(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04228 20160101AFI20231017BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231017BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20231017BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20231017BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20231017BHJP
H01M 8/04828 20160101ALI20231017BHJP
H01M 8/04291 20160101ALI20231017BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20231017BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20231017BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231017BHJP
【FI】
H01M8/04228
H01M8/00 Z
H01M8/00 A
H01M8/0432
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04828
H01M8/04291
H01M8/04303
B60L58/40
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2020089687
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】松尾 潤一
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-239743(JP,A)
【文献】特開2020-17420(JP,A)
【文献】特開2017-147047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00- 8/2495
B60L 50/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池と、
二次電池と、
前記燃料電池システム内の温度を取得するシステム温度取得部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、
前記燃料電池の発電停止後の前記燃料電池の起動のための処理時において、前記システム温度が所定の第1の温度以下である場合に、前記二次電池の充電状態値が所定の第1の閾値になるまで前記二次電池の充電を行い、且つ、前記燃料電池に対して第1のパターンの掃気を行い、
一方、前記制御部は、
前記燃料電池の発電停止後の前記燃料電池の起動のための処理時において、前記システム温度が所定の第1の温度を超える場合に、前記二次電池の充電状態値が所定の前記第1の閾値よりも値が大きい所定の第2の閾値になるまで前記二次電池の充電を行い、且つ、前記燃料電池に対して前記第1のパターンの掃気よりも掃気時間が短い第2のパターンの掃気を行うことを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
さらに、前記二次電池の温度を取得する二次電池温度取得部を有し、
前記制御部は、
前記燃料電池の発電停止後の前記燃料電池の起動のための処理時において、前記システム温度が前記第1の温度を超える場合に、前記二次電池温度が所定の第2の温度以下であり、且つ、前記二次電池の充電状態値が前記第2の閾値未満である際に、前記燃料電池に対して前記第1のパターンの掃気を行うことを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池(FC)は、複数の単セル(以下、セルと記載する場合がある)を積層した燃料電池スタック(以下、単にスタックと記載する場合がある)に、燃料ガスとしての水素(H2)と酸化剤ガスとしての酸素(O2)との電気化学反応によって電気エネルギーを取り出す発電装置である。なお、以下では、燃料ガスや酸化剤ガスを、特に区別することなく単に「反応ガス」あるいは「ガス」と呼ぶ場合もある。
この燃料電池の単セルは、通常、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)と、必要に応じて当該膜電極接合体の両面を挟持する2枚のセパレータにより構成される。
