(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】パレット、パレットの積層システム及び積層方法
(51)【国際特許分類】
B65D 19/06 20060101AFI20231017BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B65D19/06
B66F9/24 L
(21)【出願番号】P 2020096753
(22)【出願日】2020-06-03
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】浅見 大輔
(72)【発明者】
【氏名】伊原 智章
(72)【発明者】
【氏名】重政 拓海
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0272705(US,A1)
【文献】特開平10-230936(JP,A)
【文献】特開2018-058679(JP,A)
【文献】実開平02-040034(JP,U)
【文献】実開昭47-030444(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 19/06
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部が夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入されることで、上下方向に積層可能なパレットであって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱の高さが他の支柱の高さに対して高
く、
前記他の支柱に対して高さが高い支柱の被挿入部の深さは、前記他の支柱の被挿入部の深さに対して深い、パレット。
【請求項2】
前記被挿入部の下部にガイド部を有し、
前記上段に配置されるパレットが前記下段に配置されるパレットに積層される場合、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部は、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部に対して上側に配置される本体部を前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部に導く、請求項1に記載のパレット。
【請求項3】
前記他の支柱に対して高さが高い支柱の被挿入部の深さと前記他の支柱の被挿入部の深さとの差分は、前記他の支柱に対して高さが高い支柱の高さと前記他の支柱の高さとの差分と等しい、請求項
1又は2に記載のパレット。
【請求項4】
前記支柱は、多角形状又は回転止めを有する形状であり、
前記被挿入部の少なくとも一部の内周形状は、前記支柱の外周形状に対して大きく、前記支柱の外周形状と対応する多角形状又は回転止めを有する形状である、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のパレット。
【請求項5】
下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部が夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入されることで、上下方向に積層可能なパレットであって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱に前記支柱の高さ方向に摺動可能なカップを備え、
前記パレットが上昇した場合、前記カップが前記被挿入部の下端部から突出する、パレット。
【請求項6】
前記被挿入部の下部にガイド部を有し、
前記上段に配置されるパレットが前記下段に配置されるパレットに積層される場合、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部は、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部に対して上側に配置される本体部を前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部に導き、
前記上段に配置されるパレットが上昇した場合、前記カップが前記ガイド部の下端部を覆う、請求項5に記載のパレット。
【請求項7】
請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のパレットと、
前記パレットを昇降させ、自走可能な移動体と、
前記移動体に設けられ、前記パレットにおける予め設定された支柱を検出する検出部と、
を備える、パレットの積層システム。
【請求項8】
下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部を夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入して、パレットを積層する方法であって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱の高さが他の支柱の高さに対して高
く、前記他の支柱に対して高さが高い支柱の被挿入部の深さが前記他の支柱の被挿入部の深さに対して深いパレットを複数用いて、下段に配置されるパレットの上側に上段に配置されるパレットを配置する工程と、
前記上段に配置されるパレットを下降させ、前記下段に配置されるパレットにおける他の支柱に対して高さが高い支柱の上端部を前記上段に配置されるパレット
における他の支柱に対して高さが高い支柱の被挿入部に挿入する工程と、
前記上段に配置されるパレットをさらに下降させ、前記下段に配置されるパレットの他の支柱の上端部を前記上段に配置されるパレットの
他の支柱の被挿入部に挿入する工程と、
を備える、パレットの積層方法。
【請求項9】
下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部を夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入して、パレットを積層する方法であって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱に前記支柱の高さ方向に摺動可能なカップを備える、上段に配置されるパレットを上昇させて前記カップを前記被挿入部の下端部から突出させる工程と、
前記上段に配置されるパレットを下降させ、前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部を前記上段に配置されるパレットのカップに挿入する工程と、
