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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/00 20180101AFI20231017BHJP
【FI】
G16H20/00
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021552055
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(86)【国際出願番号】 JP2019040833
(87)【国際公開番号】W WO2021075018
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(74)【代理人】
【識別番号】100097157
【弁理士】
【氏名又は名称】桂木 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100187724
【弁理士】
【氏名又は名称】唐鎌 睦
(72)【発明者】
【氏名】小阪 勇気
(72)【発明者】
【氏名】久保 雅洋
(72)【発明者】
【氏名】細井 利憲
【審査官】玉木 宏治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-172633(JP,A)
【文献】特開2019-024579(JP,A)
【文献】特開2009-244916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 50/22
G16H 10/00-80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出し、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力し、
前記情報処理端末に表示出力された前記予定メニューに対する前記実施者からの修正の指示に応じて、前記予定メニューを修正した修正メニューを前記情報処理端末に表示出力すると共に、当該修正メニューを前記対象者が実行したリハビリテーションの実行メニューとして記録し、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の情報を含む前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて、前記対象者情報から前記予定メニューを算出するためのモデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【請求項2】
請求項に記載の情報処理方法であって、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じて前記モデルが異なるよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の情報処理方法であって、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者のリハビリテーションを実施することに対する経験度合いに応じた前記予定メニューを算出するモデルを生成するよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の情報処理方法であって、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じた重みを付与した前記実行メニューと前記対象者情報との組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の情報処理方法であって、
修正された前記予定メニューを含む前記学習データを用いて、当該修正された前記予定メニューが算出される頻度が減少するよう前記モデルを生成する、
情報処理方法。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかに記載の情報処理方法であって、
FIM(Functional Independence Measure)に設定された複数の項目のそれぞれにおける対象者の所定時点の評価を表す評価値を含む前記対象者情報に基づいて、当該対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出する、
情報処理方法。
【請求項7】
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出する算出部と、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力するよう制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記情報処理端末に表示出力された前記予定メニューに対する前記実施者からの修正の指示に応じて、前記予定メニューを修正した修正メニューを前記情報処理端末に表示出力するよう制御すると共に、当該修正メニューを前記対象者が実行したリハビリテーションの実行メニューとして記録するよう制御し、
さらに、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて、前記対象者情報から前記予定メニューを算出するためのモデルを修正するよう学習する学習部を備え、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の情報を含む前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理装置。
【請求項8】
請求項に記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じて前記モデルが異なるよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理装置。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者のリハビリテーションを実施することに対する経験度合いに応じた前記予定メニューを算出するモデルを生成するよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理装置。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じた重みを付与した前記実行メニューと前記対象者情報との組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理装置。
【請求項11】
請求項7乃至10のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、修正された前記予定メニューを含む前記学習データを用いて、当該修正された前記予定メニューが算出される頻度が減少するよう前記モデルを生成する、
情報処理装置。
【請求項12】
情報処理装置に、
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出し、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力し、
