(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電流センサ及び電気制御装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G01R15/20 C
G01R15/20 D
(21)【出願番号】P 2020187249
(22)【出願日】2020-11-10
【審査請求日】2022-01-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】平野 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真
(72)【発明者】
【氏名】毛受 良一
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-046922(JP,A)
【文献】特開2017-003283(JP,A)
【文献】特開2014-160035(JP,A)
【文献】特表2008-545964(JP,A)
【文献】特開2013-228315(JP,A)
【文献】特開2010-266209(JP,A)
【文献】特開2014-202480(JP,A)
【文献】特開2007-128951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体に第1方向に流れる電流から発生する磁気を検出するための電流センサであって、
前記磁気を検出可能な磁気検出部と、集磁コアと、磁気シールドとを備え、
前記集磁コアは、前記第1方向に実質的に平行な第1コア部と、前記第1方向に直交する第2方向における前記第1コア部の両端部のそれぞれに連続する第2コア部及び第3コア部とを含み、
前記第2コア部及び前記第3コア部は、それぞれ、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に沿うように前記第1コア部の端部から延在し、
前記磁気検出部は、前記第3方向における前記第2コア部の端部近傍と前記第3コア部の端部近傍とによって挟まれるコアギャップに位置し、
前記磁気シールドは、前記第3方向に沿って見たときに前記コアギャップ、前記第2コア部の端部近傍及び前記第3コア部の端部近傍に重なるようにして位置する板状シールド部を含み、
前記磁気シールドは、
前記第1方向に沿って見たときに、前記第3方向に沿った前記第1コア部における前記磁気検出部の反対側、前記第2方向に沿った前記第2コア部における前記第3コア部の反対側及び前記第2方向に沿った前記第3コア部における前記第2コア部の反対側に位置しないことを特徴とする電流センサ。
【請求項2】
前記集磁コアは、前記第2コア部の端部の近傍に連続する第4コア部及び前記第3コア部の端部の近傍に連続する第5コア部をさらに含み、
前記第4コア部及び前記第5コア部は、前記第2方向に沿って互いに近づくように延びており、
前記板状シールド部は、前記第3方向に沿って見たときに前記コアギャップ、前記第4コア部及び前記第5コア部に重なるようにして位置することを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項3】
前記導体は、厚み方向を前記第3方向とし、前記第1方向に延びる板状体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電流センサ。
【請求項4】
前記導体は、厚み方向を前記第2方向とし、前記第1方向に延びる板状体であることを特徴とする請求項1に記載の電流センサ。
【請求項5】
前記磁気シールドは、前記第1方向に沿った前記板状シールド部の両端部のそれぞれに連続し、前記第3方向に沿って延びる第1シールド部及び第2シールド部を含み、
前記第1方向に沿って見たときに、前記磁気検出部は、前記第1シールド部及び前記第2シールド部によって挟まれる前記コアギャップ内に位置することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項6】
前記板状シールド部には、前記第3方向に貫通するスリット部が形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項7】
前記第3方向に沿って見たときに、前記スリット部の長手方向が前記第1方向と実質的に一致することを特徴とする請求項6に記載の電流センサ。
【請求項8】
前記第3方向に沿って見たときに、前記スリット部の長手方向が前記第2方向と実質的に一致することを特徴とする請求項6に記載の電流センサ。
【請求項9】
複数の前記スリット部が前記板状シールド部に形成されていることを特徴とする請求項6~8のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項10】
前記磁気シールドの構成材料の鉄損が、前記集磁コアの構成材料の鉄損よりも大きいことを特徴とする請求項1~9のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項11】
前記磁気検出部は、磁気抵抗効果素子又はホール素子を含むことを特徴とする請求項1~10のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項12】
前記磁気抵抗効果素子が、GMR素子又はTMR素子であることを特徴とする請求項11に記載の電流センサ。
【請求項13】
前記導体が、前記集磁コアの前記第1コア部、前記第2コア部及び前記第3コア部による形成される空間を前記第1方向に沿って貫通するように設けられていることを特徴とする請求項1~12のいずれかに記載の電流センサ。
【請求項14】
請求項13に記載の電流センサを備えることを特徴とする電気制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサ及び電気制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド電気自動車(HEV: Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(EV: Electric Vehicle)等のバッテリーの残量の測定、モータの駆動電流の測定や、コンバータ、インバータ等の電力制御機器に、電流センサが用いられている。この電流センサとしては、バスバー等の導体に電流が流れることにより発生する磁場を検出可能な磁気検出素子を含む磁気センサを備えるものが知られている。電流センサにおいて、例えば、AMR素子、GMR素子、TMR素子等の磁気抵抗効果素子、ホール素子等の磁気検出素子により、バスバー等の導体に流れる電流が非接触状態で検出される。
【0003】
従来、電流センサは、空隙(ギャップ)を有するリング状の磁性体コアを有し、当該空隙に磁気検出素子を含む磁気センサが配置されているものが知られている(特許文献1参照)。このような構造を有することで、導体から発生する磁束を磁性体コアに集束させ、空隙に配置されている磁気検出素子に、磁性体コアにより集束された磁束を印加させることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示の電流センサにおいて、導体に流れる電流が相対的に大きくなると、導体から発生する磁場が強くなり、それにより磁性体コアが磁気的に飽和しやすくなるため、磁気センサの出力の線形性が悪化するおそれがある。磁性体コアの空隙(ギャップ)を広くしたり、磁性体コアの体積を大きくしたりすれば、磁気センサの出力の線形性の悪化を改善することができる。しかしながら、磁性体コアの空隙(ギャップ)を広げると、導体から発生する磁場以外の磁場(以下、「外乱磁場」という場合がある。)が磁気検出素子に印加されやすくなり、電流センサによる検出精度が低下するおそれがある。
【0006】
上記課題に鑑みて、本発明は、外乱磁場の影響を抑制することができる電流センサ及び電気制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、導体に第1方向に流れる電流から発生する磁気を検出するための電流センサであって、前記磁気を検出可能な磁気検出部と、集磁コアと、磁気シールドとを備え、前記集磁コアは、前記第1方向に実質的に平行な第1コア部と、前記第1方向に直交する第2方向における前記第1コア部の両端部のそれぞれに連続する第2コア部及び第3コア部とを含み、前記第2コア部及び前記第3コア部は、それぞれ、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向に沿うように前記第1コア部の端部から延在し、前記磁気検出部は、前記第3方向における前記第2コア部の端部近傍と前記第3コア部の端部近傍とによって挟まれるコアギャップに位置し、前記磁気シールドは、前記第3方向に沿って見たときに前記コアギャップ、前記第2コア部の端部近傍及び前記第3コア部の端部近傍に重なるようにして位置する板状シールド部を含み、前記磁気シールドは、前記第1方向に沿って見たときに、前記第3方向に沿った前記第1コア部における前記磁気検出部の反対側、前記第2方向に沿った前記第2コア部における前記第3コア部の反対側及び前記第2方向に沿った前記第3コア部における前記第2コア部の反対側に位置しないことを特徴とする電流センサを提供する。
【0008】
前記集磁コアは、前記第2コア部の端部の近傍に連続する第4コア部及び前記第3コア部の端部の近傍に連続する第5コア部をさらに含み、前記第4コア部及び前記第5コア部は、前記第2方向に沿って互いに近づくように延びており、前記板状シールド部は、前記第3方向に沿って見たときに前記コアギャップ、前記第4コア部及び前記第5コア部に重なるようにして位置していてもよい。前記導体は、厚み方向を前記第2方向とし、前記第1方向に延びる板状体であってもよいし、厚み方向を前記第3方向とし、前記第1方向に延びる板状体であってもよい。
【0009】
前記磁気シールドは、前記第1方向に沿った前記板状シールド部の両端部のそれぞれに連続し、前記第3方向に沿って延びる2つの第1シールド部を含み、前記第1方向に沿って見たときに、前記磁気検出部は、前記2つの第1シールド部によって挟まれる前記コアギャップ内に位置していてもよい。
【0010】
