IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コニカミノルタ株式会社の特許一覧

特許7367778インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法
<>
  • 特許-インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法 図1
  • 特許-インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法 図2
  • 特許-インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法 図3
  • 特許-インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法 図4
  • 特許-インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法 図5
  • 特許-インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法 図6
  • 特許-インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/015 20060101AFI20231017BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B41J2/015 101
B41J2/01 403
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021571107
(86)(22)【出願日】2020-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2020001024
(87)【国際公開番号】W WO2021144877
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 シンズ
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-240947(JP,A)
【文献】特開2015-085628(JP,A)
【文献】特開2014-144591(JP,A)
【文献】特開2004-082718(JP,A)
【文献】特開2000-117969(JP,A)
【文献】国際公開第2014/037929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルに連通する圧力室を有し、前記圧力室内のインクを、前記ノズルから吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによる記録動作を駆動するヘッド駆動部と、を備え、
前記ヘッド駆動部は、
前記圧力室を膨張、収縮させる駆動パルス電圧であって、前記ノズルからインクを吐出させる吐出駆動パルスと、前記ノズルからインクを吐出させずに前記ノズルに形成されるメニスカスを挙動させる程度の非吐出駆動パルスとを、印加可能にされ、
記録動作時における1ドット形成のためのインク吐出期間には、記録媒体上に着弾させる1ドットに対し階調数nを上限とした回数の吐出駆動パルスを印加して、当該回数に応じてドット径を変える吐出駆動を実行し、
記録動作時におけるインク非吐出期間には、前記1ドット形成のためのインク吐出期間と等しい期間に対し、前記階調数nに等しい回数であるm回の非吐出駆動パルスを印加して、前記メニスカスを挙動させる非吐出駆動を実行するインクジェット記録装置。
【請求項2】
吐出駆動パルスのパルス幅をPwa、非吐出駆動パルスのパルス幅をPwbとして、0.6Pwa<Pwb≦Pwaを満たす請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
吐出駆動パルスの電圧値をVa、非吐出駆動パルスの電圧値をVbとして、0.3<Vb/Va<0.5を満たす請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記ノズルの吐出開口径をdnとして、20μm<dn<50μmを満たす請求項1から請求項のうちいずれか一に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記ノズルの吐出開口径をdnとして、30μm<dn<50μmを満たす請求項1から請求項のうちいずれか一に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記インクの比重は1より大きい請求項1から請求項のうちいずれか一に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記吐出駆動パルスのパルス幅をPwa、前記圧力室の固有振動周期の2分の1をALとして、1AL≦Pwa≦1.4ALを満たす請求項1から請求項のうちいずれか一に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記吐出駆動パルスのパルス幅をPwa、前記圧力室の固有振動周期の2分の1をALとして、1.2AL≦Pwa≦1.4ALを満たす請求項1から請求項のうちいずれか一に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
ノズルに連通する圧力室を有し、前記圧力室内のインクを、前記ノズルから吐出するインクジェットヘッドによる記録動作を駆動する記録動作駆動方法であって、