前記情報処理端末に表示出力された前記予定メニューに対する前記実施者からの修正の指示に応じて、前記予定メニューを修正した修正メニューを前記情報処理端末に表示出力すると共に、当該修正メニューを前記対象者が実行したリハビリテーションの実行メニューとして記録し、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の情報を含む前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて、前記対象者情報から前記予定メニューを算出するためのモデルを修正するよう学習する、
処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、情報処理装置、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
怪我や病気、老齢などにより、日常生活における動作や認知の機能が低下してしまうことがある。そのような場合、日常生活における動作や認知の機能回復のために、リハビリテーション施設においてリハビリテーションが行われる。そして、リハビリテーション施設では、リハビリテーションを行う患者の日常生活動作に関わる運動/認知機能の状態を把握する必要があり、そのような患者の状態を測る指標の一例として、FIM(Functional Independence Measure:日常生活動作に関わる運動/認知機能を測るための指標)が用いられる。例えば、特許文献1に示すように、FIMは、13種類の運動項目と5種類の認知項目といった全18項目で構成されており、各項目を4段階あるいは7段階の介助が必要な度合いで評価することとしている。
【0003】
そして、リハビリテーション施設では、患者のリハビリテーションを効果的に行うために、患者の状況に応じてリハビリテーションのメニューを決定する。このとき、患者のリハビリテーションのメニューは、患者が過去に行ってきたリハビリテーションの内容やFIMの各項目の評価値、患者の特性、などの患者データに応じて決定される。特に近年では、迅速かつ効果的なリハビリテーションを行うことができるよう、過去の患者データを用いて学習したモデルを用いて、自動的にリハビリテーションのメニューの候補を提示し、その候補を参考にして決定することが考えられている。患者個別の状態に最適なリハビリテーションのメニューを多数のメニューの種類の中から選ぶことには時間がかかるが、学習モデルを用いてメニューの候補を絞ることで、短時間で最適なリハビリテーションのメニューを決定することができる効果がある。
【0004】
一方で、上述したように、自動的にリハビリテーションのメニューの候補を提示して、その候補を参考にする場合には、必ずしも患者にとって効果的ではないメニューが提示されることもある。このような場合には、セラピストが、患者個別の状態に最適なリハビリテーションのメニューを多数のメニューの種類の中から選ぶこととなり、上述した学習モデルを用いることの効果がないといえる。
【0005】
ここで、上記のように学習モデルを用いることの効果がない場合には、さらにモデルの追加学習を行う必要がある。この場合、セラピストは、例えば、モデルを用いた候補の中に患者に最適なリハビリテーションメニューがなかったことと、実際に選んだリハビリテーションメニューは何であったか(患者にとって最適なリハビリテーションメニューは何であったか)、ということをシステムに入力して、モデルの追加学習を行う。これにより、追加学習したモデルを用いて、次回、同じような患者に対しては、患者にとってより好適なリハビリテーションのメニューの候補を出力することができる。
【0006】
より具体的に、患者にとってより好適なリハビリテーションのメニューの候補を出力するタイミングは、セラピストが患者のリハビリテーションメニューを決めるときである。そのため、セラピストが患者のリハビリテーションメニューを決める都度、モデルを用いた候補の中に、患者に最適なリハビリメニューがあることが望ましい。一方で、セラピストが患者のリハビリテーションメニューを決めるときに、モデルを用いた候補の中に患者に最適なリハビリメニューが無かった場合は、最適なリハビリメニューがなかったことと、実際に選んだリハビリテーションメニューは何であったのか、という情報が欲しい。もしその情報がなければ、セラピストが次回、患者のリハビリテーションメニューを決めるときにも、患者に最適なリハビリメニューがない可能性が高く、モデルによりリハビリメニューの候補を提示するメリットが薄れる。
【0007】
一例として、患者は、通常、1日に3回リハビリテーションの時間が設けられる。そのため、同じ患者に対して、1日に、少なくとも3回は、モデルを用いてリハビリテーションメニューの候補を提示する機会がある。そのため、1回目のリハビリテーションの時間で、モデルが出力した候補の中に患者に最適なリハビリメニューが無ければ、2回目のリハビリテーションの時間でも、同じように患者に最適なリハビリメニューがない可能性が高い。そのため、モデルには、1回目のリハビリテーションの時間でモデルが出力した候補の中に、患者に最適なリハビリメニューがないことを、2回目のリハビリテーションの時間の前に入力することが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-027476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の理由から、セラピストがリハビリテーションに関する情報の入力を行う必要があるが、セラピストが多忙である場合には、かかる情報の入力を依頼しても、それを実施することが難しい。
【0010】
このため、本発明の目的は、上述した課題である、セラピストによるリハビリテーションに関する情報の入力が実施されない、ことを解決することができる、情報処理方法、情報処理装置、プログラムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一形態である情報処理方法は、
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出し、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力する、
という構成をとる。
【0012】
また、本発明の一形態である情報処理装置は、
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出する算出部と、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力するよう制御する制御部と、
を備えた、
という構成をとる。
【0013】
また、本発明の一形態であるプログラムは、
情報処理装置に、
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出する算出部と、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力するよう制御する制御部と、
を実現させる、
という構成をとる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、以上のように構成されることにより、リハビリテーションの実施者によるリハビリテーションに関する情報の入力を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】FIMを説明するための図である。
図2】本発明における情報処理システムの全体構成を示す図である。
