パターンA及びBでの、3個(m=3)のコンバータ回路20a~20cを駆動した場合(以下、3相駆動と称する)と2個(n=2)のコンバータ回路20a及び20bを駆動した場合(以下、2相駆動と称する)と、1個のコンバータ回路20aを駆動した場合(以下、1相駆動と称する)について説明する。尚、上述したようにmは3以上の整数であり、nはmよりも小さい2以上の整数であって且つmの約数以外の整数である。
【0032】
[パターンA(m=3、n=2)]
最初に、パターンAについて説明する。図3Aは、パターンAによる3相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図3Bは、パターンAによる3相駆動でのリアクトル電流Ia~IcとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。図3A及び図3Bにおいて、横軸は位相を示している。図3Aの縦軸は、スイッチング素子のオンオフ状態を示している。図3Bの縦軸は電流を示している。本実施例では、SW36a~36cの各デューティ比は0.5の場合を例示している。リアクトル電流Ia~Icは、それぞれ21a~21cに流れる電流である。FDC20の出力電流ITは、リアクトル電流Ia~Icを合成した電流である。
【0033】
図4Aは、パターンAによる2相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図4Bは、パターンAによる2相駆動でのリアクトル電流Ia及びIbとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。2相駆動では、SW36a及び36bがオンオフ制御され、SW36cのオンオフ制御は停止される。このためリアクトル電流Icは流れない。
【0034】
図5Aは、パターンAによる1相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図5Bは、パターンAによる1相駆動でのリアクトル電流Iaを示したグラフである。1相駆動では、SW36aのみがオンオフ制御され、SW36b及び36cのオンオフ制御は停止される。このためリアクトル電流Ib及びIcは流れない。1相駆動では、リアクトル電流IaがFDC20の出力電流ITとなる。
【0035】
パターンAにおいて、デューティ比が0.5のときの出力電流ITのリップル電流は、各相に流れる電流が同じである場合を比較したときに、1相駆動時は2相駆動時及び3相駆動時よりも大きく、3相駆動時は1相駆動時及び2相駆動時よりも小さい。ここで、出力電流ITのリップル電流の大きさが最大となる1相駆動時での出力電流ITのリップル電流の大きさを1とすると、パターンAによる2相駆動時での出力電流ITのリップル電流の大きさは2/3であり、パターンAによる3相駆動時でのリップル電流の大きさは1/3である。尚、出力電流ITのリップル電流とは、出力電流ITの最大値と最小値との差を示す。以降、本明細書において単にリップル電流と称する場合には、リアクトル電流Ia~Icではなく、出力電流ITのリップル電流を意味する。
【0036】
[パターンB(m=3、n=2)]
次に、パターンBについて説明する。図6Aは、パターンBによる3相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図6Bは、パターンBによる3相駆動でのリアクトル電流Ia~IcとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。リアクトル電流Ia~Icは、それぞれリアクトル21a~21cに流れる電流である。図7Aは、パターンBによる2相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図7Bは、パターンBによる2相駆動でのリアクトル電流Ia及びIbとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。尚、パターンBによる1相駆動でのSW36a~36cの動作やリアクトル電流Ia~Icは、パターンAによる1相駆動の場合と同じである。
【0037】
各相に流れる電流が同じである場合を比較したときに、上述したように1相駆動時でのリップル電流の大きさを1とすると、パターンBによる2相駆動時でのリップル電流の大きさは0であり、パターンBによる3相駆動時でのリップル電流の大きさは1である。
【0038】
[パターンA及びBの比較]
図8Aは、パターンA及びBでのリップル電流の大きさを比較した表である。3相駆動でのリップル電流は、パターンAの方がパターンBよりも小さい。これに対して、2相駆動でリップル電流は、パターンBの方がパターンAよりも小さい。リップル電流が小さい方が損失は低減できるため、パターンAは3相駆動に適しており、パターンBは2相駆動に適している。
【0039】
図8Bは、パターンA及びBでの位相及び位相差を示した図である。パターンAでは各位相差は次のように規定されている。SW36aとSW36bの位相差DA(a―b)、SW36bとSW36cの位相差DA(b―c)、及びSW36cとSW36aの位相差DA(c―a)は、それぞれ120°である。パターンBでは、SW36aとSW36bの位相差DB(a―b)は180°であり、SW36bとSW36cの位相差DB(b―c)は90°であり、SW36cとSW36aの位相差DB(c―a)は90°である。
【0040】
ここで、パターンA及びBのうちどちらが2相駆動に適したパターンであるか、以下のようにして特定できる。パターンAでの位相差DA(a―b)、DA(b―c)、及びDA(c―a)のうちの最大値は、全て同じ120°である。パターンBでの位相差DB(a―b)、DB(b―c)、及びDB(c―a)のうち最大値は、DB(a―b)=180°である。パターンAでの上記の最大値と180°との差分の絶対値は、60°である。パターンBでの上記の最大値と180°との差分の絶対値は、0°である。ここで180°は、360°/n=360°/2によって算出された値であり、2相駆動の際に最も出力電流ITのリップル電流が小さくなる位相差である。上記の絶対値は、パターンBの方がパターンAよりも小さい。このように絶対値が小さいパターンの方が、2相駆動に適している。従って、パターンBの方がパターンAよりも2相駆動に適している。換言すれば、パターンAの方がパターンBよりも3相駆動に適している。
【0041】
また、パターンBによる2相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、以下のようにして特定できる。図8Bに示すように、パターンBによる3相駆動の際に順にオンにされるように規定された任意の3つのスイッチング素子のうち最初にオンにされるスイッチング素子の位相と最後にオンにされるスイッチングの位相の位相差は次のように規定されている。SW36aとSW36cの位相差DB(a―c)は270°である。SW36bとSW36aの位相差DB(b―a)は180°である。SW36cとSW36bの位相差DB(c―b)は270°である。これらの3つ位相差のうち、位相差DB(b―a)が最小となる。オンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、3相駆動の際に最小となる位相差を規定するSW36bのオンタイミングとSW36aのオンタイミングとの間でオンにされるSW36cである。2相駆動時にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DB(a―b)=DB(b―a)=180°となり、360°/2=180°と一致する。
