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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】注意喚起システム及び注意喚起方法
(51)【国際特許分類】
   A62C 99/00 20100101AFI20231017BHJP
   G08B 21/24 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A62C99/00
G08B21/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021572208
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 JP2020002221
(87)【国際公開番号】W WO2021149208
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-29
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、総務省消防庁、消防防災科学技術研究推進制度「G空間情報とICTを活用した大規模防火対象物における防火安全対策の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】福川 政利
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0004547(US,A1)
【文献】国際公開第2015/129055(WO,A1)
【文献】特開2015-121930(JP,A)
【文献】特開2019-125963(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 99/00
G08B 19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境情報を検出する少なくとも1つのセンサと、
特定インシデントが起こる条件を表す条件データが記憶された記憶装置と、
前記センサの検出結果及び前記記憶装置に記憶された前記条件データに基づいて、前記特定インシデントが起こる可能性を判定する判定手段と、
前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記センサは、消防隊員が装着する装着具に取り付けられ、前記消防隊員が活動する環境の環境情報を検出するセンサであり、
前記注意喚起手段は、前記消防隊員が装着する面体、及び消防隊長が操作する隊長端末に設けられており、
前記隊長端末の前記注意喚起手段による注意喚起を見た前記消防隊長が前記隊長端末に対して所定の操作を行った場合、前記面体に設けられた前記注意喚起手段は、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する、注意喚起システム。
【請求項2】
前記特定インシデントは、急激な燃焼である、請求項1に記載の注意喚起システム。
【請求項3】
前記センサは、ガスセンサ、温度センサ、及び撮像手段のうち少なくとも1つである、請求項2に記載の注意喚起システム。
【請求項4】
前記注意喚起手段は、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨が表示されるディスプレイである、請求項1から3のいずれか1項に記載の注意喚起システム。
【請求項5】
前記ディスプレイは、前記消防隊員が装着する面体に設けられたヘッドアップディスプレイである、請求項に記載の注意喚起システム。
【請求項6】
環境情報を検出する少なくとも1つのセンサが前記環境情報を検出するステップと、
前記センサの検出結果及び記憶装置に記憶された、特定インシデントが起こる条件を表す条件データに基づいて、前記特定インシデントが起こる可能性を判定するステップと、
前記判定するステップにより前記特定インシデントが起こる可能性があると判定された場合、消防隊長が操作する隊長端末に設けられた注意喚起手段が、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起するステップと、
前記隊長端末の前記注意喚起手段による注意喚起を見た前記消防隊長が前記隊長端末に対して所定の操作を行った場合、前記消防隊員が装着する面体に設けられた注意喚起手段が、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起するステップと、
を備え
前記センサは、消防隊員が装着する装着具に取り付けられ、前記消防隊員が活動する環境の環境情報を検出するセンサである、注意喚起方法。
【請求項7】