前記圧力室を膨張、収縮させる駆動パルス電圧であって、前記ノズルからインクを吐出させる吐出駆動パルスと、前記ノズルからインクを吐出させずに前記ノズルに形成されるメニスカスを挙動させる程度の非吐出駆動パルスとを用い、
記録動作時における1ドット形成のためのインク吐出期間には、記録媒体上に着弾させる1ドットに対し階調数nを上限とした回数の吐出駆動パルスを印加して、当該回数に応じてドット径を変える吐出駆動を実行し、
記録動作時におけるインク非吐出期間には、前記1ドット形成のためのインク吐出期間と等しい期間に対し、前記階調数nに等しい回数であるm回の非吐出駆動パルスを印加して、前記メニスカスを挙動させる非吐出駆動を実行する記録動作駆動方法。
【請求項10】
吐出駆動パルスのパルス幅をPwa、非吐出駆動パルスのパルス幅をPwbとして、0.6Pwa<Pwb≦Pwaを満たす請求項に記載の記録動作駆動方法。
【請求項11】
吐出駆動パルスの電圧値をVa、非吐出駆動パルスの電圧値をVbとして、0.3<Vb/Va<0.5を満たす請求項又は請求項10に記載の記録動作駆動方法。
【請求項12】
前記ノズルの吐出開口径をdnとして、20μm<dn<50μmを満たす請求項から請求項11のうちいずれか一に記載の記録動作駆動方法。
【請求項13】
前記ノズルの吐出開口径をdnとして、30μm<dn<50μmを満たす請求項から請求項11のうちいずれか一に記載の記録動作駆動方法。
【請求項14】
前記インクの比重は1より大きい請求項から請求項13のうちいずれか一に記載の記録動作駆動方法。
【請求項15】
前記吐出駆動パルスのパルス幅をPwa、前記圧力室の固有振動周期の2分の1をALとして、1AL≦Pwa≦1.4ALを満たす請求項から請求項14のうちいずれか一に記載の記録動作駆動方法。
【請求項16】
前記吐出駆動パルスのパルス幅をPwa、前記圧力室の固有振動周期の2分の1をALとして、1.2AL≦Pwa≦1.4ALを満たす請求項から請求項14のうちいずれか一に記載の記録動作駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置及び記録動作駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドを通してインクを循環させ、そのインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出するインクジェット装置が知られている。
一般にインクジェット記録装置は、微小なインク液滴を吐出する多数のノズルが配置されたインクジェットヘッドを搭載している。
これらのノズルは微小な径の吐出口からインクを吐出するため、吐出前のノズルに形成されるメニスカスの状態は、液滴の飛翔状態へ顕著に影響を与える、すなわち印刷物の画質に関わる。インクジェットヘッドノズルから吐出する液滴の安定性向上は、印刷物の画質に関わるため重要な課題である。
【0003】
一方、複数の駆動パルスを含むマルチ駆動信号を生成し、相対的に大きい液滴を吐出することが実現されている。
しかしながら、吐出、不吐出の繰り返しの際に、吐出前のメニスカスの状態及び位置も変わる。このため、不吐出期間の後の吐出時においては、液滴の不吐出や飛翔曲がりなどにより、吐出が不安定になる可能性が高くなる。
【0004】
特許文献1に記載の発明は、ノズルのエッジに付着した異物に起因する吐出異常を防止するため、メニスカスを非吐出ノズルの外側へ移動させる非吐出駆動電圧をインクジェットヘッドに供給する。このとき、非吐出ノズルの直径dnと非吐出ノズルの外側へ移動されたメニスカス直径dmとの関係が1.1≦dm/dn≦1.4を満たすようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-199021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、異物付着による吐出異常を防止することを目的としており、非吐出駆動電圧により形成するメニスカスは静定的である。
特許文献1に記載の発明のように非吐出時に静定的なメニスカスを形成することによっても、その後の吐出時における液滴の不吐出や飛翔曲がりなどを発生させる不安定性を解消することができない。
【0007】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、インクジェット記録装置により安定的に大液滴を吐出することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、ノズルに連通する圧力室を有し、前記圧力室内のインクを、前記ノズルから吐出するインクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドによる記録動作を駆動するヘッド駆動部と、を備え、
前記ヘッド駆動部は、
前記圧力室を膨張、収縮させる駆動パルス電圧であって、前記ノズルからインクを吐出させる吐出駆動パルスと、前記ノズルからインクを吐出させずに前記ノズルに形成されるメニスカスを挙動させる程度の非吐出駆動パルスとを、印加可能にされ、
記録動作時における1ドット形成のためのインク吐出期間には、記録媒体上に着弾させる1ドットに対し階調数nを上限とした回数の吐出駆動パルスを印加して、当該回数に応じてドット径を変える吐出駆動を実行し、
記録動作時におけるインク非吐出期間には、前記1ドット形成のためのインク吐出期間と等しい期間に対し、前記階調数nに等しい回数であるm回の非吐出駆動パルスを印加して、前記メニスカスを挙動させる非吐出駆動を実行するインクジェット記録装置である。
【0009】
