(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】芳香族ニトリル化合物の製造方法、及び炭酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 213/84 20060101AFI20231017BHJP
C07C 68/04 20060101ALI20231017BHJP
C07C 69/96 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C07D213/84 A
C07C68/04
C07C69/96
(21)【出願番号】P 2020532459
(86)(22)【出願日】2019-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2019029164
(87)【国際公開番号】W WO2020022416
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2018141487
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100156476
【氏名又は名称】潮 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】原田 英文
(72)【発明者】
【氏名】磯部 剛彦
(72)【発明者】
【氏名】下川 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】梅津 僚太郎
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-321672(JP,A)
【文献】特開平09-003030(JP,A)
【文献】国際公開第2018/116775(WO,A1)
【文献】特開2016-216361(JP,A)
【文献】特開2012-162523(JP,A)
【文献】国際公開第2015/099053(WO,A1)
【文献】特表平04-500818(JP,A)
【文献】CAMPBELL, Jacqueline A. et al.,Laboratory-Scale Synthesis of Nitriles by Catalysed Dehydration of Amides and Oximes under Flash Vacuum Pyrolysis(FVP) Conditions,Synthesis,2007年,No.20,pp.3179-3184
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族アミド化合物を脱水する脱水反応を含む芳香族ニトリル化合物の製造方法であって、
前記脱水反応において、気相で前記芳香族アミド化合物を触媒に接触させる接触工程を有
し、
前記芳香族アミド化合物が、少なくとも、ピリジン環を有するヘテロアリールアミド化合物を含み、
前記芳香族ニトリル化合物が、少なくとも、ピリジン環を有するヘテロアリールニトリル化合物を含み、
前記触媒がアルカリ金属を含む、芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項2】
前記触媒がアルカリ金属
の酸化物を含む、請求項1に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項3】
前記芳香族アミド化合物が、
前記ヘテロアリールアミド化合物
としての2-ピリジンカルボアミド、3-ピリジンカルボアミド、及び、4-ピリジンカルボアミドのいずれかを含み、前記芳香族ニトリル化合物が、
前記ヘテロアリールニトリル化合物
としての2-シアノピリジン、3-シアノピリジン、及び、4-シアノピリジンのいずれかを含む、請求項1又は2に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項4】
芳香族アミド化合物を脱水する脱水反応を含む芳香族ニトリル化合物の製造方法であって、
前記脱水反応において、気相で前記芳香族アミド化合物を触媒に接触させる接触工程を有し、
前記
芳香族アミド化合物が、ヘテロアリールアミド化合物
としての2-ピコリンアミドを含み、前記
芳香族ニトリル化合物が、ヘテロアリールニトリル化合物
としての2-シアノピリジンを含む
、芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項5】
前記接触工程において、気化状態の不活性ガス及び/又は溶媒をさらに、前記触媒と接触させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項6】
前記不活性ガスが、少なくとも窒素ガスを含む、請求項5に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項7】
前記溶媒の常圧における沸点が、20℃以上300℃以下である、請求項5又は6に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒が、前記芳香族アミド化合物と相溶する、請求項5~7のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒が、ピリジン化合物及び/又はケトン化合物を含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項10】
前記接触工程において、気相で前記芳香族アミド化合物を前記触媒と接触させる温度が、170℃以上300℃未満である、請求項1~9のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項11】
気相での前記芳香族アミド化合物の触媒接触時間が、0.001秒以上10秒未満である、請求項1~10のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
【請求項12】
芳香族ニトリル化合物の存在下で、アルコールと二酸化炭素とを反応させて炭酸エステルと水を生成する炭酸エステル生成反応と共に、該生成した水を該芳香族ニトリル化合物に水和させて芳香族アミド化合物を生成させる水和反応とを含む第1の反応工程と、
前記第1の反応工程の反応系から前記芳香族アミド化合物を分離した後、当該芳香族アミド化合物を脱水する脱水反応であって、前記芳香族アミド化合物を気相で触媒に接触させる接触工程を有する脱水反応により、芳香族ニトリル化合物に再生する第2の反応工程とを有し、
前記第2の反応工程で再生した前記芳香族ニトリル化合物の少なくとも一部を、前記第1の反応工程において使用
し、
前記芳香族アミド化合物が、少なくとも、ピリジン環を有するヘテロアリールアミド化合物を含み、
前記芳香族ニトリル化合物が、少なくとも、ピリジン環を有するヘテロアリールニトリル化合物を含み、
前記触媒がアルカリ金属を含む、炭酸エステルの製造方法。
【請求項13】
前記第2の反応工程において、請求項2~11のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法により前記芳香族アミド化合物から前記芳香族ニトリル化合物を製造して前記芳香族ニトリル化合物を再生させる、請求項12に記載の炭酸エステルの製造方法。
【請求項14】
前記炭酸エステル生成反応において、酸化セリウムを含む触媒を使用する、請求項12又は13に記載の炭酸エステルの製造方法。
【請求項15】
