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特許7367697樹脂組成物、光ファイバ及び光ファイバの製造方法
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  • 特許-樹脂組成物、光ファイバ及び光ファイバの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】樹脂組成物、光ファイバ及び光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20231017BHJP
   C03C 25/1065 20180101ALI20231017BHJP
   C03C 25/285 20180101ALI20231017BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20231017BHJP
   G02B 6/44 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C08F290/06
C03C25/1065
C03C25/285
C08F2/44 A
G02B6/44 301A
G02B6/44 301B
G02B6/44 331
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020556198
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2019044950
(87)【国際公開番号】W WO2020101029
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2018215714
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】浜窪 勝史
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-131698(JP,A)
【文献】特開2005-213453(JP,A)
【文献】特開2006-188659(JP,A)
【文献】特開2004-217836(JP,A)
【文献】特開平08-134156(JP,A)
【文献】国際公開第2009/142237(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107083159(CN,A)
【文献】特表2007-533816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70
C08F 2/00-2/60
C08F 283/01;290/00-299/08
G02B 6/02-6/10;6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を有し、炭素数が9以上のアルキル基を有しない表面修飾無機酸化物粒子と、を含む樹脂組成物であり、
前記表面修飾無機酸化物粒子の含有量が、前記樹脂組成物の総量を基準として1質量%以上60質量%以下であり、
前記表面修飾無機酸化物粒子における表面修飾量が、0.15mg/m以上2.5mg/m以下であり、
粘度が、45℃で300mPa・s以上5000mPa・s以下である、光ファイバ被覆用の樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルキル基が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びオクチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記表面修飾無機酸化物粒子の平均一次粒径が、800nm以下である、請求項1又は請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂組成物を含む、光ファイバのセカンダリ被覆材料。
【請求項5】
コア及びクラッドを含むガラスファイバと、
前記ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、
前記プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層と、を備え、
前記セカンダリ樹脂層が、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物からなる、光ファイバ。
【請求項6】
コア及びクラッドを含むガラスファイバの外周に、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の樹脂組成物を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程の後に紫外線を照射することにより前記樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、
を含む、光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、光ファイバ及び光ファイバの製造方法に関する。
本出願は、2018年11月16日出願の日本出願第2018-215714号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、光ファイバは、光伝送体であるガラスファイバを保護するための被覆樹脂層を有している。光ファイバは、光ファイバに側圧が付与された際に発生する微小な曲げにより誘起される伝送損失の増加を小さくするために、側圧特性に優れることが求められている。
【0003】
例えば、特許文献1では、合成石英を原料とするフィラーを含有する紫外線硬化型樹脂組成物を用いて樹脂層を形成することで、光ファイバの側圧特性を改善することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-219550号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を有する表面修飾無機酸化物粒子とを含み、表面修飾無機酸化物粒子の含有量が、樹脂組成物の総量を基準として1質量%以上60質量%以下であり、表面修飾無機酸化物粒子における表面修飾量が、0.15mg/m以上である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
