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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04858 20160101AFI20231017BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20231017BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20231017BHJP
   H01M 8/0438 20160101ALI20231017BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20231017BHJP
   H01M 8/04701 20160101ALI20231017BHJP
   B60L 58/40 20190101ALI20231017BHJP
   B60L 58/32 20190101ALI20231017BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231017BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/00 Z
H01M8/00 A
H01M8/0432
H01M8/0438
H01M8/04537
H01M8/04701
B60L58/40
B60L58/32
H01M8/10 101
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020089686
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184363
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】松尾 潤一
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-44749(JP,A)
【文献】特開2012-244721(JP,A)
【文献】特開2007-234452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池と、
二次電池と、
前記燃料電池の温度を取得する温度取得部と、
前記二次電池の充電状態値を取得する充電状態値取得部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
外気圧を取得する外気圧取得部と、
前記二次電池の電力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記燃料電池の温度が所定の温度超過、且つ、前記二次電池の充電状態値が所定の閾値以上、且つ、前記外気温が所定の気温以上、且つ、前記外気圧が所定の気圧以下の場合、前記車両の通常走行時に必要な前記二次電池の電力よりも当該電力を大きくし、
前記制御部は、前記燃料電池の温度が所定の温度になるように前記二次電池の電力を決定し、
前記燃料電池の前記所定の温度は、当該燃料電池の発電効率が最も高くなる温度であることを特徴とする、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、複数の単セル(以下、セルと記載する場合がある)を積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)に、燃料ガスとしての水素(H)と酸化剤ガスとしての酸素(O)との電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。
この燃料電池の単セルは、通常、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、必要に応じて当該膜電極接合体の両面を挟持する2枚のセパレータにより構成される。
膜電極接合体は、プロトン(H)伝導性を有する固体高分子型電解質膜(以下、単に「電解質膜」とも呼ぶ)の両面に、それぞれ、触媒層及びガス拡散層が順に形成された構造を有している。そのため、膜電極接合体は、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)と称される場合がある。
セパレータは、通常、ガス拡散層に接する面に反応ガスの流路としての溝が形成された構造を有している。なお、このセパレータは発電した電気の集電体としても機能する。
燃料電池の燃料極(アノード)では、ガス流路及びガス拡散層から供給される水素が触媒層の触媒作用によりプロトン化し、電解質膜を通過して酸化剤極(カソード)へと移動する。同時に生成した電子は、外部回路を通って仕事をし、カソードへと移動する。カソードに供給される酸素は、カソード上でプロトンおよび電子と反応し、水を生成する。
生成した水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水はガス拡散層を透過して、系外へと排出される。
【0003】
燃料電池車両(以下車両と記載する場合がある)に車載されて用いられる燃料電池システムに関して種々の研究がなされている。
