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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】非接触型給電路及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/05 20160101AFI20231017BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231017BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20231017BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20231017BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20231017BHJP
【FI】
H02J50/05
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
B60M7/00 X
B60L5/00 B
B60L53/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020086015
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021180597
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】岩本 藤行
(72)【発明者】
【氏名】笹谷 卓也
(72)【発明者】
【氏名】平野 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】大平 孝
(72)【発明者】
【氏名】坂井 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】水谷 豊
(72)【発明者】
【氏名】柴田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】望月 勇杜
(72)【発明者】
【氏名】崎原 孫周
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】城本 政一
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-065407(JP,A)
【文献】特開2015-220877(JP,A)
【文献】特開2017-143455(JP,A)
【文献】特開2018-207766(JP,A)
【文献】国際公開第2016/204250(WO,A1)
【文献】特開2017-163798(JP,A)
【文献】特開2014-227025(JP,A)
【文献】特開2019-068581(JP,A)
【文献】特開2015-033166(JP,A)
【文献】特開2019-068580(JP,A)
【文献】特開2019-097297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/05
H02J 7/00
B60M 7/00
B60L 5/00
B60L 53/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上空間(RS)を移動し、一対の電極部(3a,3b)を有する受電回路部(2)を備える移動体(1)に対して給電可能に構成された非接触型給電路であって、
互いに並んで延伸方向(ED)に沿って延設され、それぞれが個別に対応する前記電極部と電界結合可能に形成された一対の送電導体部(11a,11b)と、
前記路上空間とは前記一対の送電導体部を挟んだ反対側の底面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、前記一対の送電導体部とは異なる固定的な電位を有する底面導体部(62)と、
絶縁性材料により形成され、前記一対の送電導体部と前記底面導体部との間を充填する絶縁基材部(21)と、
前記絶縁基材部の側面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、前記固定的な電位を有する側面導体部(63)と、を備え
前記一対の送電導体部のうち少なくとも一方は、延伸方向の長さ(L)が送電波長の1/2以下であり、右手系伝送線路を構成する複数の導体線路部材(212a)を、互いに対向する2つの前記導体線路部材の端部間に間隔を開けるように配列した導体配列(CA)を有し、
前記端部間を接続する回路であって、左手系回路を構成する接続回路(216)をさらに備える非接触型給電路。
【請求項2】
