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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】光ネットワーク管理装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/032 20130101AFI20231017BHJP
   H04L 45/247 20220101ALI20231017BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20231017BHJP
   H04B 10/27 20130101ALI20231017BHJP
【FI】
H04B10/032
H04L45/247
H04J14/02
H04B10/27
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022073969
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2021022212の分割
【原出願日】2015-09-15
(65)【公開番号】P2022093513
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2014195303
(32)【優先日】2014-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/エラスティック光通信ネットワーク構成技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【弁理士】
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 慎介
(72)【発明者】
【氏名】竹下 仁士
(72)【発明者】
【氏名】樋野 智之
(72)【発明者】
【氏名】田島 章雄
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-171258(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047101(WO,A1)
【文献】特開2021-093739(JP,A)
【文献】特開2019-146272(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/00-10/90
H04J 14/00-14/08
H04L 12/00-12/26
H04L 12/50-12/955
H04L 45/00-49/9057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の運用パスを第一の物理経路に設定し、前記複数の運用パスのそれぞれに対応する複数の予備パスを、前記第一の物理経路とは異なる複数の物理経路にそれぞれ設定する光パス設定手段と、
前記運用パスと前記予備パスの中から前記運用パスを含む複数パスで障害が発生した場合、障害が発生した前記複数パスが設定された物理経路とは異なる前記複数の物理経路のうちの少なくとも一つに、前記予備パスの帯域を変更した障害時光パスを少なくとも設定する障害時光パス設定手段、とを備える
光ネットワーク管理装置。
【請求項2】
前記帯域の変更は、障害発生時の帯域保証率に基づいて行われる
請求項1に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項3】
前記帯域の変更は、波長スロット数の変更を用いて行われる
請求項1または2に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項4】
前記帯域の変更は、トラヒック要求の優先度に基づいて行われる
請求項1から3のいずれか一項に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項5】
前記優先度に基づいて、該優先度が低いトラヒック要求の棄却または該優先度に応じた波長リソース割り当てが行われる
請求項4に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項6】
前記帯域の変更は、トラヒック要求毎の余剰の波長リソースの等分割を用いて行われる
請求項1から3のいずれか一項に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項7】
前記光パス設定手段は、前記複数の運用パスのそれぞれに対応する前記複数の予備パスを、通信品質が略同一である物理経路に設定する
請求項1から6のいずれか一項に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項8】
前記障害時光パス設定手段が設定した結果である障害時の光パス設定情報を光ノード装置に通知する
請求項1から7のいずれか一項に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項9】
前記通知は、前記光ノード装置における入出力方路の変更を光パス単位で生じさせる 請求項8に記載した光ネットワーク管理装置。
【請求項10】
前記通知は、前記光ノード装置において変調方式の変更を生じさせる
