(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】頭部保護エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/213 20110101AFI20231017BHJP
【FI】
B60R21/213
(21)【出願番号】P 2020154699
(22)【出願日】2020-09-15
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 潤
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-074867(JP,A)
【文献】特開2017-114440(JP,A)
【文献】特開2018-008663(JP,A)
【文献】特開2004-196262(JP,A)
【文献】特開2004-182144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/213
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開膨張時に車両の窓を覆う構成とされて前記窓の車内側における上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグと、該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、該インフレーターを窓の上縁側におけるボディ側に取り付ける取付ブラケットと、を備え、
前記インフレーターが、外形形状を、軸方向を前後方向に略沿わせるようにして配置される略円柱状として構成され、
前記取付ブラケットが、板金製とされて、
前記インフレーターの外周面に略沿うように、断面略円弧状に湾曲して形成され、前記インフレーターの外周面を部分的に覆うように配置されて、前記インフレーターの外周側における周方向の全周をくるむように配置される連結手段を用いて、前記インフレーターを保持可能に構成される保持部と、
該保持部における車外側の端縁から延びるように形成されて、取付手段を用いて前記ボディ側に取り付けられる取付片部と、
を備える構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
前記保持部が、車両搭載状態において、前記インフレーターの下面側を覆って支持するように配設され
、
前記取付片部が、前記取付手段を組み付ける組付位置を、車両搭載状態において、前記インフレーターの下面側よりも下方に位置させるように、構成され、
前記保持部から前記取付片部にかけて、部分的に前記インフレーターから離れた側に突出する突状部が、前記保持部と前記取付片部との境界部位を跨ぐように、連続的に形成されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記取付片部が、略平板状とされるとともに、車両搭載状態において、該取付片部に略沿って延びる延長線を、前記保持部に支持される前記インフレーターの中心よりも下方となる位置に配置させるように、構成されていることを特徴とする
請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグにおいて、前記インフレーターに接続されて内部に膨張用ガスを流入させるための流入口部が、前後の中間部位における上縁側から突出するように、形成されていることを特徴とする
請求項1または2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項4】
前記取付片部が、前記突状部の前側と後側となる位置において、前記取付手段を用いて前記ボディ側に取り付けられる構成であることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開膨張時に車両の窓を覆う構成とされて窓の車内側における上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、インフレーターを窓の上縁側におけるボディ側に取り付ける取付ブラケットと、を備える構成の頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、頭部保護エアバッグ装置としては、インフレーターをボディ側に取り付ける取付ブラケットとして、別体の連結手段を用いてインフレーターを保持する保持部と、取付手段を用いてボディ側に取り付けられる取付片部と、を備える構成のものがあった。この従来の頭部保護エアバッグ装置では、保持部は、インフレーターの外周面に略沿うように湾曲して、車両搭載時に、インフレーターの上面側を覆うように形成されるもので、インフレーターとともに外周側をくるむように配置される連結手段を用いて、インフレーターを保持する構成であり、取付片部は、保持部の車外側の端縁から延びるように、構成されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