前記特定インシデントは、急激な燃焼である、請求項に記載の注意喚起方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注意喚起システム及び注意喚起方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消防隊員の学習のために、フラッシュオーバーやバックドラフトをシミュレートする装置が例えば特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2003-516207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のシステムにおいては、フラッシュオーバーやバックドラフトをシミュレートすることができるものの、消防隊員が活動する環境でフラッシュオーバーやバックドラフト等の急激な燃焼が起こる可能性がある旨を注意喚起することについては全く提案されていない。
【0005】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、特定インシデント(例えば、消防隊員が活動する環境でフラッシュオーバーやバックドラフト等の急激な燃焼)が起こる可能性がある旨を注意喚起することができる注意喚起システム及び注意喚起方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様にかかる注意喚起システムは、環境情報を検出する少なくとも1つのセンサと、特定インシデントが起こる条件を表す条件データが記憶された記憶装置と、前記センサの検出結果及び前記記憶装置に記憶された前記条件データに基づいて、前記特定インシデントが起こる可能性を判定する判定手段と、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する注意喚起手段と、を備え、前記注意喚起手段は、前記判定手段により前記特定インシデントが起こる可能性があると判定された場合、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する。
【0007】
本開示の第2の態様にかかる注意喚起方法は、環境情報を検出する少なくとも1つのセンサが前記環境情報を検出するステップと、前記センサの検出結果及び前記記憶装置に記憶された、特定インシデントが起こる条件を表す条件データに基づいて、前記特定インシデントが起こる可能性を判定するステップと、前記判定するステップにより前記特定インシデントが起こる可能性があると判定された場合、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起するステップと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、特定インシデント(例えば、消防隊員が活動する環境でフラッシュオーバーやバックドラフト等の急激な燃焼)が起こる可能性がある旨を注意喚起することができる注意喚起システム及び注意喚起方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】注意喚起システム1の概略構成図である。
図2】注意喚起システム1の詳細構成図である。
図3】ヘッドアップディスプレイ10aに表示される画面G1(虚像)の一例である。
図4】ディスプレイ23に表示される画面G2の一例である。
図5】注意喚起システム1の動作(注意喚起処理1)のシーケンス図である。
図6】注意喚起システム1の動作(注意喚起処理2)のシーケンス図である。
図7】注意喚起システム1の動作(学習処理)のシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1である注意喚起システム1について添付図面を参照しながら説明する。各図において対応する構成要素には同一の符号が付され、重複する説明は省略される。
【0011】
まず、図1を用いて、注意喚起システム1の構成について説明する。
【0012】
図1は、注意喚起システム1の概略構成図である。
【0013】
図1に示すように、注意喚起システム1は、環境情報を検出する少なくとも1つのセンサ60と、特定インシデントが起こる条件を表す条件データ32aが記憶された記憶装置32と、センサ60の検出結果及び記憶装置32に記憶された条件データ32aに基づいて、特定インシデントが起こる可能性を判定する判定手段31aと、特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する注意喚起手段61と、を備えている。注意喚起手段61は、判定手段31aにより特定インシデントが起こる可能性があると判定された場合、特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する。
【0014】
実施形態1によれば、特定インシデント(例えば、消防隊員が活動する環境でフラッシュオーバーやバックドラフト等の急激な燃焼)が起こる可能性がある旨を即座に注意喚起することができる。
【0015】
(実施形態2)
以下、本発明の実施形態2として、注意喚起システム1についてさらに詳細に説明する。以下、特定インシデントが、消防隊員が活動する環境で起こる可能性がある急激な燃焼(例えば、フラッシュオーバー又はバックドラフト)である例について説明する。
