(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】車両及び除電部品
(51)【国際特許分類】
B60R 16/06 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
B60R16/06 Z
(21)【出願番号】P 2020151881
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 健一朗
(72)【発明者】
【氏名】梶川 義明
(72)【発明者】
【氏名】須藤 淳一
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-196232(JP,A)
【文献】米国特許第05761022(US,A)
【文献】特開2019-192568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、
前記外部要因により負の電荷が帯電することに伴って、走行時に前記車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、前記帯電した車体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める正に帯電する部位が特定部位とされ、前記特定部位の正の電荷を低下させ、又は前記特定部位を負の電荷に帯電させる除電器を備え、
前記特定部位は、表面抵抗値が前記除電器の表面抵抗値よりも低い導電性材料で構成され
る、ホイールナット、ホイールナットカバー、ラジエーター、エンジン、トランスミッション、デファレンシャル又は排気管であり、
前記除電器は、表面抵抗値が10
2 Ω以上且つ10
11 Ω未満の範囲である導電性
フッ素樹脂で構成される
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
前記除電器が、導電性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記除電器が、前記特定部位の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有するテープの形状である、請求項1
又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記除電器が、前記特定部位に対して一体化されている塗膜の形状である、請求項1
又は2に記載の車両。
【請求項5】
表面抵抗値が10
2 Ω以上且つ10
11 Ω未満の範囲である導電性
フッ素樹脂で構成される除電器と、表面抵抗値が前記除電器の表面抵抗値よりも低い導電性材料で構成される
、ホイールナット、ホイールナットカバー、ラジエーター、エンジン、トランスミッション、デファレンシャル又は排気管である特定部位とを有する除電部品。
【請求項6】
前記除電器が、導電性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成される、請求項5に記載の除電部品。
【請求項7】
前記除電器が、前記特定部位の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有するテープの形状である、請求項
5又は6に記載の除電部品。
【請求項8】
前記除電器が、前記特定部位に対して一体化されている塗膜の形状である、請求項
5又は6に記載の除電部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及び除電部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両が走行すると、空気流が車両に摩擦接触する状態にて流れることに起因して車両に静電気が発生する。また、車輪の回転に伴ってタイヤの各部が路面に対し繰り返し接触及び剥離を繰り返すこと、エンジン又はブレーキ装置等において構成部品が相対運動することなどによっても、静電気が発生する。
【0003】
車両は、導電性が低いタイヤによって大地から実質的に電気絶縁された状態にあるため、車両に静電気が発生すると、電荷(一般的には正の電荷)が車体等に帯電する。このため、車両に帯電した電荷を通電によって低減する構造が従来研究され、種々の構造が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、走行時に前記車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、前記帯電した車体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める剥離形状の箇所のうちの、前記空気流の剥離を抑制することにより前記車両の操縦安定性が向上する少なくとも何れか一つの予め定められた特定部位の正の電位を、該正の電位に応じて負の空気イオンを生じさせる自己放電により中和除電して低下させる自己放電式除電器を備えていることを特徴とする車両を記載する。当該文献は、自己放電式除電器の材質として、アルミニウム、金、銀又は銅のような導電性金属を記載する。当該文献はまた、自己放電式除電器の形状として、コロナ放電が生じるような鋭利又は尖った角部を有する形状を記載する。
【0005】