被覆樹脂層は、一般に、プライマリ樹脂層及びセカンダリ樹脂層を備えている。セカンダリ樹脂層を形成する樹脂組成物には、ヤング率を高めることで光ファイバの側圧特性を向上することが求められる。しかしながら、フィラーの含有量を増やすと、樹脂組成物から形成される樹脂層のヤング率を高くできるものの、塗布性が乏しくなり、樹脂層が脆くなる傾向にある。
【0008】
本開示は、セカンダリ樹脂層に求められる高いヤング率を有すると共に、塗布性に優れ、強靱な樹脂層を形成できる樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物から形成されるセカンダリ樹脂層を備える光ファイバを提供することを目的とする。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、セカンダリ樹脂層に求められる高いヤング率を有すると共に、塗布性に優れ、強靱な樹脂層を形成できる光ファイバ被覆用の樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物から形成されるセカンダリ樹脂層を備える光ファイバを提供することができる。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。本開示の一態様に係る樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を有する表面修飾無機酸化物粒子とを含み、表面修飾無機酸化物粒子の含有量が、樹脂組成物の総量を基準として1質量%以上60質量%以下であり、表面修飾無機酸化物粒子における表面修飾量が、0.15mg/m以上である。
【0011】
上記表面修飾無機酸化物粒子を特定の範囲で用いることで、高いヤング率を有すると共に、塗布性に優れ、強靱な樹脂層を形成することができる。
【0012】
樹脂組成物中での分散性に優れ、塗布性を向上し易いことから、表面修飾無機酸化物粒子における表面修飾量は、0.15mg/m以上2.5mg/m以下であってもよい。
【0013】
炭素数1以上8以下のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びオクチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であってもよい。これにより、ヤング率が高い樹脂層を形成し易くなる。
【0014】
ヤング率の高い樹脂層を形成する観点から、表面修飾無機酸化物粒子の平均一次粒径は、800nm以下であってもよい。
【0015】
本開示の一態様に係る光ファイバのセカンダリ被覆材料は、上記樹脂組成物を含む。本実施形態に係る樹脂組成物をセカンダリ樹脂層に用いることで、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0016】
本開示の一態様に係る光ファイバは、コア及びクラッドを含むガラスファイバと、ガラスファイバに接して該ガラスファイバを被覆するプライマリ樹脂層と、プライマリ樹脂層を被覆するセカンダリ樹脂層とを備え、セカンダリ樹脂層が、上記樹脂組成物の硬化物からなる。本実施形態に係る樹脂組成物をセカンダリ樹脂層に適用することで、光ファイバの側圧特性を向上することができる。
【0017】
本開示の一態様に係る光ファイバの製造方法は、コア及びクラッドから構成されるガラスファイバの外周に、上記樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布工程の後に紫外線を照射することにより樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。これにより、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態に係る樹脂組成物及び光ファイバの具体例を、必要により図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されず、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
<樹脂組成物>
本実施形態に係る樹脂組成物は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有するベース樹脂と、炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を有する表面修飾無機酸化物粒子とを含む。
【0020】
ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリル酸についても同様である。
【0021】
(表面修飾無機酸化物粒子)
本実施形態に係る表面修飾無機酸化物粒子は、無機酸化物粒子の表面が炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を有するシラン化合物により処理され、無機酸化物粒子の表面に炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基が導入されている。すなわち、表面修飾無機酸化物粒子は、無機成分と有機成分とから構成されている。
【0022】
炭素数1以上8以下のアルキル基又はフェニル基を有する表面修飾無機酸化物粒子は、ベース樹脂との相溶性を高めることができ、ヤング率が高い樹脂層を形成し易くなる。一方、炭素数が9以上のアルキル基を有する表面修飾無機酸化物粒子は、親油性が大きいため、樹脂組成物中に分散し難くなる。炭素数1以上8以下のアルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及びオクチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基であってもよい。
【0023】
炭素数1以上8以下のアルキル基を有するシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン及びオクチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0024】
フェニル基を有するシラン化合物としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランが挙げられる。
【0025】
