(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】信号分析装置、信号分析方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 23/16 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G01R23/16 D
G01R23/16 Z
G01R23/16 B
(21)【出願番号】P 2020030062
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】椎木 悠介
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-198336(JP,A)
【文献】特開2005-079893(JP,A)
【文献】特開平09-006391(JP,A)
【文献】特開平06-188926(JP,A)
【文献】特開平06-160445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 23/00-23/20、
H04B 1/69-1/719、
H04J 1/00-1/20、
4/00-13/22、
99/00、
H04L 5/00-5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行う信号分析装置であって、
前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価する相関評価手段と、
前記基底関数を選択する際、前記相関評価手段による評価結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する選択手段と、
を有
し、
前記相関評価手段は、前記受波信号を前記残差信号とするデータの数が前記複数の基底関数の数と一致するまで零データを追加する零詰め手段を有し、
前記相関評価手段は、
前記零詰め手段によって前記零データが追加された前記残差信号と前記複数の基底関数との前記相関評価にフーリエ変換を利用し、
前記選択手段は、
前記フーリエ変換の周波数分析幅に相当する前記基底関数を前記2以上選択する、
信号分析装置。
【請求項2】
受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行う信号分析装置であって、
前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価する相関評価手段と、
前記基底関数を選択する際、前記相関評価手段による評価結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する選択手段と、
を有し、
前記相関評価手段は、
前記残差信号と前記複数の基底関数との前記相関評価に内積を利用し、
前記選択手段は、
前記相関評価手段によって算出された前記内積の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する、
信号分析装置。
【請求項3】
受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行う信号分析装置であって、
前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価する相関評価手段と、
前記基底関数を選択する際、前記相関評価手段による評価結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する選択手段と、
前記選択手段によって前記2以上の基底関数が選択された後、前記2以上の基底関数にスペクトル漏れ成分が含まれているか否かを判定し、前記スペクトル漏れ成分が含まれる基底関数を前記2以上の基底関数から削除する調整手段
と、
を有する
信号分析装置。
【請求項4】
前記調整手段は、
前記2以上の基底関数に対応する前記相関評価による結果の最大ピーク値と最小ピーク値との差分と予め決められた閾値とを比較し、前記差分が前記閾値以上である場合、前記2以上の基底関数のうち、最初に選択された基底関数を除く基底関数を前記2以上の基底関数から削除する、
請求項
3に記載の信号分析装置。
【請求項5】
前記調整手段は、
前記2以上の基底関数に対応する前記相関評価による結果の最大ピーク値の周波数に最も近く、前記最大ピーク値とのレベル差が予め決められた閾値以上となる周波数がある場合、前記レベル差が前記閾値以上となる周波数に対応する基底関数を前記2以上の基底関数から削除する、
請求項
3に記載の信号分析装置。
【請求項6】
受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行う
コンピュータが実行する信号分析方法であって、
前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価するステップと、
前記基底関数を選択する際、前記相関評価の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択するステップと、
を有
し、
前記相関評価するステップにおいて、前記残差信号と前記複数の基底関数との前記相関評価に内積を利用し、
前記基底関数を2以上選択するステップにおいて、前記内積の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する、
信号分析方法。
【請求項7】
受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行うコンピュータ
