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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】システム、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/20 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
G06F1/20 D
G06F1/20 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021553158
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 JP2019011042
(87)【国際公開番号】W WO2020188672
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ラジャプト ニルマル シング
(72)【発明者】
【氏名】宮本 善則
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 寿人
(72)【発明者】
【氏名】吉川 実
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-091524(JP,A)
【文献】特開2014-127087(JP,A)
【文献】特開2018-173864(JP,A)
【文献】特開2017-102792(JP,A)
【文献】特開2017-138673(JP,A)
【文献】特開2012-033105(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0330447(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0087087(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが少なくとも1つのコンピュータモジュールを収容する複数のラックが共用するコールドアイルに冷却空気を供給する空調機を制御するシステムであって、
前記複数のラックの吸気口にそれぞれ配置された複数の吸気側圧力センサと、
前記複数の吸気側圧力センサからの圧力値に基づいて前記空調機が供給する冷却空気の風量を制御するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
(1)各吸気側圧力センサ毎に目標圧力値を個別に設定し、
(2)各吸気側圧力センサの現在の圧力値を取得し、
(3)各吸気側圧力センサ毎に、前記目標圧力値から前記現在の圧力値を引くことで圧力降下値を計算し、
(4)各吸気側圧力センサ毎に計算して得られた複数の圧力降下値の最大値の絶対値が第1の閾値以下であるときを除き、前記最大値が正の値の場合は前記風量を増加させ、前記最大値が負の値の場合は前記風量を減少させるように前記風量を調節する、
システム。
【請求項2】
前記複数のラックの前記吸気口にそれぞれ配置された複数の温度センサを更に備え、
前記コントローラは、
前記複数の温度センサの温度値のうち最大の温度値が第1の値に近づくように前記風量を調節し、
各吸気側圧力センサ毎に、前記風量を調節したときの吸気側圧力センサの圧力値を当該吸気側圧力センサの前記目標圧力値として設定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
それぞれが少なくとも1つのコンピュータモジュールを収容する複数のラックが共用するコールドアイルに冷却空気を供給する空調機の制御方法であって、
前記複数のラックの吸気口に複数の吸気側圧力センサがそれぞれ配置されており、
(1)各吸気側圧力センサ毎に目標圧力値を個別に設定し、
(2)各吸気側圧力センサの現在の圧力値を取得し、
(3)各吸気側圧力センサ毎に、前記現在の圧力値と前記目標圧力値との間の圧力降下値を計算し、
(4)各吸気側圧力センサ毎に計算して得られた複数の圧力降下値の最大値の絶対値が第1の閾値以下であるときを除き、前記最大値が正の値の場合は前記空調機が供給する前記冷却空気の風量を増加させ、前記最大値が負の値の場合は前記風量を減少させる、
制御方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機を制御するシステム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
データセンターのような大型コンピュータシステムにおいて空調機を制御するために種々の技術が使用されてきた。
【0003】
