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特許7367852電力管理装置、給電システム、及び電力管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】電力管理装置、給電システム、及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20231017BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20231017BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/32
H02J7/35 K
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022510228
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013413
(87)【国際公開番号】W WO2021192108
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】宇都 久和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真吾
(72)【発明者】
【氏名】直井 克夫
(72)【発明者】
【氏名】一 雅雄
(72)【発明者】
【氏名】光永 琢真
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-064814(JP,A)
【文献】特開2014-128152(JP,A)
【文献】特開2013-150369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02J 3/32
H02J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンバータを介して直流バスに接続された蓄電池の電池残量を取得する第1取得部と、
前記直流バスに電力を供給する電源装置に含まれる発電装置の発電量を取得する第2取得部と、
前記電池残量及び前記発電量に基づいて、前記直流バスに電力を供給する補助電源装置の起動又は停止を制御する制御部と、
を備え
前記制御部は、
前記電池残量が第1蓄電閾値よりも小さく、前記電池残量が第2蓄電閾値よりも大きく、かつ、前記発電量が第1発電閾値よりも小さい場合、前記補助電源装置を起動し、
前記電池残量が前記第2蓄電閾値よりも小さい場合、前記発電量によらずに前記補助電源装置を起動し、
前記第2蓄電閾値は、前記第1蓄電閾値よりも小さい、電力管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電池残量が第3蓄電閾値よりも大きく、前記電池残量が第4蓄電閾値よりも小さく、かつ、前記発電量が第2発電閾値よりも大きい場合、前記補助電源装置を停止し、
前記電池残量が第4蓄電閾値よりも大きい場合、前記発電量によらずに前記補助電源装置を停止し、
前記第4蓄電閾値は、前記第3蓄電閾値よりも大きい、請求項に記載の電力管理装置。
【請求項3】
前記発電装置は、再生可能エネルギー発電装置である、請求項1又は請求項2に記載の電力管理装置。
【請求項4】
直流電力を供給するための直流バスと、
発電装置を含み、前記直流バスに電力を供給する電源装置と、
前記直流バスに電力を供給する補助電源装置と、
前記直流バスに接続され、前記直流バスに供給されるバス電圧を負荷機器に供給される負荷電圧に変換する第1コンバータと、
蓄電池と、
前記蓄電池と前記直流バスとの間に設けられ、前記バス電圧と前記蓄電池の電池電圧とを双方向に変換可能な第2コンバータと、
前記第2コンバータを制御することによって前記蓄電池を充放電するとともに、前記蓄電池の電池残量及び前記発電装置の発電量に基づいて、前記補助電源装置の起動又は停止を制御する電力管理装置と、
を備え、
前記電力管理装置は、
前記電池残量が第1蓄電閾値よりも小さく、前記電池残量が第2蓄電閾値よりも大きく、かつ、前記発電量が第1発電閾値よりも小さい場合、前記補助電源装置起動し、
前記電池残量が前記第2蓄電閾値よりも小さい場合、前記発電量によらずに前記補助電源装置を起動し、
前記第2蓄電閾値は、前記第1蓄電閾値よりも小さい、給電システム。
【請求項5】
コンバータを介して直流バスに接続された蓄電池の電池残量を取得するステップと、
前記直流バスに電力を供給する電源装置に含まれる発電装置の発電量を取得するステップと、
前記電池残量及び前記発電量に基づいて、前記直流バスに電力を供給する補助電源装置の起動又は停止を制御するステップと、
を備え
前記補助電源装置の起動又は停止を制御するステップにおいては、
前記電池残量が第1蓄電閾値よりも小さく、前記電池残量が第2蓄電閾値よりも大きく、かつ、前記発電量が第1発電閾値よりも小さい場合、前記補助電源装置が起動され、
前記電池残量が前記第2蓄電閾値よりも小さい場合、前記発電量によらずに前記補助電源装置が起動され、
前記第2蓄電閾値は、前記第1蓄電閾値よりも小さい、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力管理装置、給電システム、及び電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光及び風力等の再生可能エネルギーを利用した発電装置が普及し始めている。再生可能エネルギー発電装置の発電量は不安定であるので、蓄電池が用いられることがある。例えば、発電量が負荷電力よりも多い場合には余剰電力が蓄電池に蓄積され、発電量が負荷電力よりも少ない場合には不足電力が蓄電池から放出される。さらに、再生可能エネルギー発電装置及び蓄電池に加えて、補助電源装置を備える給電システムが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-134933号公報
【文献】特開2019-9969号公報
【文献】特開2015-149792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
補助電源装置を動かすためには、例えば燃料及び商用電力が必要になるので、多大なコストが掛かるおそれがある。補助電源装置として電力系統が用いられる場合、電力系統が不安定な地域では、停電により給電システムに電力を供給できなくなるおそれがある。したがって、補助電源装置の稼働時間を短縮することが望まれている。