【0042】
例えば、2相駆動の際にSW36aのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DB(b―c)=90°、DB(c―b)=270°となり、SW36cを停止した場合よりも各位相差と180°との差分が増大する。同様に、2相駆動の際にSW36bのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DB(a―c)=270°、DB(c―a)=90°となり、SW36cを停止した場合よりも各位相差と180°との差が増大する。このため、SW36a~36cのうちSW36cのオンオフ制御を停止することにより、パターンBによる2相駆動でのリップル電流を抑制できる。
【0043】
尚、パターンAによる2相駆動の際にSW36cのオンオフ制御が停止されるが、DA(a―b)=DA(b―c)=DA(c―a)=120°であるため、これに限定されずSW36a~36cのうち何れか一つのオンオフ制御を停止すればよい。また、1相駆動の際にはパターンA及びBの何れの場合もSW36a~36cの何れか2つのオンオフ制御を停止すればよい。
【0044】
[パターン選択制御]
図9は、パターン選択制御の一例を示したフローチャートである。パターン選択制御は、所定の時間ごとに繰り返し実行される。ECU4は、FC10が出力することが予測される電流値である予測電流値の推移を算出する(ステップS1)。ステップS1の処理は、予測部が実行する処理の一例である。
【0045】
予測電流値の推移は、以下のようにして算出する。ECU4は、車両の現在地から目的地までの走行予定経路に関する走行予定経路情報を取得する処理を実行する。走行予定経路は、車両の現在地から、ユーザによってナビゲーション装置50に設定された目的地までナビゲーション装置50が案内する経路、又は目的地が設定されていない場合にはナビゲーション装置50に記憶されている過去の走行履歴から推測される経路である。ECU4は、走行予定経路情報として、ナビゲーション装置50から取得できる走行予定経路の道路情報(高速道路、登坂路、降坂路、渋滞、信号等)を取得する。この処理は、ECU4のCPU、ROM、RAMにより機能的に実現される、走行予定経路情報を取得する経路取得部が実行する処理の一例である。ECU4は、これらの情報に基づいて走行予定経路上での各地点での車両の走行速度を予測する。予測された走行速度と道路勾配とを考慮して、各時刻でのモータMの予測出力を算出する。これと並行して、燃料電池システム1の補機の予測出力を算出する。また、外気温や空調装置の設定温度の情報から、空調装置の予測出力を算出する。上記の各予測出力の合計により、各時刻での外部負荷全体の予測要求出力を算出する。次に、ECU4は、BAT7の充電残量を考量しながら、FC10への予測要求出力を算出し、ECU4に記憶されたFC10の電流-電力特性を参照して、各時刻でのFC10の予測電流値を算出する。ここで、FC10はFDC20に接続されているため、FC10の出力電流はFDC20への入力電流に一致する。
【0046】
次に、ECU4は、FDC20が停止中であるか否かを判定する(ステップS3)。例えば、車両が一時停車してFC10への燃料ガスの供給が継続されるが発電が停止した間欠運転状態となった場合には、SW36a~36cは全てのオンオフ制御が停止され、FDC20は停止状態となる。ステップS3でNoの場合、即ち、SW36a~36cの少なくとも一つに対してオンオフ制御が実行されている場合には、本制御は終了する。
【0047】
ステップS3でYesの場合、ECU4は、予測電流値の平均値が閾値α以上であるか否かを判定する(ステップS5)。予測電流値の平均値は、例えば現時点から目的値までの各時刻での予測電流値を積算して、これを現時点から目的地に到達するまでの時間で除することにより算出できる。閾値αは、例えば2相駆動から3相駆動に切り替えられる際のFDC20への入力電流値、換言すれば2相駆動から3相駆動に切り替えられる際のFC10の出力電流値に設定されている。ステップS5でYesの場合、車両が現在地から目的地に到達するまでの所定時間内において、FDC20が3相駆動に制御される時間の方が2相駆動に制御される時間よりも長いと予測できる。従ってこの場合は、ECU4は位相パターンとして3相駆動に適したパターンAを選択する(ステップS7)。ステップS5でNoの場合には、FDC20が2相駆動に制御される時間の方が3相駆動に制御される時間よりも長いと予測でき、ECU4は位相パターンとしてパターンBを選択する(ステップS9)。ステップS7及びS9の処理は、選択部が実行する処理の一例である。
【0048】
図10A及び図10Bは、算出された予測電流値の推移を示したグラフの一例である。図10Aは、算出された予測電流値Paの平均値PaAが比較的大きい場合を示しており、図10Bは、算出された予測電流値Pbの平均値PbAが比較的小さい場合を示している。予測電流値Pa及びPbは、現時点から目的地までに要する時間は同じであるが異なる走行予定経路に基づいて算出されている。図10Aのように平均値PaAが閾値α以上の場合には、パターンAが選択される。図10Bのように平均値PbAが閾値α未満の場合には、パターンBが選択される。
【0049】
図11は、図10A及び図10Bで示した予測電流値とその予測電流値に制御される時間の関係を示したグラフである。 横軸は予測電流値、縦軸は時間を示している。また、図11には、1相駆動、2相駆動、及び3相駆動にそれぞれ制御される予測電流値の範囲を示している。予測電流値Paは、3相駆動に制御される時間割合は、2相駆動に制御される時間割合や1相駆動に制御される時間割合よりも大きい。予測電流値Pbは、1相駆動に制御される時間割合が、2相駆動に制御される時間割合や3相駆動に制御される時間割合よりも大きく、2相駆動に制御される時間割合は3相駆動に制御される時間割合よりも大きい。また、2相駆動の駆動時間に対する3相駆動の駆動時間の割合は、予測電流値Paの方が予測電流値Pbよりも大きい。一般に、予測電流値の平均値が大きいときは、平均値が小さいときと比較して、3相駆動に制御される時間割合が大きい。従って、図10に示した予測電流値Paの平均値PaAや予測電流値Pbの平均値PbAは、所定時間内において2相駆動に制御されると予測される時間に対する3相駆動に制御されると予測される時間の割合である時間割合に相関する予測相関値の一例といえる。
【0050】
このように、予測電流値の平均値が閾値α以上の場合には、3相駆動に制御される時間が比較的長いと予測し、FDC20の停止中に位相パターンは3相駆動に適したパターンAが選択される。また、予測電流値の平均値が閾値α未満の場合には、1相駆動や2相駆動に制御される時間が比較的長いと予測し、FDC20の停止中に位相パターンは2相駆動に適したパターンBが選択される。このようにFDC20の停止中に位相パターンが選択されるため、FDC20の駆動中に位相パターンを切り替える場合よりも簡易な制御により実行できる。また、予測電流値の平均値に従って、最適なパターンが選択されるため、リップル電流を低減でき、リップル電流による損失の増大を抑制できる。
【0051】
