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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20231017BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20231017BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B60C11/03 300B
B60C11/12 A
B60C11/12 C
B60C11/13 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020011875
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021116004
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】轟 大輔
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119267(JP,A)
【文献】特開2019-104411(JP,A)
【文献】特開2015-116977(JP,A)
【文献】特開2015-209124(JP,A)
【文献】特開2015-27845(JP,A)
【文献】特開2017-154708(JP,A)
【文献】特開2016-97714(JP,A)
【文献】国際公開第2020/012294(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00-11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数の周方向溝が設けられることにより、複数の陸部が区分されており、
前記周方向溝は、タイヤ赤道の両側に配された一対のクラウン周方向溝と、前記各クラウン周方向溝のタイヤ軸方向の外側に配された一対のショルダー周方向溝とを含み、
前記陸部は、前記一対のクラウン周方向溝の間に配されたクラウン陸部と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間に配された一対のミドル陸部とを含み、
前記クラウン陸部は、クラウン横溝によって複数の六角形状のクラウンブロックに区分されており、
前記ミドル陸部は、ミドル横溝によって複数の六角形状のミドルブロックに区分されており、
前記クラウン周方向溝の溝幅は、前記ショルダー周方向溝の溝幅の0.01~0.2倍であり、
前記クラウン周方向溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.0~1.2倍である、
タイヤ。
【請求項2】
前記クラウン周方向溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.0倍よりも大きい、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記クラウン周方向溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.1倍以下である、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記クラウンブロックには、タイヤ軸方向に延びるサイプが設けられ、
前記クラウンブロックの踏面は、前記サイプを挟む第1部分と第2部分とに区分され、
前記第1部分のタイヤ周方向の長さは、前記第2部分のタイヤ周方向の長さの0.9~1.1倍である、請求項1ないし3のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記ミドルブロックの踏面の面積は、前記クラウンブロックの踏面の面積よりも大きい、請求項1ないし4のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記ミドルブロックの踏面の面積は、前記クラウンブロックの踏面の面積の1.10倍以下である、請求項5に記載のタイヤ。
【請求項7】
前記クラウン横溝の溝底には、前記クラウン横溝の長手方向へ直線状に延びるサイプが設けられている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項8】
前記ショルダー周方向溝の溝幅は、10mm以上である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項9】
前記トレッド部には、前記各ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向の外側に延びるショルダー横溝が設けられ、