D1(US2005/0270738A1)は、大型コンピュータシステムのキャビネット内に収容されたコンピュータコンポーネントを冷却するためのシステム及び方法を開示している。具体的には、コンピュータシステムは、部屋の二重床に配置された複数のコンピュータキャビネットを含む。コンピュータキャビネットの各々は、複数のコンピュータモジュールを含む。各キャビネットは、吸気口、排気口、及び、送風機をさらに含む。吸気口は、空調機からの高圧冷却空気を受け入れるように構成されている。送風機は、キャビネットのシャーシを通る冷却空気の移動を促進するために吸気口に配置されている。
【0004】
システムはさらに、プロセッサに動作可能に接続された圧力センサ及びコントローラを含む。各コントローラは、対応する送風機に動作可能に接続される。各圧力センサは、対応する吸気口に配置され、対応するキャビネット内の空気と室内の空気との静圧の差を測定する。プロセッサは、圧力センサからこの情報を受信する。この情報に基づいて、プロセッサは、すべてのキャビネット間の冷却空気の均一な分配を維持するために、1つ以上の送風機の速度を調節する必要があるかどうかを判断する。1つ以上の送風機を調節する必要があると判断した場合、プロセッサは、対応するコントローラに適切なコマンドを送信する。
【0005】
D1は更に、その段落0028~0029において、プロセッサが空調機に動作可能に接続され、それによって、必要に応じて、1つ以上のキャビネットを通る冷却空気の適切な風量を維持するために、空調機からの風量を増加させることができることを開示している。これが必要となる1つの状況は、プロセッサが、1つ以上のキャビネットが十分な冷却空気の流れを欠いており、対応する送風機が風量を十分に増加させることができないと判断した場合に生じる。一方で、プロセッサは、空調機に動作可能に接続され、それによって、空調機からの風量をキャビネットと調和させることができる。例えば、すべてのキャビネットに余分な風量がある場合、プロセッサは、エネルギーを節約するためにエアコンからの風量を減らすことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
D1のシステムでは、コントローラに接続された送風機が必須であるため、コスト面で改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、上記課題の何れか1つを解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、それぞれが少なくとも1つのコンピュータモジュールを収容する複数のラックに冷却空気を供給するように構成された空調機を制御するシステムである。システムは、各ラックの吸気口にそれぞれ配置された複数の圧力センサと、前記複数の圧力センサから圧力値を受信し、前記圧力値に基づいて前記空調機から供給される冷却空気の風量を制御するコントローラと、を備える。前記コントローラは、(1)各圧力センサの目標圧力値を設定し、(2)各圧力センサの現在の圧力値を取得し、(3)各圧力センサにおける現在の圧力値と目標圧力値との間の圧力降下値を計算し、(4)複数の圧力降下値の最大値に基づいて前記風量を調節するように構成される。
【0009】
本発明の一態様は、それぞれが少なくとも1つのコンピュータモジュールを収容する複数のラックに冷却空気を供給するように構成された空調機の制御方法である。方法は、(1)各ラックの吸気口にそれぞれ配置された複数の圧力センサの目標圧力値をそれぞれ設定し、(2)各圧力センサの現在の圧力値を取得し、(3)各圧力センサにおける現在の圧力値と目標圧力値との間の圧力降下値を計算し、(4)複数の圧力降下値の最大値に基づいて前記風量を調節する、ステップを含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低コストで、ラックに十分な冷却空気を供給しつつ、空調機の消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態のシステムの機能ブロック図である。
図2】第2実施形態のデータセンターの概略斜視図である。
図3】第2実施形態のシステムの機能ブロック図である。
図4】第2実施形態のシステムの動作のフローチャートである。
図5】第2実施形態のシステムの動作の別のフローチャートである。
図6】第2実施形態のシステムの動作の別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、同一の要素には同一の符号を付し、必要に応じて重複する説明を省略する。
【0013】
(第1実施形態)
以下、図1を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0014】