ステップS1において、ECU4はナビゲーション装置50から走行予定経路の道路情報を取得したがこれに限定されず、例えば無線通信ネットワークを介して走行予定経路の道路情報が記憶された外部サーバから取得してもよい。
【0052】
ステップS1において、ECU4はナビゲーション装置50に設定された現在地から目的地までの予測電流値の推移を算出したが、これに限定されず、車両の現在値から次に車両が一時停止してFDC20が停止すると予測される地点までの予測電流値の推移を算出してもよい。この場合、FDC20が停止した際に、その地点から目的値又は再びFDC20が停止すると予測される地点まで予測電流値の推移を算出してもよい。これにより短い経路毎に予測電流値の推移を算出するため、その経路に適した位相パターンでFDC20を駆動させることができ、FDC20でのリップル電流の増大に伴う損失を抑制できる。
【0053】
所定時間内における、予測電流値が所定値未満となる合計時間と、予測電流値が所定値以上となる合計時間とを予測してもよい。この場合も、前者の合計時間に対する後者の合計時間の時間割合が閾値以上を示す場合にはパターンAを選択し、時間割合が閾値未満を示す場合にはパターンBを選択してもよい。この場合、この時間割合そのものが予測相関値の一例である。
【0054】
尚、パターンAは、m相駆動に制御される時間割合が相対的に大きいときに選択される第1パターンの一例であり、パターンBは、m相駆動に制御される時間割合が相対的に小さいときに選択される第2パターンの一例である。
【0055】
[第1変形例]
次に、複数の変形例について説明する。尚、複数の変形例において、上述した実施例と同一の構成や同一の処理については同一の符号を用いて、重複する説明を省略する。図12は、第1変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。ECU4は、FDC20の駆動状態に関する履歴情報を取得する(ステップS1a)。FDC20の駆動状態に関する履歴情報とは、具体的には過去のFDC20の2相駆動に制御された累積駆動時間と3相駆動に制御された累積駆動時間であり、ECU4のRAMに記憶されている。ステップS1aの処理は、ECU4のCPU、ROM、RAMにより機能的に実現される履歴取得部が実行する処理の一例である。
【0056】
ステップS3でYesの場合、2相駆動に制御された累積駆動時間に対する3相駆動に制御された累積駆動時間の時間割合が閾値β以上か否かを判定する(ステップS5a)。閾値βは、例えば1であるがこれに限定されない。上記の時間割合は、上述した予測相関値の一例である。閾値βは、第1閾値の一例である。ステップS5aでYesの場合には、ECU4はパターンAを選択し(ステップS7)、ステップS5aでNoの場合には、ECU4はパターンBを選択する(ステップS9)。
【0057】
このように実際に2相駆動に制御された累積駆動時間と3相駆動に制御された累積駆動時間に基づいて、2相駆動に制御される時間長いか又は3相駆動に制御される時間が長いかを予測するため、予測精度が向上し、また予測するための制御処理の負担も低減されている。また、上記の履歴情報は、例えば直近数か月以内のものを取得してもよい。これにより、運転者が変更された場合や、運転者の運転特性の変化にも対応できる。また、履歴情報を所定期間ごと、例えば1か月ごとに更新してもよい。
【0058】
[第2変形例]
図13は、第2変形例での燃料電池システム1aの構成図である。燃料電池システム1aは、運転モードを選択可能な運転モードスイッチ52を備えている。運転者は運転モードスイッチ52を操作することにより、運転モードを、ノーマルモード、スポーツモード、及びエコモードの何れかに選択することができる。スポーツモードは、アクセルペダルの操作に対するFC10の出力応答性が高く設定される。エコモードは、アクセルペダルの操作に対するFC10の出力応答性が低く設定される。ノーマルモードは、アクセルペダルの操作に対するFC10の出力応答性が、スポーツモードとエコモードとの間の中程度に設定される。この運転モードスイッチ52で選択された運転モードの出力信号は、ECU4に入力されるようになっている。
【0059】
図14は、第2変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。ECU4は、運転モードスイッチ52で選択された運転モードの出力信号に基づいて、現在選択されている運転モードに関する運転モード情報を取得する(ステップS1b)。ステップS1bの処理は、ECU4のCPU、ROM、RAMにより機能的に実現される運転モード取得部が実行する処理の一例である。
【0060】
次にステップS3でYesの場合には、運転モードがスポーツモードであるか否かを判定する(ステップS5b)。ステップS5bでYesの場合には、車両は高速運転される時間が比較的長いと予測でき、2相駆動の駆動時間よりも3相駆動の駆動時間の方が長いと予測できる。詳細には、所定時間内において2相駆動に制御されると予測される時間に対する3相駆動に制御されると予測される時間の割合である時間割合が閾値以上であると予測できる。このため、パターンAが選択される(ステップS7)。ステップS5bでNoの場合、即ち、運転モードがノーマルモードかエコモードの場合には、車両は低速運転される時間が比較的長いと予測でき、2相駆動の駆動時間の方が3相駆動の駆動時間よりも長いと予測できる。詳細には、上記の時間割合が閾値未満であると予測できる。このため、パターンBが選択される(ステップS9)。
【0061】
このように、選択された運転モードによって、所定時間内において2相駆動に制御されると予測される時間に対する3相駆動に制御されると予測される時間の割合である時間割合を予測できる。従って、運転モードはこの時間割合に相関した予測相関値の一例である。本変形例では、運転モードがスポーツモードである場合には、上述した時間割合が第1閾値以上であることを示す。運転モードがノーマルモード又はエコモードである場合には、上述した時間割合が第1閾値未満であることを示す。しかしながらこれに限定されず、例えば運転モードがスポーツモード又はノーマルモードである場合には、上述した時間割合が第1閾値以上であるとしてパターンAを選択し、運転モードがエコモードである場合には、上述した時間割合が第1閾値未満であるとしてパターンBを選択してもよい。
【0062】
上記実施例で示した予測電流値や、第1変形例で示した履歴情報、第2変形例で示した運転モードのうち少なくとも2つを総合的に判断して、位相パターンを選択してもよい。
【0063】
[第3変形例]
[パターンA~C、m=3、n=2]
第3変形例では、位相パターンはパターンA~Cの何れかが選択される。パターンCは、ECU4のメモリに予め記憶されている。パターンCでのSW36a~36cのそれぞれの位相は、0°、140°、250°である。図15Aは、パターンCによる3相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図15Bは、パターンCによる3相駆動でのリアクトル電流Ia~IcとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。図16Aは、パターンCによる2相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図16Bは、パターンCによる2相駆動でのリアクトル電流Ia及びIbとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。