頭部保護エアバッグ装置においては、エアバッグの展開膨張時に、内部に膨張用ガスを流入させて窓の上縁側から下方に向かって突出するように展開するエアバッグによって、インフレーターが、下方に引っ張られるような力を受けることとなるが、従来の頭部保護エアバッグ装置では、取付ブラケットの保持部が、インフレーターの上面側を覆うように配設されて、周囲に配置される連結手段を用いてインフレーターを保持する構成であることから、取付ブラケットが、エアバッグの展開方向に対してインフレーターを直接的に支持することができず、取付ブラケットにおけるインフレーター保持の安定性に関して、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、取付ブラケットにより、インフレーターを安定して保持可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、展開膨張時に車両の窓を覆う構成とされて窓の車内側における上縁側に折り畳まれて収納されるエアバッグと、エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、インフレーターを窓の上縁側におけるボディ側に取り付ける取付ブラケットと、を備え、
インフレーターが、外形形状を、軸方向を前後方向に略沿わせるようにして配置される略円柱状として構成され、
取付ブラケットが、板金製とされて、
インフレーターの外周面に略沿うように、断面略円弧状に湾曲して形成され、インフレーターの外周面を部分的に覆うように配置されて、インフレーターの外周側における周方向の全周をくるむように配置される連結手段を用いて、インフレーターを保持可能に構成される保持部と、
保持部における車外側の端縁から延びるように形成されて、取付手段を用いてボディ側に取り付けられる取付片部と、
を備える構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
保持部が、車両搭載状態において、インフレーターの下面側を覆って支持するように配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、インフレーターを車両のボディ側に取り付ける取付ブラケットにおいて、インフレーターの外周面を部分的に覆う保持部が、車両搭載状態において、インフレーターの下面側を覆うように配設されていることから、保持部によって、インフレーターの下面側を直接的に支持させることができて、エアバッグの展開方向に沿うような力を受けることとなっても、取付ブラケットを、その力に対して的確に対抗させることができる。そのため、取付ブラケットとして、インフレーター保持に必要な強度を、安定して確保することができる。
【0008】
したがって、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、取付ブラケットにより、インフレーターを安定して保持することができる。
【0009】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置において、取付片部における取付手段を組み付ける組付位置を、車両搭載状態において、インフレーターの下面側よりも下方に位置させるように、構成すれば、取付片部は、保持部から下方に延びるように形成されて、保持部よりも下方となる位置で、ボディ側に取り付けられることから、取付片部を保持部から車外側に向かって突出させるように配設させる場合と比較して、車両搭載状態における取付ブラケットの車幅方向(左右方向)側での幅寸法を小さく設定することができて、好ましい。
【0010】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、取付片部を、略平板状とするとともに、車両搭載状態において、取付片部に略沿って延びる延長線を保持部に支持されるインフレーターの中心よりも下方となる位置に配置させるように、構成すれば、取付ブラケットにおいて、保持部における車外側の縁部(取付片部との境界部位)を、相対的に下側に位置させることができ、換言すれば、保持部の大型化を抑制できることから、取付ブラケットを、嵩張ることを抑制してコンパクト化することができて、好ましい。
【0011】
さらにまた、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグにおけるインフレーターに接続されて内部に膨張用ガスを流入させるための流入口部を、前後の中間部位における上縁側から突出させるように、形成する構成とすれば、展開膨張時に、下方に向かって大きく突出するように展開するエアバッグの前後の中間部位近傍に、インフレーターが配置されることとなるが、インフレーターは、エアバッグの突出方向側となる車内側下面側を取付ブラケットの保持部によって覆われることから、インフレーターが、膨張するエアバッグに伴って車内側下方に向かうような大きな引張力を受けることとなっても、このような引張力に対抗することができて、保持部によってインフレーターを安定して保持させることができ、エアバッグを、迅速に膨張完了させることが可能となって、好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。
【
図2】実施形態の頭部保護エアバッグ装置の車両搭載状態の縦断面図であり、
図1のII-II部位に対応する。
【
図3】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において使用される取付ブラケットの概略斜視図である。
【
図4】
図3の取付ブラケットとインフレーターとを示す概略正面図である。
【
図5】取付ブラケットとインフレーターとの概略部分端面図であり、
図4のV-V部位に対応する。
【
図6】取付ブラケットとインフレーターとの概略部分端面図であり、
図4のVI-VI部位に対応する。
【
図7】取付ブラケットとインフレーターとの概略部分端面図であり、
図4のVII-VII部位に対応する。
【
図8】
図3の取付ブラケットの前後方向に沿った概略端面図である。
【