【0005】
本開示は、補助電源装置の稼働時間を短縮可能な電力管理装置、給電システム、及び電力管理方法を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る電力管理装置は、コンバータを介して直流バスに接続された蓄電池の電池残量を取得する第1取得部と、直流バスに電力を供給する電源装置に含まれる発電装置の発電量を取得する第2取得部と、電池残量及び発電量に基づいて、直流バスに電力を供給する補助電源装置の起動又は停止を制御する制御部と、を備える。
【0007】
この電力管理装置では、蓄電池の電池残量だけでなく、発電装置の発電量を考慮して、補助電源装置の起動又は停止が制御される。例えば、蓄電池の電池残量が減少したとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置を起動しないことが可能となる。補助電源装置が稼働している状況において、蓄電池に十分な電池残量が無かったとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置を停止することが可能となる。その結果、補助電源装置の稼働時間を短縮することが可能となる。
【0008】
制御部は、電池残量が第1蓄電閾値よりも小さく、かつ、発電量が第1発電閾値よりも小さい場合、補助電源装置を起動してもよい。この構成では、蓄電池の電池残量が第1蓄電閾値よりも小さくなったとしても、ある程度の発電量が得られる場合には、補助電源装置が起動されない。したがって、補助電源装置を起動するタイミングを遅らせることができる。その結果、補助電源装置の稼働時間を短縮することが可能となる。
【0009】
制御部は、電池残量が第1蓄電閾値よりも小さく、電池残量が第2蓄電閾値よりも大きく、かつ、発電量が第1発電閾値よりも小さい場合、補助電源装置を起動してもよく、電池残量が第2蓄電閾値よりも小さい場合、発電量によらずに補助電源装置を起動してもよい。第2蓄電閾値は、第1蓄電閾値よりも小さくてもよい。この構成では、蓄電池の電池残量が第1蓄電閾値よりも小さくなったとしても、蓄電池にある程度の電池残量があり、ある程度の発電量が得られる場合には、補助電源装置が起動されない。したがって、補助電源装置を起動するタイミングを遅らせることができる。その結果、補助電源装置の稼働時間を短縮することが可能となる。
【0010】
制御部は、電池残量が第3蓄電閾値よりも大きく、電池残量が第4蓄電閾値よりも小さく、かつ、発電量が第2発電閾値よりも大きい場合、補助電源装置を停止してもよく、電池残量が第4蓄電閾値よりも大きい場合、発電量によらずに補助電源装置を停止してもよい。第4蓄電閾値は、第3蓄電閾値よりも大きくてもよい。この構成では、蓄電池の電池残量が第4蓄電閾値よりも小さかったとしても、蓄電池にある程度の電池残量があり、ある程度の発電量が得られる場合には、補助電源装置が停止される。したがって、補助電源装置を停止するタイミングを早めることができる。その結果、補助電源装置の稼働時間を短縮することが可能となる。
【0011】
発電装置は、再生可能エネルギー発電装置であってもよい。この場合、再生可能エネルギーが用いられるので、コストを低減することが可能となる。
【0012】
本開示の別の側面に係る給電システムは、直流電力を供給するための直流バスと、発電装置を含み、直流バスに電力を供給する電源装置と、直流バスに電力を供給する補助電源装置と、直流バスに接続され、直流バスに供給されるバス電圧を負荷機器に供給される負荷電圧に変換する第1コンバータと、蓄電池と、蓄電池と直流バスとの間に設けられ、バス電圧と蓄電池の電池電圧とを双方向に変換可能な第2コンバータと、第2コンバータを制御することによって蓄電池を充放電する電力管理装置と、を備える。電力管理装置は、蓄電池の電池残量及び発電装置の発電量に基づいて、補助電源装置の起動又は停止を制御する。
【0013】
この給電システムでは、蓄電池の電池残量だけでなく、発電装置の発電量を考慮して、補助電源装置の起動又は停止が制御される。例えば、蓄電池の電池残量が減少したとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置を起動しないことが可能となる。補助電源装置が稼働している状況において、蓄電池に十分な電池残量が無かったとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置を停止することが可能となる。その結果、補助電源装置の稼働時間を短縮することが可能となる。
【0014】
本開示のさらに別の側面に係る電力管理方法は、コンバータを介して直流バスに接続された蓄電池の電池残量を取得するステップと、直流バスに電力を供給する電源装置に含まれる発電装置の発電量を取得するステップと、電池残量及び発電量に基づいて、直流バスに電力を供給する補助電源装置の起動又は停止を制御するステップと、を備える。
【0015】
この電力管理方法では、蓄電池の電池残量だけでなく、発電装置の発電量を考慮して、補助電源装置の起動又は停止が制御される。例えば、蓄電池の電池残量が減少したとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置を起動しないことが可能となる。補助電源装置が稼働している状況において、蓄電池に十分な電池残量が無かったとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置を停止することが可能となる。その結果、補助電源装置の稼働時間を短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の各側面及び各実施形態によれば、補助電源装置の稼働時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実施形態に係る給電システムを概略的に示す構成図である。
図2図2は、図1に示される電力管理装置のハードウェア構成図である。
図3図3は、図1に示される電力管理装置の機能ブロック図である。
図4図4は、各閾値の関係を示す図である。
図5図5は、図1に示される電力管理装置が行う起動制御の一連の処理を示すフローチャートである。
図6図6は、図1に示される電力管理装置が行う停止制御の一連の処理を示すフローチャートである。
図7図7は、図1に示される電力管理装置によって起動制御及び停止制御が行われた場合の補助電源装置の稼働時間を説明するための図である。