【0064】
図17Aは、パターンA~Cのリップル電流の大きさを比較した表である。各相に同じ電流値を流した場合、1相駆動での出力電流ITのリップル電流の大きさを1とすると、パターンCによる2相駆動での出力電流ITのリップル電流の大きさは4/9であり、パターンCによる3相駆動でのリップル電流の大きさは5/9である。パターンA~Cを比較すると、2相駆動でのリップル電流は、パターンCはパターンAよりも小さくパターンBよりも大きい。3相駆動でのリップル電流は、パターンCはパターンBよりも小さくパターンAよりも大きい。
【0065】
図17Bは、パターンCの位相及び位相差を示した図である。パターンCでの各位相差は以下のように規定されている。SW36aとSW36bの位相差DC(a―b)は140°である。SW36bとSW36cの位相差DC(b―c)と、SW36cとSW36aの位相差DC(c―a)とはそれぞれ110°である。
【0066】
パターンA及びCのうちどちらが2相駆動に適したパターンであるかは、以下のようにして特定できる。パターンCでは、位相差Dc(a―b)、Dc(b―c)、及びDc(c―a)のうちの最大値は、Dc(a―b)=140°である。パターンCでのこの最大値と180°との差分の絶対値は40°である。これに対して、上述したようにパターンAによる3相駆動で順にオンにされる2つのスイッチング素子の位相差は全て同じ120°であるためその最大値も120°であり、120°と180°の差分の絶対値は、60°である。上記の絶対値は、パターンCの方がパターンAよりも小さい。従って、パターンCの方がパターンAよりも2相駆動に適している。換言すれば、パターンAの方がパターンCよりも3相駆動に適している。
【0067】
同様に、パターンB及びCのうちどちらが2相駆動に適したパターンであるかは、以下のようにして特定できる。上述したように、パターンBでの上記の絶対値は0°であり、パターンCでの上記の絶対値は40°である。上記の絶対値は、パターンBの方がパターンCよりも小さいため、パターンBの方がパターンCよりも2相駆動に適している。換言すれば、パターンCの方がパターンBよりも3相駆動に適している。以上により、パターンCは、パターンAよりは3相駆動に適していないがパターンBよりも3相駆動に適しており、パターンBよりは2相駆動に適していないがパターンAよりも2相駆動に適している。このためパターンCでは、2相駆動及び3相駆動の双方でリップル電流が大きく増大することを抑制できる。
【0068】
また、パターンCにおいて、位相差の最大値であるDC(a―b)は、以下の条件を満たす。
120°(=360°/m=360°/3)<DC(a―b)<180°(=360°/n=360°/2)
C(a―b)<DC(a―c)<360°(=(360°/m)×3=(360°/3)×3)
C(a―b)=140°であり、DC(a―c)=250°であるため、上記の条件を満たす。これに対してパターンAでは、DA(a―b)=120°であるため120°<DA(a―b)を満たさない。パターンBでは、DB(a―b)=180°であるためDB(a―b)<180°を満たさない。パターンCはこのような条件を満たすことによっても、パターンAよりは3相駆動に適していないがパターンBよりも3相駆動に適しており、パターンBよりは2相駆動に適していないがパターンAよりも2相駆動に適しているといえる。
【0069】
パターンCによる2相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、以下のようにして特定できる。図17Bに示すように、パターンCでは、SW36aとSW36cの位相差DC(a―c)は250°であり、SW36bとSW36aの位相差DC(b―a)は220°であり、SW36cとSW36bの位相差DC(c―b)は250°である。これらの3つ位相差のうち、位相差DC(b―a)が最小となる。オンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、この最小となる位相差を規定するSW36bのオンタイミングとSW36aのオンタイミングとの間でオンにされるSW36cである。2相駆動時にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、Dc(a―b)=140°、Dc(b―a)=220°となる。
【0070】
例えば、パターンCによる2相駆動の際にSW36aのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DC(b―c)=110°、DC(c―b)=250°となる。ここで、DC(b―c)と180°の差分の絶対値、及びDC(c―b)と180°の差分の絶対値は、それぞれ70°である。また、2相駆動の際にSW36bのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DC(a―c)=250°、DC(c―a)=110°である。ここで、DC(a―c)と180°の差分の絶対値、及びDC(c―a)と180°の差分の絶対値は、それぞれ70°である。これに対して、2相駆動の際にSW36cのオンオフ制御を停止した場合には、Dc(a―b)と180°との差分の絶対値、及びDc(b―a)と180°の差分の絶対値は、それぞれ40°となる。以上のように、2相駆動の際にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の方が、上記の絶対値は小さくなり、2相駆動に適していることを示す。
【0071】
尚、1相駆動の際には、パターンA及びBと同様に、パターンCでもSW36a~36cのうち何れか2つのオンオフ制御を停止すればよい。
【0072】
図18は、第3変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。ステップS3でYesの場合、予測電流値の平均値が閾値α1以上であるか否かが判定される(ステップS5c)。ステップS5cでYesの場合、パターンAが選択される(ステップS7)、ステップS5cでNoの場合には、予測電流値の平均値が閾値α2以上であるか否かが判定される(ステップS5d)。ここで、閾値α2は閾値α1よりも小さい。閾値α1は第1閾値の一例であり、閾値α2は閾値α1未満である第2閾値の一例である。ステップS5dでNoの場合には、パターンBが選択される(ステップS9)。ステップS5dでYesの場合には、パターンCが選択される(ステップS8)。
【0073】
このように予測電流値の平均値が閾値α1未満であって閾値α2以上の場合には、時間割合(所定時間内において2相駆動に制御されると予測される時間に対する3相駆動に制御されると予測される時間の割合)は、予測電流値が閾値α1以上の場合ほど大きくなく、予測電流値が閾値α2未満の場合ほど小さくないと予測できる。このため、このような場合にパターンCが選択されることにより、出力電流ITのリップル電流の低減を2相駆動時及び3相駆動時で両立できる。
【0074】
