(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】積層体およびそれからなる包装袋
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20231017BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231017BHJP
B65D 81/24 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B65D65/40 D
B65D81/24 L
(21)【出願番号】P 2020532276
(86)(22)【出願日】2019-07-10
(86)【国際出願番号】 JP2019027293
(87)【国際公開番号】W WO2020022060
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2018141086
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】戸松 稚登
(72)【発明者】
【氏名】後藤 考道
(72)【発明者】
【氏名】西 忠嗣
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058356(JP,A)
【文献】特開2018-020844(JP,A)
【文献】特開2014-141302(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157151(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
B65D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム基材と、プロピレン-エチレンブロック共重合体を40重量%以上97重量%以下、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを3重量%以上10重量%以下、
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体を0重量%以上50重量%以下で含むポリオレフィン樹脂組成物からなるシーラントフィルムを含む積層体であり、長手方向の直進カット性が5mm以下である積層体。
【請求項2】
前記シーラントフィルムの長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の熱収縮率が1%以下であり、前記長手方向の降伏応力が150MPa以上250MPa以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
請求項2に記載の積層体からなる包装袋。
【請求項4】
レトルト用である、請求項3に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム基材とポリオレフィン系樹脂組成物からなるシーラントフィルムを含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
包装袋は、主にポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、あるいはポリプロピレン樹脂などからなる二軸延伸フィルムなどを基材とし、ポリオレフィン系樹脂組成物からなるシーラントフィルムとの積層体の周辺部を、ポリオレフィン系樹脂フィルム面同士が接触する状態でシーラントフィルムの融点近くの温度で加熱圧着(以下、ヒートシール)することにより製造される。
食品包装袋においては、食品を充填した後の包装袋に、130℃程度の加圧水蒸気により殺菌を行う、食品を長期間保存するのに適した、いわゆるレトルトパウチというものが普及している。
近年、女性の社会進出、核家族化、あるいは高齢化の進行などの社会背景から、レトルトパウチへの需要が大きくなっており、同時に特性の向上がさらに求められている。
例えば、こういったレトルトパウチは、箱詰めされ、輸送して店頭販売される形態が近年多いため、その過程で落下しても破袋しにくいこと、特に冷蔵下で落下しても破袋しにくいことが求められている。
【0003】
また、包装袋、特にレトルトパウチから食品内容物を取り出す際は、包装袋の周辺のシール部分に入れられた切込み部分、いわゆるノッチ部分から手で包装袋を引裂くことが多いが、従来の積層体を使用した場合、包装袋の一辺、通常は水平方向に対して平行に引裂くことができず、斜めに開封されてしまったり、包装袋の表面と裏面の積層体で裂けの進行方向の上下が逆になる現象、いわゆる泣別れが発生してしまい、食品内容物が取り出しにくくなり、食品内容物で手や服が汚れたり、内容物が加熱されていた場合は火傷などをしたりする恐れがあった。
【0004】
包装袋を包装袋の一辺に対して平行に引裂くことが困難である理由は、積層体に用いる基材に歪みがあること、すなわち基材に用いる二軸延伸フィルムの分子配向軸方向が包装体の一辺に対して平行でないからである。
【0005】
二軸延伸フィルムの分子配向軸方向を包装袋の引裂き方向と同じにすることができればこのような問題は発生しない。製造された広幅の延伸フィルムの幅方向中央部の分子配向軸方向はフィルムの走行方向と一致しており包装袋の一辺に対して平行に引裂くことが可能である。ところが、フィルムの幅方向端部では分子配向軸方向が傾いてしまい、包装袋の引裂き方向は傾いてしまう。フィルムの幅方向端部を使用した基材フィルムを完全に避けて調達することは現実的ではない上に、二軸延伸フィルムの生産速度高速化や広幅化に伴い、歪みの程度は従来よりもさらに大きくなる傾向にある。
そこで、基材と積層されるシーラントフィルムの工夫により、こういった問題を解決することが、試みられている。
【0006】
特許文献1により、エチレン-プロピレンブロック共重合体とエチレン-プロピレンランダム共重合体を含む ポリオレフィン系樹脂シートを3.0倍以下で一軸延伸することにより得られたフィルムが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。このフィルムと基材フィルムを積層することにより、直進カット性が得られた旨記載されているものの、しかし、引裂強度に改善の余地があり、また泣別れが発生しやすいという問題点があった。
【0007】
また、特許文献2、特許文献3により、プロピレン-エチレンブロック共重合体あるいはプロピレン-エチレンランダム共重合体と、プロピレン-ブテンエラストマー及び/又はエチレン-ブテンエラストマーを含むポリオレフィン樹脂組成物からなるシートを5倍程度で一軸延伸したフィルムが知られている。しかし、落下時の破袋にまだ改善の余地があり、特許文献4で想定された使用温度よりも低温では耐破袋性が不足するという問題点があった。
【0008】
近年、レトルトパウチ用の基材フィルムとして、特にポリブチレンテレフタレート樹脂を主成分とする二軸延伸ポリエステルフィルムが耐熱性と柔軟性を有することに注目を浴びている(例えば、特許文献4参照。)が、このような柔軟性に優れたフィルムを用いた包装袋の開封性をより向上することができれば、より広範囲な内容物の包装に使用されることが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5790497号公報
【文献】特表2012-500307号公報
【文献】特開2014-141302号公報
【文献】特開2018-20844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、開封性に優れ、かつ耐熱性に優れ、落下時に破袋しにくい包装袋に使用される、ポリブチレンテレフタレート樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム基材とポリオレフィン系樹脂組成物からなるシーラントフィルムを含む積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、主成分となるポリオレフィン系樹脂と相溶性に優れるエチレン-プロピレン共重合エラストマーを含むシーラントフィルムと、耐衝撃性に優れポリブチレンテレフタレート樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム基材を含む積層体の直進カット性を向上させることにより、開封性と耐熱性に優れ、落下時に破袋しにくい包装袋を得ることができることを見いだし、本発明の完成に至った。
すなわち本発明は、以下の態様を有する。
【0012】
[1] ポリブチレンテレフタレートを60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム基材と、プロピレン-エチレンブロック共重合体を40重量%以上97%以下、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを3重量%以上10重量%以下、エチレン-αオレフィンランダム共重合体を0重量%以上50重量%以下で含むポリオレフィン樹脂組成物からなるシーラントフィルムを含む積層体であり、長手方向の直進カット性が5mm以下である積層体。
前記長手方向は、未延伸シートの延伸工程における、延伸方向であり、フィルムの走行方向であることが好ましい。幅方向は、長手方向と直角方向である。
[2] 前記シーラントフィルムの長手方向の熱収縮率が3%以上20%以下であり、幅方向の熱収縮率が1%以下であり、前記長手方向の降伏応力が150MPa以上250MPa以下であることを特徴とする、[1]に記載の積層体。
[3] [2]に記載の積層体からなる包装袋。
[4] レトルト用である、[3]に記載の包装袋。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層体により、開封性に優れ、かつ耐熱性に優れ、落下時に破袋しにくい包装袋を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
(シーラントフィルム)
本発明におけるシーラントフィルムは、プロピレン-エチレンブロック共重合体とエチレン-プロピレン共重合エラストマーを含有するポリオレフィン系樹脂組成物、若しくはプロピレン-エチレンブロック共重合体とプロピレン-αオレフィンランダム共重合体とエチレン-プロピレン共重合エラストマーを含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなり、海島構造をつくることにより、良好な耐破袋性を発現させることができる。