例えば特許文献1では、燃料電池車両が登坂路を走行することが予測されるときに二次電池の充電を行い、燃料電池車両が登坂路を走行する際に駆動モータに供給される電力のうち少なくとも一部を二次電池から供給させることで、燃料電池が高温になることを予防する燃料電池車両が開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、燃料電池の高温状態を検出した後に、燃料電池の電圧を一時的に低下させて、燃料電池における生成水の発生量を増加させ、二次電池の充電状態と、前記燃料電池の運転状態に基づき、一時的電圧低下処理の処理内容を変更する燃料電池車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-137855号公報
【文献】特開2013-101844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
燃料電池が高温になってしまった場合、燃料電池の過乾燥により燃料電池の抵抗が増加して発電効率が低下する。そして、燃料電池の抵抗増加に伴い燃料電池の発熱が増加して、燃料電池の耐久性が低下するという問題がある。
【0007】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池の高温時の耐久性が高い燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示においては、車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池と、
二次電池と、
前記燃料電池の温度を取得する温度取得部と、
前記二次電池の充電状態値を取得する充電状態値取得部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
外気圧を取得する外気圧取得部と、
前記二次電池の電力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記燃料電池の温度が所定の温度超過、且つ、前記二次電池の充電状態値が所定の閾値以上、且つ、前記外気温が所定の気温以上、且つ、前記外気圧が所定の気圧以下の場合、前記車両の通常走行時に必要な前記二次電池の電力よりも当該電力を大きくすることを特徴とする、燃料電池システムを提供する。
【0009】
本開示においては、前記制御部は、前記燃料電池の温度が所定の温度になるように前記二次電池の電力を決定してもよい。
【0010】
本開示においては、前記燃料電池の前記所定の温度は、当該燃料電池の発電効率が最も高くなる温度であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の燃料電池システムによれば、燃料電池の高温時の耐久性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の燃料電池システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
図2】車両から要求される電力と二次電池の電力とFC温度(水温:冷却水温度)との関係の一例を示す図である。
図3】車両から要求される電力とFCに要求する電力とFC温度(水温:冷却水温度)との関係の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示においては、車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池と、
二次電池と、
前記燃料電池の温度を取得する温度取得部と、
前記二次電池の充電状態値を取得する充電状態値取得部と、
外気温を取得する外気温取得部と、
外気圧を取得する外気圧取得部と、
前記二次電池の電力を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記燃料電池の温度が所定の温度超過、且つ、前記二次電池の充電状態値が所定の閾値以上、且つ、前記外気温が所定の気温以上、且つ、前記外気圧が所定の気圧以下の場合、前記車両の通常走行時に必要な前記二次電池の電力よりも当該電力を大きくすることを特徴とする、燃料電池システムを提供する。
【0014】
燃料電池が冷却性能不足等により高温となる場合、燃料電池の過乾燥により燃料電池の抵抗が増加して発電効率が低下する。そして、燃料電池の抵抗増加に伴い燃料電池の発熱が増加して、燃料電池の耐久性が低下する。
FCの温度上昇は、車両からの要求発電量が多く、FCの発電の損失が大きい領域を連続で使用する場合(車両の登坂走行時等)等に起こりうる。
また、FCの温度上昇は、外気温が高く、FCの冷却水温度との温度差が小さく冷却系のラジエータでの冷却水の放熱能力が低下する場合、及び、外気圧が低くインタークーラーでの空気等の酸化剤ガスと冷却水との熱交換効率が低下する場合等に生じる。
本開示ではFCが高温となる場合に、一時的に二次電池からの電力を増加させることでFCの発電負荷を低下させ、FCの耐久性を向上させる。
【0015】
本開示の燃料電池システムは、少なくとも燃料電池と、二次電池と、前記燃料電池の温度を取得する温度取得部と、前記二次電池の充電状態値(SOC)を取得する充電状態値取得部と、外気温を取得する外気温取得部と、外気圧を取得する外気圧取得部と、前記二次電池の電力を制御する制御部と、を有する。
【0016】
本開示の燃料電池システムは、通常、駆動源を電動機(モータ)とする燃料電池車両に搭載されて用いられる。
また、本開示の燃料電池システムは、車両の始動時に、燃料電池の発電が不可能であっても二次電池の電力で走行可能な車両に搭載されて用いられてもよい。