第3変形例において、第1変形例のようにFDC20の履歴情報を取得し、ステップS5cで、2相駆動の累積駆動時間に対する3相駆動の累積駆動時間の時間割合が第1閾値以上であるか否かを判定し、ステップS5dでこの時間割合が第2閾値以上であるか否かを判定してもよい。また、第3変形例において、第2変形例のように運転モードを選択可能な車両の場合には、ステップS5cにおいて運転モードがスポーツモードか否かを判定し、ステップS5dにおいて運転モードがノーマルモードか否かを判定してもよい。また、予測電流値や、第1変形例で示した履歴情報、第2変形例で示した運転モードのうち少なくとも2つを総合的に判断して、位相パターンを選択してもよい。
【0075】
[第4変形例]
[パターンA~D、m=3、n=2]
第4変形例では、位相パターンはパターンA~Dの何れかが選択される。パターンDは、ECU4のメモリに予め記憶されている。パターンDでのSW36a~36cのそれぞれの位相は、0°、160°、260°である。図19Aは、パターンDによる3相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図19Bは、パターンDによる3相駆動でのリアクトル電流Ia~IcとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。図20Aは、パターンDによる2相駆動でのSW36a~36cの動作を示したグラフである。図20Bは、パターンDによる2相駆動でのリアクトル電流Ia及びIbとFDC20の出力電流ITを示したグラフである。
【0076】
図21Aは、パターンA~Dのリップル電流の大きさを比較した表である。各相に同じ電流値を流した場合に、1相駆動での出力電流ITのリップル電流の大きさを1とすると、パターンDによる2相駆動での出力電流ITのリップル電流の大きさは2/9であり、パターンDによる3相駆動でのリップル電流の大きさは7/9である。パターンA~Dを比較すると、2相駆動でのリップル電流は、パターンDはパターンCよりも小さくパターンBよりも大きい。3相駆動でのリップル電流は、パターンDはパターンBよりも小さくパターンCよりも大きい。
【0077】
図21Bは、パターンDの位相及び位相差を示した図である。パターンDでは、SW36aとSW36bの位相差DD(a―b)は160°であり、SW36bとSW36cの位相差DD(b―c)、及びSW36cとSW36aの位相差DC(c―a)はそれぞれ100°である。
【0078】
パターンC及びDのうちどちらが2相駆動に適しているかは、以下のようにして特定できる。パターンDでは、位相差DD(a―b)、DD(b―c)、及びDD(c―a)のうち最大値は、DD(a―b)=160°である。パターンDでのこの最大値と180°との差分の絶対値は20°である。これに対して、上述したようにパターンCで絶対値は40°である。上記の絶対値は、パターンDの方がパターンCよりも小さい。従って、パターンDの方がパターンCよりも2相駆動に適している。換言すれば、パターンCの方がパターンDよりも3相駆動に適している。
【0079】
同様に、パターンB及びDのうちどちらが2相駆動に適したパターンであるかは、以下のようにして特定できる。上述したようにパターンBでの上記の絶対値は0°であり、パターンDでの絶対値は20°である。このように絶対値は、パターンBはパターンDよりも小さいため、パターンBの方がパターンDよりも2相駆動に適している。換言すれば、パターンDの方がパターンBよりも3相駆動に適している。以上により、パターンDは、パターンA及びCよりは3相駆動に適していないがパターンBよりは3相駆動に適しており、パターンBよりは2相駆動に適していないがパターンA及びCよりも2相駆動に適している。このためパターンDでは、パターンA及びBと比較して、パターンCと同様に、2相駆動及び3相駆動の双方でリップル電流が大きく増大することを抑制できる。
【0080】
また、パターンDでの位相差の最大値DD(a―b)は、以下の条件を満たす。
120°(=360°/m=360°/3)<DD(a―b)<180°(=360°/n=360°/2)
D(a―b)<DD(a―c)<360°(=(360°/m)×3=(360°/3)×3)
D(a―b)=160°であり、DD(a―c)=260°であるため、上記の条件を満たす。
【0081】
パターンDによる2相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、以下のようにして特定できる。図21Bに示すようにパターンDでは、SW36aとSW36cの位相差DD(a―c)は260°であり、SW36bとSW36aの位相差DD(b―a)は200°であり、SW36cとSW36bの位相差DD(c―b)は260°である。これらの3つの位相差のうち、位相差DC(b―a)が最小となる。オンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、この最小となる位相差を規定するSW36bのオンタイミングとSW36aのオンタイミングとの間でオンにされるSW36cである。2相駆動時にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DD(a―b)=160°、DD(b―a)=200°となる。
【0082】
例えば、2相駆動の際にSW36aのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DD(b―c)=100°、DD(c―b)=260°となる。ここで、DD(b―c)と180°の差分の絶対値、及びDD(c―b)と180°の差分の絶対値は、それぞれ80°である。また、2相駆動の際にSW36bのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DD(a―c)=260°、DD(c―a)=100°である。ここで、DD(a―c)と180°の差分の絶対値、及びDD(c―a)と180°の差分の絶対値は、それぞれ80°である。これに対して、2相駆動の際にSW36cのオンオフ制御を停止した場合には、DD(a―b)と180°との差分の絶対値、及びDD(b―a)と180°の差分の絶対値は、それぞれ20°となる。以上のように、2相駆動の際にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の方が、上記の絶対値は小さくなり、2相駆動に適していることを示す。
【0083】
尚、パターンDによる1相駆動では、SW36a~36cの何れか2つを停止すればよい。
【0084】
図22は、第4変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。ステップS5cでYesの場合、パターンAが選択される(ステップS7)、ステップS5cでNoの場合には、予測電流値の平均値が閾値α3以上か否かが判定される(ステップS5e)。ここで、閾値α3は、閾値α1と閾値α2との間の値である。ステップS5eでYesの場合、パターンCが選択される(ステップS8)。ステップS5eでNoの場合には、ステップS5dの判定が実行される。ステップS5dでYesの場合、パターンDが選択される(ステップS8a)。ステップS5dでNoの場合、パターンBが選択される(ステップS9)。このように予測電流値の平均値に応じて、より適切な位相パターンが選択されることにより、出力電流ITのリップル電流を効果的に低減できる。
【0085】
