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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231017BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020082940
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021180533
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】柴田 翔
(72)【発明者】
【氏名】毛塚 信貴
(72)【発明者】
【氏名】光田 純
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇
【審査官】町田 舞
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-129968(JP,A)
【文献】特開2018-011433(JP,A)
【文献】特開2006-167775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フライングキャパシタを有した電力変換器と、
前記電力変換器と負荷を結ぶ電路に介挿された、定格の異なる複数の電流検出器および前記各電流検出器を選択する複数の電磁接触器と、
前記複数の電流検出器のうち、前記電磁接触器により選択された側の電流検出器の検出電流と電流指令との偏差に対してPI制御を施して前記電力変換器の電圧指令信号を生成する電流制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に、前記電流制御器の動作許可期間と動作不許可期間とを指定する電流制御イネーブル信号における、前記動作許可期間が終了する時刻よりも設定時間前の時刻に前記電磁接触器のうちいずれか一方の電磁接触器をOFF制御し、前記動作許可期間が終了した後の動作不許可期間中の設定した時刻に前記電磁接触器のうちいずれか他方の電磁接触器をON制御する電磁接触器制御部と、
前記運転指令信号と、前記電流制御イネーブル信号と、前記複数の電磁接触器のON、OFF状態を検出したMC_ON/OFF状態検出信号との論理積をとる回路と、を備え、
前記回路の論理積条件成立時に前記電流制御器を動作させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項2】
フライングキャパシタを有した電力変換器と、
前記電力変換器と負荷を結ぶ電路に介挿された、定格の異なる複数の電流検出器および前記各電流検出器を選択する複数の電磁接触器と、
前記複数の電流検出器のうち、前記電磁接触器により選択された側の電流検出器の検出電流と電流指令との偏差に対してPI制御を施して前記電力変換器の電圧指令信号を生成する電流制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に、前記電磁接触器のうち、いずれか一方の電磁接触器をOFF制御してから設定時間後にいずれか他方の電磁接触器をON制御する電磁接触器制御部と、を備え、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に前記電流制御器を動作させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項3】
前記電流制御器はPI制御用の積分器を備え、
前記複数の電磁接触器のON、OFF状態を検出したMC_ON/OFF状態検出信号がOFFであるときに、前記積分器の積分ゲインを零に切り換える積分ゲイン切り換え回路を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記電流制御器はPI制御用の積分器を備え、
前記複数の電磁接触器のON、OFF状態を検出したMC_ON/OFF状態検出信号がOFFであるときに、前記積分器のリミッタ値を零に切り換えるリミッタ値切り換え回路を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
フライングキャパシタを有した電力変換器と、
前記電力変換器と負荷を結ぶ電路に介挿された、定格の異なる複数の電流検出器および前記各電流検出器を選択する電磁接触器と、
前記複数の電流検出器のうち、前記電磁接触器により選択された側の電流検出器の検出電流と、前記複数の電流検出器を選択切り換えする期間中は零となるように設定した電流指令との偏差に対してPI制御を施して前記電力変換器の電圧指令信号を生成する電流制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に、前記電流指令における、電流検出器を選択切り換えする期間の開始時刻に前記電磁接触器のうちいずれか一方の電磁接触器をOFF制御し、電流検出器を選択切り換えする期間中の設定した時刻に前記電磁接触器のうちいずれか他方の電磁接触器をON制御する電磁接触器制御部と、