前記ショルダー横溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの0.1~0.4倍である、請求項1ないし8のいずれか1項に記載のタイヤ。
【請求項10】
前記ショルダー横溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの0.2~0.3倍である、請求項9に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、トレッド部に、タイヤ周方向にジグザグ状にのびる4本のジグザグ周方向溝と、前記ジグザグ周方向溝間に区分された六角形ブロックとが設けられたタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-104411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、タイヤの転がり抵抗性能やライフ性能を高めることが求められている。このような要請に対応するため、前記ジグザグ周方向溝の溝深さや溝幅を小さくして、前記トレッド部のパターン剛性を高めることが考えられる。
【0005】
しかしながら、前記ジグザグ周方向溝の溝深さや溝幅を単に小さくする手法では、ウェット性能が悪化するという問題があった。
【0006】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、ウェット性能を大きく損ねることなく、転がり抵抗性能とライフ性能とを向上することができるタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部には、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数の周方向溝が設けられることにより、複数の陸部が区分されており、前記周方向溝は、タイヤ赤道の両側に配された一対のクラウン周方向溝と、前記各クラウン周方向溝のタイヤ軸方向の外側に配された一対のショルダー周方向溝とを含み、前記陸部は、前記一対のクラウン周方向溝の間に配されたクラウン陸部と、前記クラウン周方向溝と前記ショルダー周方向溝との間に配された一対のミドル陸部とを含み、前記クラウン陸部は、クラウン横溝によって複数の六角形状のクラウンブロックに区分されており、前記ミドル陸部は、ミドル横溝によって複数の六角形状のミドルブロックに区分されており、前記クラウン周方向溝の溝幅は、前記ショルダー周方向溝の溝幅の0.01~0.2倍であり、前記クラウン周方向溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.0~1.2倍である。
【0008】
本発明に係るタイヤは、前記クラウン周方向溝の溝深さが、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.0倍よりも大きい、のが望ましい。
【0009】
本発明に係るタイヤは、前記クラウン周方向溝の溝深さが、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.1倍以下である、のが望ましい。
【0010】
本発明に係るタイヤは、前記クラウンブロックには、タイヤ軸方向に延びるサイプが設けられ、前記クラウンブロックの踏面は、前記サイプを挟む第1部分と第2部分とに区分され、前記第1部分のタイヤ周方向の長さは、前記第2部分のタイヤ周方向の長さの0.9~1.1倍である、のが望ましい。
【0011】
本発明に係るタイヤは、前記ミドルブロックの踏面の面積が、前記クラウンブロックの踏面の面積よりも大きい、のが望ましい。
【0012】
本発明に係るタイヤは、前記ミドルブロックの踏面の面積が、前記クラウンブロックの踏面の面積の1.10倍以下である、のが望ましい。
【0013】
本発明に係るタイヤは、前記クラウン横溝の溝底には、前記クラウン横溝の長手方向へ直線状に延びるサイプが設けられている、のが望ましい。
【0014】
本発明に係るタイヤは、前記ショルダー周方向溝の溝幅が、10mm以上である、のが望ましい。
【0015】
本発明に係るタイヤは、前記トレッド部には、前記各ショルダー周方向溝からタイヤ軸方向の外側に延びるショルダー横溝が設けられ、前記ショルダー横溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの0.1~0.4倍である、のが望ましい。
【0016】
本発明に係るタイヤは、前記ショルダー横溝の溝深さが、前記ショルダー周方向溝の溝深さの0.2~0.3倍である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
クラウン周方向溝の溝幅は、ショルダー周方向溝の溝幅の0.2倍以下とされる。これにより、トレッド部の接地面では、六角形状のクラウンブロックとミドルブロックとが接触して互いに支え合う。このため、前記両ブロックの変形や滑りが抑制されるので、転がり抵抗性能及びライフ性能が向上する。
