(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】銅および銅合金を選択的にエッチングするためのエッチング液およびそれを用いた半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23F 1/18 20060101AFI20231017BHJP
H01L 21/308 20060101ALI20231017BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C23F1/18
H01L21/308 F
H01L21/306 F
(21)【出願番号】P 2020558399
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(86)【国際出願番号】 JP2019045158
(87)【国際公開番号】W WO2020105605
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018217067
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】深澤 隼
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智子
(72)【発明者】
【氏名】松永 裕嗣
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/099624(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/075765(WO,A1)
【文献】特開2016-098386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/18
H01L 21/308
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅および銅合金からなる群より選択される1種以上と、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上と、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上とを含む半導体基板において、銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を選択的にエッチングするためのエッチング液であって、
(A)過酸化水素をエッチング液の全質量に対して5~10.5質量%、
(B)硝酸をエッチング液の全質量に対して0.3~6質量%、
(C)炭素数1~6のアルキル基、アミノ基、ならびに炭素数1~6のアルキル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基を有する置換アミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を有していてもよい、トリアゾールおよびテトラアゾールからなる群より選択される1種以上の含窒素5員環化合物、ならびに
(D)(d1)アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミンおよびアンモニウム塩からなる群より選択される1種以上のpH調整剤、(d2)ホスホン酸化合物、または(d3)これらの組み合わせ
を含
み、
エッチング液のpHが0.7~1.6である、エッチング液。
【請求項2】
成分(C)が、5-メチルテトラゾール、5-アミノテトラゾールおよび1,2,4-トリアゾールからなる群より選択される1種以上の含窒素5員環化合物である、請求項1に記載のエッチング液。
【請求項3】
成分(C)の濃度が、エッチング液の全質量に対して0.005~2.0質量%である、請求項1または2に記載のエッチング液。
【請求項4】
エッチング液のpHが0.7~1.3である、請求項
3に記載のエッチング液。
【請求項5】
エッチング液が、(d2)ホスホン酸化合物を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項6】
成分(d2)が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上のホスホン酸化合物である、請求項1から
5のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項7】
成分(d2)の濃度が、エッチング液の全質量に対して0.005~1.0質量%である、請求項1から
6のいずれか一項に記載のエッチング液。
【請求項8】
銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を含む銅シード層を表面に有する半導体基材を準備する工程;
前記銅シード層の一部を露出する開口パターンを有するレジストパターンを形成する工程;
前記レジストパターンの前記開口パターンの開口部に露出する前記銅シード層の表面にニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Aと、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Bとをこの順に配置するように形成する工程;
前記レジストパターンを除去する工程;および
前記レジストパターンを除去することで生じた、前記金属層Aおよび前記金属層Bが形成されていない前記銅シード層の露出部を、請求項1から
7のいずれか一項に記載のエッチング液と接触させて、前記銅シード層の露出部をエッチングする工程