図1に、空調機を制御するシステム1を示す。空調機は、複数のラックに冷却空気を供給する。各ラックは、少なくとも1つのコンピュータモジュールを収容する。
【0015】
システム1は、複数の圧力センサ2とコントローラ3を備える。
【0016】
各圧力センサ2は、各ラックの吸気口に配置されている。
【0017】
コントローラ3は、複数の圧力センサ2から圧力値を受信する。コントローラ3は、その圧力値に基づいて、空調機から供給される冷却空気の風量を制御する。
【0018】
コントローラ3は、次のように動作する。
【0019】
コントローラ3は、圧力センサ2毎に目標圧力値を設定する。
【0020】
コントローラ3は、圧力センサ2毎に現在の圧力値を取得する。
【0021】
コントローラ3は、目標圧力値から現在の圧力値を減算することにより、圧力センサ2毎に圧力降下値を算出する。
【0022】
コントローラ3は、複数の圧力降下値の最大値に基づいて風量を調節する。
【0023】
このような構成によれば、低コストで、ラックに十分な冷却空気を供給しつつ、空調機の消費電力を抑えることができる。
【0024】
(第2実施形態)
次に、図2から図5を参照して、本発明の第2実施形態である。
【0025】
図2は、データセンター10の概略斜視図を示している。データセンター10は、複数のラック11と、複数のラック11に冷却空気を供給する空調機12と、空調機12から供給される冷却空気の風量を制御するコントローラ13と、を備える。
【0026】
複数のラック11は、第1ラック11aと、第2ラック11bと、第3ラック11cと、第4ラック11dと、を含む。第1ラック11a及び第2ラック11bは、コールドアイル14の長手方向に沿って隣り合わせで並べられている。同様に、第3ラック11cと第4ラック11dは、コールドアイル14の長手方向に沿って隣り合わせで並べられている。
【0027】
第1ラック11aは、第3ラック11cのコールドアイル14を挟んで反対側に配置されている。第2ラック11bは、第4ラック11dのコールドアイル14を挟んで反対側に配置されている。
【0028】
第1ラック11aの吸気口15は、コールドアイル14に面している。同様に、第2ラック11bの吸気口15と、第3ラック11cの吸気口15と、第4ラック11dの吸気口15は、コールドアイル14に面している。
【0029】
空調機12は、二重床16及びコールドアイル14をこの記載順に介してラック11に冷却空気を供給する。周知のように、空調機12には一定温度の冷水が供給されており、空調機12から供給される冷却空気の温度は常に一定である。
【0030】
この実施形態では、図2に示すように、4つのラック11のみが示されている。しかしながら、データセンター10は、5つ以上のラック11を含むことができ、採用し得る配置も様々である。
【0031】
各ラック11は、少なくとも一つのコンピュータモジュール17、好ましくは複数のコンピュータモジュール17を含む。各コンピュータモジュール17は、CPU(中央処理装置)と、CPUファンと、CPUの温度に基づいてCPUファンの回転速度を制御するファンコントローラと、を備える。
【0032】
データセンター10は、さらに、複数の温度センサ18及び複数の圧力センサ19を含む。
【0033】
複数の温度センサ18は、第1温度センサ18aと、第2温度センサ18bと、第3温度センサ18cと、第4温度センサ18dと、を含む。複数の温度センサ18は、コントローラ13に動作可能に接続される。
【0034】
複数の圧力センサ19は、第1圧力センサ19aと、第2圧力センサ19bと、第3圧力センサ19cと、第4圧力センサ19dと、を備える。複数の圧力センサ19は、コントローラ13に動作可能に接続される。
【0035】
第1温度センサ18a及び第1圧力センサ19aは、第1ラック11aの吸気口15に位置している。従って、第1温度センサ18aは、第1ラック11aの吸気口15における冷却空気の温度を測定するように構成されている。同様に、第1圧力センサ19aは、第1ラック11aの吸気口15における冷却空気の圧力を測定するように構成されている。第1温度センサ18a及び第1圧力センサ19aは、第1ラック11aの吸気口15に取り付けられてもよい。
【0036】
他の温度センサ18及び他の圧力センサ19の配置及び動作は、第1温度センサ18a及び第1圧力センサ19aと同様であるので説明を省略する。
【0037】
各圧力センサ19は、絶対圧を測定する気圧センサであってもよい。また、圧力センサ19は、基準位置の圧力と目標位置の圧力との圧力差を測定するゲージ圧力センサであってもよい。目標位置は、ラック11の吸気口15における位置であってもよく、基準位置は、ラック11の上向きの上面の位置であってもよい。