前記上段に配置されるパレットのカップに挿入された、前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部を中心に前記上段に配置されるパレットを回転させて、前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部と前記上段に配置されるパレットの被挿入部との位置合わせを行う工程と、
前記上段に配置されるパレットをさらに下降させ、前記下段に配置されるパレットの前記支柱の上端部を前記上段に配置されるパレットの被挿入部に挿入する工程と、
を備える、パレットの積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パレット、パレットの積層システム及び積層方法に関し、例えば、下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部が夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入されることで、上下方向に積層可能なパレット、パレットの積層システム及び積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なパレットは、下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部が夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入されることで、上下方向に積層可能な構成とされている。このとき、下段に配置されるパレットの支柱の上端部と上段に配置されるパレットの被挿入部とを精度良く配置しないと、パレットを積層することができない。
【0003】
そこで、特許文献1には、フォークリフトに設けられた複数の二次元距離計を用いて、下段に配置されるパレットの傾き及び中心位置を検出し、検出結果に基づいて上段に配置されるパレットの積層位置を調整する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人は、以下の課題を見出した。特許文献1の技術は、上段に配置されるパレットの積層位置を調整するために複数の二次元距離計を用いる必要があり、パレットを精度良く積層するためにコストが嵩む課題を有する。
【0006】
本開示は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、コストの上昇を抑制しつつ、精度良く積層可能な、パレット、パレットの積層システム及び積層方法を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るパレットは、下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部が夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入されることで、上下方向に積層可能なパレットであって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱の高さが他の支柱の高さに対して高い。
このようにパレットは、支柱のうち、少なくとも一本の支柱の高さが他の支柱の高さに対して高い、簡単な構成である。そのため、当該パレットを用いると、コストの上昇を抑制しつつ、パレットを精度良く積層可能である。
【0008】
上述のパレットは、前記被挿入部の下部にガイド部を有し、
前記上段に配置されるパレットが前記下段に配置されるパレットに積層される場合、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部は、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部に対して上側に配置される本体部を前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部に導くことが好ましい。
このような構成により、上段に配置されるパレットの被挿入部の本体部を下段に配置されるパレットの支柱の略直上に容易に導くことができる。
【0009】
上述のパレットにおいて、前記他の支柱に対して高さが高い支柱の被挿入部の深さは、前記他の支柱の被挿入部の深さに対して深いことが好ましい。
【0010】
上述のパレットにおいて、前記他の支柱に対して高さが高い支柱の被挿入部の深さと前記他の支柱の被挿入部の深さとの差分は、前記他の支柱に対して高さが高い支柱の高さと前記他の支柱の高さとの差分と等しいことが好ましい。
これにより、下段に配置されるパレットに対する上段に配置されるパレットの傾きを抑制しつつ、上段に配置されるパレットを下段に配置されるパレットの上側に積層することができる。
【0011】
上述のパレットにおいて、前記支柱は多角形状又は回転止めを有する形状であり、
前記被挿入部の少なくとも一部の内周形状は、前記支柱の外周形状に対して大きく、前記支柱の外周形状と対応する多角形状又は回転止めを有する形状であることが好ましい。
ここで、多角形状は直交する二辺を有することが望ましい。
これにより、上段に配置されるパレットの被挿入部に下段に配置されるパレットの支柱の上端部が挿入される際に、例えば、下段に配置されるパレットの支柱の上端部の二辺に上段に配置されるパレットの被挿入部の二辺が接触し、下段に配置されるパレットに対する上段に配置されるパレットの回転角度及び位置を精度良く規定することができる。
【0012】
本開示の一態様に係るパレットは、下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部が夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入されることで、上下方向に積層可能なパレットであって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱に前記支柱の高さ方向に摺動可能なカップを備え、
前記パレットが上昇した場合、前記カップが前記被挿入部の下端部から突出する。
このようにパレットは、支柱のうち、少なくとも一本の支柱に摺動可能にカップを設けた簡単な構成である。そのため、当該パレットを用いると、コストの上昇を抑制しつつ、パレットを精度良く積層可能である。
【0013】
上述のパレットは、前記被挿入部の下部にガイド部を有し、
前記上段に配置されるパレットが前記下段に配置されるパレットに積層される場合、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部は、前記上段に配置されるパレットの被挿入部におけるガイド部に対して上側に配置される本体部を前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部に導き、