膜電極接合体は、プロトン(H+)伝導性を有する固体高分子型電解質膜(以下、単に「電解質膜」とも呼ぶ)の両面に、それぞれ、触媒層及びガス拡散層が順に形成された構造を有している。そのため、膜電極接合体は、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)と称される場合がある。
セパレータは、通常、ガス拡散層に接する面に反応ガスの流路としての溝が形成された構造を有している。なお、このセパレータは発電した電気の集電体としても機能する。
燃料電池の燃料極(アノード)では、ガス流路及びガス拡散層から供給される水素が触媒層の触媒作用によりプロトン化し、電解質膜を通過して酸化剤極(カソード)へと移動する。同時に生成した電子は、外部回路を通って仕事をし、カソードへと移動する。カソードに供給される酸素は、カソード上でプロトンおよび電子と反応し、水を生成する。
生成した水は、電解質膜に適度な湿度を与え、余剰な水はガス拡散層を透過して、系外へと排出される。
【0003】
燃料電池車両(以下車両と記載する場合がある)に車載されて用いられる燃料電池システムに関して種々の研究がなされている。
例えば特許文献1では、燃料電池の停止時に、次回の始動に備えて、燃料電池の電力で二次電池の充電を行う燃料電池システムが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、燃料電池の停止時に燃料電池の掃気の必要性を判断し、必要な場合は当該掃気を行う燃料電池システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、外気温に応じて燃料電池のパージ時間を変更する、燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-179472号公報
【文献】特開2006-079864号公報
【文献】特開2017-010904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
外気温が常温より低い温度(低温)の場合、車両から要求される電力が大きくなりやすい。そのため、燃料電池の掃気処理時に二次電池の充電を行う場合、低温時は常温時よりも充電時間が長くなるという問題がある。
また、外気温が常温の時に燃料電池が停止され、停止中に燃料電池のパーキングパージ(駐車時掃気)を行うと、パーキングパージには、低温時の燃料電池の掃気処理よりも多くの二次電池の電力を消費するため、二次電池の電力が不足してパーキングパージを行えない場合がある。
【0008】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、二次電池の充電時間を短縮できる燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示においては、車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池と、
二次電池と、
前記燃料電池システム内の温度を取得するシステム温度取得部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記システム温度が所定の第1の温度以下である場合に、前記二次電池の充電状態値が所定の第1の閾値になるまで前記二次電池の充電を行い、且つ、前記燃料電池に対して第1のパターンの掃気を行い、
一方、前記制御部は、前記システム温度が所定の第1の温度を超える場合に、前記二次電池の充電状態値が所定の前記第1の閾値よりも値が大きい所定の第2の閾値になるまで前記二次電池の充電を行い、且つ、前記燃料電池に対して前記第1のパターンの掃気よりも掃気時間が短い第2のパターンの掃気を行うことを特徴とする燃料電池システムを提供する。
【0010】
本開示においては、さらに、前記二次電池の温度を取得する二次電池温度取得部を有し、
前記制御部は、前記システム温度が前記第1の温度を超える場合に、前記二次電池温度が所定の第2の温度以下であり、且つ、前記二次電池の充電状態値が前記第2の閾値未満である際に、前記燃料電池に対して前記第1のパターンの掃気を行ってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の燃料電池システムによれば、二次電池の充電時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の燃料電池システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図2】本開示の燃料電池システムの制御方法の別の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示においては、車両に搭載された燃料電池システムであって、
燃料電池と、
二次電池と、
