(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20231017BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B62D25/06 A
B62D29/04 B
(21)【出願番号】P 2020194992
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷中 壯弘
(72)【発明者】
【氏名】倉知 晋士
(72)【発明者】
【氏名】小泉 昌幸
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-036479(JP,U)
【文献】特開2013-203134(JP,A)
【文献】特開2006-327414(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/06
B62D 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
ドア開口を有する車体と、
前記ドア開口を開放及び閉鎖するとともに、ウェザーストリップを有するドアと、
を備え、
前記車体は、
第1の材料で構成されているとともに、前記ドア開口に沿って延びる長尺なフレームと、
前記第1の材料とは線膨張係数の異なる第2の材料で構成されており、前記フレームを覆いながら前記フレームに沿って延びており、前記ドアが前記ドア開口を閉鎖したときに前記ウェザーストリップに当接する長尺なレールと、
を有し、
前記レールは、複数の固定箇所において前記フレームに固定されており、
前記複数の固定箇所は、前記レールの長手方向における中間部に設けられた第1固定箇所と、前記レールの前記長手方向における両端部にそれぞれ設けられた第2固定箇所と、を含み、
前記複数の固定箇所のそれぞれでは、前記レールに固定孔が設けられており、
前記レールの前記長手方向に関して、
前記第2固定箇所に設けられた前記固定孔の寸法は、前記第1固定箇所に設けられた前記固定孔の寸法よりも大きく、前記第2固定箇所における遊び幅は、前記第1固定箇所における遊び幅よりも大きい、
車両。
【請求項2】
前記複数の固定箇所は、前記第1固定箇所と前記第2固定箇所との間に設けられた少なくとも一つの第3固定箇所をさらに含み、
前記レールの前記長手方向に関して、前記第3固定箇所における遊び幅は、前記第1固定箇所における前記遊び幅よりも大きい、請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記レールの前記長手方向に関して、前記第3固定箇所に設けられた前記固定孔の寸法は、前記第1固定箇所に設けられた前記固定孔の寸法よりも大きい、請求項
2に記載の車両。
【請求項4】
前記レールは、前記ドア開口の前方から上方を通って後方まで延びており、
前記レールの前記両端部のうち、前記ドア開口の後方に位置する後端部の下縁は、前記ドア開口から後方へ離れるにつれて下方に傾斜している、請求項1から
3のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
車両であって、
ドア開口を有する車体と、
前記ドア開口を開放及び閉鎖するとともに、ウェザーストリップを有するドアと、
を備え、
前記車体は、
第1の材料で構成されているとともに、前記ドア開口に沿って延びる長尺なフレームと、
前記第1の材料とは線膨張係数の異なる第2の材料で構成されており、前記フレームを覆いながら前記フレームに沿って延びており、前記ドアが前記ドア開口を閉鎖したときに前記ウェザーストリップに当接する長尺なレールと、
を有し、
前記レールは、複数の固定箇所において前記フレームに固定されており、
前記複数の固定箇所は、前記レールの長手方向における中間部に設けられた第1固定箇所と、前記レールの前記長手方向における両端部にそれぞれ設けられた第2固定箇所と、を含み、
前記レールの前記長手方向に関して、前記第2固定箇所における遊び幅は、前記第1固定箇所における遊び幅よりも大きく、
前記レールは、前記ドア開口の前方から上方を通って後方まで延びており、
前記レールの前記両端部のうち、前記ドア開口の後方に位置する後端部の下縁は、前記ドア開口から後方へ離れるにつれて下方に傾斜している
、
車両。
【請求項6】