前記アルコールが、炭素数1~6のアルコールを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の炭酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シアノピリジンなどの芳香族ニトリル化合物の製造方法、及び炭酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸エステルとは、炭酸CO(OH)2の2原子の水素のうち1原子、あるいは2原子をアルキル基またはアリール基で置換した化合物の総称であり、RO-C(=O)-OR’(R、R’は飽和炭化水素基や不飽和炭化水素基を表す)の構造を持つものである。
【0003】
炭酸エステルは、オクタン価向上のためのガソリン添加剤、排ガス中のパーティクルを減少させるためのディーゼル燃料添加剤等の添加剤として使われるほか、ポリカーボネートやウレタン、医薬・農薬等の樹脂・有機化合物を合成する際のアルキル化剤、カルボニル化剤、溶剤等、あるいはリチウムイオン電池の電解液、潤滑油原料、ボイラー配管の防錆用の脱酸素剤の原料として使われるなど、非常に有用な化合物である。
【0004】
従来の炭酸エステルの製造方法としては、ホスゲンをカルボニルソースとしてアルコールと直接反応させる方法が主流である。この方法は、極めて有害で腐食性の高いホスゲンを用いるため、その輸送や貯蔵等の取扱に細心の注意が必要であり、製造設備の維持管理及び安全性の確保のために多大なコストがかかっていた。また、本方法で製造する場合、原料や触媒中に塩素などのハロゲンが含まれており、得られる炭酸エステル中には、簡単な精製工程では取り除くことのできない微量のハロゲンが含まれる。ガソリン添加剤、軽油添加剤、電子材料向け用途にあっては、腐食の原因となる懸念も存在するため、炭酸エステル中に微量に存在するハロゲンを極微量にするための徹底的な精製工程が必須となる。さらに、最近では、人体に極めて有害なホスゲンを利用することから、本製造方法での製造設備の新設が許可されないなど行政指導が厳しくなされてきており、ホスゲンを用いない新たな炭酸エステルの製造方法が強く望まれている。
【0005】
そこで、アルコールと二酸化炭素から、不均一系触媒を用いて炭酸エステルを直接合成する方法も知られている。この方法において、炭酸エステルの生成量向上のため、水和剤として2-シアノピリジンまたはベンゾニトリルを用いることにより、炭酸エステルの生成量、生成速度を大幅に改善し、常圧に近い圧力下で反応を進行しやすくさせ、且つ、反応速度を速めることが検討されていた(特許文献1、2参照)。しかし、副生するベンズアミド等の処理方法や利用方法に関しても、問題があった。
例えば、ベンゾニトリルと水との反応により生成するベンズアミドの用途は一部の医農薬中間体に限定される。このようにベンズアミドの用途は、ある程度、限定されている。よって、ベンゾニトリルを水和剤として使用する炭酸エステルの製造においては、副生するベンズアミドをベンゾニトリルに再生して再利用することが望まれ、この再生反応を選択率高く(副生成物が生じると水和剤として再利用が難しくなると考えられるため)、且つ収率高く(収率が低いとベンズアミドの残留量が多くなり、ベンゾニトリルとの分離処理量が多くなり負荷が高くなるため)行うことが課題となっていた。
【0006】
以上のように、ベンズアミド等からベンゾニトリル等への再生についての問題点があったことに鑑み、強力な試薬を使用せず、且つ、副生物の発生も抑えつつ上記再生を行うための方法が知られている(特許文献3)。
しかしながら、この方法では、アミド化合物の脱水によるニトリルの生成に400時間を要し、24時間で反応が終了する炭酸エステル合成反応とバランスできない、すなわち、併用できないこと、また触媒を固液分離するため、抽出や濾過などが必要で、工程が長く煩雑であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
特許文献1:特開2010-77113号公報
特許文献2:特開2012-162523号公報
特許文献3:WO2015/099053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、芳香族アミド化合物、例えば、ピリジンカルボアミドから、対応する芳香族ニトリル化合物であるシアノピリジンへの再生において、副生成物の発生を抑えて、目的化合物を高い収率で選択的に得られる脱水反応を可能にする方法を提供することである。また、当該脱水反応の工程数を削減し、反応速度を大幅に改善して反応時間を短縮できる芳香族ニトリル化合物の製造方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、上記芳香族ニトリル化合物の製造方法を炭酸エステルの製造方法に適用して、効率的な炭酸エステルの製造方法を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決すべく、本発明者は、芳香族アミド化合物を脱水することによる、シアノピリジンなどの芳香族ニトリル化合物の製造方法について検討した。本発明者は、芳香族アミド化合物を脱水する反応条件を検討した結果、気体状あるいはミスト状の芳香族アミド化合物を気相で短時間、触媒に接触させることで、反応速度を大幅に改善して反応時間を短縮できると同時に、副生成物の発生を抑えて、目的化合物を高い収率で選択的に得られる脱水反応のプロセスを可能にした。
【0010】
上述の本発明により、芳香族アミド化合物から芳香族ニトリル化合物への脱水反応による再生速度を向上させることができ、上記脱水反応と、芳香族ニトリル化合物を用いたCO2とアルコールからの炭酸エステル合成速度とを一連の効率的な商業プロセスとして成立させることが可能となった。このことから、さらに、本発明者は、上記の知見を炭酸エステルの製造方法に適用することについても検討した。その結果、アルコールと二酸化炭素から炭酸エステルを直接合成する炭酸エステルの製造方法においても、気体状あるいはミスト状の芳香族アミド化合物を気相で短時間、触媒に接触させる接触工程により芳香族ニトリル化合物を効率的に再生させると、優れた効果が得られることが確認された。本発明の要旨は、下記の通りである。
【0011】
(1)芳香族アミド化合物を脱水する脱水反応を含む芳香族ニトリル化合物の製造方法であって、
前記脱水反応において、気相で前記芳香族アミド化合物を触媒に接触させる接触工程を有する、芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(2)前記触媒がアルカリ金属を含む、上記(1)に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(3)前記芳香族アミド化合物が、少なくともヘテロアリールアミド化合物を含み、前記芳香族ニトリル化合物が、少なくともヘテロアリールニトリル化合物を含む、上記(1)
