(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】インクジェット用インク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/38 20140101AFI20231017BHJP
【FI】
C09D11/38
(21)【出願番号】P 2020005979
(22)【出願日】2020-01-17
【審査請求日】2022-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】通山 剛
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222754(JP,A)
【文献】特開2010-090266(JP,A)
【文献】特開2013-199634(JP,A)
【文献】特開2002-146255(JP,A)
【文献】特開2011-201063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0197816(US,A1)
【文献】特開2018-127536(JP,A)
【文献】特開2012-214650(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/38
B41M 5/00
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体と、
顔料と、
2.00質量%以上7.00質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、
30.00質量%以上35.00質量%以下のジオール化合物と、
6.00質量%以上7.00質量%以下の2-ピロリドンと、
0.14質量%以上2.86質量%以下のワックス粒子と
を含有し、
前記多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記ジオール化合物は、エチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つであり、
前記ワックス粒子の体積中位径は、30nm以上50nm以下である、インクジェット用インク。
【請求項2】
界面活性剤を更に含有する、請求項1に記載のインクジェット用インク。
【請求項3】
前記界面活性剤の含有率は、0.10質量%以上0.80質量%以下である、請求項2に記載のインクジェット用インク。
【請求項4】
前記ワックス粒子に含まれるワックスは、ポリエチレンワックス及び酸化ポリエチレンワックスからなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1~3のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【請求項5】
前記多価アルコールモノアルキルエーテルとして前記トリエチレングリコールモノブチルエーテルを含有し、
前記ジオール化合物として前記プロピレングリコールを含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のインクジェット用インク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用インクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式の印刷では、インクジェット記録装置の記録ヘッドから、インクジェット用インクを吐出して、記録媒体に画像を印刷する。例えば、特許文献1には、平均粒子径150nm以上200nm以下のワックスエマルションを含むインクジェット用インクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されるインクジェット用インクは、保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、耐擦過性に優れる画像を印刷することについて、改善の余地が残されている。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、耐擦過性に優れる画像を印刷できるインクジェット用インクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るインクジェット用インクは、水性媒体と、顔料と、2.00質量%以上7.00質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、30.00質量%以上35.00質量%以下のジオール化合物と、6.00質量%以上7.00質量%以下の2-ピロリドンと、0.14質量%以上2.86質量%以下のワックス粒子とを含有する。前記多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである。前記ジオール化合物は、エチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つである。前記ワックス粒子の体積中位径は、30nm以上50nm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るインクジェット用インクによれば、保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、耐擦過性に優れる画像を印刷できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。まず、本明細書中で使用される用語について説明する。インクジェット用インクの各成分の含有率は、何ら規定していなければ、インクジェット用インクの全質量に対する各成分の含有率(単位:質量%)である。