特許文献2は、路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、前記外部要因により負の電荷が帯電することに伴って、走行時に前記車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、前記帯電した車体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める正に帯電する部位が特定部位とされ、前記特定部位の正の電荷を低下させ、又は前記特定部位を負の電荷に帯電させるマイナスイオン化材を備え、前記マイナスイオン化材は、前記特定部位に一体化していることを特徴とする車両を記載する。当該文献は、マイナスイオン化材として、粉状のトルマリンを含有した塗料、及びアクリル系又はポリエステル系の樹脂材料を記載する。
【0006】
特許文献3は、路面に対して絶縁状態になっている車両における、前記車両の走行による要因と、前記車両の走行による要因以外の他の要因とのうち、少なくとも一方の要因によって正の極性の静電気を帯びる少なくとも一つの特定部位に設けられていて、自己放電によって負の極性の空気イオンを生じさせ、前記負の極性の空気イオンによって前記特定部位の正の電位を中和除電して低下させるように構成された前記車両の除電器において、前記特定部位に粘着剤を介して貼付される樹脂テープを備え、前記粘着剤の表面抵抗値は、1×1010(Ω)から1×1011(Ω)であり、前記樹脂テープは、前記特定部位と比較して前記特定部位とは反対の負の極性の静電気を帯びやすい合成樹脂材料によって形成され、前記樹脂テープの表面積は、前記負の極性の空気イオンによって前記特定部位の正の電位を中和除電して低下させる放電特性が同じであるアルミニウム粘着テープと同じ表面積であって、前記樹脂テープの周縁部と前記アルミニウム粘着テープの周縁部とのそれぞれは、前記自己放電を生じさせるように鋭利若しくは尖って形成され、前記樹脂テープの周縁部の長さは、前記アルミニウム粘着テープの周縁部の長さの3倍から5倍であることを特徴とする車両の除電器を記載する。当該文献は、樹脂テープの材質として、塩化ビニル又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を記載する。
【0007】
特許文献4は、ニッケル粉末と酸変性ポリオレフィン樹脂とを含有する車両用帯電防止組成物であって、前記ニッケル粉末を顔料体積率(vol.%)で2.5~15 vol.%含有する車両用帯電防止組成物を記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第6168157号公報
【文献】特許第6344292号公報
【文献】特開2019-192568号公報
【文献】特許第6630696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
車両における車体の除電を目的として、導電性テープのような除電器を適用した車両が知られている。しかしながら、これらの従来技術には、いくつかの課題が存在した。例えば、特許文献1に記載の自己放電式除電器を備える車両の場合、自己放電式除電器による除電効果は、空気中の水蒸気等の外乱を受けやすい。また、当該文献に例示される導電性金属によって形成される自己放電式除電器の場合、透過性が実質的にないため意匠性が低下する可能性がある。さらに、当該文献に記載の自己放電式除電器による除電効果はコロナ放電によって発現するため、静電圧が低い条件では有効な効果が発現しない可能性がある。
【0010】
特許文献3に記載の除電器において、例えば塩化ビニルテープを使用する場合、特許文献1に記載の導電性金属と比較して負帯電量が低いため、導電性金属の場合と同じ面積のテープを配置しても十分な効果を発現しない可能性がある。また、塩化ビニルによって形成される除電器の場合、透過性が実質的にないため意匠性が悪化する可能性がある。さらに、塩化ビニルによって形成される除電器の場合、耐熱温度が低いため、耐久性が低くなる可能性がある。
【0011】
それ故、本発明は、静電圧が低い非導電性部位においても除電効果を発現し得る除電器を有する車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するための手段を種々検討した。本発明者らは、路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、導電性材料で構成される特定部位に対して、導電性樹脂で構成される除電器を配置することにより、特定部位に発生する正の電荷を低下させ、又は特定部位を負の電荷に帯電させて、車両の操縦安定性を向上できることを見出した。本発明者らは、前記知見に基づき、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の態様及び実施形態を包含する。
(1) 路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、
前記外部要因により負の電荷が帯電することに伴って、走行時に前記車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、前記帯電した車体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める正に帯電する部位が特定部位とされ、前記特定部位の正の電荷を低下させ、又は前記特定部位を負の電荷に帯電させる除電器を備え、