第4変形例において、例えば車両の運転モードをエコモード、コンフォートモード、ノーマルモード、及びスポーツモードから選択可能である場合には、ステップS5cにおいて運転モードがスポーツモードか否かを判定し、ステップS5eにおいて運転モードがノーマルモードか否かを判定し、ステップS5dにおいてコンフォードモードであるか否かを判定してもよい。尚、コンフォートモードは、アクセルペダルの操作に対するFC10の出力応答性が、ノーマルモードとエコモードとの間の中程度に設定される。
【0086】
[第5変形例]
[パターンC及びD、m=3、n=2]
第5変形例では、パターンC又はDが選択される。パターンC及びDは、ECU4のメモリに予め記憶されているが、パターンA及びBについては記憶されていない。図23は、第5変形例でのパターン選択制御の一例を示したフローチャートである。ステップS5でYesの場合、ECU4はパターンCを選択し(ステップS8)、ステップS5でNoの場合には、ECU4はパターンDを選択する(ステップS8a)。上述したように、パターンDはパターンCよりも2相駆動に適しており、換言すればパターンCはパターンDよりも3相駆動に適している。
【0087】
上述したパターンAの方がパターンCよりも3相駆動に適しているが、パターンAはパターンCよりも2相駆動には適していない。このため、予測電流値の平均値が閾値α以上の場合であっても、パターンAではなくパターンCが選択されることにより、リップル電流の低減を2相駆動及び3相駆動の双方において両立できる。また、上述したパターンBの方がパターンDよりも2相駆動に適しているが、パターンBはパターンDよりも3相駆動には適していない。このため、予測電流値の平均値が閾値α未満の場合であっても、パターンBではなくパターンDが選択されることにより、リップル電流の低減を2相駆動及び3相駆動の双方において両立できる。
【0088】
選択可能な位相パターンの組み合わせは、上述した実施例及び変形例で説明したものに限定されない。例えば選択可能な位相パターンの組み合わせは、パターンA及びC、パターンA及びD、パターンB及びC、パターンA、B、及びD、パターンA、C、及びD、パターンB、C、及びDの何れであってもよい。
【0089】
[第6変形例]
[パターンE~G、m=4、n=3]
図24は、第6変形例でのFDC20Aの回路構成を示す図である。FDC20Aは、4相のコンバータ回路20a~20dを備えている。コンバータ回路20dは、リアクトル21d、電流センサ22d、及びIPM23dを含む。IPM23dは、SW36d及びダイオード37dを含む。第6変形例では、FDC20Aの入力電流が増大するにつれて1相駆動から4相駆動まで順に切り替えられるがこれに限定されず、例えば1相駆動、3相駆動、及び4相駆動に順に切り替えられるものであってもよいし、2相駆動、3相駆動、及び4相駆動に順に切り替えられるものであってもよいし、3相駆動及び4相駆動に順に切り替えられるものであってもよい。
【0090】
図25は、パターンE~Gの位相及び位相差を示した図である。パターンEでのSW36a~36dのそれぞれの位相は、0°、90°、180°、270°である。パターンFでのSW36a~36dのそれぞれの位相は、0°、120°、240°、300°である。パターンGでのSW36a~36dのそれぞれの位相は、0°、100°、180°、260°である。パターンEでの各位相差は、DE(a―b)=DE(b―c)=DE(c―d)=DE(d―a)=90°である。パターンFでの各位相差は、DF(a―b)=DF(b―c)=120°、DF(c―d)=DF(d―a)=60°である。パターンGでの各位相差は、DG(a―b)=DG(d―a)=100°、DG(b―c)=DF(c―d)=80°である。
【0091】
パターンE~Gのうちいずれが3相駆動に適しているかは、以下のようにして特定できる。パターンEでの上記の位相差は全て同じ90°であり、最大値は90°である。パターンFでの上記の位相差のうち最大値は、120°である。パターンGでの上記の位相差のうち最大値は、100°である。パターンEでの上記の最大値と120°との差分の絶対値は、30°である。パターンFでの上記の最大値と120°との差分の絶対値は、0°である。パターンGでの上記の最大値と120°との差分の絶対値は、20°である。ここで120°は、360°/n=360°/3によって算出された値であり、3相駆動の際に最も出力電流ITのリップル電流が小さくなる位相差である。上記の絶対値は、パターンFが最も小さく、パターンEが最も大きい。従って、パターンEが最も4相駆動に適しており、パターンFが最も3相駆動に適しており、パターンGはパターンEよりは4相駆動には適してはいないが3相駆動に適しており且つパターンFよりは3相駆動に適してはいないが4相駆動に適している。
【0092】
また、パターンGにおいて位相差の最大値DG(a―b)は、以下の条件を満たす。
90°(=360°/m=360°/4)<DG(a―b)<120°(=360°/n=360°/3)
G(a―b)<DG(a―c)<270°(=(360°/m)×3=(360°/4)×3)
G(a―b)=100°であり、DG(a―c)=180°であるため、上記の条件を満たす。これに対してパターンE及びFでは、DE(a―b)=90°であり、90°<DE(a―b)を満たさず、DF(a―b)=120°であり、DF(a―b)<120°を満たさない。このような条件を満たすことによっても、パターンGは、パターンEよりは4相駆動には適してはいないが3相駆動に適しており且つパターンFよりは3相駆動に適してはいないが4相駆動に適しているといえる。
【0093】
パターンFでの3相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、以下のようにして特定できる。図25に示すようにパターンFでは、SW36aとSW36cの位相差DF(a―c)は240°であり、SW36bとSW36dの位相差DF(b―d)は180°であり、SW36cとSW36aの位相差DF(c―a)は120°、SW36dとSW36bとの位相差DF(d―b)は180°である。これらの4つの位相差のうち、位相差DF(c―a)が最小となる。オンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、この最小となる位相差を規定するSW36cとSW36aとの間でオンにされるSW36dである。3相駆動時にSW36dのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DF(a―b)=DF(b―c)=DF(c―a)=120°となり、パターンFにより3相駆動での出力電流ITのリップル電流を抑制できる。
【0094】
パターンGでの3相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、以下のようにして特定できる。SW36aとSW36cの位相差DG(a―c)は180°であり、SW36bとSW36dの位相差DG(b―d)は160°であり、SW36cとSW36aの位相差DG(c―a)は180°、SW36dとSW36bの位相差DG(d―b)は200°である。これらの位相差のうち、位相差DG(b―d)が最小となる。オンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、この最小となる位相差を規定するSW36bとSW36dとの間でオンにされるSW36cである。3相駆動の際にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の位相差は、DG(a―b)=DG(d―a)=100°、DG(b―d)=160°である。