を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項9】
前記半導体基材上にニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Aと、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Bとを含むバンプが形成される、請求項
8に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を選択的にエッチングするためのエッチング液およびそれを用いた半導体基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代のDRAMメモリやNANDメモリに代表されるTSV(Through Silicon Via)などのバンプを使用した半導体基板の配線形成においては、ニッケル、ニッケル合金、錫、錫合金、金および金合金の溶解を抑制しつつ、銅および銅合金を選択的にエッチングする技術が要求される。
ニッケルおよびニッケル合金の溶解を抑制し、銅および銅合金を選択的にエッチングする技術は知られている(例えば、特許文献1から3)。
しかしながら、従来、配線材料として、ニッケルおよびニッケル合金のほか、錫、金およびこれらの合金を含む場合に、これらの金属の溶解を抑制しながら、銅および銅合金を選択的にエッチングする技術については検討されていない。
例えば、特許文献1では、過酸化水素と硝酸を所定の濃度比で含むエッチング液が開示されているが、このエッチング液では、配線材料として錫や金を含む場合にニッケルの溶解を防ぐことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-43895号公報
【文献】国際公開第2011/074589号
【文献】国際公開第2017/188108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況の下、配線材料として、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上と、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上とを含む場合に、これらの金属の溶解を抑制しつつ、銅および銅合金を選択的にエッチングすることができ、バンプを使用した半導体基板の配線形成に好適に用いることができるエッチング液の提供が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、以下に示す特定組成のエッチング液が、上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、以下に示したエッチング液および半導体基板の製造方法等を提供するものである。
[1]銅および銅合金からなる群より選択される1種以上と、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上と、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上とを含む半導体基板において、銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を選択的にエッチングするためのエッチング液であって、
(A)過酸化水素をエッチング液の全質量に対して5~10.5質量%、
(B)硝酸をエッチング液の全質量に対して0.3~6質量%、
(C)炭素数1~6のアルキル基、アミノ基、ならびに炭素数1~6のアルキル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基を有する置換アミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を有していてもよい、トリアゾールおよびテトラアゾールからなる群より選択される1種以上の含窒素5員環化合物、ならびに
(D)(d1)アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミンおよびアンモニウム塩からなる群より選択される1種以上のpH調整剤、(d2)ホスホン酸化合物、または(d3)これらの組み合わせ
を含む、エッチング液。
[2]成分(C)が、5-メチルテトラゾール、5-アミノテトラゾールおよび1,2,4-トリアゾールからなる群より選択される1種以上の含窒素5員環化合物である、[1]に記載のエッチング液。
[3]成分(C)の濃度が、エッチング液の全質量に対して0.005~2.0質量%である、[1]または[2]に記載のエッチング液。
[4]エッチング液のpHが0.5~3.0である、[1]から[3]のいずれか一項に記載のエッチング液。
[5]エッチング液が、(d2)ホスホン酸化合物を含む、[1]から[3]のいずれか一項に記載のエッチング液。
[6]成分(d2)が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上のホスホン酸化合物である、[1]から[5]のいずれか一項に記載のエッチング液。
[7]成分(d2)の濃度が、エッチング液の全質量に対して0.005~1.0質量%である、[1]から[6]のいずれか一項に記載のエッチング液。
[8]銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を含む銅シード層を表面に有する半導体基材を準備する工程;
前記銅シード層の一部を露出する開口パターンを有するレジストパターンを形成する工程;
