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  • 特許-塵埃持込防止機構及び入場準備室 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】塵埃持込防止機構及び入場準備室
(51)【国際特許分類】
   E04B 5/02 20060101AFI20231017BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
E04B5/02 B
F24F7/06 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020538476
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019032952
(87)【国際公開番号】W WO2020040275
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2018157372
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】米森 吉春
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-178388(JP,A)
【文献】特開2012-065720(JP,A)
【文献】特開平06-229103(JP,A)
【文献】特開2012-225533(JP,A)
【文献】特開2016-149966(JP,A)
【文献】特開2013-19017(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/00 - 5/48
F24F 7/00 - 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設への入場のための準備を行う入場準備室に設置されて、塵埃が入場者に付着したまま前記施設の中へ持ち込まれてしまうのを防止するための、塵埃持込防止機構であって、
高床式の床構造体と、自走するロボット掃除機と、を備えており、
前記床構造体は、所定高さに維持された床面と、前記床面の下方空間と、を有しており、
前記床面は、多数本のパイプが並設されて、且つ、隣接する前記パイプ間に所定幅の隙間が設けられて、構成されており、
前記下方空間は、前記ロボット掃除機が自走できるように拡がっており、
前記床構造体は、平面視矩形の床構造体部が複数個並設されて構成されており、
前記床構造体部は、所定高さに維持された床面部と、前記床面部の下方空間部と、を有しており、
前記床面部は、複数個並設されることにより、前記床面を構成するようになっており、
前記下方空間部は、複数個並設されることにより、前記下方空間を構成するようになっている、
ことを特徴とする塵埃持込防止機構。
【請求項2】
施設への入場のための準備を行う入場準備室に設置されて、塵埃が入場者に付着したまま前記施設の中へ持ち込まれてしまうのを防止するための、塵埃持込防止機構であって、
高床式の床構造体と、自走するロボット掃除機と、を備えており、
前記床構造体は、所定高さに維持された床面と、前記床面の下方空間と、を有しており、
前記床面は、多数本のパイプが並設されて、且つ、隣接する前記パイプ間に所定幅の隙間が設けられて、構成されており、
前記下方空間は、前記ロボット掃除機が自走できるように拡がっており、
前記パイプの上方空間側は、丸型である、
ことを特徴とする塵埃持込防止機構。
【請求項3】
前記パイプの上方空間側は、丸型である、
請求項1記載の塵埃持込防止機構。
【請求項4】
前記パイプは、表面に、静電気発生防止機能を有している、
請求項1~3のいずれか一つに記載の塵埃持込防止機構。
【請求項5】
前記所定高さは、20~50cmである、
請求項1~4のいずれか一つに記載の塵埃持込防止機構。
【請求項6】
前記所定幅は、15mm以上25mm未満である、
請求項1~5のいずれか一つに記載の塵埃持込防止機構。
【請求項7】
施設への入場のための準備を行う入場準備室において、
請求項1~6のいずれか一つに記載の塵埃持込防止機構が設置されている、
ことを特徴とする入場準備室。
【請求項8】
前記塵埃持込防止機構の床面の少なくとも一部において、前記パイプが、室内での入場者の動線に対して直交する方向に延在するように、配置されている、
請求項7記載の入場準備室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばクリーンルーム等の施設への入場のための準備を行う入場準備室に設置されて、塵埃が入場者に付着したまま施設の中へ持ち込まれてしまうのを防止するための、塵埃持込防止機構、及び、当該塵埃持込防止機構が設置された入場準備室、に関する。