前記レールの前記下縁と、当該下縁に隣接するパネル材との間には、発泡性材料で構成されたシール部材が設けられている、請求項
4又は5に記載の車両。
【請求項7】
前記第1の材料は金属であり、
前記第2の材料は樹脂である、請求項1から6のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、車両が開示されている。この車両は、ドア開口を有する車体と、ドア開口を開放及び閉鎖するとともに、ウェザーストリップを有するドアとを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に車両の車体は、鋼板やアルミニウム等の金属で構成されることが多い。これに対して、例えば車両の軽量化を図るために、必要最小限のフレームを金属で構成し、そのフレームを樹脂で構成されたレールで外装することが考えられる。この場合、金属製のフレームと樹脂製のレールとの間では、材料の線膨張係数が異なるために、温度変化に応じて異なる熱変形がそれぞれ生じる。特に、ドア開口に沿って延びるフレームや、それを覆うレールは長尺な部材であることから、両者の間に生じる熱変形の差も顕著となる。その結果、熱変形量が大きいとともに、フレームよりも柔軟なレールには、過大な反りや撓みが生じるおそれがある。ドア開口に位置するレールには、ドアに設けられたウェザーストリップが当接することから、そのレールに反りや撓みが生じると、ウェザーストリップとの間に隙間が生じて止水機能が低下するおそれがある。このような問題は、金属や樹脂といった特定の材料に限られず、フレームとレールとの間で異種材料を採用した場合においても、同様に起こり得る。
【0005】
上記の実情を鑑み、本明細書は、例えば車両の軽量化を図るために、フレームとレールとの間で異種材料を採用した場合でも、ドア開口における止水機能を維持し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する技術は、車両に具現化される。この車両は、ドア開口を有する車体と、前記ドア開口を開放及び閉鎖するとともに、ウェザーストリップを有するドアとを備える。前記車体は、第1の材料で構成されているとともに、前記ドア開口に沿って延びる長尺なフレームと、前記第1の材料とは線膨張係数の異なる第2の材料で構成されており、前記フレームを覆いながら前記フレームに沿って延びており、前記ドアが前記ドア開口を閉鎖したときに前記ウェザーストリップに当接する長尺なレールとを有する。前記レールは、複数の固定箇所において前記フレームに固定されており、前記複数の固定箇所は、前記レールの長手方向における中間部に設けられた第1固定箇所と、前記レールの前記長手方向における両端部にそれぞれ設けられた第2固定箇所とを含む。前記レールの前記長手方向に関して、前記第2固定箇所における遊び幅は、前記第1固定箇所における遊び幅よりも大きい。
【0007】
上記した車両では、レールの長手方向に関して、第2固定箇所における遊び幅が、第1固定箇所における遊び幅よりも大きい。第1固定箇所は、レールの長手方向における中間部に設けられており、第2固定箇所はレールの長手方向における両端部にそれぞれ設けられている。このような構成によると、レールは第1固定箇所を基点にして熱膨張又は熱伸縮し、その熱変形量は、第2固定箇所が設けられた両端部において最大となる。第2固定箇所には、比較的に大きな遊び幅が与えられているので、レールの両端部は、フレームによって拘束されることなく、自由に変位することができる。これにより、レールの反りや撓みが抑制され、レールとウェザーストリップとの間の位置関係が安定することで、それらの間に隙間が生じることが避けられる。このように、フレームを構成する材料と、レールを構成する材料との間で線膨張係数が異なる場合でも、ドア開口における止水機能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本技術の一実施形態において、前述した複数の固定箇所のそれぞれでは、レールに固定孔が設けられてもよい。この場合、レールの長手方向に関して、第2固定箇所に設けられた固定孔の寸法は、第1固定箇所に設けられた固定孔の寸法よりも大きくてもよい。このような構成によると、それぞれの固定箇所において、適切な遊び幅を簡便に与えることができる。
【0010】