前記上段に配置されるパレットが上昇した場合、前記カップが前記ガイド部の下端部を覆うことが好ましい。
このような構成により、上段に配置されるパレットの被挿入部の本体部を下段に配置されるパレットの支柱の略直上に容易に導くことができる。
【0014】
本開示の一態様に係るパレットの積層システムは、
上述のパレットと、
前記パレットを昇降させ、自走可能な移動体と、
前記移動体に設けられ、前記パレットにおける予め設定された支柱を検出する検出部と、
を備える。
上述の簡単な構成のパレットを用いるので、コストの上昇を抑制しつつ、パレットを精度良く積層可能である。
【0015】
本開示の一態様に係るパレットの積層方法は、
下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部を夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置された被挿入部に挿入して、パレットを積層する方法であって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱の高さが他の支柱の高さに対して高い、下段に配置されるパレットの上側に上段に配置されるパレットを配置する工程と、
前記上段に配置されるパレットを下降させ、前記下段に配置されるパレットにおける前記他の支柱に対して高さが高い支柱の上端部を前記上段に配置されるパレットの被挿入部に挿入する工程と、
前記上段に配置されるパレットをさらに下降させ、前記下段に配置されるパレットの前記他の支柱の上端部を前記上段に配置されるパレットの被挿入部に挿入する工程と、
を備える。
このように少なくとも一本の支柱の高さが他の支柱の高さに対して高い、簡単な構成のパレットを用いるので、コストの上昇を抑制しつつ、パレットを精度良く積層可能である。
【0016】
本開示の一態様に係るパレットの積層方法は、
下段に配置されるパレットの複数の支柱の上端部を夫々、上段に配置されるパレットの支柱の下端部に配置される被挿入部に挿入して、パレットを積層する方法であって、
前記複数の支柱のうち、少なくとも一本の支柱に前記支柱の高さ方向に摺動可能なカップを備える、上段に配置されるパレットを上昇させて前記カップを前記被挿入部の下端部から突出させる工程と、
前記上段に配置されるパレットを下降させ、前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部を前記上段に配置されるパレットのカップに挿入する工程と、
前記上段に配置されるパレットのカップに挿入された、前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部を中心に前記上段に配置されるパレットを回転させて、前記下段に配置されるパレットの支柱の上端部と前記上段に配置されるパレットの被挿入部との位置合わせを行う工程と、
前記上段に配置されるパレットをさらに下降させ、前記下段に配置されるパレットの前記支柱の上端部を前記上段に配置されるパレットの被挿入部に挿入する工程と、
を備える。
このように少なくとも一本の支柱に摺動可能にカップを設けた、簡単な構成のパレットを用いるので、コストの上昇を抑制しつつ、パレットを精度良く積層可能である。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、コストの上昇を抑制しつつ、精度良く積層可能な、パレット、パレットの積層システム及び積層方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態1のパレットを示す斜視図である。
【
図2】下段に配置されるパレットの支柱の上端部の高さと上段に配置されるパレットの被挿入部の深さとの関係を示す図である。
【
図3】(a)~(c)は、実施の形態1のパレットを積層する様子を示す図である。
【
図4】(a)~(d)は、上段に配置されるパレットの被挿入部に下段に配置されるパレットの支柱の上端部が挿入される様子を示す図である。
【
図5】上段に配置されるパレットの被挿入部の本体部と下段に配置されるパレットの支柱の上端部との関係を示す図である。
【
図6】実施の形態2のパレットの積層システムにおいて、移動体に設けられた検出部で支柱の上端部を検出する様子を示す側面図である。
【
図7】実施の形態2のパレットの積層システムにおいて、移動体に設けられた検出部で支柱の上端部を検出する様子を示す平面図である。
【
図8】実施の形態2のパレットの積層システムにおける移動体の制御系を示すブロック図である。
【
図9】支柱の上端部の重心位置を説明するための図である。
【
図10】(a)~(d)は、実施の形態3のパレットを積層する様子を示す図である。
【
図11】(a)~(d)は、上段に配置されるパレットの被挿入部に下段に配置されるパレットの支柱の上端部が挿入される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本開示が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0020】
<実施の形態1>
先ず、本実施の形態のパレットの構成を説明する。なお、以下の説明では、パレットが水平面に載置された状態を基準に説明するものである。また、以下の説明では、
図1に示す上下方向、前後方向及び左右方向を基準に説明するが、パレットの配置に応じて、適宜、前後方向と左右方向とが入れ替わってもよい。
【0021】
図1は、本実施の形態のパレットを示す斜視図である。
図2は、下段に配置されるパレットにおける支柱の上端部の高さと上段に配置されるパレットにおける支柱の下端部に配置される被挿入部の深さとの関係を示す図である。
【0022】
本実施の形態のパレット1は、例えば、倉庫などの施設内にワークを積層して配置するために好適である。そして、パレット1は、下段に配置されるパレット(以下、第2のパレット12という場合がある。)の支柱2の上端部が夫々、上段に配置されるパレット(以下、第1のパレット11という場合がある。)の支柱2の下端部に配置される被挿入部4に挿入されることで、上下方向に積層可能な構成とされている(
図3(c)を参照)。
【0023】
詳細には、パレット1は、
図1に示すように、支柱2、梁3及び被挿入部4を備えており、例えば、パレット1を上下方向から見て矩形状のフレーム構造に組み立てられている。但し、パレット1を上下方向から見て当該パレット1の形状は矩形状に限定されず、円形状、楕円形状又は多角形状であってもよい。
【0024】
支柱2は、上下方向に延在しており、上下方向から見てパレット1の隅部に配置されている。これらの支柱2のうち、少なくとも一本の支柱2(以下、第1の支柱21という場合がある。)の高さが他の支柱2(以下、第2の支柱22という場合がある。)の高さに対して高い。そのため、第1の支柱21が第2の支柱22に対して上側に高さH1、突出している。