前記レジストパターンの前記開口パターンの開口部に露出する前記銅シード層の表面にニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Aと、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Bとをこの順に配置するように形成する工程;
前記レジストパターンを除去する工程;および
前記レジストパターンを除去することで生じた、前記金属層Aおよび前記金属層Bが形成されていない前記銅シード層の露出部を、[1]から[7]のいずれか一項に記載のエッチング液と接触させて、前記銅シード層の露出部をエッチングする工程
を含む、半導体基板の製造方法。
[9]前記半導体基材上にニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Aと、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Bとを含むバンプが形成される、[8]に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、銅および銅合金を選択的にエッチングするためのエッチング液を提供することができる。また、本発明によれば、該エッチング液を用いた半導体基板の製造方法を提供することができる。
本発明の好ましい態様によれば、該エッチング液を用いることにより、ニッケル、ニッケル合金、錫、錫合金、金および金合金の溶解を抑制しつつ、銅および銅合金を選択的にエッチングすることができる。また、本発明の好ましい態様によれば、該エッチング液は、バンプを使用した半導体基板の配線形成において好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(a)~(c)は、基材準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図2】
図2は、レジストパターン形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図3】
図3は、銅めっき層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図4】
図4は、金属層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図5】
図5は、レジストパターン除去工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図6】
図6は、エッチング工程の一例を模式的に示す工程図である。
【
図7】
図7は、バリアメタル層除去工程の一例を模式的に示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のエッチング液および半導体基板の製造方法等について具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0009】
1.エッチング液
本発明のエッチング液は、銅および銅合金からなる群より選択される1種以上と、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上と、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上とを含む半導体基板において、銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を選択的にエッチングするためのエッチング液であって、
(A)過酸化水素をエッチング液の全質量に対して5~10.5質量%、
(B)硝酸をエッチング液の全質量に対して0.3~6質量%、
(C)炭素数1~6のアルキル基、アミノ基、ならびに炭素数1~6のアルキル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基を有する置換アミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を有していてもよい、トリアゾールおよびテトラアゾールからなる群より選択される1種以上の含窒素5員環化合物、ならびに
(D)(d1)アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミンおよびアンモニウム塩からなる群より選択される1種以上のpH調整剤、(d2)ホスホン酸化合物、または(d3)これらの組み合わせを含むことを特徴としている。
【0010】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のエッチング液は、上記したように特定成分を特定の比率で含有することで、配線材料として、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上と、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上とを含む場合に、これらの金属の溶解を抑えながら、銅および銅合金を選択的にエッチングすることができる。なお、本明細書において「ニッケル合金」とは、ニッケルに1種以上の金属元素または非金属元素を加えたものであって金属的性質を有するものであれば特に限定されない。「錫合金」、「金合金」および「銅合金」についても同様である。
【0011】
以下、本発明のエッチング液に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0012】
[過酸化水素(A)]
本発明において過酸化水素(A)(以下、成分(A)ともいう。)は、銅の酸化剤として機能する成分である。