前記燃料電池システム内の温度を取得するシステム温度取得部と、
制御部と、を有し、
前記制御部は、前記システム温度が所定の第1の温度以下である場合に、前記二次電池の充電状態値が所定の第1の閾値になるまで前記二次電池の充電を行い、且つ、前記燃料電池に対して第1のパターンの掃気を行い、
一方、前記制御部は、前記システム温度が所定の第1の温度を超える場合に、前記二次電池の充電状態値が所定の前記第1の閾値よりも値が大きい所定の第2の閾値になるまで前記二次電池の充電を行い、且つ、前記燃料電池に対して前記第1のパターンの掃気よりも掃気時間が短い第2のパターンの掃気を行うことを特徴とする燃料電池システムを提供する。
【0014】
FCシステムでは、燃料電池の発電停止時の燃料電池の掃気処理、燃料電池のパーキングパージ(PPG)、燃料電池の氷点下を含む始動処理等に二次電池からの放電電力を用いる。
二次電池の充電状態値(SOC)が低下した場合、二次電池を起動できないおそれがある。そのため、二次電池のSOCが低下した場合、イグニッションスイッチがオフ(IG-OFF)されても所定SOCまで二次電池を充電して停止する処理を実施する。
ただし、リチウム(Li)イオン二次電池等の二次電池を用いると、連続充電に対する二次電池の保護のため、二次電池の充電量を制限する場合があるため、IG-OFF後の二次電池の充電時間が長時間化するという問題がある。
【0015】
燃料電池の発電停止後の燃料電池の起動のための処理には、例えば下記(1)~(2)の2つのパターンが考えられる。
(1)低温・氷点下モード(冬モード)
必要に応じて二次電池の充電をしながら又は二次電池の充電後に数分程度の燃料電池の掃気(長時間掃気)を行い、その後の燃料電池のパーキングパージを行わず、燃料電池の始動処理(暖機等)を行う。なお、低温とは、常温よりも低い温度を意味する。
(2)常温モード(夏モード)
必要に応じて二次電池の充電をしながら又は二次電池の充電後に十数秒~数十秒(例えば、10秒~20秒)程度の燃料電池の掃気(短時間掃気)を行い、その後、車両の駐車中に低温での数分程度の燃料電池のパーキングパージを行い、その後、燃料電池の始動処理(暖機等)を行う。
【0016】
常温モードは、低温・氷点下モードに対し掃気時間が短いというメリットがあるが、パーキングパージは燃料電池を発電させずに二次電池の電力のみで実施するため、燃料電池を発電しながら実施してもよい長時間掃気に比べて二次電池のエネルギーをより多く必要とする。そのため、常温モードの場合、低温・氷点下モードと比較してIG-OFF時の二次電池の充電処理もSOCがより大きくなるように実施する必要がある。そして、パーキングパージを実施可能なSOCまで二次電池を充電しようとすると充電時間が長時間化する。また、Liイオン二次電池等の二次電池の温度が低温である場合は、Liイオン析出に対する保護等を目的とした充電制限を要するため、さらに二次電池の充電時間が長時間化する。
二次電池の温度の違いによる充電時間の違いの例として、例えば、所定の二次電池サンプルのSOCを20%から常温モードの充電目標値としてSOCを50%まで充電する場合、当該二次電池サンプルの温度が-5℃の場合は充電時間が15分であり、当該二次電池サンプルの温度が10℃の場合は充電時間が5分であることが本研究者らによって確認されている。したがって、二次電池の温度が低い程、充電時間は長時間化する傾向がある。
【0017】
本開示によれば、燃料電池の発電中から燃料電池の発電を停止し、燃料電池の始動までにかかる二次電池の必要エネルギーを判断し、二次電池の充電目標SOCを可変させることで二次電池の充電時間を短縮する。
また、二次電池の充電が長時間となる場合は燃料電池の掃気手法を二次電池の放電エネルギーが少なくなる手法に切り替えることで、燃料電池の発電停止時の二次電池の充電時間を短縮させる。
また、本開示によれば、外気温等を考慮したシステム温度に応じて二次電池の充電量を変えることで、短時間での二次電池の充電が可能になる。また、二次電池の電力が不足してパーキングパージが実施できなくなることを防止できる。
また、本開示によれば、氷点下対策が不要な場合であっても、二次電池の充電時間が長時間になる可能性が高い場合は長時間の燃料電池の掃気を実施することで、二次電池の電力によるパーキングパージに備えた充電の必要がなくなる。
【0018】
本開示の燃料電池システムは、少なくとも燃料電池と、二次電池と、前記燃料電池システム内の温度を取得するシステム温度取得部と、制御部と、を有し、さらに前記二次電池の温度を取得する二次電池温度取得部等を有していてもよい。
【0019】
本開示の燃料電池システムは、通常、駆動源を電動機(モータ)とする燃料電池車両に搭載されて用いられる。