前記特定部位は、表面抵抗値が前記除電器の表面抵抗値よりも低い導電性材料で構成され、
前記除電器は、表面抵抗値が102 Ω以上且つ1011 Ω未満の範囲である導電性樹脂で構成される
ことを特徴とする車両。
(2) 前記除電器が、前記特定部位の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有するテープの形状である、前記実施形態(1)に記載の車両。
(3) 前記除電器が、前記特定部位に対して一体化されている塗膜の形状である、前記実施形態(1)に記載の車両。
(4) 前記導電性樹脂が、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル及びポリプロピレン、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも1種の樹脂である、前記実施形態(1)~(3)のいずれかに記載の車両。
(5) 前記導電性樹脂が、導電性フッ素樹脂である、前記実施形態(4)に記載の車両。
(6) 前記特定部位が、ホイールナット、ホイールナットカバー、ラジエーター、エンジン、トランスミッション、デファレンシャル又は排気管である、前記実施形態(1)~(5)のいずれかに記載の車両。
(7) 表面抵抗値が102 Ω以上且つ1011 Ω未満の範囲である導電性樹脂で構成される除電器と、表面抵抗値が前記除電器の表面抵抗値よりも低い導電性材料で構成される特定部位とを有する除電部品。
(8) 前記除電器が、前記特定部位の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有するテープの形状である、前記実施形態(7)に記載の除電部品。
(9) 前記除電器が、前記特定部位に対して一体化されている塗膜の形状である、前記実施形態(7)に記載の除電部品。
(10) 前記特定部位が、ホイールナット、ホイールナットカバー、ラジエーター、エンジン、トランスミッション、デファレンシャル又は排気管である、前記実施形態(7)~(9)のいずれかに記載の除電部品。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、静電圧が低い非導電性部位においても除電効果を発現し得る除電器を有する車両を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の一態様の車両の一実施形態における除電効果を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様の車両の別の一実施形態における除電効果を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本発明の一態様の車両の別の一実施形態における除電効果を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の一態様の車両の一実施形態を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の一態様の車両の別の一実施形態を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の一態様の除電部品の一実施形態を示す概略図である。
【
図7】
図7は、本発明の一態様の除電部品の別の一実施形態を示す概略図である。
【
図8】
図8は、車体の除電効果の測定試験において、フェンダーライナー電位の経時変化を示すグラフである。図中、(a)は比較例B-1の試験車両の測定結果を、(b)は実施例B-1の試験車両の測定結果を、それぞれ示す。横軸は経過時間(秒)であり、縦軸は電位(kV)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0017】
<1. 車両>
本発明者らは、路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、導電性材料で構成される特定部位に対して、導電性樹脂で構成される除電器を配置することにより、特定部位に発生する正の電荷を低下させ、又は前記特定部位を負の電荷に帯電させて、車両の操縦安定性を向上できることを見出した。それ故、本発明の一態様は、車体及び除電器を備える車両に関する。
【0018】
本態様の車両は、車体を備える。車体は、ゴム等の絶縁体材料又は電気伝導率の低い材料により構成される車輪によって、路面に対して絶縁状態に保持されている。車体は、種々の外部要因による静電気で、通常は正に帯電する。この外部要因としては、例えば、車両が走行することを挙げることができる。車両が走行すると、走行風及び吸排気管内を流動する空気流等と車体との間の摩擦に伴う電気的作用により、車体が正に帯電する。或いは、車両が走行すると、エンジン又はモーター等の動力部、トランスミッション及び/又はサスペンション等の装置が駆動する。このとき、これらの装置を構成する部材の摺動に伴う電気的作用により、車体が正に帯電する。或いは、車輪と路面との間の摩擦に伴う電気的作用により、車体が正に帯電する。或いは、車両に搭載される種々の電気機器、又は車両の周囲に設置される送電線等の外部の電気機器から発生する電気により、車体が正に帯電する。
