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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/13 20060101AFI20231017BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G02B6/13
G02B6/122 311
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023508566
(86)(22)【出願日】2022-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2022038856
(87)【国際公開番号】W WO2023074482
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2021175057
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】兼田 幹也
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋武
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/021505(WO,A1)
【文献】特開2015-108819(JP,A)
【文献】特開2010-232319(JP,A)
【文献】特開2008-020722(JP,A)
【文献】特開2006-276481(JP,A)
【文献】特開2003-279777(JP,A)
【文献】特開2010-044279(JP,A)
【文献】特開2014-002218(JP,A)
【文献】特開2017-016017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0286614(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに離間している複数のコア部形成領域、隣り合う前記コア部形成領域の間に位置する余白領域、および、前記余白領域と重なる位置に設けられている第2マークを含むコア層を備え、シート状をなしているワークを準備する工程と、
ここで、前記コア層は、以下の(a)、(b)(c)、(d)および(e)の全てを満たし、
(a)ポリマーおよびモノマーを含み、前記モノマーの濃度差または前記モノマー由来の構造の濃度差に基づく屈折率の分布を有し、
(b)前記コア部形成領域は、複数の第1コア部と、前記第1コア部の両側に設けられている第2コア部と、前記第1コア部と前記第2コア部との間に設けられている第1側面クラッド部と、を備え、かつ、前記コア部形成領域は、前記コア部形成領域の外縁に3本以上の前記第2コア部が位置付けられるように、画定され、
(c)前記コア部形成領域は、1mm角の範囲において前記第1コア部および前記第2コア部が占める合計の面積比率が50%以上となる領域であり、
(d)前記余白領域は、前記(c)を満たさず、かつ、前記第1側面クラッド部と一体になっている第2側面クラッド部を備え、
(e)前記第2マークは、前記第2側面クラッド部よりも屈折率が高い高屈折率部を有し、
前記ワークのうち、前記コア部形成領域の内側から光導波路を切り出す工程と、
を有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記第2コア部の少なくとも一方の端部の幅は、前記第1コア部と異なる請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記コア部形成領域と重なる位置に設けられている第1マークを有する請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記第1マークは、前記第2コア部よりも屈折率が低い低屈折率部を有する請求項3に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記低屈折率部は、前記第2コア部を横切るように配置されている請求項4に記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記光導波路は、光コネクターまたは光路変換部を備え、
前記ワークから切り出された部材に対し、前記第1マークを位置基準として前記光コネクターまたは前記光路変換部を配置する工程を有する請求項3ないし5のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記光導波路を切り出す工程における切り取り線は、前記光導波路が切り出された後の前記ワークに、前記第1コア部の長さ方向の一部が残るように設定されている請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光導波路の製造方法。
【請求項8】
前記余白領域は、さらに、前記コア部形成領域を取り囲むように設けられている請求項に記載の光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光導波路シートを準備する工程と、光導波路シートから長尺状の光導波路フィルムを切り出す工程と、を有する光導波路フィルムの製造方法が開示されている。また、光導波路シートは、複数のコア部を備えるコア層と、コア層を挟む2つのクラッド層と、を有すること、そして、コア層は、コア層形成用組成物を塗布して被膜を得る工程と、得られた被膜に紫外線のような活性光線を照射する工程と、被膜をオーブンで加熱する工程と、を経て形成されることが開示されている。このうち、コア層形成組成物は、ポリマーおよびモノマーを含むことが開示されている。また、モノマーは、活性光線の照射時において、コア層中の膜厚と直交する面内方向に移動し、照射領域と非照射領域との間で屈折率差を生じさせることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-084696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の光導波路フィルムの製造方法では、モノマーを移動させることにより、照射領域と非照射領域との間で屈折率差を生じさせる。このような原理で屈折率差を生じさせる場合、照射領域と非照射領域との境界線の密度が高い領域では、境界線の密度が低い領域に比べて、境界線を介した屈折率差が大きくなる傾向があることが、本発明者の検討によって見出された。