前記側面導体部は、前記側面部のうち前記絶縁基材部を路幅方向(WD)に挟む両側部分に対応して一対設けられ、延伸方向に沿って延設された沿路導体壁部(64)を有する請求項1に記載の非接触型給電路。
【請求項3】
前記側面導体部は、前記側面部のうち前記絶縁基材部を延伸方向に挟む両側部分に対応して一対設けられ、路幅方向に沿って延設された横断導体壁部(65)を有する請求項1又は2に記載の非接触型給電路。
【請求項4】
前記横断導体壁部は、前記一対の送電導体部の端部とは間隔を空けるように、配置されている請求項3に記載の非接触型給電路。
【請求項5】
前記一対の送電導体部の間に配置され、路面から凹み、前記路上空間と連通して空気で満たされた凹溝部(41)をさらに備え、
前記接続回路は、前記凹溝部の内部に収容されている請求項1から4のいずれか1項に記載の非接触型給電路。
【請求項6】
前記一対の送電導体部の間に配置され、路面から凹み、前記路上空間と連通して空気で満たされた凹溝部をさらに備える請求項1からのいずれか1項に記載の非接触型給電路。
【請求項7】
インピーダンス整合を図る整合回路(51)を、さらに備え、
前記整合回路は、前記凹溝部の内部に収容されている請求項又はに記載の非接触型給電路。
【請求項8】
前記側面導体部を、前記絶縁基材部とは反対側から覆うことで保護する保護部材(71)をさらに備える請求項1からのいずれか1項に記載の非接触型給電路。
【請求項9】
前記保護部材は、疎水性を有する請求項に記載の非接触型給電路。
【請求項10】
前記保護部材は、ポリエチレンシートである請求項に記載の非接触型給電路。
【請求項11】
前記側面導体部は、アルミニウムにより形成されている請求項1から1のいずれか1項に記載の非接触型給電路。
【請求項12】
路上空間(RS)を移動し、一対の電極部(3a,3b)を有する受電回路部(2)を備える移動体(1)に対して給電可能に構成された非接触型給電路の施工方法であって、
道路に埋設空間を用意する工程と、
互いに並んで延伸方向(ED)に沿って延設され、それぞれが個別に対応する前記電極部と電界結合可能に形成された一対の送電導体部であって、前記一対の送電導体部のうち少なくとも一方は、延伸方向の長さ(L)が送電波長の1/2以下であり、右手系伝送線路を構成する複数の導体線路部材(212a)を、互いに対向する2つの前記導体線路部材の端部間に間隔を開けるように配列した導体配列(CA)を有し、かつ、左手系回路を構成する接続回路(216)によって前記端部間が接続されている一対の送電導体部(11a,11b)と、前記路上空間とは前記一対の送電導体部を挟んだ反対側の底面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、前記一対の送電導体部とは異なる固定的な電位を有する底面導体部(62)と、絶縁性材料により形成され、前記一対の送電導体部と前記底面導体部との間を充填する絶縁基材部(21)と、前記絶縁基材部の側面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、前記固定的な電位を有する側面導体部(63)と、を前記埋設空間に埋設する工程と、を含む非接触型給電路の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書による開示は、路上空間を移動する移動体への給電に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、路上空間を移動し、一対の電極部を有する受電回路部を備える移動体に対して給電可能に構成された非接触型給電路が開示されている。この給電路において一対の送電導体部と底面導体部との間に配置された絶縁基材部は、側面部全体を開放した構成をなしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-63684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、送電導体部の周囲に発生する電界が絶縁基材部の側方外部及び路上空間の広い範囲へ分散される。こうした電界による電気力線が側方外部に配置された誘電正接の大きな材料、又は路上空間に位置する一対の電極部以外の誘電正接の大きな材料を通過すると、電力の損失が発生し、給電効率が低下してしまうことが懸念されている。
【0005】
この明細書の開示による目的のひとつは、高い給電効率を発揮可能な非接触型給電路及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された態様のひとつは、路上空間(RS)を移動し、一対の電極部(3a,3b)を有する受電回路部(2)を備える移動体(1)に対して給電可能に構成された非接触型給電路であって、