図3図1に開示したデータ管理装置の構成を示すブロック図である。
図4図1に開示した情報処理端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
図5図1に開示した情報処理端末に表示される表示画面の一例を示す図である。
図6図1に開示した情報処理システムの動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態2における情報処理装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図8】本発明の実施形態2における情報処理装置の構成を示すブロック図である。
図9】本発明の実施形態2における情報処理装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態1>
本発明の第1の実施形態を、図1乃至図6を参照して説明する。図1乃至図5は、情報処理システムの構成を説明するための図であり、図6は、情報処理システムの処理動作を説明するための図である。
【0017】
[構成]
本実施形態における情報処理システムは、怪我や病気、老齢などにより、日常生活動作に関わる運動や認知の機能が低下してしまった患者(対象者)に対して、セラピストが、日常生活における運動/認知の機能回復のためにリハビリテーション施設においてリハビリテーションを実施する場合に、かかる患者が行ったリハビリテーションの内容をセラピストが記録するために用いられる。
【0018】
そして、上述したセラピストは、患者のリハビリテーションの内容を表すメニューを決定する。例えば、セラピストは、電子カルテに記憶されている患者データ、例えば、上述した「性別」、「年齢層」、「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」、「病名」、「麻痺状態」、「入院時やリハビリテーション実施後といった各時点におけるFIM(Functional Independence Measure)の各項目の評価値」、「リハビリテーションの実施履歴(実施日、実施時間、メニューなど)」、を参照して、セラピスト自身が担当するFIMの各項目の機能を改善するためのリハビリテーションのメニューを決定する。リハビリテーションのメニューは、例えば、「訓練内容」と「部位」との情報を含む。「訓練内容」の例としては、「筋力トレーニング」、「関節可動域訓練」、「歩行訓練」、「装具を使った訓練」、「作業療法」、「調理訓練」、「生活訓練」などがある。また、「部位」の例としては、「なし」、「右足」、「左足」、「右腕」、「左腕」、「全身」などがある。
【0019】
ここで、患者の日常生活動作に関わる運動/認知の機能を測るための指標であるFIMについて、図1を参照して説明する。図1に示すように、FIMは、患者の「運動機能」を評価する13種類の運動項目と、患者の「認知機能」を評価する5種類の認知項目といった、全18項目で構成されている。具体的に、FIMは、上記運動項目として、患者の「セルフケア」カテゴリの動作機能を評価する項目である「食事」、「整容」、「清拭」、「更衣(上半身)」、「更衣(下半身)」、「トイレ動作」、患者の「排泄」カテゴリの動作機能を評価する項目である「排尿コントロール」、「排便コントロール」、患者の「移乗」カテゴリの動作機能を評価する項目である「ベッド・椅子・車椅子」、「トイレ」、「浴槽・シャワー」、患者の「移動」カテゴリの動作機能を評価する項目である「歩行・車椅子」、「階段」、といった項目を含む。また、FIMは、上記認知項目として、患者の「コミュニケーション」カテゴリの機能を評価する項目である「理解(聴覚・視覚)」、「表出(音声・非音声)」、患者の「社会認識」カテゴリの機能を評価する項目である「社会的交流」、「問題解決」、「記憶」、といった項目を含む。
【0020】
そして、FIMでは、上述した各項目について、患者が必要とする介助の度合いを4段階あるいは7段階で評価する。例えば、図1の右上欄に示すように、各項目について、「L1:完全介助」、「L2:介助あり」、「L3:部分介助」、「L4:自立」というように4段階の度合いで評価する場合がある。また、例えば、各項目について、「1点:全介助」、「2点:最大介助」、「3点:中等度介助」、「4点:最小介助」、「5点:監視」、「6点:修正自立」、「7点:完全自立」というように7段階の度合いを点数で評価する場合もある。このように7段階の点数で評価する場合には、点数を、項目ごと、カテゴリごと、機能ごとにそれぞれ集計して、患者を評価してもよい。
【0021】
なお、上述したFIMの各項目の評価は、通常は、患者のリハビリテーションを実施する専門家であるセラピスト(実施者)によって行われる。例えば、セラピストは、「作業療法士(OP)」、「理学療法士(PT)」、「言語聴覚療法士(ST)」、である。但し、セラピストは、上述した者であることに限定されない。
【0022】
上記FIMの各項目の評価値は、上述したセラピストによってデータ管理装置10に入力され、患者データ(対象者情報)として記憶される。例えば、データ管理装置10は、患者ごとの患者データを電子カルテとして記憶している。電子カルテには、患者データとして、例えば、「性別」、「年齢層」、「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」、「病名」、「麻痺状態」、「入院時やリハビリテーション実施後といった各時点におけるFIMの各項目の評価値」、「リハビリテーションの実施履歴(実施日、実施時間、メニューなど)」といった情報が記憶されている。但し、患者データは、必ずしも上述した内容の情報を含むことに限定されず、上述した情報のうちの一部のみを含んでいてもよく、あるいは、他の情報が含まれていてもよい。
【0023】
そして、本実施形態では、データ管理装置10は、患者データを用いて、患者が行う予定のリハビリテーションの内容を表す予定メニューを算出すると共に、予定メニューに対して実際に実施したリハビリテーションのメニューの入力をセラピストに対して促すことを実現すべく、以下のように構成されている。
【0024】
まず、データ管理装置10は、演算装置と記憶装置とを備えた1台又は複数台の情報処理装置にて構成される。そして、データ管理装置10には、図2に示すように、患者Uに対してリハビリテーションを実施するセラピストTが操作する情報処理端末20が無線通信を介して接続されている。なお、情報処理端末20は、例えば、タッチパネル式ディスプレイを備えたタブレット端末、スマートフォンや、所定のデスクに設置されたパーソナルコンピュータなどの情報処理装置で構成されており、その種類は特に限定されない。そして、情報処理端末20であるタブレット端末やスマートフォンは、セラピストがリハビリテーションを実施するなどの業務中に携帯して持ち歩くものであってもよい。
【0025】
そして、データ管理装置10は、図3に示すように、演算装置がプログラムを実行することで構築された、学習部11、予測部12、制御部13、を備える。また、データ管理装置10は、記憶装置に形成された、データ記憶部14、モデル記憶部15、を備える。以下、各構成について詳述する。
【0026】