【0016】
図2は、注意喚起システム1の詳細構成図である。
【0017】
図2に示すように、実施形態2では、センサ60として、赤外線カメラ10b、可視カメラ10c、ガスセンサ40及び温度センサ50を用いる。また、注意喚起手段61として、ヘッドアップディスプレイ10aを用いる。
【0018】
図2に示すように、注意喚起システム1は、スマートマスク10と、制御BOX11と、ガスセンサ40と、温度センサ50と、隊長端末20と、サーバ30と、を備えている。
【0019】
まず、スマートマスク10の構成について説明する。
【0020】
スマートマスク10は、火災現場で活動する消防隊員が装着する面体(図示せず)と、ヘッドアップディスプレイ10aと、赤外線カメラ10bと、可視カメラ10cと、を備えている。
【0021】
ヘッドアップディスプレイ10a、赤外線カメラ10b及び可視カメラ10cは、面体に取り付けられている。
【0022】
ヘッドアップディスプレイ10aは透明で、各種画面(虚像)はスマートマスク10(面体)を装着した消防隊員の視界と重なって表示される。
【0023】
図3は、ヘッドアップディスプレイ10aに表示される画面G1(虚像)の一例である。
【0024】
図3に示すように、画面G1は、遠隔支援メッセージ表示領域a1、カメラ映像表示領域a2、空気ボンベ残量(残圧)表示領域a3、突入経過時間表示領域a4、検知対象ガス濃度表示領域a5を含んでいる。
【0025】
遠隔支援メッセージ表示領域a1には、隊長端末20又はサーバ30から送信される各種メッセージが表示される。例えば、遠隔支援メッセージ表示領域a1には、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨(例えば、「注意:フラッシュオーバー発生」)が表示される。ヘッドアップディスプレイ10aが本発明の注意喚起手段の一例である。消防隊員が活動する環境で起こる可能性がある急激な燃焼は、例えば、フラッシュオーバー又はバックドラフトである。
【0026】
カメラ映像表示領域a2には、赤外線カメラ10b又は可視カメラ10cにより撮像された映像(動画又は静止画)が表示される。
【0027】
空気ボンベ残量(残圧)表示領域a3には、消防隊員が装着した空気ボンベの残量(残圧)が表示される。
【0028】
突入経過時間表示領域a4には、火災現場に突入してからの経過時間が表示される。
【0029】
検知対象ガス濃度表示領域a5には、ガスセンサ40の検出結果である各種ガス濃度が表示される。
【0030】
赤外線カメラ10bは、消防隊員が活動する環境を撮像する撮像装置で、例えば、消防隊員が活動する環境が暗闇の場合に用いられる。可視カメラ10cは、消防隊員が活動する環境を撮像する撮像装置で、例えば、消防隊員が活動する環境が明るい場合に用いられる。
【0031】
ガスセンサ40及び温度センサ50は、消防隊員が装着する装着具(例えば、防火服)に取り付けられている。
【0032】
ガスセンサ40は、消防隊員が活動する環境のガス濃度を検出する。ガスセンサ40は、例えば、酸素濃度を検出する酸素センサ、一酸化炭素濃度を検出する一酸化炭素センサ、硫化水素濃度を検出する硫化水素センサ、二酸化硫黄濃度を検出する二酸化硫黄センサ、可燃性ガス濃度を検出する可燃性ガスセンサである。
【0033】
温度センサ50は、消防隊員が活動する環境の温度を検出する。
【0034】
赤外線カメラ10b、可視カメラ10c、ガスセンサ40及び温度センサ50が本発明のセンサの一例である。
【0035】
次に、制御BOX11の構成について説明する。
【0036】
制御BOX11は、制御部11aと、RAM11b(Random Access Memory)と、ROM11c(Read Only Memory)と、通信部11dと、を備えている。
【0037】
制御部11aは、図示しないが、プロセッサを備えている。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。プロセッサは、ROM11c等の不揮発性メモリからRAM11bに読み込まれた所定プログラムを実行することで、スマートマスク10等を制御する。
【0038】
通信部11dは、隊長端末20及びサーバ30との間で通信回線NW(例えば、インターネット)を介して無線通信する通信装置である。
【0039】
次に、隊長端末20の構成について説明する。
【0040】
隊長端末20は、例えば、タブレット型の情報処理端末で、図2に示すように、制御部21と、タッチパネル22と、ディスプレイ23と、通信部24と、を備えている。
【0041】
制御部21は、図示しないが、プロセッサを備えている。プロセッサは、例えば、CPUである。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。プロセッサは、ROM(図示せず)等の不揮発性メモリからRAM(図示せず)に読み込まれた所定プログラムを実行することで、ディスプレイ23等を制御する。
【0042】