【0025】
高さH1は、パレット1の対角の長さL1に対して、1~20%の範囲で設定するとよい。具体的には、例えば、パレット1の対角の長さL1が1000mmの場合、高さH1は、10~200mmの範囲で設定するとよい。なお、高さH1を上述の範囲に設定する理由については後述する。
【0026】
第1の支柱21は、隣接する二辺が略直交する矩形柱であるとよい。そして、第1の支柱21の対向する一方の一組の辺は夫々、略左右方向に延在し、第1の支柱21の対向する他方の一組の辺は夫々、略前後方向に延在しているとよい。また、第1の支柱21の上端部は、
図2に示すように、第1の支柱21の上側に向かって細くなるテーパー部2aを備えているとよい。
【0027】
但し、詳細な機能は後述するが、第1の支柱21の上端部の外周形状は、多角形状又は回転止めを有する形状であればよい。また、第2の支柱22の外周形状は問わないが、第1の支柱21の外周形状と等しい場合、第1の支柱21と等しい部材を用いてパレット1を製造することができる。これらの支柱2は、軽量化のために中空構造であるとよい。ここで、「回転止め」とは、後述するように第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が第1のパレット11の第1の支柱21の被挿入部4に挿入された際に、第1のパレット11の回転が拘束されるように形成された部分のことである。
【0028】
梁3は、隣接する支柱2の下部を連結する。このとき、梁3と施設の床との間にフォークリフト5の爪部5a(
図3(a)を参照)を挿入することができるように、梁3の下端部とパレット1の下端部との間の高さは、フォークリフト5の爪部5aの高さよりも高く設定されている。
【0029】
被挿入部4は、各々の支柱2の下端部に設けられており、第1のパレット11を第2のパレット12の上側に積層する際に、第1のパレット11の被挿入部4に第2のパレット12の支柱2の上端部が挿入される。被挿入部4は、
図2に示すように、当該被挿入部4の上端部に底部4aを有する筒形状であり、被挿入部4の内周形状が支柱2の上端部の外周形状と対応する形状とされている。
【0030】
例えば、第1の支柱21に設けられた被挿入部4の少なくとも一部の内周形状が第1の支柱21の上端部の外周形状に対して一回り大きい矩形状であるとよい。そして、第2の支柱22に設けられた被挿入部4の内周形状は、第2の支柱22の上端部の外周形状に対して一回り大きい形状であるとよい。
【0031】
第1の支柱21に設けられる被挿入部4の深さは、第2の支柱22の下端部に設けられる被挿入部4の深さに対して高さH1、深い。つまり、第1の支柱21が第2の支柱22に対して上側に突出している高さH1の分、第1の支柱21の被挿入部4の深さが第2の支柱22の被挿入部4の深さに対して深い。
【0032】
被挿入部4の下部には、
図2に示すように、ガイド部4bを備えているとよい。ガイド部4bは、第1のパレット11の被挿入部4におけるガイド部4bに対して上側に配置される本体部4cを第2のパレット12の支柱2の上端部に導く。
【0033】
ガイド部4bの内周形状は、ガイド部4bの上側に向かって細くなる逆お椀形状であり、ガイド部4bの内周面の上端部が本体部4cの内周面の下端部と略連続している。つまり、本実施の形態の被挿入部4は、逆お椀形状の内周面を有するガイド部4b、及び当該ガイド部4bの上側に配置され、矩形状の内周面を有する本体部4cを備えている。
【0034】
ここで、
図2に示すように、支柱2の一辺の長さL2とガイド部4bの下側開口部の一辺の長さ(例えば、ガイド部4bの下側開口部における下端の内周縁の短軸の長さ)L3との関係は、<式1>を満たすとよい。
<式1> 1.2×L2<L3<5×L2
【0035】
また、第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cに約10mm以上挿入されると、第2のパレット12の第2の支柱22の上端部が第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4のガイド部4bに挿入されるような、高さH1及びガイド部4bの高さに設定されるとよい。
【0036】
次に、本実施の形態のパレット1を用いて当該パレット1を積層する流れを説明する。ここで、本実施の形態では、作業員がフォークリフト5を操作してパレット1を積層するものとする。
図3(a)~
図3(c)は、本実施の形態のパレットを積層する様子を示す図である。なお、
図3(b)及び
図3(c)では、パレットの動きが明確になるように、フォークリフトを省略している。
【0037】
先ず、
図3(a)に示すように、施設の床上に配置された第1のパレット11の梁3と床との間にフォークリフト5の爪部5aを挿入し、フォークリフト5で第1のパレット11を上昇させる。このとき、第1のパレット11の第1の支柱21が予め施設の床上に配置された第2のパレット12の第1の支柱21の配置(
図3(b)では、右前側)と等しく配置された状態で、第1のパレット11を上昇させる。
【0038】
そして、フォークリフト5によって第1のパレット11を第2のパレット12の上側に配置する。このとき、第1のパレット11の第1の支柱21の略直下に第2のパレット12の第1の支柱21が配置され、第1のパレット11の第2の支柱22の略直下に第2のパレット12の第2の支柱22が配置されるように、第1のパレット11を第2のパレット12に対して配置する。
【0039】
次に、
図3(b)に示すように、フォークリフト5によって第1のパレット11を下降させ、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4に第2のパレット12の第1の支柱21の上端部を挿入する。
【0040】
図4(a)~
図4(d)は、第1のパレットの第1の支柱に設けられた被挿入部に第2のパレットの第1の支柱の上端部が挿入される様子を示す図である。詳細には、
図4(a)に示すように、第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4のガイド部4bに挿入されるように、第1のパレット11を下降させる。
【0041】
そして、
図4(b)に示すように、第2のパレット12の第1の支柱21の上端部を第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4のガイド部4bに挿入する。このとき、第1のパレット11のガイド部4bは逆お椀形状である。
【0042】