前記電力変換器の運転指令信号と、前記運転指令信号のON期間中に、前記電流制御器の動作許可期間と動作不許可期間とを指定する電流制御イネーブル信号との論理積をとる回路と、を備え、
前記回路の論理積条件成立時に前記電流制御器を動作させることを特徴とする電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に動作し、前記電力変換器のフライングキャパシタの電圧検出値と電圧指令値との偏差に基づいてフライングキャパシタの電圧を制御するフライングキャパシタ電圧制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に動作し、前記電力変換器のユニット間を循環する横流を検出した横流検出信号と、横流指令信号との偏差に基づいて横流を抑制する横流制御器と、
を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライングキャパシタ(以下、FCと称することもある)と、電流を高精度に制御するために定格の異なる複数の電流検出器(以下、HCTと称することもある)を有した電力変換装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、FCを有した電力変換装置の制御手法及びFCの電圧を一定に保つ手法、FCを小型化する手法など様々な提案がなされてきた。しかし、FCを有していて複数のHCTをもった構成において、FCの電圧を一定に保ったままHCTを切り換える運転方法に関する提案はなされていない。
【0003】
従来のFCを有する電力変換器の一例を図8に示し、FC及び複数のHCTを有する電力変換器の構成例を図9に示す。図8において、Cは直流電圧源としてのコンデンサであり、コンデンサCの正極Pと負極N間にはFCを有する電力変換器100のユニット100a,100bが並列に接続されている。
【0004】
ユニット100aは、正極Pと負極Nの間に、スイッチング素子S1~S4から成る直列回路とスイッチング素子S5~S8から成る直列回路を並列に接続し、スイッチング素子S1およびS2の共通接続点とスイッチング素子S3およびS4の共通接続点の間にフライングキャパシタFC1を接続し、スイッチング素子S5およびS6の共通接続点とスイッチング素子S7およびS8の共通接続点の間にフライングキャパシタFC2を接続し、スイッチング素子S2およびS3の共通接続点とスイッチング素子S6およびS7の共通接続点の間にリアクトルL1,L2を直列に接続して構成されている。
【0005】
リアクトルL1およびL2の共通接続点は出力端子101aに接続されている。
【0006】
ユニット100bは、正極Pと負極Nの間に、スイッチング素子S9~S12から成る直列回路とスイッチング素子S13~S16から成る直列回路を並列に接続し、スイッチング素子S9およびS10の共通接続点とスイッチング素子S11およびS12の共通接続点の間にフライングキャパシタFC3を接続し、スイッチング素子S13およびS14の共通接続点とスイッチング素子S15およびS16の共通接続点の間にフライングキャパシタFC4を接続し、スイッチング素子S10およびS11の共通接続点とスイッチング素子S14およびS15の共通接続点の間にリアクトルL3,L4を直列に接続して構成されている。
【0007】
リアクトルL3およびL4の共通接続点は出力端子101bに接続されている。
【0008】
電力変換器100の各スイッチング素子S1~S16は、図示省略の制御回路により生成されたPWM指令に基づいてスイッチング制御される。
【0009】
図9において、FCを有する電力変換器100と負荷200を結ぶ電路には、HCT1(電流検出器1)とHCT1を選択するための電磁接触器1(以下MC1と称することもある)が直列に介挿されている。
【0010】
MC1の両端間には、HCT1とは定格の異なる(フルスケールの異なる)HCT2(電流検出器2)とHCT2を選択するための電磁接触器2(以下MC2と称することもある)が直列に接続されている。図9の構成では、HCT1の定格値が大きく、HCT2の定格値が小さい場合を示している。
【0011】
表2に各HCTが選択された時のMCの動作を示す。
【0012】
【表2】
【0013】
表2に示す動作「ON」とはMCを閉じることであり、「OFF」とはMCを開くことである。HCT1を選択した場合には、MC1のみをONさせる。これにより、HCT2の回路は開いているため電流が流れない。よって、HCT2に定格値以上の過大な電流が流れることはない。また、HCT2を選択した場合には、MC2のみをONさせる。この場合には、HCT1にも電流が流れるがHCT2の検出値を使用して制御を実施する。