タッチパネル22は、消防隊長が操作する入力装置で、ディスプレイ23の表示面を覆った状態で配置されている。ディスプレイ23は、例えば、タッチパネル22付きディスプレイである。タッチパネル付きディスプレイは、タッチスクリーンディスプレイとも呼ばれる。
【0043】
図4は、ディスプレイ23に表示される画面G2の一例である。
【0044】
図4に示すように、画面G2は、カメラ映像表示領域bを含んでいる。
【0045】
カメラ映像表示領域bには、消防隊員が装着するスマートマスク10のヘッドアップディスプレイ10aに表示される映像(動画又は静止画)と同じ映像が表示される。
【0046】
通信部24は、制御BOX11及びサーバ30との間で通信回線NW(例えば、インターネット)を介して無線通信する通信装置である。
【0047】
次に、サーバ30の構成について説明する。
【0048】
サーバ30は、火災現場から遠隔の地に設置されている。図2に示すように、サーバ30は、制御部31と、記憶装置32と、通信部33と、を備えている。
【0049】
制御部31は、図示しないが、プロセッサを備えている。プロセッサは、例えば、CPUである。プロセッサは、1つの場合もあるし、複数の場合もある。プロセッサは、ROM(図示せず)等の不揮発性メモリからRAM(図示せず)に読み込まれた所定プログラムを実行することで、判定部31a、学習部31bとして機能する。
【0050】
判定部31aは、制御BOX11から受信した各種センサの検出結果及び記憶装置32に記憶された条件データ32aに基づいて、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性を判定(予測)する。判定部31aが本発明の判定手段の一例である。
【0051】
学習部31bは、制御BOX11から受信した各種センサの検出結果に基づいて、急激な燃焼が起こる条件を学習する。学習部31bが本発明の学習手段の一例である。学習部31bは、過去に急激な燃焼が起こった事例等に基づいて、急激な燃焼が起こる条件を学習する場合もある。
【0052】
記憶装置32には、急激な燃焼が起こる条件(1又は複数の条件)を表す条件データ32aが記憶されている。急激な燃焼が起こる条件は、例えば、急激な燃焼が起こるガス濃度を表す数値又は数値範囲である。この数値又は数値範囲は、例えば、実験又は過去の事例から算出することができる。
【0053】
また、急激な燃焼が起こる条件は、例えば、撮像装置により撮像された映像(例えば、動画)に映り込んだ炎の特徴を表すデータである。炎の特徴を表すデータは、例えば、炎の動き、色、大きさ等を表すデータである。この炎の特徴を表すデータは、例えば、実験又は過去の事例で撮像された映像を画像処理することで算出することができる。
【0054】
通信部33は、制御BOX11及び隊長端末20との間で通信回線NW(例えば、インターネット)を介して無線通信する通信装置である。
【0055】
次に、上記構成の注意喚起システム1の動作の一例として、注意喚起処理1について説明する。
【0056】
図5は、注意喚起システム1の動作(注意喚起処理1)のシーケンス図である。
【0057】
以下の説明においては、図2に示す画面G1が、消防隊員が装着したヘッドアップディスプレイ10aに表示されているものとする。
【0058】
まず、各種センサが、消防隊員が活動する環境の環境情報を検出する(ステップS10)。例えば、赤外線カメラ10bが、消防隊員が活動する環境を撮像する。また、ガスセンサ40が、消防隊員が活動する環境のガス濃度を検出する。さらに、温度センサ50が、消防隊員が活動する環境の温度を検出する。
【0059】
次に、制御BOX11(通信部11d)が、ステップS10で検出された環境情報(各種センサの検出結果)を、通信回線NWを介してサーバ30に送信する(ステップS11)。
【0060】
次に、サーバ30(通信部33)が、制御BOX11から送信される環境情報を受信する(ステップS12)。
【0061】
次に、サーバ30(判定部31a)が、制御BOX11から受信した環境情報(各種センサの検出結果)及び記憶装置32に記憶された急激な燃焼が起こる条件を表す条件データ32aに基づいて、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性を判定(予測)する(ステップS13)。
【0062】
例えば、制御BOX11から受信した環境情報(各種センサの検出結果)がガスセンサ40の検出結果(及び温度センサ50の検出結果)である場合、サーバ30(判定部31a)は、ガスセンサ40の検出結果(及び温度センサ50の検出結果)が記憶装置32に記憶された条件データ32aが表す急激な燃焼が起こる条件に一致(又は類似)すると、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性があると判定する。それ以外の場合、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がないと判定する。
【0063】