電動機は、特に限定されず、従来公知の駆動モータであってもよい。
【0017】
燃料電池は、燃料電池の単セルを複数積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~200個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレートを備えていてもよい。
燃料電池の単セルは、少なくとも酸化剤極、電解質膜、及び、燃料極を含む膜電極接合体を備え、必要に応じて当該膜電極接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。
【0018】
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、反応ガス及び冷媒を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0019】
酸化剤極は、酸化剤極触媒層及びガス拡散層を含む。
燃料極は、燃料極触媒層及びガス拡散層を含む。
酸化剤極触媒層及び燃料極触媒層は、例えば、電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、及び、電子伝導性を有するカーボン粒子等を備えていてもよい。
触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
電解質としては、フッ素系樹脂等であってもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、ナフィオン溶液等を用いてもよい。
上記触媒金属はカーボン粒子上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持したカーボン粒子(触媒粒子)と電解質とが混在していてもよい。
触媒金属を担持するためのカーボン粒子(担持用カーボン粒子)は、例えば、一般に市販されているカーボン粒子(カーボン粉末)を加熱処理することにより自身の撥水性が高められた撥水化カーボン粒子等を用いてもよい。
【0020】
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0021】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0022】
燃料電池システムは、燃料電池の電極に反応ガスを供給する反応ガス供給部を有していてもよい。
反応ガス供給部は、燃料電池スタックに反応ガスを供給する。
反応ガスは、燃料ガス及び酸化剤ガスを含む概念である。
反応ガス供給部としては、燃料ガス供給部及び酸化剤ガス供給部等が挙げられ、燃料電池システムは、これらの供給部のいずれか一方を有していてもよく、これらの供給部の両方を有していてもよい。
【0023】
燃料電池システムは、燃料電池の燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部を有していてもよい。
燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、例えば、水素ガスであってもよい。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、圧縮水素タンク等が挙げられる。
【0024】
燃料電池システムは、燃料ガス供給流路を備えていてもよい。
燃料ガス供給流路は、燃料電池と燃料ガス供給部を接続し、燃料ガスの燃料ガス供給部からの燃料電池の燃料極への供給を可能にする。
【0025】
燃料電池システムは、循環流路を備えていてもよい。
循環流路は、燃料電池の燃料極から排出された燃料オフガスを回収し、循環ガスとして燃料電池の燃料極に戻すことを可能にする。
燃料オフガスは、燃料極において未反応のまま通過した燃料ガス、酸化剤極で生成した生成水が燃料極に到達した水分、及び、掃気時に燃料極に供給されてもよい酸化剤ガス等を含む。
【0026】
燃料電池システムは、必要に応じて、循環流路上に循環ガスの流量を調整する水素ポンプ等の循環用ポンプ、及び、エジェクタ等を備えていてもよい。
循環用ポンプは、制御部と電気的に接続され、制御部によって循環用ポンプの駆動のオン・オフ及び回転数等を制御されることにより、循環ガスの流量を調整してもよい。
エジェクタは、例えば、燃料ガス供給流路と循環流路の合流部に配置され、燃料ガスと循環ガスとを含む混合ガスを燃料電池の燃料極に供給する。エジェクタとしては、従来公知のエジェクタを採用することができる。
【0027】
循環流路には、燃料オフガス中の水分を低減するための気液分離器が設けられていてもよい。そして、気液分離器によって循環流路から分岐される排水流路及び、当該排水流路上に排水弁が備えられていてもよい。
気液分離器において、燃料オフガス中から分離された水分は、循環流路から分岐される排水流路に設けられた排水弁の開放によって排出してもよい。
排水弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって排水弁の開閉を制御されることにより、液水の排水量を調整してもよい。
【0028】
燃料電池システムは、燃料オフガス排出部を備えていてもよい。
燃料オフガス排出部は、燃料オフガスを外部(系外)に排出することを可能にする。なお、外部とは、燃料電池システムの外部であってもよく、車両の外部であってもよい。