【0014】
FCを有する電力変換器100の制御構成図を図10に示す。図10において11は、図9のHCT1又はHCT2で検出された電流と電流指令に基づいて電流を制御する電流制御器である。12は、図8の各FC1~FC4の電圧を検出したFC電圧検出値とFC電圧指令値に基づいてFC電圧を一定に保つFC電圧制御器である。13は、電力変換器100のユニット100a、100b間を循環する横流を検出した横流検出値と横流指令値に基づいて、横流を抑制する横流制御器である。
【0015】
電流制御器11、FC電圧制御器12、横流制御器13は電力変換器100の運転指令と同期して動作し、運転指令がOFFすると各制御器もOFFされる構成となっている。
【0016】
電流制御器11の出力とFC電圧制御器12の出力は加算器14において加算され、加算器14の出力は加算器15において横流制御器13の出力と加算されて、電力変換器100のスイッチング素子S1~S16をスイッチング制御するためのPWM指令信号として出力される。
【0017】
図9に示す構成の場合における電流指令と電流検出、電流制御の構成例を図11に示す。図11において、21は電流検出1(HCT1)で取得した値に変換ゲイン1を乗算する乗算器であり、22は電流検出2(HCT2)で取得した値に変換ゲイン2を乗算する乗算器である。
【0018】
23は乗算器21又は22の出力(電流検出値)を選択するスイッチであり、スイッチ23で選択された電流検出値は電流制御器11内の減算器24において、電流指令との偏差がとられる。
【0019】
電流制御器11は減算器24の偏差出力に対してPI制御を施すものであり、減算器24の偏差出力にはゲイン乗算器25の比例ゲインKpが乗算され、比例項が生成される。
【0020】
ゲイン乗算器25の出力にはゲイン乗算器26の積分ゲインKiが乗算された後、加算器27を介して積分器リミッタ28に入力されリミッタがかけられる。
【0021】
加算器27は、積分器リミッタ28の出力をバッファ29を通して遅延させた値とゲイン乗算器26の出力とを加算する。
【0022】
ゲイン乗算器25の出力(比例項)と積分器リミッタ28の出力(積分項)は加算器30において加算され、加算器30から電圧指令信号が出力される。
【0023】
図9および図11において、HCT1を選択した場合(スイッチ23が乗算器21側に選択制御された場合)には電流制御器11に入力される電流検出値は、電流検出1で取得した値を乗算器21の変換ゲイン1によって物理値にしたものとなる。この値を電流検出値1とする。
【0024】
また、HCT2を選択した場合(スイッチ23が乗算器22側に選択制御された場合)には電流制御器11に入力される電流検出値は、電流検出2で取得した値を乗算器22の変換ゲイン2によって物理値にしたものとなる。この値を電流検出値2とする。
【0025】
例えば、HCT1からHCT2に切り換える場合には、HCT1には電流が流れていない状態からMCを動作させてHCT2に電流が流れる経路を作る必要がある。もし、定格値の大きいHCT1に電流が流れていて、定格値の小さいHCT2に電流が流れない状態で切り換えてしまうと電流検出値1が急に0となってしまう。
【0026】
この時に電流指令と電流検出値の偏差が大きくなるため、過大な電圧指令が発生する。このため、過大な電流が発生する恐れがあり、最悪の場合には装置を破壊する電流が流れてしまう。
【0027】
次にHCT2からHCT1に切り換える場合を考える。MC2をONした状態でHCT1に切り換えるとHCT1の検出器でノイズなどによる異常な電流検出値を観測していた場合には、電流検出値1が大きくなってしまう。MC2をOFFしきれていないとHCT2の定格を超えた電流が流れる可能性がありHCT2を壊してしまう。
【0028】
尚、電力変換装置において、検出可能な電流域と分解能とを含む、仕様の異なる複数の電流センサを切り換える方法は、例えば特許文献1、2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【文献】特開2015-220792号公報
【文献】特開2015-228773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
通常HCTを切り替える際には、電力変換器の運転を停止しMCを確実にON/OFFさせる動作を行ってから運転を再開することを行う。このとき運転を停止してしまうため、FCを有する電力変換器の場合には、FC電圧を保つことができず、再度FC電圧を充電することから始める必要がある。このため、電流検出器を切り換えながら運転するような用途には適用することができない問題点がある。