このとき、海部はプロピレン-エチレンブロック共重合体のプロピレンを主成分とする部分、若しくはさらにプロピレン-αオレフィンランダム共重合体も含む部分からなり、島部はエチレン-プロピレン共重合エラストマー、およびプロピレン-エチレンブロック共重合体のエチレンを主成分とする部分からなる。
【0015】
本発明におけるシーラントフィルムは、プロピレン-エチレンブロック共重合体を40重量%以上97重量%以下、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを3重量%以上10重量%以下、エチレン-αオレフィンランダム共重合体を0重量%以上50重量%以下で含むポリオレフィン系樹脂組成物からなる。この範囲であると、落下後の耐破袋性や製袋仕上がりに優れ、引裂強度と泣別れも良好である。
本発明におけるシーラントフィルムにおいて、プロピレン-エチレンブロック共重合体の比率が40重量%以下であると、引裂強度あるいはレトルト収縮率が大きくなりにくい。50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、75重量%以上がさらに好ましく、92重量%以上が特に好ましい。ヒートシール開始温度、突刺強度あるいは落下時の耐破袋性の観点からは、プロピレン-エチレンブロック共重合体の比率は85重量%以下が好ましく、75重量%以下がより好ましい。
本発明におけるシーラントフィルムにおいて、エチレン-プロピレン共重合エラストマーの比率が3重量%以上であると、落下時の耐破袋性が悪化しにくく、引裂強度が大きくなりにくい。5重量%以上が好ましく、7重量%以上がより好ましく、9重量%が特に好ましい。
引裂強度の観点からは、エチレン-プロピレン共重合エラストマープの比率は8重量%以下が好ましく、7重量%以下がより好ましい。
【0016】
本発明におけるシーラントフィルムにおいて、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率が50重量%を超えると、落下時の耐破袋性が悪化したり、引裂強度、レトルト収縮率あるいは泣別れが大きくなることがある。40重量%以下が好ましく、35重量%以下がより好ましい。
ヒートシール開始温度、あるいは突刺強度の観点からは、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の比率は10重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、25重量%が特に好ましい。
【0017】
(プロピレン-エチレンブロック共重合体)
本発明においては、プロピレン-エチレンブロック共重合体を使用することができる。本発明におけるプロピレン-エチレンブロック共重合体は、多量のプロピレンと少量のエチレンとの共重合成分からなる一段目の重合工程と、少量のプロピレンと多量のエチレンとの共重合成分からなる二段目の重合工程からなる多段共重合体である。具体的には、特開2000-186159号公報で示されるように、気相法重合を行っているものを用いるのが好ましい。すなわち、第1工程で実質的に不活性溶剤の不存在下に プロピレンを主体とした重合体部分(A成分)を重合し、次いで第2工程を気相中でエチレン含量が20~50重量%のプロピレンとエチレンとの共重合体部分(B成分)を重合して得られるブロック共重合体が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
上記プロピレン-エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(MFR)(230℃、荷重2.16kg測定)は特に限定されないが1~10g/10minが好ましく、2~7がより好ましい。1g/10min未満では粘度が高すぎてTダイでの押出しが困難であり、逆に、10g/10minを超えた場合は、フィルムのべた付きやフィルムの耐衝撃強度(インパクト強度)が劣るなど問題が生じるからである。
【0019】
本発明において、20℃におけるキシレン可溶部をCXS、20℃におけるキシレン非可溶部をCXISと呼ぶこととする。本発明で用いるプロピレン-エチレンブロック共重合体においては、CXSはゴム成分(B成分)を主体とし、CXISはポリプロピレン成分(A成分)を主体とする。各々の極限粘度を[η]CXS、[η]CXISとすると、[η]CXS、[η]CXISの値は特に限定されないが[η]CXSは、1.8~3.8dl/gの範囲が好ましく、さらに好ましいのは、2.0~3.0dl/gの範囲である。3.0dl/gを超えると、ポリオレフィン系樹脂フィルムにフィッシュアイが発生しやすくなる。一方、1.8dl/g以下ではポリオレフィン系樹脂フィルム同士のヒートシール強度が著しく低下する場合がある。一方、[η]CXISは、1.0~3.0dl/gの範囲であるのが好ましい。3.0dl/gを超えた場合は粘度が高すぎてTダイでの押出しが困難となる場合があり、逆に、1.0dl/g未満の場合は、フィルムのべた付きやフィルムの耐衝撃強度(インパクト強度)が劣るなど問題が生じる場合があるからである。
【0020】
上記の[η]CXS、[η]CXISは、以下の測定方法で測定した値である。試料5gを沸騰キシレン500mlに完全に溶解させた後、20℃に降温し、4時間以上放置した。次いで、これをろ液と析出物とにろ別し、ろ液を乾固した成分(CXS)および析出物を減圧下70℃で乾燥して得られた固形物(CXIS)の極限粘度([η])をウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定した。
【0021】
一般的に、MFRとフィルム全体の極限粘度ηは相関が取れていることが知られている。フィルムのηを知ることにより使用樹脂のMFRをおおよそ知ることが出来る。ηは分子量の目安になり、数値が大きいほど分子量が大きく、数値が小さくなると分子量が小さいことを表している。MFRは、分子量の目安であり、数値が小さいほど分子量が大きく、数値が大きくなると分子量が小さくなる。
また、プロピレン-エチレンブロック共重合体としては、プロピレン-エチレンブロック共重合体におけるエチレン成分の共重合比率が1~15重量%であるのが好ましく、3~10重量%であるのが好ましい。プロピレン-エチレンブロック共重合体におけるプロピレン成分の共重合比率が85~99%であるのが好ましく、90~97重量%であるのが好ましい。
具体的には、例えば、エチレン含有量が6.5質量%、プロピレン含有量が93.5重量%で、CXSの極限粘度η=2.5dl/gのブロック共重合ポリプロピレン樹脂(230℃、荷重2.16kgにおけるMFR=3.0g/10min、住友化学株式会社製WFS5293-22)や、エチレン含有量が5.7質量%、プロピレン含有量が94.3重量%で、CXSの極限粘度η=2.3dl/gのブロック共重合ポリプロピレン樹脂(230℃、荷重2.16kgにおけるMFR=3.0g/10min、住友化学株式会社製WFS5293-29)が挙げられる。
【0022】
(プロピレン-αオレフィンランダム共重合体)
本発明においては、ポリオレフィン系樹脂フィルムのヒートシール温度を下げることを目的とし、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体を添加しても良い。
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体とは、プロピレンとプロピレン以外の炭素原子数が2~20のα-オレフィンの少なくとも1種との共重合体を挙げることができる。 かかる炭素原子数が2~20のα-オレフィンモノマーとしては、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1等を用いることができる。特に限定されるものではないが、プロピレン-エチレンブロック共重合体との相溶性の面からエチレンを用いるのが好ましい。また、少なくとも1種類以上であれば良く、必要に応じて2種類以上を混合して用いることができる。 特に好適であるのは、プロピレン-エチレンランダム共重合体である。
【0023】
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)の下限は特に限定されないが好ましくは0.6g/10minであり、より好ましくは1.0g/10minであり、さらに好ましくは1.2g/10minである。上記未満であるとプロピレン-エチレンブロック共重合体との相溶性が低くフィルムが白化してしまうことがある。プロピレン-αオレフィンランダム共重合体のメルトフローレートの上限は特に限定されないが好ましくは8.0g/10minであり、より好ましくは7.0g/10minであり、さらに好ましくは5.0g/10minである。プロピレン-αオレフィンランダム共重合体としては、具体的には、住友化学株式会社製 S131(密度890kg/m3、230℃、荷重2.16kgにおけるMFR1.5g/10min、融点132℃)などが挙げられる。
【0024】
プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の融点の下限は特に限定されないが好ましくは120℃でより好ましくは125℃である。上記未満では耐熱性が損なわれ、レトルト処理の際に袋の内面同士が融着を起こすことがある。プロピレン-αオレフィンランダム共重合体の融点の上限は特に限定されないが好ましくは145℃で、より好ましくは140℃である。上記以上であるとヒートシール温度の低下効果が小さいことがある。
【0025】
(エチレン-プロピレン共重合エラストマー)
本発明においては、本発明の包装袋の耐落下破袋性を高める目的で、エチレン-プロピレン共重合エラストマーを、本発明のポリオレフィン系樹脂フィルムの原料の一成分として用いる。
エチレン-プロピレン共重合エラストマーとは、エチレンとプロピレンを共重合させて得られる非晶性または低結晶性であり、常温付近でゴム状弾性を示す共重合ポリマーである。
【0026】
本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーは特に限定されないが、230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレート(MFR)が0.2~5g/10min、密度が820~930kg/m3、GPC法により求めた分子量分布(Mw/Mn)が1.3~6.0であるものを用いるのが望ましい形態である。