燃料オフガス排出部は、燃料オフガス排出弁を備えていてもよく、必要に応じ、燃料オフガス排出流路をさらに備えていてもよい。
燃料オフガス排出弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって燃料オフガス排出弁の開閉を制御されることにより、燃料オフガスの排出流量を調整してもよい。
燃料オフガス排出流路は、例えば、循環流路から分岐されていてもよく、燃料オフガス中の水素濃度が低くなりすぎた場合に当該燃料オフガスを外部に排出可能にする。
【0029】
燃料電池システムは、酸化剤ガス供給部、酸化剤ガス供給流路、及び、酸化剤ガス排出流路を備えていてもよい。
酸化剤ガス供給部は、少なくとも燃料電池の酸化剤極に酸化剤ガスを供給する。
酸化剤ガス供給部としては、例えば、エアコンプレッサー等を用いることができる。エアコンプレッサーは、制御部からの制御信号に従って駆動され、酸化剤ガスを燃料電池のカソード側(酸化剤極、カソード入口マニホールド等)に導入する。
酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部と燃料電池を接続し、酸化剤ガス供給部から燃料電池の酸化剤極への酸化剤ガスの供給を可能にする。
酸化剤ガスは、酸素含有ガスであり、空気、乾燥空気、及び、純酸素等であってもよい。
酸化剤ガス排出流路は、燃料電池の酸化剤極からの酸化剤ガスの排出を可能にする。
酸化剤ガス排出流路には、酸化剤ガス圧力調整弁が設けられていてもよい。
酸化剤ガス圧力調整弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって酸化剤ガス圧力調整弁が開弁されることにより、反応済みのカソードオフガスを酸化剤ガス排出流路から排出する。また、酸化剤ガス圧力調整弁の開度を調整することにより、酸化剤極に供給される酸化剤ガス圧力(カソード圧力)を調整することができる。
【0030】
酸化剤ガス供給流路には、インタークーラーが配置されていてもよい。インタークーラーは、冷媒循環流路と接続され、冷媒との間で熱交換を行い、酸化剤ガス供給部から排出された酸化剤ガスを冷却する。また、燃料電池の暖機(発電前処理)要求があるときには、酸化剤ガス供給部によって圧縮されて温度が高くなった酸化剤ガスの熱により、冷媒を昇温させる。
【0031】
燃料電池システムは、インタークーラーの下流側で酸化剤ガス供給流路から分岐し、燃料電池をバイパスして酸化剤ガス排出流路に接続されたバイパス流路を備えていてもよい。このバイパス流路には、バイパス流路の開通状態を制御するバイパス弁が配置されている。バイパス弁は、制御部と電気的に接続され、例えば、駆動モータの回生発電時に二次電池の充電容量に余裕がない状況で、酸化剤ガス供給部を駆動して二次電池の電力を消費する場合に、制御部によって開弁される。これにより、酸化剤ガスは燃料電池に送られることなく、酸化剤ガス排出流路へ排出される。
【0032】
また、燃料ガス供給流路と酸化剤ガス供給流路は合流流路を介して接続されていてもよい。合流流路には掃気弁が設けられていてもよい。
掃気弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって掃気弁が開弁されることにより、酸化剤ガス供給部の酸化剤ガスを掃気ガスとして燃料ガス供給流路内に流入させるようになっていてもよい。
掃気に用いられる掃気ガスは、反応ガスであってもよく、反応ガスは、燃料ガスであってもよく、酸化剤ガスであってもよく、これらの両方のガスを含む混合反応ガスであってもよい。
【0033】
燃料電池システムは、燃料電池の冷却系として、冷媒供給部、及び、冷媒循環流路を備えていてもよい。
冷媒循環流路は、燃料電池に設けられる冷媒供給孔及び冷媒排出孔に連通し、冷媒供給部から供給される冷媒を燃料電池内外で循環させ、燃料電池の冷却を可能にする。
冷媒供給部は、例えば、冷却水ポンプ等が挙げられる。
冷媒循環流路には、冷却水の熱を放熱するラジエータが設けられていてもよい。
冷却水(冷媒)としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。
【0034】
燃料電池システムは、二次電池を備えていてもよい。
二次電池(バッテリ)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池は、モータ等の電動機及びエアコンプレッサー等の酸化剤ガス供給部等に電力を供給する。二次電池は、車両の外部の電源、例えば、家庭用電源から充電可能になっていてもよい。二次電池は、燃料電池の出力により充電されてもよい。
【0035】
燃料電池システムは、バッテリを電源とする補機を備えていてもよい。
補機としては、例えば車両の照明機器、及び、空調機器等が挙げられる。
【0036】
本開示の燃料電池システムには、二次電池の充電状態値(SOC)を検出する充電状態値取得部が設けられていてもよい。
充電状態値取得部は、二次電池の充電状態値(SOC)を検出する。
充電状態値取得部は、制御部に接続されていてもよい。制御部は、充電状態値取得部の出力により二次電池の充電状態値を検知できるようになっていてもよい。
充電状態値取得部は、従来公知の充電状態センサ等であってもよい。
制御部は、二次電池の充電状態値の管理、及び、二次電池の充放電を制御してもよい。
充電状態値(SOC:State of Charge)は、二次電池の満充電容量に対する充電容量の割合を示すものであり、満充電容量がSOC100%である。