図8図8は、比較例の電力管理装置によって起動制御及び停止制御が行われた場合の補助電源装置の稼働時間を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。なお、図面の説明において同一要素には同一符号が付され、重複する説明は省略される。
【0019】
図1は、一実施形態に係る給電システムを概略的に示す構成図である。図1に示される給電システム1は、負荷機器Lに負荷電力WL(負荷電圧VL)を供給するシステムである。本実施形態では、給電システム1は、直流給電システムである。負荷機器Lは、直流電圧で動作する直流負荷機器であってもよく、交流電圧で動作する交流負荷機器であってもよい。直流負荷機器の例としては、LED(Light Emission Diode)照明器、DC(Direct Current)ファン、及びパーソナルコンピュータが挙げられる。交流負荷機器の例としては、洗濯機、冷蔵庫、及びエアーコンディショナが挙げられる。給電システム1は、直流バス2と、1又は複数の電源装置3と、補助電源装置5と、1又は複数のコンバータ6(第1コンバータ)と、1又は複数の蓄電装置7と、電力管理装置10と、を備える。
【0020】
直流バス2は、直流電力を供給する直流給電を行うための母線として機能するバスである。直流バス2は、電源装置3、補助電源装置5、蓄電装置7、及び負荷機器Lの設置場所に亘って敷設されている。直流バス2にはバス電圧Vbusが供給される。バス電圧Vbusは、高圧の直流電圧である。バス電圧Vbusは、コンバータ6の入力電圧の範囲に含まれるように設定される。バス電圧Vbusは、例えば、DC250V以上DC450V以下の電圧である。バス電圧Vbusの電圧値は、固定されていてもよく、変動してもよい。
【0021】
電源装置3は、直流バス2に電力を供給する装置である。本実施形態では、給電システム1は、1つの電源装置3を備えている。電源装置3の数は、1つに限られず、必要に応じて適宜変更され得る。電源装置3は、再生可能エネルギー発電装置31(発電装置)と、パワーコンディショナー32と、を含む。
【0022】
再生可能エネルギー発電装置31は、発電電力Wreを生成する装置である。再生可能エネルギー発電装置31の例としては、太陽光発電装置、風力発電装置、水力発電装置、及び地熱発電装置が挙げられる。再生可能エネルギー発電装置31は、パワーコンディショナー32を介して、直流バス2に接続されている。再生可能エネルギー発電装置31は、所定の電圧値の発電電圧Vreを生成し、発電電圧Vreに応じた発電電力Wreを出力する。発電電圧Vreは、直流電圧でもよく、交流電圧でもよい。
【0023】
パワーコンディショナー32は、直流バス2に接続されており、発電電圧Vreをバス電圧Vbusに変換する装置である。発電電圧Vreが直流電圧である場合、パワーコンディショナー32は、DC/DCコンバータを含む。発電電圧Vreが交流電圧である場合、パワーコンディショナー32は、AC(Alternating Current)/DCコンバータを含む。パワーコンディショナー32は、例えば、発電電圧Vreに基づいて内部で生成した直流電圧で動作する。パワーコンディショナー32は、電力管理装置10からの指令に基づき、再生可能エネルギー発電装置31の発電動作を制御することで、発電電力Wreを制御する。パワーコンディショナー32は、電力管理装置10からの指令に基づき、発電電圧Vreをバス電圧Vbusに変換し、バス電圧Vbusを直流バス2に供給する。
【0024】
パワーコンディショナー32は、再生可能エネルギー発電装置31から直流バス2に供給されている発電電力Wreを計測する電力計測機能を有している。パワーコンディショナー32は、例えば、周期的に発電電力Wreを計測する。パワーコンディショナー32は、発電電力Wreの計測値を電力管理装置10に送信する。
【0025】
補助電源装置5は、直流バス2に電力を供給する装置である。補助電源装置5は、商用電源51と、AC/DCコンバータ52と、を含む。商用電源51は、所定の電圧値の系統電圧Vsを含む系統電力Wsを供給する。系統電圧Vsは交流電圧である。商用電源51は、AC/DCコンバータ52を介して直流バス2に接続されている。
【0026】
AC/DCコンバータ52は、直流バス2に接続されており、系統電圧Vsをバス電圧Vbusに変換する装置である。系統電圧Vsは、交流電圧である。AC/DCコンバータ52は、例えば、系統電圧Vsに基づいて内部で生成した直流電圧で動作する。AC/DCコンバータ52は、電力管理装置10からの指令に基づき、系統電圧Vsをバス電圧Vbusに変換し、バス電圧Vbusを直流バス2に供給する。AC/DCコンバータ52は、商用電源51から直流バス2に供給されている系統電力Wsを計測する電力計測機能を有している。AC/DCコンバータ52は、例えば、周期的に系統電力Wsを計測する。AC/DCコンバータ52は、系統電力Wsの計測値を電力管理装置10に送信する。
【0027】
補助電源装置5は、安定的に電力を供給することが可能であるので、給電システム1全体の電力が不足している場合に電力を供給するよう制御される。なお、給電システム1を維持するために、系統電力Wsは、負荷電力WLの総和と給電システム1における待機電力との合計以上である。待機電力は、電力管理装置10の消費電力、及び補機類(不図示のリレー、ファン、及び小容量電源等)の消費電力を含む。
【0028】
コンバータ6は、直流バス2に接続されており、バス電圧Vbusを負荷電圧VLに変換する装置である。負荷電圧VLは、負荷機器Lに供給される電圧である。負荷機器Lは、コンバータ6を介して直流バス2に接続されている。コンバータ6は、例えば、バス電圧Vbusに基づいて内部で生成した直流電圧で動作する。本実施形態では、給電システム1は、4つのコンバータ6を備えている。コンバータ6の数は、4つに限られず、負荷機器Lの数に応じて変更され得る。
【0029】
コンバータ6は、電力管理装置10から起動指令を受信した場合、バス電圧Vbusを負荷電圧VLに変換し、負荷電圧VL(負荷電力WL)を負荷機器Lに供給する。負荷機器Lが直流負荷機器である場合、負荷電圧VLは直流電圧であり、コンバータ6はDC/DCコンバータである。負荷機器Lが交流負荷機器である場合、負荷電圧VLは交流電圧であり、コンバータ6はDC/ACコンバータである。コンバータ6は、電力管理装置10から停止指令を受信した場合、負荷電圧VLの供給を停止する。
【0030】