本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーの230℃、荷重2.16kgにおけるメルトフローレイト(MFR)が0.2g/10minを下回ると、均一な混練が不十分となり、フィッシュアイが発生しやすくなり、また5g/minを超えると、耐破袋性の観点から好ましくない。
【0027】
また、本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーの極限粘度[η]は、ヒートシール強度保持とインパクト強度保持、落袋強度の観点からの点で1.0~5.0が好ましく、好適には1.2~3.0である。極限粘度[η]が1.0を下回ると、均一な混練が不十分となり、フィッシュアイが発生しやすくなり、また5.0を超えると耐破袋性及び、ヒートシール強度の観点から好ましくない。
本発明におけるエチレン-プロピレン共重合エラストマーは、エチレン-プロピレン共重合エラストマーにおけるプロピレン成分の共重合比率が15~45重量%であるのが好ましく、20~40重量%であるのが好ましい。エチレン-プロピレン共重合エラストマーにおけるエチレン成分の共重合比率が55~85重量%であるのが好ましく、60~80重量%であるのが好ましい。
具体的には、例えば密度870kg/m3、MFR(230℃、2.16kg)1.8g/10minで、プロピレン含有量が93.5質量%のエチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学株式会社製タフマーP0480、)などが挙げられる。
【0028】
(添加剤)
本発明におけるシーラントフィルムは、アンチブロッキング剤を含んでよい。配合されるアンチブロッキング剤としては特に限定されないが、炭酸カルシウム、二酸化珪素、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、タルク、ゼオライト等の無機粒子やアクリル系、スチレン系、スチレン・ブタジエン系の重合体、さらにはこれらの架橋体等からなる有機粒子が挙げられる。粒子径分布の制御のし易さや、分散性、光学的外観の維持し易さ、さらには、粒子のフィルムからの脱落防止等を考慮すれば、架橋体からなる有機粒子が好ましいものである。架橋体としては、特に、アクリル酸、メタアクリル酸、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等のアクリル系単量体からなる架橋アクリル系重合体が好ましく、より好ましくは架橋されたポリメチルメタアクリレートが推奨される。これら粒子の表面には、分散性や脱落防止を目的とした種々のコーティングが施されていても何ら差し支えない。また、これら粒子の形状は、不定形、球形、楕円球状、棒状、角状、多面体、円錐状、さらには、粒子表面や内部に空洞を有するポーラスな形状であってもよい。
アンチブロッキング剤は、フィルムの外観と耐ブロッキング性の面から3~12μmの平均粒子径を有するものが好ましい。アンチブロッキング剤は1種類のみ用いても有効であるが、2種類以上の粒径や形状が異なる無機粒子を配合した方が、フィルム表面においてより複雑な突起が形成され、より高度なブロッキング防止効果を得ることができる場合がある。ブロック共重合体を主な構成樹脂として使用する場合、ポリマーの分散により表面凹凸が形成される場合があり、アンチブロッキング剤を添加しなくても、高度な耐ブロッキング効果が得られる場合がある。
【0029】
本発明におけるシーラントフィルムには、有機系潤滑剤を添加しても良い。積層フィルムの滑性やブロッキング防止効果が向上し、フィルムの取り扱い性がよくなる。その理由として、有機滑剤がブリードアウトし、フィルム表面に存在することで、滑剤効果や離型効果が発現したものと考える。更に、有機系潤滑剤は常温以上の融点を持つものを添加することが好ましい。好適な有機系潤滑剤の例としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルが挙げられる。より具体的にはオレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミドなどである。これらは単独で用いても構わないが、2種類以上を併用することでより過酷な環境下においても滑性やブロッキング防止効果を維持することができる場合があり、好ましい。
【0030】
本発明におけるシーラントフィルムは、本発明の目的を損なわない範囲で必要に応じて適量の酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、造核剤、着色剤、その他の添加剤及び無機質充填剤等を配合することができる。酸化防止剤として、フェノール系やホスファイト系の単独使用および併用、もしくは一分子中にフェノール系とホスファイト系の骨格を有したものの単独使用が挙げられる。酸化防止剤、帯電防止剤、防曇剤、中和剤、造核剤、着色剤、その他の添加剤及び無機質充填剤の含有量はポリオレフィン系樹脂組成物において0~3重量%の範囲であることが好ましく、0~1重量%の範囲であることがより好ましく、0~0.5重量%の範囲であることがさらに好ましく、0~2重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0031】
(複数層からなるシーラントフィルム )
本発明におけるシーラントフィルムは、単層であっても良く、複数層からなるものであっても良い。例えば、シール層、中間層、ラミネート層の3層構成をとり、中間層に該フィルムをリサイクルしたペレットを添加することにより、ヒートシールエネルギーや耐破袋性を損なうことなくコストを下げたり、プロピレン-αオレフィンランダム共重合体をシール層のみに添加し、中間層やラミネート層はプロピレン-エチレンブロック共重合体を主体として使用することによって、耐衝撃性の低下を抑制することができる。複数の層からなる場合、それぞれの層が前記[1]に記載の組成比であることが好適である。
【0032】
(シーラントフィルムの製造方法)
本発明におけるシーラントフィルムの成形方法は、例えばインフレーション方式、Tダイ方式が使用できるが、透明性を高めるためや、ドラフトのかけ易さからTダイ方式が好ましい。インフレーション方式は冷却媒体が空気であるのに対し、Tダイ方式は冷却ロールを用いるため、未延伸シートの冷却速度を高くするには有利な製造方法である。冷却速度を速めることにより、未延伸シートの結晶化を抑制できるため、高い透明性が得られるほか、後工程での延伸にかかる負荷を制御しやすく有利となる。こうした理由からTダイ方式で成型することがより好ましい。
【0033】
溶融した原料樹脂をキャスティングし、無配向のシートを得る際の冷却ロールの温度の下限は特に限定されないが好ましくは15℃であり、より好ましくは20℃である。上記未満であると、冷却ロールに結露が発生し、未延伸シートと冷却ロールとが密着不足となり、厚み不良の原因となることがある。冷却ロールの上限は特に限定されないが好ましくは50℃でより好ましくは40℃である。上記を超えるとシーラントフィルムの透明性が悪化することがある。
【0034】
無配向のシートを延伸する方式は特に限定するものではなく、例えばインフレーション方式、ロール延伸方式が使用できるが、配向の制御のし易さからロール延伸方式が好ましい。
無配向のシートを適切な条件で長手方向に延伸することにより、直進カット性が発現する。これは分子鎖が延伸方向に規則的に配列されるためである。本発明においては、フィルムの製造工程においてフィルムが走行する方向を長手方向とし、前記長手方向と直角方向を幅方向と呼ぶ。
長手方向の延伸倍率の下限は特に限定されないが好ましくは3.3倍である。これより小さいと降伏応力が低下し、長手方向の引裂強度が大きくなったり、直進カット性が劣ることがある。より好ましくは3.5倍であり、さらに好ましくは3.8倍である。
長手方向の延伸倍率の上限は特に限定されないが好ましくは5.5倍である。これより大きいと過剰に配向が進行し、シールエネルギーが低下し、落下時の耐破袋性が悪化することがある。より好ましくは5.0倍である。
【0035】
長手方向延伸におけるロール温度の下限は特に限定されないが好ましくは80℃である。これより低いとフィルムにかかる延伸応力が高くなり、フィルムが厚み変動を発生することがある。より好ましくは90℃である。
延伸ロール温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃である。これを越えると、フィルムにかかる延伸応力が低くなり、フィルムの引裂強度が低下するばかりか、延伸ロールにフィルムが融着してしまうことがあり、製造が困難になることがある。より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは125℃であり、特に好ましくは115℃である。
【0036】
未延伸シートを延伸工程に導入する前に予熱ロールに接触させ、シート温度を上げておくことが好ましい。
無配向のシートを延伸する際の予熱ロール温度の下限は特に限定されないが好ましくは80℃であり、より好ましくは90℃である。上記未満であると延伸応力が高くなり、厚み変動を発生することがある。予熱ロール温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃であり、より好ましくは130℃であり、さらに好ましくは125℃である。140℃以下であると、熱収縮率やレトルト収縮率が増大しにくい。これは延伸前の熱結晶化を抑制し延伸後の残留応力を小さくすることができるためである。
【0037】
延伸工程を経たシーラントフィルムには、熱収縮を抑制するために結晶化を促進する処理(以下アニール処理)を行うことが好ましい。アニール処理方式には、ロール加熱方式、テンター方式などがあるが、設備の簡略さやメンテナンスのし易さからロール加熱方式が好ましい。アニール処理することによって、フィルムの内部応力を低下させることで、フィルムの熱収縮を抑え、さらに易引裂き性をさらに向上することができる。アニール処理により、易引裂き性をさらに向上することができるため、従来のように引裂き性を高めるために、延伸倍率を大きくする必要がないため、レトルト収縮率やレトルト後のヒートシール強度を犠牲にすることがない。