また、本開示の燃料電池システムは、車両の始動時に、燃料電池の発電が不可能であっても二次電池の電力で走行可能な車両に搭載されて用いられてもよい。
電動機は、特に限定されず、従来公知の駆動モータであってもよい。
【0020】
燃料電池は、燃料電池の単セルを複数積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよく、2~200個であってもよい。
燃料電池スタックは、単セルの積層方向の両端にエンドプレートを備えていてもよい。
燃料電池の単セルは、少なくとも酸化剤極、電解質膜、及び、燃料極を含む膜電極接合体を備え、必要に応じて当該膜電極接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。
【0021】
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷媒流路を有していてもよい。
セパレータは、反応ガス及び冷媒を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔を有していてもよい。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷媒供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷媒排出孔等が挙げられる。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷媒入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷媒出口マニホールド等が挙げられる。
【0022】
酸化剤極は、酸化剤極触媒層及びガス拡散層を含む。
燃料極は、燃料極触媒層及びガス拡散層を含む。
酸化剤極触媒層及び燃料極触媒層は、例えば、電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、及び、電子伝導性を有するカーボン粒子等を備えていてもよい。
触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
電解質としては、フッ素系樹脂等であってもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、ナフィオン溶液等を用いてもよい。
上記触媒金属はカーボン粒子上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持したカーボン粒子(触媒粒子)と電解質とが混在していてもよい。
触媒金属を担持するためのカーボン粒子(担持用カーボン粒子)は、例えば、一般に市販されているカーボン粒子(カーボン粉末)を加熱処理することにより自身の撥水性が高められた撥水化カーボン粒子等を用いてもよい。
【0023】
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0024】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0025】
燃料電池システムは、燃料電池の電極に反応ガスを供給する反応ガス供給部を有していてもよい。
反応ガス供給部は、燃料電池スタックに反応ガスを供給する。
反応ガスは、燃料ガス及び酸化剤ガスを含む概念である。
反応ガス供給部としては、燃料ガス供給部及び酸化剤ガス供給部等が挙げられ、燃料電池システムは、これらの供給部のいずれか一方を有していてもよく、これらの供給部の両方を有していてもよい。
【0026】
燃料電池システムは、燃料電池の燃料極に燃料ガスを供給する燃料ガス供給部を有していてもよい。
燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、例えば、水素ガスであってもよい。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、圧縮水素タンク等が挙げられる。
【0027】
燃料電池システムは、燃料ガス供給流路を備えていてもよい。
燃料ガス供給流路は、燃料電池と燃料ガス供給部を接続し、燃料ガスの燃料ガス供給部からの燃料電池の燃料極への供給を可能にする。
【0028】
燃料電池システムは、循環流路を備えていてもよい。
循環流路は、燃料電池の燃料極から排出された燃料オフガスを回収し、循環ガスとして燃料電池の燃料極に戻すことを可能にする。
燃料オフガスは、燃料極において未反応のまま通過した燃料ガス、酸化剤極で生成した生成水が燃料極に到達した水分、及び、掃気時に燃料極に供給されてもよい酸化剤ガス等を含む。
【0029】
燃料電池システムは、必要に応じて、循環流路上に循環ガスの流量を調整する水素ポンプ等の循環用ポンプ、及び、エジェクタ等を備えていてもよい。