【0095】
例えば、パターンGでの3相駆動の際にSW36aのオンオフ制御を停止した場合に、順にオンされる2つのスイッチング素子の位相差の最大値は、DG(d―b)=200°である。また、パターンGでの3相駆動の際にSW36bのオンオフ制御を停止した場合に、順にオンされる2つのスイッチング素子の位相差の最大値は、DG(a―c)=180°である。パターンGでの3相駆動の際にSW36dのオンオフ制御を停止した場合に、順にオンされる2つのスイッチング素子の位相差の最大値は、DG(c―a)=180°である。DG(d―b)と120°の差分の絶対値は、80°である。DG(a―c)と120°の差分の絶対値は、60°である。DG(c―a)と120°の差分の絶対値は、60°である。これに対して、3相駆動の際にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の位相差の最大値は、DG(b―d)=160°であり、DG(b―d)と120°との差分の絶対値は、40°である。以上のように、3相駆動の際にSW36cのオンオフ制御を停止した場合の方が、上記の絶対値は小さくなり、3相駆動に適していることを示す。
【0096】
例えば第6変形例では、上述した図18のように、位相パターンをステップS5cでYesの場合にパターンEを選択し、ステップS5dでYesの場合にパターンGに切り替え、ステップS5dでNoの場合にパターンFを選択してもよい。
【0097】
[第7変形例]
[パターンH~J、m=6、n=4]
図26は、第7変形例でのFDC20Bの回路構成を示す図である。FDC20Bは、6相のコンバータ回路20a~20fを備えている。コンバータ回路20eは、リアクトル21e、電流センサ22e、及びIPM23eを含む。IPM23eは、SW36e及びダイオード37eを含む。コンバータ回路20fは、リアクトル21f、電流センサ22f、及びIPM23fを含む。IPM23fは、SW36f及びダイオード37fを含む。第7変形例では、FDC20Bの入力電流が増大するにつれて1相駆動から6相駆動まで順に切り替えられるがこれに限定されず、例えば、2相駆動、4相駆動、及び6相駆動に順に切り替えられるものであってもよく、少なくとも4相駆動及び6相駆動に切り替えられるものであればよい。
【0098】
図27は、パターンH~Jの位相及び位相差を示した図である。パターンHでのSW36a~36fのそれぞれの位相は、0°、60°、120°、180°、240°、300°である。パターンIでのSW36a~36fのそれぞれの位相は、0°、45°、90°、180°、270°、315°である。パターンJでのSW36a~36fのそれぞれの位相は、0°、80°、130°、180°、260°、310°である。パターンHでの各位相差は、DH(a―b)=DH(b―c)=DH(c―d)=DH(d―e)=DH(e―f)=DH(f―a)=60°である。パターンIでの各位相差は、DI(a―b)=DI(b―c)=DI(e―f)=DI(f―a)=45°、DI(c―d)=DI(d―e)=90°である。パターンJでの各位相差は、DJ(a―b)=DJ(d―e)=80°、DJ(b―c)=DJ(c―d)=DJ(e―f)=DJ(f―a)=50°である。
【0099】
パターンH~Jのうち何れが4相駆動に適しているかは、以下のようにして特定できる。パターンHでの上記の位相差は全て同じ60°であり、最大値は60°である。パターンIでの上記の位相差のうち最大値は、90°である。パターンJでの上記の位相差のうち最大値は、80°である。パターンHでの上記の最大値と90°との差分の絶対値は、30°である。パターンIでの上記の最大値と90°との差分の絶対値は、0°である。パターンJでの上記の最大値と90°との差分の絶対値は、10°である。ここで90°は、360°/n=360°/4によって算出された値であり、4相駆動の際に最もリップル電流が小さくなる位相差である。上記の絶対値は、パターンIが最も小さく、パターンHが最も大きい。従って、パターンHが最も6相駆動に適しており、パターンIが最も4相駆動に適しており、パターンJはパターンHよりは6相駆動には適してはいないが4相駆動に適しており且つパターンIよりは4相駆動に適してはいないが6相駆動に適している。
【0100】
また、パターンJにおいて位相差の最大値DJ(a―b)は、以下の条件を満たす。
60°(=360°/m=360°/6)<DJ(a―b)<90°(=360°/n=360°/4)
J(a―b)<DJ(a―c)<180°(=(360°/m)×3=(360°/6)×3)
J(a―b)=80°であり、DJ(a―c)=130°であるため、上記の条件を満たす。これに対してパターンH及びIでは、DH(a―b)=60°であり、60°<DH(a―b)を満たさず、DI(c―d)=90°であり、DI(c―d)<90°を満たさない。このような条件を満たすことによっても、パターンJは、パターンHよりは6相駆動には適してはいないが4相駆動に適しており且つパターンIよりは4相駆動に適してはいないが6相駆動に適しているとえる。
【0101】
パターンIでの4相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、以下のようにして特定できる。図27に示すようにパターンIでは、SW36aとSW36cの位相差DI(a―c)は90°であり、SW36bとSW36dの位相差DI(b―d)は135°であり、SW36cとSW36eの位相差DI(c―e)は180°であり、SW36dとSW36fの位相差DI(d―f)は135°であり、SW36eとSW36aの位相差DI(e―a)は90°であり、SW36fとSW36bの位相差DI(f―b)は90°である。これらの位相差のうち、DI(a―c)、DI(e―a)、DI(f―b)の3つが同じ値で最小値となる。
【0102】
このように上記の方法に従えば、パターンIによる4相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子の対象となるのは、6相駆動でSW36aとSW36cの間でオンにされるSW36bと、SW36eとSW36aとの間でオンにされるSW36fと、SW36fとSW36bとの間でオンにされるSW36aとの、3つのスイッチング素子である。ここで、SW36a及び36bや、SW36f及び36aは、6相駆動の際に順にオンにされる組み合わせである。このため4相駆動の際にSW36a及び36bのオンオフ制御を停止すると、SW36fとその次にオンにされるSW36cとの位相差が増大する。同様に、SW36f及び36aのオンオフ制御を停止すると、SW36eとその次にオンにされるSW36bとの位相差が増大する。従って、4相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子として、6相駆動の際に順にオンにされる2つのスイッチング素子の組み合わせ以外である、SW36b及び36fのオンオフ制御が停止される。4相駆動時にSW36b及び36fのオンオフ制御を停止することにより、パターンIでの4相駆動での各位相差は全て90°となり、出力電流ITのリップル電流を抑制できる。
【0103】