そのため、第1のパレット11のガイド部4bの内周面が第2のパレット12の第1の支柱21の上端部と接触しつつ、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cが第2のパレット12の第1の支柱21の略直上に配置されるように、第1のパレット11の位置が第2のパレット12に対して修正される。
【0043】
ここで、支柱2の一辺の長さL2とガイド部4bの下側開口部の一辺の長さL3との関係がL3≦1.2×L2の場合、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4のガイド部4bに第2のパレット12の第1の支柱21の上端部を挿入することが困難であり、L3≧5×L2の場合、第1のパレット11の位置修正能力が低下する。
【0044】
そして、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cが第2のパレット12の第1の支柱21の略直上に配置された状態で、第1のパレット11をさらに下降させる。これにより、
図4(c)に示すように、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cに第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が挿入される。
【0045】
このとき、第2のパレット12の第1の支柱21が矩形柱であり、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cの内周形状が矩形状である場合、第1のパレット11の回転角度及び位置が規定される。
図5は、第1のパレットの第1の支柱に設けられた被挿入部の本体部と第2のパレットの第1の支柱の上端部との関係を示す図である。
【0046】
詳細には、第2のパレット12の第1の支柱21が矩形柱であり、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cの内周形状が矩形状である場合、
図5に示すように、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cに第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が挿入される際に、第2のパレット12の第1の支柱21の上端部における隣接する二辺に第1のパレット11の被挿入部4の本体部4cの隣接する二辺が接触し、第2のパレット12に対する第1のパレット11の回転角度及び位置が規定される。
【0047】
つまり、第2のパレット12に対する第1のパレット11の前後方向及び左右方向が規定される。これにより、第2のパレット12に対する第1のパレット11の回転角度及び位置が若干、ズレていても、第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4を第2のパレット12の第2の支柱22の略直上に精度良く配置することができる。
【0048】
ここで、高さH1がパレット1の対角の長さL1に対して1%未満の場合、第1のパレット11の回転角度及び位置の規定能力が乏しく、第1のパレット11の回転角度及び位置の規定能力を考慮すると、高さH1をパレット1の対角の長さL1に対して20%より大きくする必要がない。
【0049】
その後、各々の第1のパレット11の被挿入部4が第2のパレット12の支柱2の略直上に配置された状態で、
図3(c)に示すように、第1のパレット11をさらに下降させる。これにより、各々の第1のパレット11の被挿入部4に第2のパレット12の支柱2の上端部が挿入される。
【0050】
ここで、第1のパレット11の第1の支柱21の上端部が第2のパレット12の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cに約10mm以上挿入されると、第1のパレット11の第2の支柱22の上端部が第2のパレット12の第2の支柱22に設けられた被挿入部4のガイド部4bに挿入されるような、高さH1及びガイド部4bの高さに設定されている場合、第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4を第2のパレット12の第2の支柱22の略直上に精度良く配置した後に、第1のパレット11の各々の被挿入部4に第2のパレット12の支柱2の上端部を挿入することができる。
【0051】
そして、第1のパレット11をさらに下降させ、
図4(d)に示すように、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の底部4aに第2のパレット12の第1の支柱21の上端部を接触させる。同様に、第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4の底部4aに第2のパレット12の第2の支柱22の上端部を接触させる。これにより、第1のパレット11が第2のパレット12の支柱2の上側に積層される。
【0052】
このとき、上述のように、各々の第1のパレット11の被挿入部4が第2のパレット12の支柱2の略直上に精度良く配置されているので、第1のパレット11を下降させるだけで、第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4に第2のパレット12の第2の支柱22の上端部を簡単に挿入することができ、しかも、第1のパレット11を第2のパレット12の上側に精度良く積層することができる。
【0053】
また、第1の支柱21の下端部に設けられた被挿入部4の深さは、第2の支柱22の下端部に設けられた被挿入部4の深さに対して高さH1、深いので、第2のパレット12に対する第1のパレット11の傾きを抑制しつつ、第1のパレット11を第2のパレット12の上側に積層することができる。
【0054】
このように本実施の形態のパレット1は、支柱2のうち、少なくとも一本の支柱2の高さが他の支柱2の高さに対して高い、簡単な構成である。そのため、本実施の形態のパレット1を用いると、コストの上昇を抑制しつつ、パレット1を精度良く積層可能である。
【0055】
ここで、上述のように第1の支柱21の上端部の外周形状及び当該第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cの内周形状が矩形状でない場合、例えば、第2のパレット12の第1の支柱21の上端部を中心に第1のパレット11を回転させると、第2のパレット12の第2の支柱22の略直上に第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4を簡単に配置することができる。
【0056】
しかも、被挿入部4の下部にガイド部4bを備えているので、第1のパレット11の被挿入部4の本体部4cを第2のパレット12の支柱2の略直上に容易に導くことができる。
【0057】