コンバータ6は、直流バス2から負荷機器Lに供給される負荷電流を上限電流値で制限する電流制限機能を有している。上限電流値は、電力管理装置10によって設定される。コンバータ6は、負荷電圧VL及び負荷電流に基づき、直流バス2から負荷機器Lに供給されている負荷電力WLを計測する電力計測機能を有している。コンバータ6は、例えば、周期的に負荷電力WLを計測する。コンバータ6は、負荷電力WLの計測値を電力管理装置10に送信する。
【0031】
蓄電装置7は、給電システム1で生じた余剰電力を蓄積し、給電システム1で生じた不足電力を供給するための装置である。供給電力の総和から負荷電力WLの総和を引くことによって得られる差分電力が0より大きい場合には、差分電力の大きさ(電力値)に等しい余剰電力が生じる。供給電力は、直流バス2に供給される電力である。本実施形態では、供給電力は、発電電力Wre、及び系統電力Wsである。各蓄電装置7には、蓄電装置7の数で余剰電力を均等に分割することによって得られる電力Wcが直流バス2から供給される。差分電力が0より小さい場合には、差分電力の大きさに等しい不足電力が生じる。各蓄電装置7からは、蓄電装置7の数で不足電力を均等に分割することによって得られる電力Wcが直流バス2に放出される。
【0032】
蓄電装置7の数は、3つに限られず、必要に応じて適宜変更され得る。各蓄電装置7は、蓄電池71と、BMU(Battery Management Unit:電池管理装置)72と、双方向DC/DCコンバータ73(第2コンバータ)と、を含む。
【0033】
蓄電池71は、充放電可能な装置である。蓄電池71は、双方向DC/DCコンバータ73を介して直流バス2に接続されている。蓄電池71の例としては、リチウムイオン電池、NAS(ナトリウム硫黄)電池、レドックスフロー電池、鉛蓄電池、及びニッケル水素電池が挙げられる。本実施形態では、複数の蓄電装置7に含まれる蓄電池71は、互いに同種で、かつ同じ蓄電容量を有している。蓄電容量は、蓄電可能な最大の蓄電量である。複数の蓄電装置7に含まれる蓄電池71は、互いに異なる種類の蓄電池でもよく、互いに異なる蓄電容量を有してもよい。蓄電池71は、例えば、複数の電池セルを含む。
【0034】
BMU72は、蓄電池71を管理する装置である。BMU72は、蓄電池71の電池電圧Vbatを計測する機能と、蓄電池71の充放電電流の電流値を計測してSOC(State of charge:残容量)を演算する機能と、を有する。BMU72は、蓄電池71を構成する複数の電池セルのセル電圧を計測する機能をさらに有してもよい。BMU72は、蓄電池71の電池情報を電力管理装置10に送信する。電池情報は、電池電圧Vbatの計測値、充放電電流の電流値、及びSOCを含む。電池情報は、複数の電池セルのセル電圧のうち最小のセル電圧を含んでもよい。BMU72は、周期的に電池情報を電力管理装置10に送信する。
【0035】
双方向DC/DCコンバータ73は、直流バス2に接続されており、バス電圧Vbusと電池電圧Vbatとを双方向に変換可能な装置である。双方向DC/DCコンバータ73は、蓄電池71と直流バス2との間に設けられている。電池電圧Vbatは、蓄電池71の電圧である。双方向DC/DCコンバータ73としては、公知の双方向DC/DCコンバータが用いられ得る。双方向DC/DCコンバータ73は、例えば、バス電圧Vbusに基づいて内部で生成した直流電圧で動作する。
【0036】
双方向DC/DCコンバータ73は、電力管理装置10によって制御される。具体的には、双方向DC/DCコンバータ73は、電力管理装置10から充電指令を受信した場合、バス電圧Vbusを電池電圧Vbatに変換するとともに、充電電流を直流バス2から蓄電池71に流す。これにより、蓄電池71が充電される。双方向DC/DCコンバータ73は、電力管理装置10から放電指令を受信した場合、電池電圧Vbatをバス電圧Vbusに変換するとともに、放電電流を蓄電池71から直流バス2に流す。これにより、蓄電池71が放電される。双方向DC/DCコンバータ73は、定電流方式で蓄電池71を充電又は放電してもよく、定電圧方式で蓄電池71を充電又は放電してもよい。
【0037】
双方向DC/DCコンバータ73は、電力管理装置10から停止指令を受信した場合、動作を停止させて消費電力を低減させるスリープ状態に移行する。双方向DC/DCコンバータ73は、スリープ状態において充電指令又は放電指令を受信した場合には、スリープ状態から脱して、充電処理又は放電処理を実行する。双方向DC/DCコンバータ73は、蓄電池71に供給する充電電流及び蓄電池71から放出される放電電流の各電流値を蓄電池71の最大電流値(例えば、45A)以下に制限する電流制限機能を有している。
【0038】
双方向DC/DCコンバータ73は、電力Wcを計測する電力計測機能を有している。双方向DC/DCコンバータ73は、例えば、周期的に電力Wcを計測する。双方向DC/DCコンバータ73は、電力Wcの計測値を電力管理装置10に送信する。
【0039】
電力管理装置10は、給電システム1全体を管理する装置(コントローラ)である。電力管理装置10は、EMS(Energy Management System)とも称される。電力管理装置10は、電源装置3、補助電源装置5、コンバータ6、及び蓄電装置7と通信線を介して互いに通信可能に接続されている。通信線は、有線及び無線のいずれで構成されてもよい。電力管理装置10は、RS-232C、RS-485、CAN(Controller Area Network)、及びイーサネット(登録商標)等の規格に準拠した通信を行ってもよい。
【0040】
電力管理装置10は、バス電圧Vbusを計測する電圧計測処理を行う。電力管理装置10は、バス電圧Vbusを直接的に計測してもよい。双方向DC/DCコンバータ73がバス電圧Vbusを計測して計測値を電力管理装置10に送信することによって、電力管理装置10がバス電圧Vbusを間接的に計測してもよい。
【0041】
電力管理装置10は、パワーコンディショナー32、AC/DCコンバータ52、コンバータ6、及び双方向DC/DCコンバータ73のそれぞれに、起動指令、及び停止指令を送信する。例えば、電力管理装置10は、コンバータ6に起動指令を送信することで、コンバータ6に負荷電圧VLを供給させる。電力管理装置10は、コンバータ6に停止指令を送信することで、コンバータ6に負荷電圧VLの供給を停止させる。他のコンバータについても同様である。
【0042】