請求項8に記載した光ネットワーク管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ネットワーク管理装置に関し、特に、基幹系光ネットワークに用いられる光ネットワーク管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基幹系光ネットワークは、クライアント装置のトラヒックを契約サービス品質(サービスクラス)に従って、拠点間を接続する光ファイバ通信路を介して通信する機能を提供する。ここで基幹系光ネットワークは、ノード装置とクライアント装置との間のインターフェースを介してクライアント信号を受信する。そして、種々の多重方式を用いて複数のクライアント信号を多重した後に、より大容量な基幹伝送通信路を介して通信する。多重方式には、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)方式、時分割多重(Time Division Multiplexing:TDM)方式、および直交周波数分割多重(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:OFDM)方式などが用いられる。
【0003】
基幹系光ネットワークでは、1チャネル当たり100Gbps(Giga bit per second)級の超大容量トラヒックの通信が行われている。そのため基幹系光ネットワークにおいては、光ファイバの断線や光ノード装置の故障等に起因する障害に対する障害回復技術と、光周波数資源の利用効率を向上させる技術が重要となる。
【0004】
障害回復技術として、1+1プロテクション方式および共有型プロテクション方式などが知られており、このような障害回復技術の一例が特許文献1に記載されている。
【0005】
特許文献1に記載された信号切替装置は、信号切替部、ユーザ信号を冗長化のため分岐する分岐部、装置全体の監視および制御を行う装置監視制御部を備えている。信号切替装置は、現用経路、第一予備経路、第二予備経路を介して、ユーザ信号を他方の信号切替装置へ送信している。他方の信号切替装置では上記の経路からの受信信号を受け、信号監視部で現用経路、予備経路の信号状態を監視した上で、選択部により正常な信号を選択し、ユーザ装置へ出力している。
【0006】
現用経路が正常な場合は、信号切替部は現用経路と接続するように設定されている。現用経路に障害が発生した場合は、受信側の切替装置の選択部にて第一予備経路からの信号が選択され、ユーザ装置に出力される。
【0007】
予備経路の信号監視部は第一予備経路を監視している。第一予備経路からの信号に信号断、誤り率のしきい値超過等の障害を検出すると、装置監視制御部は信号切り替え部を制御して、第一予備経路から第二予備経路に接続を切り替える。
【0008】
このような構成としたことにより、予備系を常に正常に維持できるので、送受信ノード間の伝送路や装置の2重故障にも対応可能な高信頼1+1冗長構成を実現できる、としている。
【0009】
一方、光周波数資源を有用に利用するために、エラスティック光ネットワーク方式が提案されている(例えば、特許文献2参照)。エラスティック光ネットワーク方式においては、複数のノードが光ファイバで接続されたネットワーク上において、光信号を送受信するノード間の経路に、光信号の伝送容量に応じた必要最小限の周波数帯域を割り当てることが可能である。またエラスティック光ネットワーク方式では、割り当てる周波数帯域を所定の周波数幅を1スロット単位としたスロットの個数によって柔軟に決定することができる。
【0010】
このように、エラスティック光ネットワーク方式によれば、トラヒックの所要容量に応じて光パスの所要波長スロット数を変化させることができる。これにより、従来の固定グリッド網では活用できなかった余剰の波長資源にも光パスを割り当てることができ、光ネットワークの利用効率を向上させることが可能になる。
【0011】
また、関連技術としては、特許文献3~5に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2008-301509号公報
【文献】特開2014-045463号公報
【文献】特開2010-166328号公報
【文献】特開2006-033319号公報
【文献】特開2003-224585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した障害回復技術においては、現用経路に対して第一予備経路と第二予備経路を備える構成としている。すなわち、複数箇所で同時に障害が発生した場合に備えて複数の予備パスをあらかじめ設定しておき、障害発生時に残存する予備パスに切替えることにより障害による影響を回避することとしている。
【0014】
この場合、1個のトラヒック要求を収容するために、3本以上の光パスを用意するための波長資源が必要となる。そのため、光ネットワークの利用効率が大幅に低減するという問題がある。
【0015】
このように、光ネットワークにおいては、光ネットワークの利用効率の低下を招くことなく、多重障害発生時の障害回復を図ることが困難である、という問題があった。
【0016】