又は(2)に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(4)前記ヘテロアリールアミド化合物が、2-ピコリンアミドを含み、前記ヘテロアリールニトリル化合物が、2-シアノピリジンを含む、上記(3)に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(5)前記接触工程において、気化状態の不活性ガス及び/又は溶媒をさらに、前記触媒と接触させる、上記(1)~(4)のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(6)前記不活性ガスが、少なくとも窒素ガスを含む、上記(5)に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(7)前記溶媒の常圧における沸点が、20℃以上300℃以下である、上記(5)又は(6)に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(8)前記溶媒が、前記芳香族アミド化合物と相溶する、上記(5)~(7)のいずれか一項のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(9)前記溶媒が、ピリジン化合物及び/又は環状ケトンを含む、上記(5)~(8)のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(10)前記接触工程において、気相で芳香族アミド化合物を前記触媒と接触させる温度が、170℃以上300℃未満である、上記(1)~(9)のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(11)気相での芳香族アミド化合物の触媒接触時間が、0.001秒以上10秒未満である、上記(1)~(10)のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法。
(12)芳香族ニトリル化合物の存在下で、アルコールと二酸化炭素とを反応させて炭酸エステルと水を生成する炭酸エステル生成反応と共に、該生成した水を該芳香族ニトリル化合物に水和させて芳香族アミド化合物を生成させる水和反応とを含む第1の反応工程と、
前記第1の反応工程の反応系から前記芳香族アミド化合物を分離した後、当該芳香族アミド化合物を脱水する脱水反応であって、前記芳香族アミド化合物を気相で触媒に接触させる接触工程を有する脱水反応により、芳香族ニトリル化合物に再生する第2の反応工程とを有し、
前記第2の反応工程で再生した前記芳香族ニトリル化合物の少なくとも一部を、前記第1の反応工程において使用する、炭酸エステルの製造方法。
(13)前記第2の反応工程において、上記(2)~(11)のいずれか一項に記載の芳香族ニトリル化合物の製造方法により前記芳香族アミド化合物から前記芳香族ニトリル化合物を製造して前記芳香族ニトリル化合物を再生させる、上記(12)に記載の炭酸エステルの製造方法。
(14)前記炭酸エステル生成反応において、酸化セリウムを含む触媒を使用する、上記(12)又は(13)に記載の炭酸エステルの製造方法。
(15)前記アルコールが、炭素数1~6のアルコールを含む、上記(12)~(14)のいずれか一項に記載の炭酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ピリジンカルボアミド(ピコリンアミド及びニコチンアミド等)およびベンズアミドなどの芳香族アミド化合物から、シアノピリジンなどへの芳香族ニトリル化合物の製造(再生)を効率的に行うことができる。すなわち、上記再生のための芳香族アミド化合物の脱水反応において、副生成物の発生を抑え、目的化合物を高い収率で選択的に得るとともに、反応速度を向上させることができる。このため、本発明によれば、芳香族ニトリル化合物を再生する脱水反応の反応時間を、従来の方法に比べて大幅に短縮させることが可能になる。さらに、気相反応の採用により、従来の液相反応によるアミド化合物の脱水工程に比べて、反応容器の小型化も可能となる。よって本発明によれば、芳香族アミド化合物から対応する芳香族ニトリル化合物を再生させる工程の工業化が容易に可能となる。
また、本発明によれば、上述のように芳香族ニトリル化合物を製造することにより、効率的な炭酸エステルの製造方法をも実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】加圧下または常圧下でシアノピリジンを製造した実施例にて用いた、シアノピリジンの製造装置を概略的に示す図である。
【
図3】減圧下でシアノピリジンを製造した実施例にて用いた、シアノピリジンの製造装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<1.芳香族ニトリル化合物の製造方法>
本発明の芳香族ニトリル化合物の製造方法においては、気相で芳香族アミド化合物、例えば、ピリジンカルボアミド(2-ピリジンカルボアミド、3-ピリジンカルボアミド、又は4-ピリジンカルボアミド)などを脱水することにより、シアノピリジンなどの芳香族ニトリル化合物へと変換する。すなわち、本発明の芳香族ニトリル化合物の製造方法は、例えば、塩基性金属酸化物を担持した触媒に、気相で芳香族アミド化合物を接触させる接触工程によって脱水反応を生じさせ、芳香族ニトリル化合物を生成するものである。
【0016】
【0017】
(反応基質)
芳香族ニトリル化合物の製造方法において用いられる芳香族アミド化合物としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素環、又は、ヘテロアリール環を有するアミド化合物が挙げられる。これらの芳香族アミド化合物のうち、ヘテロアリール環を有するもの、すなわち、ヘテロアリールアミド化合物が好適に用いられ、ヘテロアリールアミド化合物としては、ピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環等を有するアミド化合物が挙げられる。
ヘテロアリールアミド化合物の好ましい具体例としては、上述のピリジンカルボアミド(2-ピリジンカルボアミド、3-ピリジンカルボアミド、及び、4-ピリジンカルボアミド)等のピリジン環を有するものが挙げられる。
本発明の製造方法により製造される芳香族ニトリル化合物は、上記反応式からも明らかであるように、上述の芳香族アミド化合物に対応する、脱水反応の生成物である。よって、本発明の製法の対象となる芳香族ニトリル化合物の具体例として、ヘテロアリールニトリル化合物が挙げられる。ヘテロアリールニトリル化合物の好ましい具体例としては、シアノピリジン(2-シアノピリジン、3-シアノピリジン、及び、4-シアノピリジン)等のピリジン環を有するものが挙げられる。
【0018】
(触媒)
ここで、本発明の上記脱水反応で用いられる触媒は、好ましくは、アルカリ金属(K、Li、Na、Rb、Cs)の酸化物を含む。特に、上記反応で用いられる触媒として、Na、K、Rb、およびCs(セシウム)の少なくともいずれかの酸化物を含むものを用いることが好ましい。また、上記触媒の担体としては、一般的に触媒担体となる物質を用いることができるが、様々な担体を検討した結果、好ましくは、SiO2、及び、ZrO2のいずれかを含むことが好ましい。
【0019】
本発明の上記脱水反応にて使用される触媒の製造法について、以下に例を挙げると、担体がSiO2の場合、市販の粉末または球状のSiO2を使用でき、活性金属を均一に担持できるよう、例えば4.0mm以下に整粒し、水分を除去するために、予備焼成を空気中700℃で1時間行うことが好ましい。また、SiO2にも様々な性状のものがあるが、比表面積が大きいものほど、活性金属を高分散にでき、芳香族ニトリル化合物の生成量が向上することから好ましい。具体的には、300m2/g以上の比表面積が好ましい。ただし、調製後の触媒の比表面積は、SiO2と活性金属との相互作用等により、SiO2のみの比表面積よりも低下することがある。その場合、製造後の触媒の比表面積が、150m2/g以上となることが好ましい。活性種となる金属酸化物の担持は、インシピエントウェットネス(Incipient wetness)法や蒸発乾固法等の含浸法によって、担持することができる。
【0020】