【0009】
「体積中位径」は、体積基準の粒度分布における、小粒径側からの頻度の累積が50%になる粒子径(体積基準のメディアン径)である。体積中位径の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法である。
【0010】
インクジェット用インク中のワックス粒子の体積中位径を測定する場合は、例えば、遠心分離により、インクジェット用インク中のワックス粒子を分離した後、後述する実施例と同じ方法又はそれに準ずる方法で、分離されたワックス粒子の体積中位径を測定する。
【0011】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。
【0012】
<インクジェット用インク>
本実施形態のインクジェット用インク(以下、単に「インク」と記載することがある)は、記録媒体への記録に好適に用いられる。例えば、本実施形態に係るインクは、インクジェット記録装置の記録ヘッドのノズルから記録媒体の印字面へ向かって吐出されて、記録媒体に印刷される。記録媒体としては、例えば、印刷用紙(より具体的には、普通紙、コピー紙、再生紙、薄紙、厚紙、光沢紙等)が挙げられる。
【0013】
本実施形態に係るインクは、水性媒体と、顔料と、2.00質量%以上7.00質量%以下の多価アルコールモノアルキルエーテルと、30.00質量%以上35.00質量%以下のジオール化合物と、6.00質量%以上7.00質量%以下の2-ピロリドンと、0.14質量%以上2.86質量%以下のワックス粒子とを含有する。多価アルコールモノアルキルエーテルは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つである。ジオール化合物は、エチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つである。ワックス粒子の体積中位径は、30nm以上50nm以下である。
【0014】
以下、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群より選択される少なくとも1つの多価アルコールモノアルキルエーテルを、「特定アルコールエーテル」と記載することがある。また、エチレングリコール、及びプロピレングリコールからなる群より選択される少なくとも1つのジオール化合物を、「特定ジオール化合物」と記載することがある。
【0015】
本実施形態に係るインクによれば、上述の構成を備えることにより、保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、耐擦過性に優れる画像を印刷できる。その理由は、以下のように推測される。
【0016】
本実施形態に係るインクは、2.00質量%以上の特定アルコールエーテルと、30.00質量%以上の特定ジオール化合物と、0.14質量%以上のワックス粒子とを含む。そして、本実施形態に係るインクに含まれるワックス粒子は、体積中位径が30nm以上である。これらのことから、本実施形態に係るインクでは、ワックス粒子と、特定アルコールエーテル及び特定ジオール化合物との親和性が低くなる傾向がある。このため、本実施形態に係るインクが記録媒体に着弾すると、着弾したインクの表面にワックス粒子が配置されやすくなる傾向がある。これにより、記録媒体上に印刷された画像の滑り性が高まるため、本実施形態に係るインクによれば、耐擦過性に優れる画像を印刷できる。
【0017】
他方、インク中のワックス粒子の量が多すぎる場合、又はインク中のワックス粒子の体積中位径が大きすぎる場合は、インクを用いて印刷する際に記録ヘッドのノズルが詰まりやすくなる傾向がある。また、インク中の特定アルコールエーテルの量が多すぎる場合、又はインク中の特定ジオール化合物の量が多すぎる場合も、インクを用いて印刷する際に記録ヘッドのノズルが詰まりやすくなる傾向がある。これに対し、本実施形態に係るインクでは、ワックス粒子の含有率が2.86質量%以下であり、ワックス粒子の体積中位径が50nm以下であり、特定アルコールエーテルの含有率が7.00質量%以下であり、特定ジオール化合物の含有率が35.00質量%以下である。このように、本実施形態に係るインクでは、ノズルの詰まりを抑制できる程度に、ワックス粒子の含有率の上限、ワックス粒子の体積中位径の上限、特定アルコールエーテルの含有率の上限、及び特定ジオール化合物の含有率の上限が設定されている。よって、本実施形態によれば、インクの吐出安定性を確保することができる。
【0018】
また、インク中の特定アルコールエーテルの量が多すぎる場合、又はインク中の特定ジオール化合物の量が多すぎる場合は、インク中の顔料の分散安定性が低下することによって、インクの保存安定性が低下する場合がある。これに対し、本実施形態に係るインクでは、特定アルコールエーテルの含有率が7.00質量%以下であり、特定ジオール化合物の含有率が35.00質量%以下である。更に、本実施形態に係るインクは、2-ピロリドンを6.00質量%以上の含有率で含む。2-ピロリドンは、特定アルコールエーテルに比べて強い親水性を有し、かつ特定ジオール化合物に比べて強い親水性を有する。これらのことから、本実施形態に係るインクでは、特定アルコールエーテル及び特定ジオール化合物が含有されているにも関わらず、顔料の凝集を抑制できる。その結果、本実施形態に係るインク中において、顔料の分散安定性が高まる。よって、本実施形態に係るインクによれば、インクの保存安定性を確保することができる。