【0037】
温度取得部は、燃料電池の温度を取得する。
温度取得部は、制御部に接続されていてもよい。制御部は、温度取得部の出力により燃料電池の温度を検知できるようになっていてもよい。
温度取得部は、従来公知の温度センサ等であってもよい。
燃料電池の温度は、燃料電池を冷却するために用いられる冷却水の温度であってもよい。
【0038】
外気温取得部は、外気温を取得する。
外気温取得部は、制御部に接続されていてもよい。制御部は、外気温取得部の出力により外気温を検知できるようになっていてもよい。
外気温取得部は、従来公知の外気温センサ等であってもよい。
【0039】
外気圧取得部は、外気圧を取得する。
外気圧取得部は、制御部に接続されていてもよい。制御部は、外気圧取得部の出力により外気圧を検知できるようになっていてもよい。
外気圧取得部は、従来公知の外気圧センサ等であってもよい。
【0040】
制御部は、少なくとも二次電池の電力を制御する。
制御部は、気液分離器、排水弁、燃料オフガス排出弁、酸化剤ガス圧力調整弁、掃気弁、燃料ガス供給部、酸化剤ガス供給部、バイパス弁、二次電池、循環用ポンプ、充電状態値取得部、温度取得部、外気温取得部、外気圧取得部等と入出力インターフェースを介して接続されていてもよい。また、制御部は、車両に搭載されていてもよいイグニッションスイッチと電気的に接続されていてもよい。
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、ECU(エンジンコントロールユニット)等の制御装置であってもよい。
【0041】
図1は、本開示の燃料電池システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、本開示は、必ずしも本典型例のみに限定されるものではない。
制御部は、燃料電池の温度が所定の温度超過、且つ、二次電池の充電状態値が所定の閾値以上、且つ、外気温が所定の気温以上、且つ、外気圧が所定の気圧以下の場合、車両の通常走行時に必要な二次電池の電力よりも当該電力を大きくする(FC高温時モード)。
一方、制御部は、燃料電池の温度が所定の温度以下、又は、二次電池の充電状態値が所定の閾値未満、又は、外気温が所定の気温未満、又は、外気圧が所定の気圧超過の場合は、二次電池の電力を車両の通常走行時に必要な電力に設定して(通常モード)、制御を終了する。
【0042】
FC高温時モードにおいては、制御部は、燃料電池の温度が所定の温度になるように二次電池の電力を車両の通常走行時に必要な二次電池の電力よりも大きくなるように設定してもよい。これにより、燃料電池の温度を一定温度に維持できるように二次電池の電力を決定することで、効率的に燃料電池から電力を得ることができる。
また、燃料電池の所定の温度は、当該燃料電池の発電効率が最も高くなる温度であってもよい。これにより、最も効率的に燃料電池から電力を得ることができる。
二次電池の充電状態値の所定の閾値は、特に限定されず、車両の走行不良とならないように適宜設定してもよい。
なお、燃料電池の温度が所定の温度超過であっても二次電池の充電状態値が所定の閾値未満である場合は、二次電池の出力可能な電力が十分ではないため、FC高温時モードは行わなくてもよい。
FC高温時モードにおいては、二次電池の電力を車両の通常走行時に必要な二次電池の電力よりも大きくなるように設定すれば、二次電池の電力は特に限定されない。
しかし、二次電池の現在の充電状態値が、車両から要求されるエネルギーよりも小さい場合は、二次電池の充電状態値が、枯渇して車両の走行不良となることがないように、二次電池が出力してもよいエネルギーに相当する充電状態値の上限値と下限値を予め設定していてもよい。
そして、車両から要求される電力と二次電池の出力可能な電力との差からFCに要求する電力を算出し、FCに発電させてもよい。
【0043】
図2は、車両から要求される電力と二次電池の電力とFC温度(水温:冷却水温度)との関係の一例を示す図である。図2に示すように、FC高温時の二次電池に要求する電力は、例えば、FCが高温となる最悪登坂パターン(例えば外気温と外気圧の条件)を定義し、最悪登坂パターン中のFCの温度(冷却水温度等)がFCの発電効率が最大となる温度(例えば80℃)を保持できるように設定してもよい。
【0044】
本開示において、外気温が所定の気温以上、且つ、外気圧が所定の気圧以下の場合とは、FCの冷却性能が低下する条件を示している。
外気温が所定の気温以上であると、FCの冷却水温度との温度差が小さくなり、冷却系のラジエータでの冷却水の放熱能力が低下し、FC温度が上昇する。
外気温の所定の気温は、特に限定されないが、例えば予め測定された外気温と外気圧とFCの冷却水温度との関係を示すデータ群から設定してもよい。
外気圧が所定の気圧以下であると、エアコンプレッサー等の酸化剤ガス供給部から供給される高圧の空気等の酸化剤ガスとの圧力差が大きくなり、酸化剤ガスの密度が下がるため、インタークーラーを介したラジエータでの酸化剤ガスと冷却水との熱交換効率が低下し、FC温度が上昇する。
外気圧の所定の気圧は、特に限定されないが、例えば予め測定された外気温と外気圧とFCの冷却水温度との関係を示すデータ群から設定してもよい。
【0045】
図3は、車両から要求される電力とFCに要求する電力とFC温度(水温:冷却水温度)との関係の一例を示す図である。
FCに要求する電力は、車両から要求される電力と二次電池の出力可能な電力との差から算出することができる。
図1
図2
図3