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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】処理装置、処理システム及び処理方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/04 20060101AFI20231017BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20231017BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B60R16/04 W
B60R16/03 A
H01M10/48 P
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020169222
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061302
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】後呂 翔太
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-144441(JP,A)
【文献】特開2010-254069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/04
B60R 16/03
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を
実行する処理装置であって、
処理を実行する処理部を備え、
所定の条件が満たされた場合に前記処理部が実行する複数の処理それぞれは、前記第2
蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、
前記処理部は、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定
し、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第
2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行し、
前記第2蓄電器の劣化は、満充電の場合における前記第2蓄電器の電力量の低下である
処理装置。
【請求項2】
前記複数の処理それぞれは前記車両が物体に衝突した場合に実行され、
前記処理部は、前記車両が物体に衝突した場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断した
か否かを判定する
請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記第2蓄電器の劣化は、前記第2蓄電器の容量の低下である
請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
揮発性の一時記憶部と、
不揮発性の記憶部と
を備え、
前記複数の処理中の少なくとも1つでは、前記処理部は、前記一時記憶部に記憶されて
いるデータを前記記憶部に書き込む
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項5】
クロック信号を出力するクロック出力部を備え、
前記処理部は、前記クロック出力部が出力したクロック信号に同期して処理を実行し、
前記複数の処理中の少なくとも1つでは、前記処理部は、クロック信号の出力を停止さ
せる
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記複数の処理それぞれでは、前記処理部は、前記車両のドアの解錠を指示する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の処理装置。
【請求項7】
車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を
実行する第1処理装置及び第2処理装置を備え、
前記第1処理装置及び第2処理装置それぞれは、処理を実行する第1処理部及び第2処
理部を有し、
第1処理部は、前記第2処理部の指示に従って処理を実行し、
所定の条件が満たされた場合に前記第1処理部が実行する複数の第1処理それぞれは、
前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第2処理部が実行する複数の第2処理それぞれ
は、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、
前記第1処理部は、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定
し、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第1処理の中で、前
記第2蓄電器の劣化度合に対応する第1処理を実行し、
前記第2処理部は、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定
し、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第2処理の中で、前
記第2蓄電器の劣化度合に対応する第2処理を実行し、
前記第2蓄電器の劣化は、満充電の場合における前記第2蓄電器の電力量の低下である
処理システム。
【請求項8】
前記第1蓄電器の電力供給が中断した後に前記第1処理装置及び第2処理装置が消費す
る電力の合計値は、前記第2蓄電器の劣化度合が大きい程、小さい
請求項7に記載の処理システム。
【請求項9】
第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する処理方法
であって、
所定の条件が満たされた場合に実行される複数の処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣
化度合に対応付けて予め決められており、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定するステップと、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第
2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行するステップと
をコンピュータが実行し、
前記第2蓄電器の劣化は、満充電の場合における前記第2蓄電器の電力量の低下である
処理方法。
【請求項10】
車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する処理装置であって、
処理を実行する処理部を備え、
所定の条件が満たされた場合に前記処理部が実行する複数の処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、
前記処理部は、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定し、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行し、
前記第2蓄電器はキャパシタであり、
前記第2蓄電器の劣化は、前記第2蓄電器の静電容量の低下である
処理装置。
【請求項11】
車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を
実行する第1処理装置及び第2処理装置を備え、
前記第1処理装置及び第2処理装置それぞれは、処理を実行する第1処理部及び第2処
理部を有し、
第1処理部は、前記第2処理部の指示に従って処理を実行し、
所定の条件が満たされた場合に前記第1処理部が実行する複数の第1処理それぞれは、
前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第2処理部が実行する複数の第2処理それぞれ
は、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、
前記第1処理部は、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定
し、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第1処理の中で、前
記第2蓄電器の劣化度合に対応する第1処理を実行し、
前記第2処理部は、
前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定
し、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第2処理の中で、前
記第2蓄電器の劣化度合に対応する第2処理を実行し、
前記第2蓄電器はキャパシタであり、
前記第2蓄電器の劣化は、満充電の場合における前記第2蓄電器の電力量の低下である
処理システム。
【請求項12】
第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する処理方法
であって、
所定の条件が満たされた場合に実行される複数の処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣
化度合に対応付けて予め決められており、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定するステップと、
前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第