【0019】
なお、インク中の2-ピロリドンの量が多すぎると、インクが記録媒体に着弾した際に、例えば印刷用紙に含まれるセルロース繊維が膨潤することによって、印刷される画像の耐擦過性が低くなる場合がある。これに対し、本実施形態に係るインクでは、2-ピロリドンの含有率が7.00質量%以下である。このように、本実施形態に係るインクでは、印刷される画像の耐擦過性を低下させない程度に2-ピロリドンの含有率の上限が設定されている。よって、本実施形態に係るインクを用いる場合、2-ピロリドンによるインクの保存安定性の確保と、耐擦過性に優れる画像の印刷とを両立できる。
【0020】
以下、本実施形態に係るインクに含まれる各成分について、更に詳細に説明する。なお、以下に説明する成分のうち、2-ピロリドン以外の成分については、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いていてもよい。
【0021】
[水性媒体]
水性媒体とは、水を主成分とする媒体である。水性媒体は、溶媒として機能してもよく、分散媒として機能してもよい。水性媒体の具体例としては、水、又は水と極性溶媒との混合液が挙げられる。水性媒体に含有される極性溶媒の例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、及びメチルエチルケトンが挙げられる。水性媒体における水の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。水性媒体は、水であることが好ましく、イオン交換水であることがより好ましい。
【0022】
水性媒体の含有率は、5質量%以上99質量%以下であることが好ましく、40質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。水性媒体の含有率がこのような範囲内の値であると、適切な粘度を有するインクを得ることができる。なお、インクの材料として後述する顔料分散液を使用する場合、上記水性媒体の好ましい含有率を算出する際の水性媒体の質量には、顔料分散液中の水性媒体の質量も含まれる。
【0023】
[顔料]
顔料としては、例えば、黄色顔料、橙色顔料、赤色顔料、青色顔料、紫色顔料、及び黒色顔料が挙げられる。黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(74、93、95、109、110、120、128、138、139、151、154、155、173、180、185、及び193)が挙げられる。橙色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ(34、36、43、61、63、及び71)が挙げられる。赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(122及び202)が挙げられる。青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(15、より具体的には15:3)が挙げられる。紫色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(19、23、及び33)が挙げられる。黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック(7)が挙げられる。
【0024】
所望の画像濃度を有する画像を印刷するためには、顔料の含有率は、4質量%以上8質量%以下であることが好ましい。
【0025】
また、本実施形態では、インク中において顔料を構成する顔料粒子が被覆樹脂によって被覆されていてもよい。以下、顔料粒子と、顔料粒子の表面を覆う被覆樹脂とを含む複合体を、顔料分散体と記載することがある。
【0026】
インク中における顔料分散体の分散安定性を高めつつ、所望の画像濃度を有する画像を印刷するためには、顔料分散体の体積中位径は、30nm以上200nm以下であることが好ましく、70nm以上130nm以下であることがより好ましい。同じ理由から、顔料分散体の含有率は、5質量%以上10質量%以下であることが好ましい。以下、顔料粒子の表面を覆う被覆樹脂について説明する。
【0027】
(被覆樹脂)
インク中における顔料分散体の分散安定性を高めるためには、被覆樹脂は、スチレン-アクリル酸系樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及びビニルナフタレン-マレイン酸共重合体のうちの少なくとも1つであることが好ましく、スチレン-アクリル酸系樹脂であることがより好ましく、アニオン性を有するスチレン-アクリル酸系樹脂であることが更に好ましい。
【0028】