【0019】
前記で例示した静電気で帯電する車体は、電気伝導率が低い材料で構成される部材だけでなく、金属材料のような電気伝導率が高い材料で構成される部材、例えばボディ又はパネルも含む。電気伝導率が高い材料で構成される部材で構成される車体であっても、他の部材との結合部位に一定の電気抵抗が生じることから、正に帯電する可能性がある。
【0020】
通常、空気は正の電荷を帯びている。このため、本態様の車両において、外部要因、例えば走行することによって車体が正に帯電すると、走行時に車体の周囲に流れる正に帯電した空気流と車体との間で斥力が生じる。この斥力により、空気流が車体の表面から剥離し得る。このとき、空気流は、帯電した車体の表面に沿った流れから、車体の表面から離れた流れに変化し得る。本態様の車両において、このような変化を生じ得る部位を、「特定部位」と定義する。このような変化は、例えば、本態様の車両において、車体を前方から見た場合に、車体の外面が車体の内側に屈曲する箇所、又は車体の外面が車体の外側に屈曲する箇所において生じ得る。本態様の車両において、このような箇所が特定部位に包含される。特定部位としては、例えば、車体の左右両側において車幅が狭くなるように屈曲する箇所、ボンネット又はルーフにおいて高さが低くなるように屈曲する箇所、車体下面に露出する部分(例えばアンダーカバー)において車体下面が車両の後方に向けて次第に低くなっている箇所から水平に変化するように屈曲する箇所、車体下面が車両の後方に向けて水平である箇所から次第に高くなっている箇所、及び車体の外部に部分的に突出している又は段差を有する箇所を挙げることができる。
【0021】
本発明の各態様において、「除電器」は、車体の電荷を除去(すなわち除電)し得る部材を意味する。本態様の車両において、除電器は、特定部位に配置されることによって除電効果を発現し得る。本態様の車両の種々の実施形態における除電効果を示す模式図を
図1~3にそれぞれ示す。
図1~3に示すように、本態様の車両が、走行することを含む外部要因に曝されると、車体10は外部要因による静電気で正に帯電する。走行時に車体10の周囲に流れる正に帯電した空気流aは、特定部位1において、正に帯電した車体10の表面との間の斥力により、正に帯電した車体10の表面に沿った流れから、表面から離れた流れに変化し始める。ここで、特定部位1の表面に、除電器2が配置される。以下において説明するように、除電器2の形状は、特定部位1に基づき適宜選択することができる。除電器2は、外部要因により負の電荷を帯電する。この除電器2の負の電荷は、除電器2が配置された特定部位1の表面及び/若しくは近傍の正の電荷を低下させ、且つ/又は除電器2が配置された特定部位1の表面及び/若しくは近傍を負の電荷に帯電させることができる。また、特定部位1は導電性材料で構成されていることから、負の電荷は車体10の内部へも移動し得る。特定部位1の正味の電荷は、外部要因による静電気で特定部位1に生じた正の電荷と、外部要因による静電気で除電器2に生じた負の電荷との電位差に応じて決定される。例えば、特定部位1に生じた正の電荷が除電器2に生じた負の電荷を上回る場合には、特定部位1の正味の正の電荷を低下させることができる。この場合、車体の表面と空気流との間の斥力が低下し得る。或いは、除電器2に生じた負の電荷が特定部位1に生じた正の電荷を上回る場合には、特定部位1を負の電荷に帯電させることができる。この場合、車体の正面と空気流との間に静電引力(クーロン力)が発生し得る。これにより、車体の表面と空気流との間の斥力を低下させ、且つ/又は車体の正面と空気流との間に静電引力(クーロン力)を発生させて、車体の表面からの空気流の剥離を実質的に抑制し得る。空気流の剥離の抑制により、車両の空力特性(例えば車両のローリング方向、ヨー方向、及び/又はピッチング方向における空力特性)が変化又は低下することを実質的に抑制して、設計上定められた所望の空力特性を発現し得る。それ故、本態様の車両において、除電器を特定部位に配置することにより、車体の表面からの空気流の剥離を実質的に抑制して、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0022】
本態様の車両において、特定部位は、導電性材料で構成される。特定部位の表面抵抗値は、通常は、除電器の表面抵抗値よりも低い値であり、例えば102 Ω未満の範囲であり、特に10-5 Ω未満の範囲である。前記範囲の表面抵抗値を有する導電性材料としては、例えば、鉄、アルミニウム及び銅等の金属、並びにそれらの金属からなる合金等を挙げることができる。本態様の車両において、前記範囲の表面抵抗値を有する導電性材料で構成される特定部位に除電器を配置することにより、除電器による除電効果を介して車体の表面からの空気流の剥離を実質的に抑制して、車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0023】