本技術の一実施形態において、複数の固定箇所は、第1固定箇所と第2固定箇所との間に設けられた少なくとも一つの第3固定箇所をさらに含んでもよい。この場合、レールの長手方向に関して、第3固定箇所における遊び幅は、第1固定箇所における遊び幅よりも大きくてもよい。このような構成によると、レールの熱変形を阻害することなく、より多くの固定箇所において、レールをフレームに固定することができる。
【0011】
上記した実施形態では、レールの長手方向に関して、第3固定箇所に設けられた固定孔の寸法が、第1固定箇所に設けられた固定孔の寸法よりも大きくてもよい。このような構成によると、第3固定箇所においても、適切な遊び幅を簡便に与えることができる。
【0012】
本技術の一実施形態において、レールは、ドア開口の前方から上方を通って後方まで延びていてもよい。この場合、レールの両端部のうち、ドア開口の後方に位置する後端部の下縁が、ドア開口から後方へ離れるにつれて下方に傾斜していてもよい。このような構成によると、当該下縁を伝う雨水が、ドア開口から離れる方向に移動するので、レールの後端部における止水機能が向上する。
【0013】
上記の実施形態において、レールの前記した下縁と、当該下縁に隣接するパネル材との間には、発泡性材料で構成されたシール部材が設けられていてもよい。このような構成によると、レールの後端部における止水機能がさらに向上する。
【0014】
本技術の一実施形態において、フレームを構成する第1の材料は、金属であってもよい。この場合、レールを構成する第2の材料は、樹脂であってもよい。このような組み合わせによると、車体の強度を維持しつつ、軽量化を図ることができる。但し、他の実施形態として、フレームやレールを構成する材料には、金属と樹脂との組み合わせに限定されず、線膨張係数が異なる様々な異種材料の組み合わせを採用することができる。
【実施例】
【0015】
図面を参照して、実施例の車両10について説明する。車両10は、いわゆる自動車であって、路面を走行する車両である。ここで、図面における方向FRは、車両10の前後方向(長手方向)における前方を示し、方向RRは車両10の前後方向における後方を示す。また、方向LHは車両10の左右方向(幅方向)における左方を示し、方向RHは車両10の左右方向における右方を示す。そして、方向UPは車両10の上下方向(高さ方向)における上方を示し、方向DNは車両10の上下方向における下方を示す。なお、本明細書では、車両10の前後方向、左右方向及び上下方向を、それぞれ単に前後方向、左右方向及び上下方向と称することがある。
【0016】
図1に示されるように、車両10は、車体12と、複数の車輪14f、14rとを含む。車体12は、特に限定されないが、金属材料及び樹脂材料を用いて構成されている。複数の車輪14f、14rは、車体12に対して回転可能に取り付けられている。複数の車輪14f、14rには、一対の前車輪14fと、一対の後車輪14rとが含まれる。なお、車輪14f、14rの数については、四つに限定されない。本実施例における車両10は、二人乗りの小型なサイズを有するが、車両10のサイズや搭乗人数についても特に限定されない。
【0017】
車両10は、走行用モータ16と、バッテリユニット18とをさらに備える。走行用モータ16は、一対の後車輪14rに接続されており、一対の後車輪14rを駆動することができる。なお、走行用モータ16は、一対の後車輪14rに限られず、複数の車輪14f、14rの少なくとも一つを駆動するように構成されていればよい。バッテリユニット18は、電力供給回路(図示省略)を介して走行用モータ16に接続されており、走行用モータ16へ電力を供給する。バッテリユニット18は、複数の二次電池セルを内蔵しており、外部の電力によって繰り返し充電可能に構成されている。なお、車両10は、バッテリユニット18に加えて、または代えて、燃料電池ユニットや太陽電池パネルといった他の電源を備えてもよい。また、車両10は、走行用モータ16に加えて、または代えて、エンジンといった他の原動機を備えてもよい。
【0018】
車両10は、ドア20をさらに備える。ドア20は、車体12によって支持されており、車体12に設けられたドア開口19を開放及び閉鎖するように構成されている。特に限定されないが、本実施例におけるドア開口19は、ユーザが車両10に乗り降りするための開口であって、車体12の側面に設けられている。ドア20は、ヒンジ(図示省略)を介して車体12に取り付けられており、水平方向に揺動可能に構成されている。これにより、ドア20は、車体12のドア開口19を閉鎖する閉鎖位置と、車体12のドア開口19を開放する開放位置との間で、揺動することができる。ここで、ドア20及びドア開口19は、車体12の側面に限られず、例えば車体12の後面に設けられてもよい。また、ドア20は、揺動式のドアに限定されず、例えばスライド式のドアであってもよい。