【0038】
アニール処理温度の下限は特に限定されないが好ましくは80℃である。上記未満であると熱収縮率が高くなり、製袋後やレトルト後の包装袋の仕上がりが悪化したり、引裂強度が大きくなったりすることがある。より好ましくは100℃であり、110℃が特に好ましい。
アニール処理温度の上限は特に限定されないが好ましくは140℃である。アニール処理温度が高い方が、熱収縮率が低下しやすいが、これを超えると、フィルム厚みむらが生じたり、フィルムが製造設備に融着したりすることがある。より好ましくは135℃であり、特に好ましくは130℃である。
【0039】
本発明においては、以上に記述したシーラントフィルムのラミネート面にコロナ処理等で表面を活性化させるのが好ましい。該対応により基材フィルムとのラミネート強度が向上する。
【0040】
(シーラントフィルムの特性)
(フィルム厚み)
本発明におけるシーラントフィルムの厚みは特に限定されないがが、下限は好ましくは10μmであり、より好ましくは30μmであり、さらに好ましくは40μmであり、特に好ましくは50μmである。上記未満であると基材フィルムの厚みに対し相対的に薄くなるため、積層体としての直進カット性が悪化したり、またフィルムのコシ感が弱すぎて加工しにくくなることがある他、耐衝撃性が低下し耐破袋性が悪化したり、することがある。フィルム厚みの上限は好ましくは200μmであり、より好ましくは130μmであり、好ましくは100μmであり、特に好ましくは80μmである。上記を越えるとフィルムのコシ感が強すぎて加工しにくくなることがあるほか、好適な包装体を製造しにくくなることがある。
【0041】
(熱収縮率)
本発明におけるシーラントフィルムの長手方向の120℃における熱収縮率の上限は20%であることが好ましい。上記を超えると引裂強度が高くなると同時に、基材フィルムとの積層体のヒートシール時や得られた包装体のレトルト収縮が大きくなり、包装体の外観を損なうことがある。より好ましくは17%であり、さらに好ましくは14%である。
本発明におけるシーラントフィルムの長手方向の熱収縮率の下限は2%であることが好ましい。これより小さくしようとすると、アニール温度やアニール時間を著しく大きくする必要があるため、耐破袋性や外観が著しく悪化する場合がある。
本発明におけるシーラントフィルムの幅方向の熱収縮率の上限は1%であることが好ましい。上記を超えると、長手方向の引裂強度が大きくなったり、あるいは直進カット性に劣る。より好ましくは0.5%である。本発明におけるシーラントフィルムの幅方向の熱収縮率の下限は-3%であることが好ましい。上記未満であると、ヒートシールで伸びが発生し、包装体の外観が悪化する場合がある。好ましくは-2%である。
【0042】
(降伏応力)
本発明におけるシーラントフィルムの長手方向の降伏応力は150MPa以上であることが好ましい。これより小さいと、その方向の直進カット性が劣る。より好ましくは160MPa以上であり、さらに好ましくは170MPa以上である。
本発明におけるシーラントフィルムの長手方向の降伏応力は250MPa以下であることが好ましい。これより大きいと、フィルムの基材フィルムとの積層体のシールエネルギーが低下し、包装体の耐破袋性が悪化することがある。
【0043】
さらに、本発明におけるシーラントフィルムの長手方向と、幅方向との降伏応力の比は特に限定されないが、4.0以上が好ましく、6.0以上がより好ましい。長手方向と、幅方向との降伏応力の比が4.0以上であると、前記長手方向の配向が不足せずに、直進カット性が向上しやすい。
また、長手方向と、幅方向との降伏応力の比は特に限定されないが14.0以下が好ましく、12.0以下がより好ましい。長手方向と、幅方向との降伏応力の比が14.0以下であると、前記長手方向の配向が過剰にならずに、好適なヒートシール強度が得られるため耐破袋性が向上しやすい。
【0044】
(引裂強度)
本発明におけるシーラントフィルムの前記長手方向の引裂強度の上限は特に限定されないが好ましくは0.2Nである。これを越えると積層体を引裂きにくくなることがある。より好ましくは0.16Nである。
本発明におけるシーラントフィルムの長手方向の引裂強度の下限は特に限定されないが好ましくは0.02Nである。これより小さいと耐破袋性が悪化することがある。より好ましくは0.03Nである。
【0045】
(濡れ張力)
本発明におけるシーラントフィルムの、ポリブチレンテレフタレート樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム基材とラミネートする面の濡れ張力の下限は特に限定されないが、好ましくは30mN/mであり、より好ましくは35mN/mである。上記未満であるとラミネート強度が低下することがある。濡れ張力の上限は特に限定されないが、好ましくは55mN/mであり、より好ましくは50mN/mである。上記を越えるとシーラントフィルムのロールのブロッキングが発生することがある。
【0046】
(突刺強度)
本発明におけるシーラントフィルムの突刺強度の下限は特に限定されないが好ましくは7.8Nであり、より好ましくは9Nである。上記未満であると包装体に突起が当たった時にピンホールが発生することがある。突刺強度の上限は特に限定されないが好ましくは24Nであり、より好ましくは19Nである。上記を越えるとコシ感が強すぎ、フィルムまたは積層体にした時のハンドリングが困難となることがある。
【0047】
(ポリブチレンテレフタレート(以下、PBT)樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム)
本発明に用いられるPBT樹脂を60重量%以上含むポリエステル樹脂組成物からなる二軸延伸フィルム(以下、二軸延伸PBTフィルム)は、PBT樹脂を60質量%以上含む。
PBT樹脂の含量が60質量%未満になると、寸法安定性、加工性、耐破袋性、耐薬品性、低温での耐ピンホール性に優れるという二軸延伸PBTフィルムの特長が失われる。
【0048】
本発明に用いられる二軸延伸PBTフィルムは、PBT樹脂を60質量未満にならない範囲で、他の樹脂や添加物を含むことができる。
本発明におけるPBT樹脂は、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4-ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上である。
本発明におけるPBT樹脂は、上記範囲で共重合されていても構わない。ただし、本発明の二軸延伸PBTフィルム層は、PBT繰り返し単位が60質量%以上含まれる必要がある。
【0049】
PBT樹脂に共重合する成分としては、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸、エチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等のジオール成分が挙げられる。
【0050】
本発明に用いられる二軸延伸PBTフィルム層は、二軸延伸時の製膜性や得られたフィルムの力学特性を調整する目的でPBT樹脂以外のポリエステル樹脂を含有することができる。
PBT樹脂以外のポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(以下PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、などが挙げられる。
PBT樹脂以外のポリエステル樹脂は、共重合されていても構わない。例えば、PET樹脂に共重合する成分としては、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのジカルボン酸、ブチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカーボネートジオール等のジオール成分が挙げられる。
【0051】
本発明に用いるPBT樹脂の固有粘度の下限は好ましくは0.9dl/gであり、より好ましくは0.95dl/gであり、更に好ましくは1.0dl/gである。
PBT樹脂の固有粘度が0.9dl/g未満の場合、製膜して得られるフィルムの固有粘度が低下し、突刺強度、衝撃強度、耐破袋性などが低下することがある。
PBT樹脂の固有粘度の上限は好ましくは1.3dl/gである。上記を越えると延伸時の応力が高くなりすぎ、製膜性が悪化する場合がある。また、溶融粘度が高くなるため押出し温度を高温にする必要が生じ、押出しする際の分解物が出やすくなる場合がある。
【0052】
本発明に用いるPBT樹脂以外のポリエステル樹脂の固有粘度の下限は、PET樹脂を使用する場合は、好ましくは0.5dl/gであり、より好ましくは0.6dl/gである。
PBT樹脂以外のポリエステル樹脂の固有粘度が0.9dl/g未満の場合、製膜して得られるフィルムの固有粘度が低下し、突刺強度、衝撃強度、耐破袋性などが低下することがある。
PBT樹脂以外のポリエステル樹脂の固有粘度の上限は、PET樹脂を使用する場合は、好ましくは1.2dl/gである。上記を越えると延伸時の応力が高くなりすぎ、製膜性が悪化する場合がある。また、溶融粘度が高くなるため押出し温度を高温にする必要が生じ、押出しする際の分解物が出やすくなる場合がある。
【0053】
本発明の包装袋のレトルト処理後の溶出物を低減することを目的として、二軸延伸PBTフィルム層には、酸化防止剤を添加することが有効である。樹脂の押出し工程において樹脂の分子量低下を抑制し、得られたフィルム中に残存する1,4-ブタンジオールやTHFの量を少なくさせる為である。また、PBTは加熱によって徐々に分解が進行するため、フィルムのレトルト処理時に起きる熱分解を抑制させる上でも効果的である。
【0054】
本発明における二軸延伸PBTフィルム層に用いられる酸化防止剤としては、一次酸化防止剤(これは、フェノール系またはアミン系のラジカル捕捉や連鎖停止作用を有する)、および二次酸化防止剤(これは、リン系、イオウ系などの過酸化物分解作用を有する)が挙げられ、これらのいずれも用いることができる。具体例としては、フェノール系酸化防止剤(例えば、フェノールタイプ、ビスフェノールタイプ、チオビスフェノールタイプ、ポリフェノールタイプなど)、アミン系酸化防止剤(例えば、ジフェニルアミンタイプ、キノリンタイプなど)、リン系酸化防止剤(例えば、ホスファイトタイプ、ホスホナイトタイプなど)、イオウ系酸化防止剤(例えば、チオジプロピオン酸エステルタイプなど)が挙げられる。