を、
前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価する
相関評価手段と、
前記基底関数を選択する際、前記相関評価の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する
選択手段と
して機能させ、
前記相関評価手段において、前記残差信号と前記複数の基底関数との前記相関評価に内積を利用する手段として機能させ、
前記選択手段において、前記相関評価手段によって算出された前記内積の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する手段として機能させるための
、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号分析装置、信号分析方法、およびその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の周波数分析方法として、DFT(Discrete Fourier Transform:離散フーリエ変換)と、DFTを高速化した方法であるFFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)とが広く用いられている。一方、低SNR(Signal-to-Noise Ratio)環境でも信号検出が可能な方法の一つとして、貪欲法による狭帯域信号分析が注目されている。
【0003】
貪欲法を使った狭帯域処理は、正弦波などを基底関数として、対象とする信号に適合する基底関数のみを選択することで狭帯域信号を分析する手法である。貪欲法の代表的な一つの手法として、OMP(Orthogonal Matching Pursuit)が知られている。信号分析にOMPを適用した受信機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
OMPを利用した信号分析方法について簡単に説明する。以下では、文章の読みやすさを優先し、文章中のベクトル表記を省略する。OMPはセンサの受波信号xに対して事前に用意したM個の基底関数からなる基底関数セットの中から、受波信号xとの誤差を小さくするL個(L<M)の基底関数を当てはめることで、xの周波数分析を行う。式(1)に受波信号の一例を示す。式(2)に基底関数セットの一例を示す。
【0005】
【0006】
【0007】
基底関数の一例として、解析する信号が狭帯域信号の場合、正弦波と余弦波とのペアである複素正弦波が挙げられる。このとき、M個の複素正弦波から構成される基底関数セットPは、式(3)で表される。
【0008】
【0009】
式(3)において、fmはm番目の複素正弦波の周波数である。FFTの基底関数の数およびOMPの基底関数の数をMとする。FFTの基底関数の数Mは、サンプル数Nのとき、M=Nの関係になる。一方、OMPは、基底関数の数Mを任意に設定できるため、M>NのようにMをNよりも多くすることができる。そのため、OMPは、基底関数の数Mを多くするほど周波数分析幅を細かくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、OMPは、FFTに対して狭帯域信号検出精度の改善が期待できるが、FFTよりも計算負荷が大きくなるという課題がある。
【0012】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、狭帯域信号検出精度を維持しつつ、OMPよりも計算負荷を軽減する信号分析装置、信号分析方法およびその方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る信号分析装置は、受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行う信号分析装置であって、前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価する相関評価手段と、前記基底関数を選択する際、前記相関評価手段による評価結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する選択手段と、を有し、前記相関評価手段は、前記受波信号を前記残差信号とするデータの数が前記複数の基底関数の数と一致するまで零データを追加する零詰め手段を有し、前記相関評価手段は、前記零詰め手段によって前記零データが追加された前記残差信号と前記複数の基底関数との前記相関評価にフーリエ変換を利用し、前記選択手段は、前記フーリエ変換の周波数分析幅に相当する前記基底関数を前記2以上選択するものである。
【0014】
本発明に係る信号分析方法は、受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行うコンピュータが実行する信号分析方法であって、前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価するステップと、前記基底関数を選択する際、前記相関評価の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択するステップと、を有し、前記相関評価するステップにおいて、前記残差信号と前記複数の基底関数との前記相関評価に内積を利用し、前記基底関数を2以上選択するステップにおいて、前記内積の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択するものである。
【0015】