互いに並んで延伸方向(ED)に沿って延設され、それぞれが個別に対応する電極部と電界結合可能に形成された一対の送電導体部(11a,11b)と、
路上空間とは一対の送電導体部を挟んだ反対側の底面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、一対の送電導体部とは異なる固定的な電位を有する底面導体部(62)と、
絶縁性材料により形成され、一対の送電導体部と底面導体部との間を充填する絶縁基材部(21)と、
絶縁基材部の側面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、固定的な電位を有する側面導体部(63)と、を備え
一対の送電導体部のうち少なくとも一方は、延伸方向の長さ(L)が送電波長の1/2以下であり、右手系伝送線路を構成する複数の導体線路部材(212a)を、互いに対向する2つの導体線路部材の端部間に間隔を開けるように配列した導体配列(CA)を有し、
端部間を接続する回路であって、左手系回路を構成する接続回路(216)をさらに備える。
【0007】
また、開示された態様の他のひとつは、路上空間(RS)を移動し、一対の電極部(3a,3b)を有する受電回路部(2)を備える移動体(1)に対して給電可能に構成された非接触型給電路の施工方法であって、
道路に埋設空間を用意する工程と、
互いに並んで延伸方向(ED)に沿って延設され、それぞれが個別に対応する電極部と電界結合可能に形成された一対の送電導体部であって、一対の送電導体部のうち少なくとも一方は、延伸方向の長さ(L)が送電波長の1/2以下であり、右手系伝送線路を構成する複数の導体線路部材(212a)を、互いに対向する2つの導体線路部材の端部間に間隔を開けるように配列した導体配列(CA)を有し、かつ、左手系回路を構成する接続回路(216)によって端部間が接続されている一対の送電導体部(11a,11b)と、路上空間とは一対の送電導体部を挟んだ反対側の底面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、一対の送電導体部とは異なる固定的な電位を有する底面導体部(62)と、絶縁性材料により形成され、一対の送電導体部と底面導体部との間を充填する絶縁基材部(21)と、絶縁基材部の側面部のうち少なくとも一部を覆うように配置され、固定的な電位を有する側面導体部(63)と、を埋設空間に埋設する工程と、を含む。
【0008】
これらの態様によると、側面導体部が絶縁基材部における側面部のうち少なくとも一部を覆う。こうすることで、送電導体部の周囲に発生する電界は側面導体部へと導かれる。したがって、電界が絶縁基材部の側方外部及び路上空間の広い範囲へ分散することは抑制される。故に、一対の送電導体部が移動体の一対の電極部と電界結合することによる移動体への給電において、絶縁基材部の側方外部に配置された誘電正接の大きな材料、路上空間等に位置する一対の電極部以外の誘電正接の大きな材料による影響を受け難くなる。電力の損失発生が抑制されることにより、非接触型給電路における給電効率を高めることができる。
【0009】
なお、括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】非接触型給電路と車両との関係を説明する概略構成図である。
図2】路幅方向及び路面垂直方向に沿った断面における非接触型給電路の断面図である。
図3図2のIII-III断面図である。
図4】非接触型給電路の端部の近傍を、路面表層部を仮想的に除去した状態で、路上空間側からみた上面図である。
図5】第2実施形態の送電導体部及び接続回路を、路面表層部を仮想的に除去した状態で示す上面図である。
図6】接続回路の一例を示す図である。
図7】接続回路の他の一例を示す図である。
図8】接続回路の他の一例を示す図である。
図9】変形例1のうちの一例における図4に対応する図である。
図10】変形例1のうちの他の一例における図4に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合せることができる。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、第1実施形態に開示の非接触型給電路10は、道路の一部に設定された給電区間に敷設されている。非接触型給電路10は、路上空間RSを移動する移動体に対して給電可能に形成されている。
【0013】
ここでいう道路には、例えば高速道路又は市街地等に設けられた一般道路等の一般車両が走行する道路、工場内、工事現場内等における作業用車両又は搬送用車両の走行に特化した道路が挙げられる。道路は、地上に設けられていてもよく、高架橋上に設けられていてもよく、トンネル等の地下に設けられていてもよい。
【0014】