2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行するステップと
をコンピュータが実行し、
前記第2蓄電器はキャパシタであり、
前記第2蓄電器の劣化は、満充電の場合における前記第2蓄電器の電力量の低下である
処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置、処理システム及び処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、処理を実行する複数の処理装置(特許文献1を参照)が搭載されている。特許文献1では、処理装置はECU(Electronic Control Unit)である。蓄電器として機能するメインバッテリ及びサブバッテリの一方から複数の処理装置に電力が供給される。メインバッテリから複数の処理装置への電力供給が停止した場合、サブバッテリが複数の処理装置に電力を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/104957号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
所定の条件が満たされた場合、例えば、車両が物体に衝突した場合に複数の処理装置全体が実行すべき車両処理が予め決められている。各処理装置が車両処理の一部を実行する。所定の条件が満たされた場合において、メインバッテリの電力供給が中断しているとき、複数の処理装置それぞれは、サブバッテリから供給される電力を用いて車両処理の一部を実行する。
【0005】
サブバッテリの劣化度合が大きい状態、例えば、サブバッテリの容量が大きく低下している状態で所定の条件が満たされ、かつ、メインバッテリの電力供給が中断している場合、複数の処理装置は、車両処理の全てを実行することができない可能性がある。結果、複数の処理装置は、車両処理の中で優先度が高い処理を実行しない可能性がある。
【0006】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、所定の条件が満たされた場合に優先度が高い処理が適切に実行される構成を実現することができる処理装置、処理システム及び処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る処理装置は、車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する処理装置であって、処理を実行する処理部を備え、所定の条件が満たされた場合に前記処理部が実行する複数の処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記処理部は、前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定し、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行する。
【0008】
本開示の一態様に係る処理システムは、車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する第1処理装置及び第2処理装置を備え、前記第1処理装置及び第2処理装置それぞれは、処理を実行する第1処理部及び第2処理部を有し、第1処理部は、前記第2処理部の指示に従って処理を実行し、所定の条件が満たされた場合に前記第1処理部が実行する複数の第1処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記所定の条件が満たされた場合に前記第2処理部が実行する複数の第2処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記第1処理部は、前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定し、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第1処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する第1処理を実行し、前記第2処理部は、前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定し、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第2処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する第2処理を実行する。
【0009】
本開示の一態様に係る処理方法は、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する処理方法であって、所定の条件が満たされた場合に実行される複数の処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定するステップと、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行するステップとをコンピュータが実行する。
【0010】
なお、本開示を、このような特徴的な処理部を備える処理装置として実現することができるだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする処理方法として実現したり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。また、本開示を、処理装置の一部又は全部を実現する半導体集積回路として実現したり、処理装置を含む処理システムとして実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0011】
上記の態様によれば、所定の条件が満たされた場合に優先度が高い処理が適切に実行される構成を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態における処理システムの要部構成を示すブロック図である。
図2】統合ECU及び個別ECUへの電力供給の説明図である。
図3】劣化度合と劣化レベルとの関係の説明図である。
図4】車両内における構成部の配置の説明図である。
図5】個別ECUの要部構成を示すブロック図である。
図6】統合ECUの要部構成を示すブロック図である。
図7】車両データの送信及び書き込みの手順を示すフローチャートである。
図8】劣化レベルの更新の手順を示すフローチャートである。
図9】緊急処理の選択の手順を示すフローチャートである。
図10】劣化レベル1の緊急処理の手順を示すフローチャートである。
図11】劣化レベル2の緊急処理の手順を示すフローチャートである。
図12】劣化レベル3の緊急処理の手順を示すフローチャートである。
図13】劣化レベル4の緊急処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列挙して説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
(1)本開示の一態様に係る処理装置は、車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する処理装置であって、処理を実行する処理部を備え、所定の条件が満たされた場合に前記処理部が実行する複数の処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記処理部は、前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定し、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行する。
【0015】
上記の態様にあっては、処理部は、第1蓄電器の電力供給が中断した場合、第2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行する。このため、所定の条件が満たされた場合に優先度が高い処理が適切に実行される構成を実現することができる。
【0016】
(2)本開示の一態様に係る処理装置では、前記複数の処理それぞれは前記車両が物体に衝突した場合に実行され、前記処理部は、前記車両が物体に衝突した場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定する。
【0017】
上記の態様にあっては、所定の条件は車両が物体に衝突することである。
【0018】
(3)本開示の一態様に係る処理装置では、前記第2蓄電器の劣化は、前記第2蓄電器の容量の低下である。
【0019】
上記の態様にあっては、第2蓄電器の劣化は第2蓄電器の容量の低下である。第2蓄電器の容量は、例えば、充電及び放電の繰り返しによって低下する。
【0020】
(4)本開示の一態様に係る処理装置は、揮発性の一時記憶部と、不揮発性の記憶部とを備え、前記複数の処理中の少なくとも1つでは、前記処理部は、前記一時記憶部に記憶されているデータを前記記憶部に書き込む。
【0021】
上記の態様にあっては、所定の条件が満たされた場合において、例えば、第2蓄電器の劣化度合が小さいとき、一時記憶部に記憶されているデータを記憶部に書き込む。
【0022】
(5)本開示の一態様に係る処理装置は、クロック信号を出力するクロック出力部を備え、前記処理部は、前記クロック出力部が出力したクロック信号に同期して処理を実行し、前記複数の処理中の少なくとも1つでは、前記処理部は、クロック信号の出力を停止させる。
【0023】