【0005】
したがって、照射領域と非照射領域との境界線の配置について、特に考慮していない場合には、境界線を介した屈折率差のバラつきが大きくなるおそれがある。
【0006】
特許文献1に記載の光導波路フィルムの製造方法では、光導波路シートを製造するとき、照射領域と非照射領域との境界線の密度について、特に考慮されていない。このため、光導波路シートが備える複数のコア部では、隣接するクラッド部との屈折率差にバラつきが生じているおそれがある。また、特許文献1には、光導波路シートから光導波路フィルムを切り出すことが開示されているが、切り取り線とコア部との位置関係についても開示されていない。このため、切り出し位置によっては、隣接するクラッド部との屈折率差がバラついている複数のコア部を備える光導波路フィルムが製造されるおそれがある。屈折率差のバラつきは、コア部同士の伝送損失がバラつく原因となる。
【0007】
本発明の目的は、チャンネル間における伝送損失のバラつきが少ない光導波路を製造可能な光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(8)の本発明により達成される。
(1) 互いに離間している複数のコア部形成領域、隣り合う前記コア部形成領域の間に位置する余白領域、および、前記余白領域と重なる位置に設けられている第2マークを含むコア層を備え、シート状をなしているワークを準備する工程と、
ここで、前記コア層は、以下の(a)、(b)(c)、(d)および(e)の全てを満たし、
(a)ポリマーおよびモノマーを含み、前記モノマーの濃度差または前記モノマー由来の構造の濃度差に基づく屈折率の分布を有し、
(b)前記コア部形成領域は、複数の第1コア部と、前記第1コア部の両側に設けられている第2コア部と、前記第1コア部と前記第2コア部との間に設けられている第1側面クラッド部と、を備え、かつ、前記コア部形成領域は、前記コア部形成領域の外縁に3本以上の前記第2コア部が位置付けられるように、画定され、
(c)前記コア部形成領域は、1mm角の範囲において前記第1コア部および前記第2コア部が占める合計の面積比率が50%以上となる領域であり、
(d)前記余白領域は、前記(c)を満たさず、かつ、前記第1側面クラッド部と一体になっている第2側面クラッド部を備え、
(e)前記第2マークは、前記第2側面クラッド部よりも屈折率が高い高屈折率部を有し、
前記ワークのうち、前記コア部形成領域の内側から光導波路を切り出す工程と、
を有することを特徴とする光導波路の製造方法。
【0009】
(2) 前記第2コア部の少なくとも一方の端部の幅は、前記第1コア部と異なる上記(1)に記載の光導波路の製造方法。
【0010】
(3) 前記コア部形成領域と重なる位置に設けられている第1マークを有する上記(1)または(2)に記載の光導波路の製造方法。
【0011】
(4) 前記第1マークは、前記第2コア部よりも屈折率が低い低屈折率部を有する上記(3)に記載の光導波路の製造方法。
【0012】
(5) 前記低屈折率部は、前記第2コア部を横切るように配置されている上記(4)に記載の光導波路の製造方法。
(6) 前記光導波路は、光コネクターまたは光路変換部を備え、
前記ワークから切り出された部材に対し、前記第1マークを位置基準として前記光コネクターまたは前記光路変換部を配置する工程を有する上記(3)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
(7) 前記光導波路を切り出す工程における切り取り線は、前記光導波路が切り出された後の前記ワークに、前記第1コア部の長さ方向の一部が残るように設定されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路の製造方法
【0013】
(8) 前記余白領域は、さらに、前記コア部形成領域を取り囲むように設けられている上記(1)に記載の光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、チャンネル間における伝送損失のバラつきが少ない光導波路を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、実施形態に係る光導波路の製造方法に用いられるワークを示す平面図である。
図2図2は、図1の部分拡大図である。
図3図3は、図2のA-A線断面図である。
図4図4は、図2に示すワークのうち、コア部形成領域の内側から切り出された光導波路の一例を示す平面図である。
図5図5は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための平面図である。
図6図6は、図5のB-B線断面図である。
図7図7は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図8図8は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図9図9は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図10図10は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図11図11は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図13図13は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図14図14は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図15図15は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
図16図16は、変形例に係る光導波路の製造方法で製造された光導波路を示す平面図である。
図17図17は、図2のE部拡大図である。
図18図18は、評価用光導波路が有するコア部を示す平面図である。
図19図19は、図18のF部拡大図である。