本発明の一態様は、ノズルに連通する圧力室を有し、前記圧力室内のインクを、前記ノズルから吐出するインクジェットヘッドによる記録動作を駆動する記録動作駆動方法であって、
前記圧力室を膨張、収縮させる駆動パルス電圧であって、前記ノズルからインクを吐出させる吐出駆動パルスと、前記ノズルからインクを吐出させずに前記ノズルに形成されるメニスカスを挙動させる程度の非吐出駆動パルスとを用い、
記録動作時における1ドット形成のためのインク吐出期間には、記録媒体上に着弾させる1ドットに対し階調数nを上限とした回数の吐出駆動パルスを印加して、当該回数に応じてドット径を変える吐出駆動を実行し、
記録動作時におけるインク非吐出期間には、前記1ドット形成のためのインク吐出期間と等しい期間に対し、前記階調数nに等しい回数であるm回の非吐出駆動パルスを印加して、前記メニスカスを挙動させる非吐出駆動を実行する記録動作駆動方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インクジェット記録装置により安定的に大液滴を吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】ノズルの軸方向に見た圧力室とノズルの模式図であって、駆動パルス電圧に対応した圧力室の変化を示す。
図3】ノズルから吐出されるインク液滴の動作を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る駆動パルス電圧の例を示す駆動信号波形図である。
図5】比較例に係る駆動パルス電圧を示す駆動信号波形図である。
図6】ノズルと静的安定状態のメニスカスの断面図である。
図7】ノズルと連続吐出後のメニスカスの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0013】
インクジェット記録装置1は、搬送部10と、記録動作部20と、クリーニング部30と、制御部40と、記憶部50と、通信部70と、操作受付部81と、表示部82、電力供給部90などを備える。
【0014】
搬送部10は、画像を記録する対象となる記録媒体を記録動作部20による記録範囲に対向するように移動させる。搬送部10は、例えば、ロール状に巻き上げられた長尺の記録媒体を所定の速度で引き出す搬送モーター14などを備える。記録媒体は、例えば、布帛であるが、紙など他の材質であってもよい。
【0015】
記録動作部20は、記録媒体上にインクを吐出して画像を記録する動作を行う。記録動作部20は、多数が所定のパターンで配列されてインクを吐出するノズル27と、ノズル27にインクを供給するインク流路(圧力室)を変形させてインクに圧力変動を付与する圧電素子26とを有するインクジェットヘッド21と、各圧電素子26を変形させる駆動パルス電圧を出力するヘッド駆動部25などを備える。
圧電素子26に図2に示すように駆動パルス電圧Pを印加することで、ノズル27に連通する圧力室28の側壁29を変形させ、図3に示すようにノズル27の吐出開口付近に形成されたメニスカス22を揺らして、インク液滴23をメニスカス22から分離させて吐出する。
【0016】
クリーニング部30は、ノズル27の開口が配列されたノズル面に付着したインクやその固化物などを除去するワイピング部材32と、当該ワイピング部材32を動作させる駆動部31などを備える。ワイピング部材32は、特には限られないが、例えば、インクを吸い込む不織布や、固体を削り取るブレード上の樹脂部材などである。
【0017】
制御部40は、インクジェット記録装置1の全体動作を統括制御するプロセッサーである。制御部40は、例えば、CPU41(Central Processing Unit)及びRAM42(Random Access Memory)などを備える。CPU41は、演算動作を行い、各種制御処理を行う。RAM42は、CPU41に作業用のメモリー空間を提供し、一時データを記憶する。
【0018】
記憶部50は、記録対象の画像データやその処理データを記憶したり、その他の設定データやプログラムなどを記憶したりする。画像データは、例えば、一時的に大容量の記憶を行って高速出力が可能なDRAMなどに記憶されてよい。また、設定データやプログラムなどは、インクジェット記録装置1への電力供給が停止された状況でも記憶可能なフラッシュメモリといった不揮発性メモリー、及び/又はHDD(Hard Disk Drive)などに記憶される。
【0019】
通信部70は、所定の通信規格(例えば、TCP/IP)に従って外部機器とのデータ送受信を制御する。通信部70は、LAN(Local Area Network)などに接続され、ルーターなどを介して外部インターネットと接続可能であってもよいし、USB端子に接続されたUSBケーブルを介して直接周辺機器と接続可能であってもよい。
電力供給部90は、電源からインクジェット記録装置1に電力を供給する。
【0020】
次に、記録動作の駆動につき説明する。
ヘッド駆動部25は、圧力室28を膨張、収縮させる駆動パルス電圧Pを圧電素子26に印加する。駆動パルス電圧Pとしては図4に示す2種類(Pa,Pb)が用いられる。ヘッド駆動部25は、ノズル27からインクを吐出させる吐出駆動パルスPaと、ノズル27からインクを吐出させずにノズル27に形成されるメニスカス22を挙動させる程度の非吐出駆動パルスPbとを、印加可能にされている。
吐出駆動パルスPaの電圧値をVa、パルス幅(パルスの立ち上がりから立下り開始時までの時間)をPwa、非吐出駆動パルスPbの電圧値をVb、パルス幅をPwbとする。
【0021】
ヘッド駆動部25は、記録動作時における1ドット形成のためのインク吐出期間Ta(=周期T)には、記録媒体上に着弾させる1ドットに対し階調数nを上限とした回数の吐出駆動パルスを印加して、当該回数に応じてドット径を変える吐出駆動を実行する。