一方、制御BOX11から受信した環境情報(各種センサの検出結果)が、赤外線カメラ10bが撮像した映像(又は可視カメラ10cが撮像した映像)の場合、サーバ30は、映像を画像処理することで、当該映像に映り込んだ炎の特徴を表すデータを抽出する。そして、サーバ30(判定部31a)は、この抽出された炎の特徴を表すデータが記憶装置32に記憶された条件データ32aが表す急激な燃焼が起こる条件に一致(又は類似)すると、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性があると判定する。それ以外の場合、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がないと判定する。
【0064】
次に、サーバ30(通信部33)が、ステップS13で判定された判定結果を、通信回線NWを介して制御BOX11に送信する(ステップS14)。
【0065】
次に、制御BOX11(通信部11d)が、サーバ30から送信される判定結果を受信する(ステップS15)。
【0066】
そして、サーバ30から受信した判定結果が急激な燃焼が起こる可能性がある場合(ステップS16:YES)、制御BOX11(制御部11a)は、ヘッドアップディスプレイ10aを制御して画面G1の遠隔支援メッセージ表示領域a1に消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨(例えば、「注意:フラッシュオーバー発生」)を表示する(ステップS17)。
【0067】
これにより、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨を消防隊員に直接かつ即座に注意喚起することができる。
【0068】
次に、上記構成の注意喚起システム1の動作の一例として、注意喚起処理2について説明する。
【0069】
図6は、注意喚起システム1の動作(注意喚起処理2)のシーケンス図である。
【0070】
図6に示すフローチャートは、図5に示すフローチャート中のステップS15~S17の処理を省略し、ステップS20~S24の処理を追加したものに相当する。以下、図5との相違点を中心に説明する。
【0071】
以下の説明においては、図2に示す画面G1が、消防隊員が装着したヘッドアップディスプレイ10aに表示されているものとする。
【0072】
隊長端末20(通信部24)が、サーバ30から送信される判定結果を受信する(ステップS20)。次に、隊長端末20(制御部21)は、ディスプレイ23を制御して判定結果、例えば画面G2に消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨(例えば、「注意:フラッシュオーバー発生」)を表示する。
【0073】
そして、当該表示を見た消防隊長が例えばディスプレイ23に表示される送信ボタン(図示せず)を、タッチパネル22を介してタップした場合(ステップS21:YES)、隊長端末20(通信部24)が、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨を、通信回線NWを介して制御BOX11に送信する(ステップS22)。
【0074】
次に、制御BOX11(通信部11d)が、隊長端末20から送信される消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨を受信する(ステップS23)。
【0075】
そして、制御BOX11(制御部11a)は、ヘッドアップディスプレイ10aを制御して画面G1の遠隔支援メッセージ表示領域a1に消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨(例えば、「注意:フラッシュオーバー発生」)を表示する(ステップS24)。
【0076】
これにより、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨を消防隊長及び消防隊員に直接かつ即座に注意喚起することができる。
【0077】
次に、上記構成の注意喚起システム1の動作の一例として、急激な燃焼が起こる条件を学習する学習処理について説明する。
【0078】
図7は、注意喚起システム1の動作(学習処理)のシーケンス図である。
【0079】
まず、各種センサが、消防隊員が活動する環境の環境情報を検出する(ステップS30)。例えば、赤外線カメラ10bが、消防隊員が活動する環境を撮像する。また、ガスセンサ40が、消防隊員が活動する環境のガス濃度を検出する。さらに、温度センサ50が、消防隊員が活動する環境の温度を検出する。
【0080】
次に、制御BOX11(通信部11d)が、ステップS30で検出された環境情報(各種センサの検出結果)を、通信回線NWを介してサーバ30に送信する(ステップS31)。
【0081】
次に、サーバ30(通信部33)が、制御BOX11から送信される環境情報を受信する(ステップS32)。
【0082】
次に、サーバ30(学習部31b)が、制御BOX11から受信した環境情報(各種センサの検出結果)に基づいて、急激な燃焼が起こる条件を学習する(ステップS33)。