上記データ記憶部14は、患者U毎の電子カルテを記憶しており、上述したような患者データを記憶している。つまり、データ記憶部14は、各患者Uの「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」と、「各時点におけるFIMの各項目の評価値」、「リハビリテーションの実施履歴(実施日、実施時間、メニューなど)」といった「リハビリテーション情報」と、を記憶している。なお、データ記憶部14は、後述するように、患者が実施する予定であり、モデルを用いて算出したリハビリテーションの予定メニューを、電子カルテとは別の記憶領域に記憶する。
【0027】
なお、データ記憶部14は、患者Uに対してリハビリテーションを実施する各セラピストの情報であるセラピスト情報を記憶している。ここで、セラピスト情報は、例えば、セラピストを識別する識別情報と、セラピストの属性を表す属性情報と、を含む。そして、セラピストの属性情報は、例えば、セラピストとしての経験度合いを表す情報であり、一例として、経験度合いが高い順に「熟練者」、「通常」、「新人」という属性を表す情報からなる。但し、セラピストの属性情報は、経験度合い以外の属性を表す情報が含まれてもよい。また、経験度合いは、上述した例とは異なる形式で表されてもよい。
【0028】
上記モデル記憶部15は、患者データから、患者が行う予定のリハビリテーションの内容を表す予定メニューを算出するモデルを記憶している。モデルは、後述するように、データ記憶部14に記憶されている患者データを学習データとして用いて、学習部11にて機械学習を行うことで作成される。但し、モデルは、必ずしも学習部11で作成されることに限定されず、他の装置や他の方法で作成されたものであってもよい。
【0029】
上記学習部11は、既存の患者データを学習データとして用いて、機械学習を行うことで、患者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出するモデルを作成する。例えば、学習部11は、患者データ内の「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」や、「入院時や所定時点におけるFIMの各項目の評価値」、「過去のリハビリテーションの実施履歴」などの「リハビリテーション情報」を入力値(説明変数)とし、かかる患者の状態に応じてその後にセラピストにより実際に計画され患者が実行したリハビリテーションの内容を表す「実行メニュー」を出力値(目的変数)とするようなモデルを、機械学習による生成する。これにより、生成されたモデルは、患者データを入力値として、患者が実行する予定のリハビリテーションの予定メニューを出力するよう構成される。
【0030】
以下、本実施の形態における学習部11における、患者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出するモデルについて詳細を説明する。本実施形態では、学習部11は、過去患者それぞれについて、患者データ内の「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」、「入院時におけるFIMの各項目の評価値」、「所定時点のFIMの各項目の評価値」、「所定時点の前に、患者に実施されたリハビリテーションメニューの履歴」などの患者の所定時点での「リハビリテーション情報」と、その所定時点に実施されたリハビリテーションメニューのペアの情報を用いて、どのような「リハビリテーション情報」の場合に、どのリハビリテーションメニューが実施されていたかを表す発生確率を学習する。すなわち、学習部11は、条件付き確率を計算する。本実施の形態では、具体的には、確率モデルには、一例としてナイーブベイズを用いる。
【0031】
学習部11は、各リハビリテーションメニューについて以下の式を計算して、条件付き確率P(Y|X)を算出できるようにするために、モデルとして、P(X|Y)とP(Y)を学習する。
【0032】
【数1】
【0033】
ここで、Xは、患者のM次元(ただしMは1以上の整数)のリハビリテーション情報を示し、特にXは、所定の患者UのM次元のリハビリテーション情報を示す。また、患者のM次元のリハビリテーション情報のそれぞれをX_(1≦i≦M)とし、特に、所定の患者UのM次元のリハビリテーション情報のそれぞれをX_とする。また、Yは、n(1≦n≦N)番目のリハビリテーションメニューを表わす。P(Y|X)は、患者のリハビリテーション情報としてXが得られたという条件のもとでのリハビリテーションメニューYの発生確率を示す条件付き確率である。ここで、リハビリテーションメニューは全部でN種類存在するものとする。そして、Yは、n種類目のリハビリテーションメニューを表す。P(X|Y)は、リハビリメニューYが得られたという条件のもとでの、所定の患者Uのリハビリテーション情報Xの発生確率を示す条件付き確率である。P(X_|Y)は、所定の患者UのリハビリテーションメニューYが得られたという条件のもとでの所定の患者Uのリハビリテーション情報X_の発生確率を示す条件付き確率である。P(Y)は、所定の患者UのリハビリテーションメニューYの発生確率である。
【0034】
また、学習部11は、後述するように患者Uのリハビリテーションが実施され、かかるリハビリテーションの実際の実行メニューが入力される毎に、かかる実際の実行メニューを含む患者データを学習データとして用いて、モデルを修正するよう学習する機能も有する。なお、学習部11によるモデルを修正する機能については後述する。
【0035】
上記予測部12は、モデル記憶部15に記憶されたモデルを用いて、所定の患者Uについて、実行する予定のリハビリテーションの予定メニューを算出する。例えば、予測部12は、モデルに対して、リハビリテーションを実施する予定の患者Uの患者データのうち、「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」や、「入院時や所定時点におけるFIMの各項目の評価値」、「過去のリハビリテーションの実施履歴」などの「リハビリテーション情報」を入力し、当該モデルからの出力値を、実行する予定のリハビリテーションの予定メニューとする。なお、予測部12は、上述した患者データのうち一部のみをモデルに入力して、予定メニューを算出するモデルを作成してもよい。また、予測部12は、必ずしも上述したようなモデルを用いて予定メニューを算出することに限定されず、他の方法で予定メニューを算出してもよい。
【0036】
具体的には、予測部12は、例えば、所定の患者Uのリハビリテーション情報Xと、
モデル記憶部15に記憶されたモデルを用いて、P(X_|Y)及びP(Y)を算出する。そして、候補となる全てのリハビリテーションメニューについて、各リハビリテーションについて、条件付き確率P(Y|X)を算出する。ここで、リハビリテーションメニューは全部でN種類存在するものとする。そして、条件付き確率P(Y|X)が大きいほど、所定の患者Uに対して適切なリハビリテーションメニューであるとして、それを予定メニューとする。
【0037】
上記制御部13は、予測部12で予測した予定メニューを、患者Uの電子カルテ上に表示するよう設定する。但し、制御部13は、予定メニューを電子カルテ上に記録せず、データ記憶部14内の電子カルテとは別の記憶領域に記憶しておき、予定メニューを電子カルテ上に表示させる制御を行う。そして、制御部13は、患者Uの電子カルテ上に設定された予定メニューを、セラピストTが操作する情報処理端末20のディスプレイに表示するよう出力する。例えば、制御部13は、セラピストTが所定の患者Uのリハビリテーションを行う前に、情報処理端末20を介して所定の患者Uのデータが要求された場合に、当該情報処理端末20に対して患者Uが実行するリハビリテーションの予定メニューを表示するよう出力する。一例として、制御部13は、図4に示すように、情報処理端末20のディスプレイに、リハビリテーションの「実施プログラム」として、「実施時間」、「単位数」と共に、「予定メニュー」を表す「訓練内容」及び「部位」、を表示する。なお、図4の例では、「予定メニュー」として、「訓練内容:歩行訓練」、「部位:右足」というように表示する。