前記板状シールド部には、前記第2方向に貫通するスリット部が形成されていてもよく、前記第2方向に沿って見たときに、前記スリット部の長手方向が前記第1方向と実質的に一致していてもよいし、前記スリット部の長手方向が前記第3方向と実質的に一致していてもよい。複数の前記スリット部が前記板状シールド部に形成されていてもよい。
【0011】
前記磁気シールドの構成材料の鉄損が、前記集磁コアの構成材料の鉄損よりも大きくてもよく、前記磁気検出部は、磁気抵抗効果素子又はホール素子を含んでいてもよく、前記磁気抵抗効果素子が、GMR素子又はTMR素子であってもよい。前記導体が、前記集磁コアの前記第1コア部、前記第2コア部及び前記第3コア部による形成される空間を前記第1方向に沿って貫通するように設けられていてもよい。
本発明は、上記電流センサを備えることを特徴とする電気制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外乱磁場の影響を抑制することができる電流センサ及び電気制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す側面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図5A】
図5Aは、コアギャップが相対的に狭い集磁コアを有し、磁気シールドを有しない電流センサにおけるX方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図5B】
図5Bは、コアギャップが相対的に狭い集磁コアを有し、磁気シールドを有しない電流センサにおけるY方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図6A】
図6Aは、コアギャップが相対的に広い集磁コアを有し、磁気シールドを有しない電流センサにおけるX方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図6B】
図6Bは、コアギャップが相対的に広い集磁コアを有し、磁気シールドを有しない電流センサにおけるY方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図6C】
図6Cは、コアギャップが相対的に広い集磁コアと磁気シールドとを有する電流センサにおけるX方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る電流センサの概略構成を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態における磁気検出部の回路構成を概略的に示す回路図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施の形態における磁気抵抗効果素子の一態様の概略構成を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施の形態における磁気抵抗効果素子の一態様の概略構成を示す切断端面図である。
【
図11A】
図11Aは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図11B】
図11Bは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図11C】
図11Cは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図11D】
図11Dは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第1態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図12A】
図12Aは、本発明の実施の形態に係る電流センサにおけるY方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図12B】
図12Bは、本発明の実施の形態に係る電流センサの変形例におけるY方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図12C】
図12Cは、本発明の実施の形態に係る電流センサの変形例におけるY方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の概略構成を示す斜視図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の概略構成を示す側面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の概略構成を示す側面図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【
図17A】
図17Aは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様におけるY方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図17B】
図17Bは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様におけるX方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図18A】
図18Aは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図18B】
図18Bは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図18C】
図18Cは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図18D】
図18Dは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第2態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、本発明の実施の形態における電流センサの第2態様の変形例におけるY方向の外乱磁場による影響を説明するための側面図である。
【
図20】
図20は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第3態様の概略構成を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第3態様の概略構成を示す側面図である。
【
図22】
図22は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第3態様の概略構成を示す側面図である。
【
図23A】
図23Aは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第3態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図23B】
図23Bは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第3態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図23C】
図23Cは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第3態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図23D】
図23Dは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第3態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図24】
図24は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第4態様の概略構成を示す斜視図である。
【
図25】
図25は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第4態様の概略構成を示す側面図である。
【
図26】
図26は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第4態様の概略構成を示す側面図である。
【
図27A】
図27Aは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第4態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図27B】
図27Bは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第4態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図27C】
図27Cは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第4態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図27D】
図27Dは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第4態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図28】
図28は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第5態様の概略構成を示す斜視図である。
【
図29】
図29は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第5態様の概略構成を示す側面図である。
【
図30】
図30は、本発明の実施の形態に係る電流センサの第5態様の概略構成を示す側面図である。
【
図31A】
図31Aは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第5態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図31B】
図31Bは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第5態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図31C】
