(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】比重計測装置
(51)【国際特許分類】
G01N 9/00 20060101AFI20231017BHJP
E21B 21/00 20060101ALI20231017BHJP
G01N 5/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01N9/00 Z
E21B21/00 A
G01N5/00 A
(21)【出願番号】P 2022166972
(22)【出願日】2022-10-18
(62)【分割の表示】P 2018228251の分割
【原出願日】2018-12-05
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】和知 康晴
(72)【発明者】
【氏名】森下 智貴
(72)【発明者】
【氏名】三浦 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】吉本 和哲
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-131365(JP,U)
【文献】特開昭64-063841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 9/00
G01N 5/00
E21B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
安定液の比重を計測する比重計測装置であって、
上面が開口した一定容量の円筒形状の容器と、
この容器内の安定液の重量を計測する圧力計とを備え、
前記圧力計は、
前記容器の上端部から比重を計測する容積に応じた取付位置に取り付けられ、
前記容器の下端は、孔の内部に充填された前記安定液が流れる供給管に接続されており、
前記容器には、前記供給管を介して下方から安定液が供給され、
前記容器の内部に供給された安定液を、上方に流した後、前記容器の上開口からオーバーフローさせ、
前記圧力計
を用いて前記容器内の安定液の圧力を計測することにより、前記取付位置から上方にある
前記安定液の重量を、前記安定液の比重として特定することを特徴とする比重計測装置。
【請求項2】
前記容器の下方には、バルブを介して、前記容器の内部の安定液を排出するドレーン管が設けられ、
前記
供給管のバルブを閉じるとともに前記ドレーン管のバルブを開くことにより、前記容器内の安定液を排出することで、前記安定液の比重のキャリブレーションを実行することを特徴とする請求項1に記載の比重計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちのコンクリート杭や地中連続壁の工事等で使われる安定液の比重を計測する比重計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
掘削した孔の孔壁崩壊防止のために安定液(ベントナイト泥水)が用いられる。この安定液の性状は、孔内に構築する杭体コンクリートの品質に影響することがあるため、安定液の性状を測定している。一般に、安定液の粘度、比重及び砂分率は、ファンネル粘度計、マッドバランス及び砂分計をそれぞれ用いて計測される。更に、安定液の性状を定期的に測定する技術もある(例えば、特許文献1参照。)。この文献に記載の泥水の性状測定方法では、安定液の比重、粘度及び砂分率を計測する。この場合、砂分率は、泥水測定容器から流出させた泥水に含まれる砂分を分級し、分級した砂分の重量を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、砂分率等の安定液の性状を測定するには、何れも、時間と手間が掛かっていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する比重計測装置は、安定液の比重を計測する比重計測装置であって、上面が開口した一定容量の円筒形状の容器と、この容器内の安定液の重量を計測する圧力計とを備え、前記圧力計は、前記容器の上面から低い取付位置に取り付けられ、前記容器の下端は、孔の内部に充填された前記安定液が流れる供給管に接続されており、前記容器には、前記供給管を介して下方から安定液が供給され、前記容器の内部に供給された安定液を、上方に流した後、前記容器の上開口からオーバーフローさせ、前記圧力計が前記取付位置から上方にある前記容器内の安定液の圧力を計測することにより前記安定液の重量を計測する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、安定液の砂分率を効率的に計測して安定液の性状を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態における評価装置のシステム構成を説明する説明図。
【