具体的には、n-オクタデシル-βー(4‘-ヒドロキシ-3,5’-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、テトラキス[メチレン-3-(3‘,5’-ジ-t-ブチル-4‘-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](これは、「イルガノックス1010」(商品名)として市販されている)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン(これは、「イルガノックス1330」(商品名)として市販されている)、トリス(ミックスドモノおよび/またはジノニルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジ-ラウリル-チオジプロピオネート、ジ-ミリスチル-チオジプロピオネート、ジ-ステアリル-チオジプロピオネートなどが挙げられる。これらの酸化防止剤は、1種類で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、入手性、食品衛生性の観点からn-オクタデシル-βー(4‘-ヒドロキシ(3‘,5’-ジ-t-ブチル-4‘-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](イルガノックス1010)が好ましい。
【0055】
酸化防止剤濃度の上限は好ましくは2000ppmであり、より好ましくは1000ppmである。上記を越えると添加した酸化防止剤自体が溶出物となりうるとなることがある。
【0056】
本発明における二軸延伸PBTフィルム層には必要に応じ、従来公知の添加剤、例えば、滑剤、安定剤、着色剤、静電防止剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
【0057】
滑剤としては、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機粒子滑剤、有機系滑剤が挙げられる。シリカ、炭酸カルシウムが好ましく、中でも多孔質シリカがヘイズを低減する点で特に好ましい。これらにより透明性と滑り性と発現することができる。
【0058】
滑剤濃度の下限は好ましくは100ppmであり、より好ましくは500ppmであり、さらに好ましくは800ppmである。上記未満であるとフィルムの滑り性が低下となることがある。滑剤濃度の上限は好ましくは20000ppmであり、より好ましくは10000ppmであり、さらに好ましくは1800ppmである。上記を越えると透明性が悪くなることがある。
【0059】
本発明における二軸延伸PBTフィルム層を得るため製造方法を具体的に説明する。これらに限定されるものではない。
【0060】
樹脂溶融温度の下限は好ましくは200℃であり、より好ましくは250℃であり、さらに好ましくは260℃である。上記未満であると吐出が不安定となることがある。樹脂溶融温度の上限は好ましくは280℃であり、より好ましくは270℃である。
PBTは結晶化速度が速いため、キャスト時にも結晶化が進行する。このとき、多層化せずに単層でキャストした場合には、結晶の成長を抑制しうるような障壁が存在しないために、これらの結晶はサイズの大きな球晶へと成長してしまう。その結果、得られた未延伸シートの降伏応力が高くなり、二軸延伸時に破断しやすくなるばかりでなく、得られた二軸延伸フィルムの柔軟性が損なわれ、耐ピンホール性や耐破袋性が不十分なフィルムとなってしまう。
【0061】
多層化の具体的な方法として、一般的な多層化装置(多層フィードブロック、スタティックミキサー、多層マルチマニホールドなど)を用いることができ、例えば、二台以上の押出機を用いて異なる流路から送り出された熱可塑性樹脂をフィードブロックやスタティックミキサー、マルチマニホールドダイ等を用いて多層に積層する方法等を使用することができる。なお、本発明のように同一の組成で多層化する場合、一台の押出機のみを用いて、押出機からダイまでのメルトラインに上述の多層化装置を導入することで本発明の目的を果たすことも可能である。
【0062】
冷却ロール温度の下限は好ましくは-10℃である。上記未満であると結晶化抑制の効果が飽和することがある。冷却ロール温度の上限は好ましくは40℃である。上記を越えると結晶化度が高くなりすぎて延伸が困難となることがある。また冷却ロールの温度を上記の範囲とする場合、結露防止のため冷却ロール付近の環境の湿度を下げておくことが好ましい。
【0063】
キャスティングでは、表面に高温の樹脂が接触するため冷却ロール表面の温度が上昇する。通常、冷却ロールは内部に配管を通して冷却水を流して冷却するが、充分な冷却水量を確保する、配管の配置を工夫する、配管にスラッジが付着しないようメンテナンスを行う、などして、冷却ロール表面の幅方向の温度差を少なくする必要がある。このとき、未延伸シートの厚みは15~2500μmの範囲が好適である。
【0064】
上述における多層構造でのキャストは、少なくとも60層以上、好ましくは250層以上、更に好ましくは1000層以上で行う。層数が少ないと、延伸性の改善効果が失われる。
【0065】
次に延伸方法について説明する。延伸方法は、同時二軸延伸でも逐次二軸延伸でも可能であるが、突刺強度を高めるためには、面配向係数を高めておく必要があるほか、製膜速度が速く生産性が高いという点においては逐次二軸延伸が最も好ましい。
【0066】
長手方向の延伸温度の下限は好ましくは55℃であり、より好ましくは60℃である。55℃未満であると破断が起こりやすくなることがあるばかりか、低温での延伸により長手方向の配向が強くなるため、熱固定処理の際の収縮応力が大きくなることによって、幅方向の分子配向の歪みが大きくなり、結果として長手方向の直進引裂き性が低下することがある。長手延伸温度の上限は好ましくは100℃であり、より好ましくは95℃である。100℃を越えると配向がかからないため力学特性が低下することがある。
【0067】
長手延伸倍率の下限は好ましくは2.6倍であり、特に好ましくは2.8倍である。上記未満であると配向がかからないため力学特性や厚みムラが悪くなることがある。長手延伸倍率の上限は好ましくは4.3倍であり、より好ましくは4.0倍であり、特に好ましくは3.8倍である。上記を越えると力学強度や厚みムラ改善の効果が飽和することがあるばかりか、長手方向の配向が強くなるため、熱固定処理の際の収縮応力が大きくなることによって、幅方向の分子配向の歪みが大きくなり、結果として長手方向の直進引裂き性が低下することがある。
【0068】
幅方向の延伸温度の下限は好ましくは60℃であり、上記未満であると破断が起こりやすくなることがある。幅延伸温度の上限は好ましくは100℃であり、上記を越えると配向がかからないため力学特性が低下することがある。
【0069】
幅方向の延伸倍率の下限は好ましくは3.5倍であり、より好ましくは3.6倍であり、特に好ましくは3.7倍である。上記未満であると配向がかからないため力学特性や厚みムラが悪くなることがある。幅延伸倍率の上限は好ましくは5倍であり、より好ましくは4.5倍であり、特に好ましくは4.0倍である。上記を越えると力学強度や厚みムラ改善の効果が飽和することがある。
【0070】
幅方向の熱固定温度の下限は好ましくは190℃であり、より好ましくは205℃である。上記未満であると熱収縮率が大きくなり、加工時のズレや縮みが起こることがある。幅熱固定温度の上限は好ましくは240℃であり、上記を越えるとフィルムが融けてしまうほか、融けない場合でも著しく脆くなることがある。
【0071】
幅方向のリラックス率の下限は好ましくは3%であり、上記未満であると熱固定時に破断が起こりやすくなることがある。幅リラックス率の上限は好ましくは12%であり、上記を越えるとたるみなどが生じて厚みムラが発生することがあるばかりか、熱固定時の長手方向への収縮が大きくなる結果、端部の分子配向の歪みが大きくなり、直進引裂き性が低下することがある。
【0072】
本発明における二軸延伸PBTフィルムの厚みの下限は好ましくは8μmであり、より好ましくは10μmであり、さらに好ましくは12μmである。8μm未満であるとフィルムとしての強度が不足することがある。
フィルム厚みの上限は好ましくは25μmであり、より好ましくは18μmであり、さらに好ましくは16μmである。25μmを越えると厚くなりすぎて、経済的に不利であるとともに、製袋時の加工性、生産性が悪くなることがある。
【0073】
二軸延伸PBTフィルムの配向軸角度の上限は特に制限はなく、長手方向に引裂いた際の引裂き直進カット性を得ることができるが、好ましくは30°であり、より好ましくは28°であり、さらに好ましくは25°である。
【0074】
二軸延伸PBTフィルムの衝撃強度の下限は好ましくは0.05J/μmである。上記未満であると包装袋の強度が不足することがある。
二軸延伸PBTフィルム層の衝撃強度の上限は好ましくは0.2J/μmである。上記を越えると改善の効果が飽和するとなることがある。
【0075】
二軸延伸PBTフィルムの厚みあたりのヘイズの上限は好ましくは0.66%/μmであり、より好ましくは0.60%/μmであり、更に好ましくは0.53%/μmである。
上記を超えると二軸延伸PBTフィルムに印刷を施した際に、印刷された文字や画像の品位を損ねることがある。
【0076】
二軸延伸PBTフィルムの長手方向及び幅方向における150℃×15分加熱後の熱収縮率の下限は好ましくは-1.0%である。上記未満であると改善の効果が飽和するほか、力学的に脆くなってしまうことがある。
【0077】
二軸延伸PBTフィルムの長手方向及び幅方向における150℃×15分加熱後の熱収縮率の上限は好ましくは4.0%であり、より好ましくは3.0%である。上記を越えると印刷などの加工時の寸法変化により、ピッチズレなどが起こるとなることがある。また一般にフィルムの熱収縮率は幅方向熱固定処理での処理温度や幅方向リラックス率によって調整される。
【0078】
二軸延伸PBTフィルムは、少なくとも片面に無機薄膜層を設けた積層フィルムとすることによって、優れたガスバリア性を付与することができる。
二軸延伸PBTフィルムに積層する無機薄膜層としては、金属または無機酸化物からなる薄膜が好ましく用いられる。
無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。