図31Cは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第5態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図31D】
図31Dは、本発明の実施の形態に係る電流センサの第5態様の変形例の概略構成を示す斜視図である。
【
図32】
図32は、電流センサにおける集磁コアの構成材料と磁性シールドの構成材料との鉄損差による周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す斜視図であり、
図2は、本実施形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す側面図であり、
図3は、本実施形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す側面図であり、
図4は、本実施形態に係る電流センサの第1態様の概略構成を示す部分拡大切断端面図である。
【0015】
本実施形態を説明するにあたり、必要に応じ、いくつかの図面中、「第1方向、第2方向及び第3方向」を規定している。ここで、第1方向は、導体に流れる電流の方向である。第2方向は、第1方向に直交する方向であり、第1~第3態様及び第5態様における導体の幅方向並びに第4態様における導体の厚さ方向である。第3方向は、第1方向及び第2方向に直交する方向であり、第1~第3態様及び第5態様における導体の厚さ方向並びに第4態様における導体の幅方向である。なお、本明細書及び図面において、第1方向を「Z方向」と称し、第2方向を「X方向」と称し、第3方向を「Y方向」と称する場合がある。
【0016】
図1~
図4に示すように、本実施形態に係る電流センサ1の第1態様は、磁気を検出可能な磁気検出部2と、集磁コア3と、磁気シールド4と、Z方向に電流が流れる導体5とを備える。
【0017】
集磁コア3は、Z方向に実質的に平行な第1コア部31と、第1コア部31のX方向における両端部31A,31Bに連続し、Y方向(+Y方向)に延びる第2コア部32及び第3コア部33と、第2コア部32のY方向における端部32Aに連続し、X方向(-X方向)に延びる第4コア部34と、第3コア部33のY方向における端部33Aに連続し、X方向(+X方向)に延びる第5コア部35とを有する。第4コア部34及び第5コア部35は、それらの端面を互いに近づけるように、第2コア部32の端部32A及び第3コア部33の端部33AからX方向に沿って延びている。互いに対向する第4コア部34の端面と第5コア部35の端面とに挟まれる空隙(空間)が、コアギャップCGである。すなわち、集磁コア3は、コアギャップCGを有するリング状であり、Z方向に沿って見たときに略C字状のコアである。
【0018】
本実施形態において、集磁コア3の第1コア部31の端部31Aと第2コア部32との連続部、第1コア部31の端部31Bと第3コア部33との連続部、第2コア部32の端部32Aと第4コア部34との連続部、及び第3コア部33の端部33Aと第5コア部35との連続部は、いずれも湾曲形状(角丸形状)を有しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、これらの連続部は、屈曲形状(角を有する形状)であってもよいし、角が面取りされたC面取り形状であってもよい。
【0019】
コアギャップCGのX方向の長さLCG(第4コア部34の端面と第5コア部35の端面とのX方向における距離)は、例えば、6mm以上であればよく、6~12mm程度であればよい。当該長さLCGが6mm以上であることで、本実施形態に係る電流センサ1が磁気シールド4を備えることによる効果、すなわち、磁気シールド4により外乱磁場が磁気検出部2に印加されるのを抑制する効果が、効果的に奏され得る。
【0020】
本実施形態に係る電流センサ1が磁気シールド4を備えない場合を仮定すると、コアギャップCGのX方向の長さL
CGが相対的に小さく、第4コア部34の端面及び第5コア部35の端面が磁気検出部2に近接していれば、X方向の外乱磁場H
X及びY方向の外乱磁場H
Yは、いずれも集磁コア3に吸収され、磁気検出部2に印加され難い(
図5A及び
図5B参照)。すなわち、電流センサが外乱磁場H
X,H
Yによる影響を受けにくくなる。その一方で、導体5に流れる電流が大きくなると、集磁コア3が磁気的に飽和しやすくなり、磁気検出部2の出力の線形性が悪化するおそれがある。磁気検出部2の出力の線形性を改善するためにコアギャップCGのX方向の長さL
CGを相対的に大きく(例えば6mm以上)し、第4コア部34の端面及び第5コア部35の端面を磁気検出部2から離間させると、集磁コア3が磁気的に飽和しにくくなるものの、X方向の外乱磁場H
X及びY方向の外乱磁場H
Yのいずれもが磁気検出部2に印加されやすくなる(
図6A及び
図6B参照)。本実施形態に係る電流センサ1のように、Y方向に沿って見たときにコアギャップCGに重なるように磁気シールド4が設けられていることで、少なくともX方向の外乱磁場H
Xを集磁コア3及び磁気シールド4に誘導させることができる(
図6C参照)。そのため、少なくともX方向の外乱磁場H
Xが磁気検出部2に印加されるのを抑制することができる。
【0021】
集磁コア3のZ方向における幅W3は、5~20mm程度であればよい。本実施形態に係る電流センサ1において、磁気検出部2は集磁コア3のコアギャップCGに配置されているが、上記幅W3が相対的に小さい(例えば5mm未満)と、導体5から発生する磁束により、集磁コア3が磁気的に飽和しやすくなるおそれがある。一方、上記幅W3が相対的に大きくなると、電流センサ1のサイズが相対的に大きくなってしまう。
【0022】
磁気シールド4と集磁コア3とのY方向における間隙の長さG34は、例えば、3mm以下であればよく、1~2mm程度であればよい。当該間隙の長さG34が3mmを超えると、X方向の外乱磁場HXが当該間隙を抜けて磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。また、当該間隙の長さG34が相対的に短い(例えば1mm未満)であると、集磁コア3から磁気シールド4へと通る磁路が形成され、磁束が磁気シールド4に流れやすくなるため、集磁コア3が磁気的に飽和しやすくなるとともに、磁気検出部2にて検出すべき磁束が減少してしまうおそれがある。
【0023】
銅等により構成される導体5は、長手方向をZ方向と実質的に平行とし、厚み方向をY方向と実質的に平行とする板状体であって、コアギャップCGを有するリング状の集磁コア3内をZ方向に貫通して設けられている。導体5の長手方向はZ方向と実質的に平行であればよく、例えば導体5の軸線(導体5の中心を通る線)がZ方向に対して2°以下の角度で交差していればよい。また、導体5の厚み方向はY方向と実質的に平行であればよく、例えばY方向に対して2°以下の角度で交差していればよい。
【0024】
磁気検出部2は、コアギャップCGに設けられていればよい。本実施形態に係る電流センサ1の第1態様において、導体5に電流が流れると導体5から磁束が発生し、コアギャップCGを有するリング状の集磁コア3に当該磁束が集束される。集磁コア3が、コアギャップCGを有するリング状をなしていることで、コアギャップCGを含めた集磁コア3全体が磁束の経路(磁路)となる。すなわち、コアギャップCGに設けられている磁気検出部2は、集磁コア3に集束される磁束の経路(磁路)に位置しているということができる。そのため、本実施形態において「磁気検出部2がコアギャップCGに設けられる」とは、磁気検出部2が上記磁路に位置していればよいことを意味するものであって、磁気検出部2の全体がコアギャップCG内に位置していてもよいし、磁気検出部2の一部がコアギャップCG内に位置していてもよい。なお、磁気検出部2の詳細な構成については後述する。
【0025】
磁気シールド4は、Y方向に沿って見たときに、コアギャップCGに重なる板状シールド部41を含む。Y方向に沿って見たときに、板状シールド部41がコアギャップCGに重なっていることで、X方向の外乱磁場HXは集磁コア3及び磁気シールド4に誘導される。そのため、X方向の外乱磁場HXが磁気検出部2に印加されるのを抑制することができる。
【0026】
本実施形態において、Y方向に沿って見たときに、磁気シールド4は、板状シールド部41がコアギャップCGに完全に重なるように配置されている。すなわち、磁気シールド4の板状シールド部41のX方向における長さL41はコアギャップCGのX方向における長さLCG以上であればよく、集磁コア3のX方向の長さL3以下であればよい。板状シールド部41のX方向における長さL41が相対的に長い方が、X方向の外乱磁場HXに対するシールド効果を向上させ得る。また、板状シールド部41のZ方向における長さW41は、コアギャップCGのZ方向における長さ、すなわち集磁コア3のZ方向における幅W3以上であればよい。例えば、板状シールド部41のX方向における長さL41はコアギャップCGのX方向の長さLCG+4mm以上、集磁コア3のX方向の長さL3以下程度であればよく、Z方向における長さW41は集磁コア3のZ方向における幅W3以上、集磁コア3のZ方向における幅W3+8mm程度であればよい。なお、本実施形態に係る電流センサ1は、この態様に限定されるものではない。例えば、磁気シールド4によって少なくともX方向の外乱磁場HXが磁気検出部2に印加されるのを抑制可能な限りにおいて、板状シールド部41がコアギャップCGに完全に重なっていなくてもよい。
【0027】
板状シールド部41の厚さ(Y方向における長さ)は、特に限定されるものではないが、例えば、1~3mm程度であればよい。当該厚さが相対的に薄すぎると(例えば1mm未満)、磁気シールド4が飽和しやすくなるとともに、電流センサ1からの出力の線形性に悪影響を与えるおそれがある。一方、当該厚さが相対的に厚い場合には、電流センサ1の製造コスト及び電流センサ1の高さ寸法に影響するおそれがある。
【0028】