図20図20は、評価用光導波路についてチャンネルごとの相対損失を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の光導波路の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は、実施形態に係る光導波路の製造方法に用いられるワークを示す平面図である。図2は、図1の部分拡大図である。図3は、図2のA-A線断面図である。
【0020】
なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。さらに、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。
【0021】
1.ワーク
図1に示すワーク100は、図2に示す光導波路1の製造に用いられる部材であって、シート状をなしており、2個のユニット200を有している。各ユニット200は、2個のピース300を有している。ピース300からは、1個の光導波路1を切り出すことができる。したがって、ワーク100は、一度に4個の光導波路1を製造可能な部材である。なお、一度に製造可能な光導波路1の数は、1個以上であれば特に限定されない。また、ユニット200の数も限定されない。
【0022】
1.1.構造
図2は、ワーク100のうち、1つのピース300近傍を拡大した図である。
【0023】
図2に示すように、ピース300は、3本の導波コア部14(第1コア部)と、10本のダミーコア部16(第2コア部)と、12本の第1側面クラッド部15を有している。これらは、それぞれ長尺状をなし、X軸に沿って延在するとともに、Y軸に沿って並んでいる。なお、以下の説明では、導波コア部14およびダミーコア部16の双方を指して、単に「コア部」ということがある。また、ピース300が有するコア部の数は、特に限定されず、導波コア部14の数は、2本以上であり、ダミーコア部16の数は、3本以上であればよい。
【0024】
各導波コア部14のY軸方向の両側には、第1側面クラッド部15が隣接している。同様に、ダミーコア部16のY軸方向の両側にも、第1側面クラッド部15が隣接している。したがって、第1側面クラッド部15は、コア部同士の間に配置されている。また、これらの周りを囲うように、枠状をなす第2側面クラッド部17が設けられている。なお、以下の説明では、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17の双方を指して、単に「側面クラッド部」ということがある。
【0025】
各導波コア部14の両側には、第1側面クラッド部15を介して、ダミーコア部16が隣り合っている。導波コア部14には、光信号が入射され、Y軸に沿って光信号が伝送される。これにより、導波コア部14を介して光通信が可能になる。ダミーコア部16は、導波コア部14に隣り合って設けられることにより、導波コア部14同士の間隔が広すぎる場合に生じやすい、伝送損失の増大を抑制する。つまり、ダミーコア部16は、光信号を伝送するのではなく、導波コア部14における伝送効率を高める機能を有する。なお、導波コア部14同士の間には、2本以上のダミーコア部16が設けられていてもよい。また、ダミーコア部16に光信号を入射し、伝送するように用いられてもよい。
【0026】
図1に示すピース300のうち、Y軸方向の両端部では、導波コア部14を配置せず、第1側面クラッド部15を介して3本のダミーコア部16を並べている。これにより、ピース300の端部で、コア部と第1側面クラッド部15との屈折率差が小さくなった場合でも、その影響が、ピース300から切り出される光導波路1に及ぶのを防止することができる。この原理については、後に詳述する。
【0027】
ワーク100は、図3に示すように、第1カバー層18、第1クラッド層11、コア層13、第2クラッド層12および第2カバー層19がこの順で積層されている積層構造を備える。積層構造の各層は、X-Y面に沿って広がっている。ワーク100は、樹脂フィルムであり、可撓性を有する。なお、図1および図2は、ワーク100を上方から見た平面図であり、第2カバー層19および第2クラッド層12を介してコア層13を透視した図である。
【0028】
前述した導波コア部14、ダミーコア部16、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17は、コア層13中に設けられている。したがって、コア部は、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17と第1クラッド層11および第2クラッド層12とで囲まれることになり、内部に光を閉じ込めることができる。
【0029】
ここで、コア層13は、以下の要件(a)を満たしている。
(a)コア層13は、ポリマーおよびモノマーを含み、モノマーの濃度差またはモノマー由来の構造の濃度差に基づく屈折率の分布を有する。
【0030】
屈折率の分布とは、屈折率が高い部分と低い部分とが存在することをいう。本実施形態では、ポリマーと、モノマーまたはモノマー由来の構造とで、屈折率が異なっている。そして、本実施形態では、後者の屈折率が前者よりも低い。このため、濃度差に伴って屈折率の分布が形成される。そして、屈折率の分布に対応して、コア層13中に、導波コア部14、ダミーコア部16、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17が形成されている。
なお、コア層13中における各部は、構成材料の屈折率差に基づいて形成されてもよい。例えば、コア部14および側面クラッド部の構成材料を異ならせることでコア層13中に屈折率の分布を形成することができる。また、コア層13の構成材料として、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有しているポリマーを用いる方法を利用することができる。係る方法では、離脱性基の離脱によりポリマーの屈折率が低下するため、ポリマーは、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成し、コア層13中に屈折率の分布を形成することができる。コア層13中に屈折率の分布を形成する方法としては、様々な方法があるが、本実施形態では、コア層13がポリマーおよびモノマーを含み、モノマーの濃度差またはモノマー由来の構造の濃度差に基づいた屈折率の分布を有している。