図2】実施形態における比重差を説明する説明図であって、(a)は従来用いられていた砂分計を示し、(b)は、空気、水及び土粒子の関係を説明する説明図。
【
図3】実施形態における従来法による砂分率と換算砂分との関係を説明する説明図であって、(a)は各安定液の計測値、(b)は(a)の数値を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図3を用いて、比重計測装置を具体化した一実施形態を説明する。ここでは、杭孔から排出して回収する安定液の砂分率等の性状を計測して評価する。
【0009】
図1に示すように、掘削された杭孔10の内部は、安定液11で充填される。杭孔10の底部に、ポンプ15を配置する。このポンプ15には、回収管16が接続される。ポンプ15を駆動させて、回収管16から安定液11を杭孔10の外部に排出する。回収管16は、プラント17に接続される。プラント17は、安定液の砂分を沈降させて除去する複数の水槽を備える。そして、プラント17は、回収した安定液の砂分を各水槽において沈殿させ、砂分を除去した良好な安定液を、杭孔10に供給する。これにより、杭孔10内の安定液を、良好な安定液と置換する。
【0010】
回収管16には、バルブ(図示せず)を介して供給管18が分岐により接続される。この供給管18は、評価装置20に接続され、回収管16を流れる安定液の一部を評価装置20に供給する。ここでは、回収管16を流れる流量に対して、安定液の1/5~1/30程度の量を供給管18に供給する。本実施形態では、供給管18に流す量を、回収管16を流れる安定液の1/15程度に設定する。
【0011】
評価装置20は、第1比重計測部21、第2比重計測部22、泥水槽23、サイクロン装置25及び粘度計測部26を備える。第1比重計測部21、第2比重計測部22及び粘度計測部26にそれぞれに供給された安定液は、泥水槽23に蓄積後、プラント17に供給される。
【0012】
評価装置20において、供給管18は、砂分除去装置としてのサイクロン装置25に接続される。更に、供給管18の分岐管が、バルブ21vを介して、第1比重計測部21に接続される。この第1比重計測部21は、供給管18を流れる安定液の比重(第1計測値)を測定する。第1比重計測部21は、上面が開口した一定容量の円筒形状の容器21cと、容器21c内の安定液の重量を計測する圧力計21aとを備える。
【0013】
容器21cの下端には分岐管が接続され、容器21cには下方から安定液が供給される。この供給によって容器21c内部の安定液が上方に流れ、容器21cの上開口から溢れる。更に、第1比重計測部21の容器21cの下方には、バルブを介して、必要に応じて容器21c内部の安定液を排出するためのドレーン管21dが設けられる。
【0014】
圧力計21aは、容器21cにおいて上面から所定距離(例えば1m)低い位置(取付位置)に取り付けられる。そして、圧力計21aは、取付位置から上方にある容器21c内の安定液の重量(圧力)を計測し、その計測値を、安定液の比重として管理ユニット30に送信する。
【0015】
また、供給管18の分岐管は、粘度計測部26に接続される。この粘度計測部26は、供給管18を流れる安定液の粘度を計測する。本実施形態では、この粘度計測部26として振動式粘度計を用いる。
【0016】
供給管18に接続されるサイクロン装置25は、安定液中に含まれる砂分(0.075mm以上の粒径の土粒子)を分離する遠心分離器である。このサイクロン装置25は、供給管18を流れる安定液から分離した砂分を、下方から排出する。また、サイクロン装置25は、砂分を分離した安定液を、上部に接続した排出管28を介して、泥水槽23に排出する。このサイクロン装置25の詳細は、後述する。
【0017】
排出管28の分岐管は、バルブを介して第2比重計測部22に接続される。第2比重計測部22は、排出管28を流れる安定液の比重を測定する。ここでは、第2比重計測部22は、第1比重計測部21と同じ構成である。この第2比重計測部22も、一定容量の円筒形状の容器22cと、容器22c内の安定液の重量(圧力)を計測する圧力計22aを備える。更に、第2比重計測部22の容器22cの下方には、バルブを介して、ドレーン管22dが設けられる。
【0018】
更に、評価装置20は、管理ユニット30を備える。管理ユニット30は、第1比重計測部21、第2比重計測部22及び粘度計測部26に接続され、これらが計測した計測値を取得する。
【0019】
管理ユニット30は、制御部31及び表示部32を備える。
制御部31は、安定液に含まれる砂分率を算出する。砂分率は、泥水(安定液)中に存在する砂の容積の割合である。制御部31は、第1比重計測部21により計測した比重(第1計測値)及び第2比重計測部22により計測した比重(第2計測値)を取得する。そして、制御部31は、第1計測値及び第2計測値と、予め記憶している砂分算出式(後述する(2)式)とを用いて砂分率を算出する。この砂分率の算出の詳細は後述する。そして、制御部31は、算出した砂分率、計測した安定液の比重(第1計測値)、粘度計測部26から取得した粘度を、メモリに記憶する。