図9】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1に示すように、膨張完了時に、車両Vの窓(サイドウィンド)W1,W2の車内側を覆い可能に、エアバッグ35を、窓W1,W2の上縁側の周縁、すなわち、フロントピラー部FPからルーフサイドレール部RRを経てリヤピラー部RPの上方付近までの範囲に、折り畳んで収納させている。なお、実施形態の場合、車両Vは、フロントピラー部FPとリヤピラー部RPとの間に、上下方向に略沿うようにして1つの中間ピラー部CPを配設させる構成とされている。そして、膨張完了時のエアバッグ35(後述するバッグ本体36)は、
図1の二点鎖線に示すように、窓W1,W2とともに、中間ピラー部CPに配置される中間ピラーガーニッシュ7や、リヤピラー部RPに配置されるリヤピラーガーニッシュ8の一部の車内側も、覆うように構成されている。
【0014】
頭部保護エアバッグ装置Mは、
図1,2に示すように、エアバッグ35、エアバッグ35に膨張用ガスを供給するインフレーター12、取付ブラケット17,30、ボルト(取付手段)28,32、クランプ27(連結手段)、及び、折り畳まれたエアバッグ35(折り完了体45)を収納するケース50を、備えて構成されている。折り畳まれたエアバッグ35、インフレーター12、及び、ケース50は、取付ブラケット17,30を含めて、車両Vへの搭載時に、車内側Iをエアバッグカバー10に覆われて収納されている(
図1,2参照)。エアバッグカバー10は、実施形態の場合、フロントピラー部FPの車内側を覆うフロントピラーガーニッシュ5の下縁5aと、ルーフサイドレール部RRの車内側を覆うルーフヘッドライニング6の下縁6aと、から構成されている。
【0015】
フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6とは、中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8とともに、合成樹脂製として、図示しない取付手段によって、フロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRにおけるボディ1側の部材であるインナパネル2の車内側Iに、取り付けられている。そして、フロントピラーガーニッシュ5とルーフヘッドライニング6との下縁5a,6aから構成されるエアバッグカバー10は、展開膨張時のエアバッグ35を突出可能に、エアバッグ35に押されて、下縁5a,6aを車内側Iに開くように、構成されている(
図1,2,9参照)。
【0016】
インフレーター12は、エアバッグ35に膨張用ガスを供給するもので、
図1,2,4に示すように、外形形状を、軸方向を前後方向に略沿わせるようにして配置される略円柱状として構成されている。実施形態の場合、インフレーター12は、
図1に示すように、エアバッグ35(折り完了体45)における前後方向の中央付近の上方の領域である窓W2の上方の領域に、配設されている。インフレーター12は、
図4に示すように、略円柱状の本体部13と、本体部13の前後方向の一端側に配置されるガス吐出口部14と、本体部13の軸方向の他端側に配置される接続口部15と、を備える。ガス吐出口部14は、実施形態の場合、本体部13の前端13a側に配置されるもので、本体部13より小径として、膨張用ガスを吐出可能に開口したガス吐出口(図符号省略)を、多数配設させている。本体部13の他端側である後端13b側に配設される接続口部15は、作動信号入力用のリード線を結線させた図示しないコネクタを接続させるためのものである。実施形態では、インフレーター12は、本体部13の前端13a側(ガス吐出口14部側)を、エアバッグ35の後述する流入口部38に挿入させ、本体部13の後端13b側(接続口部15側)を流入口部38から突出させるようにして、流入口部38の後端38a側の外周側に配置されるクランプ27(27F)(連結部材)を利用して、エアバッグ35に対して連結される構成である(
図4参照)。インフレーター12は、取付ブラケット17と、連結部材としてのクランプ27(27F,27B)と、取付ブラケット17をボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト(取付手段)28と、を利用して、インナパネル2に取り付けられている。
【0017】
取付ブラケット17は、板金製として、
図2,4~7に示すように、インフレーター12の車内側Iを覆うように、配置される構成である。実施形態の場合、取付ブラケット17は、板金素材をプレス加工して形成されるもので、具体的には、
図3,4に示すように、インフレーター12における本体部13を保持する保持部18と、保持部18から延びてボディ1側のインナパネル2に取り付けられる取付片部23と、を備えている。
【0018】
保持部18は、
図3に示すように、本体部13における前後両端側を除く領域に配置されるように、前後方向に略沿った長尺状として構成されるもので、本体部13の外周面に略沿うように、断面略円弧状に湾曲して形成されて、本体部13の外周面を部分的に覆うように配置されている(
図2参照)。保持部18は、取付片部23を連ならせるように構成される本体部19と、本体部19から前方に延びる前端側部位20と、本体部19から後方に延びる後端側部位21と、を備える構成とされている。本体部19は、実施形態の場合、車両搭載状態におけるインフレーター12の軸直交方向側の断面において、インフレーター12における本体部13の下面側を、1/3程度覆うように、構成されており、後述する突状部25の部位を除いて、内周面側の支持面19bにより、インフレーター12における本体部13の下面側を支持可能な構成とされている(