【0031】
導波コア部14同士のY軸方向の幅およびダミーコア部16同士のY軸方向の幅は、それぞれ、互いに等しくても、互いに異なっていてもよい。また、導波コア部14のY軸方向の幅と第1側面クラッド部15の幅とは、互いに等しくても、互いに異なっていてもよい。
【0032】
さらに、導波コア部14は、途中で分岐していてもよいし、途中で他の導波コア部14と交差していてもよい。また、ダミーコア部16は、途中で分岐していてもよいし、途中で他のダミーコア部16と交差していてもよいし、途中で途切れていてもよい。
【0033】
ワーク100のX軸方向の全長は、特に限定されないが、100~3000mm程度であるのが好ましく、500~2000mm程度であるのがより好ましい。ワーク100のY軸方向の全幅も、特に限定されないが、10~500mm程度であるのが好ましく、50~200mm程度であるのがより好ましい。
【0034】
コア層13のZ軸方向の膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア層13に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0035】
第1クラッド層11および第2クラッド層12のZ軸方向の膜厚は、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~60μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0036】
第1カバー層18は、第1クラッド層11の下面に積層されている。第2カバー層19は、第2クラッド層12の上面に積層されている。これにより、ワーク100の機械的特性や耐久性を高めることができる。
【0037】
ワーク100のZ軸方向の膜厚は、50~300μmであるのが好ましく、60~200μmであるのがより好ましく、70~150μmであるのがさらに好ましい。これにより、ワーク100の可撓性を高めつつ、ワーク100の機械的強度を十分に確保することができる。
【0038】
1.2.コア部形成領域
コア層13は、図2に示すコア部形成領域130を含む。コア部形成領域130は、以下の要件(b)および(c)を満たす領域である。
【0039】
(b)コア部形成領域130は、複数の導波コア部14(第1コア部)と、導波コア部14の両側に設けられているダミーコア部16(第2コア部)と、導波コア部14とダミーコア部16との間に設けられている第1側面クラッド部15と、を備える。加えて、コア部形成領域130は、コア部形成領域130の外縁に複数のダミーコア部16(第2コア部)が位置付けられるように、画定される。
【0040】
(c)コア部形成領域130は、1mm角の範囲において導波コア部14およびダミーコア部16が占める合計の面積比率が50%以上となる領域である。
【0041】
図2に示すコア層13は、導波コア部14、ダミーコア部16、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17を有する。コア部形成領域130は、このコア層13のうち、コア部形成領域130の外縁に複数のダミーコア部16(第2コア部)が位置付けられるように画定され、面積比率が50%以上となるようにコア部が高密度に配置されている領域ということができる。換言すれば、コア部形成領域130は、その両側(Y軸のプラス側およびマイナス側)に複数のダミーコア部16(第2コア部)が位置付けられるように画定され、かつ、コア部と側面クラッド部との境界線が高密度に配置されている領域ということができる。具体的には、コア層13において1mm角の正方形を走査するとき、正方形内でコア部が占める面積比率が50%以上となる走査範囲が、コア部形成領域130となり得る。後述する切断工程S108では、ワーク100のうち、このコア部形成領域130の内側から光導波路1を切り出す。図2には、切り取り線CLの一例を示しているが、切り取り線CLは、図2に示すように、コア部形成領域130の内側に位置している。
【0042】
1.3.光導波路
図4は、図2に示すワーク100のうち、コア部形成領域130の内側から切り出された光導波路1の一例を示す平面図である。
【0043】
図4に示す光導波路1は、3本の導波コア部14と、6本のダミーコア部16と、8本の第1側面クラッド部15および2本の第2側面クラッド部17と、を有している。このような光導波路1は、例えば、他の光学部品と接続され、光配線を構築するのに用いられる。
【0044】
光導波路1の両端部の少なくとも一方には、図示しない光コネクター(フェルール)が装着されていてもよい。光コネクターを介して、光導波路1と他の光学部品とを固定するとともに、光学的に接続することができる。また、光導波路1は、導波コア部14を通過する光の光路を変換するミラーを有していてもよい。ミラーを介して光路を変換することにより、導波コア部14と、光導波路1の外部に設けられた光学部品と、を光学的に接続することができる。なお、ミラーに代えて屈曲導波路を用いてもよい。
【0045】
2.本実施形態が解決しようとする課題
次に、比較例に係る光導波路の製造方法を説明することにより、本実施形態が解決しようとする課題について説明する。
【0046】
図5は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための平面図である。図6は、図5のB-B線断面図である。図7ないし図10は、それぞれ、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。なお、図5ないし図10では、説明の便宜上、本実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。また、図7ないし図10は、図6のD部拡大図に相当する。
【0047】
図5に示すワーク100Xは、比較用コア部形成領域130Xの大きさが、前述したワーク100のコア部形成領域130より狭くなっており、かつ、比較用コア部形成領域130Xの外縁に複数のダミーコア部16(第2コア部)が位置付けられていないこと以外、本実施形態におけるワーク100と基本的に同様である。これにより、ワーク100Xでは、切り取り線CLが比較用コア部形成領域130Xよりも外側に位置している。以下では、この配置に伴って生じる課題を説明する。