循環用ポンプは、制御部と電気的に接続され、制御部によって循環用ポンプの駆動のオン・オフ及び回転数等を制御されることにより、循環ガスの流量を調整してもよい。
エジェクタは、例えば、燃料ガス供給流路と循環流路の合流部に配置され、燃料ガスと循環ガスとを含む混合ガスを燃料電池の燃料極に供給する。エジェクタとしては、従来公知のエジェクタを採用することができる。
【0030】
循環流路には、燃料オフガス中の水分を低減するための気液分離器が設けられていてもよい。そして、気液分離器によって循環流路から分岐される排水流路及び、当該排水流路上に排水弁が備えられていてもよい。
気液分離器において、燃料オフガス中から分離された水分は、循環流路から分岐される排水流路に設けられた排水弁の開放によって排出してもよい。
排水弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって排水弁の開閉を制御されることにより、液水の排水量を調整してもよい。
【0031】
燃料電池システムは、燃料オフガス排出部を備えていてもよい。
燃料オフガス排出部は、燃料オフガスを外部(系外)に排出することを可能にする。なお、外部とは、燃料電池システムの外部であってもよく、車両の外部であってもよい。
燃料オフガス排出部は、燃料オフガス排出弁を備えていてもよく、必要に応じ、燃料オフガス排出流路をさらに備えていてもよい。
燃料オフガス排出弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって燃料オフガス排出弁の開閉を制御されることにより、燃料オフガスの排出流量を調整してもよい。
燃料オフガス排出流路は、例えば、循環流路から分岐されていてもよく、燃料オフガス中の水素濃度が低くなりすぎた場合に当該燃料オフガスを外部に排出可能にする。
【0032】
燃料電池システムは、酸化剤ガス供給部、酸化剤ガス供給流路、及び、酸化剤ガス排出流路を備えていてもよい。
酸化剤ガス供給部は、少なくとも燃料電池の酸化剤極に酸化剤ガスを供給する。
酸化剤ガス供給部としては、例えば、エアコンプレッサー等を用いることができる。エアコンプレッサーは、制御部からの制御信号に従って駆動され、酸化剤ガスを燃料電池のカソード側(酸化剤極、カソード入口マニホールド等)に導入する。
酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部と燃料電池を接続し、酸化剤ガス供給部から燃料電池の酸化剤極への酸化剤ガスの供給を可能にする。
酸化剤ガスは、酸素含有ガスであり、空気、乾燥空気、及び、純酸素等であってもよい。
酸化剤ガス排出流路は、燃料電池の酸化剤極からの酸化剤ガスの排出を可能にする。
酸化剤ガス排出流路には、酸化剤ガス圧力調整弁が設けられていてもよい。
酸化剤ガス圧力調整弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって酸化剤ガス圧力調整弁が開弁されることにより、反応済みのカソードオフガスを酸化剤ガス排出流路から排出する。また、酸化剤ガス圧力調整弁の開度を調整することにより、酸化剤極に供給される酸化剤ガス圧力(カソード圧力)を調整することができる。
【0033】
酸化剤ガス供給流路には、インタークーラーが配置されていてもよい。インタークーラーは、冷媒循環流路と接続され、冷媒との間で熱交換を行い、酸化剤ガス供給部から排出された酸化剤ガスを冷却する。また、燃料電池の暖機(発電前処理)要求があるときには、酸化剤ガス供給部によって圧縮されて温度が高くなった酸化剤ガスの熱により、冷媒を昇温させる。
【0034】
燃料電池システムは、インタークーラーの下流側で酸化剤ガス供給流路から分岐し、燃料電池をバイパスして酸化剤ガス排出流路に接続されたバイパス流路を備えていてもよい。このバイパス流路には、バイパス流路の開通状態を制御するバイパス弁が配置されている。バイパス弁は、制御部と電気的に接続され、例えば、駆動モータの回生発電時に二次電池の充電容量に余裕がない状況で、酸化剤ガス供給部を駆動して二次電池の電力を消費する場合に、制御部によって開弁される。これにより、酸化剤ガスは燃料電池に送られることなく、酸化剤ガス排出流路へ排出される。
【0035】
また、燃料ガス供給流路と酸化剤ガス供給流路は合流流路を介して接続されていてもよい。合流流路には掃気弁が設けられていてもよい。
掃気弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって掃気弁が開弁されることにより、酸化剤ガス供給部の酸化剤ガスを掃気ガスとして燃料ガス供給流路内に流入させるようになっていてもよい。
掃気に用いられる掃気ガスは、反応ガスであってもよく、反応ガスは、燃料ガスであってもよく、酸化剤ガスであってもよく、これらの両方のガスを含む混合反応ガスであってもよい。