移動体は、例えば電気自動車等の、電動モータを駆動させて走行する四輪の車両1である。車両1は、非接触型給電路10からの電力を受電するための受電回路部2を備える。受電回路部2は、一対の電極部3a,3b、整流回路5、負荷4、整合回路6等を含む構成である。一対の電極部3a,3bのうち片側の電極部3aは、右側の車輪のうち前輪又は後輪の少なくとも一方に設けられる。一対の電極部3a,3bのうちもう片側の電極部3bは、左側の車輪のうち前輪又は後輪に設けられる。各電極部3a,3bは、例えばタイヤを保持する金属ホイールの形態、タイヤの外周に沿って設けられた金属ベルトの形態で設けられる。
【0015】
整流回路5は、一対の電極部3a,3b間に電気的に接続され、負荷4は、当該整流回路5に接続される。負荷4は、バッテリ及び電動モータのうち少なくとも一方である。整合回路6は、一対の電極部3a,3b間に電気的に接続され、電極部3a,3bとインピーダンス整合を図るための回路である。整合回路6は、負荷4を主体とした受電回路部2のインピーダンスを、所定値に調整する。
【0016】
本実施形態の非接触型給電路10は、路面に対して埋設された埋設構造体をなしている。非接触型給電路10は、給電区間の一端部から他端部に亘って一体的に敷設されてもよい。非接触型給電路10は、給電区間を複数区間に分割した各分割区間の一端部から他端部に亘って敷設されることで、複数の非接触型給電路10により給電区間が構成されていてもよい。
【0017】
非接触型給電路10は、路面に沿って配置されていれば、直線区間のみに配置されていてもよく、曲線区間のみに配置されていてもよく、直線区間と曲線区間を両方含んで配置されていてもよい。また非接触型給電路10は、坂道区間を含んで配置されていてもよい。さらに非接触型給電路10は、他の道路との合流、分岐又は交差点を含んで配置されていてもよい。
【0018】
非接触型給電路10は、図2にも示すように、一対の送電導体部11a,11b、絶縁基材部21、路面表層部31、凹溝部41、整合回路51、底面導体部62、側面導体部63及び保護部材71を含む構成である。送電導体部11a,11bは、移動体の左側車輪に形成された電極部3a及び右側車輪に形成された電極部3bに個別に対応するように、一対設けられている。一対の送電導体部11a,11bは、互いに凹溝部41を路幅方向WDに挟むように、車両1の輪距に対応した間隔を空けて、並んで配置されている。一対の送電導体部11a,11bは、路幅方向WDに垂直な延伸方向EDに沿って、車輪の軌跡を描くように延設されている(図3参照)。
【0019】
各送電導体部11a,11bは、例えば板状、シート状、又はメッシュ状の導体線路部材12a,12bを有する。導体線路部材12a,12bは、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料により形成されている。特に本実施形態では、1つの送電導体部11a又は11bに対して導体線路部材12a又は12bが1つ設けられている。導体線路部材12a,12bは、非接触型給電路10が敷設された区間の両端部10aの近傍まで達するように、平らに延伸した細長い形状を呈している。こうした各送電導体部11a,11bは、それぞれ個別に対応した電極部3a,3bと電界結合可能に形成されている。
【0020】
特に本実施形態では、後述する側面導体部63のうち両端部10aに配置される横断導体壁部65と各導体線路部材12a,12bとの間の結合度を低下させるために、各導体線路部材12a,12bは、上述の区間の両端部10aに対して間隔を空けている(図4参照)。
【0021】
なお、導体線路部材12a,12bがメッシュ状に形成される場合には、メッシュによる格子構造の周期は、送電波長の1/2以下、より好ましくは送電波長の1/4以下とすることが好ましい。
【0022】
一対の送電導体部11a,11b間には、高周波電源14が電気的に接続される。高周波電源14は、非接触型給電路10の構造内部に設置されて非接触型給電路10の一部構成であってもよい。また高周波電源14は、構造外部(例えば道路脇)に設置されて非接触型給電路10の構成に含まれておらず、非接触型給電路10の使用時に一対の送電導体部11a,11bに電気的に接続される構成となっていてもよい。高周波電源14は、車両1への非接触給電を実施するための電力を出力する。高周波電源14による送電周波数には、例えば1MHz~10GHz程度の周波数が採用され得る。
【0023】
絶縁基材部21は、一対の送電導体部11a,11bと底面導体部62との間の空間を充填するように配置されている。本実施形態の絶縁基材部21は、第1基材層22及び第2基材層23を積層した構成である。
【0024】