【0048】
図6に示すように、ワーク100Xは、一部のダミーコア部16(Y軸のマイナス側に位置するダミーコア部16)が省略されている以外、ワーク100と基本的に同様である。ダミーコア部16が省略されている結果、比較用コア部形成領域130Xは、コア部形成領域130よりも小さくなっており、それに伴って切り取り線CLが比較用コア部形成領域130Xを越えて外側にはみ出している。
【0049】
比較例に係る光導波路の製造方法では、まず、図7(a)に示すように、基材500とコア形成層160との積層体であるコアフィルム600を用意する。
【0050】
コア形成層160の形成方法としては、例えば、ワニス状のコア形成用樹脂組成物を基材500上に塗布した後、乾燥させる方法、基材500上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0051】
コア形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0052】
モノマーとしては、可視光、紫外線、赤外線、レーザー光、電子線、X線等の活性放射線の照射により、照射領域において反応して反応物を生成する光重合性モノマーが挙げられる。また、モノマーは、活性放射線の照射時において、コア形成層160中の膜厚と直交する面内方向に移動可能であり、その結果として得られる図6に示すコア層13Xにおいて、活性放射線の照射領域と非照射領域との間で屈折率差を生じさせる構成であってもよい。
【0053】
次に、図7(b)に示すように、フォトマスク303を介して、コア形成層160の一部に活性放射線Rを照射する。図7(b)には、コア形成層160が含むポリマー131およびモノマー132を図示している。モノマー132やモノマー132由来の構造は、ポリマー131よりも屈折率が低い。
【0054】
活性放射線Rを照射した後、コア形成層160を加熱する。この加熱により、照射領域301に存在する重合開始剤が活性化し、モノマー132の反応が進行する。これにより、モノマー132の濃度差が生じ、それに伴ってモノマー132の移動が生じる。その結果、図8(d)に示すように、照射領域301におけるモノマー132の濃度が上昇するとともに、非照射領域302におけるモノマー132の濃度が低下する。これにより、照射領域301の屈折率は、モノマー132の影響を受けて低くなり、非照射領域302の屈折率は、ポリマー131の影響を受けて高くなる。その結果、図8(e)に示すように、導波コア部14、ダミーコア部16、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17を含むコア層13が得られる。
【0055】
図8(e)には、Y軸方向における屈折率nの分布をグラフで示している。モノマー132やそれに由来する構造の濃度差によって、屈折率nに分布が生じる。図8(e)に示す屈折率nの分布は、Y軸マイナス側に向かうほど、側面クラッド部の屈折率nが高くなっている。この結果、コア部と側面クラッド部との屈折率差は、Y軸マイナス側に向かうほど、減少している。以下、このようなY軸に沿った屈折率差の減少を「屈折率差の漸減」という。
【0056】
次に、図8(f)に示すように、コア層13に対し、クラッド形成層170および第2カバー層19の積層体であるクラッドフィルム702を積層する。その後、得られた部材を加熱する。これにより、コア層13とクラッドフィルム702とが接合し、図9(g)に示すように、コア層13を覆う第2クラッド層12が得られる。
次に、図9(h)に示すように、コア層13から基材500を剥離する。
【0057】
次に、図9(i)に示すように、コア層13に対し、クラッド形成層170および第1カバー層18の積層体であるクラッドフィルム701を積層する。その後、得られた部材を加熱する。これにより、コア層13とクラッドフィルム701とが接合し、図10(j)に示すように、コア層13を覆う第1クラッド層11が得られる。以上のようにして、図10(j)に示すワーク100Xが得られる。
【0058】
次に、図6に示す切り取り線CLに沿って、図10(k)に示すように、ダイシングブレードDBでワーク100Xを切断する。これにより、図10(L)に示すように、光導波路1Xが切り出される。
【0059】
図10(L)には、光導波路1XのY軸方向における屈折率の分布をグラフで示している。
【0060】
以上のような比較例に係る光導波路の製造方法では、前述したように、切り取り線CLの一部が比較用コア部形成領域130Xの外側に位置している。切り出された光導波路1Xのうち、比較用コア部形成領域130Xの外側に位置していた部分は、前述した屈折率差の漸減の影響を受ける。つまり、光導波路1Xでは、導波コア部14のY軸マイナス側に位置する側面クラッド部の屈折率n2が、Y軸プラス側に位置する側面クラッド部の屈折率n1より高くなる。その結果、導波コア部14を介したY軸方向の両側で、屈折率差のずれが大きくなる。このような屈折率差のずれは、導波コア部14の伝送損失が増加する原因となる。その結果、光導波路1Xが有する複数の導波コア部14、すなわち複数のチャンネルにおいて、チャンネル間における伝送損失にバラつきが生じる。
【0061】
後述する本実施形態に係る光導波路の製造方法によれば、上記のような課題を解決することができる。
【0062】
3.光導波路の製造方法
次に、実施形態に係る光導波路の製造方法について説明する。
【0063】
図11は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための工程図である。図12ないし図15は、それぞれ、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。なお、図12ないし図15は、図3のC部拡大図に相当する。
【0064】
図11に示す光導波路の製造方法は、ワーク準備工程S106と、切断工程S108と、を有する。
【0065】