【0036】
燃料電池システムは、燃料電池の冷却系として、冷媒供給部、及び、冷媒循環流路を備えていてもよい。
冷媒循環流路は、燃料電池に設けられる冷媒供給孔及び冷媒排出孔に連通し、冷媒供給部から供給される冷媒を燃料電池内外で循環させ、燃料電池の冷却を可能にする。
冷媒供給部は、例えば、冷却水ポンプ等が挙げられる。
冷媒循環流路には、冷却水の熱を放熱するラジエータが設けられていてもよい。
冷却水(冷媒)としては、低温時の凍結を防止するために例えばエチレングリコールと水との混合溶液を用いることができる。
【0037】
システム温度取得部は、燃料電池システム内の温度を取得する。
燃料電池システム内の温度は、燃料電池を冷却するために用いられる冷却水の温度であってもよく、外気温であってもよく、これらの平均値であってもよく、これらに加えて、燃料電池システム内の部材の温度等を総合判断して燃料電池システム内の温度を決定してもよい。
システム温度取得部は、制御部に接続されていてもよい。制御部は、システム温度取得部の出力により燃料電池システム内の温度を検知できるようになっていてもよい。
システム温度取得部は、従来公知の温度センサ等であってもよい。
【0038】
燃料電池システムは、二次電池を備えていてもよい。
二次電池(バッテリ)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池は、モータ等の電動機及びエアコンプレッサー等の酸化剤ガス供給部等に電力を供給する。二次電池は、車両の外部の電源、例えば、家庭用電源から充電可能になっていてもよい。二次電池は、燃料電池の出力により充電されてもよい。
【0039】
燃料電池システムは、バッテリを電源とする補機を備えていてもよい。
補機としては、例えば車両の照明機器、及び、空調機器等が挙げられる。
【0040】
また、本開示の燃料電池システムには、二次電池の残容量を検出する充電状態センサが設けられていてもよい。充電状態センサは、二次電池の充電状態値(SOC)を検出する。充電状態センサは、制御部に接続されていてもよい。制御部は、充電状態センサの出力により二次電池の充電状態値を検知できるようになっていてもよい。
制御部は、二次電池の充電状態値の管理、及び、二次電池の充放電を制御してもよい。
充電状態値(SOC:State of Charge)は、二次電池の満充電容量に対する充電容量の割合を示すものであり、満充電容量がSOC100%である。
【0041】
燃料電池システムは、二次電池温度取得部を備えていてもよい。
二次電池温度取得部は、二次電池の温度を取得する。
二次電池温度取得部は、制御部に接続されていてもよい。制御部は、二次電池温度取得部の出力により二次電池の温度を検知できるようになっていてもよい。
二次電池温度取得部は、従来公知の温度センサ等であってもよい。
【0042】
制御部は、燃料電池システムを制御する。
制御部は、気液分離器、排水弁、燃料オフガス排出弁、酸化剤ガス圧力調整弁、掃気弁、燃料ガス供給部、酸化剤ガス供給部、バイパス弁、二次電池、循環用ポンプ、システム温度取得部、二次電池温度取得部等と入出力インターフェースを介して接続されていてもよい。また、制御部は、車両に搭載されていてもよいイグニッションスイッチと電気的に接続されていてもよい。
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、ECU(エンジンコントロールユニット)等の制御装置であってもよい。
【0043】
図1は、本開示の燃料電池システムの制御方法の一例を示すフローチャートである。なお、本開示は、必ずしも本典型例のみに限定されるものではない。
制御部は、IG-OFF後、システム温度が所定の第1の温度以下である場合に、二次電池の充電状態値(SOC)が所定の第1の閾値になるまで二次電池の充電を行い、且つ、燃料電池に対して第1のパターンの掃気(長時間掃気)を行う(低温・氷点下モード)。なお、IG-OFF後の時点で二次電池の充電状態値(SOC)が所定の第1の閾値以上である場合は、制御部は、二次電池の充電を行わなくてもよい。
一方、制御部は、IG-OFF後、システム温度が所定の第1の温度を超える場合に、二次電池の充電状態値が所定の第1の閾値よりも値が大きい所定の第2の閾値になるまで二次電池の充電を行い、且つ、燃料電池に対して第1のパターンの掃気よりも掃気時間が短い第2のパターンの掃気(短時間掃気)を行う(常温モード)。制御部は、第2のパターンの掃気後は、パーキングパージを行う。なお、IG-OFF後の時点で二次電池の充電状態値(SOC)が所定の第2の閾値以上である場合は、制御部は、二次電池の充電を行わなくてもよい。
【0044】
システム温度は、例えば、燃料電池の冷却水の温度であってもよく、外気温であってもよく、これらの平均温度であってもよい。