【背景技術】
【0002】
工場や研究所のクリーンルームへの入場のための準備を行う入場準備室は、一般に、塵埃が入場者に付着したままクリーンルームの中へ持ち込まれてしまうのを防止するための塵埃持込防止機構を、備えている。そのような塵埃持込防止機構としては、例えば、次の2つの機構が知られている。
(a)特許文献1、2に示されるように、入場者に付着している塵埃を空気流によって除去するとともに室外へ排出する機構。
(b)入場準備室の底壁に敷設された簀の子からなる機構。この機構は、入場者の衣服から落下した塵埃を簀の子の下の空間に隔離することによって、塵埃が入場者に再び付着してクリーンルームの中へ持ち込まれてしまうのを、防止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-225533号公報
【文献】特開2009-228379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機構(a)を備えた入場準備室においては、次のような不具合があった。
・機構(a)が大掛かりであるため、入場準備室の維持コストが高くなる。
・塵埃持込防止機構を備えていない既存の入場準備室に機構(a)を設ける場合には、大掛かりな工事が必要となるため、入場準備室の設置コストが高くなる。
【0005】
また、機構(b)を備えた入場準備室においては、次のような不具合があった。
・実際には、簀の子の下の空間の塵埃が、再び舞い上がって入場者に付着してしまうので、有効な塵埃持込防止効果を期待できない。
【0006】
本発明は、維持コストや設置コストを抑制でき、しかも、有効な塵埃持込防止効果を発揮できる、塵埃持込防止機構及び入場準備室を、提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、施設への入場のための準備を行う入場準備室に設置されて、塵埃が入場者に付着したまま前記施設の中へ持ち込まれてしまうのを防止するための、塵埃持込防止機構であって、
高床式の床構造体と、自走するロボット掃除機と、を備えており、
前記床構造体は、所定高さに維持された床面と、前記床面の下方空間と、を有しており、
前記床面は、多数本のパイプが並設されて、且つ、隣接する前記パイプ間に所定幅の隙間が設けられて、構成されており、
前記下方空間は、前記ロボット掃除機が自走できるように拡がっている、
ことを特徴としている。
【0008】
本発明の第2態様は、施設への入場のための準備を行う入場準備室において、
前記第1態様の塵埃持込防止機構が設置されている、
ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塵埃持込防止機構及び入場準備室によれば、維持コストや設置コストを抑制でき、しかも、有効な塵埃持込防止効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の塵埃持込防止機構を備えた入場準備室を示す斜視図である。
図2】塵埃持込防止機構の床構造体の平面略図である。
図3図2の床構造体の斜視略図である。
図4】床構造体の一部の領域を構成する床構造体部の一部省略斜視図である。
図5】床構造体部の平面図である。
図6】床構造体部の支持体部の斜視図である。
図7】ロッカーが配置された入場準備室の内部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の塵埃持込防止機構を備えた入場準備室を示す斜視図である。この入場準備室10は、例えば、工場のクリーンルームに入る前の更衣室である。
【0012】
入場準備室10は、天壁101、底壁102、前壁103、後壁104、右側壁105、及び左側壁106と、それらの壁によって囲まれた内室100と、塵埃持込防止機構1と、を備えている。前壁103は、入場準備室10への入口扉107を有している。後壁104は、クリーンルーム(図示せず)に通じる入場口扉108を有している。塵埃持込防止機構1は、内室100の底壁102上に設置されており、高床式の床構造体2と、自走するロボット掃除機9と、を備えている。なお、自走するロボット掃除機9とは、自律的に自走し一定の区画を清掃することができる掃除機のことであり、例えば、アイロボット コーポレイションの「ルンバ」(登録商標)や「ブラーバ」(登録商標)、パナソニック株式会社の「ルーロ」(登録商標)、日立アプライアンス株式会社の「minimaru」(登録商標)、東芝ライフスタイル株式会社の「トルネオ」(登録商標)等が、挙げられるが、これらに限らない。
【0013】