触媒の前駆体となる金属塩は、水溶性であればよく、アルカリ金属であれば例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、塩化物塩、硝酸塩、ケイ酸塩などの各種化合物を用いることができる。塩基性金属の前駆体水溶液を担体に含浸した後、乾燥、焼成することで触媒として用いることができ、焼成温度は、使用する前駆体にもよるが、400~600℃が好ましい。
【0021】
さらに、本発明において用いられる触媒としては、SiO2、ZrO2のいずれか1種又は2種から成る担体上に、アルカリ金属酸化物を1種あるいは2種以上のみを担持した触媒が好ましいが、上記の元素以外に触媒製造工程等で混入する不可避的不純物を含んでも構わない。しかし、できるだけ不純物が混入しないようにするのが望ましい。
【0022】
ここで本発明において用いられる、活性種となる金属酸化物を担体上に担持した触媒は、粉体、または成型体のいずれの形態であってもよく、成型体の場合には球状、ペレット状、シリンダー状、リング状、ホイール状、顆粒状などいずれでもよい。また、触媒をハニカムなどの支持構造体に固定して使用することも出来る。
【0023】
担体の大きさに制限はないが、球状の担体を使用する場合は、触媒の粒子の平均径(担体径)は0.01~8.0mmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは、0.03~6.0mmであり、さらに好ましくは、0.05~5.0mmである。このように、液相反応で用いられる触媒の粒子の平均径(担体径)よりも比較的、担体径の大きい触媒を用いることにより、気相反応における反応基質の流路が確保され、高い空間速度を確保できる。ただし、気相反応において流動床が用いられる場合には、少ないガス流通量で触媒を攪拌可能とするように、粒径の相対的に小さい触媒が好ましく、気相反応において固定床が用いられる場合には、圧損が出来るだけ生じないように、相対的に大きな粒径や形状が好ましい。
なお、担体径、すなわち、触媒の粒子の平均径とは、触媒の活性成分と担体とを含む触媒全体の粒子の平均径である。触媒の担体径は、ふるい分け法:JISZ8815に規定されているふるい分け試験方法通則等に基づいて測定される値である。
【0024】
また、触媒の担持量は適宜設定すれば良いが、全触媒重量を基準としたときのアルカリ金属酸化物等の活性種の金属換算担持量は、好ましくは、0.05~2.0mmol/gであり、より好ましくは、0.10~1.5mmol/gであり、さらに好ましくは、0.30~1.0mmol/gである。また、反応時の触媒使用量についても、適宜設定すればよい。
【0025】
(反応形式および反応容器)
本発明の芳香族ニトリル化合物の製造方法においては、気体状あるいはミスト状のアミド化合物を不活性ガスと共に触媒層に流通させる気相反応を用いることが好ましく、固定床あるいは流動床の気相反応装置を適用することができる。このように、気相で芳香族アミド化合物を触媒に接触させる接触工程においては、完全に気化させた状態の芳香族アミド化合物を用いることが好ましいものの、気体中に液滴(ミスト)が部分的に含まれる状態の芳香族アミド化合物を用いても良い。
【0026】
芳香族ニトリル化合物の製造方法は、脱水反応により、生成する副生水を除去しながら行うことが望ましい。本発明者が鋭意検討した結果、例えば触媒を入れた反応管の上部に気化室を取り付け、気化室に芳香族アミド化合物を滴下し、アミド化合物を気相で短時間の内に触媒層を通過させることで、芳香族ニトリル化合物の生成量を向上させ、且つ副生物生成を抑制することが可能である。
【0027】
(不活性ガス)
上述の脱水反応においては、芳香族アミド化合物とともに、不活性ガスを気相で触媒と接触させることが好ましい。脱水反応において用いられる不活性ガスの具体例として、窒素ガス、及び、ヘリウム、アルゴン等の希ガスが挙げられ、好ましくは、窒素ガスが用いられる。不活性ガスの流量等については後述する。
【0028】
(溶媒)
上述の脱水反応においては、溶媒を用いることもできる。特に、融点の高い芳香族アミド化合物を気化させる工程において、予め、その芳香族アミド化合物と相溶する溶媒と混合させて送液することにより、芳香族アミド化合物の析出による閉塞トラブルを防止できる。すなわち、溶媒としては、脱水反応の対象である芳香族アミド化合物と相溶するものが好ましい。芳香族アミド化合物と相溶する溶媒とは、芳香族アミド化合物に対して任意の割合で混合可能な溶媒のみならず、対象となる香族アミド化合物を所定の溶解度までしか溶解させられない溶媒であって、所定の温度において、当該溶解度の上限値以下の濃度まで芳香族アミド化合物を溶解させられる量の溶媒を含む。また、溶媒も気化させて脱水反応(接触工程)に用いることが好ましい。このように、気化させて脱水反応に用いる溶媒の沸点は、常圧において、好ましくは20℃以上300℃以下であり、より好ましくは80℃以上250℃以下であり、さらに好ましくは110℃以上200℃以下である。
【0029】
脱水反応において用いられる溶媒の具体例としては、ピリジン化合物、ケトン化合物、エーテル化合物、エステル化合物、アルコール等が挙げられ、好ましくは、ピリジン化合物、ケトン化合物等が用いられる。
溶媒としてのピリジン化合物、すなわち、ピリジン骨格を有する化合物としては、2-アルキルピリジン、3-アルキルピリジン、及び、4-アルキルピリジン等、例えば、4-メチルピリジン、及び、ピリジン等が挙げられる。特に、副生成物としてピリジンが生じ得る脱水反応において、予め好適な条件を設定した上でピリジン化合物を溶媒として用いると、主な副生成物であるピリジンの除去工程を不要にできる。
また、溶媒としてのケトン化合物としては、シクロペンタノン、シクロヘキサン等に例示される環状ケトン化合物、及び、アセトン等が挙げられる。
【0030】
なお、脱水反応の溶媒として、上述の化合物から選択された1つないし複数の物質のみからなる溶媒を用いることが好ましいが、他の化合物をさらに含む混合溶媒であっても良い。
【0031】
(接触工程を含む脱水反応の条件)
芳香族ニトリル化合物の製造方法は、上述のように、脱水反応において気相で芳香族アミド化合物を触媒に接触させる接触工程を有する。
接触工程において、芳香族アミド化合物等を触媒と接触させる温度は、170℃以上300℃未満であることが好ましい。上記温度は、例えば、180℃以上290℃未満あるいは190℃以上280℃未満であり、より好ましくは、210℃以上280℃未満であり、さらに好ましくは、220℃以上260℃未満である。なお、芳香族アミド化合物等を触媒と接触させる温度は、例えば、触媒を内部で固定させた反応管(反応容器)の内部の温度と等しいと考えられる。
また、接触工程における芳香族アミド化合物の触媒接触時間、及び、芳香族アミド化合物とともに、不活性ガス、溶媒等を含む場合においてはこれらのガス状組成物の混合ガスの触媒接触時間は、0.001秒以上、あるいは、0.005秒以上、例えば、0.01秒以上で、10秒未満であることが好ましい。上記触媒接触時間は、より好ましくは、0.1秒以上5秒未満であり、さらに好ましくは、0.5秒以上2秒未満である。
なお、触媒接触時間とは、触媒層を、芳香族アミド化合物のガス、又は、上記混合ガスが通過する平均時間であり、触媒接触時間(秒)=反応器内触媒層高さ(cm)÷反応器内のガス線速(cm/秒)で計算される。
【0032】
接触工程において、芳香族アミド化合物の流量と、ガス状組成物の流量のモル比は、1:0~1:200であることが好ましく、より好ましくは、1:1~1:100であり、さらに好ましくは、1:1~1:20である。