【0038】
また、制御部13は、情報処理端末20に対して、当該情報処理端末20上でセラピストTが予定メニュー(訓練内容、部位)を修正可能なよう表示出力する。つまり、制御部13は、タブレット端末やパーソナルコンピュータといった情報処理端末20の表示画面に、予定メニューを表示させるように当該予定メニューの出力を行う。具体的に、情報処理端末20は、表示されている予定メニューに対してセラピストTから修正の指示が入力されると、かかる修正の指示に応じて予定メニューを修正メニューに修正し、かかる修正メニューをデータ管理装置10の制御部13に通知する。これを受けて、制御部13は、患者Uの電子カルテ上に設定された予定メニューを修正メニューに修正する。つまり、制御部13は、予定メニューを修正した修正メニューをデータ記憶部14に記憶し、電子カルテ上の予定メニューの表示を修正メニューに修正する。なお、図4に示すように、情報処理端末20のタッチパネル式ディスプレイに予定メニュー(訓練内容、部位)を表示した場合には、セラピストTが予定メニューの表示箇所(訓練内容:歩行訓練、部位:右足)をタップすることで、変更可能な他のメニュー(訓練内容、部位)が選択可能なよう表示され、セラピストTがいずれのメニュー(訓練内容、部位)をタップして選択することで、選択されたメニューが、予定メニューに代わって修正メニューとして入力される。
【0039】
なお、制御部13は、予定メニューを、別の方法で修正可能なよう情報処理端末20に表示出力してもよい。例えば、図5に示すように、情報処理端末20のタッチパネル式ディスプレイに予定メニュー(訓練内容、部位)を表示した場合には、セラピストTが予定メニューの表示箇所(訓練内容:歩行訓練、部位:右足)の下に表示される「訂正」ボタンをタップすることで、変更可能な他のメニュー(訓練内容、部位)が選択可能なよう表示され、セラピストTがいずれのメニュー(訓練内容、部位)をタップして選択することで、選択されたメニューが、予定メニューに代わって修正メニューとして入力される。
【0040】
なお、制御部13は、データ管理装置10や他の情報処理装置に、上述した患者Uの予定メニューを表示してもよい。この場合も、上述同様に、データ管理装置10等のディスプレイに、予定メニューを修正可能なよう表示出力する。
【0041】
また、制御部13は、情報処理端末20やデータ管理装置10に対して、セラピストTから実施するリハビリテーションのメニューを確定する旨の操作入力があったときに、現在表示されているメニューの内容を、実際に実行する実行メニューとして確定し、電子カルテに記録する。このとき、予定メニューが修正されない場合には、かかる予定メニューが実行メニューとなり、予定メニューが修正メニューに修正された場合には、かかる修正メニューが実行メニューとなる。なお、セラピストTは、例えば、図4図5に示すような「確定」ボタンを押すことで、メニューを確定する旨の操作入力を行う。
【0042】
なお、制御部13は、はじめに電子カルテ上に設定された「予定メニュー」が「修正メニュー」に修正されて、「実行メニュー」として記録された際には、これら「予定メニュー」、「実行メニュー」、「修正を行ったセラピストの識別情報」を関連付けて、データ記憶部14に修正履歴として記録しておく。
【0043】
ここで、上述した学習部11についてさらに説明する。学習部11は、上述したように入力された実行メニューに基づいて、モデルを修正するようさらに機械学習を行う。具体的に、学習部11は、まず、上述したようにセラピストTから予定メニューが修正メニューに修正された実行メニューとして確定された場合に、その患者データを学習データに加えて、モデルの再学習を行う。
【0044】
このとき、学習部11は、上述同様に、過去患者それぞれについて、患者データ内の「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」、「入院時におけるFIMの各項目の評価値」、「所定時点のFIMの各項目の評価値」、「所定時点の前に、患者に実施されたリハビリテーションメニューの履歴」などの患者の所定時点での「リハビリテーション情報」と、その所定時点に実施されたリハビリテーションメニューのペアの情報を第一の情報とする。そして、セラピストTによって修正された実行メニューを実施した患者Uに関する、患者データ内の「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」と、患者Uの「入院時におけるFIMの各項目の評価値」と、「セラピストTから予定メニューが修正メニューに修正された実行メニューを実施した時点の前のFIMの各項目の評価値」、「セラピストTによって修正された実行メニューを実施した時点の前に、患者に実施されたリハビリテーションメニューの履歴」の「リハビリテーション情報」と、「セラピストTによって修正された実行メニュー」とをペアの情報として、セラピストTが患者Uに実施したリハビリテーションメニューのペアの情報を第二の情報とする。そして、第一の情報に加えて、第二の情報も用いて、どのような「リハビリテーション情報」の場合に、どのリハビリテーションメニューが実施されていたかを表す発生確率を再度学習することで、モデルを修正する。すなわち、学習部11は、条件付き確率を再度計算しなおす。
【0045】
なお、学習部11は、予定メニューを実行メニューに修正したセラピストTの属性に応じて、学習データに重みを付けてモデルを修正するよう機械学習を行ってもよい。例えば、上述したように、セラピストTの属性情報がセラピストとしての経験度合いを表す情報であり、経験度合いが高い順に「熟練者」、「通常」、「新人」という属性が設定されていることとする。なお、セラピストTの経験度合いが高いほど、そのセラピストは信頼度が高い、といえる。そして、この場合、経験度合いが高いほど、そのセラピストが修正した「実行メニュー」を含む第二の情報の個数を、重み倍にして増やして、モデルの修正を行う。個数を増やすことで、修正されるモデルは、セラピストが修正した「実行メニュー」の発生確率が高くなる効果がある。そのため、例えば、「熟練者」の場合は、重みが3.0、「通常」の場合は重みが2.0、「新人」の場合は重みが1.0、などと設定される。つまり、「熟練者」のセラピストが修正した「実行メニュー」を含む第二の情報の個数は、1個であるが、これを1個から3個に増やして、モデルの修正を行う。1個から3個に個数を増やすことで、修正されるモデルは、「熟練者」セラピストが修正した「実行メニュー」の発生確率がより高くなるようにする効果がある。
【0046】
これにより、経験度合いが高いセラピストの知見がより反映されたモデルが生成されることとなり、つまり、経験度合いが高いセラピストが修正した実行メニューが予定メニューとして出現する頻度が高くなるようなモデルが生成されることとなる。
【0047】