本発明に係るプログラムは、受波信号に対して、複数の基底関数を含む基底関数セットを用いて、基底関数を選択する処理と選択した基底関数を前記受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、観測時間単位であるスナップショットの受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定し、前記スナップショット毎に前記推定を繰り返す基底関数探索を行うコンピュータを、前記受波信号を残差信号として、前記残差信号と前記複数の基底関数とを相関評価する相関評価手段と、前記基底関数を選択する際、前記相関評価の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する選択手段として機能させ、前記相関評価手段において、前記残差信号と前記複数の基底関数との前記相関評価に内積を利用する手段として機能させ、前記選択手段において、前記相関評価手段によって算出された前記内積の結果に基づいて、前記基底関数を2以上選択する手段として機能させるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基底関数の選択処理において、基底関数を同時に2以上選択している。そのため、基底関数の選択を1つずつ行う場合に比べて、狭帯域信号検出精度を維持しつつ、計算負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1に係る信号分析装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示した演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図2に示した相関評価手段の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図4】比較例の信号分析装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図5】
図4に示した比較例の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図6】
図5に示すステップS102の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態1の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図8】実施の形態2に係る信号分析装置の演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図9】実施の形態2の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図10】実施の形態3に係る信号分析装置の演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図11】実施の形態3の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
【
図12】実施の形態4に係る信号分析装置の演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。
【
図13】実施の形態4の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
本実施の形態1の信号分析装置の構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係る信号分析装置の一構成例を示すブロック図である。本実施の形態1の信号分析装置1は、例えば、コンピュータ等の情報処理装置である。
図1に示すように、信号分析装置1は、入力部2と、記憶部3と、演算部4と、出力部5とを有する。記憶部3は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)装置である。出力部5は、例えば、ディスプレイ装置である。演算部4は、プログラムを記憶するメモリ11と、プログラムにしたがって処理を実行するCPU(Central Processing Unit)12とを有する。
【0019】
図2は、
図1に示した演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。
図3は、
図2に示した相関評価手段の一構成例を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、演算部4は、初期化手段21、相関評価手段22、基底選択手段23、振幅推定手段25、残差更新手段26および判定手段27を有する。
図3に示すように、相関評価手段22は、零詰め手段31および相関算出手段32を有する。
【0020】
基底関数セットとして、例えば、式(2)に示した基底関数セットPが事前に用意され、記憶部3が基底関数セットPを記憶している。入力部2には、図に示さないセンサが接続され、式(1)に示した受波信号xが入力される。本実施の形態1では、受波信号xに対する観測時間単位であるスナップショットのサンプル数をNとすると、基底関数セットSkの基底関数の数Mと受波信号xのサンプル数Nとの関係を、M>Nとする。
【0021】
ここで、本実施の形態1の信号分析装置1の構成について詳細に説明する前に、比較例の信号分析装置の構成および動作を説明する。比較例の信号分析装置は、OMPを用いた演算処理を高速化するものである。
図4は、比較例の信号分析装置の一構成例を示すブロック図である。
図4に示す構成のうち、
図1~