接触工程における全気体成分の空間速度(SV)は、1,000~50,000(h-1)であることが好ましく、より好ましくは、1,500~30,000(h-1)であり、さらに好ましくは、2,000~25,000(h-1)である。また、減圧下で接触工程を行う場合、全気体成分の空間速度(SV)は、1,000~1,000,000(h-1)であることが好ましく、より好ましくは、1,500~700,000(h-1)であり、さらに好ましくは、1,900~504,000(h-1)である。
【0033】
脱水反応の条件として、圧力は加圧(例えば、506.5(kPa))~減圧下(例えば、0.1(kPa)で行うことができるが、特にこれらに制限されるものではない。
例えば、反応圧力は、303.9~0.7(kPa)であり、好ましくは202.6~0.9(kPa)であり、より好ましくは101.3~1.0(kPa)である。
【0034】
また、芳香族アミド化合物は、気化させる前の液体の状態において脱水させておくことが好ましい。脱水剤としてモレキュラーシーブを使用する場合は、その種類・形状について特に制限されるものはないが、例えば、3A、4A、5A等一般的に吸水性の高いもので、球状やペレット状のものを使用できる。例えば東ソー製ゼオラムが好適に使用できる。
【0035】
【0036】
芳香族アミド化合物の脱水反応では、上記のような、芳香族アミド化合物の分解によって芳香族カルボン酸を経由しピリジンが副生することが考えられる。しかしながら、本発明の接触工程を用いた脱水反応後の反応液には、上記式に示されるピリジン等の副生物はほとんど生成しない。
【0037】
<2.芳香族ニトリル化合物を用いた炭酸エステルの製造方法>
芳香族アミド化合物から芳香族ニトリル化合物への脱水反応による再生において、気相での接触工程を設けることにより、反応速度を大幅に向上させて反応時間を大幅に短縮することができた。このことにより、芳香族アミド化合物から芳香族ニトリル化合物への脱水反応による再生速度と、芳香族ニトリル化合物を用いたCO2とアルコールからの炭酸エステル合成速度とをバランスさせることが可能になり、これらの反応を一連の商業プロセスとして成立させることが可能となった。このことから、本発明者は、この知見を炭酸エステルの製造方法に応用することで、以下に説明する炭酸エステルの製造方法に想到することができた。
【0038】
(第1の反応工程)
本発明の炭酸エステルの製造方法における第1の反応工程は、例えばCeO2(酸化セリウム)等を含む固体触媒と、芳香族ニトリル化合物との存在下、アルコールと二酸化炭素を直接反応させて炭酸エステルを生成する反応(炭酸エステル生成反応)を含む。
【0039】
本工程においては、アルコールと二酸化炭素を反応させると炭酸エステルの他に水も生成するが、反応系内に存在する芳香族ニトリル化合物と、生成した水との水和反応により芳香族アミド化合物が生成され、生成した水を反応系から除去し、又は低減することができる。このように、反応系内から水を効率的に除くことにより、炭酸エステルの生成を促進させることが可能となる。例えば、下記式に示す通りである。
【0040】
【0041】
(アルコール)
ここで、アルコールとしては、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのうち一種又は二種以上から選ばれたいずれのアルコールも用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、1-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、1-ノナノール、アリルアルコール、2-メチル-1-プロパノール、シクロヘキサンメタノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオールを用いると、生成物の収率が高く、反応速度も速いので好ましい。この時、生成する炭酸エステルはそれぞれ、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、炭酸ジペンチル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジヘプチル、炭酸ジオクチル、炭酸ジノナン、炭酸ジアリル、炭酸ジ2-メチル-プロピル、炭酸ジシクロヘキサンメチル、炭酸ジベンジル、炭酸エチレン、1,2-炭酸プロピレン、1,3-炭酸プロピレンとなる。
また、第1の反応工程において、炭素数が1~6のアルコールを用いることが好ましく、炭素数2~4のアルコールを用いることがより好ましい。特に、得られる炭酸エステルを炭酸ジアリールの原料として使用する場合には、アルコールの炭素数を上述の範囲に調整することが好ましい。
また、第1の反応工程において、一価または二価のアルコールを用いることが好ましい。
【0042】
(炭酸エステル製造触媒)
また、炭酸エステルを製造する第1の反応工程においては、CeO2及びZrO2のいずれか一方、又は双方の固体触媒を使用することが好ましい。例えば、CeO2のみ、ZrO2のみ、CeO2とZrO2の混合物、あるいはCeO2とZrO2の固溶体や複合酸化物等が好ましく、特にCeO2のみの使用が好ましい。また、CeO2とZrO2の固溶体や複合酸化物は、CeO2とZrO2の混合比が50:50を基本とするが、混合比は適宜、変更可能である。
【0043】
ここで、第1の反応工程で用いられる触媒は、粉体、または成型体のいずれの形態であってもよく、成型体の場合には球状、ペレット状、シリンダー状、リング状、ホイール状、顆粒状などいずれでもよい。
【0044】
(二酸化炭素)
本発明で用いる二酸化炭素は、工業ガスとして調製されたものだけでなく、各製品を製造する工場や製鉄所、発電所等からの排出ガスから分離回収したものも用いることができる。
【0045】
(炭酸エステル生成反応における溶媒)
炭酸エステル生成反応においては、生成するアミド化合物よりも沸点の高い溶媒を用いることが好ましい。より好ましくは、炭酸エステル生成反応における溶媒は、ジアルキルベンゼン、アルキルナフタレン、およびジフェニルベンゼンの少なくとも一つを含んでおり、具体例として、ジアルキルベンゼン、アルキルナフタレン、およびジフェニルベンゼン等の成分を含む、バーレルプロセス油B28AN、およびバーレルプロセス油B30(松村石油製)等が挙げられる。
【0046】
(蒸留分離)
反応後に、主生成物である炭酸エステル、副生成物である芳香族アミド化合物、未反応の芳香族ニトリル化合物、CeO2等の固体触媒の蒸留分離を行い、生成物を回収することができる。
【0047】
(第2の反応工程)
次に、本発明における第2の反応工程においては、第1の反応工程で副生した芳香族アミド化合物を、好ましくは炭酸エステル生成反応後の系から分離した後、脱水反応によって、芳香族ニトリル化合物を製造する。第2の反応工程は、上述した芳香族ニトリル化合物の製造方法に相当するものである。すなわち、炭酸エステル生成のための第2の反応工程においては、上述の芳香族ニトリル化合物の製造方法の欄に記載の手法により、芳香族アミド化合物から芳香族ニトリル化合物を製造し、よって芳香族ニトリル化合物を再生させることができる。このため、第2の反応工程の詳細については、省略する。
【0048】
(芳香族ニトリル化合物の再利用)
第2の反応工程で再生された芳香族ニトリル化合物は、第1の反応工程(水和反応)に再利用することができる。
【0049】
本発明によれば、上述のように、芳香族アミド化合物の脱水反応において、気相で反応を行うことにより、副生成物の発生を抑えつつ芳香族アミド化合物から芳香族ニトリル化合物を効率的に再生することが可能である。さらに、触媒を反応管内に固定することにより、触媒を固液分離する工程を不要にするとともに、芳香族ニトリル化合物の回収も容易となる。このように、本発明においては、芳香族アミド化合物から選択的に芳香族ニトリル化合物を再生させるとともに、触媒の固液分離なしに蒸留分離のみにより各成分を分離させつつ一連の反応を進行させることも可能であり、詳細に後述するように効率的なプロセスを実現できる。