スチレン-アクリル酸系樹脂は、スチレンに由来する繰返し単位と、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルに由来する繰返し単位とを含む樹脂である。インク中における顔料分散体の分散安定性をより高めるためには、スチレン-アクリル酸系樹脂は、スチレンとアクリル酸とアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとアクリル酸との共重合体、スチレンとマレイン酸とアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、スチレンとメタクリル酸との共重合体、及びスチレンとメタクリル酸アルキルエステルとの共重合体のうちの少なくとも1つであることが好ましい。同じ理由から、スチレン-アクリル酸系樹脂は、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体であることがより好ましく、スチレンとメタクリル酸とメタクリル酸メチルとアクリル酸n-ブチルとの共重合体であることが更に好ましい。なお、上記列挙したスチレン-アクリル酸系樹脂の具体例のうち、カルボキシ基を有するスチレン-アクリル酸系樹脂については、カルボキシ基が塩の状態で存在していてもよい。
【0029】
所望の画像濃度を有する画像を印刷するためには、被覆樹脂の量は、100質量部の顔料(顔料粒子の粉体)に対して、15質量部以上100質量部以下であることが好ましい。
【0030】
(顔料分散体の調製方法)
次に、顔料分散体の調製方法の一例について説明する。まず、被覆樹脂を合成する。詳しくは、所定の溶媒に、重合により被覆樹脂を合成可能なモノマー又はプレポリマーと、重合開始剤とを加え、所定の温度で加熱還流を行う。このようにして、被覆樹脂が合成される。
【0031】
次いで、メディア型分散機を用いて、合成された被覆樹脂と、顔料(顔料粒子の粉体)とを、水性媒体に分散させる。このようにして、多数の顔料分散体が分散された分散液(以下、顔料分散液と記載することがある)を得る。
【0032】
被覆樹脂と顔料とを分散させる際の水性媒体の使用量は、顔料と被覆樹脂との質量の合計に対して、1倍以上10倍以下であることが好ましく、1倍以上5倍以下であることがより好ましい。
【0033】
顔料分散体の体積中位径は、メディア型分散機で用いるメディアの粒子径(例えば、ビーズの粒子径)を変更することにより調整できる。例えば、メディアの粒子径を小さくするほど、顔料分散体の体積中位径が小さくなる傾向がある。
【0034】
[特定アルコールエーテル]
特定アルコールエーテルの含有率は、2.00質量%以上7.00質量%以下である。特定アルコールエーテルの含有率が2.00質量%未満であると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。一方、特定アルコールエーテルの含有率が7.00質量%を超えると、インクの保存安定性及び吐出安定性の確保が困難になる。耐擦過性により優れる画像を印刷するためには、特定アルコールエーテルとしては、トリエチレングリコールモノブチルエーテルが好ましい。
【0035】
[特定ジオール化合物]
特定ジオール化合物の含有率は、30.00質量%以上35.00質量%以下である。特定ジオール化合物の含有率が30.00質量%未満であると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。一方、特定ジオール化合物の含有率が35.00質量%を超えると、インクの保存安定性及び吐出安定性の確保が困難になる。耐擦過性により優れる画像を印刷するためには、特定ジオール化合物としては、プロピレングリコールが好ましい。
【0036】
[2-ピロリドン]
2-ピロリドンの含有率は、6.00質量%以上7.00質量%以下である。2-ピロリドンの含有率が6.00質量%未満であると、インクの保存安定性の確保が困難になる。一方、2-ピロリドンの含有率が7.00質量%を超えると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。
【0037】
[ワックス粒子]
ワックス粒子の含有率は、0.14質量%以上2.86質量%以下である。ワックス粒子の含有率が0.14質量%未満であると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。一方、ワックス粒子の含有率が2.86質量%を超えると、インクの吐出安定性の確保が困難になる。なお、ワックス粒子には、ワックス以外の成分が含まれていてもよいが、耐擦過性により優れる画像を印刷するためには、ワックス粒子おけるワックスの含有率が80質量%以上100質量%以下であることが好ましく、ワックス粒子がワックスから構成されている(つまり、ワックスだけで構成されている)ことがより好ましい。
【0038】
ワックス粒子の体積中位径は、30nm以上50nm以下である。ワックス粒子の体積中位径が30nm未満であると、耐擦過性に優れる画像の印刷が困難になる。一方、ワックス粒子の体積中位径が50nmを超えると、インクの吐出安定性の確保が困難になる。
【0039】
ワックス粒子に含まれるワックスとしては、例えば、脂肪族炭化水素ワックス、脂肪族炭化水素ワックスの酸化物、植物性ワックス、動物性ワックス、鉱物ワックス、脂肪酸エステルを主成分とするワックス、及び脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスが挙げられる。
【0040】
脂肪族炭化水素ワックスとしては、例えば、ポリオレフィンワックス(より具体的には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリオレフィン共重合体ワックス等)、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスが挙げられる。