本実施形態に係る表面修飾無機酸化物粒子は、分散媒に分散されている。分散媒に分散された表面修飾無機酸化物を用いることで、樹脂組成物中に表面修飾無機酸化物粒子を均一に分散でき、樹脂組成物の保存安定性を向上することができる。分散媒としては、樹脂組成物の硬化を阻害しなければ、特に限定されない。分散媒は、反応性であっても、非反応性であってもよい。表面修飾無機酸化物粒子が含まれる分散媒をX線小角散乱法で測定して、凝集した粒子が測定されない場合に、表面修飾無機酸化物粒子が一次粒子で分散されているといえる。
【0026】
反応性の分散媒として、(メタ)アクリロイル化合物、エポキシ化合物等のモノマーを用いてもよい。(メタ)アクリロイル化合物としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、及びグリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。分散媒として、後述するモノマーで例示する(メタ)アクリロイル化合物を用いてもよい。
【0027】
非反応性の分散媒として、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒、メタノール(MeOH)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のアルコール系溶媒、又は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル系溶媒を用いてもよい。非反応性の分散媒の場合、ベース樹脂と分散媒に分散された表面修飾無機酸化物粒子とを混合した後、分散媒の一部を除去して樹脂組成物を調製してもよい。
【0028】
樹脂組成物中での分散性に優れ、平滑な樹脂層を形成し易いことから、上記表面修飾無機酸化物粒子は、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化マグネシウム(マグネシア)、酸化チタン(チタニア)、酸化スズ及び酸化亜鉛からなる群より少なくとも1種を表面処理した粒子であることが好ましい。廉価性に優れる、表面処理がし易い、紫外線透過性を有する、樹脂層に適度な硬さを付与し易い等の観点から、本実施形態に係る表面修飾無機酸化物粒子として、表面修飾シリカ粒子を用いることがより好ましい。
【0029】
樹脂層のヤング率を高くする観点から、表面修飾無機酸化物粒子の平均一次粒径は、800nm以下であってもよく、1nm以上650nm以下が好ましく、5nm以上500nm以下がより好ましく、10nm以上200nm以下が更に好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。平均一次粒径は、例えば、電子顕微鏡写真の画像解析、光散乱法、BET法等によって測定することができる。表面修飾無機酸化物粒子の一次粒子が分散された分散媒は、一次粒子の粒径が小さい場合は目視で透明に見える。一次粒子の粒径が比較的大きい(40nm以上)場合は、一次粒子が分散された分散媒は白濁して見えるが沈降物は観察されない。
【0030】
表面修飾無機酸化物粒子の含有量は、樹脂組成物の総量(ベース樹脂及び表面修飾無機酸化物粒子の総量)を基準として1質量%以上60質量%以下であり、3質量%以上55質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下が更に好ましい。表面修飾無機酸化物粒子の含有量が1質量%以上であると、側圧特性に優れる樹脂層を形成し易くなる。表面修飾無機酸化物粒子の含有量が60質量%以下であると、樹脂組成物の塗布性を向上し易くなり、強靱な樹脂層を形成することができる。なお、樹脂組成物の総量と樹脂組成物の硬化物の総量は同じと考えてよい。表面修飾無機酸化物粒子の含有量は、セカンダリ樹脂層の総量(セカンダリ樹脂層を構成する樹脂組成物の硬化物の総量)を基準として1質量%以上60質量%以下であり、3質量%以上55質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下が更に好ましい。
【0031】
表面修飾無機酸化物粒子における表面修飾量は、0.15mg/m以上であり、0.15mg/m以上2.5mg/m以下であることが好ましく、0.20mg/m以上2.0mg/m以下であることがより好ましく、0.25mg/m以上1.8mg/m以下であることが更に好ましく、0.30mg/m以上1.5mg/m以下であることが特に好ましい。表面修飾量が上記範囲にあることで、樹脂組成物の粘度を調整し易くなる。
【0032】
本明細書における「表面修飾量」は、表面修飾無機酸化物粒子の比表面積と、有機成分の割合から算出することができる。上記有機成分は、表面修飾前の無機酸化物粒子に導入された紫外線硬化性の官能基に由来する成分である。例えば、表面修飾無機酸化物粒子が、シリカ粒子から構成される場合、SiO以外の成分が有機成分となる。比表面積は、窒素吸着BET法により測定することができ、有機成分の割合は、示唆熱・熱重量分析(TG/DTA)により測定することができる。表面修飾無機酸化物粒子における表面修飾量は、樹脂組成物を調製する前に、分散媒から粒子を単離して測定してもよく、樹脂組成物を調製した後に、樹脂組成物から粒子を単離して測定してもよい。
【0033】
(ベース樹脂)
本実施形態に係るベース樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー及び光重合開始剤を含有する。
【0034】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物及び水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。
【0035】
ポリオール化合物としては、例えば、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール及びビスフェノールA・エチレンオキサイド付加ジオールが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナートが挙げられる。水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
樹脂層のヤング率を調整する観点から、ポリオール化合物の数平均分子量は、300以上3000以下であってもよい。