また、学習部11は、セラピストT毎にそれぞれ、予定メニューを算出するモデルを生成してもよい。この場合、学習部11は、セラピストT毎に予定メニューを修正した実行メニューを含む患者データを抽出して学習データとして用いて、セラピストT毎のモデルを生成する機械学習を行う。これにより、セラピストT毎のリハビリテーションの方針が反映されたモデルが生成されることとなる。
【0048】
また、学習部11は、実行メニューに修正された予定メニューを含む患者データを学習データとして用いて、かかる修正された予定メニューが出力値として算出される頻度が減少するようモデルを生成してもよい。例えば、修正された予定メニューをストップワードとして出力されないよう学習したり、修正された予定メニューの重みを0に設定して学習してもよい。このとき、上述したようにセラピストの属性を反映してもよい。例えば、セラピストの経験度合いが高いほど、かかるセラピストが修正した予定メニューの重みが低くなるよう設定し、学習してもよい。
【0049】
以上のように、学習部11は、セラピストの属性を表す経験度合いが高いほど、学習データの数を増加させてもよく、修正された予定メニューを含む学習データは数を減少させ、修正された実行メニューを含む学習データは数を増加させて、学習してもよい。
【0050】
また、学習部11は、リハビリテーションを行うセラピストの属性に応じた予定メニューを算出するようモデルを生成してもよい。この場合、まず「予定メニュー」を構成する「訓練内容」や「部位」に、それぞれ「セラピストの属性」を関連付けておく。例えば、セラピストの経験度合いが高いほど、リハビリテーションのリスクが高くなるものの効果が高くなるメニューを関連付け、経験度合いが低いほどリハビリテーションの効果が低いもののリスクが低くなるメニューを関連付けておく。そして、学習部11は、患者のリハビリテーションを実施する「セラピストの識別情報」を含む入力値に対して、その「セラピストの属性」に対応した「訓練内容」や「部位」を含む「予定メニュー」を出力値とするようなモデルを生成する。このようにすることで、セラピストの経験度合いに応じた予定メニューを算出するモデルが生成されることとなる。
【0051】
ここで、上記リスクとは、患者がリハビリテーションを実施する際に怪我をするリスクや、リハビリテーションによって機能が低下するリスクのことを表す。そのため、経験度合いが低いセラピストが、リハビリテーションの効果が高くなるもののリスクも高くなるメニューを実施すると、リハビリテーション実施のリスクが高まるため、それを避けるべきである。そのため、セラピストの経験度合いに応じて、予定メニューを出力することが重要である。
【0052】
[動作]
次に、上述した情報処理システムを構成するデータ管理装置10及び情報処理端末20の動作を、図6のフローチャートを参照して説明する。まず、データ管理装置10は、リハビリテーションを実施する予定の患者Uの患者データを取得する(ステップS1)。そして、データ管理装置10は、かかる患者Uが実行する予定のリハビリテーションの内容を表す予定メニューを、取得した患者データに基づいて算出する(ステップS2)。例えば、データ管理装置10は、事前に作成されモデル記憶部15に記憶されているモデルに対して、患者Uの患者データのうち、「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」や、「入院時や所定時点におけるFIMの各項目の評価値」、「リハビリテーションの実施履歴」などの「リハビリテーション情報」を入力し、当該モデルにて算出された出力値を、リハビリテーションで実行する予定の予定メニューとする。
【0053】
なお、データ管理装置10は、事前に多くの患者Uの患者データを学習用データとして取得して、かかる患者データ内の「性別」、「年齢層」、「意識レベル」、「病名」、「麻痺状態」といった「基本情報」や、「入院時や所定時点におけるFIMの各項目の評価値」、「リハビリテーションの実施履歴」などの「リハビリテーション情報」を入力値(説明変数)とし、実際に実行したリハビリテーションの内容を表す「実行メニュー」を出力値(目的変数)とするようなモデルを、機械学習による生成しておいてもよい。
【0054】
続いて、データ管理装置10は、上述したように算出した予定メニューを、患者Uが実行する予定のリハビリテーションの予定メニューとして、電子カルテ上に表示するよう設定する。そして、データ管理装置10は、患者Uの電子カルテに設定された予定メニューを、患者Uのリハビリテーションを実施するセラピストTが操作する情報処理端末20のディスプレイに表示するよう出力する(ステップS3)。これにより、セラピストTが操作する情報処理端末20のディスプレイには、例えば図4図5に示すように、患者Uが実行する予定の予定メニューが表示される。なお、予定メニューを情報処理端末20に表示出力するタイミングとしては、例えば、リハビリテーションの予定開始時刻の直前、リハビリテーションの予定終了時刻直前、リハビリテーションの予定終了時刻になった直後、さらには、セラピストTから要求があったとき、などが考えられる。ただし、予定メニューを表示するタイミングは、これらに限定されない。
【0055】
その後、セラピストTは、情報処理端末20に表示されている患者Uが実行する予定のリハビリテーションの予定メニューを確認し、必要に応じて患者Uの他の情報である患者データを閲覧し、セラピストTによる知識や経験に基づいて、実際に実行するリハビリテーションのメニューを決定する。そして、セラピストTは、情報処理端末20に表示されている予定メニューが決定したメニューと異なる場合には、情報処理端末20を操作して、表示されている予定メニューを決定したメニューである修正メニューに修正する。すると、情報処理端末20は、予定メニューに代わって修正メニューを表示出力する(ステップS4)。
【0056】
そして、セラピストTが情報処理端末20に表示されている予定メニューの修正が完了し、例えば、情報処理端末20に表示されている「確定」ボタンが押されるなどの確定処理が行われると、修正された情報が情報処理端末20からデータ管理装置10に通知される。データ管理装置10は、情報処理端末20から通知を受けると、入力されているメニューを、実際に実行するリハビリテーションの実行メニューとして確定し、電子カルテに記録する(ステップS5)。このとき、データ管理装置10は、修正される前の「予定メニュー」、修正後の「実行メニュー」、修正を行った「セラピストの識別情報」を、データ記憶部14に修正履歴として記録しておく。
【0057】
その後、データ管理装置10は、上述したようにセラピストTによって修正され、電子カルテに記録された実行メニューを含む学習データを用いて、モデルを修正するようさらに機械学習を行う(ステップS6)。このとき、データ管理装置10は、メニューを修正したセラピストの属性に応じて学習データの重みを変えたり、修正された予定メニューの重みを低下させるなどして、より適切なモデルに修正することができる。なお、修正されたモデルは、後に患者Uが実行する予定のリハビリテーションの予定メニューを算出する際に利用される。
【0058】
以上のように、本実施形態によると、セラピストTが操作する情報処理端末20やデータ管理装置10に、患者Uが実行する予定のリハビリテーションの予定メニューを表示し、かかる予定メニューを修正可能なようにしている。これにより、セラピストTによるリハビリテーションのメニューの確認や修正を行うことの動機付けとなり、セラピストTに対して、リハビリテーションのメニューの確認や修正を促すことができ、確認漏れを抑制することができ、実際に実施したメニューの入力を促すことができる。その結果、セラピストTによって患者Uが実行するリハビリテーションのメニューが適宜記録されることとなり、かかる記録を参照することで、患者Uに対する適切なリハビリテーションのメニューの候補を出力することができる。