また、第1の支柱21の上端部の外周形状及び当該第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cの内周形状が矩形状である場合、第2のパレット12の第1の支柱21の上端部を第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4の本体部4cに挿入すると、第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4を第2のパレット12の第2の支柱22の略直下に精度良く配置することができる。
【0058】
そのため、第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4に第2のパレット12の第2の支柱22の上端部を簡単に挿入することができ、しかも、第1のパレット11を第2のパレット12の上側に精度良く積層することができる。
【0059】
<実施の形態2>
実施の形態1では、作業員がフォークリフト5を操作してパレット1を積層しているが、自走式の移動体を用いてパレット1を積層してもよい。先ず、本実施の形態のパレット1の積層システム31の構成を説明する。
【0060】
図6は、本実施の形態のパレットの積層システムにおいて、移動体に設けられた検出部で第1の支柱の上端部を検出する様子を示す側面図である。
図7は、本実施の形態のパレットの積層システムにおいて、移動体に設けられた検出部で第1の支柱の上端部を検出する様子を示す平面図である。
図8は、本実施の形態のパレットの積層システムにおける移動体の制御系を示すブロック図である。なお、
図6及び
図7では、二点鎖線によって検出部から出射されるレーザー光を示している。また、
図7では、ハッチングによって検出部の検出範囲を示している。
【0061】
本実施の形態では、
図6及び
図7に示すように、実施の形態1のパレット1及び移動体41で積層システム31を構成している。移動体41は、自走可能なフォークリフトである。詳細には、移動体41は、
図6及び
図7に示すように、車台42、車台42の前側に設けられたマスト43、マスト43に沿って上下方向に昇降可能な爪部44、車台42に設けられた駆動輪45並びに操舵輪46、検出部47及び制御部48を備えている。
【0062】
検出部47は、パレット1の予め設定された支柱2として第1の支柱21を検出する。検出部47は、例えば、レーザーレンジセンサなどを備えており、
図6乃至
図8に示すように、施設の床上に配置された状態のパレット1の第1の支柱21の上端部を検出できる一方で、第2の支柱22の上端部を検出しないように、移動体41に固定されている。但し、検出部47は、レーザーレンジセンサに限定されず、一般的な光電センサであればよい。
【0063】
ここで、本実施の形態の検出部47は、
図7に示すように、パレット1を上下方向から見てパレット1の全ての支柱2を略検出領域内に収めることができる当該検出領域を備えているが、パレット1の少なくとも一本の支柱2を検出領域内に収めることができる当該検出領域を備えていればよい。
【0064】
制御部48は、予め設定された経路に沿って移動し、パレット1を積層するように、検出部47の検出結果を参照しつつ、
図8に示す爪部44を昇降させるためのモータ49、駆動輪45を駆動させるためのモータ50、及び操舵輪46を操舵させるためのモータ51を制御する。
【0065】
また、制御部48は、検出部47の検出結果に基づいて、移動体41の予め設定された位置を原点とする第1の支柱21の、例えば重心位置の前後方向及び左右方向の座標、及び第1の支柱21の重心位置を通り、上下方向に延在する軸回りのパレット1の回転角度を算出する。但し、第1の支柱21の位置として、第1の支柱21における水平面での座標及びパレット1の回転角度を算出すればよい。また、原点は重心以外でも、第1の支柱21の位置から算出できる点であれば、例えば、支柱の四隅のどこか一点などでもよい。
【0066】
ここで、制御部48をCPU(Central Processing Unit)を含むコンピュータで構成し、当該制御部48でプログラムを実行させることにより、後述するパレット1の積層工程を実現するとよい。
【0067】
上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータ(情報通知装置を含むコンピュータ)に供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。さらに、この例は、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/Wを含む。さらに、この例は、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM、EPROM、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0068】
次に、本実施の形態の積層システム31を用いてパレット1を積層する流れを説明する。先ず、移動体41の制御部48は、当該移動体41が施設の床上に配置された第1のパレット11の前側に配置されるようにモータ50、51を制御し、施設の床上を走行させる。
【0069】
次に、移動体41の制御部48は、検出部47の検出結果に基づいて、第1のパレット11の第1の支柱21の上端部の座標及び当該第1のパレット11の回転角度を算出する。ここで、
図9に示すように、第1の支柱21が矩形柱であって、且つパレット1が回転している場合、第1の支柱21の隣接する両角部が検出部47によって検出できない場合があり、その場合、第1の支柱21の上端部の座標を精度良く算出できない場合がある。
【0070】
このとき、第1の支柱21が矩形柱であって、第1の支柱21における検出できた角部から第1の支柱21の一辺に沿って長さL2の半分に到達した位置を点P1とした場合、第1の支柱21の重心位置Gは、当該点P1から当該一辺に対する法線方向に長さL2の半分行った位置に配置されることになる。
【0071】
そこで、制御部48は、第1の支柱21における検出できた角部の座標、予め設定されている第1の支柱21の一辺の長さL2、及び第1のパレット11の回転角度に基づいて、第1の支柱21の座標を算出することができる。
【0072】
これにより、移動体41に対して第1のパレット11が回転して配置されていても、第1の支柱21の座標を正確に算出することができる。ちなみに、第1のパレット11の回転角度は、左右方向に延在する軸に対する第1の支柱21の一辺の傾きに基づいて算出することができる。
【0073】