電力管理装置10は、双方向DC/DCコンバータ73を制御することによって蓄電池71を充放電する充放電処理を行う。電力管理装置10は、差分電力に応じて充放電処理を行う。電力管理装置10は、供給電力の総和が負荷電力WLの総和よりも大きい場合(差分電力が0よりも大きい場合)、双方向DC/DCコンバータ73に充電指令を送信し、その差分電力である余剰電力を蓄電池71に蓄積させる。つまり、各蓄電池71には、蓄電池71の台数で余剰電力を均等に分割することによって得られる電力が蓄積される。電力管理装置10は、供給電力の総和が負荷電力WLの総和よりも小さい場合(差分電力が0よりも小さい場合)、双方向DC/DCコンバータ73に放電指令を送信し、不足電力を蓄電池71から放出させる。蓄電池71の台数で不足電力を均等に分割することによって得られる電力が各蓄電池71から放出される。
【0043】
電力管理装置10は、蓄電池71の電池残量及び再生可能エネルギー発電装置31の発電量に基づいて、補助電源装置5の起動又は停止を制御する。起動制御及び停止制御の詳細は後述する。
【0044】
図2は、図1に示される電力管理装置のハードウェア構成図である。図2に示されるように、電力管理装置10は、物理的には、1又は複数のプロセッサ101、メモリ102、及び通信インターフェース103等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成され得る。プロセッサ101の例としては、CPU(Central Processing Unit)が挙げられる。メモリ102は、主記憶装置と補助記憶装置とを含み得る。主記憶装置は、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等で構成される。補助記憶装置の例としては、半導体メモリ、及びハードディスク装置が挙げられる。通信インターフェース103は、他の装置とデータの送受信を行う装置である。通信インターフェース103は、例えば、RS-232C、RS-485、及びCANといった通信規格に準拠した通信モジュール、ネットワークインタフェースカード(NIC)又は無線通信モジュールで構成される。
【0045】
プロセッサ101が、メモリ102に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、プロセッサ101の制御のもとで各ハードウェアが動作し、メモリ102におけるデータの読み出し及び書き込みが行われる。これにより、電力管理装置10の図3に示される各機能部が実現される。
【0046】
図3は、図1に示される電力管理装置の機能ブロック図である。図3に示されるように、電力管理装置10は、機能的には、取得部11(第1取得部)と、取得部12(第2取得部)と、制御部13と、を備える。
【0047】
取得部11は、蓄電池71の電池残量を取得する機能部である。取得部11は、各BMU72から電池情報を受信し、各電池情報に含まれるSOCを各蓄電池71の残量として取得する。電池セルのセル電圧は電池セルのSOCに対応するので、取得部11は、各電池情報に含まれる最小のセル電圧を各蓄電池71の残量として取得してもよい。取得部11は、すべての蓄電池71の残量のうち、最小の残量を電池残量として取得する。取得部11は、すべての蓄電池71の残量の総和を電池残量として取得してもよい。なお、説明の便宜上、個々の蓄電池71の残量を単に「残量」と称し、後述の起動制御及び停止制御に用いられる残量を「電池残量」と称する。
【0048】
取得部12は、再生可能エネルギー発電装置31の発電量を取得する機能部である。取得部12は、パワーコンディショナー32から発電電力Wreの計測値を発電量として取得する。給電システム1が複数の電源装置3を備える場合、取得部12は、各パワーコンディショナー32から取得した発電電力Wreの計測値の総和を発電量とする。
【0049】
制御部13は、蓄電池71の電池残量及び再生可能エネルギー発電装置31の発電量に基づいて、補助電源装置5の起動又は停止を制御する機能部である。制御部13は、蓄電閾値Bdth1,Bdth2,Bcth1,Bcth2、及び発電閾値Gth1,Gth2を用いて補助電源装置5の起動制御及び停止制御を行う。
【0050】
図4に示されるように、蓄電閾値Bdth1,Bdth2は、蓄電池71が放電されているときに用いられる。蓄電閾値Bdth1(第1蓄電閾値)は、蓄電池71が空近傍であることを判定するための閾値である。蓄電閾値Bdth1は、蓄電閾値Bdth2よりも大きい値に設定される。蓄電閾値Bdth2(第2蓄電閾値)は、蓄電池71が空になる間近であることを判定するための閾値である。したがって、蓄電閾値Bdth2は、0よりもわずかに大きい値に設定される。
【0051】
蓄電閾値Bcth1,Bcth2は、蓄電池71が充電されているときに用いられる。蓄電閾値Bcth1(第4蓄電閾値)は、蓄電池71が空近傍の状態から脱していることを判定するための閾値である。蓄電閾値Bcth1は、蓄電閾値Bcth2よりも大きく、蓄電閾値Bdth1以上の値に設定される。蓄電閾値Bcth2(第3蓄電閾値)は、蓄電池71が空間近の状態を脱していることを判定するための閾値である。蓄電閾値Bcth2は、蓄電閾値Bdth2以上の値に設定される。
【0052】
発電閾値Gth1(第1発電閾値)は、再生可能エネルギー発電装置31の発電量が不足していることを判定するための閾値である。発電閾値Gth2(第2発電閾値)は、再生可能エネルギー発電装置31の発電量が十分であることを判定するための閾値である。発電閾値Gth2は、発電閾値Gth1よりも大きい値に設定される。
【0053】
次に、図5をさらに参照して、電力管理装置10が行う電力管理方法のうちの起動制御を説明する。図5は、図1に示される電力管理装置が行う起動制御の一連の処理を示すフローチャートである。図5の一連の処理は、例えば、補助電源装置5が停止されたことに応じて開始される。
【0054】
まず、取得部11が、蓄電池71の電池残量を取得する(ステップS11)。取得部11は、例えば、各BMU72から電池情報を受信し、各電池情報に含まれるSOCを各蓄電池71の残量として取得する。取得部11は、各電池情報に含まれる最小のセル電圧を各蓄電池71の残量として取得してもよい。
【0055】
そして、取得部11は、すべての蓄電池71の残量のうち、最小の残量を電池残量として取得する。取得部11は、すべての蓄電池71の残量の総和を電池残量として取得してもよい。そして、取得部11は、電池残量を制御部13に出力する。
【0056】
続いて、取得部12は、再生可能エネルギー発電装置31の発電量を取得する(ステップS12)。取得部12は、例えば、パワーコンディショナー32から発電電力Wreの計測値を発電量として取得する。なお、給電システム1が複数の電源装置3を備える場合、取得部12は、各パワーコンディショナー32から取得した発電電力Wreの計測値の総和を発電量とする。そして、取得部12は、発電量を制御部13に出力する。