【0020】
更に、管理ユニット30は、第1比重計測部21及び第2比重計測部22のバルブ21v,22v、ドレーン管21d,22dのバルブの開閉制御を行なう。
表示部32は、安定液の比重、粘度、砂分率を表示するディスプレイである。
【0021】
<サイクロン装置25>
次に、砂分を除去するサイクロン装置25の詳細について説明する。
ここで、砂分を分離するためには、サイクロン装置25の有効径と、安定液のサイクロン装置25の滞留時間とから算出する砂の沈降速度を考慮する。
サイクロン装置25における砂の沈降速度(V)は、ストークスの式(以下の(1)式)で示される。
V=(ρs-ρw)gD2/18μ=(ρs-ρw)Vt2D2/18μr…(1)
【0022】
ここで、ρsは砂の密度(2.65×103kg/m3)、ρwは水の密度(1.00×103kg/m3)、gは重力加速度(9.807m/s2)、μは泥水の粘度(Pa・s)、Dは砂粒子の直径(m)、rは遠心場の半径(m)、Vtは周速度(m/s)である。
上述した(1)式に示したように、砂の沈降速度は、除去対象となる砂粒子の直径、周速度及び粘度の影響を受ける。
【0023】
砂の粒径は0.075mm~2mmである。本実施形態では、実際の現場で発生する土砂の性状を考慮して、サイクロン装置25は、安定液中に含まれる砂の粒径を除去できるように設定する。また、杭孔10内の安定液を置換する作業中において、安定液の粘度の変動分を考慮し、サイクロン装置25の周速度を調整する。この周速度は、サイクロン装置25の直径(形状)やサイクロン装置25の流速で決まるため、安定液の速度(流入速度)により調整する。なお、泥水の粘度が更に増加することが考えられる場合には、サイクロン装置25の周速度を更に高くする。
【0024】
<砂分率の算出方法>
次に、
図2及び
図3を用いて、制御部31が実行する砂分率の算出方法について説明する。ここで、本実施形態の算出方法を用いて算出した砂分率(%)を換算砂分と称する。
本実施形態の制御部31は、次の(2)式により換算砂分x(%)を算出する。
x=140×(ρi-ρf)/(2.65-ρf)…(2)
ここで、ρi,ρfは、それぞれ、サイクロン装置25を通過する前の安定液の比重(第1計測値)、通過後の安定液の比重(第2計測値)である。この換算砂分の算出は、比重差が主として砂分に起因するものとして、比重差と砂分の損失の差とから求められる。
【0025】
具体的には、
図2(a)を用いて、砂分計50を用いた従来法による砂分率の計測方法について説明する。この砂分計50では、これに入れた100mLの安定液を用いる。砂分計50は、この中の75μm以下の粒子をフルイで取り除いて水で洗浄し、水51中に残存した砂(75μm以上の土粒子)の積層容積を測定することにより、砂分率を取得する。例えば、砂分率が5%とは、砂分計50に入れた100mLの安定液中に5mLの砂が含まれることを示している。
【0026】
安定液100mL当りのサイクロン装置25を通過する前後の比重差による質量差は、次の通りに示される。
比重差による質量差=100×(ρi-ρf)…(3)
【0027】
ここで、
図2(b)の土(砂)の構成図に示すように、空気、水及び土粒子の体積を、それぞれVa,Vw,Vsとし、空気と水の合計の体積をVv,空気と水と土粒子の合計の体積をVとする。
そして、サイクロン装置25を通過する前後の砂分の損失による質量差は、砂分計50の砂が堆積する部分の砂52の間隙率をn(=Vv/V×100)、砂の密度をρs(=2.65g/cm
3)とすると、次の通りに示される。
砂分の損失による質量差=(ρs-ρf)×x×(1-n/100)…(4)
【0028】
サイクロン装置25を通過した前後の比重による質量差と、砂分の損失による質量差は(概ね)等しいので、上記(3)式及び(4)式から、次式が得られる。
100×(ρi-ρf)=(ρs-ρf)×x×(1-n/100)…(5)
【0029】
この(5)式を、換算砂分xについて変形すると、次式が得られる。
x=100(ρi-ρf)/((ρs-ρf)×(1-n/100))…(6)
【0030】
ここで、評価装置20の特質と、砂52の間隙比を考慮した係数をαとすると、換算砂分xの値は、次式で表される。この係数αは、評価装置20の使用条件ごとに個別に設定可能である。
x=α×(ρi-ρf)/(ρs-ρf)
今回は、実験時の測定値の相関から、α=140とし、また、砂の比重を2.65として、次式で換算した。
x=140×(ρi-ρf)/(2.65-ρf)
【0031】
<従来法による砂分率と換算砂分との関係>
図3(a)には、異なる性状の安定液について、砂分計50で計測した(従来法による)砂分率と、本発明の換算砂分とを示している。更に、