次に、移動体41の制御部48は、第1のパレット11に近づき、第1のパレット11を爪部44で上昇させるように、モータ49、50、51を制御する。このとき、移動体41は、第1のパレット11を上昇させる直前の当該第1のパレット11の第1の支柱21の上端部の座標及び当該第1のパレット11の回転角度を記憶しておく。そして、制御部48は、第1のパレット11を上昇させた状態で、移動体41が予め施設の床上に配置された第2のパレット12の前側に配置されるように、モータ50、51を制御する。
【0074】
次に、移動体41の制御部48は、検出部47の検出結果に基づいて、第2のパレット12の第1の支柱21の上端部の座標及び当該第2のパレット12の回転角度を算出する。そして、制御部48は、第1のパレット11の第1の支柱21の座標並びに当該第1のパレット11の回転角度と、第2のパレット12の第1の支柱21の座標並びに当該第2のパレット12の回転角度と、を比較し、相互に略一致するように、モータ50、51を制御する。これにより、第1のパレット11の各々の被挿入部4が第2のパレット12の支柱2の略直上に配置されている
【0075】
次に、移動体41の制御部48は、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4に第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が挿入されるように、第1のパレット11を移動体41の爪部44で下降させるべく、モータ49を制御する。
【0076】
これにより、第1のパレット11の第1の支柱21に設けられた被挿入部4に第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が挿入され、実施の形態1で説明したように、第2のパレット12に対して第1のパレット11が精度良く上側に配置される。
【0077】
その後、移動体41の制御部48は、第1のパレット11を移動体41の爪部44で下降させるために、モータ49を制御する。これにより、第1のパレット11の第2の支柱22に設けられた被挿入部4に第2のパレット12の第2の支柱22の上端部が挿入され、第2のパレット12の上側に第1のパレット11が積層される。
【0078】
このように本実施の形態も、少なくとも一本の支柱2の高さが他の支柱2の高さに対して高い、簡単な構成のパレット1を用いるので、コストの上昇を抑制しつつ、パレット1を精度良く積層可能である。しかも、支柱2の座標及びパレット1の回転角度を算出するために、複数の検出部を備える必要がなく、やはり、コストの上昇を抑制しつつ、パレット1を積層可能である。
【0079】
ここで、移動体41は、爪部44にパレット1が載置状態であることを検出する検出部を備えているとよい。これにより、制御部48は、第2のパレット12に第1のパレット11が積層されたことを正確に認識することができる。
【0080】
<実施の形態3>
図10(a)~
図10(d)は、本実施の形態のパレットを積層する様子を示す図である。
図11(a)~
図11(d)は、第1のパレットの被挿入部に第2のパレットの支柱の上端部が挿入される様子を示す図である。
【0081】
本実施の形態のパレット6も、
図10(d)などに示すように、下段に配置されるパレット(以下、第2のパレット62という場合がある。)の支柱7の上端部が夫々、上段に配置されるパレット(以下、第1のパレット61という場合がある。)の支柱7の下端部に配置される被挿入部9に挿入されることで、上下方向に積層可能な構成とされている。
【0082】
詳細には、パレット6は、
図10(a)などに示すように、支柱7、梁8、被挿入部9及びカップ10を備えており、例えば、パレット6を上下方向から見て矩形状のフレーム構造に組み立てられている。但し、パレット6を上下方向から見て当該パレット6の形状は矩形状に限定されず、円形状、楕円形状又は多角形状であってもよい。
【0083】
支柱7は、上下方向に延在しており、支柱7の上端部が略等しい高さに配置されている。例えば、全ての支柱7は、略等しい長さを有する柱体である。このとき、支柱7の上端部は、
図11(a)などに示すように、支柱7の上側に向かって細くなるテーパー部7aを備えているとよい。また、支柱7は、軽量化のために中空構造であるとよい。
【0084】
梁8は、隣接する支柱7の下部を連結する。このとき、梁8と施設の床との間にフォークリフトの爪部を挿入することができるように、梁8の下端部とパレット6の下端部との間の高さは、フォークリフトの爪部の高さよりも高く設定されている。
【0085】
被挿入部9は、各々の支柱7の下端部に設けられており、第1のパレット61を第2のパレット62の上側に積層する際に、第1のパレット61の被挿入部9に第2のパレット62の支柱7の上端部が挿入される。
【0086】
被挿入部9は、
図11(a)などに示すように、当該被挿入部9の上端部に底部9aを有する筒形状であり、被挿入部9の内周形状が支柱7の上端部の外周形状と対応する形状とされている。例えば、被挿入部9の内周形状は、支柱7の上端部の外周形状に対して一回り大きい形状であるとよい。これらの被挿入部9の深さは、略等しい。
【0087】
ここで、
図11(a)などに示すように、被挿入部9の下部にガイド部9bを備えているとよい。ガイド部9bは、第1のパレット61の被挿入部9におけるガイド部9bに対して上側に配置される本体部9cを第2のパレット62の支柱7の上端部に導く。
【0088】
ガイド部9bの内周形状は、ガイド部9bの上側に向かって細くなる逆お椀形状であり、ガイド部9bの内周面の上端部が被挿入部9の本体部9cの内周面の下端部と略連続している。つまり、本実施の形態の被挿入部9は、逆お椀形状の内周面を有するガイド部9b、及び当該ガイド部9bの上側に配置され、支柱7の上端部の外周形状と対応する内周面を有する本体部9cを備えている。
【0089】
カップ10は、支柱7に対して上下方向に摺動可能に、少なくとも一本の支柱7に設けられている。カップ10は、当該カップ10の上端部に開口部10aを有する逆お椀形状であり、当該開口部10aの内部に被挿入部9の本体部9cが通されている。
【0090】
このようなカップ10は、
図10(a)に示すように、パレット6が施設の床上に配置された場合、被挿入部9の本体部9cに沿って上側に摺動し、被挿入部9の下端部とカップ10の下端部とが略等しい高さに配置される。
【0091】
一方、
図10(b)に示すように、パレット6が上昇した場合、カップ10は、被挿入部9の本体部9cに沿って下側に摺動し、カップ10の開口部10aの周縁が被挿入部9のガイド部9bに引っ掛かった状態で、カップ10の下部が被挿入部9の下端部から突出する。このとき、カップ10は被挿入部9を覆うことになる。ここで、カップ10の内周面と被挿入部9のガイド部9bの下端部とは、略連続するように配置されるとよい。
【0092】
次に、本実施の形態のパレット6を用いて当該パレット6を積層する流れを説明する。ここで、本実施の形態では、作業員がフォークリフトを操作してパレット6を積層するものとする。