【0057】
続いて、制御部13は、取得部11から電池残量を受け取り、取得部12から発電量を受け取ると、電池残量と蓄電閾値Bdth2とを比較することによって、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも小さいか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13において、電池残量が蓄電閾値Bdth2以上であると判定された場合(ステップS13;NO)、制御部13は、電池残量と蓄電閾値Bdth1とを比較することによって、電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さいか否かを判定する(ステップS14)。
【0058】
ステップS14において、電池残量が蓄電閾値Bdth1以上であると判定された場合(ステップS14;NO)、蓄電池71には十分な電池残量があるといえる。したがって、制御部13は、補助電源装置5を起動することなく、再びステップS11の処理を行う。一方、ステップS14において、電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さいと判定された場合(ステップS14;YES)、制御部13は、発電量と発電閾値Gth1とを比較することによって、発電量が発電閾値Gth1よりも小さいか否かを判定する(ステップS15)。
【0059】
ステップS15において、発電量が発電閾値Gth1以上であると判定された場合(ステップS15;NO)、蓄電池71にはある程度の電池残量があり、ある程度の発電量が得られる。したがって、制御部13は、補助電源装置5を起動することなく、再びステップS11の処理を行う。一方、ステップS15において、発電量が発電閾値Gth1よりも小さいと判定された場合(ステップS15;YES)、蓄電池71にはある程度の電池残量があるものの発電量が十分でない。したがって、制御部13は、補助電源装置5に起動指令を送信し、補助電源装置5を起動する(ステップS16)。以上により、起動制御の一連の処理が終了する。
【0060】
ステップS13において、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも小さいと判定された場合(ステップS13;YES)、蓄電池71が空になる間近である。したがって、制御部13は、発電量によらずに、補助電源装置5に起動指令を送信し、補助電源装置5を起動する(ステップS16)。以上により、起動制御の一連の処理が終了する。
【0061】
なお、ステップS13では、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも小さいか否かを判定しているが、電池残量が蓄電閾値Bdth2以下であるか否かを判定してもよい。同様に、ステップS14において、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bdth1以下であるか否かを判定してもよい。ステップS15において、制御部13は、発電量が発電閾値Gth1以下であるか否かを判定してもよい。
【0062】
つまり、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも大きく、電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さく、かつ、発電量が発電閾値Gth1よりも小さい場合、補助電源装置5を起動する。制御部13は、電池残量が発電閾値Gth1よりも小さい場合、発電量によらずに補助電源装置5を起動する。一方、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも大きく、電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さく、かつ、発電量が発電閾値Gth1よりも大きい場合、補助電源装置5を起動しない。制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも大きい場合には、発電量によらずに補助電源装置5を起動しない。
【0063】
発電量はステップS15において用いられるので、ステップS12は、ステップS15よりも前であればどのタイミングで行われてもよい。ステップS13において、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも小さいと判定された場合には、ステップS12は行われなくてもよい。
【0064】
次に、図6をさらに参照して、電力管理装置10が行う電力管理方法のうちの停止制御を説明する。図6は、図1に示される電力管理装置が行う停止制御の一連の処理を示すフローチャートである。図6の一連の処理は、例えば、補助電源装置5が起動されたことに応じて開始される。
【0065】
ステップS21,S22の処理は、ステップS11,S12と同様であるので、それらの説明を省略する。続いて、制御部13は、取得部11から電池残量を受け取り、取得部12から発電量を受け取ると、電池残量と蓄電閾値Bcth1とを比較することによって、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも大きいか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23において、電池残量が蓄電閾値Bcth1以下であると判定された場合(ステップS23;NO)、制御部13は、電池残量と蓄電閾値Bcth2とを比較することによって、電池残量が蓄電閾値Bcth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS24)。
【0066】
ステップS24において、電池残量が蓄電閾値Bcth2以下であると判定された場合(ステップS24;NO)、蓄電池71は空間近の状態である。したがって、制御部13は、補助電源装置5を停止することなく、再びステップS21の処理を行う。一方、ステップS24において、電池残量が蓄電閾値Bcth2よりも大きいと判定された場合(ステップS24;YES)、制御部13は、発電量と発電閾値Gth2とを比較することによって、発電量が発電閾値Gth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS25)。