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを合成する際の触媒として、一般に有機スズ化合物が使用される。有機スズ化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズマレート、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸2-エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチル)及びジブチルスズオキシドが挙げられる。易入手性又は触媒性能の点から、触媒としてジブチルスズジラウレート又はジブチルスズジアセテートを使用することが好ましい。
【0038】
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー合成時に炭素数5以下の低級アルコールを使用してもよい。低級アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-2-ブタノール、3-メチル-2-ブタノール及び2,2-ジメチル-1-プロパノールが挙げられる。
【0039】
本実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを更に含有してもよい。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、グリシジル基を2以上有するエポキシ樹脂に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるオリゴマーを用いることができる。
【0040】
モノマーとしては、重合性基を1つ有する単官能モノマー、重合性基を2つ以上有する多官能モノマーを用いることができる。モノマーは、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3-フェノキシベンジルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキサノールアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート系モノマー;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸ダイマー、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(メタ)アクリレート等のカルボキシル基含有モノマー;N-アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-アクリロイルピペリジン、N-メタクリロイルピペリジン、N-アクリロイルピロリジン、3-(3-ピリジン)プロピル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート等の複素環含有(メタ)アクリレート;マレイミド、N-シクロへキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド等のマレイミド系モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド等のN-置換アミド系モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;N-(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-6-オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N-(メタ)アクリロイル-8-オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマーが挙げられる。
【0042】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,20-エイコサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソペンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-エチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリエトキシポリプロポキシトリ(メタ)アクリレート、トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリプロポキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロイルオキシエチル]イソシアヌレートが挙げられる。
【0043】
光重合開始剤としては、公知のラジカル光重合開始剤の中から適宜選択して使用することができる。光重合開始剤として、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Omnirad 184、IGM Resins社製)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907、IGM Resins社製)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO、IGM Resins社製)及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(Omnirad 819、IGM Resins社製)が挙げられる。
【0044】
樹脂組成物は、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤等を更に含有してもよい。
【0045】
シランカップリング剤としては、樹脂組成物の硬化の妨げにならなければ、特に限定されない。シランカップリング剤として、例えば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシ-エトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ビス-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド及びγ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドが挙げられる。