上記の態様にあっては、所定の条件が満たされ、かつ、第1蓄電器の電力供給が中断した場合において、例えば、第2蓄電器の劣化度合が大きいとき、処理部は、クロック信号の出力を停止させる。これにより、処理部の状態はスリーブ状態に遷移する。この場合、第2蓄電器が電力を供給している他の装置によって、優先度が高い処理が実行される。
【0024】
(6)本開示の一態様に係る処理装置では、前記複数の処理それぞれでは、前記処理部は、前記車両のドアの解錠を指示する。
【0025】
上記の態様にあっては、優先度が高い処理は車両のドアを解錠する処理である。
【0026】
(7)本開示の一態様に係る処理システムは、車両に搭載され、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する第1処理装置及び第2処理装置を備え、前記第1処理装置及び第2処理装置それぞれは、処理を実行する第1処理部及び第2処理部を有し、第1処理部は、前記第2処理部の指示に従って処理を実行し、所定の条件が満たされた場合に前記第1処理部が実行する複数の第1処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記所定の条件が満たされた場合に前記第2処理部が実行する複数の第2処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記第1処理部は、前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定し、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第1処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する第1処理を実行し、前記第2処理部は、前記所定の条件が満たされた場合に前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定し、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の第2処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する第2処理を実行する。
【0027】
上記の態様にあっては、第2処理部は、第1処理部の指示に従って処理を実行する。第1処理部及び第2処理部それぞれは、第1蓄電器の電力供給が中断した場合、第2蓄電器の劣化度合に対応する第1処理及び第2処理を実行する。このため、所定の条件が満たされた場合に優先度が高い処理が適切に実行される構成を実現することができる。
【0028】
(8)本開示の一態様に係る処理システムでは、前記第1蓄電器の電力供給が中断した後に前記第1処理装置及び第2処理装置が消費する電力の合計値は、前記第2蓄電器の劣化度合が大きい程、小さい。
【0029】
上記の態様にあっては、第1蓄電器の電力供給が中断した後に第1処理装置及び第2処理装置が消費する電力の合計値は、第2蓄電器の劣化度合が大きい程、小さい。
【0030】
(9)本開示の一態様に係る処理方法は、第1蓄電器及び第2蓄電器の一方から供給された電力を用いて処理を実行する処理方法であって、所定の条件が満たされた場合に実行される複数の処理それぞれは、前記第2蓄電器の劣化度合に対応付けて予め決められており、前記第1蓄電器の電力供給が中断したか否かを判定するステップと、前記第1蓄電器の電力供給が中断したと判定した場合、前記複数の処理の中で、前記第2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行するステップとをコンピュータが実行する。
【0031】
上記の態様にあっては、コンピュータは、第1蓄電器の電力供給が中断した場合、第2蓄電器の劣化度合に対応する処理を実行する。このため、所定の条件が満たされた場合に優先度が高い処理が適切に実行される構成を実現することができる。
【0032】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る処理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0033】
(実施形態1)
<処理システムの構成>
図1は、本実施形態における処理システム1の要部構成を示すブロック図である。処理システム1は車両Cに搭載されている。処理システム1は、複数の個別ECU2、統合ECU3、ドアモータ40、アクチュエータ41及び複数のセンサ42を備える。複数の個別ECU2には、個別ECU2a,2bが含まれている。個別ECU2a,2bそれぞれの数は、1に限定されず、2以上であってもよい。
【0034】
個別ECU2aには、ドアモータ40及びセンサ42が接続されている。ドアモータ40はアクチュエータの1つである。個別ECU2bには、アクチュエータ41及びセンサ42が接続されている。各個別ECU2は統合ECU3に接続されている。
【0035】
各センサ42は、車両Cに関する車両データを繰り返し取得する。車両データは、車両Cの加速度、車両C周辺の照度、雨が降っているか否か、車両Cの乗員によって操作されるスイッチの状態、又は、車両C周辺の画像等を示す。各センサ42それぞれが取得する車両データの種類は、他のセンサ42が取得した車両データの種類と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0036】
センサ42は、車両データを取得する都度、取得した車両データを個別ECU2に出力する。個別ECU2は、センサ42から車両データが入力される都度、入力された車両データを統合ECU3に送信する。
【0037】
ドアモータ40は、車両Cのドアの施錠及び解錠を行う。統合ECU3は、一又は複数の個別ECU2から受信した一又は複数の車両データに基づいて、ドアモータ40又はアクチュエータ41の動作を決定する。統合ECU3は、決定した動作を示す指示データを、少なくとも1つの個別ECU2に送信する。
【0038】
個別ECU2aは、統合ECU3から指示データを受信した場合、受信した指示データをドアモータ40に出力する。ドアモータ40に出力される指示データは、ドアの施錠又は解錠を示す。ドアモータ40は、個別ECU2aから指示データが入力された場合、入力された指示データが示す動作を行う。指示データが施錠を示す場合、ドアモータ40はドアを施錠する。指示データが解錠を示す場合、ドアモータ40はドアを解錠する。
【0039】
個別ECU2bは、統合ECU3から指示データを受信した場合、受信した指示データをアクチュエータ41に出力する。アクチュエータ41は、個別ECU2bから指示データが入力された場合、入力された指示データが示す動作を行う。
【0040】
個別ECU2a及び統合ECU3それぞれは処理装置として機能する。前述したように、個別ECU2aは、統合ECU3が送信した指示データ、即ち、統合ECU3の指示に従って処理を実行する。従って、個別ECU2aは第2処理装置として機能する。統合ECU3は第1処理装置として機能する。
個別ECU2及び統合ECU3間の通信では、例えば、イーサネット(登録商標)の通信プロトコルが用いられる。
【0041】
統合ECU3は、一又は複数の個別ECU2から受信した一又は複数の車両データに基づいて、車両Cの衝突を検知する。統合ECU3は、車両Cの衝突を検知した場合、車両Cの衝突を示す衝突データを、個別ECU2aを含む複数の個別ECU2に送信する。
【0042】
<個別ECU2及び統合ECU3への電力供給>
図2は、統合ECU3及び個別ECU2への電力供給の説明図である。処理システム1は、更に、発電機50、メイン蓄電器51、サブ蓄電器52、電流計53、電圧計54及び電源管理装置55を備える。メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52それぞれは、鉛蓄電池、リチウムイオン電池又はキャパシタ等である。
【0043】
複数の個別ECU2及び統合ECU3それぞれは、発電機50の正極、メイン蓄電器51の正極及び電流計53に接続されている。複数の個別ECU2及び統合ECU3それぞれは接地されている。発電機50及びメイン蓄電器51の負極も接地されている。電流計53は、サブ蓄電器52の正極と、電源管理装置55とに接続されている。サブ蓄電器52の負極は接地されている。電圧計54は、サブ蓄電器52の正極及び負極間に接続されている。電圧計54は、更に、電源管理装置55に接続されている。電源管理装置55は、更に、統合ECU3に接続されている。
【0044】
発電機50は、車両Cのエンジンに連動して交流電力を発生させる。発電機50は、発生させた交流電力を直流電力に整流し、整流した直流電力に係る直流電圧を正極から出力する。発電機50が発電している場合、発電機50の正極から個別ECU2、統合ECU3、メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52に電流が流れ、これらに電力が供給される。発電機50が発電している場合、個別ECU2及び統合ECU3それぞれは、発電機50が発生させた電力を用いて処理を実行し、メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52は充電される。サブ蓄電器52が充電されている場合、サブ蓄電器52の正極には、電流計53を介して電流が入力される。
【0045】