図2,6参照)。詳細に説明すれば、本体部19は、車両搭載状態において、本体部13の外周面13cにおける最も下側に位置する下端点13caの下側を覆い、この下端点13caから車内外(車幅方向両側)に延びるように、形成されている(
図2参照)。前端側部位20は、上側の部位を切り欠かれるようにして本体部19よりも上下に狭幅として、形成され、後端側部位21は、本体部19に対して拡径して、形成されている(
図3~5,7,8参照)。この保持部18は、インフレーター12の外周側における周方向の全周をくるむように配置される連結手段としてのクランプ27(27F,27B)を用いて、インフレーター12を保持可能に構成されている。クランプ27(27F,27B)は、板金製とされて、実施形態の場合、
図4,6の二点鎖線に示すように、前端側部位20の領域と後端側部位21の領域とに、それぞれ、1個ずつ、配置されている。各クランプ27(27F,27B)は、
図5,7に示すように、インフレーター12における本体部13と保持部18との周囲を覆う帯状のベルト部27aと、ベルト部27aを縮径可能な縮径部27bと、を有し、ベルト部27aによって、本体部13と保持部18(前端側部位20及び後端側部位21におけるクランプ組付部20c,21b)との周囲を、略隙間なく覆い可能に、構成されている。
【0019】
前端側部位20は、インフレーター12とともに、エアバッグ35の流入口部38内に挿入される部位であり、前側に配置されるクランプ27Fは、エアバッグ35における流入口部38の外周側に配置されて、流入口部38とインフレーター12とを接続させると同時に、インフレーター12を取付ブラケット17に取り付けることとなる(
図5参照)。詳細には、前端側部位20は、先端側に、段差を設けるように拡径される拡径部20aを、有する構成とされており、この拡径部20aよりも元部側(本体部19側)となる元部側部位20bの外周側に、クランプ27Fを巻き付ける構成とされている(
図4,5,8参照)。前端側部位20において、クランプ27Fを巻き付けられるクランプ組付部20cの部位では、
図5に示すように、インフレーター12の本体部13は、下面側を、支持面20dによって支持され、下面側以外の領域を、流入口部38を介在された状態で、クランプ27Fにおけるベルト部27aの内周面27cに支持されることとなる。拡径部20aは、エアバッグ35の流入口部38を介在させて巻き付けられるクランプ27Fの抜け止めのために、形成されている。
【0020】
後端側部位21は、上述したごとく、本体部19に対して拡径して形成されていることから、後端側部位21の領域に配置されるクランプ27Bは、後端側部位21とインフレーター12の本体部13との間に隙間を設けられた状態で、本体部13を保持させる構成である(
図7,8参照)。すなわち、後端側部位21において、クランプ27Bを巻き付けられるクランプ組付部21bの部位では、インフレーター12の本体部13は、下面側とクランプ組付部21bとの間に隙間を設けられるものの、下面以外の領域を、クランプ27Bにおけるベルト部27aの内周面27cに支持されることとなる(
図7参照)。後端側部位21は、先端側における両縁側に、周方向に沿って突出する突出部21a,21aを、有している(
図3,4参照)。この突出部21aは、クランプ27Bの抜け止めのために、形成されている。
【0021】
取付片部23は、実施形態の場合、車両搭載状態において、保持部18における本体部19の外縁19aから車外側下方に向かって延びるような平板状として形成されるもので、前後方向側の幅寸法を、保持部18における本体部19の前後方向側の幅寸法と略一致させて構成されている(
図3,4参照)。具体的には、取付片部23は、インフレーター12における本体部13の下面側を覆っている本体部19の外縁19aから延びるように形成されるもので、
図2に示すように、車両搭載状態において、取付片部23に略沿って延びる延長線L1(詳細には、取付片部23における車外側Oの面に沿って延びる延長線)を、インフレーター12(本体部13)の中心Cよりも下方となる位置に配置させるように、構成されている。取付片部23には、前後方向に沿った2箇所に、ボディ1側のインナパネル2に固定するためのボルト(取付手段)28を挿通可能な挿通孔23aが、形成されている。
すなわち、各挿通孔23aは、後述する突状部25の前側と後側とに、形成されている(図3,4参照)。この挿通孔23a(ボルト28を組み付ける組付位置)は、車両搭載状態において、インフレーター12(本体部13)の外周面13c(外周面13cにおける下端点13ca)よりも下方となる位置に、形成されている(
図2参照)。また、取付片部23における前後両縁側には、詳細な図示を省略するが、インナパネル2側に形成される係止孔周縁に係止されて取付ブラケット17の位置を仮固定可能な係止爪部23b,23bが、インナパネル2側となる車外側Oに向かって突出するように、形成されている(
図3,4参照)。また、実施形態の取付ブラケット17において、保持部18における本体部19の前後の略中央から取付片部23における前後の略中央にかけての領域には、部分的に内周側(車内側Iであってインフレーター12から離れた側)に突出する補強用の突状部25が、上下方向に略沿って連続的に、形成されている(
図3,4,8参照)。突状部25は、具体的には、保持部18と取付片部23との境界部位を含めて、保持部18の上端側から取付片部23の下端側にかけて、連続的に、断面略U字形状に形成されている。
【0022】