集磁コア3及び磁気シールド4は、ともに珪素鋼、電磁鋼、純鉄(SUY)、パーマロイ等の軟磁性材料により構成されていれば良いが、低コスト化の観点から珪素鋼、電磁鋼、純鉄等が好ましい。磁気シールド4の構成材料の鉄損は、集磁コア3の構成材料の鉄損よりも大きければよい。導体5に所定の電流が流れることにより導体5から発生する磁場は集磁コア3及び磁気シールド4に流れる。導体5に流れる電流の周波数が高くなると、鉄損が相対的に大きい材料により構成される磁気シールド4の周波数特性が悪化し、磁気シールド4に流れる磁場が相対的に減少する。鉄損が相対的に小さい材料により構成される集磁コア3も周波数特性が悪化し、磁場が流れにくくなるものの、磁気シールド4に流れる磁場が相対的に減少する分、集磁コア3に流れる磁場が相対的に増加する。その結果として、磁気シールド4を有しない電流センサ1に比べ、磁気検出部2に印加される磁場の磁束密度は安定すると考えられる。このことは後述する試験例において明確ではあるが、両者の鉄損の差が大きくなるほど、周波数特性が改善され、磁気検出部2に印加される磁場の磁束密度の減衰を抑制することができる(
図32参照)。その結果、交流電流に対する電流センサ1の応答特性を安定化させることができる。集磁コア3の構成材料の鉄損と磁気シールド4の構成材料の鉄損との差は、例えば、2.0W/kg以上であるのが好ましく、4.5~10.0W/kgであるのがより好ましい。鉄損は、JIS-C-2550の規定に基づくエプスタイン試験法に従い、周波数50Hz時の最大磁束密度1.5Tの正弦波励磁のときの単位重量当たりの鉄損の大きさ(圧延方向とそれに対する直角方向の平均)として求められる値である。なお、集磁コア3の構成材料は、磁気シールド4の構成材料よりも鉄損の小さい材料である限り、磁気シールド4の構成材料と同一種類の材料であってもよいし、異なる種類の材料であってもよい。例えば、集磁コア3と磁気シールド4とがともに電磁鋼により構成されるが、磁気シールド4を構成する電磁鋼の鉄損が、集磁コア3を構成する電磁鋼の鉄損よりも大きければよい。
【0029】
本実施形態に係る電流センサ1は、磁気検出部2と信号処理部6とを備える。信号処理部6は、磁気検出部2から出力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D(アナログ-デジタル)変換部61と、A/D変換部61によりデジタル変換されたデジタル信号を演算処理する演算部62とを含む。なお、演算部62にて演算処理された演算処理結果をアナログ信号として出力する場合には、信号処理部6は、演算部62の下流側にD/A(デジタル-アナログ)変換部(図示を省略)をさらに含んでいればよい。
【0030】
本実施形態において、磁気検出部2の回路構成は、第1抵抗部R1、第2抵抗部R2、第3抵抗部R3及び第4抵抗部R4の4つの抵抗部をブリッジ接続してなるホイートストンブリッジ回路Cであってもよいし、第1抵抗部R1及び第2抵抗部R2の2つの抵抗部をハーフブリッジ接続してなるものであってもよい。第1~第4抵抗部R1~R4が単一の磁気抵抗効果素子(AMR素子、GMR素子、TMR素子等)又はホール素子を含んでいてもよいし、複数の磁気抵抗効果素子(AMR素子、GMR素子、TMR素子等)又はホール素子を含んでいてもよい。
【0031】
磁気検出部2が有するホイートストンブリッジ回路Cは、電源ポートVと、グランドポートGと、2つの出力ポートE1,E2と、直列に接続された第1抵抗部R1及び第2抵抗部R2と、直列に接続された第3抵抗部R3及び第4抵抗部R4とを含む。第1抵抗部R1及び第3抵抗部R3の各一端は、電源ポートVに接続される。第1抵抗部R1の他端は、第2抵抗部R2の一端と出力ポートE1とに接続される。第3抵抗部R3の他端は、第4抵抗部R4の一端と出力ポートE2とに接続される。第2抵抗部R2及び第4抵抗部R4の各他端は、グランドポートGに接続される。電源ポートVには、所定の大きさの電源電圧が印加され、グランドポートGはグランドに接続される。
【0032】
本実施形態において、ホイートストンブリッジ回路Cに含まれる第1~第4抵抗部R1~R4は、AMR素子、GMR素子又はTMR素子等のMR素子を含んでいてもよいし、ホール素子を含んでいてもよい。GMR素子及びTMR素子は、磁化方向が固定された磁化固定層と、印加される磁場の方向に応じて磁化方向が変化する自由層と、磁化固定層及び自由層の間に配置される非磁性層とを含む。AMR素子は、形状異方性を有する磁性層を含む。
【0033】
第1~第4抵抗部R1~R4を構成するGMR素子又はTMR素子等のMR素子は、複数の第1電極71と、複数のMR膜80と、複数の第2電極72とを有していればよい。複数の第1電極71は、基板(図示せず)上に設けられている。第1電極71は、下部リード電極とも称される。各第1電極71は細長い形状を有する。第1電極71の長手方向に隣接する2つの第1電極71の間には、間隙が形成されている。第1電極71の上面における、長手方向の両端近傍にそれぞれMR膜80が設けられている。MR膜80は、平面視略円形状であり、第1電極71側から順に積層された自由層81、非磁性層82、磁化固定層83及び反強磁性層84を含む。自由層81は、第1電極71に電気的に接続されている。反強磁性層84は、反強磁性材料により構成され、磁化固定層83との間で交換結合を生じさせることで、磁化固定層83の磁化の方向を固定する役割を果たす。複数の第2電極72は、複数のMR膜80上に設けられている。各第2電極72は細長い形状を有し、第1電極71の長手方向に隣接する2つの第1電極71上に配置され、隣接する2つのMR膜80の反強磁性層84同士を電気的に接続する。第2電極72は、上部リード電極とも称される。なお、MR膜80は、第2電極72側から順に自由層81、非磁性層82、磁化固定層83及び反強磁性層84が積層されてなる構成を有していてもよい。また、磁化固定層83を、強磁性層/非磁性中間層/強磁性層の積層フェリ構造とし、両強磁性層を反強磁性的に結合させてなる、いわゆるセルフピン止め型の固定層(Synthetic Ferri Pinned層,SFP層)とすることで、反強磁性層84が省略されていてもよい。
【0034】
TMR素子においては、非磁性層82はトンネルバリア層である。GMR素子においては、非磁性層82は非磁性導電層である。TMR素子、GMR素子において、自由層81の磁化の方向が磁化固定層83の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0035】
第1~第4抵抗部R1~R4がTMR素子又はGMR素子により構成される場合、磁気検出部2のホイートストンブリッジ回路Cにおいて、第1抵抗部R1及び第2抵抗部R2の磁化固定層83の磁化方向はX方向に平行であって、第1抵抗部R1の磁化固定層83の磁化方向と、第2抵抗部R2の磁化固定層83の磁化方向とは、互いに反平行方向である。また、第3抵抗部R3及び第4抵抗部R4の磁化固定層83の磁化方向はX方向に平行であって、第3抵抗部R3の磁化固定層83の磁化方向と、第4抵抗部R4の磁化固定層83の磁化方向とは、互いに反平行方向である。磁気検出部2において、導体5から発生するX方向の磁場の磁界強度の変化に応じて、出力ポートE1,E2の電位差が変化し、出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号がセンサ信号Sとして信号処理部6に出力される。差分検出器(図示省略)は、出力ポートE1,E2の電位差に対応する信号を増幅し、センサ信号Sとして信号処理部6のA/D変換部61に出力する。
【0036】
A/D変換部61は、磁気検出部2から出力されるセンサ信号S(電流に関するアナログ信号)をデジタル信号に変換し、当該デジタル信号が演算部62に入力される。演算部62は、A/D変換部61によりアナログ信号から変換されたデジタル信号についての演算処理を行う。この演算部62は、例えば、マイクロコンピュータ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等により構成される。
【0037】
本実施形態に係る電流センサ1の第1態様において、
図11A~11Dに示すように、磁気シールド4の板状シールド部41に、Y方向に貫通するスリット部42が形成されていてもよい。スリット部42は、その長手方向をX方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図11A参照)、その長手方向をZ方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図11B及び
図11C参照)、その長手方向をX方向及びZ方向に交差させるように形成されていてもよい(
図11D参照)。磁気シールド4の板状シールド部41には、1つのスリット部42が形成されていてもよいし(
図11A、
図11B及び
図11D参照)、複数のスリット部42が形成されていてもよい(
図11C参照)。スリット部42は、Y方向に沿って見たときに、磁気検出部2に重なるように、すなわちスリット部42から磁気検出部2の少なくとも一部が露出するように形成されていてもよいし(
図11A、
図11B及び
図11D参照)、磁気検出部2に重ならないように形成されていてもよい(
図11C参照)。
【0038】
本実施形態に係る電流センサ1の第1態様において、磁気シールド4の板状シールド部41にスリット部42が形成されていないと、Y方向の外乱磁場H
Yは磁気シールド4の板状シールド部41の厚さ方向に透過する(
図12A参照)。X方向に感度軸を有する磁気検出部2に、Y方向の外乱磁場H
Yが印加したとしても、通常、大きな影響を受けない。しかし、電流センサ1における磁気検出部2の組付け誤差等によって、磁気検出部2の感度軸がX方向から±Y方向にずれている場合には、スリット部42が形成されていない板状シールド部41は、Y方向の外乱磁場H
Yを当該板状シールド部41の厚さ方向に透過させてしまうため、電流センサ1が外乱磁場H
Yによる影響を受けてしまうおそれがある。
【0039】
一方で、板状シールド部41にスリット部42が形成されていることで、Y方向の外乱磁場H
Yをスリット部42の両側(Y方向に沿って見たときにおけるスリット部42の短手方向における両側)に分散させることができる。そのため、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重なるように形成されている場合には、Y方向に沿って磁気検出部2に向かう外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されるのを抑制することができる(
図12B参照)。
【0040】