【0050】
<3.炭酸エステルの製造装置>
次に、以下に具体例を示して、本発明において用いられる炭酸エステルの製造装置を更に詳細に説明する。
図1は好適な設備の一例である。
【0051】
(第1の反応工程)
第1の反応工程においては、バッファータンク1に、原料である、アルコール(1-プロパノール(PrOH);液相)、2-シアノピリジン(2-CP;液相)、および、二酸化炭素(CO2;液相、昇圧ポンプを介して供給しても良い)を、原料フィード配管31、CO2回収塔 塔頂CO2移送配管(CO2回収塔の塔頂側のCO2移送配管)15、炭酸エステル回収塔 塔頂液移送配管(炭酸エステル回収塔の塔頂側の液移送配管)19、および、アミド分離塔 塔頂液移送配管(アミド分離塔の塔頂側の液移送配管)21を用いて連続的に供給する。この原料混合液を、CeO2及びZrO2のいずれか一方又は双方の固体触媒(固相)を支持材に固定した固定床流通式炭酸エステル反応器2(第1の反応部)と、バッファータンク1との間で、ポンプ(図示せず)を用いて第1及び第2の反応液循環配管11及び12を介して循環させることで、炭酸ジプロピル(DPrC)を合成する。DPrCが含まれた反応液を、バッファータンク1への原料供給量と同じ量だけ連続的に第2の反応液循環配管12から抜出して配管13により回収し、DPrC回収工程に送る。PrOHとCO2は反応液から回収して、それぞれ炭酸エステル回収塔 塔頂液移送配管19とCO2回収塔 塔頂CO2移送配管15とを介してバッファータンク1に移送することにより、再利用できる。2-シアノピリジンは反応開始時には新品を使用するが、アミド分離塔6で、2-ピコリンアミドから再生された2-シアノピリジンを分離・精製し、アミド分離塔 塔頂液移送配管21を介してバッファータンク1に移送することにより、再利用できる。
【0052】
なお、CeO2及びZrO2等を固体触媒として用いる炭酸エステルの直接合成装置(炭酸エステル反応器2)として、回分式反応器、半回分式反応器や連続槽型反応器、管型反応器のような流通反応器のいずれを用いてもよいが、反応器に触媒を固定すれば触媒を濾過分離する必要がないので、固定床式反応器が好ましい。
【0053】
(反応液温度)
炭酸エステル反応器2における反応液温度としては、50~300℃とすることが好ましい。反応液温度が50℃未満の場合は、反応速度が低く、炭酸エステル合成反応、2-シアノピリジンによる水和反応共にほとんど進行せず、炭酸エステルの生産性が低い傾向がある。また反応液温度が300℃を超える場合は、各反応の反応速度は高くなるが、炭酸エステルの分解や変性が生じやすく、2-ピコリンアミドがアルコールと反応しやすくなるため、炭酸エステルの収率が低くなる傾向がある。反応液温度は、さらに好ましくは100~150℃である。但し、理想的な反応液温度は、固体触媒の種類や量、原料(アルコール、2-シアノピリジン)の量や比により異なると考えられるため、適宜、最適条件を設定することが望ましい。また、好ましい反応液温度が100~150℃であることから、炭酸エステル反応器の前段で、原料(アルコール、2-シアノピリジン)をスチーム等で予備加熱することが望ましい。
【0054】
(反応圧力)
炭酸エステル反応器2における反応圧力としては、0.1~20MPa(絶対圧)とすることが好ましい。反応圧力が0.1MPa(絶対圧)未満の場合は、減圧装置が必要となり、設備が複雑且つコスト高になるだけでなく、減圧にするための動力エネルギーが必要となり、エネルギー効率が悪くなる。また反応圧力が20MPaを超える場合は、2-シアノピリジンによる水和反応が進行しにくくなって炭酸エステルの収率が悪くなるばかりでなく、昇圧に必要な動力エネルギーが必要となり、エネルギー効率が悪くなる。また、炭酸エステルの収率を高くする観点から、反応圧力は0.5~15MPa(絶対圧)がより好ましく、1.0~10MPa(絶対圧)がさらに好ましい。
【0055】
(2-シアノピリジンの用量)
水和反応に用いる2-シアノピリジンについては、原料のアルコールとCO2との反応で副生する水の理論モル量の0.1倍以上5倍以下のモル量を用いることが好ましく、反応前に予め反応器中に導入することが望ましい。より望ましくは、2-シアノピリジンのモル量は、原料のアルコールとCO2との反応で副生する水の理論モル量の0.2倍以上3倍以下、特に望ましくは0.3倍以上1.5倍以下である。2-シアノピリジンのモル量が少な過ぎる場合には、水和反応に寄与する2-シアノピリジンが少ないために炭酸エステルの収率が悪くなる恐れがある。一方、原料のアルコールに比べて過剰なモル量の2-シアノピリジンを導入した場合は、2-シアノピリジンの副反応が増えるため好ましくない。さらに、固体触媒に対するアルコール及び2-シアノピリジンの理想的な量は、固体触媒の種類や量、アルコールの種類や2-シアノピリジンとの比により異なると考えられるため、適宜、最適条件を設定することが望ましい。
【0056】
(反応生成物の分離)
反応生成物の分離は、好ましくは全て蒸留で行われる。炭酸エステル反応器2での反応後の反応液13は、CO2回収塔3に送られ、CO2回収塔3の塔底から、CO2回収塔 塔底液移送配管14を介して、PrOH、DPrC、2-シアノピリジン、2-ピコリンアミドの混合物を回収し、CO2回収塔3の塔頂からは、CO2回収塔 塔頂CO2移送配管15を介して、CO2を回収する。回収したCO2はバッファータンク1に送られ、炭酸エステル反応器2での反応にリサイクルする。
【0057】
CO2回収塔3から回収した混合物は、CO2回収塔 塔底液移送配管14を介して脱水剤分離塔4に送られ、脱水剤分離塔4の塔底から、2-シアノピリジン、および2-ピコリンアミドの混合物を、脱水剤分離塔 塔底液移送配管16により回収し、脱水剤分離塔4の塔頂からは、PrOH、およびDPrCを、脱水剤分離塔 塔頂液移送配管17により回収する。
【0058】
脱水剤分離塔4で塔底から回収された混合物は、脱水剤分離塔 塔底液移送配管16を介してアミド分離塔6に送られ、アミド分離塔6の塔底から2-ピコリンアミド(20)を回収し、アミド分離塔6の塔頂からは、2-シアノピリジンを回収する。回収された2-シアノピリジンは、アミド分離塔 塔頂液移送配管21を介してバッファータンク1に送られ、炭酸エステル反応器2での反応にリサイクルする。
【0059】
脱水剤分離塔4の塔頂から回収されたPrOH、およびDPrCは、脱水剤分離塔 塔頂液移送配管17を介して炭酸エステル回収塔5に送られ、炭酸エステル回収塔5の塔底から、炭酸エステル回収塔 塔底液移送配管18を介してDPrCを回収し、炭酸エステル回収塔5の塔頂からは、炭酸エステル回収塔 塔頂液移送配管19を介してPrOHを回収する。回収されたPrOHはバッファータンク1に送られ、炭酸エステル反応器2での反応にリサイクルする。
【0060】
(第2の反応工程)
第2の反応工程においては、ニトリル再生気相反応器8にて、2-ピコリンアミドの脱水反応により2-シアノピリジンが生成される。
アミド分離塔6で回収された2-ピコリンアミドは、アミド分離塔 塔底液移送配管20により気化装置7に移送され、好ましくは、窒素等である不活性ガスと混合し、更にアミドの沸点近くまで加熱することにより、気体あるいは気体と液滴の混合気体とし、気化装置-ニトリル再生気相反応器連結配管22を介してニトリル再生気相反応器8に移送される。アミド化合物等を気化させる気化装置7の形式は、特に制限されず、エゼクタ式気化器、接触式気化器、バブリング装置などいずれを用いても良い。