各取付ブラケット30は、エアバッグ35の上縁側に形成される各取付部39を、ボディ1側に取り付けるためのものである。各取付ブラケット30は、詳細な図示は省略するが、2枚の板金製のプレートから構成されて、各取付部39を表裏から挟むようにして各取付部39に取り付けられ、ボルト32を利用して、各取付部39を、ボディ1側のインナパネル2に取付固定している(
図1参照)。
【0023】
エアバッグ35は、窓W1,W2の上縁側に折り畳まれて収納された状態から、
図1の二点鎖線に示すように、インフレーター12からの膨張用ガスを流入させて、窓W1,W2や、中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPにおける中間ピラーガーニッシュ7,リヤピラーガーニッシュ8の車内側を覆うように、展開膨張する構成とされている。エアバッグ35は、窓W1,W2の車内側を覆うように膨張するバッグ本体36(
図1の二点鎖線参照)と、バッグ本体36の上縁側をボディ1側のインナパネル2に取り付ける取付部39と、バッグ本体36内に膨張用ガスを流入させるための流入口部38と、を備えている(
図1参照)。取付部39は、前後方向に沿って複数個(実施形態の場合、6個)形成されている。流入口部38は、バッグ本体36の前後の中間部位における上縁側から上方に突出するように形成されるもので、詳細には、バッグ本体36の前後の略中央となる位置に、形成されている。流入口部38は、内部にインフレーター12を挿入可能に、後端38a側を開口させて構成されている。実施形態の場合、エアバッグ35は、バッグ本体36を、下縁側を上縁側に接近させるように折り畳んで、前後方向に沿った長尺状の折り完了体45の状態で、窓W1,W2の上縁側に収納される。実施形態では、バッグ本体36は、
図2に示すように、上縁側の部位を蛇腹折りされ、下側の領域を、下縁側から車外側Oに向かって巻くようなロール折りにより、折り畳まれている。また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、折り完了体45は、詳細な説明は省略するが、部分的に、合成樹脂製のケース50に収納された状態で、車両Vに搭載されている。
【0024】
次に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。まず、エアバッグ35におけるバッグ本体36を折り畳み、折り完了体45を形成する。その後、折り完了体45の周囲の所定箇所を、破断可能なラッピング材により、くるんでおく。次いで、折り完了体45から突出している各取付部39に取付ブラケット30を取り付け、流入口部38に、クランプ27Fを使用して、周囲に取付ブラケット17の保持部18を配置させたインフレーター12を接続させる。このとき、クランプ27F,27Bを用いて、インフレーター12を取付ブラケット17の保持部18に保持させる。その後、折り完了体45をケース50に収納させて、エアバッグ組付体を形成する。そして、取付ブラケット17,30を、ボディ1側のインナパネル2の所定位置に配置させて、ボルト28,32止めし、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を、インフレーター12の接続口部15に結線し、フロントピラーガーニッシュ5やルーフヘッドライニング6をボディ1側のインナパネル2に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ7,8をボディ1側のインナパネル2に取り付ければ、頭部保護エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0025】
頭部保護エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、図示しない制御装置からの作動信号を受けてインフレーター12が作動されれば、インフレーター12から吐出される膨張用ガスがエアバッグ内に流入して、膨張するバッグ本体31が、エアバッグカバー10を押し開いて下方へ突出しつつ展開し、
図1の二点鎖線及び
図9に示すように、窓W1,W2や中間ピラー部CP及びリヤピラー部RPの車内側を覆うように、膨張を完了させることとなる。
【0026】
そして、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、インフレーター12を車両Vのボディ1側に取り付ける取付ブラケット17において、インフレーター12(本体部13)の外周面13cを部分的に覆う保持部18(本体部19)が、車両搭載状態において、インフレーター12の下面側を覆うように配設されていることから、保持部18によって、インフレーター12の下面側を直接的に支持させることができて、エアバッグ35の展開方向に沿うような力を受けることとなっても、取付ブラケット17を、その力に対して的確に対抗させることができる。そのため、取付ブラケット17として、インフレーター保持に必要な強度を、安定して確保することができる。
【0027】
したがって、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、取付ブラケット17により、インフレーター12を安定して保持することができる。
【0028】
実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、連結手段としてのクランプ27(27F,27B)を、インフレーター12の本体部13の外周側における周方向の全周をくるむように配置させることにより、保持部18によって、インフレーター12を保持させる構成であるが、取付ブラケット17自体によって、インフレーター12の下面側を支持させる構成であり、クランプ27自体によってインフレーター12を保持させる構成ではないことから、クランプ27として、クランプ自体によってインフレーター12を保持可能とするように強度を増大させたものを使用しなくともよい。