【0041】
脂肪族炭化水素ワックスの酸化物としては、例えば、酸化ポリエチレンワックス、及び酸化ポリエチレンワックスのブロック共重合体が挙げられる。植物性ワックスとしては、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、及びライスワックスが挙げられる。動物性ワックスとしては、例えば、蜜蝋、ラノリン、及び鯨蝋が挙げられる。鉱物ワックスとしては、例えば、オゾケライト、セレシン、及びペトロラタムが挙げられる。
【0042】
脂肪酸エステルを主成分とするワックスとしては、例えば、モンタン酸エステルワックス及びカスターワックスが挙げられる。脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスとしては、例えば、脱酸カルナバワックスが挙げられる。
【0043】
耐擦過性により優れる画像を印刷するためには、ワックス粒子に含まれるワックスとしては、ポリエチレンワックス及び酸化ポリエチレンワックスからなる群より選択される少なくとも1つが好ましい。
【0044】
ワックス粒子は、例えば、インクを製造する際に、材料として後述するワックス粒子分散液を使用することにより、インク中に含有させることができる。
【0045】
[界面活性剤]
本実施形態のインクは、界面活性剤を含有することが好ましい。界面活性剤は、記録媒体に対するインクの濡れ性を向上させる。界面活性剤としては、例えば、ノニオン界面活性剤、及びアニオン界面活性剤が挙げられる。記録媒体に対するインクの濡れ性をより向上させるためには、界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤が好ましく、アセチレン基を有するグリコール化合物がより好ましい。
【0046】
記録媒体に対するインクの濡れ性をより向上させるためには、界面活性剤の含有率は、0.10質量%以上0.80質量%以下であることが好ましく、0.40質量%以上0.60質量%以下であることがより好ましい。
【0047】
[他の成分]
本実施形態のインクは、必要に応じて、公知の添加剤(より具体的には、溶解安定剤、乾燥防止剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防カビ剤等)を更に含有してもよい。また、本実施形態のインクは、必要に応じて、特定アルコールエーテル以外の多価アルコールモノアルキルエーテル、及び特定ジオール化合物以外のジオール化合物からなる群より選択される少なくとも1つを更に含有してもよい。
【0048】
[材料の好ましい組合せ]
本実施形態において、インクの保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、耐擦過性に更に優れる画像を印刷するためには、下記条件1を満たすことが好ましく、下記条件1及び2を満たすことがより好ましく、下記条件1、2及び3を満たすことが更に好ましい。
条件1:インクが、特定アルコールエーテルとしてトリエチレングリコールモノブチルエーテルを含有し、特定ジオール化合物としてプロピレングリコールを含有する。
条件2:インクが、ノニオン界面活性剤を含有する。
条件3:ノニオン界面活性剤の含有率が、0.40質量%以上0.60質量%以下である。
【0049】
<インクの製造方法>
次に、上述した実施形態に係るインクの好適な製造方法について説明する。以下、上述した実施形態に係るインクと重複する構成要素については説明を省略する。
【0050】
まず、インクを調製するための材料(成分)を、各成分の含有率が所望の含有率となるように容器に入れる。インクを調製するための材料には、顔料(又は顔料分散液)、特定アルコールエーテル、特定ジオール化合物、2-ピロリドン、ワックス粒子(又は、ワックス粒子分散液)、及び水性媒体(例えば、イオン交換水)が、少なくとも含まれる。ワックス粒子分散液としては、例えば、ワックス粒子をイオン交換水に分散させた分散液が挙げられる。
【0051】
次いで、攪拌機(例えば、新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて容器内容物を攪拌して、容器内容物を均一に混合する。容器内容物を攪拌する際の攪拌速度(回転速度)は、例えば300rpm以上500rpm以下である。
【0052】
次いで、フィルターを用いて容器内容物をろ過することにより、容器内容物に含有される異物及び粗大粒子を除去する。このようにして、インクが得られる。
【実施例】
【0053】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は実施例の範囲に何ら限定されるものではない。まず、各成分の体積中位径の測定方法、並びに被覆樹脂(詳しくは、後述する被覆樹脂P)の質量平均分子量(Mw)及び酸価の測定方法について説明する。
【0054】
<体積中位径の測定方法>
各成分の体積中位径(詳しくは、顔料分散体の体積中位径、及びワックス粒子の体積中位径)は、いずれも、温度25℃の雰囲気下で、動的光散乱式粒径分布測定装置(シスメックス株式会社製「ゼータサイザーナノZS」)を用いて測定した。顔料分散体の体積中位径の測定では、後述する調製方法で得られた顔料分散液をイオン交換水で希釈した液(希釈倍率:体積比で300倍)を、測定用試料として用いた。また、ワックス粒子の体積中位径の測定では、後述するワックス粒子分散液(詳しくは、AQUACER(登録商標)515、AQUACER(登録商標)531、ハイテックE-5403P及びMYE-35Gのいずれか)を、ワックス粒子の濃度(固形分濃度)が0.1質量%になるまでイオン交換水で希釈した後、得られた希釈液を測定用試料として用いた。