【0059】
また、セラピストの属性や修正された予定メニューに応じて学習データの重みを変更して、予定メニューを算出するモデルを修正することで、修正したモデルによる予定メニューの算出精度の向上を図ることができる。さらには、セラピスト毎に予定メニューを算出するモデルを作成することもでき、セラピストに適したモデルを作成することができる。
【0060】
また、上記では、FIMに設定されている項目を改善するようなリハビリテーションのメニューが算出されている。しかしながら、上述したデータ管理装置10やその他の装置を用いて、人体の状態を評価するような他の指標に設定された項目を改善するようなリハビリテーションのメニューを算出してもよい。例えば、身辺動作と移動動作の2つの観点から設定された全10項目を自立度に従って評価する「バーセルインデックス(Barthel Index)」といった日常生活動作を評価する指標があるが、かかる指標の項目の値の改善を目的としたリハビリテーションのメニューを算出するモデルを生成し、かかるモデルを用いて予定メニューを算出してもよい。
【0061】
<実施形態2>
次に、本発明の第2の実施形態を、図7乃至図9を参照して説明する。図7乃至図8は、実施形態2における情報処理装置の構成を示すブロック図であり、図9は、情報処理装置の動作を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、実施形態1で説明したデータ管理装置10及び情報処理端末20からなる情報処理システムや、当該情報処理システムによる情報処理方法の構成の概略を示している。
【0062】
まず、図7を参照して、本実施形態における情報処理装置100のハードウェア構成を説明する。情報処理装置100は、一般的な情報処理装置にて構成されており、一例として、以下のようなハードウェア構成を装備している。
・CPU(Central Processing Unit)101(演算装置)
・ROM(Read Only Memory)102(記憶装置)
・RAM(Random Access Memory)103(記憶装置)
・RAM303にロードされるプログラム群104
・プログラム群304を格納する記憶装置105
・情報処理装置外部の記憶媒体110の読み書きを行うドライブ装置106
・情報処理装置外部の通信ネットワーク111と接続する通信インタフェース107
・データの入出力を行う入出力インタフェース108
・各構成要素を接続するバス109
【0063】
そして、情報処理装置100は、プログラム群104をCPU101が取得して当該CPU101が実行することで、図8に示す算出部121と制御部122とを構築して装備することができる。なお、プログラム群104は、例えば、予め記憶装置105やROM102に格納されており、必要に応じてCPU101がRAM103にロードして実行する。また、プログラム群104は、通信ネットワーク111を介してCPU101に供給されてもよいし、予め記憶媒体110に格納されており、ドライブ装置106が該プログラムを読み出してCPU101に供給してもよい。但し、上述した算出部121と制御部122とは、電子回路で構築されるものであってもよい。
【0064】
なお、図7は、情報処理装置100のハードウェア構成の一例を示しており、情報処理装置のハードウェア構成は上述した場合に限定されない。例えば、情報処理装置は、ドライブ装置106を有さないなど、上述した構成の一部から構成されてもよい。
【0065】
そして、情報処理装置100は、上述したようにプログラムによって構築された算出部121と制御部122との機能により、図9のフローチャートに示す情報処理方法を実行する。
【0066】
図9に示すように、情報処理装置100は、
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出し(ステップS11)、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力する(ステップS12)。
【0067】
本実施形態では、以上のように構成されることにより、実施者が操作する情報処理端末に、対象者が実行する予定のリハビリテーションの予定メニューを表示し、特に、かかる予定メニューを修正可能なようにしている。これにより、実施者に対して、リハビリテーションのメニューの確認や修正を促すことができ、確認漏れを抑制することができる。その結果、実施者によって対象者が実行するリハビリテーションのメニューが適宜記録されることとなり、かかる記録を参照することで、対象者に対する適切なリハビリテーション内容を計画することができる。
【0068】
なお、本実施形態においても、FIMに設定されている項目の評価値を用いることに限定されず、人体の状態を評価するような他の指標に設定された項目の値を用いてもよい。例えば、身辺動作と移動動作の2つの観点から設定された全10項目を自立度に従って評価する「バーセルインデックス(Barthel Index)」といった日常生活動作を評価する指標があるが、かかる指標の項目の値を利用して、上述したように予定メニューを算出してもよい。
【0069】
<付記>
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうる。以下、本発明における情報処理方法、情報処理装置、プログラムの構成の概略を説明する。但し、本発明は、以下の構成に限定されない。
【0070】
(付記1)
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出し、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力する、
情報処理方法。
【0071】
(付記2)
付記1に記載の情報処理方法であって、
前記情報処理端末に表示出力された前記予定メニューに対する前記実施者からの修正の指示に応じて、前記予定メニューを修正した修正メニューを前記情報処理端末に表示出力すると共に、当該修正メニューを前記対象者が実行したリハビリテーションの実行メニューとして記録する、
【0072】
(付記3)
付記2に記載の情報処理方法であって、
前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて、前記対象者情報から前記予定メニューを算出するためのモデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0073】
(付記4)
付記3に記載の情報処理方法であって、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の情報を含む前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0074】
(付記5)
付記4に記載の情報処理方法であって、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じて前記モデルが異なるよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0075】
(付記6)