【0061】
本発明において用いられるニトリル化合物の製造装置(ニトリル再生気相反応器8)においては、塩基性金属酸化物を担持した触媒に対して、2-ピコリンアミド、及び、好ましくは、窒素等である不活性ガス等と共に気相において接触させ、2-ピコリンアミドの脱水反応を生じさせる。この脱水反応により、2-シアノピリジンが生成される。なお、アミド化合物を移送する際は、閉塞トラブルを防ぐ目的でアミド化合物の移送溶媒に溶かして送液することも出来る。アミド移送溶媒を使用する際は、溶媒もアミドと共に気化し、ニトリル再生気相反応を行うことが好ましく、その場合、不活性ガスの代わりに溶媒蒸気を使用することが出来る。
【0062】
ニトリル再生気相反応器8の形式は、特に制限されず、気体状あるいはミスト状のアミド化合物を不活性ガス等と共に触媒層に流通させる気相反応が好ましく、固定床、あるいは流動床等の気相反応装置を適用することができる。
このように、気相で2-ピコリンアミドを触媒等と接触させて、効率的に脱水反応を進行させるためには、上述の脱水反応に関する上述の様々な反応条件、又は、下記実施例の欄に記載の反応条件が適宜、採用される。
【0063】
気相反応器8から、2-シアノピリジンを含む混合ガスを、気相反応生成物 移送配管23を介してH2O分離装置9に移送する。H2O分離装置9で混合ガスから水と窒素ガスを分離し、回収した2-シアノピリジンと2-ピコリンアミドを、H2O分離装置 高沸移送配管24を介してH2O分離装置9からアミド分離塔6に移送する。また、アミド分離塔6の塔底から、2-ピコリンアミドをアミド分離塔 塔底液移送配管20により回収して気化装置7に移送し、アミド分離塔6の塔頂からは、2-シアノピリジンを回収する。回収された2-シアノピリジンは、アミド分離塔 塔頂液移送配管21を介してバッファータンク1に送られ、炭酸エステル反応器2での反応にリサイクルする。
【0064】
さらに、H2O分離装置9で分離した窒素ガスと水を、H2O分離装置 軽沸移送配管25を介してN2回収装置10に送り、N2回収装置10で水を分離し、窒素ガスを回収する。N2回収装置10で分離された水は、N2回収装置水分移送配管26により、炭酸エステル装置外に送られる。N2回収装置10で回収した窒素ガスは、N2回収装置N2移送配管27を介して気化装置7に移送することにより、気相反応に使用することが出来る。アミド化合物の移送溶媒を使用した場合は溶媒を回収する工程を別途設け、アミド化合物の移送に再利用することが出来る。H2O分離装置9およびN2回収装置10の形式は、特に制限されず、冷却装置、膜分離装置などいずれを用いても良い。
【0065】
上述のように、本発明においては、気相での接触工程によりアミド化合物の脱水を進行させられるのみならず、固液分離を必要とせずに、蒸留分離等で反応生成物、および再利用する化合物を分離することが可能である。このため、本発明によれば、装置の簡素化を図りつつ、少ない製造工程で効率的に炭酸エステルを製造することが可能である。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。まず、シアノピリジンの製造方法の実施例及び比較例について説明する。
【0067】
(実施例1)
担体となるSiO
2(富士シリシア化学製、CARiACT、Q-6、(担体径0.075~0.15mm))を、700℃で約1時間、予備焼成した。その後、アルカリ金属としてCsを担持するために、最終的にCs金属担持量が0.5mmol/gとなるようにCs
2CO
3(和光純薬工業製)を用いて水溶液を調製し、SiO
2に含浸した。その後、110℃で約6時間乾燥、500℃で約3時間焼成して、Cs
2O/SiO
2触媒を得た。
上述の製法で製造した触媒を、内径10.7mm、長さ30cmのSUS304製の反応管40に充填した(
図2参照)。さらに、反応管40の直上に、ラシヒリングを充填した内径10.7mm、長さ30cmのSUS304製の気化室42を設置した。
【0068】
10gの2-ピコリンアミド(2-PA)を移送用溶媒である4-メチルピリジン(90g)に溶かし、原料容器44に移し替えた。原料容器44を精密天秤にのせ、フィルター付の吸入チューブを原料液中に垂らし、秤を安定させた。
原料容器44に連結されている気化室42、及び、反応管40に窒素を1000mL/minの流量で流通させ、気化室42、及び、反応管40をマントルヒーター46及び48でそれぞれ、230℃に加熱した。また、窒素を供給する配管50、及び、反応管40における出側の配管は150℃で保温した。また、反応物回収のため、最初に水冷トラップ容器52、次にドライアイス/メタノール冷却トラップ容器54、及び、最終段に液体窒素冷却トラップ容器(図示せず)を設置した。
【0069】
触媒層の温度が安定した後、プランジャーポンプ56を起動し、下記表の触媒接触時間の欄に示す時間、反応を行った。反応中、
図2に示すシアノピリジン製造装置の反応系内の圧力が506.5(kPa)を超えないように、圧力リミッター58にて過剰な加圧を防止した。
【0070】
上述の接触反応(脱水反応)の条件は、表1に示す通りである。そして反応終了後に反応物を回収し、GC-FIDで分析した。
【0071】
接触反応(脱水反応)の結果の分析条件は、以下に示す通りである。
[分析条件]
(GC-FID)
Shimadzu GC-2014、カラム:TC-17(長さ30m、内径0.25mmID、液相の膜厚0.25μm)、
気化室の温度:250℃、検出器:260℃、キャリアHe:175kPa、カラム流量:2.5mL/min、スプリット比:50
温度プログラム:[70℃で5min保持]→[190℃まで昇温・12℃/min]
→[190℃で5min保持]→[250℃まで昇温・12℃/min] →[250℃で10min保持]
【0072】
[触媒1g当たりの24時間収量(mmol/24hr・g)]=
(反応の24時間経過後の生成物回収量mmol)/(触媒量(g))
[空間速度:SV(hr-1)]=(触媒層を通過するガス量(L・hr-1))/(触媒量(L))
ガス量:窒素、2-PA、及び、溶媒の気体体積の総和(L・hr-1)
[触媒充填高さ(反応器内触媒層高さ)]:反応管に充填した触媒の高さ(cm)
[触媒接触時間(秒)]=[触媒充填高さ(cm)]/[線速(反応器内のガス線速)(cm/秒)]
【0073】
[触媒の担体径]
触媒の担体径 は、ふるい分け法:JIS Z 8815 に規定されている、ふるい分け試験方法通則に基づいて測定した値である。
【0074】
(実施例2~15)
実施例2以下については、表1に示すように条件を変更した他、実施例1と同様に反応を行った。結果を表1に示す。
なお、いずれの実施例、及び、比較例においても、触媒の活性成分はCs2Oであり、担体として富士シリシア化学株式会社製のCARiACT Q-6(主成分はSiO2)を用い、触媒の活性金属担持量(全触媒重量を基準としたときの活性種の金属換算担持量)は0.5mmol/gであった。また、いずれの実施例、及び、比較例においても、芳香族アミド化合物として2-ピコリンアミド(2-PA)を使用した。
【0075】
(実施例16)
実施例1~15と異なり、実施例16では、芳香族アミド化合物の接触反応(脱水反応)を減圧下で行った。具体的には、以下の通りである。
100gの2-ピコリンアミド(2-PA)を移送用溶媒であるシクロペンタノン(900g)に溶かし、原料容器に移し替えた。
原料容器60に連結されている反応ライン(