【0046】
本実施形態に係る樹脂組成物の粘度は、45℃で300mPa・s以上5000mPa・s以下であることが好ましく、400mPa・s以上4500mPa・s以下であることがより好ましく、500mPa・s以上3500mPa・s以下であることが更に好ましく、700mPa・s以上3000mPa・s以下であることが特に好ましい。樹脂組成物の粘度が上記範囲にあることで、樹脂組成物の塗布性を向上することができる。
【0047】
本実施形態に係る樹脂組成物は、光ファイバのセカンダリ被覆材料として好適に用いることができる。本実施形態に係る樹脂組成物をセカンダリ樹脂層に用いることで、高いヤング率を有し、側圧特性に優れる光ファイバを作製することができる。
【0048】
<光ファイバ>
図1は、本実施形態に係る光ファイバの一例を示す概略断面図である。光ファイバ10は、コア11及びクラッド12を含むガラスファイバ13と、ガラスファイバ13の外周に設けられたプライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15を含む被覆樹脂層16とを備えている。
【0049】
クラッド12はコア11を取り囲んでいる。コア11及びクラッド12は石英ガラス等のガラスを主に含み、例えば、コア11にはゲルマニウムを添加した石英ガラスを用いることができ、クラッド12には純石英ガラス、又は、フッ素が添加された石英ガラスを用いることができる。
【0050】
図1において、例えば、ガラスファイバ13の外径(D2)は125μm程度であり、ガラスファイバ13を構成するコア11の直径(D1)は、7~15μm程度である。
【0051】
被覆樹脂層16の厚さは、通常、60~70μm程度である。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10~50μm程度であってもよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが35μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが25μmであってもよい。光ファイバ10の外径は、245~265μm程度であってもよい。
【0052】
また、被覆樹脂層16の厚さは、27~48μm程度であってよい。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、10~38μm程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、179~221μm程度であってよい。
【0053】
さらに、ガラスファイバ13の外径(D2)が100μm程度で、被覆樹脂層16の厚さが22~37μm程度であってもよい。プライマリ樹脂層14及びセカンダリ樹脂層15の各層の厚さは、5~32μm程度であってよく、例えば、プライマリ樹脂層14の厚さが25μmで、セカンダリ樹脂層15の厚さが10μmであってよい。光ファイバ10の外径は、144~174μm程度であってよい。
【0054】
本実施形態に係る樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層に適用することができる。セカンダリ樹脂層は、上記ベース樹脂と表面修飾無機酸化物粒子を含む樹脂組成物を硬化させて形成することができる。これにより、光ファイバの側圧特性を向上することができる。
【0055】
本実施形態に係る光ファイバの製造方法は、コア及びクラッドから構成されるガラスファイバの外周に、上記樹脂組成物を塗布する塗布工程と、塗布工程の後に紫外線を照射することにより樹脂組成物を硬化させる硬化工程と、を含む。
【0056】
セカンダリ樹脂層のヤング率は、23℃で1300MPa以上が好ましく、1300MPa以上2600MPa以下がより好ましく、1500MPa以上2500MPa以下が更に好ましい。セカンダリ樹脂層のヤング率が1300MPa以上であると、側圧特性を向上し易く、2600MPa以下であると、セカンダリ樹脂層に適度な靱性を付与できるため、セカンダリ樹脂層に割れ等が発生し難くなる。
【0057】
分散媒に分散された表面修飾無機酸化物粒子は、樹脂層の硬化後も樹脂層中に分散した状態で存在する。反応性の分散媒を使用した場合、表面修飾無機酸化物粒子は樹脂組成物に分散媒ごと混合され、分散状態が維持されたまま樹脂層中に取り込まれる。非反応性の分散媒を使用した場合、分散媒は少なくともその一部が樹脂組成物から揮発して無くなるが、表面修飾無機酸化物粒子は分散状態のまま樹脂組成物中に残り、硬化後の樹脂層にも分散した状態で存在する。樹脂層中に存在する表面修飾無機酸化物粒子は、電子顕微鏡で観察した場合に、一次粒子が分散した状態で観察される。
【0058】
プライマリ樹脂層14は、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤を含む樹脂組成物を硬化させて形成することができる。プライマリ樹脂層用の樹脂組成物は、従来公知の技術を用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、モノマー、光重合開始剤及びシランカップリング剤としては、上記ベース樹脂で例示した化合物から適宜、選択してもよい。ただし、プライマリ樹脂層を形成する樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層を形成するベース樹脂とは異なる組成を有している。
【0059】
なお、光ファイバを複数本並列し、リボン用樹脂で一体化して光ファイバリボンとする場合があるが、本開示の樹脂組成物はリボン用樹脂として使用することもできる。これにより、光ファイバと同様に光ファイバリボンの側圧特性を向上することができる。
【実施例
【0060】
以下、本開示に係る実施例及び比較例を用いた評価試験の結果を示し、本開示を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0061】
[樹脂組成物の作製]
(オリゴマー)
オリゴマーとして、分子量600のポリプロピレングリコール、2,4-トリレンジイソシアネート及びヒドロキシエチルアクリレートを反応させることにより得られたウレタンアクリレートオリゴマーと、エポキシアクリレートオリゴマーとを準備した。
【0062】
(モノマー)