本発明の目的は、上述した課題である、光ネットワークにおいては、光ネットワークの利用効率の低下を招くことなく、多重障害発生時の障害回復を図ることが困難である、という課題を解決する光ネットワーク管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の光ネットワーク管理装置は、複数の運用パスを第一の物理経路に設定し、複数の運用パスのそれぞれに対応する複数の予備パスを、第一の物理経路とは異なる複数の物理経路にそれぞれ設定する光パス設定手段と、運用パスと予備パスの中から複数パスで障害が発生した場合、障害が発生した予備パスが設定された物理経路とは異なる複数の物理経路のうちの少なくとも一つに、予備パスの帯域を変更した障害時光パスを少なくとも設定する障害時光パス設定手段、とを備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光ネットワーク管理装置によれば、光ネットワークの利用効率の低下を招くことなく、多重障害発生時の障害回復を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光通信システムの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムの概略構成を示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムを構成する光ネットワーク管理装置と光ノード装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムを構成する光ノード装置が備える帯域可変光トランスポンダの構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る光ネットワーク管理装置の動作を説明するためのフローチャートである。
図6A】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムの通常状態における構成を模式的に示す図である。
図6B】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムの多重障害発生時における構成を模式的に示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムのトラヒック要求に応じた構成を示す表である。
図8】本発明の第2の実施形態に係る光通信システムにおける障害回復動作を説明するためのシーケンス図である。
図9】本発明の第3の実施形態に係る光通信システムを構成する光ネットワーク管理装置と光ノード装置の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の第3の実施形態に係る光通信システムを構成する光ノード装置が備える予備パス設定DBが記録している内容の一例を示す表である。
図11】本発明の第3の実施形態に係る光通信システムにおける障害回復動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光通信システム1000の構成を示すブロック図である。光通信システム1000は、光ネットワーク管理装置100と光ノード装置200を有する。
【0022】
光ネットワーク管理装置100は、光パス設定手段110と障害時光パス設定手段120を備える。光パス設定手段110は、同一の物理経路上の複数の運用パスのそれぞれに対する予備パスを、互いに異なる物理経路に設定する。障害時光パス設定手段120は、物理経路のうち二以上の物理経路で障害が発生している場合における、障害が発生していない物理経路に、予備パスの帯域を圧縮した障害時予備パスを設定する。
【0023】
光ノード装置200は、障害時光パス設定手段120が設定した結果である障害時予備パス情報を用いて光信号を送受信する光送受信手段210を備える。
【0024】
次に、本実施形態による光パス設定方法について説明する。本実施形態による光パス設定方法においては、まず、同一の物理経路上の複数の運用パスのそれぞれに対する予備パスを、互いに異なる物理経路に設定する。そして、物理経路のうち二以上の物理経路で障害が発生している場合における、障害が発生していない物理経路に、予備パスの帯域を圧縮した障害時予備パスを設定する。
【0025】
このように、本実施形態による光通信システム1000および光パス設定方法においては、予備パスの物理経路の候補として複数の物理経路をあらかじめ設定しておき、各予備パスを分散配置する。そして、複数の物理経路で同時に障害が発生した場合、予備パスの光帯域を圧縮して障害を受けた光パスを収容する構成としている。これにより、光ネットワークの利用効率の低下を招くことなく、多重障害発生時の障害回復を図ることができる。
【0026】
ここで、光パス設定手段110は、複数の運用パスのそれぞれに対する複数の予備パスを、通信品質が略同一である物理経路に設定する構成とすることができる。また、障害時光パス設定手段120は、多重障害発生時における帯域保証率に基づいて、予備パスの帯域を圧縮する構成とすることができる。
【0027】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2に、本実施形態による光通信システム2000の概略構成を示す。同図に示すように、光通信システム2000は、光ネットワーク管理装置300と光ノード装置401~406を含んで構成され、各光ノード装置は光ファイバ通信路により接続される。
【0028】
図3に、本実施形態による光通信システム2000を構成する光ネットワーク管理装置300と光ノード装置401の構成を示す。
【0029】
光ネットワーク管理装置300は、データベース部310、光パス設計部320、および光パス割当制御部330を有する。
【0030】
データベース部310は、要求トラヒックDB(データベース)311、ネットワーク設備DB312、光パス管理DB313、および多重障害時帯域保証率DB314を備える。光パス設計部320は、経路探索部321、波長スロット・ファイバ割当決定部322、および多重障害時波長スロット数決定部323を備える。ここで、経路探索部321と波長スロット・ファイバ割当決定部322が光パス設定手段を構成し、多重障害時波長スロット数決定部323が障害時光パス設定手段を構成する。
【0031】