発電機50が発電を停止している場合、メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52の一方が放電する。このとき、メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52の一方の正極から個別ECU2及び統合ECU3に電流が流れ、これらに電力が供給される。従って、発電機50が発電を停止している場合、個別ECU2及び統合ECU3それぞれは、メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52の一方から供給された電力を用いて処理を実行する。サブ蓄電器52が放電している場合、サブ蓄電器52の正極から電流計53を介して電流が出力される。
【0046】
メイン蓄電器51又はサブ蓄電器52の出力電圧が低い場合、発電機50は発電する。これにより、メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52は充電され、メイン蓄電器51及びサブ蓄電器52の出力電圧は一定電圧以上の電圧に維持される。
個別ECU2及び統合ECU3それぞれにおいて消費される電力は、実行される処理の量が多い程、大きい。
【0047】
サブ蓄電器52が充電されている場合、電流計53は、サブ蓄電器52に入力された電流の電流値を検出する。サブ蓄電器52が放電している場合、電流計53は、サブ蓄電器52から出力された電流の電流値を検出する。電流計53は、電流値を周期的に検出する。電流計53は、電流値を検出する都度、検出した電流値を示す電流データを電源管理装置55に出力する。サブ蓄電器52に入力された電流の電流値、即ち、充電の電流値を電流計53が検出した場合、電流データは、例えば、正の電流値を示す。サブ蓄電器52から出力された電流の電流値、即ち、放電の電流値を電流計53が検出した場合、電流データは、例えば、負の電流値を示す。
【0048】
電圧計54は、サブ蓄電器52の両端間の電圧値を周期的に検出する。電圧計54は、電圧値を検出する都度、検出した電圧値を示す電圧データを電源管理装置55に出力する。電流計53及び電圧計54は、実質的に同時に検出を行う。
【0049】
電源管理装置55は、電流計53から入力された電流データが示す電流値と、電圧計54から入力された電圧データが示す電圧値とを記憶する。電源管理装置55は、実質的に同時に入力された電流データ及び電圧データが示す電流値及び電圧値を相互に対応付けて記憶する。電源管理装置55が記憶している電流値及び電圧値の組合せの数が所定数となった場合、電源管理装置55は、所定数の組合せに対応する全ての電流値及び電圧値を示す蓄電器データを統合ECU3に出力する。
【0050】
統合ECU3は、電源管理装置55から蓄電器データが入力された場合、入力された蓄電器データが示す複数の電流値及複数の電圧値に基づいて、サブ蓄電器52の劣化度合を推定する。サブ蓄電器52の劣化は、サブ蓄電器52の容量の低下である。サブ蓄電器52がキャパシタである場合、サブ蓄電器52の容量は静電容量である。サブ蓄電器52がバッテリである場合、サブ蓄電器52の容量は、サブ蓄電器52が満充電であるときの電力量である。サブ蓄電器52の容量は、例えば、充電及び放電の繰り返しによって低下する。
【0051】
サブ蓄電器52がバッテリである場合、劣化度合の1つの指標として、SOH(State Of Health)が挙げられる。サブ蓄電器52が満充電である場合において、サブ蓄電器52に蓄えられている電力量を満充電容量と記載する。サブ蓄電器52の満充電容量を、サブ蓄電器52が製造された時点における満充電容量で除算する。除算した値に100を乗算する。これにより、SOHが算出される。SOHの単位はパーセントである。SOHは、例えば、サブ蓄電器52に蓄えられている電力量の推移に基づいて推定される。
【0052】
統合ECU3は、推定した劣化度合に基づいて、サブ蓄電器52の劣化レベルを決定する。図3は、劣化度合と劣化レベルとの関係の説明図である。サブ蓄電器52の劣化レベルとして1~4が設定されている。各劣化レベルについて、劣化度合の範囲が設定されている。図3に示すように、劣化レベル1に対応する劣化度合の範囲内の値は最も小さい。劣化レベルが上昇するにつれて、劣化レベルに対応する劣化度合の範囲内の値も上昇する。統合ECU3は、サブ蓄電器52の劣化レベルを、推定した劣化度合が属する値に決定する。統合ECU3は、サブ蓄電器52の劣化レベルを示す劣化データを各個別ECU2に送信する。
【0053】
図1及び図2に示すように、各個別ECU2及び統合ECU3には、メイン蓄電器51の状態を示す状態信号が入力される。状態信号は、メイン蓄電器51の電力供給が中断したか否かを示す。メイン蓄電器51の電力供給の中断は、例えば、メイン蓄電器51の接続が外れることを意味する。メイン蓄電器51の正極及び負極それぞれは図示しない端子に接続されている。メイン蓄電器51の正極及び負極の少なくとも一方について、端子との接続が外れた場合、メイン蓄電器51の接続が外れる。メイン蓄電器51の電力供給が中断しているか否かは、例えば、メイン蓄電器51の正極及び負極が接続される図示しない2つの端子間の電圧に基づいて判定される。例えば、2つの端子間の電圧がゼロVである場合、メイン蓄電器51の電力供給は中断していると判定することができる。
【0054】
<個別ECU2a及び統合ECU3の動作の概要>
図4は車両C内における構成部の配置の説明図である。図4に示すように、メイン蓄電器51は、車両C内において前側に配置されている。サブ蓄電器52は車両C内において後側に配置されている。統合ECU3及び個別ECU2aは車両Cの中央に配置されている。ドアモータ40は、ドアモータ40が施錠又は解錠するドアの近傍に配置されている。車両Cが走行している間に車両Cが物体に衝突した場合、メイン蓄電器51の電力供給が中断する可能性がある。
【0055】
各個別ECU2は、統合ECU3から衝突データを受信した場合、複数の第1緊急処理中の1つを実行する。複数の第1緊急処理それぞれでは、ドアモータ40に指示してドアを解錠させる処理が含まれている。統合ECU3は、一又は複数の個別ECU2から入力された一又は複数の車両データに基づいて車両Cの衝突を検知する。統合ECU3は、車両Cの衝突を検知した場合、各個別ECU2に衝突データを送信し、複数の第2緊急処理中の1つを実行する。
以上のように、複数の第1緊急処理及び複数の第2緊急処理それぞれは、車両Cが物体に衝突した場合に実行する処理である。車両Cが物体に衝突することは、所定の条件に相当する。
【0056】
統合ECU3が車両Cの衝突を検知した場合において、メイン蓄電器51の電力供給が中断したとき、統合ECU3は、複数の第2緊急処理の中で、サブ蓄電器52の劣化度合に対応する第2緊急処理を実行する。同様の場合において、メイン蓄電器51の電力供給が中断したとき、各個別ECU2は、複数の第1緊急処理の中で、サブ蓄電器52の劣化度合に対応する第1緊急処理を実行する。サブ蓄電器52の容量は、メイン蓄電器51の容量よりも十分に小さい。サブ蓄電器52において小さな劣化が生じた場合であっても、サブ蓄電器52に蓄えられている電力を用いて実行する処理の量が厳しく制限される。このため、劣化度合に応じた第1緊急処理及び第2緊急処理が実行される。
【0057】
<個別ECU2aの構成>
図5は個別ECU2aの要部構成を示すブロック図である。個別ECU2aは、クロック出力部20、タイマ21、通信部22、出力部23、車両データ入力部24、信号入力部25、一時記憶部26、記憶部27及び制御部28を有する。これらは内部バス29に接続されている。クロック出力部20は、内部バス29の他に、タイマ21及び制御部28に各別に接続されている。通信部22は、更に、統合ECU3に接続されている。出力部23は、更に、ドアモータ40に接続されている。車両データ入力部24は、更に、センサ42に接続されている。
【0058】
クロック出力部20は、クロック信号を制御部28に出力する。クロック信号はローレベル電圧又はハイレベル電圧を示す。クロック信号が示す電圧は、周期的に、ローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わる。
制御部28は、処理を実行する処理素子、例えば、CPU(Central Processing Unit)を有する。制御部28の処理素子は、クロック信号が示す電圧がローレベル電圧からハイレベル電圧に切替わる都度、処理を実行する。このように、制御部28は、クロック出力部20が出力したクロック信号に同期して処理を実行する。制御部28は、処理部及び第1処理部として機能する。
【0059】
なお、クロック信号は、ローレベル電圧からハイレベル電圧への電圧の切替えが周期的に行われる信号に限定されず、ハイレベル電圧からローレベル電圧への電圧の切替えが周期的に行われる信号であってもよい。この場合、制御部28の処理素子は、クロック信号が示す電圧がハイレベル電圧からローレベル電圧に切替わる都度、処理を実行する。
【0060】
クロック出力部20は、制御部28の指示に従って、クロック信号の出力を停止する。クロック信号の出力が停止した場合、制御部28の処理素子は処理の実行を停止する。これにより、制御部28の状態は、処理を実行する動作状態から、処理の実行を停止するスリープ状態に遷移する。クロック出力部20には、タイマ21からクロック信号の出力指示が入力される。クロック出力部20は、出力指示が入力された場合、クロック信号の出力を再開する。これにより、制御部28は処理の実行を再開し、制御部28の状態は、スリープ状態から動作状態に戻る。
【0061】
制御部28は、タイマ21に計時の開始を指示する。計時の開始が指示された場合、タイマ21は計時を開始する。タイマ21が計時している計時時間は制御部28によって読み出される。制御部28は、タイマ21に計時の終了を指示する。計時の終了が指示された場合、タイマ21は計時を終了する。制御部28は、所定時間が経過した後の起動をタイマ21に指示する。起動が指示された場合、タイマ21は、起動が指示されてから所定時間が経過した場合、クロック信号の出力指示をクロック出力部20に出力する。所定時間は、一定値であり、予め設定されている。