本態様の車両において、除電器は、前記で説明した外部要因により負の電荷を帯電し得る導電性樹脂で構成される。除電器の表面抵抗値は、102 Ω以上且つ1011 Ω未満の範囲であることが好ましく、104 Ω以上且つ1011 Ω未満の範囲であることがより好ましく、104 Ω以上且つ108 Ω未満の範囲であることがさらに好ましい。前記範囲の表面抵抗値を有する導電性樹脂としては、例えば、カーボン含有フッ素樹脂、カーボン含有ポリエステル、カーボン含有ポリエチレンテレフタレート、カーボン含有ポリ塩化ビニル、カーボン含有ポリプロピレン、カーボン含有天然ゴム(NRゴム)、カーボン含有イソプレンゴム(IRゴム)、カーボン含有ブタジエンゴム(BRゴム)、カーボン含有アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBRゴム)、カーボン含有エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDMゴム)、カーボン含有水素化ニトリルゴム(HNBRゴム)、カーボン含有フッ素ゴム(FKMゴム)、カーボン含有ポリエチレン、カーボン含有メタクリル樹脂、カーボン含有ポリアミド樹脂、カーボン含有ポリカーボネート樹脂、カーボン含有アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、カーボン含有アクリロニトリル、カーボン含有スチレン、カーボン含有ポリスチレン樹脂、カーボン含有アセチルセルロース、カーボン含有変性ポリフェニレンオキサイド、カーボン含有エチレン酢酸ビニルコポリマー、及びカーボン含有アセタール樹脂、並びにそれらの組み合わせを挙げることができ、カーボン含有フッ素樹脂、カーボン含有ポリエステル、カーボン含有ポリエチレンテレフタレート、カーボン含有ポリ塩化ビニル及びカーボン含有ポリプロピレン、並びにそれらの組み合わせが好ましい。フッ素樹脂としては、導電性フッ素樹脂が好ましく、導電性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)がより好ましい。前記で例示した導電性樹脂は、摩擦帯電列において負に帯電する傾向が高い材料であることから、従来技術の除電器で使用されるアルミニウム若しくはニッケルのような導電性金属、又はトルマリンのような鉱物と比較して、より強く負に帯電し得る(特許文献1~4)。それ故、前記範囲の表面抵抗値を有する導電性樹脂で構成される除電器を特定部位に配置した本態様の車両は、除電器による高い除電効果により、従来技術の除電器を配置した車両と比較して、車体の表面からの空気流の剥離を特に抑制して、車両の操縦安定性を顕著に向上させることができる。また、前記で例示した導電性樹脂は、撥水性、耐熱性及び耐久性が高いことから、泥水等の異物の付着を実質的に抑制し、除電効果及びそれに起因する操縦安定性の向上効果を長期間に亘って維持することができる。
【0024】
本態様の車両において、除電器の形状は、それが配置される特定部位の材料及び/又は形状に基づき適宜選択することができる。例えば、特定部位が平滑な表面を有する形状である場合、除電器は、テープ又は塗膜の形状であることが好ましく、テープの形状であることがより好ましい。除電器がテープの形状である場合、除電器は、特定部位の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有することが好ましい。除電器がテープの形状である場合、特定部位の任意の位置に除電器を配置することができる。また、除電器の寸法及び/又は位置を容易に変更することができる。除電器が塗膜の形状である場合、特定部位の表面の少なくとも一部分(例えば、複層塗膜の少なくとも一個の塗膜層)に、前記で例示した絶縁性樹脂で構成される塗膜を有することが好ましい。除電器が塗膜の形状である場合、特定部位及び除電器を一体化させることができる。
【0025】
例えば、
図1に示す実施形態の場合、除電器2は、テープの形状である。本実施形態の場合、除電器2は、粘着剤3を介して特定部位1の平滑な表面に貼付されることができる。粘着剤3は、導電性を有することが好ましい。除電器2の負の電荷は、導電性を有する粘着剤3を介して、除電器2が配置された特定部位1の表面及び/又は近傍に移動することができる。
【0026】
例えば、
図2に示す実施形態の場合、除電器2は、テープの形状である。本実施形態の場合、除電器2は、少なくとも1個の端部が特定部位1の表面に接触するように配置される。例えば、
図2に示すように、除電器2は、少なくとも1個の端部が折曲形状を有することによって、特定部位1の表面に接触するように配置されることが好ましい。除電器2は、粘着剤3を介して特定部位1の平滑な表面に貼付されることができる。本実施形態の場合、除電器2の負の電荷は、除電器2の少なくとも1個の端部と特定部位1の表面との接触部を介して移動することができる。このため、粘着剤3は、導電性を有する必要はない。粘着剤3は、導電性又は絶縁性のいずれであってもよい。
【0027】
例えば、
図3に示す実施形態の場合、除電器2は、塗膜の形状である。本実施形態の場合、除電器2は、特定部位1の表面の少なくとも一部分に配置される。除電器2が塗膜の形状である場合、特定部位1及び除電器2を一体化させることができる。除電器2の負の電荷は、除電器2と特定部位1との間の境界面である接触部を介して、除電器2が配置された特定部位1の表面及び/又は近傍に移動することができる。
【0028】