【0018】
また、前記クラウン周方向溝の溝幅は、前記ショルダー周方向溝の溝幅の0.01倍以上とされる。これにより、前記クラウン周方向溝内の排水性が確保されるため、ウェット性能の低下を抑制することができる。
【0019】
また、前記クラウン周方向溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.0倍以上とされる。これにより、ウェット性能の低下がさらに抑えられる。前記クラウン周方向溝の溝深さは、前記ショルダー周方向溝の溝深さの1.2倍以下とされる。これにより、溝幅の小さい前記クラウン周方向溝の溝底でのクラック等の発生を抑制することができる。これは、ライフ性能の向上に役立つ。
【0020】
したがって、本発明のタイヤは、ウェット性能を損ねることなく、転がり抵抗性能とライフ性能とを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態を示すタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1のA-A線断面図である。
図3】(a)は、クラウン周方向溝の拡大図、(b)は、ショルダー周方向溝の拡大図である。
図4】クラウンブロック及びミドルブロックの拡大図である。
図5】(a)は、図4のB-B線断面図、(b)は、図4のC-C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。図1には、重荷重用の空気入りタイヤのトレッド部2が示される。なお、本発明は、例えば乗用車用、産業車両用等の空気入りタイヤ、及びタイヤの内部に加圧空気が充填されない非空気式タイヤ(例えばエアーレスタイヤ)等の様々なタイヤ1に採用することができる。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態のトレッド部2には、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる複数の周方向溝3が設けられることにより、複数の陸部5が区分されている。周方向溝3は、ウェット路面での駆動力や制動力を高め、ウェット性能の低下を抑える。
【0024】
本実施形態の周方向溝3は、タイヤ赤道Cの両側に配された一対のクラウン周方向溝3A、3Aと、各クラウン周方向溝3Aのタイヤ軸方向の外側に配された一対のショルダー周方向溝3B、3Bと、を含んでいる。周方向溝3は、本実施形態では、4本設けられている。周方向溝3は、少なくとも4本設けられるのが望ましい。
【0025】
陸部5は、一対のクラウン周方向溝3A、3Aの間に配されたクラウン陸部5Aと、クラウン周方向溝3Aとショルダー周方向溝3Bとの間に配された一対のミドル陸部5B、5Bとを含んでいる。なお、陸部5は、本実施形態では、各ショルダー周方向溝3Bとトレッド端Teとの間に配される一対のショルダー陸部5C、5Cを含んでいる。このように、本実施形態のトレッド部2は、少なくとも5つの陸部5を有して形成されている。
【0026】
前記「トレッド端Te」は、タイヤ1を正規リム(図示省略)にリム組みしかつ正規内圧を充填した正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷しかつキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置として定められる。両トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向の長さがトレッド幅TWとして定められる。タイヤ1の各部の寸法等は、特に断りがない場合、前記正規状態での値とする。
【0027】
また、前記「正規リム」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1毎に定めているリムであり、JATMAであれば"標準リム"、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim"である。
【0028】
また、前記「正規内圧」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば"最高空気圧"、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0029】
また、前記「正規荷重」とは、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ1毎に定めている荷重であり、JATMAであれば"最大負荷能力"、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。
【0030】