【0029】
特に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、取付ブラケット17の前後の中央付近に、保持部18における本体部19から取付片部23にかけて、部分的に車内側(インフレーター12から離れた側)に突出する補強用の突状部25が、連続的に、形成される構成であり、すなわち、本体部19から取付片部23へ、これらの境界部位を跨ぐように、上下方向に略沿って内周側に向かって部分的に断面U字形状に突出するリブ状の部位が、形成される構成である。そのため、エアバッグ35の展開膨張時に、インフレーター12の本体部13を支持している本体部19と取付片部23との境界部位付近を圧縮させるような力が作用することとなっても、この内周側に向かって部分的に突出するリブ状の部位により、このような力に対抗させることができて、十分な強度を確保することができる。
【0030】
また、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、取付片部23における取付手段としてのボルト28を組み付ける組付位置(挿通孔23a)が、車両搭載状態において、インフレーター12の下面側(外周面13cにおける下端点13ca)よりも下方に位置させるように、構成される構成であり、換言すれば、取付片部23は、保持部18から下方に延びるように形成されて、保持部18よりも下方となる位置で、ボディ1側に取り付けられることから、取付片部を保持部から車外側に向かって突出させるように配設させる場合と比較して、車両搭載状態における取付ブラケット17の車幅方向(左右方向)側での幅寸法を小さく設定することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、取付片部を、インフレーターの外周面の下端点よりも車外側となる位置において、保持部から車外側に向かって延びるように配設させるように、構成してもよい。
【0031】
さらに、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、取付片部23が、略平板状とされるとともに、車両搭載状態において、取付片部23に略沿って車内側Iへ延びる延長線L1を、保持部18に支持されるインフレーター12(本体部13)の中心Cよりも下方となる位置に配置される構成であることから、取付ブラケット17において、保持部18(本体部19)における車外側の縁部(外縁19a、取付片部23との境界部位)を、相対的に下側に位置させることができ、換言すれば、保持部18(本体部19)の大型化を抑制できて、取付ブラケット17を、嵩張ることを抑制してコンパクト化することができる。特に、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、保持部18における本体部19は、インフレーター12の軸直交方向側の断面において、インフレーター12における本体部13の下側の領域の外周面13cを、下端点13caを跨ぐようにして1/3程度のみ覆うように構成されており、極力コンパクトな構成とされている。そのため、取付ブラケット17が大型化することを抑制でき、窓W1,W2の上縁側の狭い収納スペースにも、円滑に収納させることができて、また、装置自体の重量増大も抑制することができる。勿論、このような点を考慮しなければ、取付片部を、取付片部に略沿って延びる延長線をインフレーターの中心よりも上方となる位置に、配置させるように構成してもよい。
【0032】
さらにまた、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、エアバッグ35において、インフレーター12に接続されて内部に膨張用ガスを流入させるための流入口部38が、バッグ本体36の前後の中間部位における上縁側から突出させるように、形成されていることから、展開膨張時に、下方に向かって大きく突出するように展開するエアバッグ35の前後の中間部位近傍に、インフレーター12が配置されることとなる(
図1参照)。しかしながら、インフレーター12は、
図9に示すように、エアバッグ35の突出方向側となる車内側下面側を取付ブラケット17の保持部18(本体部19)によって覆われることから、インフレーター12が、膨張するエアバッグ35に伴って車内側下方に向かうような大きな引張力Fを受けることとなっても、このような引張力Fに対抗することができて、保持部18によってインフレーター12を安定して保持させることができ、エアバッグ35を、迅速に膨張完了させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、インフレーターを、エアバッグにおける膨張完了時の前端側若しくは後端側に配置させるように、流入口部を、エアバッグの前端側若しくは後端側に配設させる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1…ボディ、2…インナパネル、12…インフレーター、13…本体部、13c…外周面、17…取付ブラケット、18…保持部、19…本体部、19a…外縁、23…取付片部、23a…挿通孔、27(27F,27B)…クランプ(連結手段)、28…ボルト(取付手段)、35…エアバッグ、38…流入口部、W1,W2…窓、V…車両、M…頭部保護エアバッグ装置。