【0062】
通信部22は、制御部28の指示に従って、車両データを統合ECU3に送信する。通信部22は、統合ECU3から指示データ、衝突データ及び劣化データを受信する。
出力部23は、制御部28の指示に従って、ドアの解錠又は施錠を示す指示データをドアモータ40に出力する。
【0063】
センサ42から車両データ入力部24に車両データが繰り返し入力される。制御部28は、車両データ入力部24から車両データを取得する。
信号入力部25には状態信号が入力される。
一時記憶部26は揮発性メモリである。制御部28は、車両データ等を一時記憶部26に書き込む。一時記憶部26に記憶されているデータは制御部28によって読み出される。個別ECU2aへの電力供給が停止した場合、一時記憶部26に記憶されているデータは消去される。
【0064】
記憶部27は不揮発性メモリである。個別ECU2aに電力が供給されているか否かに無関係に記憶部27に記憶されているデータは保持される。記憶部27には、サブ蓄電器52の劣化レベルが記憶されている。記憶部27に記憶されている劣化レベルは、制御部28によって変更される。記憶部27には、更に、コンピュータプログラムPrが記憶されている。制御部28の処理素子は、コンピュータプログラムPrを実行することによって、動作制御処理、車両データ送信処理、第1更新処理、第1選択処理及び複数の第1緊急処理等を実行する。複数の第1緊急処理それぞれは、サブ蓄電器52の劣化レベル、即ち、劣化度合に対応付けて予め決められている。劣化レベルの数が4であるため、第1緊急処理の数は4である。
【0065】
動作制御処理は、ドアモータ40、即ち、アクチュエータの動作を制御する処理である。車両データ送信処理は、車両データを送信する処理である。第1更新処理は、記憶部27に記憶されている劣化レベルを更新する処理である。第1選択処理は、劣化レベル1~4に対応する4つの第1緊急処理から実行する1つの第1緊急処理を選択する処理である。第1緊急処理は、前述したように、車両Cの衝突が検知された場合に実行される処理である。
【0066】
なお、コンピュータプログラムPrは、制御部28の処理素子が読み取り可能に、非一時的な記憶媒体Arに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Arから読み出されたコンピュータプログラムPrが記憶部27に書き込まれる。記憶媒体Arは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。光ディスクは、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、又は、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)等である。磁気ディスクは、例えばハードディスクである。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムPrをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPrを記憶部27に書き込んでもよい。
【0067】
また、制御部28が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。制御部28が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して、動作制御処理、車両データ送信処理、第1更新処理、第1選択処理、及び、劣化レベル1~4に対応する4つの第1緊急処理等を実行する。
【0068】
<動作制御処理>
動作制御処理では、制御部28は、通信部22が統合ECU3から指示データを受信するまで待機する。制御部28は、通信部22が指示データを受信した場合、出力部23に指示して、指示データをドアモータ40に出力させる。前述したように、指示データが施錠を示す場合、ドアモータ40は車両Cのドアを施錠する。指示データが解錠を示す場合、ドアモータ40は車両Cのドアを解錠する。その後、制御部28は、再び、通信部22が指示データを受信するまで待機する。制御部28は、車両Cの衝突が検知された場合、動作制御処理の実行を停止する。
【0069】
車両データ送信処理、第1更新処理、第1選択処理、及び、劣化レベル1~4に対応する4つの第1緊急処理については、統合ECU3の種々の処理と併せて説明する。
【0070】
<統合ECU3の構成>
図6は統合ECU3の要部構成を示すブロック図である。統合ECU3は、クロック出力部30、タイマ31、複数の通信部32、蓄電器データ入力部33、信号入力部34、一時記憶部35、記憶部36及び制御部37を有する。これらは内部バス38に接続されている。複数の通信部32それぞれは、更に、個別ECU2に接続されている。複数の通信部32には、個別ECU2aに接続されている通信部32aと、個別ECU2bに接続されている通信部32bとが含まれている。蓄電器データ入力部33は、更に、電源管理装置55に接続されている。
【0071】
クロック出力部30は、クロック信号を制御部37に出力する。前述したように、クロック信号の電圧は、ローレベル電圧からハイレベル電圧への電圧の切替え、又は、ハイレベル電圧からローレベル電圧への電圧の切替えが周期的に行われる。
制御部37は、処理を実行する処理素子、例えば、CPUを有する。制御部37の処理素子は、ローレベル電圧からハイレベル電圧への電圧の切替え、又は、ハイレベル電圧からローレベル電圧への電圧の切替えが行われる都度、処理を実行する。このように、制御部37は、クロック出力部30が出力したクロック信号に同期して処理を実行する。制御部37は、処理部及び第2処理部として機能する。
【0072】
クロック出力部30は、制御部37の指示に従って、クロック信号の出力を停止する。クロック信号の出力が停止した場合、制御部37の処理素子は処理の実行を停止する。これにより、制御部37の状態は動作状態からスリープ状態に遷移する。クロック出力部30は、クロック信号の出力を停止した後において予め設定されている起動条件が満たされた場合、クロック信号の出力を再開する。
【0073】
制御部37は、タイマ31に計時の開始を指示する。計時の開始が指示された場合、タイマ31は計時を開始する。タイマ31が計時している計時時間は制御部37によって読み出される。制御部37は、タイマ31に計時の終了を指示する。計時の終了が指示された場合、タイマ31は計時を終了する。
【0074】
通信部32は個別ECU2から車両データを受信する。通信部32は、制御部37の指示に従って、指示データ、衝突データ及び劣化データを送信する。通信部32aが送信する指示データはドアの施錠又は解錠を示す。通信部32bが送信する指示データは、アクチュエータ41の動作を示す。
蓄電器データ入力部33には、電源管理装置55から蓄電器データが入力される。信号入力部34には、メイン蓄電器51の電力供給が中断しているか否かを示す状態信号が入力される。
【0075】
一時記憶部35は揮発性メモリである。制御部37は、車両データ等を一時記憶部35に書き込む。一時記憶部35に記憶されているデータは制御部37によって読み出される。統合ECU3への電力供給が停止した場合、一時記憶部35に記憶されているデータは消去される。
【0076】
記憶部36は不揮発性メモリである。統合ECU3に電力が供給されているか否かに無関係に記憶部36に記憶されているデータは保持される。記憶部36には、サブ蓄電器52の劣化レベルが記憶されている。記憶部36に記憶されている劣化レベルは、制御部37によって変更される。記憶部36には、更に、コンピュータプログラムPcが記憶されている。制御部37の処理素子は、コンピュータプログラムPcを実行することによって、指示データ送信処理、書き込み処理、第2更新処理、第2選択処理及び複数の第2緊急処理等を実行する。複数の第2緊急処理それぞれは、サブ蓄電器52の劣化レベル、即ち、劣化度合に対応付けて予め決められている。劣化レベルの数が4であるため、第2緊急処理の数は4である。
【0077】
指示データ送信処理は、指示データを個別ECU2に送信する処理である。書き込み処理は、車両データを一時記憶部35又は記憶部36に書き込む処理である。第2更新処理は、記憶部36に記憶されている劣化レベルを更新する処理である。第2選択処理は、劣化レベル1~4に対応する4つの第2緊急処理から実行する1つの第2緊急処理を選択する処理である。第2緊急処理は、前述したように、車両Cの衝突が検知された場合に実行される処理である。
【0078】
なお、コンピュータプログラムPcは、制御部37の処理素子が読み取り可能に、非一時的な記憶媒体Acに記憶されていてもよい。この場合、図示しない読み出し装置によって記憶媒体Acから読み出されたコンピュータプログラムPcが記憶部36に書き込まれる。記憶媒体Acは、光ディスク、フレキシブルディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク又は半導体メモリ等である。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部装置からコンピュータプログラムPcをダウンロードし、ダウンロードしたコンピュータプログラムPcを記憶部36に書き込んでもよい。
【0079】
また、制御部37が有する処理素子の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。制御部37が複数の処理素子を有する場合、複数の処理素子が協同して指示データ送信処理、書き込み処理、第2更新処理、第2選択処理、及び、劣化レベル1~4に対応する4つの第2緊急処理等を実行する。