過酸化水素(A)のグレードは特に制限はなく、工業用および電子工業用など、様々なグレードのものを使用することができる。一般的には過酸化水素水溶液として用いることが入手性および操作性の点で好ましい。
【0013】
エッチング液中の過酸化水素(A)の濃度は、エッチング液の全質量に対して5~10.5質量%の範囲であり、好ましくは6.0~10.0質量%の範囲である。過酸化水素(A)の濃度が上記範囲内にあることで、エッチング速度が良好なものとなる。また、配線材料の溶解を抑制することができる。
【0014】
[硝酸(B)]
本発明おいて硝酸(B)(以下、成分(B)ともいう。)は、過酸化水素によって酸化された銅および銅合金のエッチング剤として作用する成分である。
【0015】
エッチング液中の硝酸(B)の濃度は、0.3~6質量%の範囲であり、好ましくは0.5~5.0質量%、より好ましくは1.0~4.0質量%の範囲である。硝酸(B)の濃度が上記範囲内にあることで、エッチング速度が良好なものとなる。また、配線材料の溶解を抑制することができる。
【0016】
[含窒素5員環化合物(C)]
本発明において含窒素5員環化合物(C)(以下、成分(C)ともいう。)は、銅表面に吸着し、銅のエッチング速度の制御とニッケルや錫の腐食を低減する機能を有すると考えられる。
含窒素5員環化合物(C)は、炭素数1~6のアルキル基、アミノ基、ならびに炭素数1~6のアルキル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基を有する置換アミノ基からなる群より選択される1種以上の置換基を有していてもよい、トリアゾールおよびテトラアゾールからなる群より選択される1種以上である。含窒素5員環化合物(C)は、1種で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0017】
含窒素5員環化合物(C)としては、好ましくは、下記式(1)、式(2)または式(3):
【化1】
[式(1)~式(3)中、R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、(i)水素原子、(ii)炭素数1~6のアルキル基、(iii)アミノ基、(iv)炭素数1~6のアルキル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基を有する置換アミノ基からなる群より選択される。]
で示される化合物を挙げることができる。
【0018】
炭素数1~6のアルキル基としては、直鎖または分岐のアルキル基およびシクロアルキル基が挙げられる。直鎖または分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。シクロアルキル基としては炭素数3~6のシクロアルキル基が挙げられ、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0019】
置換アミノ基としては、炭素数1~6のアルキル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基を有するアミノ基であればよく特に制限されない。炭素数1~6のアルキル基については、上記で例示したとおりである。
【0020】
含窒素5員環化合物(C)の好ましい具体例としては、5-メチルテトラゾール、5-アミノテトラゾール、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール、およびテトラゾールを挙げることができる。これらの中でも、5-メチルテトラゾール、5-アミノテトラゾールおよび1,2,4-トリアゾールからなる群より選択される1種以上が特に好ましい。
【0021】
エッチング液中の含窒素5員環化合物(C)の濃度は、エッチング液の全質量に対して0.005~2.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.01~1.0質量%、さらに好ましくは0.05~0.5質量%の範囲である。含窒素5員環化合物(C)の濃度が上記範囲内にあることで、エッチング速度が良好なものとなる。また、配線材料の溶解を抑制することができる。
【0022】
[成分(D)]
本発明においては、成分(D)として、(d1)アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミンおよびアンモニウム塩からなる群より選択される1種以上のpH調整剤、(d2)ホスホン酸化合物、または(d3)これらの組み合わせを含む。成分(D)を含むことで、配線材料の溶解を抑制することができる。
【0023】
[成分(d1)]
成分(d1)は、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、アミンおよびアンモニウム塩からなる群より選択される1種以上のpH調整剤である。成分(d1)を含むことで、エッチング液のpHを適切な範囲に調整することができる。
本発明のエッチング液におけるpH範囲としては、特に限定されないが、0.5~3.0が好ましく、0.6~3.0がより好ましく、0.7~2.0がさらに好ましく、0.7~1.6が特に好ましく、0.7~1.3が最も好ましい。ただし、本発明のエッチング液が後述する成分(d2)を含む場合はこの限りでなく、エッチング液のpH範囲が上記範囲外であっても、配線材料の溶解を効果的に抑制することができる。
アルカリ金属水酸化物としては、アルカリ金属の水酸化物であれば特に限定されなく、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウムなどが挙げられる。