前記で説明したように、本態様の車両において、除電器は、外部要因により帯電した負の電荷による除電効果を介して、車体の表面と空気流との間の斥力を低下させ、且つ/又は車体の正面と空気流との間に静電引力(クーロン力)を発生させて、車体の表面からの空気流の剥離を実質的に抑制し得る。このため、除電器の寸法は、空気流の流動方向に沿った長さが、流動方向に直交する方向に沿った長さよりも長いことが好ましい。前記の寸法を有する除電器を特定部位に配置することにより、本態様の車両は、除電器による除電効果を介して車体の表面からの空気流の剥離を特に抑制して、車両の操縦安定性を顕著に向上させることができる。
【0029】
本態様の車両において、特定部位及び除電器は、種々の部材に適用することができる。本態様の車両の種々の実施形態を示す概略図を
図4及び5に示す。
図4及び5に示すように、本態様の車両100は、車体10を備える。車体10は、ゴム等の絶縁体材料又は電気伝導率の低い材料により構成される車輪13, 16によって、路面に対して絶縁状態に保持されている。車両100において、特定部位は、ホイールナット14, 17、ホイールナットカバー15, 18、ラジエーター11、エンジン12、トランスミッション19、デファレンシャル20又は排気管21であることが好ましく、ホイールナット14, 17、ホイールナットカバー15, 18又は排気管21であることがより好ましい。前記で例示した特定部位に除電器を配置することにより、本態様の車両は、除電器による除電効果を介して車体の表面からの空気流の剥離を特に抑制して、車両の操縦安定性を顕著に向上させることができる。また、前記で例示した導電性樹脂で構成される除電器を特定部位に配置することにより、泥水等の異物の付着を実質的に抑制し、長期間に亘って操縦安定性を向上することができる。
【0030】
本発明の各態様において、車体の除電効果は、限定するものではないが、例えば、本態様の車両である自動車の試験車両を準備し、非接触表面電位測定器(例えば0.1~5 kVの範囲の正極及び負極の表面電位を測定可能)を用いて、走行中の該試験車両の表面及び/又はタイヤの電位の経時変化を測定し、対照の試験車両の測定結果と比較することにより、定量的に測定することができる。
【0031】
本発明の各態様において、車両の操縦安定性は、「走る、曲がる、止まる」等の車両の基本的な運動性能の中で、主として操舵に関する運動性能の安定性を意味する。車両の操縦安定性は、例えば、車両の運転者が能動的にステアリング操舵をする際の該車両の追従性及び応答性、並びに、車両の運転者が能動的にステアリング操舵をしない際の該車両のコース保持性、及び路面形状又は横風等の外的要因に対する収束性等に基づき定義することができる。本発明の各態様において、車両の操縦安定性は、限定するものではないが、例えば、本態様の車両である自動車の試験車両を準備し、該試験車両の操縦に対する該試験車両の応答性を評価することにより、定量的に測定することができる。前記方法の場合、例えば、試験車両の操縦を、ステアリング操舵角によって、試験車両の挙動の応答性を、車両ヨー角加速度によって、それぞれ測定することができる。ステアリング操舵角は、例えば、車両搭載の舵角センサー又はコントローラー・エリア・ネットワーク(CAN)データロガー等によって測定することができる。また、車両ヨー角加速度は、例えば、ジャイロセンサー等によって測定することができる。或いは、車両の操縦安定性は、限定するものではないが、例えば、本態様の車両である自動車の試験車両を準備し、該試験車両の燃費を評価することにより、定量的に測定することができる。
【0032】
<2. 除電部品>
本発明の別の一態様は、除電部品に関する。
【0033】
本態様の除電部品は、外部要因により負の電荷を帯電し得る導電性樹脂(例えば表面抵抗値が102 Ω以上且つ1011 Ω未満の範囲である導電性樹脂)で構成される除電器と、導電性材料(例えば表面抵抗値が除電器の表面抵抗値よりも低い導電性材料)で構成される特定部位とを有する。除電器及び特定部位は、前記で説明した特徴を有する。本態様の除電部品は、除電器が、カーボン含有フッ素樹脂、カーボン含有ポリエステル、カーボン含有ポリエチレンテレフタレート、カーボン含有ポリ塩化ビニル及びカーボン含有ポリプロピレン、並びにそれらの組み合わせで構成されることが好ましく、導電性フッ素樹脂で構成されることがより好ましく、導電性PTFEで構成されることがさらに好ましい。
【0034】
本態様の除電部品において、除電器は、特定部位の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有するテープの形状であってもよく、特定部位に対して一体化されている塗膜の形状であってもよい。
【0035】
本態様の除電部品において、除電器がテープの形状である場合、除電器は、粘着剤を介して特定部位の平滑な表面に貼付される。本実施形態において、粘着剤は、導電性又は絶縁性のいずれであってもよい。粘着剤が導電性である場合、除電器の負の電荷は、導電性を有する粘着剤を介して、除電器が配置された特定部位の表面及び/若しくは近傍の正の電荷を低下させ、且つ/又は除電器が配置された特定部位の表面及び/若しくは近傍を負の電荷に帯電させることができる。また、本実施形態において、除電器は、少なくとも1個の端部が特定部位の表面に接触するように配置されることができる。例えば、除電器は、少なくとも1個の端部が折曲形状を有することによって、特定部位の表面に接触するように配置されることが好ましい。本実施形態の場合、除電器の少なくとも1個の端部と特定部位の表面との接触部を介して電荷が移動することができるため、粘着剤は、導電性を有する必要はない。粘着剤は、導電性又は絶縁性のいずれであってもよい。