【0080】
<指示データ送信処理>
指示データ送信処理では、制御部37は、通信部32が受信した車両データに基づいて、ドアモータ40又はアクチュエータ41の動作を決定する。制御部37は、通信部32に指示して、決定した動作を示す指示データを個別ECU2に送信させる。ドアの施錠又は解錠を示す指示データは、通信部32aによって個別ECU2aの通信部22に送信される。
【0081】
前述したように、動作制御処理では、通信部22が統合ECU3の通信部32aから指示データを受信した場合、個別ECU2aの制御部28は、出力部23に指示して、通信部22が受信した指示データをドアモータ40に出力させる。指示データが示す動作は統合ECU3の制御部28によって決定される。従って、個別ECU2aの制御部28は、統合ECU3の制御部37の指示に従って処理を実行する。
【0082】
<車両データの送信及び書き込み>
図7は車両データの送信及び書き込みの手順を示すフローチャートである。個別ECU2aの制御部28は車両データ送信処理を実行する。統合ECU3の制御部37は書き込み処理を実行する。
【0083】
車両データ送信処理では、個別ECU2aの制御部28は、センサ42から車両データ入力部24に車両データが入力されたか否かを判定する(ステップS1)。制御部28は、車両データが入力されていないと判定した場合(S1:NO)、ステップS1を再び実行し、車両データ入力部24に車両データが入力されるまで待機する。制御部28は、車両データが入力されたと判定した場合(S1:YES)、車両データ入力部24に入力された車両データを一時記憶部26に書き込む(ステップS2)。
【0084】
制御部28は、ステップS2を実行した後、車両データ入力部24に入力された車両データを、通信部22に指示して、統合ECU3の通信部32aに送信させる(ステップS3)。制御部28は、ステップS3を実行した後、車両データ送信処理を終了する。制御部28は、車両データ送信処理を終了した後、再び、車両データ送信処理を実行し、車両データ入力部24に車両データが入力されるまで待機する。
【0085】
個別ECU2bは、個別ECU2aと同様に、センサ42から車両データが入力された場合、入力された車両データを、図示しない一時記憶部に書き込むとともに、入力された車両データを統合ECU3の通信部32bに送信する。
【0086】
書き込み処理では、統合ECU3の制御部37は、複数の通信部32の1つが個別ECU2から車両データを受信したか否かを判定する(ステップS11)。制御部37は、複数の通信部32のいずれも車両データを受信していないと判定した場合(S11:NO)、ステップS11を再び実行し、複数の通信部32の1つが車両データを受信するまで待機する。
【0087】
制御部37は、複数の通信部32の1つが個別ECU2から車両データを受信したと判定した場合(S11:YES)、通信部32が受信した車両データを一時記憶部35に書き込む(ステップS12)。次に、制御部37は、通信部32が受信した車両データを記憶部36に書き込むか否かを判定する(ステップS13)。制御部37は、車両データを書き込むと判定した場合(S13:YES)、通信部32が受信した車両データを記憶部36に書き込む(ステップS14)。
【0088】
制御部37は、車両データを書き込まないと判定した場合(S13:NO)、又は、ステップS14を実行した後、書き込み処理を終了する。制御部37は、書き込み処理を終了した後、再び、書き込み処理を実行し、複数の通信部32の1つが車両データを受信するまで待機する。
【0089】
前述したように、センサ42は個別ECU2に車両データを繰り返し出力する。このため、各個別ECU2は車両データを統合ECU3に繰り返し送信する。ステップS13に関して、統合ECU3の制御部37は、1つのセンサ42が出力した車両データについて、所定数おきに車両データを記憶部36に書き込む。所定数は、2以上の整数である。所定数がである場合においては、統合ECU3の制御部37は、車両データを記憶部36に書き込んだ後、通信部32が続いて受信した2つの車両データを記憶部36に書き込むことはない。
【0090】
<劣化レベルの更新>
図8は劣化レベルの更新の手順を示すフローチャートである。個別ECU2aの制御部28は第1更新処理を実行する。統合ECU3の制御部37は第2更新処理を実行する。
第2更新処理では、統合ECU3の制御部37は、電源管理装置55から蓄電器データ入力部33に蓄電器データが入力されたか否かを判定する(ステップS21)。制御部37は、蓄電器データが入力されていないと判定した場合(S21:NO)、ステップS21を再び実行し、蓄電器データ入力部33に蓄電器データが入力されるまで待機する。
【0091】
制御部37は、蓄電器データが入力されたと判定した場合(S21:YES)、蓄電器データ入力部33に入力された蓄電器データが示す複数の電流値及び複数の電圧値に基づいて、サブ蓄電器52の劣化度合を推定する(ステップS22)。制御部37は、記憶部36に記憶されている劣化レベルを、ステップS22で推定した劣化度合に対応する劣化レベルに更新する(ステップS23)。次に、制御部37は、各通信部22に指示して、ステップS23で更新した劣化レベルを示す劣化データを、通信部22に接続されている個別ECU2へ送信させる(ステップS24)。
【0092】
制御部37は、ステップS24を実行した後、第2更新処理を終了する。制御部37は、第2更新処理を終了した後、再び、第2更新処理を実行し、蓄電器データ入力部33に蓄電器データが入力されるまで待機する。電源管理装置55は蓄電器データを統合ECU3に繰り返し出力する。このため、統合ECU3は、劣化データを各個別ECU2に繰り返し送信する。
【0093】
第1更新処理では、個別ECU2aの制御部28は、通信部22が統合ECU3の通信部32aから劣化データを受信したか否かを判定する(ステップS31)。制御部28は、通信部22が劣化データを受信していないと判定した場合(S31:NO)、ステップS31を再び実行し、通信部22が劣化データを受信するまで待機する。制御部28は、通信部22が劣化データを受信したと判定した場合(S31:YES)、記憶部27に記憶されている劣化レベルを、通信部22が受信した劣化データが示す劣化レベルに更新する(ステップS32)。
【0094】
制御部28は、ステップS32を実行した後、第1更新処理を終了する。制御部28は、第1更新処理を終了した後、第1更新処理を再び実行し、通信部22が劣化データを受信するまで待機する。
【0095】
個別ECU2bの不揮発性の記憶部には、劣化レベルが記憶されている。個別ECU2bは、個別ECU2aと同様に、統合ECU3の通信部32bから劣化データを受信する。個別ECU2bは、劣化データを受信した場合、記憶部に記憶されている劣化レベルを、受信した劣化データが示す劣化レベルに更新する。
【0096】
従って、電源管理装置55が蓄電器データを出力する都度、各個別ECU2及び統合ECU3に記憶されている劣化レベルは、統合ECU3の制御部37が推定した劣化度合に応じたレベルに更新される。
【0097】
<緊急処理の選択>
図9は緊急処理の選択の手順を示すフローチャートである。個別ECU2aの制御部28は第1選択処理を実行する。統合ECU3の制御部37は第2緊急処理を実行する。第1選択処理及び第2選択処理は、例えば、車両Cのイグニッションスイッチがオンに切り替わった場合に実行される。
【0098】
第2選択処理では、統合ECU3の制御部37は、例えば、一又は複数の通信部22が受信した一又は複数の車両データに基づいて、車両Cが物体に衝突したか否かを判定する(ステップS41)。衝突の判定には、例えば、車両Cの加速度を示す車両データが用いられる。制御部37は、車両Cが物体に衝突していないと判定した場合(S41:NO)、ステップS41を再び実行し、車両Cが物体に衝突するまで待機する。
【0099】
制御部37は、車両Cが物体に衝突したと判定した場合(S41:YES)、各通信部32に指示して、衝突データを、通信部32に接続されている個別ECU2に送信させる(ステップS42)。制御部37は、ステップS42を実行した後、信号入力部34に入力された状態信号に基づいて、メイン蓄電器51の電力供給が中断したか否かを判定する(ステップS43)。制御部37は、メイン蓄電器51の電力供給が中断したと判定した場合(S43:YES)、記憶部36から劣化レベルを読み出し(ステップS44)、読み出した劣化レベルに対応する第2緊急処理を実行する(ステップS45)。制御部37は、ステップS45を実行した後、第2選択処理を終了する。
【0100】
制御部37は、メイン蓄電器51の電力供給が中断していないと判定した場合(S43:NO)、劣化レベル1に対応する第2緊急処理を実行し(ステップS46)、第2選択処理を終了する。
【0101】
第1選択処理では、個別ECU2aの制御部28は、通信部22が、統合ECU3の通信部32aから衝突データを受信したか否かを判定する(ステップS51)。制御部28は、通信部22が衝突データを受信していないと判定した場合(S51:NO)、ステップS51を再び実行し、通信部22が衝突データを受信するまで待機する。
【0102】
制御部28は、通信部22が衝突データを受信したと判定した場合(S51:YES)、信号入力部25に入力された状態信号に基づいて、メイン蓄電器51の電力供給が中断したか否かを判定する(ステップS52)。制御部28は、メイン蓄電器51の電力供給が中断したと判定した場合(S52:YES)、記憶部27から劣化レベルを読み出し(ステップS53)、読み出した劣化レベルに対応する第1緊急処理を実行する(ステップS54)。制御部28は、ステップS54を実行した後、第1選択処理を終了する。