アミンとしては、アンモニアの水素原子が1から3個の有機基で置換された化合物であれば特に限定されなく、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコールアミン、1-アミノ-2-プロパノールおよびN-ヒドロキシルエチルピペラジンなどのアルカノールアミン;エチルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミン、n-ブチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、tert-ブチルアミン、n-ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、o-キシレンジアミン、m-キシリレンジアミン、1-メチルブチルアミン、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2-アミノベンジルアミン、N-ベンジルエチレンジアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンなどの水酸基を有しない有機アミンが挙げられる。
アンモニウム塩としては水溶性の4級アンモニウム塩であれば特に限定されない。例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウムまたは水酸化テトラエチルアンモニウムなどのアルカリ性の4級アンモニウム塩が挙げられる。
pH調整剤としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化セシウム、トリエチルアミン、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、エタノールアミン、1-アミノ-2-プロパノールなどが好ましく使用できる。pH調整剤は、1種で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
[成分(d2)]
成分(d2)は、ホスホン酸化合物である。前述したとおり、成分(d2)を含む場合、エッチング液のpH範囲を所定の範囲に調整しない場合でも、所期の効果を得ることができる。
ホスホン酸化合物としては、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、アミノトリ(メチレンホスホン酸)(ATP)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(EDTP)、cis-シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(cis-CDTP)、trans-シクロヘキサンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(trans-CDTP)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)(HDTP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPP)、トリエチレンテトラミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(TTHP)、トリ(2-アミノエチル)アミンヘキサ(メチレンホスホン酸)(TAEHP)、テトラエチレンペンタミンヘプタ(メチレンホスホン酸)(TPHP)、ペンタエチレンヘキサミンオクタ(メチレンホスホン酸)(PHOP)、およびこれらの塩を挙げることができる。これらの中でも、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPP)、およびそれらの塩からなる群より選択される1種以上のホスホン酸化合物が好ましく、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)およびその塩からなる群より選択される1種以上のホスホン酸化合物が特に好ましい。ホスホン酸化合物は、1種で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
成分(d2)の濃度は、エッチング液の全質量に対して0.005~1.0質量%の範囲が好ましく、より好ましくは0.075~0.5質量%、特に好ましくは0.01~0.1質量%の範囲である。
【0025】
[成分(d3)]
本発明のエッチング液は、成分(d1)および成分(d2)の組み合わせを含んでもよい。この場合、成分(d1)および成分(d2)の濃度は、それぞれ先に示した範囲に入っていればよく、また、pH範囲は先に示した範囲外であってもよい。
【0026】
[その他の成分]
本発明のエッチング液は、成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)のほか、水および必要に応じてその他のエッチング液に通常用いられる各種添加剤の1種以上を、本発明のエッチング液の効果を害しない範囲で含むことができる。
水としては、蒸留、イオン交換処理、フイルター処理、各種吸着処理などによって、金属イオンや有機不純物、パーテイクルなどが除去されたものが好ましく、純水がより好ましく、特に超純水が好ましい。
また、本発明のエッチング液には、アルコール類、尿素、フェニル尿素、有機カルボン酸類等の公知の過酸化水素安定剤、およびエッチング速度調整剤等を必要に応じて添加してもよい。
なお、本発明のエッチング液は溶解液であることが好ましく、研磨粒子等の固形粒子は含有しない。