第1基材層22は、底面導体部62より上方において、底面導体部62の全領域に載置されるように配置されている。第1基材層22は、送電周波数に対する誘電正接(一般的にtanδとも称される)が小さな絶縁性材料により形成されている。第1基材層22に用いる材料には、例えばセラミックス、プラスチック、木材、発泡スチロール、ゴム、粘土等が採用され得る。
【0025】
第2基材層23は、第1基材層22より上方において、第1基材層22の全領域から凹溝部41が形成される領域を除いた領域に裁置されるように配置されている。第2基材層23は、絶縁基材部21よりも上方に配置される一対の送電導体部11a,11b及び路面表層部31を保持している。第2基材層23は、送電周波数に対する誘電正接が小さな絶縁性材料により形成されている。具体的に、第2基材層23には、セラミックス砕石、アスファルト材、コンクリート材、プラスチック、木材、石材等が採用され得る。
【0026】
路面表層部31は、絶縁基材部21及び一対の送電導体部11a,11bを保護すべく、これらを上方から覆うように、非接触型給電路10において上方の路上空間RSに露出する外装部の一部を構成している。路面表層部31は、第1基材層22及び第2基材層23よりも薄い層状に形成されている。路面表層部31は、送電周波数に対する誘電正接が小さな材料により形成されている。例えば路面表層部31は、アスファルト材又はセメント系材に、比誘電率及び誘電正接が小さな材料を混合した混合材料により形成されている。
【0027】
凹溝部41は、一対の送電導体部11a,11b間において、路面表層部31の高さから第1基材層22の上端の高さまで凹むように設けられている。凹溝部41は、一対の送電導体部11a,11bと共に、両端部10a間を延伸方向EDに沿って延設されることにより、長溝状を呈している。凹溝部41は、路幅方向WD及び路面垂直方向に沿った断面において、矩形状をなしている。凹溝部41は、路上空間RSと連通して空気で満たされることにより、一対の送電導体部11a,11b同士の絶縁性を高めている。また、凹溝部41は、一対の送電導体部11a,11b間の電界が集中し易い領域を、誘電正接が略0である空気で満たすことにより、給電効率を高めている。
【0028】
整合回路51は、一対の送電導体部11a,11bに電気的に接続され、非接触型給電路10とインピーダンス整合を図るための回路である。整合回路51は、非接触型給電路10のインピーダンスを、所定値に調整する。ここで整合回路51は、凹溝部41の内部に収容されている。
【0029】
本実施形態において底面導体部62及び側面導体部63は、一体的に形成された外導体部材61の態様にて設けられている。外導体部材61は、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料により形成されるが、比透磁率の小さなアルミニウム等の材料が採用されることがより好ましい。外導体部材61は、例えば板状、シート状、又はメッシュ状に形成されている。外導体部材61がメッシュ状に形成される場合には、メッシュによる格子構造の周期は、送電波長の1/2以下、より好ましくは送電波長の1/4以下とすることが好ましい。
【0030】
外導体部材61は、底面導体部62と、当該底面導体部62に対して折り曲げ又は接合等により一体的に形成された側面導体部63とを有している。外導体部材61は、底面導体部62と側面導体部63との間に共通の基準電位であって、一対の送電導体部11a,11bの送電時電位とは異なる固定的な電位を有する。固定的な電位とは、例えばグランド電位である。
【0031】
底面導体部62は、路上空間RSとは路面表層部31、一対の送電導体部11a,11b及び絶縁基材部21を挟んだ反対側であって、非接触型給電路10の構造における底面部に配置されている。底面導体部62は、底面部の少なくとも一部を覆うように配置されている。特に本実施形態の底面導体部62は、絶縁基材部21が延設された全領域を覆うように配置されている。底面導体部62は、各送電導体部11a,11bとの間隔が非接触型給電路10の敷設された区間の全域に亘って実質的に等しくなるように、各送電導体部11a,11bと略平行に延設されている。
【0032】
側面導体部63は、絶縁基材部21の側面部21aのうち少なくとも一部を覆うように配置されている。特に本実施形態の側面導体部63は、絶縁基材部21の側面部21aの全領域を覆うように配置されている。側面導体部63は、沿路導体壁部64と横断導体壁部65とを組み合わせた構成である。沿路導体壁部64及び横断導体壁部65は、底面導体部62の外縁部から路上空間RS側の路面表層部31へ向かって、例えば底面導体部62に対して直角に立ち上がる壁状に形成されている。なお、底面導体部62に対する角度は、直角以外であってもよい。
【0033】