図3に示した構成と同様な構成について同一の符号を付している。
【0022】
比較例の信号分析装置100は、
図1に示した信号分析装置1と比べると、演算部4が演算部14に置き換えられている。演算部14のハードウェア構成は、例えば、
図1に示したCPU12およびメモリ11を有する構成である。
図2に示した演算部4と
図4に示す演算部14とを比較すると、基底選択手段123が
図2に示した基底選択手段23と異なる構成である。
【0023】
初期化手段21は、OMPに用いられる各パラメータについて、ループ回数をk、残差信号をrk-1、選択された基底関数がセットになった基底関数セットをSk-1とそれぞれ定義する。初期化手段21は、スナップショット毎の受波信号xを入力とし、ループ回数k、残差信号rk-1、および選択された基底関数セットSk-1のそれぞれを初期化する。初期化手段21は、初期化した基底関数セットSk-1および残差信号rk-1を相関評価手段22に出力する。
【0024】
図3に示した零詰め手段31は、零値のデータである零データを(M-N)個、残差信号r
k-1に追加する。データの総数がM個になった残差信号をr
’
k-1とする。
図3に示した相関算出手段32は、フーリエ変換を用いて残差信号r
’
k-1と基底関数セットPとの相関評価を行う。本実施の形態1では、フーリエ変換としてFFTを用いる。
【0025】
基底選択手段123は、相関評価手段22によるフーリエ変換を用いた相関評価の結果に基づいて、フーリエ変換の周波数分析幅に相当する基底関数を選択する。具体的には、基底選択手段123は、基底関数セットSk-1および残差信号rk-1を入力として、基底関数セットP-Sk-1から基底関数を選択し、選択した基底関数のセットである基底関数セットSkに更新する。基底選択手段123は、基底関数セットSkおよび残差信号rk-1を振幅推定手段25に出力する。
【0026】
振幅推定手段25は、基底関数セットSkおよび残差信号rk-1を入力として、任意の基底関数の振幅をwとすると、基底関数セットSkから(|Skw-rk-1|2)の値が最小となる基底関数の振幅w^を推定する。そして、振幅推定手段25は、基底関数セットSk、選択した基底関数の振幅w^および残差信号rk-1を残差更新手段26に出力する。残差更新手段26は、基底関数セットSk、振幅w^および受波信号xを入力として、rk=x-Skw^の式を用いて、残差信号rkを計算する。残差更新手段26は、更新後の残差信号rkと、基底関数セットSkおよび振幅w^とを判定手段27に出力する。
【0027】
判定手段27は、基底関数セットSk、振幅w^および残差信号rkを入力とし、残差信号rkが終了条件に合致しているか否かを判定する。残差信号rkが終了条件に合致していない場合、判定手段27は、kをk+1に更新した後、次の基底関数セットSk-1および残差信号rk-1を基底選択手段23に指示する。残差信号rkが終了条件に合致している場合、判定手段27は、基底関数セットSkおよび振幅w^を、出力部5を介して出力する。
【0028】
次に、
図4に示した比較例の信号分析装置100が実行する信号分析方法を説明する。
図5は、
図4に示した比較例の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
図6は、
図5に示すステップS102の具体的な手順の一例を示すフローチャートである。
【0029】
(ステップS101:パラメータの初期化)
初期化手段21は、次のように、OMPに用いられる各パラメータを初期化する。
ループ回数:k=1
残差信号:rk-1=x
選択された基底関数セット:Sk-1=Φ(空集合)
【0030】
(ステップS102:零詰めFFTによる基底関数の選択)
PからSk-1を引いた差集合は式(4)で表される。
【0031】
【0032】
式(4)の差集合の中からrk-1との残差を最小とする基底関数pmを、式(5)にしたがって選択する。ここで、式(4)において、PとSk-1との間の記号(逆スラッシュ)は差集合を表す。
【0033】
【0034】
式(5)において、(A,B)はAとBの内積計算を意味する。式(5)はOMP中で最も計算量を要する処理である。比較例においては、式(5)におけるrk-1との残差を最小にする基底は、rk-1との相関が最大の基底と同義であることに注目している。DFTは分析したい信号とDFT基底関数との相関を評価することで周波数分析を行う手法であり、その相関評価はDFTを高速に行うFFTで代替できる。そのため、rk-1と基底関数の相関算出はFFTで代替する。
【0035】
しかし、FFTの基底関数の数はサンプル数Nとなるため、OMPの基底関数の数MがM>Nと設定された場合、FFTとOMPのそれぞれの基底関数の数が一致しない。そこで、FFTの基底関数の数をMとするために、零詰め手段31は、FFT前の残差信号r
k-1に、式(6)に示すように、零データのデータ列を追加する零詰めを行う(
図6のステップS1001)。
【0036】
【0037】
ここで、零データの要素数Lは、L=M-Nである。DFTは式(7)で表される。相関算出手段32は、式(7)を計算する(ステップS1002)。
【0038】
【0039】
これにより、残差信号rk-1を保持したまま、FFTの基底関数をOMPの基底関数に対応させることができる。零詰めするデータ長に対応して、基底関数セットの周波数分析幅を任意に調整できる。
【0040】
基底選択手段123は、FFTの相関評価の結果であるRk-1=[Rk-1(0),Rk-1(1),・・・,Rk-1(N+L-1)]から、次式のように相関が最大となる基底を選択する(ステップS1003)。