ワーク準備工程S106では、コア部形成領域130を含むコア層13を備え、シート状をなしているワーク100を準備する。切断工程S108では、ワーク100のうち、コア部形成領域130の内側から光導波路1を切り出す。したがって、図2に示す切り取り線CLは、コア部形成領域130の内側に位置している。
以下、各工程について順次説明する。
【0066】
3.1.ワーク準備工程
ワーク準備工程S106は、図11に示すように、部材準備工程S100と、コア層形成工程S102と、クラッド層形成工程S104と、を有する。
【0067】
3.1.1.部材準備工程
部材準備工程S100では、図12(a)に示すコアフィルム600を準備する。また、部材準備工程S100では、図13(f)に示すクラッドフィルム702、および、図14(i)に示すクラッドフィルム701を準備する。以下、これらの部材について順次説明する。
【0068】
3.1.1.1.コアフィルム
コアフィルム600は、図12(a)に示すように、基材500とコア形成層160との積層体である。コアフィルム600は、フィルム形状であり、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0069】
コア形成層160の形成方法としては、例えば、ワニス状のコア形成用樹脂組成物を基材500上に塗布した後、乾燥させる方法、基材500上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0070】
樹脂組成物を塗布する方法では、例えば、スピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーターを用いて塗布する方法、スクリーン印刷のような印刷方法等が用いられる。
【0071】
樹脂膜を積層する方法では、ワニス状のコア形成用樹脂組成物から作製したフィルム状の樹脂膜を、例えばロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法等が用いられる。
【0072】
3.1.1.1.1.基材
基材500には、例えば、樹脂フィルムが用いられる。基材500の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0073】
なお、基材500には、必要に応じて、コア層13と基材500との剥離を容易にする離型処理等が施されていてもよい。
【0074】
3.1.1.1.2.コア形成用樹脂組成物
上記のコア形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0075】
3.1.1.1.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0076】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0077】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0078】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含む重合体が挙げられる。
【0079】
ポリマーの含有量は、例えば、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、コア層13の機械的特性が向上する。また、コア形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性が向上する。
【0080】
コア形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0081】
3.1.1.1.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0082】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0083】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0084】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0085】
モノマーとしては、可視光、紫外線、赤外線、レーザー光、電子線、X線等の活性放射線の照射により、照射領域において反応して反応物を生成する光重合性モノマーを用いてもよい。また、モノマーは、活性放射線の照射時において、コア形成層160中の膜厚と直交する面内方向に移動可能であり、その結果として得られるコア層13において、活性放射線の照射領域と非照射領域との間で屈折率差を生じさせる構成であってもよい。
【0086】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。これにより、上記の屈折率差の形成、すなわち屈折率変調をより確実に起こすことができる。
【0087】
3.1.1.1.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0088】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0089】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型の化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型の化合物等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0090】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0091】
3.1.1.1.2.4.その他
コア形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0092】
3.1.1.1.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のコア形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0093】
コア形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0094】
3.1.1.2.クラッドフィルム