【0031】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的は、電力変換器の運転を停止させることなく定格の異なる複数の電流検出器を切り換えることができる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記課題を解決するための請求項1に記載の電力変換装置は、
フライングキャパシタを有した電力変換器と、
前記電力変換器と負荷を結ぶ電路に介挿された、定格の異なる複数の電流検出器および前記各電流検出器を選択する複数の電磁接触器と、
前記複数の電流検出器のうち、前記電磁接触器により選択された側の電流検出器の検出電流と電流指令との偏差に対してPI制御を施して前記電力変換器の電圧指令信号を生成する電流制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に、前記電流制御器の動作許可期間と動作不許可期間とを指定する電流制御イネーブル信号における、前記動作許可期間が終了する時刻よりも設定時間前の時刻に前記電磁接触器のうちいずれか一方の電磁接触器をOFF制御し、前記動作許可期間が終了した後の動作不許可期間中の設定した時刻に前記電磁接触器のうちいずれか他方の電磁接触器をON制御する電磁接触器制御部と、
前記運転指令信号と、前記電流制御イネーブル信号と、前記複数の電磁接触器のON、OFF状態を検出したMC_ON/OFF状態検出信号との論理積をとる回路と、を備え、
前記回路の論理積条件成立時に前記電流制御器を動作させることを特徴とする。
【0033】
請求項2に記載の電力変換装置は、
フライングキャパシタを有した電力変換器と、
前記電力変換器と負荷を結ぶ電路に介挿された、定格の異なる複数の電流検出器および前記各電流検出器を選択する複数の電磁接触器と、
前記複数の電流検出器のうち、前記電磁接触器により選択された側の電流検出器の検出電流と電流指令との偏差に対してPI制御を施して前記電力変換器の電圧指令信号を生成する電流制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に、前記電磁接触器のうち、いずれか一方の電磁接触器をOFF制御してから設定時間後にいずれか他方の電磁接触器をON制御する電磁接触器制御部と、を備え、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に前記電流制御器を動作させることを特徴とする。
【0034】
請求項3に記載の電力変換装置は、請求項1又は2において、
前記電流制御器はPI制御用の積分器を備え、
前記複数の電磁接触器のON、OFF状態を検出したMC_ON/OFF状態検出信号がOFFであるときに、前記積分器の積分ゲインを零に切り換える積分ゲイン切り換え回路を設けたことを特徴とする。
【0035】
請求項4に記載の電力変換装置は、請求項1又は2において、
前記電流制御器はPI制御用の積分器を備え、
前記複数の電磁接触器のON、OFF状態を検出したMC_ON/OFF状態検出信号がOFFであるときに、前記積分器のリミッタ値を零に切り換えるリミッタ値切り換え回路を設けたことを特徴とする。
【0036】
請求項5に記載の電力変換装置は、
フライングキャパシタを有した電力変換器と、
前記電力変換器と負荷を結ぶ電路に介挿された、定格の異なる複数の電流検出器および前記各電流検出器を選択する電磁接触器と、
前記複数の電流検出器のうち、前記電磁接触器により選択された側の電流検出器の検出電流と、前記複数の電流検出器を選択切り換えする期間中は零となるように設定した電流指令との偏差に対してPI制御を施して前記電力変換器の電圧指令信号を生成する電流制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に、前記電流指令における、電流検出器を選択切り換えする期間の開始時刻に前記電磁接触器のうちいずれか一方の電磁接触器をOFF制御し、電流検出器を選択切り換えする期間中の設定した時刻に前記電磁接触器のうちいずれか他方の電磁接触器をON制御する電磁接触器制御部と、
前記電力変換器の運転指令信号と、前記運転指令信号のON期間中に、前記電流制御器の動作許可期間と動作不許可期間とを指定する電流制御イネーブル信号との論理積をとる回路と、を備え、
前記回路の論理積条件成立時に前記電流制御器を動作させることを特徴とする。
【0037】
請求項6に記載の電力変換装置は、請求項1から5のいずれか1項において、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に動作し、前記電力変換器のフライングキャパシタの電圧検出値と電圧指令値との偏差に基づいてフライングキャパシタの電圧を制御するフライングキャパシタ電圧制御器と、
前記電力変換器の運転指令信号のON期間中に動作し、前記電力変換器のユニット間を循環する横流を検出した横流検出信号と、横流指令信号との偏差に基づいて横流を抑制する横流制御器と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0038】