【0041】
【0042】
基底選択手段123は、selに対する基底pselを、次式のようにSkに追加する。
【0043】
【0044】
(ステップS103:選択された基底関数の振幅w^の推定)
振幅推定手段25は、式(10)を満たす、k×1ベクトルである振幅w^を推定する。このようにして、振幅推定手段25は、基底関数と振幅との組み合わせを推定する。
【0045】
【0046】
(ステップS104:残差信号rkの更新)
残差更新手段26は、振幅推定手段25によって推定された振幅w^と、基底関数セットSkと、受波信号xとを用いて、式(11)を計算する。
【0047】
【0048】
(ステップS105:終了判定)
判定手段27は、|rk|<θthを満たすか否かを判定する。θthは、処理を終了するか否かの判定基準となる閾値である。|rk|<θthを満たさない場合、演算部14は、k=k+1として、ステップS102~S105の処理を繰り返す(ステップS106)。一方、|rk|<θthを満たす場合、判定手段27は、ループを終了し、基底関数セットSkおよび振幅w^を出力する(ステップS107)。演算部14は、判定手段27が基底関数セットSkおよび振幅w^を出力した後、次のスナップショットの受波信号に対して、ステップS101~S107の処理を繰り返す。
【0049】
OMPはFFTに対して狭帯域信号検出の改善が期待できるが、FFTよりも計算負荷が大きいという問題がある。この問題に対して、比較例の信号分析装置100は、基底選択処理を零詰めFFTに代替した。そのため、代替後のOMPの計算オーダーはO(kmaxMlog2M)となり、OMPの性能を維持しながら代替前のO(NMkmax-(N/2)(kmax
2-kmax))より計算量を削減できる。ここで、kmaxは最大探索回数を意味する。
【0050】
しかしながら、比較例の場合でも、依然として基底選択手段123による基底選択処理の計算量は多く、高速化が求められる。基底選択手段123において、現状最も多くの計算量を占めているのは、kmax回分繰り返し計算する零詰めFFTである。
【0051】
以上のことから、さらなるOMP高速化の課題はkmaxの削減である。そこで、本実施の形態1は、kmaxの削減のために、基底選択処理の際、基底関数の選択を1つずつ行うのではなく、複数の基底関数を同時に選択することで、高速化を図るものである。「同時」とは、1回の基底選択処理を意味し、複数の基底関数を選択するタイミングが時分まで完全に一致する場合に限らない。
【0052】
本実施の形態1の信号分析装置1において、基底選択手段23は、基底関数セットSk-1および残差信号rk-1を入力として、基底関数セットP-Sk-1からQ個の基底関数を選択し、選択したQ個の基底関数のセットである基底関数セットSkに更新する。選択数Qは、2≦Q<Mの関係を満たす整数である。基底選択手段23以外の構成については信号分析装置100と同様なため、その詳細な説明を省略する。
【0053】
本実施の形態1の信号分析装置1が実行する信号分析方法を説明する。
図7は、実施の形態1の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
図7に示すステップS201およびS203~S207の処理は
図5に示したステップS101およびS103~S107の処理と同様になるため、その詳細な説明を省略する。
【0054】
図5に示したステップS102においては、基底選択手段123は、残差信号r
k-1との相関が最大となる基底関数p
mを選択する。k
max回数分の零詰めFFTを繰り返して1つずつ基底関数p
mを選択していくのは計算負荷が大きいため、複数の基底関数p
mの選択を同時に行い、k
max自体の回数を減らす必要がある。
【0055】
そこで、式(8)によって零詰めFFTの結果であるRk-1に対して最大値のみ選択していたところを、式(12)に示すように、基底選択手段23は、複数のピークを同時に選択し、基底関数セットSk-1に追加する(ステップS202)。これにより、最大探索回数であるkmaxが削減される。
【0056】
【0057】
式(12)において、findpeaks(a)はベクトルaからピーク検出を行う関数を示し、maxsort(a)は降順にソートする関数を示す。例えば、ステップS202のように、複数の基底関数を同時に選択する処理を、以下では、複数同時選択処理と称する。
【0058】
本実施の形態1の信号分析装置1は、受波信号に対して、基底関数セットを用いて、スナップショット毎に基底関数を選択する処理と基底関数を受波信号から差し引く処理とを繰り返すことで、受波信号を表す基底関数と振幅との組み合わせを推定する。信号分析装置1は、受波信号を残差信号として、残差信号と複数の基底関数とを相関評価する相関評価手段22と、基底関数を選択する際、相関評価手段22による評価結果に基づいて、基底関数を2以上選択する基底選択手段23とを有する。
【0059】
本実施の形態1によれば、基底関数の選択処理において、基底関数を同時に2以上選択している。零詰めFFTによる相関算出結果から1つずつ選択する方法を複数のピークから2以上の基底関数を同時に選択する方法にすることで、kmaxが削減される。そのため、1回の基底選択処理の度に、基底関数の選択を1つずつ行う場合に比べて、狭帯域信号検出精度を維持しつつ、計算負荷を軽減することができる。例えば、基底選択処理の度にQ個ずつ基底関数を選択すれば、kmax=kmax/Qとなる。このことから、比較例のOMPによる計算オーダーであるO(kmaxMlog2M)の計算量低減に貢献することは明らかである。
【0060】
実施の形態2.