【0036】
本態様の除電部品において、除電器が塗膜の形状である場合、除電器は、特定部位の表面の少なくとも一部分に配置される。除電器が塗膜の形状である場合、特定部位及び除電器を一体化させることができる。除電器の負の電荷は、除電器と特定部位との間の境界面である接触部を介して、除電器が配置された特定部位の表面及び/又は近傍に移動することができる。
【0037】
本態様の除電部品の種々の実施形態を
図6及び7に示す。例えば、
図6に示す実施形態の場合、除電部品500は、ホイールナットである特定部位51と、特定部位51の表面の少なくとも一部分に配置された除電器52とを有する。本実施形態において、除電器52は、特定部位51の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有するテープの形状であってもよく、特定部位51に対して一体化されている塗膜の形状であってもよい。
【0038】
例えば、
図7に示す実施形態の場合、除電部品600は、ホイールナットカバーである特定部位61と、特定部位61の表面の少なくとも一部分に配置された除電器62とを有する。本実施形態において、除電器62は、特定部位61の表面に対向する面の少なくとも一部分に粘着剤を有するテープの形状であってもよく、特定部位61に対して一体化されている塗膜の形状であってもよい。
【0039】
本態様の除電部品は、路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両に適用することができる。本態様の除電部品を適用した車両において、特定部位は、走行時に車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、前記帯電した車体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める部位であって、正に帯電する部位として使用される。本態様の除電部品を車両に適用することにより、除電器による除電効果を介して車体の表面からの空気流の剥離を実質的に抑制して、車両の操縦安定性を顕著に向上させることができる。また、前記で例示した導電性樹脂で構成される本態様の除電部品を車両に適用することにより、泥水等の異物の付着を実質的に抑制し、長期間に亘って車両の操縦安定性を向上することができる。
【0040】
<3. 除電器>
本発明の別の一態様は、除電器に関する。
【0041】
本態様の除電器は、前記で説明した特徴を有する。本態様の除電器は、導電性樹脂で構成されており、カーボン含有フッ素樹脂、カーボン含有ポリエステル、カーボン含有ポリエチレンテレフタレート、カーボン含有ポリ塩化ビニル及びカーボン含有ポリプロピレン、並びにそれらの組み合わせで構成されることが好ましく、導電性フッ素樹脂で構成されることがより好ましく、導電性PTFEで構成されることがさらに好ましい。また、本態様の除電器は、テープ又は塗膜の形状であることが好ましく、テープの形状であることがより好ましい。
【0042】
本態様の除電器は、路面に対して絶縁状態に保持されている車体が、走行することを含む外部要因による静電気で正に帯電する車両において、走行時に前記車体の周囲に流れる正に帯電した空気流が、前記帯電した車体の表面に沿った流れから前記表面から離れた流れに変化し始める、正に帯電する特定部位に適用される。本態様の除電器を車両の特定部位に適用することにより、除電器による除電効果を介して車体の表面からの空気流の剥離を実質的に抑制して、車両の操縦安定性を顕著に向上させることができる。また、前記で例示した絶縁性フッ素樹脂で構成される本態様の除電器を車両の特定部位に配置することにより、泥水等の異物の付着を実質的に抑制し、長期間に亘って車両の操縦安定性を向上することができる。
【0043】
<4. 車両の製造方法>
本発明の別の一態様は、本発明の一態様の車両の製造方法に関する。本態様の方法は、除電器準備工程、及び除電器配置工程を含む。
【0044】
本態様の方法において、除電器準備工程は、前記で説明した特徴を有する除電器を準備することを含む。本工程は、前記で説明した特徴を有する除電器を自ら作製することにより実施してもよく、該除電器を購入等することにより実施してもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。
【0045】
本態様の方法において、除電器配置工程は、前記工程で準備した除電器を、前記で説明した特徴を有する車両の特定部位に配置することを含む。本工程は、除電器の形状に基づき適宜実施することができる。例えば、除電器がテープの形状である場合、本工程は、粘着剤を介して除電器を特定部位の表面に貼付することにより、実施することができる。また、除電器が塗膜の形状である場合、前記で例示した導電性樹脂を含む塗料を特定部位の表面に塗布又は焼付して、該導電性樹脂で構成される塗膜を特定部位の表面に形成することにより、実施することができる。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。
【0046】
<5. 除電部品の製造方法>