図2は、塵埃持込防止機構1の床構造体2の平面略図である。図3は、図2の床構造体2の斜視略図である。塵埃持込防止機構1の床構造体2は、所定高さH(図3)に維持された床面3と、床面3の下方空間4と、を有している。所定高さHは、底壁102から床面3までの高さである。所定高さHが低すぎる場合には、下方空間4に集まった粉塵が、床面3を移動する入場者等によって生じる風等により、舞い戻る可能性がある。また、所定高さHが高すぎる場合には、入場準備室が大掛かりになり、維持コストや導入コストが増大してしまう。それ故、所定高さHは、20~50cmであり、特に30cm前後が好ましい。
【0014】
図2及び図3に示されるように、床構造体2は、平面視矩形の床構造体部20が複数個並設されて構成されている。図4は、床構造体2の領域S1を構成する床構造体部20の一部省略斜視図である。図5は、床構造体部20の平面図である。床構造体部20は、床面部30が図6に示される支持体部50に載置され固定されて、構成されている。そして、床面部30の下方には、下方空間部40ができている。
【0015】
床面部30は、複数本のパイプ31が並設されて、且つ、隣接するパイプ31間に所定幅Wの隙間32が設けられて、構成されている。パイプ31の長さL1は、2mである。所定幅Wは、15mm以上25mm未満であり、特に20mmが好ましい。パイプ31は、アルミパイプであり、直径Dを有する丸型パイプである。丸型パイプであるので、入場者等から生じた粉塵を床面3に停滞させることなく下方空間4に集めることができる。直径Dは、6~8cmが好ましく、特に6cmが好ましい。パイプ31の表面には、樹脂コーティングが施されており、これにより、パイプ31は、表面に、静電気発生防止機能を有している。なお、パイプ31は、丸型パイプに限るものではなく、パイプ31の上方空間側が丸型であればよく、例えば半円形状のパイプでもよいが、これに限らない。
【0016】
支持体部50は、3本の縦フレーム51と、4本の横フレーム52と、12本の脚フレーム53と、からなっている。支持体部50において、2本の縦フレーム51は、左右両辺を構成しており、残りの1本の縦フレーム51は、左右方向中央の位置に配置されており、2本の横フレーム52は、前後両辺を構成しており、別の2本の横フレーム52は、前後方向において均等な位置に配置されている。更に、支持体部50において、12本の脚フレーム53が、縦フレーム51と横フレーム52との交差部で垂直に設けられている。
【0017】
上記説明は、領域S1を構成する床構造体部20に関するものであるが、領域S2~S5を構成する床構造体部20も、領域S1を構成する床構造体部20に対して、基本的構成は同じであり、パイプ31の長さに応じて支持体部50の横フレーム52及び脚フレーム53の数及び配置が異なるだけである。すなわち、領域S2を構成する床構造体部20は、領域S1を構成する床構造体部20と全く同じである。図2に示されるように、領域S3を構成する床構造体部20は、長さL2のパイプ31を用いている。領域S4を構成する床構造体部20は、長さL3のパイプ31を用いている。領域S5を構成する床構造体部20は、長さL4のパイプ31を用いている。なお、領域S1~S5を構成する床構造体部20において、それぞれの支持体部50の横フレーム52及び脚フレーム53の数及び配置は、床面部30を安定して支持できるように、設定されている。
【0018】
そして、領域S1~S5を構成する床構造体部20が図2に示されるように並設されることによって、床構造体2すなわち床面3及び下方空間4が構成されている。すなわち、床面3は、領域S1~S5の床面部30で構成されており、したがって、多数本のパイプ31が並設されて、且つ、隣接するパイプ31間に所定幅Wの隙間32が設けられて、構成されている。領域S1~S5の床面部30は、それぞれ、支持体部50によって所定高さHに維持されているので、床面3は、所定高さHに維持されている。下方空間4は、領域S1~S5の床面部30の下方の下方空間部40からなっている。
【0019】
なお、床面3には、入口扉107に繋がる土間109を構成する切欠き部36と、設置された状態の床面3の下方空間4に保守点検等のために人が出入りするための開口39と、が設けられている。なお、開口39等は必要に応じて適宜設定される。
【0020】
ロボット掃除機9は、下方空間4に配置されている。下方空間4は、底壁102と床面3との間の空間であり、ロボット掃除機9は、底壁102上を自走するよう配置されている。脚フレーム53は、ロボット掃除機9が下方空間4の底壁102上を満遍なく自走するのを妨げないように、配置されている。これにより、下方空間4は、ロボット掃除機9が自走できるように拡がっている。
【0021】