沿路導体壁部64は、絶縁基材部21の側面部21aのうち、絶縁基材部21を路幅方向WDに挟む両側部分に対応して、一対設けられている。沿路導体壁部64は、延伸方向EDに沿って、各送電導体部11a,11bとの間隔が非接触型給電路10の敷設された区間の全域に亘って実質的に等しくなるように、各送電導体部11a,11bと平行に延設されている。沿路導体壁部64の下端は、底面導体部62と電気的に接続されている。沿路導体壁部64の上端は、路面表層部31の下層部と接しており、路上空間RSへの露出を避けた配置となっている。
【0034】
沿路導体壁部64の路幅方向WDの位置は、各送電導体部11a,11bとの間の結合度を低下させるために、各送電導体部11a,11bに対して所定の間隔を空けるように設定されている。一方で、各送電導体部11a,11bに対して所定の間隔を空け過ぎると、絶縁基材部21の体積が増大し、絶縁基材部21の材料コストが高くなるので好ましくない。このため、非接触型給電路10が仮に一般道路に敷設される場合には、沿路導体壁部64の路幅方向WDの位置は、白線等の車線区画線よりも内側(送電導体部11a,11b側)に設定されることが好ましい。
【0035】
横断導体壁部65は、図4に示すように、絶縁基材部21の側面部21aのうち、絶縁基材部21を延伸方向EDに挟む両側部分、換言すると非接触型給電路10が敷設された区間の両端部10aに対応して、一対設けられている。横断導体壁部65は、各送電導体部11a,11bの端部とは間隔を空けて、道路を横断するように路幅方向WDに沿って延設されている。横断導体壁部65の下端は、底面導体部62と電気的に接続されている。横断導体壁部65の上端は、路面表層部31の下層部と接しており、例えば路上空間RSへの露出を避けた配置となっている。横断導体壁部65の左右端は、沿路導体壁部64と接続されていてもよく、接続されていなくてもよい。
【0036】
保護部材71は、絶縁基材部21とは外導体部材61を挟んだ反対側から、外導体部材61の表面を密着状態にて覆うことで、外導体部材61を含む非接触型給電路10を保護している。特に本実施形態の保護部材71は、底面導体部62、沿路導体壁部64及び横断導体壁部65を全て保護している。
【0037】
保護部材71は、誘電正接が小さな絶縁性材料により、シート状に形成されている。保護部材71は、外導体部材61の腐食を抑制するために、疎水性を有していることが好ましい。例えば本実施形態では、保護部材71にポリエチレン樹脂からなるポリエチレンシートが採用されている。
【0038】
以上の非接触型給電路10の施工方法の一例を以下に示す。第1工程として、道路に非接触型給電路10を埋設するための埋設空間を用意する。次の第2工程として、底面導体部62を下方に向けた姿勢で、組立済の非接触型給電路10を埋設空間に埋設する。なお、第2工程では、組立前の非接触型給電路10、すなわち外導体部材61、絶縁基材部21、一対の送電導体部11a,11b及び路面表層部31を、順に埋設空間に設置するようにしてもよい。
【0039】
(作用効果)
以上説明した第1実施形態の作用効果を以下に改めて説明する。
【0040】
第1実施形態によると、側面導体部63が絶縁基材部21における側面部21aのうち少なくとも一部を覆う。こうすることで、送電導体部11a,11bの周囲に発生する電界は側面導体部63へと導かれる。したがって、電界が絶縁基材部21の側方外部及び路上空間RSの広い範囲へ分散することは抑制される。故に、一対の送電導体部11a,11bが車両1の一対の電極部3a,3bと電界結合することによる車両1への給電において、絶縁基材部21の側方外部に配置された誘電正接の大きな材料、路上空間RS等に位置する一対の電極部3a,3b以外の誘電正接の大きな材料による影響を受け難くなる。電力の損失発生が抑制されることにより、非接触型給電路10における給電効率を高めることができる。
【0041】
また、第1実施形態によると、沿路導体壁部64が側面部21aのうち絶縁基材部21を路幅方向WDに挟む両側部分に対応して一対設けられ、延伸方向EDに沿って延設されている。したがって、延伸方向EDに沿って路上空間RSを移動する車両1に対して、高い給電効率で、安定的に電力を供給することができる。
また、第1実施形態によると、横断導体壁部65が側面部21aのうち絶縁基材部21を延伸方向EDに挟む両側部分に対応して一対設けられ、路幅方向WDに沿って延設されている。したがって、非接触型給電路10の始端及び末端においても、高い給電効率を実現することができる。
【0042】
また、第1実施形態によると、横断導体壁部65は、一対の送電導体部11a,11bの端部とは間隔を空けるように、配置されている。こうした間隔により、横断導体壁部65と一対の送電導体部11a,11bとの間の結合度を低下させることができる。故に、一対の送電導体部11a,11bに供給された高周波が横断導体壁部65へ逃げることを抑制し、給電効率を高めることができる。