本実施の形態2は、強い狭帯域信号に起因するスペクトル漏れに関する基底関数の選択を回避するものである。本実施の形態2においては、実施の形態1で説明した構成と同様な構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0061】
本実施の形態2の信号分析装置の演算部の構成を説明する。
図8は、実施の形態2に係る信号分析装置の演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。本実施の形態2の信号分析装置1aは、
図1に示した入力部2、記憶部3および出力部5と、
図8に示す演算部4aとを有する。演算部4aのハードウェア構成は、例えば、
図1に示したCPU12およびメモリ11を含む構成である。信号分析装置1aにおいて、演算部4a以外の構成は実施の形態1で説明した信号分析装置1と同様な構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0062】
演算部4aは、
図2に示した演算部4と比較すると、調整手段24aが追加された構成である。調整手段24aは、強い狭帯域信号の有無を判定するために、基底選択手段23による複数同時選択処理の結果を利用する。具体的には、調整手段24aは、基底関数セットS
k-1および残差信号r
k-1を入力として、強い狭帯域信号の有無に対応して基底関数セットS
k-1の基底関数の更新数を調整し、調整後の基底関数セットS
k-1および残差信号r
k-1を出力する。
【0063】
次に、本実施の形態2の信号分析装置1aが実行する信号分析方法を説明する。
図9は、実施の形態2の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
図9に示すステップS301およびS302の処理は
図5に示したステップS101および
図7に示したステップS202の処理と同様になるため、その詳細な説明を省略する。また、
図9に示すステップS304~S308の処理は
図5に示したステップS103~S107の処理と同様になるため、その詳細な説明を省略する。
【0064】
図9に示すステップS303において、調整手段24aは、強い狭帯域信号の有無を判定するために、基底選択手段23による、複数同時選択処理の結果を利用する。具体的には、複数同時選択処理の結果に対して、調整手段24aは、最初に選択されたピーク値を最大ピーク値とし、最後に選択されたピーク値を最小ピーク値とする。そして、調整手段24aは、最大ピーク値と最小ピーク値との差分を求め、求めた差分と予め決められた閾値θ
delとを比較する。
【0065】
最大ピーク値および最小ピーク値の差分と閾値θdelとの比較の結果、その差分が閾値θdel以上である場合、調整手段24aは、強い狭帯域信号が存在すると判定する。強い狭帯域信号が存在する場合、調整手段24aは、ステップS302の処理でSk-1に追加された複数の基底関数から最初に選択された基底関数以外を削除し、最初に選択された基底関数のみ、振幅推定処理および残差信号の更新処理の対象とする。
【0066】
一方、最大ピーク値および最小ピーク値の差分と閾値θdelとの比較の結果、その差分が閾値θdel未満である場合、調整手段24aは、強い狭帯域信号が存在しないと判定する。強い狭帯域信号が存在しない場合、調整手段24aは、実施の形態1の場合と同様に、同時に選択された複数の基底関数を、振幅推定処理および残差信号の更新処理の対象とする。ステップS303における、調整手段24aによるSk-1の更新方法を、式(13)に示す。
【0067】
【0068】
実施の形態1において、基底選択手段23が複数の基底関数を同時に選択する際、受波信号に強い狭帯域信号が含まれている場合、強い狭帯域信号のスペクトル漏れによって生じるピークを選択してしまう可能性がある。この場合、基底選択手段23は、無駄な探索を行ってしまうことになる。そのため、強い狭帯域信号がある場合の探索負荷を軽減するために、残差信号の更新が行われる前に、基底選択処理において同時に選択された複数の基底関数から強い狭帯域信号の影響を取り除いておくことが望ましい。
【0069】
本実施の形態2の信号分析装置1aは、受波信号に強い狭帯域信号の有無を判定する調整手段24aを有する。調整手段24aは、基底選択手段23によって選択された2以上の基底関数にスペクトル漏れ成分が含まれているか否かを判定し、スペクトル漏れ成分が含まれる基底関数を2以上の基底関数から削除する。具体的には、調整手段24aは、2以上の基底関数に対応するフーリエ変換による結果の最大ピーク値と最小ピーク値との差分が閾値θdel以上である場合、最初に選択された基底関数を除く基底関数を2以上の基底関数から削除する。
【0070】
強い狭帯域信号が存在する場合、同時に選択された複数の基底関数中の最大のピーク値と最小のピーク値とに大きな差が生じるので、本実施の形態2によれば、最大のピーク値と最小のピーク値との差を、判断材料にして、強い狭帯域信号の有無を判定できる。その結果、強い狭帯域信号が存在する場合、複数の基底関数を同時に選択せず、1つの基底関数を選択して振幅推定および残差信号の更新を行うことで、スペクトル漏れによって生じたピークを選択して探索処理に含めてしまうことを回避できる。
【0071】
実施の形態3.