なお、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重ならないように形成されている場合には、Y方向に沿って磁気検出部2に向かう外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されるのを抑制することは困難となるが、磁気シールド4の外側から回り込んで磁気シールド4に誘導される外乱磁場H
Yが電流センサ1に影響を及ぼすのを抑制することができる(
図12C参照)。
【0041】
図11Aに示す態様において、スリット部42の長手方向(X方向)の長さL
42は、コアギャップCGのX方向における長さL
CGよりも短くてもよいし、長くてもよいし、当該長さL
CGと同一であってもよい。
図11A~11Dに示す態様において、スリット部42の短手方向の長さW
42は、例えば1~4mm程度であればよく、2~3mm程度であるのが好ましい。当該長さW
42が1mm未満であると、スリット部42によって外乱磁場H
Yを効果的に分散させることができずに、外乱磁場H
Yが磁気シールド4の板状シールド部41を厚さ方向に透過して磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。また、当該長さW
42が4mmを超えると、Y方向の外乱磁場H
Yがスリット部42を抜けて磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。
【0042】
本実施形態に係る電流センサ1の第1態様によれば、Y方向から見たときに集磁コア2のコアギャップCGに重なるように磁気シールド4が設けられていることで、少なくともX方向の外乱磁場HXを集磁コア2及び磁気シールド4に誘導させることができ、当該外乱磁場HXによる影響を抑制することができる。よって、本実施形態に係る電流センサ1の第1態様によれば、導体5に流れる電流を高い精度で検出することができる。
【0043】
本実施形態に係る電流センサ1の第2態様について説明する。なお、上記第1態様と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
図13~16に示すように、電流センサ1の第2態様は、磁気を検出可能な磁気検出部2と、集磁コア3と、磁気シールド4と、Z方向に電流が流れる導体5とを備える。
【0044】
磁気シールド4は、板状シールド部41のZ方向の両端部41A,41Bに連続し、Y方向に沿って延びる第1シールド部43及び第2シールド部44を含む。板状シールド部41のX方向の長さL41は、第1シールド部43のX方向の長さL43及び第2シールド部44のX方向の長さと同一である。すなわち、磁気シールド4は、X方向に沿って見たときに、略U字状を有している。
【0045】
本実施形態に係る電流センサ1の第2態様において、磁気シールド4は、板状シールド部41のZ方向の両端部41A,41Bに連続する第1シールド部43及び第2シールド部44を含む。第1シールド部43及び第2シールド部44は、板状シールド部41の両端部41A,41Bから-Y方向に延びている。磁気シールド4が第1シールド部43及び第2シールド部44を含んでいることで、Y方向の外乱磁場H
Yが第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導されるため(
図17A参照)、当該外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されることを抑制することができる。また、X方向の外乱磁場H
Xは、集磁コア3の第4コア部34又は第5コア部35から第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導されるため(
図17B参照)、当該外乱磁場H
Xが磁気検出部2に印加されることを抑制することができる。
【0046】
第1シールド部43及び第2シールド部44のY方向における長さT
43,T
44は、導体5に接触しない程度であれば特に限定されるものではないが、Z方向に沿って見たときに、コアギャップCGに完全に重なる程度の長さ以上であることが好ましい(
図16参照)。Z方向に沿って見たときに、第1シールド部43及び第2シールド部44がコアギャップCGに完全に重なっていることで、X方向の外乱磁場H
X及びY方向の外乱磁場H
Yのいずれもが磁気検出部2に印加されるのを効果的に抑制することができる。当該長さT
43,T
44は、例えば、6~10mm程度であればよい。なお、第1シールド部43のY方向における長さT
43と第2シールド部44のY方向における長さT
44とは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0047】
本実施形態において、板状シールド部41の両端部41A,41Bと、第1シールド部43及び第2シールド部44との連続部は、いずれも湾曲形状(角丸形状)を有しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、これらの連続部は、屈曲形状(角を有する形状)であってもよいし、角が面取りされたC面取り形状であってもよい。
【0048】
本実施形態に係る電流センサ1の第2態様において、
図18A~18Dに示すように、磁気シールド4の板状シールド部41に、Y方向に貫通するスリット部42が形成されていてもよい。スリット部42は、その長手方向をX方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図18A参照)、その長手方向をZ方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図18B及び
図18C参照)、その長手方向をX方向及びZ方向に交差させるように形成されていてもよい(
図18D参照)。磁気シールド4の板状シールド部41には、1つのスリット部42が形成されていてもよいし(
図18A、
図18B及び
図18D参照)、複数のスリット部42が形成されていてもよい(
図18C参照)。スリット部42は、Y方向に沿って見たときに、磁気検出部2に重なるように、すなわちスリット部42から磁気検出部2の少なくとも一部が露出するように形成されていてもよいし(
図18A、
図18B及び
図18D参照)、磁気検出部2に重ならないように形成されていてもよい(
図18C参照)。
【0049】
本実施形態に係る電流センサ1の第2態様において、Y方向の外乱磁場H
Yは第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導されやすいが、磁気シールド4の板状シールド部41にスリット部42が形成されていないと、Y方向の外乱磁場H
Yの一部は磁気シールド4の板状シールド部41の厚さ方向に透過してしまう(
図17A参照)。その結果、電流センサ1が外乱磁場H
Yによる影響を受けてしまうおそれがある。
【0050】
一方で、板状シールド部41にスリット部42が形成されていることで、Y方向の外乱磁場H
Yをスリット部42の両側(Y方向に沿って見たときにおけるスリット部42の短手方向(Z方向)における両側)に分散させることができ、より効果的に第1シールド部43及び第2シールド部44に当該外乱磁場H
Yを誘導させやすくなっている。そのため、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重なるように形成されている場合には、Y方向に沿って磁気検出部2に向かう外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されるのを効果的に抑制することができる(
図19参照)。
【0051】
なお、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重ならないように形成されている場合には、磁気シールド4の外側から回り込んで磁気シールド4に誘導される外乱磁場H
Yが電流センサ1に影響を及ぼすのを抑制することができる(
図12C参照)。
【0052】
図18Aに示す態様において、スリット部42の長手方向(X方向)の長さL
42は、コアギャップCGのX方向における長さL
CGよりも短くてもよいし、長くてもよいし、当該長さL
CGと同一であってもよい。
図18A~18Dに示す態様において、スリット部42の短手方向の長さW
42は、例えば1~4mm程度であればよく、2~3mm程度であるのが好ましい。当該長さW
42が1mm未満であると、スリット部42による外乱磁場H
Yを分散させる効果が低下し、磁気シールド4の板状シールド部41を厚さ方向に透過する外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。また、当該長さW
42が4mmを超えると、Y方向の外乱磁場H
Yがスリット部42を抜けて磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。
【0053】
上述した構成を有する本実施形態に係る電流センサ1の第2態様においては、磁気シールド4が板状シールド部41の両端部41A,41Bに連続する第1シールド部43及び第2シールド部44を含むことで、Y方向の外乱磁場HYを第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導させることができる。また、X方向の外乱磁場HXは磁気シールド4の板状シールド部41及び集磁コア3に誘導される。よって、電流センサ1の第2態様によれば、X方向の外乱磁場HX及びY方向の外乱磁場HYにより検出誤差が生じるのを抑制することができる。
【0054】
本実施形態に係る電流センサ1の第3態様について説明する。なお、上記第1態様及び第2態様と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
図20~22に示すように、電流センサ1の第3態様は、磁気を検出可能な磁気検出部2と、集磁コア3と、磁気シールド4と、Z方向に電流が流れる導体5とを備える。
【0055】