本実施形態では、n=8としている。
図4に示す例では、最も大きなドット径を形成するため周期Tにおいて8パルスの吐出駆動パルスPaを印加している。
吐出駆動パルスPaの1パルスごとの印加により図3に示したようにインク液滴が吐出され、記録媒体上に着弾する。
吐出駆動パルスPaのパルス数を選択することで吐出される液滴数が選択されてドット径が変わる。インクジェット記録装置1は、これにより階調表現を行う記録方式を採用する。
【0022】
ヘッド駆動部25は、記録動作時におけるインク非吐出期間Tb(=周期T)には、階調数nに等しいか多い回数であるm回の非吐出駆動パルスPbを印加して、メニスカス22を挙動させる非吐出駆動を実行する。なお、非吐出期間Tbは、1ドット形成のためのインク吐出期間Taと等しく、周期Tに相当する。また、本実施形態では、n=m=8としている。
非吐出駆動パルスPbの電圧値Vbは、吐出駆動パルスPaの電圧値Vaより低く設定されている。また、非吐出駆動パルスPbのパルス幅Pwbは、吐出駆動パルスPaのパルス幅Pwaより狭く設定されている。これは、非吐出駆動パルスPbの印加によりインクの吐出が起こらないようにするためである。非吐出駆動パルスPbの印加によりインクの吐出は起こらないことが条件となるが、メニスカス22を、吐出時に近い程度に大きく挙動させることができるように設定する。そのために、パルス幅は、0.6Pwa<Pwb≦Pwaの条件を満たすことがよい。また、電圧値は、0.3<Vb/Va<0.5の条件を満たすことがよい。
なお、非吐出駆動パルスPbの電圧値Vb、パルス幅Pwbのうちいずれか一方を吐出駆動パルスPaと等しくしてもよく、他方によってインクの吐出は起こらないように調整してもよい。
記録動作時におけるインク吐出期間Ta及びインク非吐出期間Tbは、個々のノズルについてのものである。あるノズルがインク吐出期間Taにある時、他のノズルがインク非吐出期間Tbにある場合もあるため、装置全体でインク吐出期間Ta又はインク非吐出期間Tbが定まるものではない。
【0023】
図5は比較例の駆動パルスを示す。
この比較例では、インク非吐出期間Tbにパルス電圧を印加しない点で異なり、他は図4に示した本実施形態の駆動パルスと同じである。
駆動パルスを印加する前の静的安定状態においては、図6に示すようにメニスカス22aはノズル27のほぼ吐出開口位置で、凹状に保たれる。
連続吐出、特に大液滴(n=8)の連続吐出があると、メニスカスは徐々にノズル27の奥に後退する。連続吐出後にインク非吐出期間Tbに入ると、図7に示すようにメニスカス22bはノズル27の奥にあり、時間の経過とともに揺れは減衰し、インク供給によりメニスカス22bの位置がノズル27の吐出開口に近づいていく。しかし、インク非吐出期間Tbにパルス電圧を印加しない場合、メニスカス22bの位置や揺れの状態は不安定であり、インク非吐出期間Tbの次のインク吐出期間Taの開始時において様々となる。更に、連続吐出の際に図6の状態と図7の状態を繰り返すことになりメニスカスは不安定な状態となる。これにより、インク非吐出期間Tb後のインク吐出期間Taにおいて、液滴の不吐出や飛翔曲がりなどにより、吐出が不安定になる可能性が高くなる。
【0024】
周期T=175.4μs、Pwa=1.2ALとして図5の繰り返しパターンで駆動した比較例の実証実験では、液滴速度が7.6m/sに達すると、液滴の不吐出の発生が確認できた。
これに対し、同じく周期T=175.4μs、Pwa=Pwb=1.2ALとして図4の繰り返しパターンで駆動した本発明例の実証実験では、液滴速度が9.1m/sに達しても、液滴の不吐出が発生せず、安定的にインクを吐出できることが確認できた。
本発明例では、インク非吐出期間Tbにおいては、インク吐出期間Taに近似した周波数と振幅のメニスカスの一定した揺れが生じており、インク吐出期間Taと近い挙動で動的に安定している。
したがって、インク非吐出期間Tbの次のインク吐出期間Taは、インク吐出期間Tbの前のインク吐出期間Taに近い条件となって、インクの吐出が連続吐出の場合と同等に安定する。
以上の効果を得るため、m≧nとすることがよい。特に、本実施形態のようにm=nとすることが好ましい。インク非吐出期間Tbにおいてインク吐出期間Taと同じ回数のメニスカスの揺れを発生させることができ、次のインク吐出期間Taでインクの吐出が安定する。
【0025】
以上の効果を効果的に得るにはさらに以下の条件で実施する。
ノズル27の吐出開口径をdnとして、20μm<dn<50μmの条件を満たす。さらに好ましくは特に30μm<dn<50μmの条件を満たす。
比重が1より大きいインクを適用する。
1AL≦Pwa≦1.4ALの条件を満たす。さらに好ましくは1.2AL≦Pwa≦1.4ALを満たす。なお、ALは、圧力室28の固有振動周期の2分の1である。
【0026】
以上説明したように本実施形態によれば、インクジェット記録装置により安定的に大液滴を吐出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、インクジェット記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 インクジェット記録装置
20 記録動作部
21 インクジェットヘッド
22 メニスカス
23 インク液滴
25 ヘッド駆動部
27 ノズル
28 圧力室
40 制御部
P 駆動パルス電圧
T 周期
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7