付記4又は5に記載の情報処理方法であって、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者のリハビリテーションを実施することに対する経験度合いに応じた前記予定メニューを算出するモデルを生成するよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0076】
(付記7)
付記4乃至6のいずれかに記載の情報処理方法であって、
前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じた重みを付与した前記実行メニューと前記対象者情報との組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0077】
(付記8)
付記3乃至7のいずれかに記載の情報処理方法であって、
修正された前記予定メニューを含む前記学習データを用いて、当該修正された前記予定メニューが算出される頻度が減少するよう前記モデルを生成する、
情報処理方法。
【0078】
(付記9)
付記1乃至8のいずれかに記載の情報処理方法であって、
FIM(Functional Independence Measure)に設定された複数の項目のそれぞれにおける対象者の所定時点の評価を表す評価値を含む前記対象者情報に基づいて、当該対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出する、
情報処理方法。
【0079】
(付記10)
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出する算出部と、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力するよう制御する制御部と、
を備えた情報処理装置。
【0080】
(付記11)
付記10に記載の情報処理装置であって、
前記制御部は、前記情報処理端末に表示出力された前記予定メニューに対する前記実施者からの修正の指示に応じて、前記予定メニューを修正した修正メニューを前記情報処理端末に表示出力するよう制御すると共に、当該修正メニューを前記対象者が実行したリハビリテーションの実行メニューとして記録するよう制御する、
情報処理装置。
【0081】
(付記12)
付記11に記載の情報処理装置であって、
前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて、前記対象者情報から前記予定メニューを算出するためのモデルを修正するよう学習する学習部を備えた、
情報処理装置。
【0082】
(付記13)
付記12に記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の情報を含む前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理装置。
【0083】
(付記14)
付記13に記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じて前記モデルが異なるよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理装置。
【0084】
(付記15)
付記13又は14に記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者のリハビリテーションを実施することに対する経験度合いに応じた前記予定メニューを算出するモデルを生成するよう、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0085】
(付記16)
付記13乃至15のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、前記予定メニューを前記修正メニューに修正した前記実施者の属性に応じた重みを付与した前記実行メニューと前記対象者情報との組み合わせからなる前記学習データを用いて前記モデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0086】
(付記17)
付記13乃至16のいずれかに記載の情報処理装置であって、
前記学習部は、修正された前記予定メニューを含む前記学習データを用いて、当該修正された前記予定メニューが算出される頻度が減少するよう前記モデルを生成する、
情報処理装置。
【0087】
(付記18)
情報処理装置に、
対象者情報に基づいて、対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出する算出部と、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力するよう制御する制御部と、
を実現させるためのプログラム。
【0088】
(付記19)
付記18に記載のプログラムであって、
前記情報処理装置に、前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて、前記対象者情報から前記予定メニューを算出するためのモデルを修正するよう学習する学習部をさらに実現させるためのプログラム。
【0089】
(付記1.1)
人体の状態を評価する所定の指標に設定された複数の項目のそれぞれにおける対象者の所定時点の評価を表す評価値を含む対象者情報に基づいて、当該対象者が行う予定のリハビリテーションのメニューを表す予定メニューを算出し、
前記予定メニューを、前記対象者のリハビリテーションを実施する実施者が操作する情報処理端末に修正可能なよう表示出力する、
情報処理方法。
【0090】
(付記1.2)
付記1.1に記載の情報処理方法であって、
前記情報処理端末に表示出力された前記予定メニューに対する前記実施者からの修正の指示に応じて、前記予定メニューを修正した修正メニューを前記情報処理端末に表示出力すると共に、当該修正メニューを前記対象者が実行したリハビリテーションの実行メニューとして記録する、
情報処理方法。
【0091】
(付記1.3)
付記1.2に記載の情報処理方法であって、
前記対象者情報と前記実行メニューとの組み合わせからなる学習データを用いて、前記対象者情報から前記予定メニューを算出するためのモデルを修正するよう学習する、
情報処理方法。
【0092】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0093】
以上、上記実施形態等を参照して本願発明を説明したが、本願発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の範囲内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0094】
10 データ管理装置
11 学習部
12 予測部
13 制御部
14 データ記憶部
15 モデル記憶部
20 情報処理端末
T セラピスト
U 患者
100 情報処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 プログラム群
105 記憶装置
106 ドライブ装置
107 通信インタフェース
108 入出力インタフェース
109 バス
110 記憶媒体
111 通信ネットワーク
121 算出部
122 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9