図3に示されるエゼクター62からトラップ64まで)に窒素を1000mL/minの流量で流通させた。窒素の供給を止めた後、真空ポンプ66をトラップ64に接続し、反応系内の圧力を0.5kPaに減圧した。気化器68、及び、反応器70を電気炉(図示せず)でそれぞれ、220℃に加熱した。また、反応ラインにおける出側の配管は、リボンヒーターで(図示せず)150℃に加熱した。また、反応物回収のため、ドライアイス/メタノール冷却トラップ容器64を設置し(
図3中の初留トラップ64A及び回収トラップ64B)、次に、液体窒素冷却トラップ容器(図示せず)を設置した。
反応器70に配置した触媒層(図示せず)の温度が安定した後、プランジャーポンプ72を起動し、反応を行った。触媒層内が定常状態に達したときから90分間、回収トラップ64Bで反応物を回収した。反応中、
図3に示すシアノピリジン製造装置の反応系内の圧力を減圧コントローラー74とニードル弁76によって制御した。なお、触媒層内が定常状態に達するまでの間、及び、触媒層内が定常状態に達してから回収トラップ64Bで反応物を回収した後は、初留トラップ64Aで反応物を回収した。
上述の接触反応(脱水反応)の条件は、表1に示す通りである。そして反応終了後に反応物を回収し、GC-FIDで分析した。
【0076】
(実施例17~21)
実施例17以下については、表1に示すように条件を変更した他、実施例16と同様に反応を行った。
【0077】
上述の実施例1~21の結果を以下の表1に示す。
【表1】
【0078】
(比較例1~9)
比較例1~9においては、反応により生成した水を反応系外に除去するために溶媒を用い、液相で脱水反応を行った。
【0079】
(比較例1)
担体となるSiO2(富士シリシア製、CARiACT、Q-6、(担体径0.075mm以上0.15mm以下))を、700℃で約1時間、予備焼成した。その後、アルカリ金属としてCsを担持するために、最終的にCs金属担持量が0.5mmol/gとなるようにCs2CO3(和光純薬工業製)を用いて水溶液を調製し、SiO2に含浸した。その後、110℃で約6時間乾燥、500℃で約3時間焼成して、Cs2O/SiO2触媒を得た。
【0080】
次に、反応器として3つ口丸底フラスコを用い、磁気撹拌子、上記Cs2O/SiO2触媒、2-ピコリンアミド(東京化成工業製)、1,3-ジメトキシベンゼン(東京化成工業製)を導入した。
さらに反応器に、温度計と、モレキュラーシーブ4Aを10g入れた空冷管とを取り付け、空冷管上端にはリービッヒ冷却管を取り付け、反応装置とした。
引き続き、反応液を常圧で加熱し、沸騰状態に維持し、副生水は反応器に戻すことなくモレキュラーシーブに吸着させて脱水し、反応を行った。
反応開始は、反応液が沸騰し始めた時間とし、24時間反応させた。
反応後室温まで冷却し、反応液をサンプリングし、エタノールで2倍に希釈し、内部標準物質として1-ヘキサノールを加え、GC-MS(ガスクロマトグラフ-質量分析計)で定性分析、GC-FIDで定量分析した。
【0081】
(比較例2~7)
比較例2~7については、表2に示すように条件を変更した他、比較例1と同様に反応を行った。
【0082】
(比較例8,9)
比較例8,9については、表2に示すように条件を変更した他、下記のように装置構成と反応条件を変更し、反応を行った。
【0083】
担体となるSiO2(富士シリシア製、CARiACT、Q-6、(担体径0.075mm以上0.15mm以下))を100mesh以下に整粒し、700℃で約1時間、予備焼成した。その後、アルカリ金属としてCsを担持するために、最終的にCs金属担持量が0.5mmol/gとなるようにCs2CO3(和光純薬工業製)を用いて水溶液を調整し、SiO2に含浸した。その後、110℃で約6時間乾燥、500℃で約3時間焼成して、Cs2O/SiO2触媒を得た。
【0084】
次に、反応器として3つ口丸底フラスコを用い、磁気撹拌子、上記Cs2O/SiO2触媒、2-ピコリンアミド(東京化成工業製)、ジフェニルエーテル(東京化成工業製)を導入した。
さらに反応器に、温度計と、蒸留塔として第一の空冷管とを取り付け、第一の空冷管上端には温度計を取り付けたト字管を取り付け、ト字管には第二の空冷管、受器、真空ポンプを接続し、反応蒸留装置とした。なお、第一の空冷管にはリボンヒーターを巻き温度調整可能にした。また、冷却トラップは液体窒素で冷却し、気化したピリジンの回収を可能とした。
引き続き、上記反応蒸留装置の圧力を、真空ポンプで13.3kPa(100Torr)に減圧し、第一の空冷管の温度が、反応圧力における水の沸点より高く、且つ、ジフェニルエーテルの沸点より低い60℃となるように第一の空冷管を加熱し、反応液を、反応圧力におけるジフェニルエーテルの沸点以上、且つ、2-ピコリンアミドの沸点より低い184℃で沸騰状態に維持した。このように温度を調整することで、反応系中に一部気化したジフェニルエーテルを第一の空冷管で冷却して反器に戻し、副生水は反応器に戻すことなく系外に留去し、反応を行った。
反応開始は反応液が沸騰し始めた時間とし、24時間反応させた。
反応後室温まで冷却し、反応液をサンプリングし、エタノールで2倍に希釈し、内部標準物質として1-ヘキサノールを加え、GC-MS(ガスクロマトグラフ-質量分析計)で定性分析、GC-FIDで定量分析した。
【0085】
【0086】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0087】
1 バッファータンク(CO2、PrOH、DPrC、2-CP、2-PA)
2 炭酸エステル反応器(CO2、PrOH、DPrC、2-CP、2-PA、固定化触媒)
3 CO2回収塔(CO2、PrOH、DPrC、2-CP、2-PA)
4 脱水剤分離塔(PrOH、DPrC、2-CP、2-PA)
5 炭酸エステル回収塔(PrOH、DPrC)
6 アミド分離塔(2-CP、2-PA)
7 気化装置(N2、2-PA)
8 ニトリル再生気相反応器(N2、H2O、2-CP、2-PA、触媒)
9 H2O分離装置(N2、H2O、2-CP、2-PA)
10 N2回収装置(N2、H2O)
11 第1の反応液循環配管(CO2、PrOH、DPrC、2-CP、2-PA)
12 第2の反応液循環配管(CO2、PrOH、DPrC、2-CP、2-PA)
13 反応液抜出し配管(CO2、PrOH、DPrC、2-CP、2-PA)
14 CO2回収塔 塔底液移送配管(PrOH、DPrC、2-CP、2-PA)
15 CO2回収塔 塔頂CO2移送配管(CO2)
16 脱水剤分離塔 塔底液移送配管(2-CP、2-PA)
17 脱水剤分離塔 塔頂液移送配管(PrOH、DPrC)
18 炭酸エステル回収塔 塔底液移送配管(DPrC)
19 炭酸エステル回収塔 塔頂液移送配管(PrOH)
20 アミド分離塔 塔底液移送配管(2-PA)
21 アミド分離塔 塔頂液移送配管(2-CP)
22 気化装置-ニトリル再生気相反応器 連結配管(N2、2-PA)
23 気相反応生成物移送配管(N2、H2O、2-CP、2-PA)
24 H2O分離装置 高沸移送配管(2-CP、2-PA)
25 H2O分離装置 軽沸移送配管(N2、H2O)
26 N2回収装置 水分移送配管(H2O)
27 N2回収装置 N2移送配管(N2)
31 原料フィード配管(CO2、PrOH)
40 反応管
42 気化室
44 原料容器
46,48 マントルヒーター
50 窒素ガス供給配管
52 水冷トラップ容器
54 ドライアイス/メタノール冷却トラップ容器
56 プランジャーポンプ
58 圧力リミッター
60 原料容器
62 エゼクター
64 トラップ
64A 初留トラップ
64B 回収トラップ
66 真空ポンプ
68 気化器
70 反応器
72 プランジャーポンプ
74 減圧コントローラー
76 ニードル弁