一方、光ノード装置401は、障害検知部410、帯域可変光トランスポンダ420、予備パス切替制御部430、および大粒度可変切替装置440を備える。ここで、帯域可変光トランスポンダ420と大粒度可変切替装置440が光送受信手段を構成する。
【0032】
光ネットワーク管理装置300が備える光パス割当制御部330は、各光ノード装置が備える障害検知部410および予備パス切替制御部430と接続している。ここで、光パス割当制御部330が光パス割当制御手段を構成し、障害時光パス設定手段が設定した結果である障害時予備パス情報を光ノード装置401に通知する。また、予備パス切替制御部430が障害時予備パス情報受付手段を構成し、障害時予備パス情報を受け付ける。
【0033】
図4に、帯域可変光トランスポンダ420の構成を示す。帯域可変光トランスポンダ420は、クライアントインターフェース421、帯域可変部422、および光送受信装置423を備える。
【0034】
帯域可変光トランスポンダ420が予備パス切替制御部430から予備パス切替制御信号S1を受け付けると、帯域可変部422は帯域保証率に応じて波長スロット数を変更し、光送受信装置423は占有波長スロットと変調方式を変更する。帯域保証率が100%を下回る場合には、帯域可変部422はクライアントインターフェース421に対してバックプレッシャー信号S2を送出し、クライアント信号の帯域制御を実施する。
【0035】
大粒度可変切替装置440は光ファイバ通信路に接続され、光パス単位で入出力方路を変更する。大粒度可変切替装置440としては例えば、光クロスコネクト装置、帯域可変型波長選択スイッチ等を用いることができる。
【0036】
次に、本実施形態に係る光ネットワーク管理装置300の動作について説明する。図5は、本実施形態に係る光ネットワーク管理装置300の動作を説明するためのフローチャートである。
【0037】
光ネットワーク管理装置300においてはまず、経路探索部321が要求トラヒックDB311から着信順に同一ノード間の通信トラヒック要求を抽出する(ステップS210)。経路探索部321はネットワーク設備DB312に蓄積されている経路情報を参照し、抽出したトラヒック要求の始点ノードと終点ノードを結ぶ互いに重複の無い経路(物理経路)を全て探索する(ステップS220)。このとき検索アルゴリズムとして、k番目の最短経路(k-th shortest path)アルゴリズムや線形計画法などを用いることができる。
【0038】
続いて、トラヒック要求に対応する運用パス数と、このときの経路探索数のうち小さい方の値を予備パスの分散経路数とする(ステップS230)。ここで分散経路数は、予備パスを分散して配置する場合における経路候補の数である。予備パスを分散した経路上に配置することにより、複数の経路において障害が同時に発生した場合であっても、残存する予備パスに障害を受けた光パスを収容させることが可能になる。これにより、多重障害発生時の障害回復を図ることができ、通信の途絶を回避することができる。
【0039】
次に、波長スロット・ファイバ割当決定部322は、経路のリンク品質に基づいて通信トラヒック要求を収容するための波長スロット数および変調方式を決定する(ステップS240)。このとき、リンク品質が最良な経路を運用パスとし、残りの経路群を予備パスとする。
【0040】
波長スロット・ファイバ割当決定部322は、通信を確立するための空き波長スロットが存在するかを調べる(ステップS250)。空き波長スロットが不足している場合には(ステップS250/NO)、ファイバを増設(ステップS260)した後に、空き波長スロットに光パスを割り当てる(ステップS270)。そして、光パス割当結果を光パス管理DB313に保存する。
【0041】
要求トラヒックDB311が管理する全てのトラヒック要求に対して光パスの割り当てを決定した後に(ステップS280/NO)、光パス設計部320は光パス割当結果を光パス割当制御部330に通知する。光パス割当制御部330は各光ノード装置401~406に光パス設計結果を通知する(ステップS290)。
【0042】
各光ノード装置401~406は、光ネットワーク管理装置300の光パス設計結果に基づいてそれぞれの動作を設定する。
【0043】
なお、光ネットワーク管理装置300は、予備パスをリンク品質が略同一となる分散経路に割り当てるように制御することが望ましい。これは、同一のサービスに対してリンク品質が異なると、光パス間の遅延によりサービス品質が低下するためである。この場合、予備パスの光リンクの変調方式などを、同一方式に設定することができる。そのため、管理パラメータの個数を低減することができ、多重障害発生時に高速な光パスの切り替えを実現することが可能になる。
【0044】
次に、本実施形態による光通信システム2000における障害回復動作について説明する。
【0045】
図6A、6Bに、本実施形態による光通信システム2000の構成を模式的に示す。図6Aは通常状態、図6Bは多重障害発生時における光通信システム2000の構成である。
【0046】
図6Aに示すように、光ノード装置401と光ノード装置406との間の2個のトラヒック要求W301、W302に対して、光パスプロテクションを設定する場合を例として説明する。図7に示すように、2個のトラヒック要求W301、W302に対する予備パスB301、B302は互いに重複が無い経路に割り当てられる。すなわち、予備パスB301は、光ノード装置401、402、403、406を経由する物理経路に割り当てられる。一方、予備パスB302は、光ノード装置401、404、405、406を経由する物理経路に割り当てられる。
【0047】