【0019】
図2、
図3に示すように、車体12は、フレーム22と、レール24と、ルーフパネル28とをさらに備える。フレーム22は、長尺な部材であり、ドア開口19に沿って延びている。レール24もまた、長尺な部材であって、フレーム22を覆いながらフレーム22に沿って延びている。一例ではあるが、本実施例におけるレール24は、ドア開口19の前方から、上方を通って後方まで延びている。フレーム22は金属で構成されており、レール24は樹脂で構成されている。骨格部材であるフレーム22を金属で構成し、外装部材であるレール24を樹脂で構成することで、車体12の軽量化が図られている。ルーフパネル28は、車体12の上面を構成しており、ルーフパネル28の端部はフレーム22に沿って延びている。
【0020】
ドア20は、ウェザーストリップ30をさらに備える。ウェザーストリップ30は、クリップ等の締結具を介して、ドア20に固定されている。ウェザーストリップ30は、ドア20がドア開口19を閉鎖したときに、レール24に当接するように構成されている。ウェザーストリップ30は、ゴム材料といった柔軟な弾性材料で構成されており、変形しながらレール24に密接する。これにより、車体12に設けられたレール24と、ドア20に設けられたウェザーストリップ30との間が液密にシールされ、ドア開口19から雨水が侵入することを防止する止水機能が発揮される。
【0021】
図2に示すように、本実施例におけるレール24は、複数の固定箇所32、34、38、40において、フレーム22に固定されている。複数の固定箇所32、34、38、40は、レール24の長手方向に沿って、即ち、ドア開口19の周縁に沿って配列されている。複数の固定箇所32、34、38、40の数については、特に限定されない。複数の固定箇所32、34、38、40の各々では、締結具26を用いて、レール24とフレーム22が互いに連結されている。締結具26は、例えばボルトやクリップであってよいが、これらに限定されない。
【0022】
複数の固定箇所32、34、38、40には、第1固定箇所32と、二つの第2固定箇所34、38と、複数の第3固定箇所40とが含まれる。第1固定箇所32は、レール24の長手方向における中間部に設けられている。二つの第2固定箇所34、38は、レール24の長手方向における両端部24a、24bにそれぞれ設けられている。そして、各々の第3固定箇所40は、第1固定箇所32と、いずれかの第2固定箇所34、38との間に設けられている。なお、第3固定箇所40については、必ずしも必要とされない。
【0023】
図4、
図5に示すように、第1固定箇所32では、レール24に固定孔32aが設けられており、前述した締結具26が、固定孔32aを通じてレール24をフレーム22に固定している。前述したように、第1固定箇所32は、レール24の長手方向における中間部分に設けられており、レール24の位置決めにおいて基準とされている。そのことから、第1固定箇所32には、製造公差を考慮した最小限の遊び幅のみが与えられており、その固定孔32aは概して真円の形状を有している。特に限定されないが、第1固定箇所32における締結具26は、段付きボルトであってよい。
【0024】
図6、
図7に示すように、二つの第2固定箇所34、38のうち、一方の第2固定箇所34は、レール24の長手方向における後端部24aに位置している。この第2固定箇所34(以下、後部の第2固定箇所34と称する)には、レール24に固定孔34aが設けられており、前述した締結具26が、固定孔34aを通じてレール24をフレーム22に固定している。後部の第2固定箇所34には、第1固定箇所32とは異なり、製造公差よりも十分に大きい遊び幅が、レール24の長手方向に沿って与えられている。そのことから、後部の第2固定箇所34における固定孔34aは、レール24の長手方向に沿って延びる長円の形状を有する。レール24の長手方向(第2固定箇所34では、車両10の前後方向)における遊び幅は、当該長手方向における固定孔34aの寸法L34によって設定可能であり、その寸法L34と締結具26の寸法との間の差によって定まる。前述したように、第1固定箇所32には、製造公差を考慮した最小限の遊び幅のみが与えられている。従って、レール24の長手方向に関して、後部の第2固定箇所34における固定孔34aの寸法L34は、第1固定箇所32における固定孔32aの寸法L32よりも大きい。