この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20~70%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、水蒸気バリア性が低くなる場合がある。一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
【0079】
無機薄膜層の膜厚は、通常1~800nm、好ましくは5~500nmである。無機薄膜層の膜厚が1nm未満であると、満足のいくガスバリア性が得られ難くなる場合があり、一方、800nmを超えて過度に厚くしても、それに相当するガスバリア性の向上効果は得られず、耐屈曲性や製造コストの点でかえって不利となる。
【0080】
無機薄膜層を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)など、公知の蒸着法を適宜採用すればよい。以下、無機薄膜層を形成する典型的な方法を、酸化ケイ素・酸化アルミニウム系薄膜を例に説明する。例えば、真空蒸着法を採用する場合は、蒸着原料としてSiO2とAl2O3の混合物、あるいはSiO2とAlの混合物等が好ましく用いられる。これら蒸着原料としては通常粒子が用いられるが、その際、各粒子の大きさは蒸着時の圧力が変化しない程度の大きさであることが望ましく、好ましい粒子径は1mm~5mmである。
加熱には、抵抗加熱、高周波誘導加熱、電子ビーム加熱、レーザー加熱などの方式を採用することができる。また、反応ガスとして酸素、窒素、水素、アルゴン、炭酸ガス、水蒸気等を導入したり、オゾン添加、イオンアシスト等の手段を用いた反応性蒸着を採用することも可能である。さらに、被蒸着体(蒸着に供する積層フィルム)にバイアスを印加したり、被蒸着体を加熱もしくは冷却するなど、成膜条件も任意に変更することができる。このような蒸着材料、反応ガス、被蒸着体のバイアス、加熱・冷却などは、スパッタリング法やCVD法を採用する場合にも同様に変更可能である。
【0081】
レトルト処理後のガスバリア性やラミネート強度を確保するために、二軸延伸PBTフィルム層と前記無機薄膜層との間には、密着層を設けることができる。
二軸延伸PBTフィルム層と前記無機薄膜層との間に設ける密着層としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。前記溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。これらの密着層に用いる樹脂組成物は、有機官能基を少なくとも1種類以上有するシランカップリング剤を含有することが好ましい。前記有機官能基としては、アルコキシ基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基等が挙げられる。前記シランカップリング剤の添加によって、レトルト処理後のラミネート強度がより向上する。
【0082】
前記密着層に用いる樹脂組成物の中でも、オキサゾリン基を含有する樹脂とアクリル系樹脂及びウレタン系樹脂の混合物を用いることが好ましい。オキサゾリン基は無機薄膜との親和性が高く、また無機薄膜層形成時に発生する無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物とが反応することができ、無機薄膜層と強固な密着性を示す。また被覆層中に存在する未反応のオキサゾリン基は、二軸延伸PBTフィルム層および被覆層の加水分解により発生したカルボン酸末端と反応し、架橋を形成することができる。
【0083】
前記密着層を形成するための方法としては、特に限定されるものではなく、例えばコート法など従来公知の方法を採用することができる。コート法の中でも好適な方法としては、オフラインコート法、インラインコート法を挙げることができる。例えば二軸延伸PBTフィルムを製造する工程で行うインラインコート法の場合、コート時の乾燥や熱処理の条件は、コート厚みや装置の条件にもよるが、コート後直ちに幅方向の延伸工程に送入し延伸工程の予熱ゾーンあるいは延伸ゾーンで乾燥させることが好ましく、そのような場合には通常50~250℃程度の温度とすることが好ましい。
【0084】
(アルミニウム箔層)
アルミニウム箔の材質としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができるが、さらなる耐ピンホール性、及び成形時の延展性を付与させる目的で、鉄を含むアルミニウム箔を用いるのが好ましい。鉄の含有量はアルミニウム箔100質量%中、0.1~9.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量の下限値が上記値より少ないと耐ピンホール性、延展性を十分に付与させることができず、一方、上限値が上記値よりも多いと柔軟性が損なわれる。アルミニウム箔の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性を考慮して5~12μmが好ましく、7~9μmがより好ましい。
【0085】
アルミニウム箔は、密着性、耐フッ酸性の観点から、前処理を行うことが望ましい。前処理としては、脱脂、酸洗浄、アルカリ洗浄等を行うことができる。前処理としては、大きく区分するとウェットタイプとドライタイプが挙げられる。ウェットタイプでは、酸洗浄やアルカリ洗浄などが挙げられる。酸洗浄に使用する酸としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、フッ酸などの無機酸が挙げられ、これら酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、アルミニウム箔のエッチング効果を向上させるという観点から、必要に応じてFeイオンやCeイオンなどの供給源となる各種金属塩を配合しても構わない。アルカリ洗浄に使用するアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムなどの強エッチングタイプが挙げられる。また、弱アルカリ系や界面活性剤を配合したものを用いてもよい。これらの脱脂は浸漬法やスプレー法で行われる。
ドライタイプの方法の一つとして、アルミニウムを焼鈍処理する工程で、脱脂処理を行う方法が挙げられる。
また、脱脂処理としては、上記の他にも、フレーム処理やコロナ処理などが挙げられる。さらには特定波長の紫外線を照射して発生する活性酸素により、汚染物質を酸化分解・除去するような脱脂処理も挙げられる。
【0086】
(接着剤層)
二軸延伸PBTフィルム層とポリオレフィン系樹脂フィルムとの間、若しくは二軸延伸PBTフィルムとアルミ箔との間、およびアルミ箔とポリオレフィン系樹脂フィルムの間に設ける接着剤層としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系、チタン系、イソシアネート系、イミン系、ポリブタジエン系等の樹脂に、エポキシ系、イソシアネート系、メラミン系等の硬化剤を添加したものが挙げられる。前記溶媒(溶剤)としては、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族系溶剤;メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコール誘導体等が挙げられる。接着剤層としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールを主剤としたポリウレタン系接着剤が好ましい。接着剤層15の厚さは、1~10μmが好ましく、3~7μmがより好ましい。
【0087】
(積層体の構成及び製造方法)
本発明の積層体は、前記ポリオレフィン系樹脂フィルムをシーラントとして用い、少なくとも二軸延伸PBTフィルムを基材として含む。また、公知の技術として接着性やバリア性を付与する目的でこれらの基材フィルムにコーティングや蒸着加工をしたものを用いたり、アルミ箔をさらに積層するなどの構成としてもよい。
具体的には例えば、二軸延伸PBTフィルム/アルミ箔/シーラント、二軸延伸PBTフィルム/蒸着層/シーラント、二軸延伸PBTフィルム/易接着コート層/蒸着層/シーラント、二軸延伸PBTフィルム/印刷層/シーラント、などの構成が挙げられる。
積層の方法はドライラミネート方式、押し出しラミネート方式など公知の方法が使用できるが、いずれのラミネート方式であっても良好な直進カット性の積層体を製造することができる。
【0088】
(引裂強度)
本発明の積層体の長手方向の引裂強度の上限は特に限定されないが、好ましくは0.4Nである。これを越えると積層体を引裂きにくくなることがある。より好ましくは0.35Nであり、さらに好ましくは0.3Nである。0.1Nであれば十分ある。
【0089】
(直進カット性)
本発明の積層体の長手方向の直進カット性の上限は、好ましくは5mmであり、より好ましくは3mmであり、さらに好ましくは2mmであり、特に好ましくは1mmである。上記を越えると包装体が泣別れすることがある。1mmであれば十分である。
【0090】
(レトルト収縮率)
本発明の積層体のレトルト収縮率の上限は特に限定されないが10%である。これを超えると、レトルト後の包装体の外観が悪化することがある。より好ましくは7%である。長手方向のレトルト収縮率の下限は特に限定されないが-1%である。これ未満であると、レトルト後の伸びが大きく、破袋の原因となることがある。
【0091】
(ヒートシール強度)
本発明の積層体のレトルト前のヒートシール強度の下限は特に限定されないが、好ましくは30N/15mmであり、より好ましくは35N/15mmである。上記未満であると耐破袋性が悪化することがある。
ヒートシール強度は121℃、30分のレトルト処理後においても35N/15mm以上を維持していることが好ましい。ヒートシール強度の上限は特に限定されないが好ましくは60N/15mmである。上記を越えるためにはフィルムの厚みを増大させる等が必要となるため、コスト高となることがある。
(ヒートシール開始温度)
本発明の積層体のレトルト前のヒートシール開始温度の下限は特に限定されないが、好ましくは160℃であり、より好ましくは170℃である。上記未満であると耐破袋性が悪化することがある。
【0092】
(シールエネルギー)
本発明の積層体のシールエネルギーの下限は特に限定されないが、好ましくは0.9J/150mm2であり、より好ましくは1.0J/150mm2であり、さらに好ましくは1.2J/150mm2である。上記未満であると、耐破袋性が悪化することがある。