クラウン陸部5Aは、クラウン横溝4Aによって複数の六角形状のクラウンブロック8に区分されている。六角形状のクラウンブロック8は、高い剛性を有し転がり抵抗性能やライフ性能を高める。
【0031】
ミドル陸部5Bは、ミドル横溝4Bによって複数の六角形状のミドルブロック9に区分されている。
【0032】
クラウン周方向溝3Aの溝幅W1は、ショルダー周方向溝3Bの溝幅W2の0.01~0.2倍とされる。クラウン周方向溝3Aの溝幅W1がショルダー周方向溝3Bの溝幅W2の0.2倍以下であるので、トレッド部2の接地面において、六角形状のクラウンブロック8とミドルブロック9とが接触して互いに支え合う。このため、両ブロック8、9の変形や滑りが抑制されるので、転がり抵抗性能及びライフ性能が向上する。クラウン周方向溝3Aの溝幅W1がショルダー周方向溝3Bの溝幅W2の0.01倍以上であるので、クラウン周方向溝3A内の排水性が確保されるため、ウェット性能の低下を抑制することができる。
【0033】
上述の作用を効果的に発揮させるために、クラウン周方向溝3Aの溝幅W1は、ショルダー周方向溝3Bの溝幅W2の0.05倍以上が望ましく、0.13倍以下が望ましい。ウェット性能の低下を大きく抑制するために、ショルダー周方向溝3Bの溝幅W2は、10mm以上が望ましく、12mm以上がさらに望ましい。ミドル陸部5Bのパターン剛性の低下を抑えるために、ショルダー周方向溝3Bの溝幅W2は、18mm以下が望ましく、16mm以下がさらに望ましい。
【0034】
図2は、図1のA-A線断面図である。図2に示されるように、クラウン周方向溝3Aの溝深さD1は、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2の1.0~1.2倍とされる。クラウン周方向溝3Aの溝深さD1がショルダー周方向溝3Bの溝深さD2の1.0倍以上であるので、ウェット性能の低下がさらに抑えられる。クラウン周方向溝3Aの溝深さD1がショルダー周方向溝3Bの溝深さD2の1.2倍以下であるので、溝幅W1の小さいクラウン周方向溝3Aの溝底3sにおけるクラック等の発生を抑制することができる。これは、ライフ性能の向上に役立つ。
【0035】
本実施形態のクラウン周方向溝3Aの溝深さD1は、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2の1.0倍よりも大きくされている。これにより、ウェット性能の低下が大きく抑制される。また、本実施形態のクラウン周方向溝3Aの溝深さD1は、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2の1.1倍以下とされている。このため、溝底3sにおけるクラック等の発生が大きく抑制される。
【0036】
図3(a)は、クラウン周方向溝3Aの拡大図である。図3(a)に示されるように、本実施形態のクラウン周方向溝3Aは、クラウン第1傾斜部10Aと、クラウン第1傾斜部10Aとは逆向きに傾斜するクラウン第2傾斜部10Bとを含んでいる。クラウン第1傾斜部10Aは、例えば、タイヤ周方向に対して一方側(図3(a)では右下)に傾斜している。クラウン第2傾斜部10Bは、例えば、タイヤ周方向に対して他方側(図3(a)では左下)に傾斜している。クラウン第1傾斜部10Aとクラウン第2傾斜部10Bとは、本実施形態では、タイヤ周方向に交互に並べられている。
【0037】
クラウン第1傾斜部10A及びクラウン第2傾斜部10Bのタイヤ周方向に対する角度θ1は、5~25度であるのが望ましい。このようなクラウン周方向溝3Aは、タイヤ軸方向のエッジ成分を有するので、ウェット路面での制動力や駆動力を高めるとともに、溝内をスムーズに排水する。
【0038】
クラウン周方向溝3Aは、例えば、トレッド端Te側に突出するクラウン第1凸部11aと、タイヤ赤道C側に突出するクラウン第2凸部11bとを含んでいる。クラウン第1凸部11a及びクラウン第2凸部11bは、クラウン第1傾斜部10Aとクラウン第2傾斜部10Bとの接続部分に形成される。クラウン第1凸部11aとクラウン第2凸部11bとは、本実施形態では、タイヤ周方向に交互に並べられている。
【0039】
図3(b)は、ショルダー周方向溝3Bの拡大図である。図3(b)に示されるように、本実施形態のショルダー周方向溝3Bは、第1傾斜部12Aと、第1傾斜部12Aとは逆向きに傾斜する第2傾斜部12Bとを含んでいる。第1傾斜部12Aは、例えば、タイヤ周方向に対して一方側(図3(b)では右下)に傾斜している。第2傾斜部12Bは、例えば、タイヤ周方向に対して他方側(図3(b)では左下)に傾斜している。第1傾斜部12Aと第2傾斜部12Bとは、本実施形態では、タイヤ周方向に交互に並べられている。
【0040】