(1)請求項1~6に記載の発明によれば、定格の異なる複数の電流検出器の切り換え時に過大電流は発生せず、電力変換器の運転を停止することなく切り換えが行われる。電流検出器の切り換え時に運転停止しないので、電力変換器のフライングキャパシタ電圧を保持することができる。
(2)請求項3、4に記載の発明によれば、電流制御器の積分器から異常な値が出力されることが防止され、正常な電圧指令信号を生成することができる。
(3)請求項6に記載の発明によれば、定格の異なる複数の電流検出器の切り換え時にも、フライングキャパシタの電圧制御および横流制御を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施例1におけるFCを有する電力変換器の制御構成図。
図2】本発明の実施例1におけるHCTを切り換えるシーケンス図。
図3】本発明の実施例2におけるFCを有する電力変換器の制御構成図。
図4】本発明の実施例2における電流制御器の制御構成図。
図5】本発明の実施例3における電流制御器の制御構成図。
図6】本発明の実施例4におけるFCを有する電力変換器の制御構成図。
図7】本発明の実施例4におけるHCTを切り換えるシーケンス図。
図8】FCを有する電力変換器の一例を示す回路図。
図9】FC及び複数のHCTを有する電力変換器の構成図。
図10】先行技術におけるFCを有する電力変換器の制御構成図。
図11】電流制御器の制御構成図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明するが、本発明は下記の実施形態例に限定されるものではない。以下の実施例では、本発明を図8図11に示す、FC及び複数のHCTを有する電力変換器に適用した例として説明するが、これに限らず他の構成のFC及び複数のHCTを有する電力変換器に適用してもよい。
【実施例1】
【0041】
図1は実施例1におけるFCを有する電力変換器の制御構成図である。図1において、図10と同一部分は同一符号をもって示している。図1において図10と異なる点は、電力変換器の運転指令信号と、電流制御イネーブル信号と、複数の電磁接触器(図9のMC1、MC2)のON,OFF状態を検出したMC_ON/OFF状態検出信号との論理積をとるアンド回路50を設け、アンド回路50の論理積条件が成立したときに電流制御器11を動作させるものであり、その他の部分は図10と同一に構成されている。
【0042】
この構成にすることにより、電力変換器の運転を停止せずにHCTの切り換えが可能となる。MC_ON/OFF状態検出信号は表1と定義する。HCTの選択が完了した場合にONする信号である。
【0043】
【表1】
【0044】
FC電圧制御と横流制御は電力変換器自体の運転継続に必要な制御であるため、従来通り運転指令をイネーブル信号とする。
【0045】
次に、HCTを切り換える際のシーケンス図を図2に示す。図2において、電流制御イネーブル信号は、電流制御器11の動作許可期間ではONとなり、動作不許可期間ではOFFとなる信号である。
【0046】
まず、運転開始時刻t1において、運転指令信号がONとなり、FC電圧制御ON/OFF状態信号および横流制御ON/OFF状態信号がONとなる。
【0047】
次にHCT1選択時刻t2では、図示省略の電磁接触器制御部がMC1をON動作させることによりHCT1が選択され、MC1_ON/OFF状態信号がONとなり、これにともなってMC_ON/OFF状態検出信号がONとなる。
【0048】
次に電流制御開始時刻t3において電流制御イネーブル信号がONとなると(動作許可期間がスタートすると)、運転指令信号と電流制御イネーブル信号とMC_ON/OFF状態検出信号がすべてONとなってアンド回路50の論理積条件が成立し、電流制御器11が動作して電流制御ON/OFF状態信号がONとなる。
【0049】
次にHCT2選択時刻t4において、HCT1からHCT2に切り換えるために、電磁接触器制御部はまずMC1をOFF動作させるので、MC1_ON/OFF状態信号がOFFとなり、MC_ON/OFF状態検出信号もOFFとなる。これによってアンド回路50の論理積条件が不成立となって電流制御ON/OFF状態信号もOFFとなる。
【0050】
次に時刻t4aでは、電流制御イネーブル信号の動作許可期間が終了して電流制御イネーブル信号がOFFとなる(動作不許可期間がスタートする)。
【0051】
次に電流制御イネーブル信号の動作不許可期間中の設定した時刻t4bにおいて、電磁接触器制御部はMC2をON動作させることによりHCT1からHCT2への選択切り換えが行われ、MC2_ON/OFF状態信号がONとなり、MC_ON/OFF状態検出信号がONとなる。
【0052】
次に電流制御開始時刻t5において電流制御イネーブル信号がONになると(動作許可期間がスタートすると)、運転指令信号と電流制御イネーブル信号とMC_ON/OFF状態検出信号がすべてONとなってアンド回路50の論理積条件が成立し、電流制御ON/OFF状態信号がONとなる。