【0025】
図8、
図9に示すように、二つの第2固定箇所34、38のうち、他方の第2固定箇所38は、レール24の長手方向における前端部24bに位置している。この第2固定箇所38(以下、前部の第2固定箇所38と称する)には、レール24に固定孔38aが設けられており、前述した締結具26が、固定孔38aを通じてレール24をフレーム22に固定している。前部の第2固定箇所38にも、第1固定箇所32とは異なり、製造公差よりも十分に大きい遊び幅が、レール24の長手方向(ここでは、上下方向)に沿って与えられている。そのことから、前部の第2固定箇所38における固定孔38aは、レール24の長手方向に沿って延びるスリットの形状を有する。レール24の長手方向における遊び幅は、当該長手方向における固定孔38aの寸法L38によって設定可能であり、その寸法L38と締結具26との間の隙間によって定まる。従って、レール24の長手方向に関して、前部の第2固定箇所38における固定孔38aの寸法L38は、第1固定箇所32における固定孔32aの寸法L32よりも大きい。
【0026】
図10、
図11に示すように、各々の第3固定箇所40には、レール24に固定孔40aが設けられており、前述した締結具26が、固定孔40aを通じてレール24をフレーム22に固定している。各々の第3固定箇所40にも、前述した二つの第2固定箇所34、38と同様に、製造公差よりも十分に大きい遊び幅が、レール24の長手方向に沿って与えられている。但し、各々の第3固定箇所40に設けられた各遊び幅は、二つの第2固定箇所34、38に設けられた各遊び幅よりも小さい。即ち、第3固定箇所40の各遊び幅は、第1固定箇所32の遊び幅よりも大きく、かつ、二つの第2固定箇所34、38の各遊び幅よりも小さい。第3固定箇所40における固定孔40aもまた、レール24の長手方向に沿って延びる長円の形状を有する。レール24の長手方向における遊び幅は、当該長手方向における固定孔40aの寸法L40によって設定可能であり、その寸法L40と締結具26との間の差によって定まる。従って、レール24の長手方向に関して、第3固定箇所40における固定孔40aの寸法L40は、第1固定箇所32における固定孔32aの寸法L32よりも大きく、かつ、二つの第2固定箇所34、38における各固定孔34a、38aの寸法L34、L38よりも小さい。なお、第3固定箇所40における遊び幅(即ち、固定孔40aの寸法L40)は、二つの第2固定箇所34における各遊び幅(即ち、固定孔34a、38aの寸法L34、L38)と同等又は大きくてもよい。
【0027】
本実施例の車両10では、前述したように、フレーム22が金属で構成されている一方で、レール24は樹脂で構成されている。このように、フレーム22とレール24とが互いに異なる材料で構成されていると、フレーム22を構成する材料(以下、第1の材料と称することがある)と、レール24を構成する材料(以下、第2の材料と称することがある)との間で、線膨張係数が互いに相違する。一例ではあるが、本実施例の車両10では、第1の材料は金属であり、第2の材料は樹脂である。従って、レール24を構成する第2の材料は、フレーム22を構成する第1の材料よりも、大きい線膨張係数を有する。
【0028】
フレーム22とレール24との間では、それらを構成する材料の線膨張係数が異なるために、温度変化に応じて異なる熱変形がそれぞれ生じる。特に、ドア開口19に沿って延びるフレーム22や、それを覆うレール24は長尺な部材であることから、両者の間に生じる熱変形の差も顕著となる。その結果、車体12の温度が上昇したときは、フレーム22よりもレール24の方が大きく熱膨張するので、フレーム22に対してレール24の長さが過剰となる。一般に、骨格部材であるフレーム22よりも、それを外装するレール24は柔軟である。従って、フレーム22よりも柔軟なレール24には、過大な反りや撓みが生じるおそれがある。レール24にこのような変形が生じると、レール24とウェザーストリップ30との間の位置関係が局所的に変化することで、ドア開口19における止水機能が低下するおそれがある。