【0055】
<被覆樹脂Pの質量平均分子量(Mw)の測定方法>
被覆樹脂Pの質量平均分子量(Mw)は、ゲルろ過クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC-8020GPC」)を用いて、下記条件で、測定した。
【0056】
[条件]
カラム:東ソー株式会社製「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」(4.6mmI.D.×15cmのセミミクロカラム)
カラム本数:3本
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.35mL/分
サンプル注入量:10μL
測定温度:40℃
検出器:IR検出器
【0057】
なお、質量平均分子量(Mw)の測定に使用した検量線は、東ソー株式会社製のTSKgel標準ポリスチレン(F-40、F-20、F-4、F-1、A-5000、A-2500、及びA-1000)と、n-プロピルベンゼンとを選択して作成した。
【0058】
<被覆樹脂Pの酸価の測定方法>
被覆樹脂Pの酸価は、「JIS(日本産業規格)K0070-1992」で規定された中和滴定法に従い測定した。
【0059】
<被覆樹脂Pの合成>
四つ口フラスコ(容量:1000mL)に、スターラーと、窒素導入管と、コンデンサーと、滴下ロートとをセットした。次いで、フラスコに、100gのイソプロピルアルコールと300gのメチルエチルケトンとを入れた。次いで、フラスコ内容物に対して、窒素をバブリングしながら温度70℃で加熱還流させた状態でモノマー溶液を2時間かけて滴下した。滴下したモノマー溶液は、40.0gのスチレンと、10.0gのメタクリル酸と、10.0gのアクリル酸n-ブチルと、40.0gのメタクリル酸メチルと、0.4gのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN、重合開始剤)との混合物であった。
【0060】
モノマー溶液を滴下した後、更に、温度70℃で、6時間にわたってフラスコ内容物を加熱還流させた。
【0061】
次いで、0.2gのAIBNを含有するメチルエチルケトン溶液50mLを、15分間かけて、フラスコ内に滴下した後、更に、温度70℃で、5時間にわたってフラスコ内容物を加熱還流させた。このようにして、被覆樹脂P(スチレン-アクリル酸系樹脂、質量平均分子量(Mw):20000、酸価:100mgKOH/g)を得た。
【0062】
<顔料分散液Lの調製>
メディア型湿式分散機(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製「DYNO(登録商標)-MILL」)のベッセル(容量:0.6L)に、顔料としてのピグメントブルー15:3(トーヨーカラー株式会社製「リオノール(登録商標)ブルーFG-7330」、成分:銅フタロシアニン)15質量部と、6質量部の被覆樹脂Pと、1,2-オクタンジオール0.5質量部と、イオン交換水78.5質量部とを入れた。
【0063】
また、被覆樹脂Pの中和に必要な量の水酸化ナトリウムをベッセルに加えた。より具体的には、中和当量の1.1倍の質量の水酸化ナトリウムを含む水酸化ナトリウム水溶液を、ベッセルに加えた。なお、上記被覆樹脂Pの量である6質量部には、中和のために加えたナトリウムの量も含まれる。また、上記イオン交換水の量である78.5質量部には、中和のために加えた水酸化ナトリウム水溶液に含まれる水の量、及び中和反応で生じた水の量も含まれる。
【0064】
次いで、充填量がベッセルの容量に対して70体積%となるように、メディア(平均粒子径0.5mmのジルコニアビーズ)をベッセルに充填した。そして、上記メディア型湿式分散機を用いて、温度10℃かつ周速8m/秒の条件で、240分間にわたってベッセル内の固形分をイオン交換水に分散させた。その結果、体積中位径100nmの顔料分散体(顔料粒子が被覆樹脂Pによって被覆された顔料分散体)を含む顔料分散液Lを得た。
【0065】
<インクの調製>
上述の手順で得られた顔料分散液Lを用いて、後述の調製方法により、インクA1~A8及びB1~B13を調製した。インクA1~A8及びB1~B13の各々の組成を、表1~表4に示す。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
以下、表1~表4中の各用語の意味を説明する。「TGMB」は、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを意味する。「DGMB」ジエチレングリコールモノブチルエーテルを意味する。「DGME」は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルを意味する。「EG」は、エチレングリコールを意味する。「PG」は、プロピレングリコールを意味する。「PD」は、1,3-プロパンジオールを意味する。「TG」は、トリエチレングリコールを意味する。
【0071】
また、「サーフィノール420」は、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、成分:アセチレン基を有するグリコール化合物)を意味する。