クラッドフィルム701は、図14(i)に示すように、第1カバー層18とクラッド形成層170との積層体である。クラッドフィルム702は、図13(f)に示すように、第2カバー層19とクラッド形成層170との積層体である。クラッドフィルム701、702は、フィルム形状であり、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0095】
クラッド形成層170の形成方法としては、例えば、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物をカバー層上に塗布した後、乾燥させる方法、カバー層上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0096】
樹脂組成物を塗布する方法では、例えば、スピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーターを用いて塗布する方法、スクリーン印刷のような印刷方法等が用いられる。
【0097】
樹脂膜を積層する方法では、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物から作製したフィルム状の樹脂膜を、例えばロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法等が用いられる。
【0098】
3.1.1.2.1.カバー層
第1カバー層18および第2カバー層19の膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。各カバー層の膜厚が前記範囲内であれば、第1カバー層18および第2カバー層19によってコア層13等を保護する能力を確保しつつ、ワーク100が厚くなりすぎることの弊害、例えば製造される光導波路1の可撓性が低下すること等を抑制することができる。
【0099】
第1カバー層18および第2カバー層19の膜厚は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、膜厚の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。なお、膜厚が同じとは、膜厚の差が5μm以下であることをいう。
【0100】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0101】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、主材料の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。
【0102】
第1カバー層18および第2カバー層19の弾性率は、1~12GPaであるのが好ましく、2~11GPaであるのがより好ましく、3~10GPaであるのがさらに好ましい。なお、上記弾性率は、引張り弾性率とする。
【0103】
3.1.1.2.2.クラッド形成用樹脂組成物
上記のクラッド形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0104】
3.1.1.2.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0105】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0106】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0107】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含む重合体が挙げられる。
【0108】
また、ポリマーは、必要に応じて熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0109】
ポリマーの含有量は、例えば、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12の機械的特性が向上する。また、クラッド形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12の光学的特性が向上する。
【0110】
クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0111】
3.1.1.2.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0112】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0113】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0114】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0115】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
【0116】
3.1.1.2.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0117】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0118】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型の化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型の化合物等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0119】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0120】
3.1.1.2.2.4.その他
クラッド形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0121】
3.1.1.2.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0122】