【0093】
(突刺強度)
本発明の積層体のレトルト前の突刺強度の下限は特に限定されないが、は好ましくは12.0Nであり、より好ましくは15.0Nである。上記未満であると包装袋に突起が接触した時にピンホールとなることがある。突刺強度の上限は特に限定されないが好ましくは45.0Nであり、より好ましくは30.0Nである。上記を越えると積層体のコシ感が強すぎてハンドリングが困難となることがある。
【0094】
(包装袋)
食料品などの内容物を自然界の埃やガスなどから保護することを目的に、内容物の周囲を包むように配置された前記積層体を包装袋と呼ぶ。包装袋は前記積層体を切り出し、加熱したヒートシールバーや超音波などで内面同士を接着し、袋状にするなどして製造され、例えば長方形の積層体2枚をシーラント側が内側になるよう重ね、4辺をヒートシールした4方シール袋などが広く使用されている。袋の底にヒダを付けて自立できるようにしたスタンディングパウチやピロー包装袋などの長方形以外の形状であってもよい。
また、加圧するなどして沸点上昇させ100℃以上とした熱水による加熱殺菌の熱に耐え得る包装袋をレトルト用包装袋と呼ぶ。また、その包装袋を提供することを目的とするフィルムをレトルト用フィルムと呼ぶ。
【0095】
(泣別れ)
本発明の積層体から得られた包装袋の泣別れの上限は特に限定されないが、好ましくは5mmであり、より好ましくは4mmであり、さらに好ましくは3mmであり、特に好ましくは2mmであある。上記を越えると包装体を引裂いた際、内容物がこぼれてしまうことがある。1mmであれば十分である。
(耐破袋性)
本発明の積層体から作成した4方シール袋を落下させ、袋が破れるまで落下を繰り返し、繰り返しの落下回数を測定したときの、破袋せずに残存したものの個数の割合が50%となったときの落下回数が5回以上であることが、実用上好ましく、10回以上であることがより好ましい。評価は下記のとおりとした。
◎:残存率が50%となる落下回数が13回以上
○:残存率が50%となる落下回数が10回以上12回以下
△:残存率が50%となる落下回数が5回以上9回以内
×:残存率が50%となる落下回数が4回以内
【実施例】
【0096】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、これらに限定されるものではない。各実施例で得られた特性は以下の方法により測定、評価した。評価の際、フィルム製膜の長手方向を長手方向、幅方向を幅方向とした。
【0097】
二軸延伸PBTフィルムの評価は次の測定法によって行った。
(1)二軸延伸PBTフィルムの厚み
JIS K7130-1999 A法に準拠し、ダイアルゲージを用いて測定した。
【0098】
(2)二軸延伸PBTフィルムの熱収縮率
長手方向及び幅方向の熱収縮率は試験温度150℃、加熱時間15分間とした以外は、JIS-C-2151-2006.21に記載の寸法変化試験法で測定した。
試験片は21.1(a)の記載に従い使用した。
【0099】
(3)二軸延伸PBTフィルムの衝撃強度
JIS K7160-1996に準じて、株式会社東洋精機製作所製のインパクトテスターを用い、23℃の雰囲気下におけるフィルムの衝撃打ち抜きに対する強度を測定した。衝撃球面は、直径1/2インチのものを用いた。単位はJ/μmである。
【0100】
(4)二軸延伸PBTフィルムの突刺強度
食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準 第3:器具及び容器包装」(昭和57年厚生省告示第20号)の「2.強度等試験法」に準拠して測定した。先端部直径0.7mmの針を、突刺速度50mm/分でフィルムに突刺、針がフィルムを貫通する際の強度を測定して、突刺強度とした。測定は常温(23℃)で行い、単位はNである。
【0101】
(5)二軸延伸PBTフィルムの配向軸角度
王子計測機器(株)製分子配向計MOA-6004で測定した。長手方向120mm、幅方向100mmにサンプルを切り出し、計測器に設置し、測定されたAngleの値を配向軸角度とした。なお、長手方向が0°である。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0102】
以下、シーラントフィルムの測定に関して方法を示す。
(1)樹脂密度
JIS K7112:1999年のD法(密度こうばい管)に準じて密度を評価した。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0103】
(2)メルトフローレート(MFR)
JISK-7210-1に基づき230℃、荷重2.16kgで測定を行った。N=3で測定し、平均値を算出した。
【0104】
(3)突刺強度
シーラントフィルム、または積層体を、食品衛生法における「食品、添加物等の規格基準 第3:器具及び容器包装」(昭和57年厚生省告示第20号)の「2.強度等試験法」に準拠して23℃下で突刺強度を測定した。先端部直径0.7mmの針を、突刺速度50mm/分でフィルムに突刺、針がフィルムを貫通する際の強度を測定した。得られた測定値をフィルムの厚みで割り、フィルム1μmあたりの突刺強度[N/μm]を算出した。N=3で測定し、平均値を算出した。
積層体を121℃、30分間熱水でレトルト処理を行った後も同様に測定を行った。
【0105】
(4)引裂強度
フィルム及び積層体を延伸方向150mm、延伸方向に対して垂直方向60mmの短冊状の試験片を切り出した。試験片の一方の短辺の中央部から延伸方向に沿って30mmの切り込みを入れた。試験片を温度23℃/相対湿度50%の雰囲気で状態調節してから測定を行った。
切込みを入れた試験片の左右の短辺から10mmの距離の範囲をそれぞれつかみ具でつかみ、2つのつかみ具の間の距離を40mmとなるようにして、(株)島津製作所製オートグラフAG-Iの取り付け、試験片の長辺と二つのつかみ具の仮想中心線とが平行になるように注意深く締め付けた。
試験速度を200mm/minとし、試験機を始動させ,引裂きが試験片のもう一方の短辺に達するまで引裂力を記録し、25mm、50mm、75mm、100mm引裂いた地点における引裂力の平均値を求めた。
巻き取ったフィルムの内面を手前にして、向かって右側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合と、向かって左側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合の両方をについて各N=3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。右側、左側の測定結果のうち、数値の大きい方を採用し引裂強度とした。
同様に積層体のポリオレフィン系樹脂フィルム側を手前にして、向かって右側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合と、向かって左側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合の両方を各N=3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。右側、左側の測定結果のうち、数値の大きい方を採用し引裂強度とした。
【0106】
(5)降伏応力
シーラントフィルムを長手方向80mm、幅方向15mmの短冊状に切り出した。インストロンインスツルメンツ製万能材料試験機5965により、標線間距離は20mmとし、クロスヘッドスピード1000mm/分で引張り試験を行った。応力-ひずみ曲線における傾きが最初に0となった時点の引張応力を降伏応力した。延伸倍率が高い場合、一般に上降伏点と呼ばれる傾き0の点が消滅する。この場合においても破断点付近で傾きが最初に0になる点を降伏応力とした。長手方向、幅方向で各N=3で測定し、それぞれの平均値を算出した。降伏応力の比は長手方向の降伏応力を幅方向の降伏応力で除した値とした。
【0107】
(6)熱収縮率
シーラントフィルムを120mm四方に切り出した。長手方向(フィルム製膜の流れ方向)、幅方向(長手方向に垂直な方向)それぞれに100mmの間隔となるよう、標線を記入した。120℃に保温したオーブン内にサンプルを吊り下げ、30分間熱処理を行った。標線間の距離を測定し、下記式に従い、熱収縮率を計算した。N=3で測定し、平均値を算出した。
熱収縮率=(熱処理前の標線長-熱処理後の標線長)/熱処理前の標線長×100 (%)
【0108】
以下、積層体の測定方法に関して方法を示す。
(1)直進カット性
直進カット性とは、シーラントフィルムや積層体を引裂いた際に、長手方向に真直ぐに引裂ける性能を示す。測定は以下の方法で行った。本実施例では長手方向に延伸したので、長手方向のみで直進カット性を評価した。
積層体を長手方向150mm、幅方向60mm、の短冊に切り出し、短辺の中央部から長手方向に沿って30mmの切り込みを入れた。試験片を温度23℃/相対湿度50%の雰囲気で状態調節してから測定を行った。
JIS K7128-1:1998に準じ、切込みを入れた試験片の左右の短辺から10mmの距離の範囲をそれぞれつかみ具でつかみ、2つのつかみ具の間の距離を40mmとなるようにして、(株)島津製作所製オートグラフAG-Iの取り付け、サンプルを引き裂いた。
長手方向に、切込み30mmを含まず120mm引き裂いた時点で、短辺の中央部を結ぶ線から幅方向に移動した距離を測定し、その絶対値を記録した。積層体のポリオレフィン系樹脂フィルム側を手前にして、向かって右側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合と、向かって左側の切片を上側のつかみ具に挟んだ場合の両方を各N=3で測定を行い、それぞれの平均値を算出した。右側、左側の測定結果のうち、数値の大きい方を採用し、直進カット性とした。
【0109】
(2)レトルト収縮率
積層体を120mm四方に切り出した。長手方向、幅方向それぞれに100mmの間隔となるよう、標線を記入した。121℃、30分間熱水でレトルト処理を行った。標線間の距離を測定し、下記式に従い、レトルト収縮率を測定した。各N=3で測定を行い、平均値を算出した。
レトルト収縮率=(処理前の標線長-処理後の標線長)/処理前の標線長×100 (%)
【0110】
(3)ヒートシール強度