図6Bに示すように、光ノード装置401と光ノード装置406との間、および光ノード装置404と光ノード装置405との間の複数の経路で同時に障害が発生すると、運用パスW301とW302、および予備パスB302が途絶する。この場合における障害回復動作を、図8のシーケンス図を用いて説明する。
【0048】
光ネットワーク管理装置300はまず、各光ノード装置401~406に光パス設定を通知する(ステップS310)。その後に多重障害が発生すると、光ノード装置401および光ノード装置406がそれぞれ備える障害検知部410は、光ネットワーク管理装置300の光パス割当制御部330に障害発生を通知する(ステップS320)。障害発生通知を受け付けると、光ネットワーク管理装置300が備える多重障害時波長スロット数決定部323は、多重障害時帯域保証率DB314を参照して多重障害時における予備パスの波長スロット割当を決定する(ステップS330)。そして、光ネットワーク管理装置300が備える光パス割当制御部330は、予備パスの波長スロット割当の設定値を光ノード装置401、406が備える予備パス切替制御部430に通知する。その後、光ノード装置401および光ノード装置406がそれぞれ備える予備パス切替制御部430は、帯域可変光トランスポンダ420と大粒度可変切替装置440を制御し、障害を受けた光パスの予備パスを稼働させる(ステップS340)。
【0049】
図7に示したように、本実施形態の光通信システム2000においては、運用パスW301とW302に対して多重障害発生時帯域保証率が共に50%に設定されているものとしている。この場合、運用パスの波長スロット数を2個とすると、多重障害発生時の波長スロット数は運用パスの半分である1個となる。したがって、図6Bにおいて障害が発生していない経路、すなわち光ノード装置402と光ノード装置403を経由する経路に、運用パスW301とW302に対してスロット数が1個の予備パスを2本収容することができる。
【0050】
このように、本実施形態による光通信システム2000においては、予備パスを互いに重複の無い複数の物理経路上に分散配置する。そして、複数の物理経路で同時に障害が発生した場合には、多重障害発生時帯域保証率に応じて予備パスの波長スロット数を削減して、障害を受けた予備パスを収容する構成としている。これにより、光ネットワークの利用効率の低下を招くことなく、多重障害発生時の障害回復を図ることができる。その結果、通信の途絶を防止することができる。
【0051】
多重障害時帯域保証率に基づく所要の波長スロット数に対して、残存する波長リソースが不足する場合には、各光パスに割り当てる波長リソースを保証率以下に設定することにより通信の接続性を保つことができる。また、トラヒック要求に優先度が設けられている場合には、優先度が低いトラヒック要求を棄却することにより、残存する波長リソースに相当する分だけの障害回復を実施することとしてもよい。これらの処理と並行して、障害時に経路を再計算することによって障害回復を行うリストレーション方式によって、障害回復用の波長リソースを確保することとしてもよい。この後に、多重障害時帯域保証率を満足するように予備パスを再設計することが可能である。
【0052】
上述した場合と反対に、多重障害時帯域保証率に基づく所要の波長スロット数に対して、残存する波長リソースが余剰となる場合には、余剰の残存する波長リソースをトラヒック要求毎に等分割して割り当てることができる。また、トラヒック要求に優先度が定義されている場合には、優先度に応じた重み付けを実施して余剰の波長リソースを割り当てることとしてもよい。
【0053】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図9に、本実施形態による光通信システム3000を構成する光ネットワーク管理装置300と光ノード装置402の構成を示す。
【0054】
光ネットワーク管理装置300は、データベース部310、光パス設計部320、および光パス割当制御部330を有する。この構成は、第2の実施形態による光ネットワーク管理装置と同様である。
【0055】
光ノード装置402は、障害検知部410、帯域可変光トランスポンダ420、予備パス切替制御部430、および大粒度可変切替装置440を備える。ここまでの構成は、第2の実施形態による光ノード装置401の構成と同様である。本実施形態による光ノード装置402は、これらに加えて予備パス設定管理部450をさらに備える。
【0056】
予備パス設定管理部450は、予備パス設定DB451と予備パス事前設計I/F(インターフェース)452を備える。予備パス設定DB451は障害時予備パス情報記録手段を構成し、障害時予備パス情報をあらかじめ記録する。そして、障害時予備パス情報記録手段としての予備パス設定DB451が記録している障害時予備パス情報を用いて、光送受信手段としての帯域可変光トランスポンダ420が光信号を送受信する構成とした。
【0057】
図10に、予備パス設定DB451が記録している内容の一例を示す。予備パス設定DB451は、想定される障害発生パターン毎に、予備パスの帯域保証率と所要波長スロット、および障害回復経路を保持している。障害発生パターンが膨大になる場合には、光ネットワーク管理装置300が逐次、予備パス設定DB451を更新する構成としてもよい。これにより、予備パス設定DB451のメモリ容量が増大するのを回避することができる。なお、障害回復経路として大粒度可変切替装置440の接続ポートを記録することとしてもよい。
【0058】
次に、本実施形態による光通信システム3000の障害発生時の動作について説明する。図11は、本実施形態の光通信システム3000が備える光ネットワーク管理装置300および光ノード装置402の動作を説明するためのシーケンス図である。