【0043】
また、第1実施形態によると、凹溝部41が路面から凹むように一対の送電導体部11a,11bの間に配置されている。電界が集中する一対の送電導体部11a,11bの間の領域が路上空間RSと連通して、誘電正接が略0である空気に満たされるので、電力の損失発生が抑制される。
【0044】
また、第1実施形態によると、インピーダンス整合を図る整合回路51が凹溝部41の内部に収容されている。整合回路51を設置するためのスペースを別に設ける必要性を低下させつつ、インピーダンス整合によって送電導体部11a,11bと電極部3a,3bとの間の反射波の発生を抑制して給電効率を高めることができる。
【0045】
また、第1実施形態によると、保護部材71が側面導体部63を絶縁基材部21とは反対側から覆うことで保護している。側面導体部63の劣化が抑制されるので、高い給電効率を長きに亘って実現することができる。さらに保護部材71に疎水性が付与された場合では、側面導体部63が外部からの水によって腐食することが抑制される。
【0046】
(第2実施形態)
図5~8に示すように、第2実施形態は第1実施形態の変形例である。第2実施形態について、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。
【0047】
第2実施形態の送電導体部11aは、図5に示すように、複数の導体線路部材212aを延伸方向EDに沿って配列した導体配列CAを有している。同様に送電導体部11bも、複数の導体線路部材212bを延伸方向EDに沿って配列した導体配列CAを有している。すなわち各送電導体部11a,11bは、複数の導体線路部材212a,212bに線路を分割された構成である。各導体線路部材212a,212bは、例えば鉄、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料により、板状、シート状、又はメッシュ状に形成されている。各導体線路部材212a,212bの延伸方向EDの長さLは、送電波長の1/2以下、より好ましくは1/4以下となるように設定されている。
【0048】
同じ導体配列CAに属して互いに対向する導体線路部材212a,212bの端部間(以下、対向端部間という)には、所定の端部間隔213が空けられている。ここで所定の端部間隔213は、路上空間RSを移動する車両1への給電が継続可能な間隔が好ましい。所定の端部間隔213は、例えば車両1の電極部3a,3bとしての金属ホイールの直径未満又は半径未満、また例えば車両1の電極部3a,3bとしての金属ベルトの直径未満又は半径未満に設定される。
【0049】
ここで一対の導体配列CA同士において、導体線路部材212a,212bの配列周期は、互いに合わせられていてもよく、ずらされていてもよい。配列周期が合わせられている場合、端部間隔213を設ける位置は、互いに合わせられていてもよく、ずらされていてもよい。特に本実施形態では、一対の導体配列同士の配列周期及び端部間隔213を設ける位置は、合わせられている。
【0050】
ここで各導体線路部材212a,212bは、右手系伝送線路を構成している。すなわち各導体線路部材212a,212bは、延伸方向EDに沿って直列的に接続されたインダクタンスをもつ要素と、底面導体部62及び側面導体部63との間に接続されたキャパシタンスをもつ要素とを有する分布定数回路として機能する。
【0051】
そして、対向端部間は、接続回路216によって電気的に接続されている。接続回路216は、例えば整合回路51と同様に、凹溝部41の内部に収容されている。接続回路216は、対向端部間のみを接続するものであってもよい。また接続回路216は、対向端部間に加え、一対の送電導体部11a,11b間を接続していてもよい。
【0052】
一例では、接続回路216(216A)は、図6に示すように、対向端部間を、キャパシタンスをもつ要素(例えば少なくとも1つのコンデンサ)によって直列的に接続した回路(いわゆるC回路)である。
【0053】
他の一例では、接続回路216(216B)は、図7に示すように、対向端部間を直列的に接続したキャパシタンスをもつ要素(例えば少なくとも1つのコンデンサ)と、底面導体部62及び側面導体部63との間に接続されたインダクタンスをもつ要素(例えば少なくとも1つのコイル)とを組み合わせた回路(いわゆるLC回路)である。この構成では、送電導体部11a,11bと底面導体部62及び側面導体部63との間の結合度を低下させることが可能となる。
【0054】
また他の一例では、接続回路216(216C)は、図8に示すように、対向端部間を直列的に接続したキャパシタンスをもつ要素(例えば少なくとも1つのコンデンサ)と、送電導体部11a,11b間に接続されたインダクタンスをもつ要素(例えば少なくとも1つのコイル)とを組み合わせた回路(いわゆるLC回路)である。この構成では、一対の送電導体部11a,11b間の結合度を低下させることが可能となる。