第1傾斜部12A及び第2傾斜部12Bのタイヤ周方向に対する角度θ2は、5~25度であるのが望ましい。このようなショルダー周方向溝3Bも、ウェット路面での制動力や駆動力を高めるとともに、溝内をスムーズに排水する。特に限定されるもではないが、クラウン第1傾斜部10Aの角度θ1と第1傾斜部12Aの角度θ2との差の絶対値は、5度以下が望ましい。
【0041】
ショルダー周方向溝3Bは、例えば、トレッド端Te側に突出するショルダー第1凸部13aと、タイヤ赤道C側に突出するショルダー第2凸部13bとを含んでいる。ショルダー第1凸部13a及びショルダー第2凸部13bは、第1傾斜部12Aと第2傾斜部12Bとの接続部分に形成される。ショルダー第1凸部13aとショルダー第2凸部13bとは、本実施形態では、タイヤ周方向に交互に並べられている。
【0042】
図1に示されるように、クラウン周方向溝3Aは、本実施形態では、隣接するショルダー周方向溝3Bとジグザグの位相が約1/2ピッチ周方向に位置ずれしている。
【0043】
図4は、クラウンブロック8及びミドルブロック9の拡大図である。図4に示されるように、本実施形態のクラウンブロック8は、タイヤ周方向の最大長さLAがタイヤ軸方向の最大幅WAよりも大きく形成されている。このようなクラウンブロック8は、高い周方向剛性を有するため、接地時のブロックの動きや変形量を低く抑え、耐摩耗性に優れる。
【0044】
上述の作用を効果的に発揮させるために、クラウンブロック8のタイヤ周方向の最大長さLAは、タイヤ軸方向の最大幅WAの1.2~1.8倍であるのが望ましい。クラウンブロック8の最大長さLAが最大幅WAの1.8倍以下であるので、クラウンブロック8の周方向剛性と軸方向剛性とのバランスが維持され、直進時や旋回時の荷重による摩耗等が抑えられる。クラウンブロック8の最大長さLAは、例えば、トレッド幅TWの20%~40%であるのが望ましい。
【0045】
クラウンブロック8は、例えば、タイヤ軸方向の幅Waが、タイヤ周方向の両外側からタイヤ周方向の中央側に向かって大きくなっている。このようなクラウンブロック8は、高い周方向剛性と高い横剛性とを有する。クラウンブロック8は、本実施形態では、タイヤ周方向の両外側からタイヤ周方向の中央側に向かって逆テーパ状となる中膨らみの形状を有している。
【0046】
クラウンブロック8は、本実施形態では、タイヤ軸方向に延びるサイプ15が設けられている。このようなサイプ15は、幅の狭い切り込みであることから、ブロック剛性を大きく損ねることなく、路面上の薄い水膜を引っ掻いて排出することができる。
【0047】
サイプは、本明細書では、幅が1.5mm未満の切込み状体である。また、周方向溝や横溝を含む溝は、溝幅が1.5mm以上の溝状体である。サイプと溝とは、その幅の大きさにおいて、区別される。
【0048】
サイプ15は、例えば、クラウンブロック8を横断している。また、サイプ15は、クラウンブロック8の幅Waが大きいタイヤ周方向の中央側に配されている。これにより、上述の作用が効果的に発揮される。サイプ15は、本実施形態では、クラウン周方向溝3Aを介して両側のミドル横溝4Bに連通している。
【0049】
サイプ15は、例えば、その長手方向及び深さ方向にジグザグ状に延びる三次元サイプ(いわゆるミウラ折り構造のサイプ)である。このようなサイプ15は、サイプ15の壁面の凹凸が互いに噛み合うので、クラウンブロック8の剛性の過度の低下をさらに抑制し、転がり抵抗性能やライフ性能を高く維持する。なお、サイプ15は、三次元サイプに限定されるものではなく、深さ方向に直線状に延びるものでもよい。
【0050】
図5(a)は、図4のB-B線断面図である。図5(a)に示されるように、サイプ15の深さD3は、クラウン周方向溝3Aの溝深さD1よりも小さい。このようなサイプ15は、クラウンブロック8の滑りや変形を抑制する。特に限定されるものではないが、サイプ15の深さD3は、クラウン周方向溝3Aの溝深さD1の70%~90%であるのが望ましい。
【0051】
図4に示されるように、クラウンブロック8の踏面8aは、サイプ15を挟む第1部分8Aと第2部分8Bとに区分されている。第1部分8Aのタイヤ周方向の長さL1は、第2部分8Bのタイヤ周方向の長さL2の0.9~1.1倍であるのが望ましい。第1部分8Aの長さL1が第2部分8Bの長さL2の0.9倍以上、かつ、1.1倍以下であるので、ヒールアンドトゥ摩耗等の偏摩耗が抑制される。
【0052】
ミドルブロック9は、本実施形態では、クラウンブロック8と実質的に同じ構成で形成されている。このため、本明細書では、ミドルブロック9については、クラウンブロック8と異なる構成について説明され、クラウンブロック8と同じ構成については、同じ符号が付されて、その詳細な説明が省略される。
【0053】