【0083】
そして、サーバ30は、学習部31bの学習結果に基づいて、記憶装置32に記憶された急激な燃焼が起こる条件を表す条件データ32aを逐次更新する(ステップS34)。
【0084】
以上説明したように、実施形態2によれば、消防隊員が活動する環境でフラッシュオーバーやバックドラフト等の急激な燃焼が起こる可能性がある旨を、火災現場で活動する(活動中の)消防隊員等に直接かつ即座に注意喚起することができる。
【0085】
次に、変形例について説明する。
【0086】
上記実施形態2(注意喚起処理1)では、サーバ30(通信部33)が、ステップS13で判定された判定結果を、通信回線NWを介して制御BOX11に送信し、サーバ30から受信した判定結果が急激な燃焼が起こる可能性がある場合(ステップS16:YES)、制御BOX11(制御部11a)は、ヘッドアップディスプレイ10aを制御して画面G1の遠隔支援メッセージ表示領域a1に消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨(例えば、「注意:フラッシュオーバー発生」)を表示する(ステップS17)ように説明したが、これに限らない。
【0087】
例えば、サーバ30(通信部33)が、ステップS13で判定された判定結果を、通信回線NWを介して隊長端末20にも送信し、サーバ30から受信した判定結果が急激な燃焼が起こる可能性がある場合、隊長端末20(制御部21)は、ディスプレイ23を制御して消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨(例えば、「注意:フラッシュオーバー発生」)を表示するようにしてもよい。
【0088】
また、上記実施形態2では、判定部31a、学習部31b、及び記憶装置32をサーバ30に設けた例について説明したが、これに限らない。例えば、判定部31a、学習部31b、及び記憶装置32の一部又は全部を、制御BOX11に設けてもよいし、隊長端末20に設けてもよいし、その他の情報処理端末(図示せず)に設けてもよい。判定部31aを制御BOX11に設ける場合、例えば、いわゆるエッジコンピューティングのシステム構成を採用することができる。
【0089】
また、上記実施形態2では、センサ60として、赤外線カメラ10b、可視カメラ10c、ガスセンサ40及び温度センサ50を用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、赤外線カメラ10b、可視カメラ10c、ガスセンサ40及び温度センサ50のうち一部を省略してもよいし、他のセンサを追加してもよい。
【0090】
また、上記実施形態2では、ガスセンサ40として、酸素センサ、一酸化炭素センサ、硫化水素センサ、二酸化硫黄センサ、可燃性ガスセンサを用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、酸素センサ、一酸化炭素センサ、硫化水素センサ、二酸化硫黄センサ、可燃性ガスセンサのうち一部を省略してもよいし、他のセンサを追加してもよい。
【0091】
また、上記実施形態2では、注意喚起手段61として、ヘッドアップディスプレイ10aを用いた例について説明したが、これに限らない。例えば、注意喚起手段61として、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある旨を音声出力するスピーカを用いてもよいし、消防隊員が活動する環境で急激な燃焼が起こる可能性がある場合に振動する振動体を用いてもよい。
【0092】
また、上記実施形態2では、特定インシデントが、消防隊員が活動する環境で起こる可能性がある急激な燃焼(例えば、フラッシュオーバー又はバックドラフト)である例について説明したが、これに限らない。例えば、特定インシデントは、サリン、炭そ菌、放射線等の検出であってもよい。すなわち、特定インシデントとは、それが実際に発生するより前に注意喚起した方が人命保護の観点から望ましいと一般的に考えられるイベントのことであり、自然現象によるイベント(例えば、フラッシュオーバー又はバックドラフト)であるか、人為的行為によるイベント(例えば、サリン散布)であるかは問わない。
【0093】
例えば、特定インシデントは、「熱中症の発生」であってもよい。この場合、例えば、次のようにして、注意喚起することができる。
【0094】
例えば、消防隊員が装着した当該消防隊員の生体情報(例えば、血圧、発汗量、体温)を検出するセンサから収集した生体情報と、熱中症が発生する条件を表す条件データ(例えば、熱中症になる際の発生事例)と比較し、熱中症が発生する可能性を判定し、熱中症が発生する可能性があると判定された場合、熱中症が発生する可能性がある旨を実施形態2と同様に消防隊員等に注意喚起する。
【0095】
以上のように、特定インシデントとして様々なイベントを採用することができる。実施形態1、実施形態2及び変形例によれば、特定インシデントが実際に発生するより前に、特定インシデントが発生する可能性がある旨を注意喚起することができるため、より多くの人命保護を実現することができる。