【0103】
制御部28は、メイン蓄電器51の電力供給が中断していないと判定した場合(S52:NO)、劣化レベル1に対応する第1緊急処理を実行し(ステップS55)、第1選択処理を終了する。
【0104】
個別ECU2bは、個別ECU2aと同様に、衝突データを受信する。個別ECU2bは、衝突データを受信した場合、状態信号に基づいて、メイン蓄電器51の電力供給が中断したか否かを判定する。個別ECU2bは、メイン蓄電器51の電力供給が中断したと判定した場合、記憶部に記憶されている劣化レベルに対応する第1緊急処理を実行する。劣化レベルが1である場合、個別ECU2bは、車両Cの衝突に関する処理を実行することはない。従って、個別ECU2bは、メイン蓄電器51の電力供給が中断していないと判定した場合、車両Cの衝突に関する処理を実行することはない。
【0105】
<劣化レベル1の緊急処理>
図10は、劣化レベル1の緊急処理の手順を示すフローチャートである。前述したように、サブ蓄電器52の劣化レベルが1である場合、又は、メイン蓄電器51の電力供給が中断していない場合、個別ECU2aの制御部28は、第1選択処理のステップS54,S55において、劣化レベル1に対応する第1緊急処理を実行する。同様の場合、統合ECU3の制御部37は、第2選択処理のステップS45,S46において、劣化レベル1に対応する第2緊急処理を実行する。
【0106】
劣化レベル1の第2緊急処理では、統合ECU3の制御部37は、タイマ31に計時の開始を指示する(ステップS61)。これにより、タイマ31は計時を開始する。次に、制御部37は、タイマ31が計時している計時時間が所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS62)。制御部37は、計時時間が所定時間未満であると判定した場合(S62:NO)、ステップS62を再び実行し、計時時間が所定時間となるまで待機する。
【0107】
制御部37は、計時時間が所定時間以上であると判定した場合(S62:YES)、タイマ31に計時の終了を指示する(ステップS63)。これにより、タイマ31は計時を終了する。
以上のように、制御部37は、劣化レベル1の第2緊急処理を実行してから所定時間が経過するまで待機する。この期間中、各個別ECU2は車両データを繰り返し送信し、統合ECU3は、各個別ECU2から受信した車両データを一時記憶部35に書き込む(図7参照)。
【0108】
統合ECU3の制御部37は、ステップS63を実行した後、揮発性の一時記憶部35に記憶されている複数の車両データを不揮発性の記憶部36に書き込む(ステップS64)。これらの車両データは、例えば、車両Cが物体に衝突した状況を把握するために用いられる。制御部37は、ステップS64を実行した後、通信部32aに指示して、解錠を示す指示データを、個別ECU2aの通信部22に送信させる(ステップS65)。制御部37は、ステップS65を実行した後、劣化レベル1の第2緊急処理を終了する。
【0109】
劣化レベル1の第1緊急処理では、個別ECU2aの制御部28は、通信部22が統合ECU3の通信部32aから指示データを受信したか否かを判定する(ステップS71)。制御部28は、通信部22が指示データを受信していないと判定した場合(S71:NO)、ステップS71を再び実行し、通信部22が指示データを受信するまで待機する。
【0110】
制御部28は、劣化レベル1の第1緊急処理と並行して車両データ送信処理を実行する。このため、個別ECU2aは、指示データの受信を待機している間、車両データを繰り返し統合ECU3に送信している。個別ECU2aの制御部28は、車両Cの衝突が検知されてから所定時間が経過した後に、車両データ送信処理を終了してもよい。
【0111】
制御部28は、通信部22が指示データを受信したと判定した場合(S71:YES)、出力部23に指示して、解錠を示す指示データをドアモータ40に出力させる(ステップS72)。これにより、ドアモータ40は、車両Cのドアを解錠する。制御部28は、ステップS72を実行した後、劣化レベル1の第1緊急処理を終了する。出力部23に指示して、解錠を示す指示データをドアモータ40に出力させることは、車両Cのドアの解錠を指示することに相当する。
【0112】
前述したように、個別ECU2bは、劣化レベルが1である場合、車両Cの衝突に関する処理を実行しない。個別ECU2bは、車両データを統合ECU3に繰り返し送信する。なお、個別ECU2bは、車両Cの衝突が検知されてから所定時間が経過した後に、車両データの送信を終了してもよい。
【0113】
<劣化レベル2の緊急処理>
図11は、劣化レベル2の緊急処理の手順を示すフローチャートである。前述したように、サブ蓄電器52の劣化レベルが2である場合、個別ECU2aの制御部28は、第1選択処理のステップS54において、劣化レベル2に対応する第1緊急処理を実行する。同様の場合、統合ECU3の制御部37は、第2選択処理のステップS45において、劣化レベル2に対応する第2緊急処理を実行する。
【0114】
劣化レベル1の第2緊急処理では、統合ECU3の制御部37は、タイマ31に計時の開始を指示する(ステップS81)。これにより、タイマ31は計時を開始する。次に、制御部37は、タイマ31が計時している計時時間が所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS82)。制御部37は、計時時間が所定時間未満であると判定した場合(S82:NO)、ステップS82を再び実行し、計時時間が所定時間となるまで待機する。
【0115】
制御部37は、計時時間が所定時間以上であると判定した場合(S82:YES)、タイマ31に計時の終了を指示する(ステップS83)。これにより、タイマ31は計時を終了する。
以上のように、制御部37は、劣化レベル1の第2緊急処理を実行してから所定時間が経過するまで待機する。この期間中、後述するように、各個別ECU2の状態はスリープ状態であり、各個別ECU2から車両データが統合ECU3に送信されることはない。
【0116】
統合ECU3の制御部37は、ステップS83を実行した後、揮発性の一時記憶部35に記憶されている複数の車両データを不揮発性の記憶部36に書き込む(ステップS84)。これらの車両データは、例えば、車両Cが物体に衝突した状況を把握するために用いられる。制御部37は、ステップS84を実行した後、通信部32aに指示して、解錠を示す指示データを、個別ECU2aの通信部22に送信させる(ステップS85)。制御部37は、ステップS85を実行した後、劣化レベル2の第2緊急処理を終了する。
【0117】
劣化レベル2の第1緊急処理では、個別ECU2aの制御部28は、所定時間が経過した後の起動をタイマ21に指示し(ステップS91)、クロック出力部20に指示して、クロック信号の出力を停止させる(ステップS92)。これにより、制御部28は処理を停止し、制御部28の状態はスリープ状態に遷移する。制御部28は、制御部28の状態がスリープ状態に遷移してから劣化レベル2の第1緊急処理が終了するまで、車両データ送信処理を実行することはない。タイマ21がクロック信号の出力指示をクロック出力部20に出力した場合、制御部28は起動し、制御部28の状態はスリープ状態から動作状態に遷移する。
【0118】
制御部28は、起動した後、通信部22が統合ECU3の通信部32aから指示データを受信したか否かを判定する(ステップS93)。制御部28は、通信部22が指示データを受信していないと判定した場合(S93:NO)、ステップS93を再び実行し、通信部22が指示データを受信するまで待機する。
【0119】
制御部28は、通信部22が指示データを受信したと判定した場合(S93:YES)、出力部23に指示して、解錠を示す指示データをドアモータ40に出力させる(ステップS94)。これにより、ドアモータ40は、車両Cのドアを解錠する。制御部28は、ステップS94を実行した後、劣化レベル2の第1緊急処理を終了する。
【0120】
劣化レベル2の第1緊急処理では、個別ECU2bはクロック信号の出力を停止させる。これにより、処理を実行する図示しない制御部は動作を停止し、制御部の状態はスリープ状態に遷移する。その後、個別ECU2bの制御部の状態は、少なくとも、個別ECU2aの制御部28が劣化レベル2の第1緊急処理が終了するまで、スリープ状態に維持される。
【0121】
<劣化レベル3の緊急処理>
図12は、劣化レベル3の緊急処理の手順を示すフローチャートである。前述したように、サブ蓄電器52の劣化レベルが3である場合、個別ECU2aの制御部28は、第1選択処理のステップS54において、劣化レベル3に対応する第1緊急処理を実行する。同様の場合、統合ECU3の制御部37は、第2選択処理のステップS45において、劣化レベル3に対応する第2緊急処理を実行する。
【0122】
劣化レベル3の第2緊急処理では、統合ECU3の制御部37は、クロック出力部30に指示して、クロック信号の出力を停止させる(ステップS101)。これにより、制御部37は処理を停止し、制御部37の状態はスリープ状態に遷移する。その後、制御部37の状態は、少なくとも、個別ECU2aの制御部28が劣化レベル3の第1緊急処理を終了するまで、スリープ状態に維持される。制御部37は、ステップS101を実行した後、劣化レベル3の第2緊急処理を終了する。
【0123】
個別ECU2aの制御部28は、劣化レベル3の第1緊急処理が実行された場合、車両データ送信処理を停止する。劣化レベル3の第1緊急処理では、制御部28は、タイマ21に計時の開始を指示する(ステップS111)。これにより、タイマ21は計時を開始する。制御部28は、ステップS111を実行した後、車両データ入力部24にセンサ42から車両データが入力されたか否かを判定する(ステップS112)。