ミドルブロック9の踏面9aの面積Amは、クラウンブロック8の踏面8aの面積Acよりも大きく形成されている。ショルダー周方向溝3Bに隣接するミドルブロック9は、クラウンブロック8に比して、接地時の変形が生じやすい。このため、ミドルブロック9の面積Amを大きくすることで、ミドルブロック9とクラウンブロック8との摩耗の差を小さくすることができる。ミドルブロック9の踏面9aの面積Am、及び、クラウンブロック8の踏面8aの面積Acは、本明細書では、それそれ、サイプ15を埋めて得られる仮想踏面での面積である。
【0054】
ミドルブロック9の面積Amとクラウンブロック8の面積Acとの差が大きくなると、かえって摩耗の差が大きくなるおそれがある。このため、ミドルブロック9の面積Amは、クラウンブロック8の面積Acの1.2倍以下が望ましく、1.1倍以下が望ましい。
【0055】
本実施形態のクラウン横溝4Aは、各クラウン周方向溝3Aのクラウン第2凸部11b、11b間を継いでいる。クラウン横溝4Aは、例えば、直線状に延びている。なお、クラウン横溝4Aは、円弧状に延びていてもよい。
【0056】
図5(a)に示されるのように、本実施形態のクラウン横溝4Aは、最も深さの大きい溝底4sとクラウンブロック8の踏面8aとを継ぐクラウン溝壁面20を有している。クラウン溝壁面20は、本実施形態では、クラウン第1壁面部20aとクラウン第2壁面部20bとを含んでいる。クラウン第1壁面部20aは、例えば、踏面8aからタイヤ法線方向に対して傾斜している。本実施形態のクラウン第1壁面部20aは、直線状に延びている。クラウン第2壁面部20bは、例えば、クラウン第1壁面部20aと溝底4sとに連なってクラウン第1壁面部20aよりも大きな角度で傾斜している。本実施形態のクラウン第2壁面部20bは、円弧状に延びている。
【0057】
クラウン横溝4Aの溝深さD4は、クラウン周方向溝3Aの溝深さD1よりも小さいのが望ましい。このようなクラウン横溝4Aは、転がり抵抗性能及びライフ性能を大きく向上する。クラウン横溝4Aの溝深さD4は、本実施形態では、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2よりも小さい。
【0058】
クラウン横溝4Aの溝底4sには、クラウン横溝4Aの長手方向へ直線状に延びるサイプ21が設けられる。このようなサイプ21は、クラウン横溝4Aの容積を大きくするのに役立ち、ウェット性能の低下を大きく抑える。本実施形態のサイプ21は、両側のクラウン周方向溝3A(図4に示す)に連通している。これにより上述の作用が効果的に発揮される。
【0059】
サイプ21の深さD5は、1mm以上が望ましく、1.5mm以上がさらに望ましい。なお、サイプ21の深さD5が過度に大きくなると、ブロックの変形や滑りが抑制できず、転がり抵抗性能及びライフ性能が低下するおそれがある。このため、サイプ21の深さD5は、3mm以下が望ましく、2.5mm以下がさらに望ましい。また、サイプ21の深さD5とクラウン横溝4Aの溝深さD4との和(D4+D5)は、本実施形態では、クラウン周方向溝3Aの溝深さD1よりも小であり、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2よりも小であり、サイプ15の深さD3よりも大である。
【0060】
図4に示されるように、ミドル横溝4Bは、クラウン周方向溝3Aのクラウン第1凸部11aとショルダー周方向溝3Bのショルダー第2凸部13bとを継いでいる。ミドル横溝4Bは、例えば、直線状に延びている。なお、ミドル横溝4Bは、円弧状に延びていてもよい。
【0061】
図5(b)は、図4のC-C線断面図である。図5(b)に示されるように、本実施形態のミドル横溝4Bは、最も深さの大きい溝底4tとミドルブロック9の踏面9aとを継ぐミドル溝壁面22を有している。ミドル溝壁面22は、本実施形態では、ミドル第1壁面部22aとミドル第2壁面部22bとミドル第3壁面部22cとを含んでいる。ミドル第1壁面部22aは、例えば、踏面9aからタイヤ法線方向に対して傾斜している。ミドル第1壁面部22aは、本実施形態では、直線状に延びている。本実施形態のミドル第2壁面部22bは、ミドル第1壁面部22aに連なってミドル第1壁面部22aよりも小さな角度で傾斜している。ミドル第2壁面部22bは、本実施形態では、直線状に延びている。ミドル第2壁面部22bは、例えば、タイヤ法線方向に対して平行に延びている。ミドル第3壁面部22cは、本実施形態では、ミドル第2壁面部22bと溝底4tとに連なっている。ミドル第3壁面部22cは、例えば、円弧状に延びている。
【0062】
このようなミドル横溝4Bは、クラウン横溝4Aに比して、相対的に溝容積を小さくできる。ミドル横溝4Bは、接地時のブロックの変形や滑りが相対的に大きいミドル陸部5Bに設けられている。このため、ミドル横溝4Bは、ミドル陸部5Bのパターン剛性の低下を、クラウン横溝4Aが設けられたクラウン陸部5Aのパターン剛性の低下より抑えることができる。これにより、クラウン陸部5Aとミドル陸部5Bとの摩耗の差が小さくなる。