図3(b)には、従来法よる砂分率の値を横軸に取り、換算砂分を縦軸に取ったグラフを示す。これによれば、従来法による砂分率と換算砂分とがほぼ対応し、換算砂分が従来法とほぼ同じ精度であることを示している。
【0032】
<評価装置20の計測処理>
次に、
図1に示した評価装置20における計測処理について説明する。
まず、杭孔10に配置されたポンプ15を駆動して、杭孔10の安定液を、回収管16を介して、プラント17に排出する。更に、プラント17において、調整された安定液を杭孔10に供給する。
【0033】
ここで、回収管16の安定液の一部は、供給管18を介して、評価装置20のサイクロン装置25に供給される。この場合、バルブ21vが開いているので、供給管18から第1比重計測部21に安定液を供給する。本実施形態では、評価装置20を流れる安定液の流量の一部(例えば、30%以下)が第1比重計測部21に流れるように調整する。この安定液は、第1比重計測部21の容器21cの下方から供給され、容器21c内の安定液を上へと流して、容器21cの上からオーバーフローさせる。第1比重計測部21の圧力計21aは、定期的に(例えば、5秒毎に)容器21c中の安定液の圧力(比重)を計測する。圧力計21aは、計測した安定液の測定値(第1計測値)を管理ユニット30に送信する。
【0034】
更に、供給管18の分岐管を介して、安定液は粘度計測部26に供給される。粘度計測部26は、安定液の粘度を、定期的に(例えば、5秒毎に)計測し、計測した測定値(粘度)を管理ユニット30に送信する。
【0035】
また、サイクロン装置25で砂分が除去された安定液は、排出管28を介して泥水槽23に排出される。この場合、バルブ22vを開いて、排出管28の安定液を第2比重計測部22に供給する。本実施形態では、第1比重計測部21とほぼ同じ流量の安定液が、第2比重計測部22に流れるように調整する。この安定液は、第2比重計測部22の容器22cの下方から徐々に供給されるので、容器22c内の安定液は上へとゆっくり流れ、容器22cの上からオーバーフローする。第2比重計測部22の圧力計22aは、定期的(例えば、5秒毎)に容器22c中の安定液の圧力(比重)を計測し、計測した安定液の測定値(第2計測値)を管理ユニット30に供給する。
【0036】
管理ユニット30の制御部31は、取得した第1計測値及び第2計測値と砂分算出式とを用いて、砂分率を算出する。制御部31は、算出した砂分率と、同時期に取得した安定液の比重(第1計測値)及び粘度とを関連付けて、内蔵するメモリに記憶する。そして、管理ユニット30の制御部31は、安定液に関する情報(砂分率、比重及び粘度)を表示部32に表示する。管理者は、表示部32に表示された計測値(安定液の砂分率等)を監視する。
【0037】
また、管理ユニット30は、定期的に(例えば、30分毎に)、バルブ21v,22vを閉じて、ドレーン管21d,22dのバルブを開く。これにより、第1及び第2比重計測部(21,22)の容器(21c,22c)の下端から、容器21c,22c内の安定液が排出される。所定時間(例えば数秒)の経過後、ドレーン管21d,22dのバルブを閉じ、かつバルブ21v,22vを開いて、第1及び第2比重計測部(21,22)の容器(21c,22c)を安定液で満たした後、安定液の比重を再び計測する。これにより、一定時間間隔で、評価装置20のキャリブレーションが行なわれる。
【0038】
<具体例>
ここでは、回収液の砂分率について説明する。
例えば、第1比重計測部21の測定値(第1計測値)と第2比重計測部22の測定値(第2計測値)が、以下の表1に示す値であったと仮定する。この場合、換算砂分は、判定値(1.0%)以上であるため、安定液の置換作業を継続する。そして、換算砂分が判定値より小さくなった場合に、安定液の置換作業を停止する。
【0039】
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、サイクロン装置25に供給される安定液の比重(第1計測値)と、サイクロン装置25において砂分を除去した安定液の比重(第2計測値)とを含む式から、安定液の砂分率を算出する。これにより、安定液の砂分率を効率的に計測することができる。
【0041】
(2)本実施形態では、杭孔10からプラント17に回収される安定液の一部を評価装置20に流して、評価装置20において安定液の性状を評価する。これにより、杭孔10からプラント17へ流れる安定液の性状を効率的に評価することができる。
【0042】
(3)本実施形態では、第1及び第2比重計測部(21,22)の容器(21c,22c)の下端部に供給管18の分岐管が接続される。これにより、容器21c,22cには、下方から安定液が供給されて上方へと流れ、容器21c,22c内の一部を徐々に入れ替えながら、安定液の比重を計測するので、急激な性状変化を生ぜずに、流れる安定液の比重を連続して効率的に計測することができる。更に、第1比重計測部21が接続される供給管18から、第2比重計測部22が接続される排出管28まで、安定液は数秒で流れる。これにより、第1比重計測部21及び第2比重計測部22においては、ほぼ同じ安定液について、ほとんど遅延なく、ほぼ同時に比重を計測することができる。