【0053】
次に運転停止時刻t6において運転指令信号がOFFされると、FC電圧制御ON/OFF状態信号および横流制御ON/OFF状態信号がOFFとなり、また、電流制御イネーブル信号、MC2_ON/OFF状態信号、MC_ON/OFF状態検出信号、電流制御ON/OFF状態信号がすべてOFFとなる。
【0054】
上記のように、電流制御イネーブル信号の動作許可期間が終了する時刻t4aよりも設定時間前の時刻t4においてMC1をOFFとし、動作許可期間が終了した後の動作不許可期間中の設定した時刻t4bにおいてMC2をONとしているので、運転指令信号のON期間中に、図11の電流制御器11で使用される電流検出値を電流検出値1から電流検出値2に切り換えることができる。
【0055】
このようにシーケンスを組むことにより、電流制御器11の電流制御が正常に実施でき、過大な電圧指令を出力することはなくなる。このため、過大な電流を発生させることなくHCTを切り換えられる。この一連のシーケンスでは、運転指令信号はOFFされないため、FC電圧制御器12のFC電圧制御及び横流制御器13の横流制御は実施される。よって、運転停止せずにHCTを切り替えることが可能となる。
【実施例2】
【0056】
図3は実施例2における電力変換器の制御構成を示し、図1と同一部分は同一符号をもって示している。図3において図1と異なる点は、図1のアンド回路50を除去し、電流制御器11を動作させる許可信号としては運転指令信号のみを用い、MC_ON/OFF状態検出信号を、電流制御器11の積分器の積分ゲイン切り換え信号として利用したことにあり、その他は図1と同一に構成されている。
【0057】
尚、本実施例2における電磁接触器制御部は、HCT1からHCT2に選択切り換えを行う際、図9のMC1をOFF制御してから設定時間後にMC2をON制御するものである。
【0058】
実施例2における電流制御器11の構成を図4に示す。図4において図11と同一部分は同一符号をもって示している。図4において図11と異なる点は、MC_ON/OFF状態検出信号がOFFしたときに、積分ゲインをゲイン乗算器26のKiからゲイン設定器31の零に切り換えるスイッチ61と、加算器27に加算する積分項をバッファ29の出力から積分項初期値に切り換えるスイッチ62とを設けたことにあり、その他の部分は図11と同一に構成されている。
【0059】
図4に示すように、MC_ON/OFF状態検出信号がOFFした時にスイッチ61をゲイン設定器31側にして積分ゲインを0とし、積分項にはスイッチ62を切り換えて初期値を入力する。この積分項初期値は、負荷の電圧を設定すれば良い。このようにすると電流制御器11の積分器が動作しない。
【0060】
MC1とMC2が同時にOFFした状態で電流制御器11の積分器が動作すると、電流検出の状態に応じて電流指令と電流検出の偏差を加算し続ける。このため、異常に大きな値が積分器として出力されるため、HCT切り換え時に異常な電圧指令が出力されてしまう。よって、積分ゲインを0とすると電流指令と電流検出の偏差を加算し続けることがなくなるため、異常な電圧指令とならない。HCT切り換え時にも過大な電流が発生することなく切り替えることができる。
【0061】
尚、本実施例2の、MC_ON/OFF状態検出信号がOFFであるときに、電流制御器11の積分器の積分ゲインを零に切り換える構成は、実施例1に適用してもよく、その場合も前記と同様の作用、効果が得られる。
【実施例3】
【0062】
本実施例3における電流制御器11の構成を図5に示す。図5において、図11と同一部分は同一符号をもって示している。図5において図11と異なる点は、積分リミッタ28に変えて、リミッタ値を変更することができる可変リミッタ38を設け、MC_ON/OFF状態検出信号がOFFしたときに可変リミッタ38のリミッタ値を零に切り換える構成とした点にあり、その他の部分は図11と同一に構成されている。
【0063】
図5において、MC_ON/OFF状態検出信号がOFFした時に、可変リミッタ38の積分器リミッタ値を0とする(リミッタ値切り換え回路)。このようにすると電流制御器11の積分器が動作しない。リミッタが0となるため積分器の出力が常に0となる。このため、異常な電圧指令とならない。HCT切り換え時にも過大な電流が発生することなく切り換えることができる。
【0064】
また、MC_ON/OFF状態検出信号がONした時に、積分器のリミッタ(可変リミッタ38)を通常の値に戻す。これにより、HCT切り換え後には、正常な状態で電流制御を実現できる。
【0065】
尚、本実施例3の、MC_ON/OFF状態検出信号がOFFであるときに、電流制御器11の積分器のリミッタ値を零にする構成は、実施例1、2に適用することができ、適用した場合も前記と同様の作用、効果が得られる。