【0072】
また、「515」、「5403P」、「531」及び「35G」は、各々、下記表5に示すワックス粒子分散液中のワックス粒子を意味する。表5中の「径」は、ワックス粒子の体積中位径(単位:nm)を意味する。表5中の「AQUACER」は、登録商標である。なお、表1~表4中のワックス粒子の含有率は、いずれもワックス粒子分散液に含まれる固形分(ワックス粒子)のインク中における含有率である。また、表1~表4中の「イオン交換水」には、ワックス粒子分散液中の水が含まれる。
【0073】
【0074】
なお、表1~表4において、「-」は、該当する成分を使用しなかったことを意味する。以上、表1~表4中の各用語の意味を説明した。
【0075】
[インクA1の調製]
顔料分散液Lと、トリエチレングリコールモノブチルエーテルと、エチレングリコールと、2-ピロリドンと、ワックス粒子分散液(ビックケミー・ジャパン株式会社製「AQUACER(登録商標)515」、固形分濃度:35質量%)と、ノニオン界面活性剤(日信化学工業株式会社製「サーフィノール(登録商標)420」、成分:アセチレン基を有するグリコール化合物)と、イオン交換水とを、各成分の含有率が表1の「A1」の欄に示す含有率となるようにビーカーに入れた。次いで、攪拌機(新東科学株式会社製「スリーワンモーター BL-600」)を用いて、ビーカー内容物を回転速度400rpmで60分間攪拌して、ビーカー内容物を均一に混合した。次いで、フィルター(孔径5μm)を用いてビーカー内容物をろ過することにより、ビーカー内容物に含有される異物及び粗大粒子を除去し、インクA1を得た。
【0076】
[インクA2~A8及びB1~B13の調製]
表1~表4に示す各成分を表1~表4に示す含有率となるように使用したこと以外は、インクA1の調製と同じ方法で、インクA2~A8及びB1~B13の各々を得た。
【0077】
<評価方法>
インクA1~A8及びB1~B13について、以下に示す方法により、保存安定性、吐出安定性、並びに印刷された画像の画像濃度及び耐擦過性を評価した。なお、吐出安定性、画像濃度及び耐擦過性の各々の評価においては、評価機として、ピエゾ方式のライン型記録ヘッドを備えるインクジェットプリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の試作機)を用いた。上記インクジェットプリンターは、記録ヘッド(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「KJ4B-QA」、解像度:600dpi)を3基備えていた。
【0078】
[保存安定性]
インク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)をガラス製の容器に入れた後、容器を密閉した。続いて、上記インクが入った密閉容器を、温度60℃の環境下で4週間にわたって静置した後、静置後のインクを目視で観察し、下記の判定基準でインクの保存安定性を判定した。判定がAの場合、「保存安定性を確保できている」と評価した。また、判定がBの場合、「保存安定性を確保できていない」と評価した。
【0079】
(保存安定性の判定基準)
A:インク成分の析出が観察されなかった。
B:インク成分の析出が観察された。
【0080】
[吐出安定性]
評価機の記録ヘッドにインク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)を充填した。そして、インク一滴あたりのインクの吐出量が9pLになるように、インクの吐出条件を設定した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、評価機を用いて、大きさ10cm×10cmのソリッド画像を、普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)に100枚連続で印刷した。そして、印刷されたソリッド画像を目視で観察し、下記の判定基準でインクの吐出安定性を判定した。判定がAの場合、「吐出安定性を確保できている」と評価した。また、判定がBの場合、「吐出安定性を確保できていない」と評価した。
【0081】
(吐出安定性の判定基準)
A:印刷した100個のソリッド画像の全てにおいて、ノズルの詰まりに起因する画像不良が観察されなかった。
B:印刷した100個のソリッド画像の少なくとも1個において、ノズルの詰まりに起因する画像不良が観察された。
【0082】
[画像濃度]
評価機の記録ヘッドにインク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)を充填した。そして、インク一滴あたりのインクの吐出量が9pLになるように、インクの吐出条件を設定した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、評価機を用いて、大きさ10cm×10cmのソリッド画像を、1枚の普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)に印刷した。そして、印刷されたソリッド画像の画像濃度を、反射濃度計(X-Rite社製「RD-19」)を用いて測定した。詳しくは、印刷されたソリッド画像において画像濃度の測定箇所を無作為に10箇所選択し、選択した測定箇所の各々で、画像濃度を測定した。そして、測定された10箇所の画像濃度の算術平均値を、評価対象(インク)の画像濃度の評価値とした。そして、画像濃度(評価値)が0.90以上の場合、「良い」と評価した。一方、画像濃度(評価値)が0.90未満の場合、「良くない」と評価した。