【0038】
図3は、データセンター10の機能ブロック図を示す。
【0039】
図3に示すように、コントローラ13は、CPU13a(Central Processing Unit)、RAM13b(Random Access Memory)、ROM13c(Read Only Memory)を備えている。ROM13cに格納されたプログラムは、CPU13aにより読み出され、CPU13a上で実行されることにより、CPU13a等のハードウェアに、図4から図6に示すステップを動作させる。以下、コントローラ13の動作を図4から図6を参照して説明する。
【0040】
表1及び表2には、消費電力、温度センサ18の出力値、圧力センサ19の出力値等の各種パラメータの第1及び第2の例が理解促進のためにそれぞれ示されている。表1及び表2において、「冷却空気の温度」は空調機12から供給される冷却空気の温度を表し、「電力」は各ラックに収容されるコンピュータモジュール17の消費電力を表し、「温度」は温度センサ18の出力値を表し、「圧力」は圧力センサ19の出力値を表す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
ステップS100:
ステップS100において、コントローラ13は、ユーザの入力により、またはRAM13bから目標温度値を取得し、目標温度値を設定する。この目標温度値は、ASHRAE(American Society of Heating, Refrigerating and Air-Conditioning Engineers)などの規格、またはデータセンターの運用や顧客ポリシーに依存する。本実施形態では、目標温度値として例えば27度を採用している。
【0044】
ステップS200:
ステップS200において、コントローラ13は、ステップS100で取得した目標温度値に基づいて、空調機12から供給される冷却空気の初期風量を決定する。ステップ200の詳細な処理を図5に示し、詳細は後述する。図5は、上記決定を例示する。ただし、その他の一般的な方法も適用できる。通常、空調機12は設置されて定格ファン回転数で運転されるため、空調機12は定格風量の冷却空気を供給する。図5に示すステップでは、コントローラ13は、空調機12の消費電力を、過剰風量を低減することによって低減しようとする。時刻t1における表1及び表2の各パラメータは、上述した目標温度値を27度とした状態でステップS200が完了した後のパラメータである。
【0045】
ステップS300:
コントローラ13は、空調機12から供給される冷却空気の初期風量を決定した後、圧力センサ19ごとに目標圧力値を設定する。具体的には、コントローラ13は、圧力センサ19の出力値を読み出し、目標圧力値としてRAM13bに格納する。例えば、コントローラ13は、第1圧力センサ19aの目標圧力値を83Paとし、第2圧力センサ19bの目標圧力値を80Paとする。
各ラック11の消費電力が変化すると、圧力センサ19の現在の(すなわち瞬時の)出力値が目標圧力値に対して変化する。そして、コントローラ13は、現在の圧力値と目標圧力値との差に基づいて、現在の圧力値が復元されて目標圧力値に近づくように、空調機12から供給される冷却空気の風量を制御する。現在の圧力値の復元処理については、次のステップS400で説明する。
【0046】
表1に示すように、時刻t1における圧力値である目標圧力値は、83Pa、80Pa、121Pa、125Paとなっている。表1の目標圧力値はすべて正で、風量が過剰であることを意味している。これは、空調機12から供給される冷却空気の温度が27度であり、熱せられた空気の再循環を回避するためには過剰な風量が必要であり、それ以外の場合には、温度センサ18の出力値がステップS100で設定された目標温度値を超えるためである。
【0047】
表2に示すように、時刻t1における圧力値である目標圧力値は、-35Pa、-37Pa、6Pa、9Paとなっている。表2の目標圧力値には正の値のものもあれば負の値のものもある。これは、一部のラック11が必要よりも少ない風量を受け、他のラック11が過剰な風量を受けることを意味する。この場合、温度センサ18の出力値は、ステップS100で設定した目標温度値よりも小さいので、問題はない。このような目標圧力値の正負を含む分布は、空調機12から供給される冷却空気の温度が十分に低い(すなわち、22度)ために生じ、熱せられた空気の再循環が発生しても、温度センサ18の出力値を目標温度値(すなわち、27度)に維持することができる。
【0048】
ステップS400:
ステップS400において、コントローラ13は、空調機12から供給される冷却空気の風量を調節する。ステップS400の詳細は、図6を参照して追って説明する。
【0049】