【0096】
上記実施形態1、2において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0097】
上記実施形態で示した数値は全て例示であり、これと異なる適宜の数値を用いることができるのは無論である。
【0098】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。上記実施形態の記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【0099】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
環境情報を検出する少なくとも1つのセンサと、
特定インシデントが起こる条件を表す条件データが記憶された記憶装置と、
前記センサの検出結果及び前記記憶装置に記憶された前記条件データに基づいて、前記特定インシデントが起こる可能性を判定する判定手段と、
前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する注意喚起手段と、を備え、
前記注意喚起手段は、前記判定手段により前記特定インシデントが起こる可能性があると判定された場合、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する、注意喚起システム。
(付記2)
前記センサは、消防隊員が装着する装着具に取り付けられ、前記消防隊員が活動する環境の環境情報を検出するセンサであり、
前記特定インシデントは、急激な燃焼である、付記1に記載の注意喚起システム。
(付記3)
前記センサは、ガスセンサ、温度センサ、及び撮像手段のうち少なくとも1つである、付記2に記載の注意喚起システム。
(付記4)
前記注意喚起手段は、前記消防隊員が装着する面体に設けられている、付記2又は3に記載の注意喚起システム。
(付記5)
さらに、前記注意喚起手段は、消防隊長が操作する隊長端末に設けられている、付記4に記載の注意喚起システム。
(付記6)
前記消防隊長が前記隊長端末に対して所定の操作を行った場合、前記面体に設けられた前記注意喚起手段は、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起する、付記5に記載の注意喚起システム。
(付記7)
前記注意喚起手段は、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨が表示されるディスプレイである、付記2から6のいずれか1項に記載の注意喚起システム。
(付記8)
前記ディスプレイは、前記消防隊員が装着する面体に設けられたヘッドアップディスプレイである、付記7に記載の注意喚起システム。
(付記9)
前記センサの検出結果に基づいて、前記特定インシデントが起こる条件を学習する学習手段をさらに備え、
前記記憶装置に記憶された前記条件データは、前記学習手段の学習結果に基づいて更新される、付記2から8のいずれか1項に記載の注意喚起システム。
(付記10)
前記急激な燃焼は、フラッシュオーバー又はバックドラフトである、付記2から9のいずれか1項に記載の注意喚起システム。
(付記11)
前記判定手段は、前記消防隊員が装着する装着具、又は前記環境から遠隔の地に設置されるサーバに設けられている、付記2から10のいずれか1項に記載の注意喚起システム。
(付記12)
環境情報を検出する少なくとも1つのセンサが前記環境情報を検出するステップと、
前記センサの検出結果及び記憶装置に記憶された、特定インシデントが起こる条件を表す条件データに基づいて、前記特定インシデントが起こる可能性を判定するステップと、
前記判定するステップにより前記特定インシデントが起こる可能性があると判定された場合、前記特定インシデントが起こる可能性がある旨を注意喚起するステップと、を備える、注意喚起方法。
(付記13)
前記センサは、消防隊員が装着する装着具に取り付けられ、前記消防隊員が活動する環境の環境情報を検出するセンサであり、
前記特定インシデントは、急激な燃焼である、付記12に記載の注意喚起方法。
【符号の説明】
【0100】
1 注意喚起システム
10 スマートマスク
10a ヘッドアップディスプレイ
10b 赤外線カメラ
10c 可視カメラ
11 制御BOX
11a 制御部
11b RAM
11c ROM
11d 通信部
20 隊長端末
21 制御部
22 タッチパネル
23 ディスプレイ
24 通信部
30 サーバ
31 制御部
31a 判定部
31b 学習部
32 記憶装置
32a 条件データ
33 通信部
40 ガスセンサ
50 温度センサ
60 センサ
61 注意喚起手段
G1 画面
G2 画面
a1 遠隔支援メッセージ表示領域
a2 カメラ映像表示領域
a3 表示領域
a4 突入経過時間表示領域
a5 検知対象ガス濃度表示領域
NW 通信回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7