【0093】
先ず、
図10(a)に示すように第1のパレット61が施設の床上に配置された状態から、第1のパレット61の梁8と床との間にフォークリフトの爪部を挿入し、
図10(b)に示すように、フォークリフトで第1のパレット61を上昇させる。
【0094】
これにより、カップ10が被挿入部9の本体部9cに沿って下側に摺動し、カップ10の開口部10aの周縁が被挿入部9のガイド部9bに引っ掛かった状態で、カップ10の下部が被挿入部9の下端部から突出する。
【0095】
そして、フォークリフトによって第1のパレット61を第2のパレット62の上側に配置する。このとき、第1のパレット61の支柱7の略直下に第2のパレット62の支柱7が配置されるように、第1のパレット61を第2のパレット62に対して配置する。
【0096】
次に、
図10(c)に示すように、フォークリフトによって第1のパレット61を下降させ、第1のパレット61の被挿入部4に通されたカップ10の内部に第2のパレット12の支柱7の上端部を挿入する。
【0097】
詳細には、
図11(a)に示すように、第2のパレット62の支柱7の上端部が第1のパレット11の被挿入部9に通されたカップ10の内部に挿入されるように、第1のパレット61を下降させる。
【0098】
そして、
図11(b)に示すように、第1のパレット61をさらに下降させる。これにより、第1のパレット11の被挿入部9に通されたカップ10の内周面が第2のパレット62の支柱7の上端部に接触しつつ、第1のパレット61の被挿入部9のガイド部9bが第2のパレット62の支柱7の略直上に配置されるように、第1のパレット61の位置が第2のパレット12に対して修正される。
【0099】
そして、第1のパレット61の被挿入部9に通されたガイド部9bが第2のパレット62の支柱7の略直上に配置された状態で、第1のパレット61の残りの被挿入部9のガイド部9bが第2のパレット62の支柱7の略直上に配置されるように、フォークリフトを用いて第1のパレット61の位置調整を行う。
【0100】
このとき、第2のパレット62における第1のパレット61のカップ10に挿入された支柱7の上端部を中心に第1のパレット61を回転させると、大凡、第1のパレット61の位置調整を精度良く行うことができる。
【0101】
第1のパレット61をさらに下降させて、第1のパレット11の各々の被挿入部9のガイド部9bに第2のパレット12の支柱7を挿入する。このとき、第1のパレット61のガイド部9bは逆お椀形状である。
【0102】
そのため、第1のパレット61のガイド部9bの内周面が第2のパレット62の支柱7の上端部と接触しつつ、第1のパレット61の被挿入部9の本体部9cが第2のパレット62の支柱7の略直上に配置されるように、第1のパレット61の位置が第2のパレット62に対して修正される。ここで、カップ10の内周面と被挿入部9のガイド部9bの下端部とは、略連続するように配置されている場合、第1のパレット61の位置修正をスムーズに行うことができる。
【0103】
次に、第1のパレット61の各々の被挿入部9の本体部9cが第2のパレット62の支柱7の略直上に配置された状態で、第1のパレット61をさらに下降させ、
図11(c)に示すように、第1のパレット61の被挿入部9の本体部9cに第2のパレット12の支柱7の上端部を挿入する。
【0104】
このとき、図示を省略するが、カップ10の一部が被挿入部9に突出していると、
図11(c)などに示すように、第1のパレット61の被挿入部9の本体部9cに第2のパレット12の支柱7が挿入されるのに従って、カップ10を上側に摺動させることができる。
【0105】
その後、
図10(d)及び
図11(d)に示すように、第1のパレット61をさらに下降させ、第1のパレット61の各々の被挿入部9の底部9aに第2のパレット62の支柱7の上端部を接触させる。これにより、第1のパレット61が第2のパレット62の支柱2の上側に積層される。
【0106】
このように本実施の形態のパレット6は、支柱7のうち、少なくとも一本の支柱7に摺動可能にカップ10を設けた簡単な構成である。そのため、本実施の形態のパレット6を用いると、コストの上昇を抑制しつつ、パレット6を精度良く積層可能である。
【0107】
なお、本実施の形態では、作業員がフォークリフトを操作してパレット6を積層しているが、実施の形態2と同様に自走式の移動体を用いてパレット6を積層してもよい。このとき、移動体は、検出部によって施設の床上に配置されたパレット6の予め設定された支柱7として、例えば、当該パレット6の右前側の支柱7の位置を検出し、その後、実施の形態3のパレット6を積層する流れを実行すればよい。但し、検出部は、少なくとも何れかの支柱7の位置を検出すればよい。
【0108】
本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0109】
例えば、実施の形態1及び2の支柱2を円柱で構成する場合、少なくとも二本の支柱2の高さを他の支柱2の高さに対して高い構成とすると、第2のパレット12の上側に第1のパレット11を積層する際に、第2のパレット12に対する第1のパレット11の位置修正を行うことができる。
【0110】
また、実施の形態1及び2の支柱2を楕円柱で構成する場合、実施の形態1及び2と同様に、少なくとも一本の支柱2の高さを他の支柱2の高さに対して高い構成とすると、第2のパレット12の上側に第1のパレット11を積層する際に、第2のパレット12に対する第1のパレット11の位置修正を行うことができる。
【0111】
例えば、実施の形態1及び2では、パレット1における第1の支柱21に設けられた被挿入部4の深さと第2の支柱22に設けられた被挿入部4の深さとの差分が第1の支柱21の高さと第2の支柱22の高さとの差分H1と略等しい構成としているが、第1のパレット11が傾かないように当該第1のパレット11を第2のパレット12の上側に積層することができればよく、第1の支柱21に設けられた被挿入部4の内部にストッパーなどを設けて、予め設定された深さ以上に第2のパレット12の第1の支柱21の上端部が挿入されない構成としていてもよい。
【符号の説明】
【0112】
1 パレット、11 第1のパレット、12 第2のパレット
2 支柱、2a テーパー部、21 第1の支柱、22 第2の支柱
3 梁
4 被挿入部、4a 底部、4b ガイド部、4c 本体部
5 フォークリフト、5a 爪部
6 パレット、61 第1のパレット、62 第2のパレット
7 支柱、7a テーパー部
8 梁
9 被挿入部、9a 底部、9b ガイド部、9c 本体部
10 カップ、10a 開口部
31 積層システム
41 移動体、42 車台、43 マスト、44 爪部、45 駆動輪、46 操舵輪、47 検出部、48 制御部
49、50、51 モータ