本実施の形態3は、強い狭帯域信号に起因するスペクトル漏れに関する基底関数の選択を回避するものであるが、実施の形態2とは異なる方法である。本実施の形態3においては、実施の形態1および2で説明した構成と同様な構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0072】
本実施の形態3の信号分析装置の演算部の構成を説明する。
図10は、実施の形態3に係る信号分析装置の演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。本実施の形態3の信号分析装置1bは、
図1に示した入力部2、記憶部3および出力部5と、
図10に示す演算部4bとを有する。演算部4bのハードウェア構成は、例えば、
図1に示したCPU12およびメモリ11を含む構成である。信号分析装置1bにおいて、演算部4b以外の構成は実施の形態1で説明した信号分析装置1と同様な構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0073】
演算部4bは、
図2に示した演算部4と比較すると、調整手段24bが追加された構成である。調整手段24bは、サイドローブ選択の有無を判定するために、基底選択手段23による複数同時選択処理の結果を利用する。具体的には、調整手段24bは、基底関数セットS
k-1および残差信号r
k-1を入力として、サイドローブに起因する基底関数が選択されたか否かに対応して基底関数セットS
k-1の基底関数の更新数を調整する。そして、調整手段24bは、調整後の基底関数セットS
k-1および残差信号r
k-1を出力する。
【0074】
次に、本実施の形態3の信号分析装置1bが実行する信号分析方法を説明する。
図11は、実施の形態3の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
図11に示すステップS401およびS402の処理は
図5に示したステップS101および
図7に示したステップS202の処理と同様になるため、その詳細な説明を省略する。また、
図11に示すステップS404~S408の処理は
図5に示したステップS103~S107の処理と同様になるため、その詳細な説明を省略する。
【0075】
図11に示すステップS403において、調整手段24bは、複数同時選択処理の結果を利用して、最大ピーク値の周波数に対して直近で選択された基底関数の周波数を用いて、サイドローブに起因する基底関数の有無を判定する。
【0076】
具体的には、調整手段24bは、最大ピーク値の周波数に対して直近で選択された基底関数の周波数におけるピークと最大ピーク値とのレベル差が閾値θdel以上である場合、スペクトル漏れ成分が選択されていると判定する。そして、調整手段24bは、スペクトル漏れ成分として選択された基底関数のみ基底関数セットSk-1から除外して、除外した後の基底関数セットSk-1および残差信号rk-1を、振幅推定処理および残差信号の更新処理の対象とする。基底関数セットSk-1の更新方法は、式(14)~式(16)で表される。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
実施の形態2では、受波信号に強い狭帯域信号が存在すると判定された場合、選択された複数の基底関数のうち、最大ピーク値の基底関数を除く、残りの全ての基底関数が削除される。そのため、強い狭帯域信号のスペクトル漏れの影響を受けていない可能性のある基底関数も除去される場合がある。この場合、除去された基底関数のうち、スペクトル漏れの影響のない基底関数が後で選択されることになる。必要な基底関数が同じ選択処理で選択されない場合があり、探索の効率が低下してしまうことがある。
【0081】
これに対して、本実施の形態3の信号分析装置1bは調整手段24bを有する。調整手段24bは、選択された2以上の基底関数に対応する相関評価による結果の最大ピーク値の周波数に最も近く、最大ピーク値とのレベル差が閾値θdel以上となる周波数に対応する基底関数を、選択された2以上の基底関数から削除する。本実施の形態3によれば、基底選択手段23によって選択された2以上の基底関数のうち、スペクトル漏れの影響を受けている可能性の高い基底関数を除外するため、より効率的な探索を行うことができる。
【0082】
実施の形態4.