【0043】
(4)本実施形態の第1及び第2比重計測部(21,22)は、容器(21c,22c)において、開口した上端部まで1mとなる位置に設けた圧力計21a,22aを備える。これにより、圧力計21a,22aは、容器21c,22c内の圧力を計測するので、各容器21c,22c内の安定液の比重を効率的に計測することができる。
【0044】
(5)本実施形態では、管理ユニット30の制御部31は、同時期において計測した安定液の比重、粘度、砂分率の計測値を表示部32に表示する。これにより、安定液の性状管理に必要な複数の性状を同時期に把握することができる。
【0045】
(6)本実施形態では、管理ユニット30の制御部31は、定期的に、第1比重計測部21及び第2比重計測部22のドレーン管21d,22dのバルブを開く。これにより、評価装置20のキャリブレーションを、一定時間間隔で行なうことができる。
【0046】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、第1比重計測部21が計測した第1計測値から第2比重計測部22が計測した第2計測値を減算(引き算)した比重差を、砂の比重(2.65)から第2計測値を減算した比重差で除算して、係数(140)を乗算することで砂分率を算出した。安定液の砂分率は、この係数(140)や算出方法に限定されず、例えば、第1計測値を第2計測値で除算した値を、対応する換算テーブルを用いて砂分率を算出する等、第1計測値と第2計測値との比較結果を用いて、砂分率を計測することができればよい。更に、計測した粘度に応じて砂分率を調整して算出してもよい。具体的には、第1計測値と第2計測値とを比較した値を、計測した粘度の値に応じた補正値を用いて補正し、この補正値に応じて砂分率を算出する。
【0047】
・上記実施形態では、管理ユニット30の制御部31は、算出した砂分率、計測した比重及び粘度を表示部32に表示した。これに加えて、制御部31が、算出した砂分率が基準値を超えたか否かを判定し、その判定結果を示してもよい。更に、管理ユニット30は、安定液の性状に関する情報であって、砂分率、比重及び粘度以外の情報、例えば、安定液のpHや濾過水量等を管理してもよい。更に、管理ユニット30に通信部を設け、砂分率、比重及び粘度を、管理者の端末に送信してもよい。
【0048】
・上記実施形態では、管理ユニット30の表示部32に表示された砂分率を管理者が監視する。これに代えて、管理ユニット30の制御部31が、砂分率が判定基準値以下となった場合に、安定液の回収及び供給を自動的に停止してもよい。この場合、回収管16及び供給管にバルブを設ける。そして、制御部31は、砂分率が判定基準値以下となった場合には、これらバルブを閉鎖する指示信号を出力して安定液の供給及び回収を制御する。
【0049】
・上記実施形態では、杭孔10からプラント17に流れる回収液について評価を行なった。評価する対象となる安定液は、杭孔10から回収される回収液に限らず、杭孔10に供給される供給液であってもよい。この場合には、プラント17から杭孔10に安定液を供給する管路に供給管を介して評価装置20を取り付ける。例えば、次の表2に示されるように、供給される安定液に含まれる砂分率が、基準値(例えば、1.0%)以下の場合には、安定液の供給を継続する。
【0050】
【0051】
そして、供給される安定液に含まれる砂分率が、基準値(例えば、1.0%)以上となる場合には、アラームを表示部32に表示してもよい。更に、このアラームを管理者の端末に送信してもよい。
更に、杭孔10からプラント17に流れる回収液の管路及びプラント17から杭孔10に供給される供給液の管路に、それぞれ評価装置20を設けてもよい。
【0052】
・上記実施形態では、供給管18を介して評価装置20に供給された安定液は、泥水槽23に一時的に蓄積された後、プラント17に還送する。泥水槽23に安定液を一時的に蓄積する代わりに、評価装置20に供給された安定液を、供給管18を接続した管路(上記実施形態では回収管18)の下流側に戻してもよい。
・上記実施形態では、砂分除去装置としてサイクロン装置25を用いた。砂分を除去することができる装置であれば、サイクロン装置25に限定されない。
【符号の説明】
【0053】
10…杭孔、11…安定液、15…ポンプ、16…回収管、17…プラント、18…測定供給管、20…評価装置、21…第1比重計測部、21a,22a…圧力計、21c,22c…容器、21d,22d…ドレーン管、21v,22v…バルブ、22…第2比重計測部、23…計測用泥水槽、25…サイクロン装置、26…粘度計測部、28…排出管、30…性状管理部、31…制御部、32…表示部、50…砂分計、51…水、52…砂。