【0063】
ミドル横溝4Bの溝深さD6は、クラウン周方向溝3Aの溝深さD1よりも小さいのが望ましい。このようなミドル横溝4Bは、転がり抵抗性能及びライフ性能を大きく向上する。ミドル横溝4Bの溝深さD6は、本実施形態では、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2よりも小さい。ミドル横溝4Bの溝深さD6は、例えば、クラウン横溝4Aの溝深さD4と同じである。
【0064】
特に限定されるものではないが、ミドル第1壁面部22aの溝深さD6aは、ミドル横溝4Bの溝深さD6の60%以上が望ましく、70%以上がさらに望ましく、90%以下が望ましく、80%以下がさらに望ましい。
【0065】
ミドル横溝4Bの溝底4tには、ミドル横溝4Bの長手方向へ直線状に延びるサイプ21が設けられる。ミドル横溝4Bのサイプ21は、本実施形態では、クラウン横溝4Aのサイプ21と同じ構成であるので、その説明が省略される。
【0066】
図1に示されるように、ショルダー陸部5Cは、ショルダー周方向溝3Bからタイヤ軸方向の外側に延びるショルダー横溝4Cが設けられている。
【0067】
ショルダー横溝4Cは、ショルダー第1凸部13aとトレッド端Teとの間に配されている。このようなショルダー横溝4Cは、ショルダー周方向溝3B内の水を、タイヤ1の転動を利用してトレッド端Teの外側にスムーズに排出する。
【0068】
ショルダー横溝4Cは、ショルダー周方向溝3Bからタイヤ軸方向外側に向かって同じ溝幅W4aで延びる第1溝部25aと、第1溝部25aとトレッド端Teとを継ぎ、かつ、タイヤ軸方向外側へ溝幅W4bが連続して大きくなる第2溝部25bとを含んでいる。このようなショルダー横溝4Cは、ウェット性能の低下をさらに抑える。
【0069】
図2に示されるように、ショルダー横溝4Cの溝深さD7は、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2の0.1~0.4倍であるのが望ましい。このようなショルダー横溝4Cは、ショルダー陸部5Cの変形や滑りを抑制して、転がり抵抗性能及びライフ性能を向上する。このような観点より、ショルダー横溝4Cの溝深さD7は、ショルダー周方向溝3Bの溝深さD2の0.2倍以上が望ましく、0.3倍以下であるのが望ましい。第1溝部25a及び第2溝部25bは、例えば、同じ溝深さで形成されている。
【0070】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例
【0071】
図1の基本パターンを有する重荷重用空気入りタイヤが試作された。そして、各テストタイヤのウェット性能、ライフ性能及び転がり抵抗性能についてテストが行われた。テスト方法や共通仕様は、以下の通りである。
サイズ:11R22.5
ショルダー周方向溝の溝深さD2:12.5mm
ショルダー周方向溝の溝幅W2:14mm
クラウンブロックの最大長さLA/TW:30%
【0072】
<ウェット性能>
テストドライバーが、全輪にテストタイヤが装着されたテスト車両を、水深1mmのウェットアスファルト路面にて走行させた。テスト車両の速度が60km/hのときにブレーキを作動させ、停止するまでの制動距離が測定された。結果は、比較例1の制動距離を100とする指数で示している。数値が小さい程、ウェット性能が優れている。
リム:7.50×22.5
内圧:830kPa
テスト車両:2-D車両(積載量10t)
【0073】
<ライフ性能>
テストドライバーが、上記車両を用いてアスファルト路面のテストコースを走行させ、走行後の後輪(駆動輪)タイヤにおける、クラウン周方向溝の溝底に形成されるクラックや各溝に生じるヒールアンドトゥ摩耗等の偏摩耗、及び、摩耗の発生状況が確認された。そして、これら全体の発生状況がテストドライバーの官能により評価された。結果は、比較例1を100とする評点で示されている。数値が大きい程、ライフ性能が優れている。
走行距離:10000km
【0074】
<転がり抵抗性能>
転がり抵抗試験機を用い、ISO28580に基づいて、下記の条件にてテストタイヤの転がり抵抗が測定された。結果は、比較例1の転がり抵抗を100とする指数で示されている。数値が小さい程、転がり抵抗が優れている。テストの結果が表1及び表2に示される。
内圧:830kPa
荷重:25.01kN
速度:80km/h
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
表1に示されように、実施例のタイヤは、ウェット性能の低下を抑えつつ、転がり抵抗性能とライフ性能とが向上してる。
【符号の説明】
【0078】
1 タイヤ
3 周方向溝
3A クラウン周方向溝
3B ショルダー周方向溝
5 陸部
5A クラウン陸部
5B ミドル陸部
8 クラウンブロック
9 ミドルブロック
図1
図2
図3
図4
図5