ヒートシール条件および強度測定条件は次の通りである。すなわち、実施例・比較例で得られた積層体のポシーラントフィルム側同士を重ね合せ、0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度220℃でヒートシールした後、放冷した。各温度でヒートシールされたフィルムからそれぞれ長手方向80mm、幅方向15mmの試験片を切り取り、各試験片について、クロスヘッドスピード200mm/分でヒートシール部を剥離した際の剥離強度を測定した。試験機はインストロンインスツルメンツ製の万能材料試験機5965を使用した。各N=3回で測定を行い、平均値を算出した。121℃、30分間熱水でレトルト処理を行う前後で測定した。
【0111】
(4)ヒートシール開始温度
ヒートシール開始温度は、製袋機での連続生産を想定した際の生産性に関係する項目である。製袋適正が良いとは、基材の二軸延伸フィルムが収縮や破壊が発生しない温度範囲で、十分な密封性が得られることである。ヒートシール開始温度の評価を以下の様にして行った。
前記ヒートシール強度の測定において、ヒートシールバーの温度を5℃ピッチで変更し、それぞれN=3でヒートシール強度の測定を行った。ヒートシール強度が30Nを超える直前の温度におけるヒートシール強度と、超えた直後の温度におけるヒートシール強度を加重平均して算出した。
【0112】
(5)シールエネルギー
レトルト前の積層体のヒートシール強度を測定する際に、横軸を剥離距離、縦軸を剥離強度とした測定チャートにおいて、剥離開始から破断までのグラフ面積をインストロン用解析ソフトblue hill3にて解析し、シールエネルギーを算出した。各N=3で測定を行い、平均値を算出した。
【0113】
(6)泣別れ
2枚の積層体のシーラントフィルム同士を向い合せヒートシールし、内寸長手方向120mm、幅方向170mmの4方シール袋を作成した。4方シール袋の端にノッチを作成し、長手方向に手で引裂いた。反対の端までカットを進め、袋の表側と裏側のフィルムの引裂き線のズレを測定した。右手側が手前になる方向、左手側が手前になる方向の両方について各N=3で測定した平均値を算出し、大きい方の測定値を採用した。
(7)耐破袋性
積層体を切り出し、飽和食塩水 を300ml封入した内寸縦170mm、横120mmの4方シール袋を作製した。この際のヒートシール条件は0.2MPaの圧力で1秒間、シールバーの幅10mm、ヒートシール温度220℃とした。製袋加工後に4方シール袋の端部を切り落とし、シール幅は5mmとした。前記4方シール袋を121℃において30分間レトルトした。次に-5℃の環境に8時間放置し、その環境下において1.0mの高さから4方シール袋を平坦なコンクリート床に落下させた。袋が破れるまで落下を繰り返し、繰り返しの落下回数を測定し、下記のように段階を設けた。袋の個数は各水準で20個とした。
◎:残存率が50%となる落下回数が13回以上
○:残存率が50%となる落下回数が10回以上12回以下
△:残存率が50%となる落下回数が5回以上9回以内
×:残存率が50%となる落下回数が4回以内
【0114】
(実施例1)
(二軸延伸PBTフィルムの作製)
PBT樹脂1は1100-211XG(CHANG CHUN PLASTICS CO.,L幅.、固有粘度1.28dl/g)を用いた。
一軸押出機を用い、PBT樹脂を80質量部とテレフタル酸//エチレングリコール=100//100(モル%)からなる固有粘度0.62dl/gのPET樹脂を20質量部、不活性粒子として平均粒径2.4μmの多孔質シリカ粒子をシリカ濃度として1600ppmとなるように配合したものを溶融させた後、メルトラインを12エレメントのスタティックミキサーに導入した。これにより、PBT樹脂の溶融体の分割・積層を行い、同一の原料からなる多層溶融体を得た。265℃のT-ダイスからキャストし、15℃の冷却ロールに静電密着法により密着させて未延伸シートを得た。
次いで、70℃で長手方向に3.0倍ロール延伸し、次いで、テンターに通して90℃で横方向に4.0倍延伸し、200℃で3秒間の緊張熱処理と1秒間1%の緩和処理を実施した後、両端の把持部を10%ずつ切断除去して厚みが15μmの二軸延伸PBTフィルムを得た。
【0115】
(シーラントフィルムの作製)
樹脂密度891kg/m3、230℃、2.16kgにおけるMFR3.0g/10minのプロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293-22、プロピレン含有量が93.5重量%)94重量%に対し、樹脂密度870kg/m3、230℃、2.16kgにおけるMFR1.8g/10minのエチレン-プロピレン共重合エラストマー樹脂(三井化学製、タフマーP0480、プロピレン含有量が27重量%)を6重量%混合した。
【0116】
(溶融押出)
混合したポリオレフィン系樹脂をスクリュー直径90mmの3ステージ型単軸押出し機で、巾800mmでプレランドを2段階にし、かつ溶融樹脂の流れが均一になるように段差部分の形状を曲線状としてダイス内の流れが均一になるように設計したTスロット型ダイに導入し、ダイスの出口温度を230℃で押出した。
【0117】
(冷却)
ダイスから出てきた溶融樹脂シートを21℃の冷却ロールで冷却し、層厚みが270(μm)よりなる未延伸のポリオレフィン系樹脂フィルムを得た。冷却ロールでの冷却に際しては、エアーノズルで冷却ロール上のフィルムの両端を固定し、エアーナイフで溶融樹脂シートの全幅を冷却ロールへ押さえつけ、同時に真空チャンバーを作用させ溶融樹脂シートと冷却ロールの間への空気の巻き込みを防止した。エアーノズルは、両端ともフィルム進行方向に直列に設置した。ダイス周りはシートで囲い、溶融樹脂シートに風が当たらないようした。
【0118】
(予熱)
未延伸シートを加温したロール群に導き、シートとロールを接触させることによってシートを予熱した。予熱ロールの温度は105℃とした。複数のロールを使用し、フィルムの両面を予熱した。
(延伸)
前記未延伸シートをロール延伸機に導き、ロール速度差により、4.0倍に長手方向に延伸し厚みを60μmとした。延伸ロールの温度は105℃とした。
【0119】
(アニール処理)
アニーリングロールを使用し130℃で熱処理を施した。複数のロールを使用し、フィルムの両面を熱処理した。
(コロナ処理)
フィルムの片面(ラミネート面)にコロナ処理を施した。
【0120】
(巻き取り)
製膜速度は20m/分で実施した。製膜したフィルムは耳部分をトリミングし、ロール状態にして巻き取った。フィルムの片面(ラミネート面)の濡れ張力は42mN/mであった。
【0121】
(積層体の作製)
得られた二軸延伸PBTフィルム(厚み15μm、配向角は長手方向に対し30°)と、シーラントフィルムであるポリオレフィン系樹脂フィルムを、エステル系ドライラミネート用接着剤(東洋モートン社製、TM569)33.6質量部、硬化剤として(東洋モートン社製、CAT10L)4.0質量部、及び酢酸エチル62.4質量部を混合して得られたエステル系接着剤を使用し、接着剤の塗布量が3.0g/m2となるようドライラミネートした。積層した積層体を40℃に保ち、3日間エージングを行い、積層体を得た。
【0122】
(実施例2)
実施例1において、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293-22)とエチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体96重量%、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を4重量%とした以外は同様の方法において積層体を得た。
【0123】
(実施例3)
実施例1において、プロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293-22)とエチレン-プロピレン共重合エラストマーの混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体を90重量%、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を10重量%とした以外は同様の方法において積層体を得た。
【0124】
(実施例4)
実施例1において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体を64重量%、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を6重量%、密度890kg/m3 MFR1.5g/10min(230℃、2.16kg測定)、融点132℃のプロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社社製 S131)30重量%とし、アニールロールの温度を120℃とした以外は同様の方法において積層体を得た。
【0125】
(実施例5)
実施例4において、長手方向の延伸倍率を4.5倍にし、アニールロールの温度を130℃とした以外は同様の方法において積層体を得た。
【0126】
(実施例6)
実施例4において、アニールロールの温度を130℃とした以外は同様の方法において積層体を得た。
【0127】
(実施例7)
実施例6において樹脂の混合比をプロピレン-エチレンブロック共重合体(住友化学製 WFS5293 -22)を74重量%、エチレン-プロピレン共重合エラストマー(三井化学製、タフマーP0480)を6重量%、プロピレン-エチレンランダム共重合体(住友化学株式会社社製 S131)20重量%とした以外は同様の方法において積層体を得た。
【0128】
(比較例1)
実施例2において、延伸ロール速度は変更せずキャスティングの冷却ロール速度を変更することによって長手方向の延伸倍率を1.0倍(未延伸)とし、またアニール処理を行わなかった以外は同様の方法で積層体を得た。
【0129】
比較例1では、直進カット性に劣るため、泣別れが大きくなった。 上記結果を表1に示す。
【0130】
【0131】
表1で評価結果を「測定不可*」としているものは、特性評価中にフィルムまたは積層体が長手方向に裂けてしまい、測定値が得られなかったことを示す。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明により、開封方向にわずかな泣別れで真っ直ぐ開封できる柔軟性に優れたレトルトパウチを提供することができ、産業に大きく貢献できる。