本実施の形態4は、基底選択処理において、零詰めFFTを用いないで、事前に用意された基底関数セットPを用いて複数の基底関数を同時に選択するものである。本実施の形態4においては、実施の形態1~3で説明した構成と同様な構成に同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0083】
実施の形態1~3では、複数同時選択処理の際、零詰めFFTによる、基底関数と残差信号との相関算出結果を用いる場合で説明したが、複数同時選択処理は、零詰めFFTの場合に限らず、基底関数と残差信号の相関を直接、算出した結果にも適用できる。
【0084】
本実施の形態4の信号分析装置の演算部の構成を説明する。
図12は、実施の形態4に係る信号分析装置の演算部の一構成例を示す機能ブロック図である。本実施の形態4の信号分析装置1cは、
図1に示した入力部2、記憶部3および出力部5と、
図12に示す演算部4cとを有する。演算部4cのハードウェア構成は、例えば、
図1に示したCPU12およびメモリ11を含む構成である。信号分析装置1cにおいて、演算部4c以外の構成は実施の形態3で説明した信号分析装置1bと同様な構成であるため、その詳細な説明を省略する。
【0085】
演算部4cは、
図10に示した演算部4bと比較すると、相関評価手段22aが相関評価手段22と異なる構成である。相関評価手段22aは、基底関数セットS
k-1および残差信号r
k-1を入力として、基底関数セットPと基底関数セットS
k-1との差集合P-S
k-1と、残差信号r
k-1との相関評価に内積を利用し、内積計算の結果を出力する。基底選択手段23は、相関評価手段22aによって算出された内積の結果に基づいて、複数の基底関数を同時に選択し、基底関数セットS
kおよび残差信号r
k-1を更新して振幅推定手段25に出力する。
【0086】
なお、本実施の形態4の演算部4cにおいて、調整手段24bの代わりに、実施の形態2で説明した調整手段24aが設けられていてもよい。また、実施の形態1と同様に、演算部4cに調整手段24aおよび24bのいずれもが設けられていなくてもよい。
【0087】
次に、本実施の形態4の信号分析装置1cが実行する信号分析方法を説明する。
図13は、実施の形態4の信号分析装置の動作手順を示すフローチャートである。
図13に示すステップS501の処理は
図5に示したステップS101の処理と同様になるため、その詳細な説明を省略する。また、
図13に示すステップS503~S508の処理は
図11に示したステップS403~S408の処理と同様になるため、その詳細な説明を省略する。
【0088】
ステップS502において、相関評価手段22aは、基底関数セットPと基底関数セットSk-1との差集合P-Sk-1と、残差信号rk-1との内積を計算する。続いて、基底選択手段23は、FFTの相関評価の結果の代わりに、内積の相関評価結果に基づいて、実施の形態1と同様にして、複数の基底関数を選択する。相関評価にFFTを利用せず、内積を利用する場合の複数同時選択処理は、式(17)および式(18)で表される。
【0089】
【0090】
【0091】
零詰めFFTを利用する方法の場合、周波数間隔は等間隔の設定であり、一部の帯域のみ詳細に分析するといった不等間隔の設定はできなかった。そこで、実施の形態4において、零詰めFFTを利用せずに、事前に用意した基底関数セットPを用いた複数同時選択処理を導入した。実施の形態4によれば、複数同時選択処理において、周波数間隔がFFTによる等間隔ではなく、OMPのように不等間隔の設定も可能であるため、任意の周波数の基底関数セットを用いることができる。
【0092】
上述した実施の形態1~4の利用形態について説明する。OMPは貪欲法と呼ばれるアルゴリズムの一種である。貪欲法は、解きたい問題に対して用意した解候補を当てはめ、評価値の高い解候補から選択し、繰り返し解候補を問題に当てはめていく手法である。実施の形態1~4において、基底関数探索を用いた狭帯域分析法としてOMPを例に説明したが、実施の形態1~4で説明した複数同時選択処理を用いた高速化手法は、基底関数を用いて探索する他の貪欲法に適用することができる。
【符号の説明】
【0093】
1、1a~1c 信号分析装置
2 入力部
3 記憶部
4、4a~4c 演算部
5 出力部
11 メモリ
12 CPU
14 演算部
21 初期化手段
22、22a 相関評価手段
23 基底選択手段
24a、24b 調整手段
25 振幅推定手段
26 残差更新手段
27 判定手段
31 零詰め手段
32 相関算出手段
100 信号分析装置
123 基底選択手段