【0124】
制御部28は、車両データが入力されたと判定した場合(S112:YES)、車両データ入力部24に入力された車両データを不揮発性の記憶部27に書き込む(ステップS113)。制御部28は、車両データが入力されていないと判定した場合(S112:NO)、又は、ステップS113を実行した後、タイマ21が計時している計時時間が所定時間以上であるか否かを判定する(ステップS114)。
【0125】
制御部28は、計時時間が所定時間未満であると判定した場合(S114:NO)、ステップS112を再び実行する。タイマ21の計時時間が所定時間となるまで、センサ42から入力された車両データを記憶部27に繰り返し書き込む。制御部28は、計時時間が所定時間以上であると判定した場合(S114:YES)、タイマ21に計時の終了を指示する(ステップS115)。これにより、タイマ21は計時を終了する。
【0126】
制御部28は、ステップS115を実行した後、出力部23に指示して、解錠を示す指示データをドアモータ40に出力させる(ステップS116)。これにより、ドアモータ40は、車両Cのドアを解錠する。制御部28は、ステップS116を実行した後、劣化レベル3の第1緊急処理を終了する。
【0127】
劣化レベル3の第1緊急処理では、個別ECU2bは、第1緊急処理を開始してから、所定時間が経過するまで、センサ42から入力された車両データを、不揮発性の記憶部に繰り返し書き込む。その後、個別ECU2bの制御部は、劣化レベル3の第1緊急処理を終了する。
【0128】
<劣化レベル4の緊急処理>
図13は、劣化レベル4の緊急処理の手順を示すフローチャートである。前述したように、サブ蓄電器52の劣化レベルが4である場合、個別ECU2aの制御部28は、第1選択処理のステップS54において、劣化レベル4に対応する第1緊急処理を実行する。同様の場合、統合ECU3の制御部37は、第2選択処理のステップS45において、劣化レベル4に対応する第2緊急処理を実行する。
【0129】
劣化レベル4の第2緊急処理では、統合ECU3の制御部37は、クロック出力部30に指示して、クロック信号の出力を停止させる(ステップS121)。これにより、制御部37は処理を停止し、制御部37の状態はスリープ状態に遷移する。その後、制御部37の状態は、少なくとも、個別ECU2aの制御部28が劣化レベル4の第1緊急処理を終了するまで、スリープ状態に維持される。制御部37は、ステップS121を実行した後、劣化レベル3の第2緊急処理を終了する。
【0130】
劣化レベル4の第1緊急処理では、個別ECU2aの制御部28は、所定時間が経過した後の起動をタイマ21に指示し(ステップS131)、クロック出力部20に指示して、クロック信号の出力を停止させる(ステップS132)。これにより、制御部28は処理を停止し、制御部28の状態はスリープ状態に遷移する。制御部28は、制御部28の状態がスリープ状態に遷移してから劣化レベル4の第1緊急処理が終了するまで、車両データ送信処理を実行することはない。タイマ21がクロック信号の出力指示をクロック出力部20に出力した場合、制御部28は起動し、制御部28の状態はスリープ状態から動作状態に遷移する。
【0131】
制御部28は、起動した後、出力部23に指示して、解錠を示す指示データをドアモータ40に出力させる(ステップS133)。これにより、ドアモータ40は、車両Cのドアを解錠する。制御部28は、ステップS133を実行した後、劣化レベル4の第1緊急処理を終了する。
【0132】
<個別ECU2a及び統合ECU3の消費電力>
車両Cが衝突した場合において、メイン蓄電器51の電力供給が中断した後に個別ECU2aの制御部28及び統合ECU3の制御部37が実行する処理の量の合計値は、サブ蓄電器52の劣化レベルが大きい程、小さい。このため、車両Cが衝突した場合において、メイン蓄電器51の電力供給が中断した後に個別ECU2a及び統合ECU3が消費する電力の合計値は、サブ蓄電器52の劣化レベル、即ち、劣化度合が大きい程、小さい。
【0133】
<個別ECU2a及び統合ECU3の効果>
車両Cが物体と衝突した場合、複数の個別ECU2及び統合ECU3は、全体として、車両Cのドアの解錠と、車両データの書き込みとを行う。車両Cが物体と衝突した場合、乗員が車両Cから逃げ出せるように、車両Cのドアは解錠される。車両Cが物体と衝突した後、例えば、衝突の状況を把握するために、車両データの書き込みが行われる。車両Cのドアを解錠する処理の優先度は、車両データを書き込む処理の優先度よりも高い。
【0134】
前述したように、個別ECU2aの制御部28及び個別ECU2bの制御部は、サブ蓄電器52の劣化レベルに対応する第1緊急処理を実行する。統合ECU3の制御部37は、サブ蓄電器52の劣化レベルに対応する第2緊急処理を実行する。このため、車両Cが衝突した場合に、優先度が高い処理、即ち、車両Cのドアを解錠する処理が適切に実行される構成を実現することができる。
【0135】
また、車両Cが物体に衝突した場合において、サブ蓄電器52の劣化レベルが2以下であるとき、統合ECU3の制御部37は、一時記憶部35に記憶されている車両データを記憶部36に書き込む。優先度が高い処理だけではなく、優先度が低い処理も実行される。車両データの書き込みに関して、劣化レベルが小さい程、記憶部36に書き込む車両データの数は多い。
【0136】
更に、車両Cが物体に衝突した場合において、サブ蓄電器52の劣化レベルが2であるとき、個別ECU2aの制御部28は処理の実行を停止する。車両Cが物体に衝突した場合において、サブ蓄電器52の劣化レベルが3以上であるとき、統合ECU3の制御部37は処理の実行を停止する。これにより、個別ECU2aによってドアの解錠が適切に実行される。
【0137】
<変形例>
本実施形態において、サブ蓄電器52の電力供給が中断したか否かを判定するタイミングは、車両Cが衝突したタイミングに限定されない。所定の条件は、メイン蓄電器51の電力供給が中断する可能性がある現象が発生することであればよい。優先度が高い処理は、ドアを解錠する処理に限定されない。車両Cが物体と衝突した場合に複数の個別ECU2及び統合ECU3が、全体として行う動作は、車両Cのドアの解錠と、車両データの書き込みとに限定されない。
【0138】
サブ蓄電器52の劣化は、サブ蓄電器52の容量の低下に限定されず、サブ蓄電器52の内部抵抗値の増加であってもよい。サブ蓄電器52の内部抵抗値も蓄電器データが示す複数の電流値及び複数の電圧値に基づいて算出される。劣化レベル1~4に対応する4つの第1緊急処理の少なくとも1つにおいて、個別ECU2aの制御部28は、一時記憶部26に記憶されている車両データを記憶部27に書き込んでもよい。
【0139】
統合ECU3の制御部37が車両Cの衝突を検知する方法は、一又は複数の車両データに基づいて衝突を検知する方法に限定されない。例えば、車両Cが物体に衝突した場合に、エアバッグから衝突信号が統合ECU3に入力される構成では、衝突信号が入力されたか否かに基づいて、車両Cの衝突を検知してもよい。各個別ECU2に衝突信号が入力される構成では、個別ECU2aの制御部28は、第1選択処理において、ステップS51では、衝突信号が入力されたか否かに基づいて、車両Cが物体に衝突したか否かを判定してもよい。制御部28は、車両Cが物体に衝突していないと判定した場合、車両Cが物体に衝突するまで待機する。制御部28は、車両Cが物体に衝突したと判定した場合、ステップS52を実行する。各個別ECU2に衝突信号が入力される構成では、個別ECU2bは、個別ECU2aと同様に、車両Cが物体に衝突したか否かを判定してもよい。
【0140】
劣化レベルの数は、4に限定されず、2、3又は5以上であってもよい。第1緊急処理及び第2緊急処理それぞれの数は、劣化レベルの数と一致する。各個別ECU2に接続されるドアモータ40又はアクチュエータ41の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。同様に、各個別ECU2に接続されるセンサ42の数は、1に限定されず、2以上であってもよい。
【0141】
複数の個別ECU2及び統合ECU3それぞれは、バスによって接続されてもよい。この場合、複数の個別ECU2及び統合ECU3それぞれは、例えば、CAN(Controller Area Network)の通信プロトコルが用いられる。個別ECU2a,2bそれぞれは、ドアモータ40、アクチュエータ41又はセンサ42等の複数の電気機器に電力を分配する機能を有していてもよい。また、統合ECU3の制御部37が有する処理素子は、ビークルコンピュータであってもよい。
【0142】
開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0143】
1 処理システム
2,2b 個別ECU
2a 個別ECU(処理装置,第2処理装置)
3 統合ECU(処理装置,第1処理装置)
20,30 クロック出力部
21,31 タイマ
22,32,32a,32b 通信部
23 出力部
24 車両データ入力部
25,34 信号入力部
26,35 一時記憶部
27,36 記憶部
28 制御部(処理部、第2処理部)
29,38 内部バス
33 蓄電器データ入力部
37 制御部(処理部、第1処理部)
40 ドアモータ
41 アクチュエータ
42 センサ
50 発電機
51 メイン蓄電器(第1蓄電器)
52 サブ蓄電器(第2蓄電器)
53 電流計
54 電圧計
55 電源管理装置
Ac,Ar 記憶媒体
C 車両
Pc,Pr コンピュータプログラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13