集磁コア3は、第1コア部31と、第1コア部31の両端部31A,31Bに連続する第2コア部32及び第3コア部33と、第2コア部32のY方向における所定の位置321に連続し、X方向に沿って延びる第4コア部34と、第3コア部33のY方向における所定の位置331に連続し、X方向に沿って延びる第5コア部35とを含む。第2コア部32は、第4コア部34との連続部321からさらにY方向に沿って延びており、第3コア部33は、第5コア部35との連続部331からさらにY方向に沿って延びている。すなわち、第4コア部34は、第2コア部32の端部32Aに連続しておらず、第5コア部35は、第3コア部33の端部33Aに連続していない。第4コア部34及び第5コア部35は、それらの端面を互いに近づけるようにX方向に沿って延びている。第4コア部34の端面と第5コア部35の端面とに挟まれる空隙(空間)がコアギャップCGである。
【0056】
本実施形態に係る電流センサ1の第3態様においては、第2コア部32における第4コア部34との連続部321からY方向に沿って当該第2コア部32が延びており、かつ第3コア部33における第5コア部35との連続部331からY方向に沿って当該第3コア部33が延びていることで、X方向の外乱磁場HXを集磁コア3の第1コア部31側と、第2コア部32の端部32A側又は第3コア部33の端部33A側とに誘導させることができ、当該外乱磁場HXによる影響を抑制することができる。
【0057】
本実施形態において、集磁コア3の第1コア部31の端部31Aと第2コア部32との連続部、第1コア部31の端部31Bと第3コア部33との連続部、第2コア部32と第4コア部34との連続部321、及び第3コア部33と第5コア部35との連続部331は、いずれも屈曲形状(角を有する形状)を有しているが、この態様に限定されるものではない。例えば、これらの連続部は、湾曲形状(角丸形状)であってもよいし、角が面取りされたC面取り形状であってもよい。
【0058】
第1コア部31を下方に、第2コア部32及び第3コア部33を第1コア部31の両端部31A,31Bから上方に延ばすようにして集磁コア3を位置させたとき、磁気シールド4の板状シールド部41は、第4コア部34及び第5コア部35の上方に、X方向において、第2コア部32及び第3コア部33の間に挟まれるように配置される。このような構成を有する電流センサ1の第3態様において、第2コア部32における第4コア部34の連続部321から端部32AまでのY方向に沿った長さT322及び第3コア部33における第5コア部35の連続部331から端部33AまでのY方向に沿った長さT332は、特に限定されるものではない。例えば、当該長さT322,T332は、第2コア部32の端部32A及び第3コア部33の端部33Aが板状シールド部41よりも上方に飛び出す程度の長さであってもよいし、第2コア部32の端部32A及び第3コア部33の端部33Aよりも板状シールド部41が上方に飛び出す程度の長さであってもよい。また、当該長さT322,T332は、板状シールド部41の上面と両端部32A,33Aとが同一の平面(XZ平面)上に位置する程度の長さであってもよい。
【0059】
磁気シールド4(板状シールド部41)と集磁コア3(第4コア部34及び第5コア部35)とのY方向における間隙の長さG34は、例えば、3mm以下であればよく、1~2mm程度であればよい。当該間隙の長さG34が3mmを超えると、Y方向の外乱磁場HYが磁気シールド4のZ方向における端面の外側から磁気検出部2に向かって回り込み、磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。また、当該間隙の長さG34が相対的に短い(例えば1mm未満)であると、集磁コア3から磁気シールド4を通る磁路が形成され、磁束が磁気シールド4に流れやすくなるため、集磁コア3が磁気的に飽和しやすくなるとともに、磁気検出部2にて検出すべき磁束が減少してしまうおそれがある。
【0060】
本実施形態において、Y方向に沿って見たときに、磁気シールド4は、板状シールド部41がコアギャップCGに完全に重なるように配置されている。すなわち、磁気シールド4の板状シールド部41のX方向における長さL41及びZ方向における長さW41は、コアギャップCGのX方向における長さLCG及びZ方向における長さ以上、すなわち集磁コア3のZ方向における幅W3以上であればよい。例えば、板状シールド部41のX方向における長さL41はコアギャップCGのX方向の長さLCG+4mm以上、集磁コア3のX方向の長さL3以下程度であればよく、Z方向における長さW41は集磁コア3のZ方向における幅W3以上、集磁コア3のZ方向における幅W3+8mm程度であればよい。なお、本実施形態に係る電流センサ1の第3態様は、この態様に限定されるものではない。例えば、磁気シールド4によってY方向の外乱磁場HYが磁気検出部2に印加されるのを抑制可能な限りにおいて、板状シールド部41がコアギャップCGに完全に重なっていなくてもよい。
【0061】
本実施形態に係る電流センサ1の第3態様において、
図23A~23Dに示すように、磁気シールド4の板状シールド部41に、Y方向に貫通するスリット部42が形成されていてもよい。スリット部42は、その長手方向をX方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図23A参照)、その長手方向をZ方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図23B及び
図23C参照)、その長手方向をX方向及びZ方向に交差させるように形成されていてもよい(
図23D参照)。磁気シールド4の板状シールド部41には、1つのスリット部42が形成されていてもよいし(
図23A、
図23B及び
図23D参照)、複数のスリット部42が形成されていてもよい(
図23C参照)。スリット部42は、Y方向に沿って見たときに、磁気検出部2に重なるように、すなわちスリット部42から磁気検出部2の少なくとも一部が露出するように形成されていてもよいし(
図23A、
図23B及び
図23D参照)、磁気検出部2に重ならないように形成されていてもよい(
図23C参照)。
【0062】
本実施形態に係る電流センサ1の第3態様において、磁気シールド4の板状シールド部41にスリット部42が形成されていないと、Y方向の外乱磁場H
Yの一部は磁気シールド4の板状シールド部41の厚さ方向に透過してしまう(
図12A参照)。その結果、電流センサ1が外乱磁場H
Yによる影響を受けてしまうおそれがある。
【0063】
一方で、板状シールド部41にスリット部42が形成されていることで、Y方向の外乱磁場H
Yをスリット部42の両側(Y方向に沿って見たときにおけるスリット部42の短手方向(Z方向)における両側)に分散させることができる。そのため、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重なるように形成されている場合には、Y方向に沿って磁気検出部2に向かう外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されるのを効果的に抑制することができる(
図12B参照)。
【0064】
なお、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重ならないように形成されている場合には、磁気シールド4の外側から回り込んで磁気シールド4に誘導される外乱磁場H
Yが電流センサ1に影響を及ぼすのを抑制することができる(
図12C参照)。
【0065】
図23Aに示す態様において、スリット部42の長手方向(X方向)の長さL
42は、コアギャップCGのX方向における長さL
CGよりも短くてもよいし、長くてもよいし、当該長さL
CGと同一であってもよい。
図23A~23Dに示す態様において、スリット部42の短手方向の長さW
42は、例えば1~4mm程度であればよく、2~3mm程度であるのが好ましい。当該長さW
42が1mm未満であると、スリット部42による外乱磁場H
Yを分散させる効果が低下し、磁気シールド4の板状シールド部41を厚さ方向に透過する外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。また、当該長さW
42が4mmを超えると、Y方向の外乱磁場H
Yがスリット部42を抜けて磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。
【0066】
上述した構成を有する電流センサ1の第3態様によれば、X方向の外乱磁場HX及びY方向の外乱磁場HYによる影響を受けることを抑制することができるため、導体5に流れる電流を高い精度で検出することができる。
【0067】
本実施形態に係る電流センサ1の第4態様について説明する。なお、上記第1~第3態様と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
図24~26に示すように、電流センサ1の第4態様は、磁気を検出可能な磁気検出部2と、集磁コア3と、磁気シールド4と、Z方向に電流が流れる導体5とを備える。
【0068】
集磁コア3は、Z方向に実質的に平行な第1コア部31と、第1コア部31のX方向における両端部31A,31Bに連続し、Y方向(+Y方向)に延びる第2コア部32及び第3コア部33とを有する。X方向において互いに対向する第2コア部32の端部近傍と第3コア部33の端部近傍とに挟まれる空隙(空間)が、コアギャップCGである。すなわち、集磁コア3は、コアギャップCGを有し、Z方向に沿って見たときに略U字状のコアである。第4態様において、導体5から発生し、集磁コア3に集束される磁束は、第2コア部32の端部又は第3コア部33の端部から出て第3コア部33の端部又は第2コア部32の端部に吸収されるが、「第2コア部32の端部近傍」及び「第3コア部33の端部近傍」とは、第2コア部32の端部及び第3コア部33の端部において上記磁束の出る領域、第2コア部32の端部及び第3コア部33の端部において上記磁束が吸収される領域として規定され得る。この磁束が出る又は吸収される領域は、例えば磁気シミュレーション等により求められ得る。
【0069】
コアギャップCGのX方向の長さLCG(第2コア部32の端部近傍と第3コア部33の端部近傍とのX方向における距離)は、例えば、6mm以上であればよく、6~12mm程度であればよい。当該長さLCGが6mm以上であることで、本実施形態に係る電流センサ1が磁気シールド4を備えることによる効果、すなわち、磁気シールド4により外乱磁場が磁気検出部2に印加されるのを抑制する効果が、効果的に奏され得る。
【0070】