【0055】
こうして上述の3つの例のように、接続回路216は、左手系回路を構成し、各送電導体部11a,11bを伝送される高周波の位相を進相させる。進相作用により、送電導体部11aの端部間を往来する高周波により定在波が発生すること、及び送電導体部11bの端部間を往来する高周波により定在波が発生することは、抑制される。したがって、車両1が実質的に振幅0となる定在波節上を通過する際に給電不可能となる事態を回避することができるので、給電効率を高めることができる。
【0056】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0057】
具体的に変形例1としては、側面導体部63は、絶縁基材部21の側面部21aのうち一部のみを覆うように配置されていてもよい。
【0058】
例えば図9に示すように、側面導体部63は、沿路導体壁部64及び横断導体壁部65のうち、沿路導体壁部64のみを有していてもよい。すなわち、横断導体壁部65が存在せず、側面部21aのうち絶縁基材部21を延伸方向EDに挟む両側部分が外部に露出していてもよい。この場合に、一対の送電導体部11a,11bは、非接触型給電路10が敷設された区間の両端部10aまで達していてもよい。
【0059】
また例えば図10に示すように、側面導体部63は、沿路導体壁部64及び横断導体壁部65のうち、横断導体壁部65のみを有していてもよい。すなわち、側面部21aのうち絶縁基材部21を路幅方向WDに挟む両側部分が外部に露出していてもよい。
【0060】
さらに、沿路導体壁部64は、側面部21aのうち絶縁基材部21を延伸方向EDに挟む両側部分のうち一部を覆う構成であってもよい。例えば、両側部分のうち、誘電正接が大きな材料又は電場を乱す物体が隣接して配置された片側のみに、沿路導体壁部64を設けてもよい。また例えば、沿路導体壁部64の上端が路面表層部31まで達せずに、第1基材層22と第2基材層23の境界部等、側面部21aの高さ方向中間地点に位置していてもよい。また例えば、沿路導体壁部64は、非接触型給電路10が敷設された区間の両端部10a間を途切れなく延設されなくてもよく、複数ピースに分割されて、所々に配置されていてもよい。横断導体壁部65についても、沿路導体壁部64と同様の変形が可能である。
【0061】
変形例2としては、底面導体部62と側面導体部63とは、一体的な外導体部材61を形成していなくてもよく、互いに分離されていてもよい。
【0062】
変形例3としては、底面導体部62は、非接触型給電路10の底面部のうち一部を覆っていれば、全部を覆っていなくてもよい。例えば、底面導体部62に、配線又は固定のための開口が開けられていてもよい。
【0063】
変形例4としては、凹溝部41は設けられなくてもよい。一対の送電導体部11a,11bの間には、絶縁性が高くかつ誘電正接が小さな部材が配置されていてもよく、あるいは第2基材層23によって充填されていてもよい。
【0064】
変形例5としては、車両1に整合回路6が設けられず、非接触型給電路10の整合回路51が受電回路部2のインピーダンスを測定し、測定されたインピーダンスに非接触型給電路10のインピーダンスが整合するように調整する機能を有していてもよい。
【0065】
変形例6としては、保護部材71が設けられていなくてもよい。
【0066】
変形例7としては、一対の送電導体部11a,11bのうち、一方を第1実施形態の1つの導体線路部材12a,12bによる構成とし、他方を導体配列CAによる構成としてもよい。
【0067】
変形例8としては、非接触型給電路10は、一対の送電導体部11a,11bと一対の電極部3a,3bとが非接触の状態で給電可能に構成されていればよい。非接触型給電路10と移動体とが接触していてもよい。
【0068】
変形例9としては、移動体は、非接触型給電路10の路面表層部31に車輪を接触させて走行するものに限られない。例えば移動体は、ロープウェイに吊られた形態で、非接触型給電路10の路上空間RSを移動するロープウェイリフトであってもよい。また例えば移動体は、磁力により浮上した形態で、非接触型給電路10の路上空間RSを移動する磁気浮上式車両であってもよい。一対の電極部3a,3bの具体的形態も、移動体の構造に応じて適宜変更されてよい。
【符号の説明】
【0069】
1:車両(移動体)、2:受電回路部、3a,3b:電極部、10:非接触型給電路、11a,11b:送電導体部、21:絶縁基材部、62:底面導体部、63:側面導体部、ED:延伸方向、RS:路上空間
図1
図2
図3
図4
図5
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図10