【0067】
ステップS25において、発電量が発電閾値Gth2以下であると判定された場合(ステップS25;NO)、蓄電池71にはある程度の電池残量があるものの、十分な発電量が得られない。したがって、制御部13は、補助電源装置5を停止することなく、再びステップS21の処理を行う。一方、ステップS25において、発電量が発電閾値Gth2よりも大きいと判定された場合(ステップS25;YES)、蓄電池71にはある程度の電池残量があり、十分な発電量が得られる。したがって、制御部13は、補助電源装置5に停止指令を送信し、補助電源装置5を停止する(ステップS26)。以上により、停止制御の一連の処理が終了する。
【0068】
ステップS23において、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも大きいと判定された場合(ステップS23;YES)、蓄電池71には十分な電池残量がある。したがって、制御部13は、発電量によらずに、補助電源装置5に停止指令を送信し、補助電源装置5を停止する(ステップS26)。以上により、停止制御の一連の処理が終了する。
【0069】
なお、ステップS23では、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも大きいか否かを判定しているが、電池残量が蓄電閾値Bcth1以上であるか否かを判定してもよい。同様に、ステップS24において、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bcth2以上であるか否かを判定してもよい。ステップS25において、制御部13は、発電量が発電閾値Gth2以上であるか否かを判定してもよい。
【0070】
つまり、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bcth2よりも大きく、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも小さく、かつ、発電量が発電閾値Gth2よりも大きい場合、補助電源装置5を停止する。制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも大きい場合、発電量によらずに補助電源装置5を停止する。一方、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bcth2よりも大きく、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも小さく、かつ、発電量が発電閾値Gth2よりも小さい場合、補助電源装置5を停止しない。制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bcth2よりも小さい場合には、発電量によらずに補助電源装置5を停止しない。
【0071】
発電量はステップS25において用いられるので、ステップS22は、ステップS25よりも前であればどのタイミングで行われてもよい。ステップS23において、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも大きいと判定された場合には、ステップS22は行われなくてもよい。
【0072】
次に、図7及び図8を参照して、給電システム1及び電力管理装置10の作用効果を説明する。図7は、図1に示される電力管理装置によって起動制御及び停止制御が行われた場合の補助電源装置の稼働時間を説明するための図である。図8は、比較例の電力管理装置によって起動制御及び停止制御が行われた場合の補助電源装置の稼働時間を説明するための図である。図7及び図8の横軸は経過時間(単位:a.u.)を示す。「a.u.」は、任意単位(arbitrary unit)を意味する。図7及び図8の左側の縦軸は蓄電池の電池残量(単位:%)を示し、右側の縦軸は再生可能エネルギー発電装置の発電量(単位:W)を示す。
【0073】
比較例の電力管理装置は、蓄電閾値Bdth1のみを用いて補助電源装置5の起動制御を行う。具体的には、比較例の電力管理装置は、蓄電池71の電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さい場合に補助電源装置5を起動し、それ以外の場合には補助電源装置5を起動しない。比較例の電力管理装置は、蓄電閾値Bcth1のみを用いて補助電源装置5の停止制御を行う。具体的には、比較例の電力管理装置は、蓄電池71の電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも大きい場合に補助電源装置5を停止し、それ以外の場合には補助電源装置5を停止しない。
【0074】
図7及び図8に示される系統電力Wsの波形は、以下の条件の下で計算することによって得られた。負荷電力WLを20000W、系統電力Wsを30000W、発電電力Wre(発電量)を5000~8000Wとした。蓄電閾値Bdth2を8%、蓄電閾値Bcth2を9%、蓄電閾値Bdth1を10%、蓄電閾値Bcth1を17%、発電閾値Gth1を5000W、発電閾値Gth2を7000Wにそれぞれ設定した。
【0075】
図8に示されるように、比較例の電力管理装置は、電池残量が蓄電閾値Bdth1未満になると補助電源装置5を起動し、その後電池残量が蓄電閾値Bcth1を上回ると補助電源装置5を停止する。この例では、補助電源装置5の稼働時間は、280[a.u.]であった。
【0076】
一方、図7に示されるように、電池残量が蓄電閾値Bdth1未満であっても、発電電力Wreが発電閾値Gth1以上であるので、発電電力Wreによる補填が期待できる。このため、電力管理装置10は、電池残量が蓄電閾値Bdth2以上であり、かつ、発電電力Wreが発電閾値Gth1以上である間は補助電源装置5を起動しない。しかしながら、負荷電力WLが発電電力Wreよりも大きいので、電池残量が徐々に低下していく。そして、電力管理装置10は、電池残量が蓄電閾値Bdth2を下回ると補助電源装置5を起動する。
【0077】
これにより、蓄電池71が充電されて電池残量が徐々に増加する。そして、電池残量が蓄電閾値Bcth2を上回り、さらに発電電力Wreが発電閾値Gth2を上回ると、電力管理装置10は、補助電源装置5を停止する。この例では、補助電源装置5の稼働時間は、165[a.u.]であった。したがって、比較例と比べて補助電源装置5の稼働時間が4割ほど短縮された。