システム温度の所定の第1の温度は、例えば、常温であってもよく、常温よりも高い温度(高温)であってもよく、常温よりも低い温度(低温)であってもよく、氷点下であってもよく状況に合わせて適宜設定してもよい。
第1のパターンの掃気(長時間掃気)は、例えば、上記低温・氷点下モードにおける数分程度の燃料電池の掃気である。長時間掃気後は、通常、パーキングパージを行わなくてもよい。第1のパターンの掃気(長時間掃気)は、二次電池の充電状態値(SOC)が所定の第1の閾値以上となるまで、二次電池を充電した後に行ってもよいし、二次電池の充電をしながら行ってもよい。
第2のパターンの掃気(短時間掃気)は、第1のパターンの掃気よりも掃気時間が短ければよく、例えば、上記常温モードにおける十数秒~数十秒(例えば10秒~20秒)程度の燃料電池の掃気であってもよく、掃気を行わなくてもよい。短時間掃気後は、通常、パーキングパージを行ってもよい。第2のパターンの掃気(短時間掃気)は、二次電池の充電状態値(SOC)が所定の第2の閾値以上となるまで二次電池を充電した後に行ってもよいし、二次電池の充電をしながら行ってもよい。
二次電池の充電状態値の所定の第1の閾値は、第1のパターンの掃気がその後のパーキングパージを行わなくてもよいことを想定した掃気であるため、第2の閾値よりも小さく、且つ第1のパターンの掃気に必要なSOCを充足する下限値以上の値に設定すれば、特に限定されず、具体的には、20%以上35%以下であってもよく、25%以上30%以下であってもよい。
二次電池の充電状態値の所定の第2の閾値は、第1の閾値よりも値が大きければ特に限定されないが、第2のパターンの掃気がその後にパーキングパージを行うことを想定した掃気であるため、第1の閾値よりも大きく、且つ第2のパターンの掃気及びパーキングパージに必要なSOCを充足する下限値以上の値に設定してもよく、上限は特に限定されず、充電時間を考慮して設定すればよく、具体的には、35%超過50%以下であってもよく、40%以上45%以下であってもよい。
【0045】
本開示によれば、IG-OFF後の二次電池の充電開始時に燃料電池システムの温度に応じて、IG-OFF後の二次電池の充電目標SOCを切り替える。
システム温度が所定の第1の温度以下である場合に実施する低温・氷点下モードにおける第1のパターンの掃気ではパーキングパージを実施しないため、充電目標SOCを下げることができ、燃料電池の発電停止時の二次電池の充電時間を短縮することができる。
常温モードにおいて、システム温度が所定の第1の温度を超える場合には、低温時に必要な二次電池の連続充電の制限が不要となるため、充電目標SOCを第1の閾値よりも値が大きい所定の第2の閾値になるまで高くしても比較的短時間で二次電池の充電をすることができる。また、システム温度が高い状態で第2のパターンの掃気におけるパーキングパージが実施されるため、二次電池に要求される放電エネルギーが小さくなり、充電目標SOCを下げることができる。
【0046】
図2は、本開示の燃料電池システムの制御方法の別の一例を示すフローチャートである。
本開示においては、さらに、二次電池の温度を取得する二次電池温度取得部を有し、
制御部は、システム温度が第1の温度を超える場合に、二次電池温度が所定の第2の温度以下であり、且つ、二次電池の充電状態値(SOC)が第2の閾値未満である際に、燃料電池に対して第1のパターンの掃気を行う(低温・氷点下モード)。なお、IG-OFF後の時点で二次電池の充電状態値(SOC)が所定の第2の閾値未満且つ第1の閾値未満である場合は、制御部は、第1のパターンの掃気と併せて、二次電池の充電状態値(SOC)が所定の第1の閾値となるまで二次電池の充電を行ってもよい。
一方、制御部は、システム温度が第1の温度を超える場合に、二次電池温度が所定の第2の温度を超える場合には、二次電池の充電状態値(SOC)が第2の閾値未満であるか否かに関わらず、燃料電池に対して第2のパターンの掃気を行ってもよい(常温モード)。なお、この場合において、二次電池の充電状態値(SOC)が第2の閾値未満である場合は、制御部は二次電池の充電状態値(SOC)が第2の閾値以上となるまで二次電池の充電を行ってもよい。二次電池の充電状態値(SOC)が第2の閾値以上である場合は、制御部は二次電池の充電を行わなくてもよい。
【0047】
二次電池の所定の第2の温度は、例えば、二次電池の特性に応じて、連続充電での充電制限が必要な温度等に基づいて適宜設定してもよい。
【0048】
システム温度が第1の温度を超える場合であっても二次電池の温度が低く且つ二次電池のSOCも低い場合、二次電池の充電時間が長期化すると判断し、充電目標SOCが小さくてもよい第1のパターンの掃気を行うことで燃料電池の発電停止時の二次電池の充電時間を短縮する。