磁気シールド4は、磁気シールド4は、板状シールド部41のZ方向の両端部41A,41Bに連続し、Y方向に沿って延びる第1シールド部43及び第2シールド部44を含む。板状シールド部41のX方向の長さL41は、第1シールド部43のX方向の長さL43及び第2シールド部44のX方向の長さと同一である。すなわち、磁気シールド4は、X方向に沿って見たときに、略U字状を有している。
【0071】
本実施形態に係る電流センサ1の第4態様において、磁気シールド4は、板状シールド部41のZ方向の両端部41A,41Bに連続する第1シールド部43及び第2シールド部44を含む。第1シールド部43及び第2シールド部44は、板状シールド部41の両端部41A,41Bから-Y方向に延びている。磁気シールド4が第1シールド部43及び第2シールド部44を含んでいることで、Y方向の外乱磁場H
Yが第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導されるため(
図17A参照)、当該外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されることを抑制することができる。また、X方向の外乱磁場H
Xは、集磁コア3の第4コア部34又は第5コア部35から第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導されるため(
図17B参照)、当該外乱磁場H
Xが磁気検出部2に印加されることを抑制することができる。
【0072】
第1シールド部43及び第2シールド部44は、X方向における実質的に中央に、+Y方向に凹む凹部45,46を有している。この凹部45,46のX方向における長さL45,L46は、特に限定されるものではないが、導体5の厚みよりも大きければよい。電流センサ1の第4態様において、導体5は、厚み方向をX方向とし、Z方向に延びるように設けられている。導体5の一部がこの凹部45,46内に配置されることで、電流センサ1の全体のサイズを大きくすることなく、Y方向の外乱磁場HYが磁気検出部2に印加されるのを第1シールド部43及び第2シールド部44により抑制する効果が奏され得る。
【0073】
導体5は、その厚み方向をX方向とし、その幅方向をY方向として、Z方向に延びるように設けられている。このような態様で導体5が配置されることで、電流センサ1のX方向におけるサイズをコンパクトにすることができる。一方で、このような態様で導体5が配置されると、電流センサ1のY方向におけるサイズが大きくなってしまうが、第1シールド部43及び第2シールド部44に凹部45,46が設けられており、その凹部45,46内に導体5の一部が配置されることで、電流センサ1のY方向におけるサイズが大きくなるのを防止することができる。
【0074】
本実施形態に係る電流センサ1の第4態様において、
図27A~27Dに示すように、磁気シールド4の板状シールド部41に、Y方向に貫通するスリット部42が形成されていてもよい。スリット部42は、その長手方向をX方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図27A参照)、その長手方向をZ方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図27B及び
図27C参照)、その長手方向をX方向及びZ方向に交差させるように形成されていてもよい(
図27D参照)。磁気シールド4の板状シールド部41には、1つのスリット部42が形成されていてもよいし(
図27A、
図27B及び
図27D参照)、複数のスリット部42が形成されていてもよい(
図27C参照)。スリット部42は、Y方向に沿って見たときに、磁気検出部2に重なるように、すなわちスリット部42から磁気検出部2の少なくとも一部が露出するように形成されていてもよいし(
図27A、
図27B及び
図27D参照)、磁気検出部2に重ならないように形成されていてもよい(
図27C参照)。
【0075】
本実施形態に係る電流センサ1の第4態様において、磁気シールド4の板状シールド部41にスリット部42が形成されていないと、Y方向の外乱磁場H
Yの一部は磁気シールド4の板状シールド部41の厚さ方向に透過してしまう(
図17A参照)。その結果、電流センサ1が外乱磁場H
Yによる影響を受けてしまうおそれがある。
【0076】
一方で、板状シールド部41にスリット部42が形成されていることで、Y方向の外乱磁場H
Yをスリット部42の両側(Y方向に沿って見たときにおけるスリット部42の短手方向(Z方向)における両側)に分散させることができる。そのため、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重なるように形成されている場合には、Y方向に沿って磁気検出部2に向かう外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されるのを効果的に抑制することができる(
図19参照)。
【0077】
なお、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重ならないように形成されている場合には、磁気シールド4の外側から回り込んで磁気シールド4に誘導される外乱磁場H
Yが電流センサ1に影響を及ぼすのを抑制することができる(
図12C参照)。
【0078】
図27Aに示す態様において、スリット部42の長手方向(X方向)の長さL
42は、コアギャップCGのX方向における長さL
CGよりも短くてもよいし、長くてもよいし、当該長さL
CGと同一であってもよい。
図27A~27Dに示す態様において、スリット部42の短手方向の長さW
42は、例えば1~4mm程度であればよく、2~3mm程度であるのが好ましい。当該長さW
42が1mm未満であると、スリット部42による外乱磁場H
Yを分散させる効果が低下し、磁気シールド4の板状シールド部41を厚さ方向に透過する外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。また、当該長さW
42が4mmを超えると、Y方向の外乱磁場H
Yがスリット部42を抜けて磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。
【0079】
上述した構成を有する電流センサ1の第4態様によれば、X方向の外乱磁場HX及びY方向の外乱磁場HYによる影響を受けることを抑制することができるため、導体5に流れる電流を高い精度で検出することができる。
【0080】
本実施形態に係る電流センサ1の第5態様について説明する。なお、上記第1~第4態様と同様の構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略するものとする。
図28~30に示すように、電流センサ1の第5態様は、磁気を検出可能な磁気検出部2と、集磁コア3と、磁気シールド4と、Z方向に電流が流れる導体5とを備える。
【0081】
本実施形態に係る電流センサ1の第5態様において、磁気シールド4は、板状シールド部41のZ方向の両端部41A,41Bに連続する第1シールド部43及び第2シールド部44を含む。第1シールド部43及び第2シールド部44は、板状シールド部41の両端部41A,41Bから-Y方向に延びている。磁気シールド4が第1シールド部43及び第2シールド部44を含んでいることで、Y方向の外乱磁場H
Yが第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導されるため(
図17A参照)、当該外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されることを抑制することができる。また、X方向の外乱磁場H
Xは、集磁コア3の第4コア部34又は第5コア部35から第1シールド部43及び第2シールド部44に誘導されるため(
図17B参照)、当該外乱磁場HXが磁気検出部2に印加されることを抑制することができる。
【0082】
板状シールド部41のX方向の長さL41は、第1シールド部43のX方向の長さL43及び第2シールド部44のX方向の長さよりも長い。第1シールド部43のX方向の長さL43及び第2シールド部44のX方向の長さは、コアギャップCGのX方向の長さLCGと同一であってもよいし、当該長さLCGよりも長くてもよいし、短くてもよい。
【0083】
本実施形態に係る電流センサ1の第5態様において、
図31A~31Dに示すように、磁気シールド4の板状シールド部41に、Y方向に貫通するスリット部42が形成されていてもよい。スリット部42は、その長手方向をX方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図31A参照)、その長手方向をZ方向と実質的に平行とするように形成されていてもよいし(
図31B及び
図31C参照)、その長手方向をX方向及びZ方向に交差させるように形成されていてもよい(
図31D参照)。磁気シールド4の板状シールド部41には、1つのスリット部42が形成されていてもよいし(
図31A、
図31B及び
図31D参照)、複数のスリット部42が形成されていてもよい(
図31C参照)。スリット部42は、Y方向に沿って見たときに、磁気検出部2に重なるように、すなわちスリット部42から磁気検出部2の少なくとも一部が露出するように形成されていてもよいし(
図31A、
図31B及び
図31D参照)、磁気検出部2に重ならないように形成されていてもよい(
図31C参照)。
【0084】
本実施形態に係る電流センサ1の第5態様において、磁気シールド4の板状シールド部41にスリット部42が形成されていないと、Y方向の外乱磁場H
Yの一部は磁気シールド4の板状シールド部41の厚さ方向に透過してしまう(
図17A参照)。その結果、電流センサ1が外乱磁場H
Yによる影響を受けてしまうおそれがある。
【0085】
一方で、板状シールド部41にスリット部42が形成されていることで、Y方向の外乱磁場H
Yをスリット部42の両側(Y方向に沿って見たときにおけるスリット部42の短手方向(Z方向)における両側)に分散させることができる。そのため、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重なるように形成されている場合には、Y方向に沿って磁気検出部2に向かう外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されるのを効果的に抑制することができる(