モノマーとして、イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社の商品名「IBXA」)、トリプロピレングリコールジアクリレート(ダイセル・オルネクス株式会社の商品名「TPGDA」)及び2-フェノキシエチルアクリレート(共栄化学株式会社の商品名「ライトアクリレートPO-A」)を準備した。
【0063】
(光重合開始剤)
光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを準備した。
【0064】
(ベース樹脂)
ウレタンアクリレートオリゴマーを45質量部、エポキシアクリレートを13.4質量部、アクリル酸イソボルニルを9質量部、トリプロピレングリコールジアクリレートを22.5質量部、2-フェノキシエチルアクリレートを10質量部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを0.05質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを0.05質量部混合して、ベース樹脂を調製した。
【0065】
(表面修飾無機酸化物粒子)
表面修飾無機酸化物粒子として、表1に示す化合物で表面処理されているシリカ粒子(以下、単に「シリカ粒子」という。)を含むシリカゾル(MEK分散液)を準備した。
【0066】
(実施例1~3、比較例1)
ベース樹脂と、シリカゾルとを混合した後、MEKの大部分を除去して、樹脂組成物中のシリカ粒子の含有量が表1に示す値となる樹脂組成物を調製した。
【0067】
(表面修飾量の測定)
樹脂組成物にクロロホルムを加えて遠心分離を行い、沈殿物を回収した。沈殿物にアセトンを加えて遠心分離を行い、上澄みを除去した後、沈殿物に再度アセトンを加えて遠心分離、上澄み除去を行う操作を4回行い、シリカ粒子を取り出した。乳鉢ですりつぶしたシリカ粒子を室温で12時間減圧乾燥して揮発分を除去した。遠心分離は、30000rpmで120分間の条件で行った。乾燥後のシリカ粒子を80℃で12時間減圧処理し、細孔分布測定装置(マイクロメリティクス製の「ASAP-2020」)を用いて、窒素吸着BET法によりシリカ粒子の比表面積(m/g)を測定した。
【0068】
シリカ粒子に含まれる有機成分の割合(質量%)を、示差熱熱重量同時分析装置(日立ハイテクサイエンス社製の「TG/DTA6300」)を用いて測定した。測定は、重量を測定したシリカ粒子を、窒素下(300mL/分)で室温から850℃まで加熱した後、850℃から200℃まで冷却し、空気下(100mL/分)で200℃から1000℃まで加熱して重量変化を測定した。有機成分の割合は、シリカ粒子の重量変化から算出した。
【0069】
シリカ粒子の比表面積及び有機成分の割合から下記式により、シリカ粒子の表面修飾量を算出した。
表面修飾量(mg/m)=有機成分の割合/比表面積
【0070】
(比較例2)
ベース樹脂を樹脂組成物として用いた。
【0071】
実施例及び比較例で得られた樹脂組成物を用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。比較例1の樹脂組成物は、シリカ粒子の分散性が悪いため評価することができなかった。
【0072】
(粘度)
樹脂組成物の45℃における粘度を、B型粘度計(ブルックフィ-ルド社製の「デジタル粘度計DV-II」、使用スピンドル:No.18、回転数:10rpm)を用いて測定した。
【0073】
(ヤング率)
スピンコータを用いて、実施例又は比較例で得られた樹脂組成物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの上に塗布した後、無電極UVランプシステム(ヘレウス製の「VPS600(Dバルブ)」)を用いて、1000±100mJ/cmの条件で硬化させ、PETフィルム上に厚み200±20μmの樹脂層を形成した。樹脂層をPETフィルムから剥がし、樹脂フィルムを得た。
【0074】
樹脂フィルムをJIS K 7127 タイプ5のダンベル形状に打ち抜き、23±2℃、50±10%RHの条件下で、引張試験機を用いて1mm/分の引張速度、標線間25mmの条件で引張り、応力-歪み曲線を得た。2.5%割線によりヤング率を求めた。
【0075】
[光ファイバの作製]
分子量4000のポリプロピレングリコール、イソホロンジイソシアネート、ヒドロキシエチルアクリレート及びメタノールを反応させることにより得られるウレタンアクリレートオリゴマーを準備した。ウレタンアクリレートオリゴマー75質量部、ノニルフェノールEO変性アクリレート12質量部、N-ビニルカプロラクタム6質量部、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート2質量部、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド1質量部、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン1質量部を混合して、プライマリ樹脂層用の樹脂組成物A1を得た。
【0076】
コア及びクラッドから構成される直径125μmのガラスファイバの外周に、樹脂組成物A1をプライマリ樹脂層用として、実施例又は比較例の樹脂組成物をセカンダリ樹脂層用として塗布し、その後紫外線を照射させることで樹脂組成物を硬化させ、厚さ35μmのプライマリ樹脂層とその外周にセカンダリ樹脂層を形成して、光ファイバを作製した。線速は1500m/分とした。
【0077】
(塗布性)
作製された光ファイバについて、断線の有無及び樹脂層の割れの有無を確認することで、樹脂組成物の塗布性を評価した。断線及び樹脂層の割れが無い場合を「A」とし、断線が有り、樹脂層に割れが無い場合を「B」とし、断線が有り、樹脂層に割れが生じた場合を「C」とした。樹脂組成物の粘度が高すぎると、セカンダリ樹脂層を形成する際の被覆径が安定せずに断線し易くなる。一方、樹脂組成物の粘度が低すぎると、自己調芯力が働きにくく、偏肉が発生し易くなる。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例の樹脂組成物は、セカンダリ樹脂層に求められる高いヤング率を有すると共に、塗布性に優れ、強靱な樹脂層を形成できることが確認できた。
【符号の説明】
【0080】
10…光ファイバ、11…コア、12…クラッド、13…ガラスファイバ、14…プライマリ樹脂層、15…セカンダリ樹脂層、16…被覆樹脂層。
図1