以下、図5に示すフローチャートについて説明する。
【0050】
ステップS201:
ステップS201において、コントローラ13は、温度センサ18から出力された現在の温度値を取得する。
【0051】
ステップS202:
ステップS202において、コントローラ13は、ステップS201で取得した現在の温度値の中から最大値を決定する。
【0052】
ステップS203:
ステップS203において、コントローラ13は、ステップS202で得られた最大値が、ステップS100で設定された目標温度値よりも大きいか否かを判定する。ラック11の消費電力のばらつきにより、ステップS201で求めた現在の温度値が若干変化する。この変動を吸収するために、ステップS201で得られた現在の温度値のうちの最大値を利用して、空調機12から供給される冷却空気の初期風量を決定する。最大値が目標温度値未満の場合は、現在の風量が今後の運転にも適していると見なされる。
【0053】
最大値が目標温度値未満である場合(すなわち、S203:NO)、コントローラ13は、空調機12から供給される冷却空気の風量を所定のシングルステップだけ減少させるように空調機12に指令を送り、ラック11の過冷却を解消する。風量の低減は、例えば、空調機12に搭載されたファンのファン速度を低下させる方法や、空調機12に搭載されたいくつかのダンパを閉じる方法などによって行うことができる。
【0054】
最大値が目標温度値よりも大きい場合(すなわち、S203:YES)、コントローラ13は、空調機12から供給される冷却空気の風量を所定のシングルステップだけ増加させるように空調機12に指令を送り、ラック11の温度要件を満たしつつ、空調機12を最小風量で動作させる。
【0055】
以下、図6に示すフローチャートについて説明する。
【0056】
ステップ401:
ステップ401において、コントローラ13は、圧力センサ19から出力された現在の圧力値を取得する。
表1の場合、時刻t1から時刻t2の間にラック11の消費電力が増加すると、圧力センサ19から出力される現在の圧力値は、35Pa、37Pa、73Pa、74となる。表2の場合、ラック11の消費電力の分布が時刻t1から時刻t2の間で変化するので、圧力センサ19から出力される現在の圧力値は、-88Pa、-35Pa、32Pa、36Paとなる。
【0057】
ステップS402:
ステップS402において、コントローラ13は、各圧力センサ19の目標圧力値から現在の圧力値を減算することにより、表1及び表2に示すように、「(降下)」の項を有する圧力降下値を算出する。
表1の場合、圧力降下値は+48Pa、+43Pa、+48Pa、及び、+51Paとして得られる。
表2の場合、圧力降下値は+53Pa、-2Pa、-26Pa、及び、-27Paとして得られる。
【0058】
ステップS403:
ステップS403において、コントローラ13は、ステップS402で求めた圧力降下値のうちの最大値を決定する。
表1の場合、最大値は51Paであり、これは第4圧力センサ19dから読み出される。
表2の場合、最大値は53Paであり、これは第1圧力センサ19aから読み出される。
【0059】
ステップS404:
ステップS404において、コントローラ13は、最大値の絶対値が閾値Pth1を超えているか否かを判定する。最大値の絶対値が閾値Pth1を超える場合、コントローラ13は、次のステップS405に処理を進める。そうでなければ、最大値の絶対値が閾値Pth1を超えなければ(すなわち、ステップS404:NO)、コントローラ13は処理を終了する。閾値Pth1は5Paであってもよい。閾値Pth1は、微小な変動を無視して処理を単純化するために設定される。
【0060】
ステップS405からS407:
ステップS405において、コントローラ13は、最大値が正の値であるか否かを判定する。最大値が正であれば、コントローラ13は、ステップS406において、空調機12から供給される冷却空気の風量を所定のシングルステップだけ増加させるように空調機12に指令を送る。一方、最大値が負である場合には、コントローラ13は、ステップS407において、空調機12から供給される冷却空気の風量を所定のシングルステップだけ減少させるように空調機12に指令を送る。
【0061】
なお、最大値が正の値である場合には、対応するラック11がより多くの冷却空気を必要とし、その結果、対応するラック11の吸気口15の圧力が低下することになる。一方で、最大値が負の値である場合、対応するラック11がより少ない冷却空気を必要とすることを意味し、その結果、対応するラック11の吸気口15の圧力が増加する。
【0062】
空調機12から供給される冷却空気の風量の制御方法としては、最大値に基づくPID(Proportional-Integral-Differential)方式を採用することができる。