図19参照)。
【0086】
なお、Y方向に沿って見たときにスリット部42が磁気検出部2に重ならないように形成されている場合には、磁気シールド4の外側から回り込んで磁気シールド4に誘導される外乱磁場H
Yが電流センサ1に影響を及ぼすのを抑制することができる(
図12C参照)。
【0087】
図31Aに示す態様において、スリット部42の長手方向(X方向)の長さL
42は、コアギャップCGのX方向における長さL
CGよりも短くてもよいし、長くてもよいし、当該長さL
CGと同一であってもよい。
図31A~31Dに示す態様において、スリット部42の短手方向の長さW
42は、例えば1~4mm程度であればよく、2~3mm程度であるのが好ましい。当該長さW
42が1mm未満であると、スリット部42による外乱磁場H
Yを分散させる効果が低下し、磁気シールド4の板状シールド部41を厚さ方向に透過する外乱磁場H
Yが磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。また、当該長さW
42が4mmを超えると、Y方向の外乱磁場H
Yがスリット部42を抜けて磁気検出部2に印加されてしまうおそれがある。
【0088】
上述した構成を有する電流センサ1の第5態様によれば、X方向の外乱磁場HX及びY方向の外乱磁場HYによる影響を受けることを抑制することができるため、導体5に流れる電流を高い精度で検出することができる。
【0089】
上述した構成を有する本実施形態に係る電流センサ1は、電気制御装置に備えられ得る。なお、本実施形態における電気制御装置としては、例えば、ハイブリッド電気自動車(HEV: Hybrid Electric Vehicle)や電気自動車(EV: Electric Vehicle)等のバッテリマネジメントシステム、インバータ及びコンバータ等が挙げられる。本実施形態に係る電流センサ1は、電源からの入出力電流を測定して、測定された電流に関する情報を電気制御装置に出力すること等に用いられる。
【0090】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0091】
上記実施形態に係る電流センサ1の第3態様(
図20等を参照)において、磁気シールド4は、板状シールド部41のZ方向における両端部に連続し、Y方向に沿って延びる第1シールド部及び第2シールド部を有していてもよい。
【実施例】
【0092】
以下、試験例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例に限定されるものではない。
【0093】
[試験例1]
図1に示す構造を有する電流センサ1において、X方向の外乱磁場H
Xを0mT(miltesla)としたときにおける電流センサ1からの出力信号と、X方向の外乱磁場H
Xを10mTとしたときにおける電流センサ1からの出力信号とのそれぞれをシミュレーションにより求め、X方向の外乱磁場HXによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)を算出した(Sample 1)。同様に、Y方向の外乱磁場H
Xを0mT(miltesla)としたときにおける電流センサ1からの出力信号と、Y方向の外乱磁場H
Xを10mTとしたときにおける電流センサ1からの出力信号とのそれぞれをシミュレーションにより求め、Y方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 1)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0094】
[試験例2]
図11Aに示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 2)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0095】
[試験例3]
図23Aに示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 3)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0096】
[試験例4]
図13に示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 4)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0097】
[試験例5]
図18Aに示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 5)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0098】
[試験例6]
図18Bに示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 6)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0099】
[試験例7]
図18Cに示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 7)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0100】
[試験例8]
図24に示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 8)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0101】
[試験例9]
図28に示す構造を有する電流センサ1を用いた以外は、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場H
Xによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場H
Yによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 9)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0102】
[試験例10]
磁気シールド4を有しない以外は、上記試験例1と同様の構造を有する電流センサを用い、上記試験例1と同様にしてX方向の外乱磁場HXによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EX,%)及びY方向の外乱磁場HYによって生じる電流センサ1の出力信号の誤差(EY,%)を算出した(Sample 10)。シミュレーション結果を表1に示す。
【0103】
【0104】
表1に示す結果から、磁気シールド4を有しない電流センサを用いた試験例10(Sample 10)に比べ、磁気シールド4を有する電流センサ1を用いた試験例1~9(Sample 1-9)においては、少なくともX方向の外乱磁場HXによって生じ得る電流センサ1の出力信号の誤差を低減可能であることが明らかとなった。
【0105】
また、試験例1(Sample 1)と、試験例2(Sample 2)及び試験例3(Sample 3)との結果から、磁気シールド4の板状シールド部41にスリット部42が形成されていることで、X方向の外乱磁場HX及びY方向の外乱磁場HYによって生じ得る電流センサ1の出力信号の誤差を低減可能であることが明らかとなった。
【0106】
さらに、試験例1(Sample 1)と試験例4(Sample 4)との結果から、磁気シールド4が板状シールド部41とそのZ方向における両端部41A,41Bに連続する第1シールド部43及び第2シールド部44を有することで、X方向の外乱磁場HX及びY方向の外乱磁場HYによって生じ得る電流センサ1の出力信号の誤差を低減可能であることが明らかとなった。
【0107】
[試験例11]
図13に示す構造を有し、集磁コア3及び磁性シールド4の構成材料として珪素鋼(50H230,日本製鉄社製,鉄損:2.3W/kg)を用いた電流センサ1(Sample 11)において、導体5に流れる交流電流の周波数を1Hz~100kHzの範囲で変動させたときにおける磁気検出素子2に印加される磁束密度の減衰量(dB)をシミュレーションにより求めた。結果を
図32に示す。
【0108】
[試験例12]
磁性シールド4の構成材料として珪素鋼(50H470,日本製鉄社製,鉄損:4.7W/kg)を用いた以外は、試験例11の電流センサ1(Sample 11)と同様の構造を有する電流センサ1(Sample 12)において、導体5に流れる交流電流の周波数を1Hz~100kHzの範囲で変動させたときにおける磁気検出素子2に印加される磁束密度の減衰量(dB)をシミュレーションにより求めた。結果を
図32に示す。
【0109】
[試験例13]
磁性シールド4の構成材料として珪素鋼(50H700,日本製鉄社製,鉄損:7.0W/kg)を用いた以外は、試験例11の電流センサ1(Sample 11)と同様の構造を有する電流センサ1(Sample 13)において、導体5に流れる交流電流の周波数を1Hz~100kHzの範囲で変動させたときにおける磁気検出素子2に印加される磁束密度の減衰量(dB)をシミュレーションにより求めた。結果を
図32に示す。
【0110】
[試験例14]
磁性シールド4の構成材料として珪素鋼(50H1000,日本製鉄社製,鉄損:10.0W/kg)を用いた以外は、試験例11の電流センサ1(Sample 11)と同様の構造を有する電流センサ1(Sample 14)において、導体5に流れる交流電流の周波数を1Hz~100kHzの範囲で変動させたときにおける磁気検出素子2に印加される磁束密度の減衰量(dB)をシミュレーションにより求めた。結果を
図32に示す。
【0111】
図32に示すように、集磁コア3の構成材料の鉄損が、磁性シールド4の構成材料の鉄損よりも小さいことで、電流センサ1の周波数特性を向上させ得ることが明らかとなった。したがって、集磁コア3が、磁性シールド4の構成材料よりも鉄損の小さい材料により構成されていることで、導体5に交流電流が流れる場合においても電流センサ1による出力を安定化させることができる。
【符号の説明】
【0112】
1…電流センサ
2…磁気検出部
3…集磁コア
4…磁気シールド
5…導体