【実施例4】
【0066】
図6は実施例4におけるFCを有する電力変換器の制御構成図を示し、図1と同一部分は同一符号をもって示している。図6において図1と異なる点は、図1のアンド回路50の代わりに、電力変換器の運転指令信号と電流制御イネーブル信号との論理積をとるアンド回路60を設け、アンド回路60の論理積条件が成立したときに電流制御器11を動作させることと、電流制御器11における検出電流との偏差をとるための電流指令を、複数の電流検出器を選択切り換えする期間中は零となる電流指令としたことにあり、その他の部分は図1と同一に構成されている。
【0067】
尚、本実施例4における電磁接触器制御部は、HCT1からHCT2に選択切り換えを行う際、電流指令における電流検出器選択切り換え期間の開始時刻に図9のMC1をOFF制御し、電流検出器選択切り換え期間中の設定した時刻にMC2をON制御するものである。
【0068】
次にHCTを切り換える際のシーケンス図を図7に示す。図7の電流指令信号は、電流制御器11が動作している期間(運転指令信号と電流制御イネーブル信号がともにONであり、図6のアンド回路60の論理積条件が成立している期間)であっても、HCTの選択切り換えが行われる期間は制御値を零とする信号である。
【0069】
電流制御イネーブル信号は、電流制御器11の動作許可期間ではONとなり、動作不許可期間ではOFFとなる信号である。
【0070】
まず、運転開始時刻t1において、運転指令信号がONとなり、FC電圧制御ON/OFF状態信号および横流制御ON/OFF状態信号がONとなる。
【0071】
次にHCT1選択時刻t2では、図示省略の電磁接触器制御部がMC1をON動作させることによりHCT1が選択され、MC1_ON/OFF状態信号がONとなり、これにともなってMC_ON/OFF状態検出信号がONとなる。
【0072】
次に電流制御開始時刻t3において電流制御イネーブル信号がONとなると(動作許可期間がスタートすると)、運転指令信号と電流制御イネーブル信号が両方ともONとなってアンド回路60の論理積条件が成立し、電流制御ON/OFF状態信号がONとなる。同時に電流指令信号が立上がり所定の制御値となる。
【0073】
次にHCT2選択時刻t4(電流指令信号が零となる電流検出器選択切り換え期間の開始時刻)において、HCT1からHCT2に切り換えるために、電磁接触器制御部はMC1をOFF動作させるので、MC1_ON/OFF状態信号がOFFとなり、MC_ON/OFF状態検出信号もOFFとなる。
【0074】
このようにMC_ON/OFF状態検出信号がOFFとなっても、この信号は図6のアンド回路60の論理積条件に入っていないため電流制御器11の動作は継続され、電流制御ON/OFF状態信号はONを継続する。
【0075】
次に、図7のHCT切り換え遷移期間(電流検出器選択切り換え期間)中の設定した時刻t4aにおいて、電磁接触器制御部はMC2をON動作させることによりHCT1からHCT2への選択切り換えが行われ、MC2_ON/OFF状態信号がONとなり、MC_ON/OFF状態検出信号がONとなる。
【0076】
次に電流制御開始時刻t5になると、電流指令信号の電流検出器選択切り換え期間が終了し、電流指令信号は所定の制御値となる。
【0077】
次に運転停止時刻t6において運転指令信号がOFFされると、FC電圧制御ON/OFF状態信号および横流制御ON/OFF状態信号がOFFとなり、また、電流制御イネーブル信号、MC2_ON/OFF状態信号、MC_ON/OFF状態検出信号、電流制御ON/OFF状態信号がすべてOFFとなる。
【0078】
上記のように、電流検出器選択切り換え期間(図7のHCT切り換え遷移期間)中は電流指令を0にしているので、電流検出と電流指令の偏差も小さいものとなる。このため、電流制御器11の出力に関しても小さい値となる。HCT切り換え遷移期間を短くするようにMC1、MC2の動作を実施できれば、電流制御器11の積分器の出力も異常な加算を行わなくなり積分器の出力も過大な値とならない。このため、HCT切り換え時にも過大な電流が発生することなく切り替えることができる。
【符号の説明】
【0079】
11…電流制御器
12…FC電圧制御器
13…横流制御器
14,15,27,30…加算器
21,22…乗算器
23,61,62…スイッチ
24…減算器
25,26…ゲイン乗算器
28…積分器リミッタ
29…バッファ
31…ゲイン設定器
38…可変リミッタ
50,60…アンド回路
100…FCを有する電力変換器
200…負荷
MC1…電磁接触器1
MC2…電磁接触器2
HCT1…電流検出器1
HCT2…電流検出器2
FC1~FC4…フライングキャパシタ
S1~S16…スイッチング素子
図1
図2
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図11