本発明のエッチング液において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および水の合計含有量は、エッチング液の全質量に対して、70~100質量%の範囲が好ましく、より好ましくは85~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%、特に好ましくは95~100質量%である。
【0027】
[エッチング液の調製]
本発明のエッチング液は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)および水、さらには必要に応じてその他の成分を均一に攪拌することで調製することができる。これらの成分の攪拌方法は特に制限されなく、エッチング液の調製において通常用いられる撹拌方法を採用することができる。
【0028】
[エッチング液の用途]
本発明のエッチング液は、銅および銅合金のエッチングに用いることができる。特に、次世代のDRAMメモリやNANDメモリに代表されるTSV(Through Silicon Via)などのバンプを使用した半導体基板の配線形成において、配線材料として、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上と、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上とを含む場合に、これらの金属の溶解を抑制しつつ、銅および銅合金から選ばれる少なくとも1種を選択的にエッチングするためのエッチング液として好適に用いることができる。
【0029】
本発明のエッチング液の使用温度に特に制限はないが、10~50℃の温度が好ましく、より好ましくは20~45℃であり、さらに好ましくは25~40℃である。エッチング液の温度が10℃以上であれば、エッチング速度が良好となるため、優れた生産効率が得られる。一方、エッチング液の温度が50℃以下であれば、液組成変化を抑制し、エッチング条件を一定に保つことができる。エッチング液の温度を高くすることで、エッチング速度は上昇するが、エッチング液の組成変化(過酸化水素の分解)を小さく抑えることなども考慮した上で、適宜最適な処理温度を決定すればよい。
【0030】
また、エッチング処理時間に特に制限はないが、20~240秒が好ましく、30~120秒がより好ましい。処理時間は、エッチング対象物の表面の状態、エッチング液の濃度、温度および処理方法等の種々の条件により適宜選択すればよい。
【0031】
エッチング対象物にエッチング液を接触させる方法は特に制限されない。例えばエッチング液の滴下(枚葉スピン処理)またはスプレーなどの形式によりエッチング対象物に接触させる方法、またはエッチング対象物をエッチング液に浸漬させる方法などの湿式法(ウェット)エッチング方法を採用することができる。本発明においては、いずれの方法を採用してもよい。
【0032】
2.半導体基板の製造方法
本発明の半導体基板の製造方法は、
銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を含む銅シード層を表面に有する半導体基材を準備する工程;
前記銅シード層の一部を露出する開口パターンを有するレジストパターンを形成する工程;
前記レジストパターンの前記開口パターンの開口部に露出する前記銅シード層の表面にニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Aと、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Bとをこの順に配置するように形成する工程;
前記レジストパターンを除去する工程;および
前記レジストパターンを除去することで生じた、前記金属層Aおよび前記金属層Bが形成されていない前記銅シード層の露出部を、本発明のエッチング液と接触させて、前記銅シード層の露出部をエッチングする工程
を含むことを特徴とする。
【0033】
以下、本発明の半導体基板の製造方法の一例について図面を用いながら説明する。
【0034】
[基材準備工程]
基材準備工程では、銅および銅合金からなる群より選択される1種以上を含む銅シード層を表面に有する半導体基材を準備する。
図1(a)~(c)は、基材準備工程の一例を模式的に示す工程図である。
まず、
図1(a)に示すように、平面部11を有するシリコン基板10を準備する。
次に、
図1(b)に示すように、シリコン基板10の平面部11に、底面12aおよび側面12bから構成される窪み12を形成する。窪み12を形成する方法は特に制限されなく、レーザー加工法、ドリル加工法等の通常の方法を採用することができる。
次に、
図1(c)に示すように、シリコン基板10の平面部11、窪み12の底面12aおよび側面12bの表面に、銅シード層40を形成する。銅シード層40を形成する前に、任意に、シリコン酸化物層20、その上にチタン層などのバリアメタル層30を形成し、さらに銅シード層40を順に配置してもよいし、その他の層を加えてもよい。これにより、窪み12には、銅シード層40、またはシリコン酸化物層20、バリアメタル層30および銅シード層40が順に形成され、銅シード層40を底面1aおよび側面1bとする凹部1が形成される。このようにして、銅シード層40を表面に有し、かつ、凹部1が形成された半導体基材100を準備することができる。シリコン酸化物層、銅シード層およびバリアメタル層の形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、銅シード層およびバリアメタル層に関しては、スパッタ法が好ましく用いられる。
【0035】
[レジストパターン形成工程]
次に、前記工程で得られた銅シード層の一部を露出する開口パターンを有するレジストパターンを形成する。