【0029】
上記の懸念に関して、本実施例の車両10では、レール24の長手方向に関して、第2固定箇所34、38における遊び幅が、第1固定箇所32における遊び幅よりも大きい。このような構成によると、温度変化に応じて、レール24は第1固定箇所32を基点にして熱膨張又は熱伸縮し、その熱変形量は、第2固定箇所34、38が設けられた両端部24a、24bにおいて最大となる。第2固定箇所34、38には、第1固定箇所32と比較的して大きな遊び幅が与えられているので、レール24の両端部24a、24bは、フレーム22によって拘束されることなく、自由に変位することができる。これにより、レール24の反りや撓みが抑制され、レール24とウェザーストリップ30との間の位置関係が安定することで、それらの間に隙間が生じることが避けられる。このように、フレーム22を構成する材料と、レール24を構成する材料との間で線膨張係数が異なる場合でも、ドア開口19における止水機能を維持することができる。ここで、第2固定箇所34、38における遊び幅が、第1固定箇所32における遊び幅よりも大きいとは、第1固定箇所32における遊び幅が完全に排除された構成を含むものとする。
【0030】
ここで、第1の材料及び第2の材料は、金属と樹脂との組み合わせに限定されない。第1の材料及び第2の材料には、線膨張係数が互いに異なる様々な材料の組み合わせを採用することができる。この場合、レール24を構成する第2の材料が、フレーム22を構成する第1の材料よりも、小さな線膨張係数を有してもよい。このような構成では、車体12の温度が低下したときに、レール24よりもフレーム22の方が大きく熱収縮することで、フレーム22に対してレール24の長さが過剰となる。従って、フレーム22よりも柔軟なレール24には、やはり過大な反りや撓みが生じるおそれがある。従って、上記した実施例と同様に、第2固定箇所34、38における遊び幅を、第1固定箇所32における遊び幅よりも大きくすることで、ドア開口19における止水機能の低下を避けることができる。
【0031】
一例ではあるが、本実施例の車両10では、第1固定箇所32及び二つの第2固定箇所34、38に加えて、それらの間に位置する複数の第3固定箇所40がさらに設けられている。前述したように、複数の第3固定箇所40については必ずしも必要とされず、例えばレール24の寸法等に応じて適宜設けるとよい。一又は複数の第3固定箇所40を設けることにより、例えばレール24の長手方向における寸法が比較的に大きい場合でも、フレーム22に対してレール24を安定的に固定することができる。この場合、熱変形に伴うレール24の反りや撓みを抑制するために、レール24の第3固定箇所40における遊び幅を、第1固定箇所32における遊び幅よりも大きくするとよい。例えば、第3固定箇所40に設けられた固定孔40aの寸法L40を、第1固定箇所32に設けられた固定孔32aの寸法L32よりも大きくすることで、第3固定箇所においても適切な遊び幅を簡便に与えることができる。
【0032】
一例ではあるが、本実施例の車両10では、
図6に示すように、レール24の両端部24a、24bのうち、ドア開口19の後方に位置する後端部24aの下縁24cが、ドア開口19から後方へ(
図6における左方へ)離れるにつれて下方に傾斜している。このような構成によると、当該下縁24cを伝う雨水が、ドア開口19から離れる方向に移動するため、レール24の後端部24aにおける止水機能が向上する。加えて、レール24の後端部24aにおける下縁24cと、当該下縁24cに隣接するパネル材25との間には、発泡性材料で構成されたシール部材36が設けられている。このような構成によると、レール24の後端部24aにおける止水機能がさらに向上する。
【0033】
以上、いくつかの具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは組み合わせによって技術的有用性を発揮するものである。
【符号の説明】
【0034】
10 :車両
12 :車体
19 :ドア開口
20 :ドア
22 :フレーム
24 :レール
24a :後端部
24b :前端部
24c :下縁
25 :パネル材
26 :締結具
30 :ウェザーストリップ
32 :第1固定箇所
32a :固定孔
34、38:第2固定箇所
34a、38a:固定孔
36 :シール部材
40 :第3固定箇所
40a :固定孔