本発明の別の一態様は、本発明の一態様の除電部品の製造方法に関する。本態様の方法は、除電器準備工程、特定部位準備工程及び除電器配置工程を含む。
【0047】
本態様の方法において、除電器準備工程は、前記で説明した特徴を有する除電器を準備することを含む。本工程は、前記で説明した特徴を有する除電器を自ら作製することにより実施してもよく、該除電器を購入等することにより実施してもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。
【0048】
本態様の方法において、特定部位準備工程は、前記で説明した特徴を有する特定部位を準備することを含む。本工程は、前記で説明した特徴を有する特定部位を自ら作製することにより実施してもよく、該特定部位を購入等することにより実施してもよい。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。
【0049】
本態様の方法において、除電器配置工程は、前記工程で準備した除電器を、前記工程で準備した特定部位に配置することを含む。本工程は、除電器及び特定部位の形状に基づき適宜実施することができる。例えば、除電器がテープの形状である場合、本工程は、粘着剤を介して除電器を特定部位の表面に貼付することにより、実施することができる。また、除電器が塗膜の形状である場合、前記で例示した導電性樹脂を含む塗料を特定部位の表面に塗布又は焼付して、該導電性樹脂で構成される塗膜を特定部位の表面に形成することにより、実施することができる。いずれの場合も、本工程の実施形態に包含される。
【0050】
<6. 車両の操縦安定性を向上させる方法>
本発明の別の一態様は、車両の操縦安定性を向上させる方法に関する。本態様の方法は、車両の特定部位に除電器を配置する工程を含む。本態様の方法で適用される車両の特定部位及び除電器は、前記で説明した特徴を有する車両の特定部位及び除電器である。
【0051】
本態様の方法を実施することにより、除電器による除電効果を介して車体の表面からの空気流の剥離を特に抑制して、車両の操縦安定性を顕著に向上させることができる。また、前記で例示した絶縁性フッ素樹脂で構成される除電器を特定部位に配置することにより、泥水等の異物の付着を実質的に抑制し、長期間に亘って操縦安定性を向上することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0053】
[A:操縦安定性の測定試験]
実施例A-1として、絶縁性シリコーン粘着剤を有する帯電防止導電性PTFEテープ(表面抵抗値:2.6×105 Ω、13 mm×50 mm)をホイールナットに貼付した試験車両を準備した。テープは、一部を折り曲げてテープの表面をホイールナットの表面に接触させた。比較例A-1として、テープを貼付しない同一車種の試験車両を準備した。比較例A-2として、従来技術の粘着剤を有するアルミニウムテープ(13 mm×50 mm)をホイールナットの同一位置に貼付した同一車種の試験車両を準備した。
【0054】
表1に示す試験条件に基づき、実施例A-1及び比較例A-2の試験車両の走行試験を実施した。比較例A-2の試験車両の官能評価値の向上値は、0.125であったのに対し、実施例A-1の試験車両の官能評価値の向上値は、0.25であった。前記試験結果より、実施例A-1の試験車両は、アルミニウムテープを貼付した比較例A-2の試験車両に対して、操縦安定性が約2倍向上したことが明らかとなった。
【0055】
【0056】
[B:車体の除電効果の測定試験]
実施例B-1として、絶縁性シリコーン粘着剤を有する帯電防止導電性PTFEテープ(表面抵抗値:2.6×105 Ω、13 mm×50 mm)をホイールナットに貼付した試験車両を準備した。テープは、一部を折り曲げてテープの表面をホイールナットの表面に接触させた。比較例B-1として、テープを貼付しない同一車種の試験車両を準備した。
【0057】
実施例B-1及び比較例B-1の試験車両を、発進から約100 km/hの速度で暖機運転した後、約45、70又は100 km/hの速度で走行させた。走行中、非接触表面電位測定器(0.1~5 kVの範囲の正極及び負極の表面電位を測定可能)を用いて、フロントフェンダーライナーの電位を測定した。フェンダーライナー電位の経時変化を
図8に示す。図中、(a)は比較例B-1の試験車両の測定結果を、(b)は実施例B-1の試験車両の測定結果を、それぞれ示す。横軸は経過時間(秒)であり、縦軸は電位(kV)である。
【0058】
図8に示すように、比較例B-1の試験車両の場合、+0.50~+1 kVの範囲で電位が変動した。これに対し、実施例B-1の試験車両の場合、0~+0.5 kVの範囲で電位が変動した。前記結果から、実施例B-1の試験車両は、車体の正の電荷が低下することが明らかとなった。
【符号の説明】
【0059】
100…車両、a…空気流、1…特定部位、2…除電器、3…粘着剤、10…車体、11…ラジエーター、12…エンジン、13…車輪(前輪)、14…ホイールナット、15…ホイールナットカバー、16…車輪(後輪)、17…ホイールナット、18…ホイールナットカバー、19…トランスミッション、20…デファレンシャル、21…排気管、500…除電部品、51…ホイールナット、52…除電器、600…除電部品、61…ホイールナットカバー、62…除電器