図2は、レジストパターン形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図2に示すように、凹部1の縁から外側に向かう銅シード層40の表面の一部が露出するように銅シード層40の表面にレジスト樹脂層50を形成して、レジストパターンを形成する。レジストパターンの形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、液体レジストまたはドライフィルムレジストを用いてパターンを露光することによりレジストパターンを形成することができる。
【0036】
[金属層形成工程]
次に、前記工程で形成されたレジストパターンの開口パターンの開口部に露出する銅シード層の表面に、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Aと、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Bとをこの順に配置するように形成する。
なお、
図3は、銅めっき層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。金属層AおよびBを形成する前に、
図3に示すように、任意に、凹部1が埋まり、かつ、銅シード層40の露出部を覆うように銅めっきを行い、銅めっき層60を形成してもよい。
図4は、金属層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図4に示すように、銅めっき層60の表面に金属層A70および金属層B80をこの順に配置するように形成する。
本発明の他の実施形態においては、銅めっき層および金属層Aの配置順が逆になっていてもよく、凹部1が埋まり、かつ、銅シード層40の露出部を覆うように金属層A60を形成し、金属層A60の表面に銅めっき層70および金属層B80をこの順に配置するように形成してもよい。
また、銅めっき層を形成しなくてもよく、銅めっき層を形成しない場合、銅シード層40の露出部に金属層A70および金属層B80をこの順に配置するように形成する。なお、金属層Aおよび金属層Bは、それぞれ、一層であっても、二層以上であってもよい。また、金属層Aおよび金属層Bの間またはその前後に他の層を有していてもよい。これらの銅めっき層、金属層A、金属層B等の形成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、電解めっきが好ましく用いられる。
【0037】
[レジストパターン除去工程]
図5は、レジストパターン除去工程の一例を模式的に示す工程図である。
図5に示すように、レジスト樹脂層50を除去する。レジスト樹脂層の除去方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0038】
[エッチング工程]
図6は、エッチング工程の一例を模式的に示す工程図である。
図6に示すように、レジストパターンを除去することで生じた、金属層A70および金属層B80が形成されていない銅シード層40の露出部を、本発明のエッチング液と接触させて、前記銅シード層40の露出部をエッチングする。これにより、バリアメタル層30が露出し、銅シード層40、銅めっき層60、金属層A70および金属層B80を有するバンプ2が形成される。なお、バンプ2は、銅シード層40、金属層A60、銅めっき層70および金属層B80から構成されていてもよく、また銅めっき層を有していなくてもよい。これにより、半導体基板200を製造することができる。
【0039】
エッチング液の温度は、特に制限されないが、10~50℃の温度が好ましく、より好ましくは20~45℃であり、さらに好ましくは25~40℃である。エッチング液の温度が10℃以上であれば、エッチング速度が良好となるため、優れた生産効率が得られる。一方、エッチング液の温度が50℃以下であれば、液組成変化を抑制し、エッチング条件を一定に保つことができる。エッチング液の温度を高くすることで、エッチング速度は上昇するが、エッチング液の組成変化(過酸化水素の分解)を小さく抑えることなども考慮した上で、適宜最適な処理温度を決定すればよい。
【0040】
エッチング処理時間に特に制限されないが、20~240秒が好ましく、30~120秒がより好ましい。処理時間は、エッチング対象物の表面の状態、エッチング液の濃度、温度および処理方法等の種々の条件により適宜選択すればよい。
【0041】
[バリアメタル層除去工程]
エッチング工程の後は、必要に応じてバリアメタル層を除去する。
図7は、バリアメタル層除去工程の一例を模式的に示す工程図である。
図7に示すように、バリアメタル層30の露出部を除去することにより、バリアメタル層30、銅シード層40、銅めっき層60、金属層A70および金属層B80を有するバンプ3を形成することができる。なお、バンプ3は、バリアメタル層30、銅シード層40、金属層A60、銅めっき層70および金属層B80から構成されていてもよく、また銅めっき層を有していなくてもよい。これにより、半導体基板200を製造することができる。バリアメタル層の除去方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。
【0042】
上記のようにして、ニッケルおよびニッケル合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Aと、錫、錫合金、金および金合金からなる群より選択される1種以上を含む金属層Bとを含むバンプが形成された半導体基板を製造することができる。本発明の好ましい態様によれば、上記のようにして製造された半導体基板は、次世代のDRAMメモリやNANDメモリに代表されるTSV(Through Silicon Via)などにおいて好適に用いられる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の効果を奏する限りにおいて適宜実施形態を変更することができる。