パターンJでの4相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、以下のようにして特定できる。図27に示すようにパターンJでは、SW36aとSW36cの位相差DJ(a―c)は130°であり、SW36bとSW36dの位相差DJ(b―d)は100°であり、SW36cとSW36eの位相差DJ(c―e)は130°であり、SW36dとSW36fの位相差DJ(d―f)は130°であり、SW36eとSW36aの位相差DJ(e―a)は100°であり、SW36fとSW36bの位相差DJ(f―b)は130°である。これらの位相差のうち、DJ(b―d)、DJ(e―a)の2つが同じ値の最小値となる。このため、オンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は、この最小となる位相差を規定するSW36bとSW36dとの間でオンにされるSW36cと、SW36eとSW36aとの間でオンにされるSW36fである。ここで、パターンJではパターンIと異なり、SW36cとSW36fとは、6相駆動の際に順にオンにされる2つのスイッチング素子ではない。このため、パターンJによる4相駆動の際には、SW36cとSW36fのオンオフ制御を停止することにより、4相駆動でのリップル電流を抑制できる。これにより、パターンJでの4相駆動の際の各位相差は、DJ(a―b)=DJ(d―e)=80°、DJ(b―d)=DJ(e―a)=100°である。これは、SW36c及び36fの組み合わせ以外の2つのスイッチング素子の組み合わせを停止した場合よりも、リップル電流を低減できる。
【0104】
尚、パターンHでの4相駆動の際には、SW36a~36fのうち6相駆動の際に順にオンにされる2つのスイッチング素子以外の、任意の2つのスイッチング素子を停止すればよい。パターンHでは各位相差は全て同じだからである。
【0105】
例えば第7変形例では、上述した図18のようにステップS5cでYesの場合にパターンHを選択し、ステップS5dでYesの場合にパターンJを選択し、ステップS5dでNoの場合にパターンIを選択してもよい。
【0106】
第7変形例では、パターンIでの4相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子を特定する際に、6相駆動の際に順にオンにされる2つのスイッチング素子の組み合わせ以外のスイッチング素子であることを説明した。しかしながら上述した実施例のように、3相式であるFDC20での2相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子は一つしかないため、上記のような考慮をする必要はない。同様に、第6変形例のように4相式であるFDC20Aでの3相駆動の際にオンオフ制御を停止すべきスイッチング素子も一つしかないため、上記のような考慮をする必要はない。即ち、(m-n)=1の場合には、上記のような考慮をする必要はない。
【0107】
第7変形例でのパターンIでは、DI(a―c)、DI(b―d)、DI(c―e)、DI(d―f)、DI(e―a)、DI(f―b)のうち、DI(a―c)、DI(e―a)、DI(f―b)の3つが同じ値で最小値となるが、同じ値であることに限定されない。例えば、これらの位相差のうちDI(a―c)が最小であり、DI(f―b)がその次に小さく、DI(e―a)がその次に小さい場合には、DI(a―c)が最小でありDI(f―b)がその次に小さいことから、SW36a及び36bのオンオフ制御を停止することが考えられる。しかしながら、これは6相駆動の際に順にオンされる2つのスイッチング素子に相当するため、最小であるDI(a―c)と、DI(f―b)を除いた次に小さいDI(e―a)から、SW36b及び36fのオンオフ制御を停止する。
【0108】
パターンJでは、DJ(b―d)、DJ(e―a)の2つが同じ値の最小値となるが、同じ値である必要はない。
【0109】
上記実施例及び変形例では、3相のコンバータ回路20a~20cが設けられている場合、4相のコンバータ回路20a~20dが設けられている場合、6相のコンバータ回路20a~20fが設けられている場合につい説明したが、コンバータ回路の相数はこれに限定されない。
【0110】
上記実施例及び変形例では、昇圧コンバータを例に説明したが、降圧コンバータ、昇降圧コンバータ、又は双方向コンバータであってもよい。また、上記実施例及び変形例では、1相のコンバータ回路に一つのスイッチング素子が設けられている場合を例に説明したが、これに限定されず、1相のコンバータ回路に複数のスイッチング素子が設けられていてもよい。例えば、1相に2つのスイッチング素子が設けられている双方向コンバータのように、昇圧モードでは一方のスイッチング素子がオンオフ制御され他方のスイッチング素子が常時オフ又は常時オンに維持され、降圧モードでは一方のスイッチング素子が常時オフ又は常時オンに維持され他方のスイッチング素子がオンオフ制御される構成であってもよい。このように複数のスイッチング素子が設けられたコンバータ回路の駆動が停止される場合には、その全てのスイッチング素子のオンオフ制御が停止されてオフ状態に維持され、そのコンバータ回路が駆動される場合には、少なくとも一つのスイッチング素子に対してオンオフ制御が実行される。
【0111】
上記実施例及び変形例では、FDC20を制御する制御装置の一例として、車両に搭載された燃料電池システム1全体を統合制御するECU4を説明したが、これに限定されず、例えばこのようなECU4とは別に設けられ、FDC20を制御するCPU、ROM、RAMを備えたコンピュータであってもよい。
【0112】
上記実施例及び変形例では、電源システムの一例として、車両に搭載された燃料電池システム1を説明したが、これに限定されず、定置型の燃料電池システムであってもよい。例えば定置型の燃料電池システムでは、燃料電池の発電量や発電時間が異なる季節に応じて予測電流値を予測してもよい。商業施設用の燃料電池システムでは、例えば夏には冷房等により昼間に燃料電池の発電量が増加してFDCへの予測電流値は増大し、冬には暖房器具等により夜間に燃料電池の発電量が増加してFDCへの予測電流値が増大することが考えられる。また、家庭用の燃料電池システムでも、n相駆動に制御された時間及びm相駆動に制御された時間に関する履歴情報に基づいてパターンを選択してもよい。また、家庭用の燃料電池システムでは、運転モードとして、ユーザによる手動又は自動で、通常運転モード、又は夜間時での騒音を抑制するために通常運転モードよりも発電量が抑制された静音モードに切り替えられる場合がある。例えばこの場合、図14に示したように、通常モードが選択されている場合には、FDCの停止中にパターンAを選択し、静音モードが選択されている場合には、FDCの停止中にパターンBを選択してもよい。
【0113】
上記実施例では、電源として固体高分子型燃料電池であるFC10を用いたが、固体高分子型燃料電池以外の燃料電池を用いてもよいし、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などの二次電池を用いてもよい。
【0114】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 燃料電池システム
4 ECU(制御装置)
10 燃料電池スタック(燃料電池)
20 昇圧コンバータ
20a~20c コンバータ回路
36a~36c スイッチング素子
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