【0059】
光ネットワーク管理装置300はまず、光パス設定の計算結果を各光ノードに通知する(ステップS410)。その後に、光ノード装置402に割り当て済みの光パスの障害発生パターンをm重障害発生まで算出する(ステップS420)。ここで、「m」は0以上の整数であり、少なくとも2以上であることが望ましい。そして、想定される各障害発生パターンに対して、障害を受けずに残存している予備パスの経路と波長スロットを算出する(ステップS430)。このとき、予備パスのリソースのうち、多重障害時帯域保証率に基づく所要波長スロット数を確保することが可能な予備パスの経路と波長スロットを算出する。光ネットワーク管理装置300は多重障害回復用の光パスの設定を、光ノード装置402が備える予備パス事前設計I/F452に通知する。予備パス事前設計I/F452は、この設定を予備パス設定DB451に保存する(ステップS440)。
【0060】
予備パス事前設定I/F452は障害検知部410から障害発生通知を受信すると(ステップS450)、予備パス設定DB451を参照して、対応する障害発生パターンに合致する予備パス設定を予備パス切替制御部430に通知する(ステップS460)。予備パス切替制御部430は、この設定通知に基づいて帯域可変光トランスポンダ420と大粒度可変切替装置440の設定を変更する(ステップS470)ことにより、障害回復を実施する。以後、障害が発生する度に逐次、ステップS460、S470の動作を実施する。
【0061】
次に、(m-k)重の障害が発生した場合(ステップS500)、光ノード装置402が備える予備パス事前設計I/F452は、光ネットワーク管理装置300に対して(m+1)重障害発生時の予備パス設定を算出するように要求する(ステップS510)。ここで、「k」は0以上m未満の整数値である。なお、「k」の値は、予備パスの設定に要する時間および各光ノード装置に搭載するメモリ量を考慮して決定することができる。障害発生数が(m-k)となる時点において予備パス設定の再計算を行うことにより、通信の途絶を回避することができる。
【0062】
このとき、光ネットワーク管理装置300は、光ノード装置402に割り当て済みの光パスに対して、障害が発生するパターンを算出する(ステップS520)。その後に、想定される障害発生パターンに対して、障害を受けずに残存している予備パスの経路と波長スロットを算出する(ステップS530)。このとき、予備パスのリソースのうち、多重障害時帯域保証率に基づく所要波長スロット数を確保することが可能な予備パスの経路と波長スロットを算出する。
【0063】
これ以降の動作はステップS440からステップS470の動作と同様である。すなわち、光ネットワーク管理部300は多重障害回復用の光パスの設定を、光ノード装置402が備える予備パス事前設計I/F452に通知する。予備パス事前設計I/F452は、この光パス設定を予備パス設定DB451に保存する。予備パス切替制御部430は対応する障害発生パターンに合致する予備パス設定に基づいて、帯域可変光トランスポンダ420と大粒度可変切替装置440の設定を変更することにより、障害回復を実施する。
【0064】
新規光パスの追加や削除、またはリストレーションによって光パス設定が変更された場合には、光ネットワーク管理装置300が適宜、変更された光パス設定を各光ノード装置が備える予備パス設定管理部450に通知する。そして、予備パス設定管理部450は予備パス設定DB451を更新する。
【0065】
上述したように、本実施形態による光通信システム3000は、光ノード装置402が予備パス設定管理部450を備える構成としている。そのため、光ネットワーク管理装置300における遅延の影響を受けることなく、多重障害発生時の予備パスを高速に設定することが可能である。
【0066】
以上説明したように、本実施形態による光通信システム3000においては、予備パスを互いに重複の無い複数の物理経路上に分散配置する。そして、複数の物理経路で同時に障害が発生した場合には、多重障害発生時帯域保証率に応じて予備パスの波長スロット数を削減して、障害を受けた予備パスを収容する構成としている。これにより、光ネットワークの利用効率の低下を招くことなく、多重障害発生時の障害回復を図ることができる。その結果、通信の途絶を防止することができる。
【0067】
以上、上述した実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上述した実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0068】
1000、2000 光通信システム
100、300 光ネットワーク管理装置
110 光パス設定手段
120 障害時光パス設定手段
200、401~406 光ノード装置
210 光送受信手段
310 データベース部
311 要求トラヒックDB
312 ネットワーク設備DB
313 光パス管理DB
314 多重障害時帯域保証率DB
320 光パス設計部
321 経路探索部
322 波長スロット・ファイバ割当決定部
323 多重障害時波長スロット数決定部
330 光パス割当制御部
410 障害検知部
420 帯域可変光トランスポンダ
421 クライアントインターフェース
422 帯域可変部
423 光送受信装置
430 予備パス切替制御部
440 大粒度可変切替装置
450 予備パス設定管理部
451 予備パス設定DB
452 予備パス事前設計I/F
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11