【0083】
[耐擦過性]
評価機の記録ヘッドにインク(詳しくは、インクA1~A8及びB1~B13のいずれか)を充填した。そして、インク一滴あたりのインクの吐出量が9pLになるように、インクの吐出条件を設定した。次いで、温度25℃かつ湿度50%RHの環境下、評価機を用いて、大きさ10cm×10cmのソリッド画像を、1枚の普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)に印刷した。そして、ソリッド画像の印刷から10秒が経過した後、ソリッド画像が印刷された普通紙の表面(ソリッド画像側の面)上に、未印刷の普通紙(モンディ社製「ColorCopy(登録商標)」、A4サイズ、坪量:90g/m2)を重ねた。次いで、重りを用いて未印刷の普通紙に1kgの荷重を加えながら、未印刷の普通紙の一方の面でソリッド画像上を5往復擦った(擦過試験)。そして、擦過試験終了から5分が経過した後、未印刷の普通紙における上述の面の画像濃度を、反射濃度計(X-Rite社製「RD-19」)を用いて測定した。詳しくは、上述の面のうちソリッド画像に接触していた領域において画像濃度の測定箇所を無作為に3箇所選択し、選択した測定箇所の各々で、画像濃度を測定した。そして、測定された3箇所の画像濃度の算術平均値を、評価対象(インク)の耐擦過性の評価値とした。そして、画像濃度(評価値)が0.020未満の場合、「耐擦過性に優れる画像を印刷できている」と評価した。一方、画像濃度(評価値)が0.020以上の場合、「耐擦過性に優れる画像を印刷できていない」と評価した。
【0084】
<評価結果>
インクA1~A8及びB1~B13のそれぞれについて、保存安定性及び吐出安定性の判定結果、並びに印刷された画像の画像濃度及び耐擦過性の評価値を、表6に示す。
【0085】
【0086】
インクA1~A8は、水性媒体(イオン交換水)と、顔料と、特定アルコールエーテルと、特定ジオール化合物と、2-ピロリドンと、ワックス粒子とを含有していた。インクA1~A8では、特定アルコールエーテルの含有率が2.00質量%以上7.00質量%以下であった。インクA1~A8では、特定ジオール化合物の含有率が30.00質量%以上35.00質量%以下であった。インクA1~A8では、2-ピロリドンの含有率が6.00質量%以上7.00質量%以下であった。インクA1~A8では、ワックス粒子の含有率が0.14質量%以上2.86質量%以下であった。インクA1~A8では、ワックス粒子の体積中位径が30nm以上50nm以下であった。
【0087】
表6に示すように、インクA1~A8では、保存安定性の判定結果がAであった。よって、インクA1~A8は、保存安定性を確保できていた。インクA1~A8では、吐出安定性の判定結果がAであった。よって、インクA1~A8は、吐出安定性を確保できていた。インクA1~A8の各々を用いて印刷された画像について、耐擦過性の評価値は0.020未満であった。よって、インクA1~A8の各々を用いた場合、耐擦過性に優れる画像を印刷できていた。
【0088】
インクB1では、ワックス粒子の含有率が2.86質量%を超えていた。インクB2及びB13では、ワックス粒子の体積中位径が50nmを超えていた。インクB3は、多価アルコールモノアルキルエーテルとしてジエチレングリコールモノエチルエーテルを含有していたが、特定アルコールエーテルを含有していなかった。インクB4では、特定アルコールエーテルの含有率が2.00質量%未満であった。インクB5では、特定アルコールエーテルの含有率が7.00質量%を超えていた。インクB6は、ジオール化合物として1,3-プロパンジオールを含有していたが、特定ジオール化合物を含有していなかった。インクB7は、ジオール化合物としてトリエチレングリコールを含有していたが、特定ジオール化合物を含有していなかった。インクB8では、特定ジオール化合物の含有率が30.00質量%未満であった。インクB9では、特定ジオール化合物の含有率が35.00質量%を超えていた。インクB10では、2-ピロリドンの含有率が6.00質量%未満であった。インクB11では、ワックス粒子の含有率が0.14質量%未満であった。インクB12では、2-ピロリドンの含有率が7.00質量%を超えていた。
【0089】
表6に示すように、インクB5、B9及びB10では、保存安定性の判定結果がBであった。よって、インクB5、B9及びB10は、保存安定性を確保できていなかった。インクB1、B2、B5、B9、B10及びB13では、吐出安定性の判定結果がBであった。よって、インクB1、B2、B5、B9、B10及びB13は、吐出安定性を確保できていなかった。インクB3、B4、B6~B8、B11及びB12の各々を用いて印刷された画像について、耐擦過性の評価値は0.020以上であった。よって、インクB3、B4、B6~B8、B11及びB12の各々を用いた場合、耐擦過性に優れる画像を印刷できていなかった。
【0090】
以上の結果から、本発明に係るインクによれば、保存安定性及び吐出安定性を確保しつつ、耐擦過性に優れる画像を印刷できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係るインクは、例えばプリンターを用いて画像を印刷するために利用できる。