【0078】
以上説明した給電システム1、電力管理装置10、及び電力管理方法では、蓄電池71の電池残量だけでなく、再生可能エネルギー発電装置31の発電量を考慮して、補助電源装置5の起動又は停止が制御される。例えば、蓄電池71の電池残量が減少したとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置5を起動しないことが可能となる。補助電源装置5が稼働している状況において、蓄電池71の電池残量が十分多くなかったとしても、十分な発電量が得られる場合には、補助電源装置5を停止することが可能となる。その結果、補助電源装置5の稼働時間を短縮することが可能となる。補助電源装置5を稼働させる代わりに、再生可能エネルギーを利用しているので、コストを低減することが可能となる。
【0079】
上述のように、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さく、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも大きく、かつ、発電量が発電閾値Gth1よりも小さいという条件、又は、電池残量が蓄電閾値Bdth2よりも小さいという条件を満たした場合に、補助電源装置5を起動する。制御部13は、上記条件のいずれも満たしていない場合には補助電源装置5を起動しない。この構成では、蓄電池71の電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さくなったとしても、蓄電池71にある程度の電池残量があり、ある程度の発電量が得られる場合には、補助電源装置5が起動されない。したがって、補助電源装置5を起動するタイミングを遅らせることができる。その結果、補助電源装置5の稼働時間を短縮することが可能となる。
【0080】
上述のように、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bcth2よりも大きく、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも小さく、かつ、発電量が発電閾値Gth2よりも大きいという条件、又は、電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも大きいという条件を満たした場合に、補助電源装置5を停止する。制御部13は、上記条件のいずれも満たしていない場合には補助電源装置5を停止しない。この構成では、蓄電池71の電池残量が蓄電閾値Bcth1よりも小さかったとしても、蓄電池71にある程度の電池残量があり、ある程度の発電量が得られる場合には、補助電源装置5が停止される。したがって、補助電源装置5を停止するタイミングを早めることができる。その結果、補助電源装置5の稼働時間を短縮することが可能となる。
【0081】
なお、本開示に係る電力管理装置、給電システム、及び電力管理方法は上記実施形態に限定されない。
【0082】
例えば、電力管理装置10は、物理的又は論理的に結合した1つの装置によって構成されていてもよく、互いに物理的又は論理的に分離している複数の装置によって構成されてもよい。例えば、電力管理装置10は、クラウドコンピューティングのようにネットワーク上に分散された複数のコンピュータによって実現されてもよい。
【0083】
パワーコンディショナー32、AC/DCコンバータ52、コンバータ6、及び双方向DC/DCコンバータ73の少なくともいずれかは、電力計測機能を有していなくてもよい。この場合、電力管理装置10は、電圧センサによって計測された電圧の計測値と、電流センサによって計測された電流の計測値と、から各電力の計測値を取得してもよい。
【0084】
電源装置3は、再生可能エネルギー発電装置31に代えて、別の発電装置を備えてもよい。
【0085】
補助電源装置5は、商用電源51に代えて発電装置を備えてもよい。発電装置の例としては、ディーゼル発電機が挙げられる。この場合、補助電源装置5の数は、1つに限られず、必要に応じて適宜変更され得る。補助電源装置5が商用電源51を備えていない場合、給電システム1は、独立型の直流電源システムとも称される。
【0086】
上記実施形態では、パワーコンディショナー32、AC/DCコンバータ52、コンバータ6、及び双方向DC/DCコンバータ73のそれぞれは、装置内部で生成した直流電圧で動作している。この構成に代えて、給電システム1が電源ユニットを備え、電源ユニットが、直流バス2のバス電圧Vbusから一定の電圧値を有する直流電圧を生成し、各装置に直流電圧(電力)を供給してもよい。
【0087】
蓄電池71が空近傍であるか否かが頻繁に切り替わることを避けるために、蓄電閾値Bcth1は、蓄電閾値Bdth1よりも大きい値に設定されてもよい。同様に、蓄電池71が空間近であるか否かが頻繁に切り替わることを避けるために、蓄電閾値Bcth2は、蓄電閾値Bdth2よりも大きい値に設定されてもよい。
【0088】
起動制御において、ステップS13は省略されてもよい。つまり、制御部13は、電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さく、かつ、発電量が発電閾値Gth1よりも小さい場合、補助電源装置5を起動する。それ以外の場合には、制御部13は、補助電源装置5を起動しない。この構成では、蓄電池71の電池残量が蓄電閾値Bdth1よりも小さくなったとしても、ある程度の発電量が得られる場合には、補助電源装置5が起動されない。したがって、補助電源装置5を起動するタイミングを遅らせることができる。その結果、補助電源装置5の稼働時間を短縮することが可能となる。
【符号の説明】
【0089】
1…給電システム、2…直流バス、3…電源装置、5…補助電源装置、6…コンバータ(第1コンバータ)、10…電力管理装置、11…取得部(第1取得部)、12…取得部(第2取得部)、13…制御部、31…再生可能エネルギー発電装置(発電装置)、51…商用電源、71…蓄電池、73…双方向DC/DCコンバータ(第2コンバータ)、Bcth1…蓄電閾値(第4蓄電閾値)、Bcth2…蓄電閾値(第3蓄電閾値)、Bdth1…蓄電閾値(第1蓄電閾値)、蓄電閾値Bdth2…蓄電閾値(第2蓄電閾値)、Gth1…発電閾値(第1発電閾値)、Gth2…発電閾値(第2発電閾値)、L…負荷機器、Vbat…電池電圧、Vbus…バス電圧、VL…負荷電圧、Wre…発電電力、Ws…系統電力。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8