図7は、ロッカー5が配置された入場準備室10の内部の平面図である。ロッカー5は、入場準備室10の中央に配置されている。ロッカー5は、左右に複数個並んだ個室を前後に2列有しており、前列の個室の開閉扉は前方に向いており、後列の個室の開閉扉は後方に向いている。したがって、入場者が入場準備室10に入ってロッカー5を使用する際、入場者の動線は、矢印Xに示すようになる。すなわち、領域S3では、パイプ31が動線Xに対して直交する方向に延びている。
【0022】
上記構成の塵埃持込防止機構1を備えた入場準備室10は、次のような作用効果を発揮できる。
【0023】
(1)入場準備室10において、入場者が着替え等の作業を行うと、入場者の衣服等に付着していた塵埃が衣服から落下する。落下した塵埃は、隙間32から下方空間4へ落下して底壁102上に載る。しかるに、底壁102上では、ロボット掃除機9が自走しているので、底壁102上に載った塵埃は、ロボット掃除機9によって吸引除去される。したがって、底壁102上に載った塵埃が再び舞い上がって入場者に付着するのを、防止でき、よって、塵埃が入場者に再び付着してクリーンルームの中へ持ち込まれてしまうのを、防止できる。
【0024】
(2)パイプ31が丸型パイプであるので、入場者の衣服等から落下した塵埃は、パイプ31上に載ってもその表面を円滑に滑り落ちて隙間32から下方空間4へ落下する。したがって、パイプ31上の塵埃が再び舞い上がって入場者に付着するのを、防止でき、よって、この点からも、塵埃が入場者に再び付着してクリーンルームの中へ持ち込まれてしまうのを、防止できる。
【0025】
(3)パイプ31が、表面に、静電気発生防止機能を有しているので、パイプ31上に載った塵埃がパイプ31表面に付着してしまうのを、防止できる。よって、上記(2)の効果を有効に発揮できる。
【0026】
(4)領域S3において、パイプ31が入場者の動線Xに対して直交方向に延びているので、パイプ31が動線Xに対して平行である場合に比して、入場者の足裏とパイプ31表面との接触面積を小さくできる。したがって、パイプ31表面における摩擦による静電気の発生を抑制でき、パイプ31上に載った塵埃がパイプ31表面に付着してしまうのを、防止できる。よって、上記(2)の効果を有効に発揮できる。
【0027】
(5)領域S3において、パイプ31が入場者の動線Xに対して直交方向に延びているので、移動している入場者の足裏から塵埃を効果的に落とすことができる。
【0028】
(6)床面3の所定高さHが20cm以上であるので、底壁102上の塵埃は、仮に舞い上がったとしても床面3上に至ることはない。したがって、下方空間4へ落下した塵埃が入場者に再び付着するのを、防止でき、よって、この点からも、塵埃が入場者に再び付着してクリーンルームの中へ持ち込まれてしまうのを、防止できる。また、床面3の所定高さHが50cm以下であるので、床面3が既存の入場準備室に設置しにくくなることはない。
【0029】
(7)隙間32の所定幅Wが25mm未満であるので、入場者が隙間32につまずくのを防止できる。また、隙間32の所定幅Wが15mm以上であるので、塵埃が隙間32を通りにくくなるのを防止できる。よって、上記(1)、(2)の効果を有効に発揮できる。
【0030】
(8)塵埃持込防止機構1が高床式の床構造体2と自走するロボット掃除機9とを備えるだけであるので、入場準備室10は、メンテナンスが容易であり、維持コストが低い。
【0031】
(9)塵埃持込防止機構を備えていない既存の入場準備室に、塵埃持込防止機構1を設ける場合には、床構造体部20を並設して床面3を構成し、下方空間4にロボット掃除機9を配置するだけでよいので、簡素な工事で済み、よって、設置コストが安い。
【0032】
[変形例]
(a)床面3が、入口扉107に繋がる土間109を構成する切欠き部36を有していない。又は、床面3が、入口扉107に繋がる土間109を構成する切欠き部36及び下方空間4に保守点検等のために人が出入りするための開口39を有していない。
【0033】
(b)床構造体2が、複数の床構造体部20の集合体ではなく、長さが同一又は異なる多数のパイプ31と一体構造の支持体50とによって構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の塵埃持込防止機構は、入場準備室に設置されて、維持コストや設置コストを抑制でき、しかも、有効な塵埃持込防止効果を発揮できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0035】
1 塵埃持込防止機構 2 床構造体 3 床面 30 床面部 31 パイプ
32 隙間 4 下方空間 10 入場準備室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7