【0044】
[実施例1~15]
容量1Lのガラスビーカーに、表1に記載の組成で、過酸化水素(A)、硝酸(B)、含窒素5員環化合物(C)、pH調整剤(d1)、ホスホン酸化合物(d2)またはこれらの組み合わせ(d3)および純水を投入し、攪拌して均一な状態としてエッチング液を調製した。なお、pH調整剤の量は、すべて混合した時に目的のpHになるように添加した。
【0045】
[比較例1~9]
表2に記載の組成を用いたことを除いて、上記実施例と同様にエッチング液を調製した。
【0046】
[評価用基板の作製]
図5の構造を有する基板を評価用基板として使用した。なお、バリアメタル層30としては、チタン層を用いた。金属層A60としては、ニッケル層を用いた。層70として銅めっき層を用いた。金属層B80としては、実施例14については金層を用い、実施例15については錫-銀合金層を用い、実施例14および15以外の実施例1から13および比較例1から9については錫層を用いた。
【0047】
(1)エッチング液のpH値の測定
実施例および比較例で調製したエッチング液のpH値を、株式会社堀場製作所のpH/IONメータ「堀場製作所製pHメータ「D-53」を用い、撹拌しているエッチング液に電極を浸漬し、25℃で測定した。pH測定装置のpH値の調整はpH4およびpH7の標準液を用いて行った。
【0048】
(2)銅シード層のエッチング処理時間および腐食の評価
評価用基板に対し、実施例および比較例で調製したエッチング液を用いてエッチング処理した。
銅シード層のエッチング時間(ジャストエッチング時間)は、評価用基板を、30℃または40℃で、撹拌速度200rpmに保ったエッチング液に浸漬して、厚み600μmの銅シード層が溶解し、チタン層が見える時間を計測して評価した。
ニッケル、錫、金および錫-銀合金の腐食評価はジャストエッチング時間の2倍の時間対象物を浸漬し、その後、純水で洗浄した後、乾燥して、後述する走査型電子顕微鏡観察により行った。
ジャストエッチング時間(秒)を以下の基準で評価した。評価基準は以下のとおりとした。EおよびGが合格である。
E:30~120秒
G:20~30秒または121~240秒
B:19秒未満または241秒超
【0049】
(3)走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)画像の観察
前記(2)で述べたエッチング処理後の評価用基板中のバンプまたは基板を株式会社日立ハイテクノロジーズ製収束イオンビーム加工装置「FB2200」を用いて切断し、得られた断面(バンプ断面)を、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の走査型電子顕微鏡「S3400N」を用いて観察倍率3000倍(加速電圧5.0kV、エミッション電流30μA)で観察し、ニッケル、錫、金および錫-銀合金に対する腐食の有無を確認した。評価基準は以下のとおりとした。Eが合格である。
E:腐食がSEMにより確認できない
(処理前後のバンプ径の減少:0.5μm未満、金属表面異常がないこと)
B:腐食がSEMにより確認できる
NE:銅シード層がエッチングされないため測定不能
WE:バンプ下の銅シード層の消失によりバンプの有無が確認できないため、測定不能
なお、表中、「-」は腐食試験を実施しなかったことを示す。
【0050】
実施例の各種評価結果を表1に、比較例の各種評価結果を表2にそれぞれ示す。なお、表中、「残部」とは、エッチング液を100質量%とした場合に必要とされる純水の含有量である。
【0051】
【0052】
【0053】
表1に示すとおり、実施例1~15のエッチング液ではいずれも、ニッケル、錫、金および錫-銀合金の腐食を抑制しつつ、銅を選択的にエッチングすることが確認できた。
一方、表2に示すとおり、成分(A)の組成比が本発明に規定する範囲を外れる場合、ニッケルおよび錫のいずれかの腐食が生じた(比較例1、2)。また、成分(B)の組成比が本発明に規定する範囲を外れる場合、あるいは、成分(B)を含有しない場合、銅シード層のエッチングは進行しなかった(比較例3、4および5)。
成分(B)の硝酸に替えて硫酸を用いた場合、銅シード層のエッチングは進行したが、ニッケルが腐食することがわかった(比較例6)。また、成分(D)を含有しない場合、錫が腐食することがわかった(比較例7)。
成分(C)の含窒素5員環化合物を用いなかった場合、ニッケルおよび錫の腐食が生じたり(比較例8)、銅シード層のエッチングが進行せず、また、バンプの一部または全部が倒壊した(比較例9)。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のエッチング液は、バンプを使用した半導体基板の配線形成において好適に用いることができる。本発明の好ましい態様によれば、ニッケル、ニッケル合金、錫、錫合金、金および金合金を含む配線材料の溶解を抑制しつつ、銅および銅合金を選択的にエッチングすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 凹部
1a 凹部の底面
1b 凹部の側面
2、3 バンプ
10 シリコン基板
11 平面部
12 窪み
12a 窪みの底面
12b 窪みの側面
20 シリコン酸化物層
30 バリアメタル層
40 銅シード層
50 レジスト樹脂層
60 銅めっき層または金属層A
70 金属層Aまたは銅めっき層
80 金属層B
100 半導体基材
200 半導体基板