【0063】
S408:
ステップS408において、コントローラ13は、所定分間、待機する。所定分は必要に応じて変更し得る。この所定分は、空調機12から供給される冷却空気の風量を変化させた後で定常状態となるのに十分な時間とすることができる。
【0064】
S409:
ステップS409において、コントローラ13は、最大値に対応する圧力センサ19から出力された時刻t3における現在の圧力値を取得し、最大値に対応する圧力センサ19から出力された現在の圧力値とその目標圧力値との差を算出する。
表1の場合、最大値に対応する圧力センサ19は第4圧力センサ19dであり、125Paと128Paとを比較して得られる差は3Paである。
表2の場合、最大値に対応する圧力センサ19は第1圧力センサ19aであり、-35Paと-33Paとを比較して得られる差は2Paである。
【0065】
S410:
ステップS410において、コントローラ13は、差分が所定の閾値Pth2未満であるか否かを判定する。この差が所定の閾値Pth2未満であれば、コントローラ13は処理を終了する。一方、コントローラ13は、ステップS401に処理を戻す。所定の閾値Pth2は5Paであってもよい。閾値Pth2は、圧力降下が解消されたか否かを判定するために設定される。
【0066】
以上説明した本発明の第2の実施形態は、次のような特徴を有する。
【0067】
図2に示すように、空調機12を制御するシステム20は、複数の圧力センサ19とコントローラ13とを含む。空調機12は、各々が少なくとも一つのコンピュータモジュール17を収容する複数のラック11に冷却空気を供給するように構成される。各圧力センサ19は、各ラック11の吸気口15に配置されている。コントローラ13は、圧力センサ19から圧力値を受け、その圧力値に基づいて空調機12から供給される冷却空気の風量を制御するように構成されている。コントローラ13は、圧力センサ19毎に目標圧力値を設定し(S300)、圧力センサ毎に現在の圧力値を取得し(S401)、現在の圧力値と目標圧力値との間の圧力センサ19毎の圧力降下値を算出し(S402)、複数の圧力降下値の最大値に基づいて風量を調節する(S403からS410)。このような構成によれば、低コストで、ラック11に十分な冷却空気を供給しつつ、空調機12の消費電力を抑えることができる。
【0068】
本実施形態では、コントローラ13は、目標圧力値から現在の圧力値を減算することにより、各圧力センサ19の圧力降下値を算出する(S402)。しかし、コントローラ13は、現在の圧力値から目標圧力値を減算することによって各圧力センサ19の圧力降下値を計算するように構成されてもよい。
【0069】
また、コントローラ13は、最大値が正の値である場合には風量を増加させ(S406)、最大値が負の値である場合には風量を減少させる(S407)ように構成されている。このような構成によれば、ラック11に十分な冷却空気を供給しつつ、空調機12の消費電力を確実に抑制することができる。
【0070】
図2及び図3に示すように、システム20は、ラック11のそれぞれの吸気口15に配置された複数の温度センサ18をさらに含む。図5に示すように、コントローラ13は、温度センサ18から温度値を取得し(S201)、温度値のうちの最大値が第1の値としての目標温度値に近づくように風量を調節し(S202からS205)、調節後の圧力値を目標圧力値として設定する(S300)。このような構成によれば、空調機12の消費電力を確実に抑制することができる。
【0071】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、更に、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROMを含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、更に、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0072】
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成及び詳細は、本発明の範囲内で当業者に理解され得る様々な方法で修正することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 データセンター
11 ラック
12 空調機
13 コントローラ
14 コールドアイル
15 吸気口
16 二重床
17 コンピュータモジュール
18 温度センサ
19 圧力センサ
20 システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6