クラッド形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0123】
なお、第1クラッド層11を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物と、第2クラッド層12を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物とは、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0124】
3.1.2.コア層形成工程
コア層形成工程S102では、コア形成層160からコア層13を形成する。具体的には、コア形成層160の一部に活性放射線Rを照射し、非照射領域302に対応する導波コア部14およびダミーコア部16、ならびに、照射領域301に対応する第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17、を含むコア層13を得る。
【0125】
照射領域301および非照射領域302の設定には、例えば、図12(b)に示すフォトマスク303を用いる方法が用いられる。フォトマスク303を介して活性放射線Rを照射することにより、フォトマスク303のマスクパターンに対応して照射領域301および非照射領域302を設定することができる。
【0126】
なお、フォトマスク303を用いる方法に代えて、直描露光機304を用いる方法を採用してもよい。図12(c)では、活性放射線Rを直描露光機304により照射している。直描露光機304としては、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)のような反射型空間光変調素子、液晶表示素子(LCD)のような透過型空間光変調素子といった各種の空間光変調素子を利用して、照射領域を選択し得る露光機が挙げられる。このような直描露光機304を用いることにより、フォトマスク303を用いることなく、照射領域301および非照射領域302の設定が可能になる。これにより、フォトマスク303を作り変えることなく、照射領域301や非照射領域302の大きさを調整することができるので、光導波路1の製造コストの低減および効率化を図ることができる。
【0127】
図12(b)および図12(c)には、コア形成層160が含むポリマー131およびモノマー132を図示している。活性放射線Rを照射する前のコア形成層160では、ポリマー131中にモノマー132がほぼ均一に分布している。なお、モノマー132やモノマー132由来の構造は、ポリマー131よりも屈折率が低い。
【0128】
活性放射線Rを照射した後、コア形成層160を加熱する。この加熱により、照射領域301に存在する重合開始剤が活性化し、モノマー132の反応が進行する。これにより、モノマー132の濃度差が生じ、それに伴ってモノマー132の移動が生じる。その結果、図13(d)に示すように、照射領域301におけるモノマー132の濃度が上昇するとともに、非照射領域302におけるモノマー132の濃度が低下する。これにより、照射領域301の屈折率は、モノマー132の影響を受けて低くなり、非照射領域302の屈折率は、ポリマー131の影響を受けて高くなる。その結果、図13(e)に示すように、導波コア部14、ダミーコア部16、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17を含むコア層13が得られる。
【0129】
コア形成層160の加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられる。
【0130】
なお、この加熱に伴って、モノマー132が揮発したり、ポリマー131の分子構造が変化したりすることによって屈折率が変化してもよい。
【0131】
3.1.3.クラッド層形成工程
クラッド層形成工程S104では、コア層13に第1クラッド層11および第2クラッド層12を積層するとともに、基材500を剥離する。これにより、ワーク100を得る。
【0132】
本実施形態では、図13(f)に示すように、クラッドフィルム702をコア層13の上面に積層する。そして、得られた積層体を加熱する。これにより、コア層13とクラッドフィルム702とが接合する。その結果、図14(g)に示すように、コア層13を覆う第2クラッド層12が得られる。このときの加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられる。
【0133】
次に、図14(h)に示すように、コア層13から基材500を剥離した後、図14(i)に示すように、クラッドフィルム701をコア層13の下面に積層する。そして、得られた積層体を加熱する。これにより、コア層13とクラッドフィルム701とが接合する。その結果、図15(j)に示すように、コア層13を覆う第1クラッド層11が得られる。このときの加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられるが、第2クラッド層12を形成するときの加熱条件よりも、高温または長時間に設定されるのが好ましい。以上のようにして、図15(j)に示すワーク100が得られる。
【0134】
3.2.切断工程
切断工程S108では、図15(k)に示すように、ワーク100を切断する。切断には、例えば、図15(k)に示すダイシングブレードDBが用いられる。なお、ダイシングブレードDBによる切断に代えて、カッティングソー、レーザー、ルーター、超音波カッター、ウォータージェットによる切断や、刃型による打ち抜きを用いてもよい。
【0135】
ワーク100の切断は、図2に示す切り取り線CLに沿って行う。これにより、図15(L)に示すように、光導波路1が切り出される。
【0136】
図15(L)には、光導波路1のY軸方向における屈折率nの分布をグラフで示している。
【0137】
本実施形態に係る光導波路の製造方法では、前述したように、切り取り線CLがコア部形成領域130の内側に位置している。このため、コア部形成領域130の外側に前述した「屈折率差の漸減」が生じていたとしても、切り出された光導波路1では、その屈折率差の漸減の影響が回避される。つまり、光導波路1では、導波コア部14のY軸マイナス側に位置する側面クラッド部の屈折率n2が、Y軸プラス側に位置する側面クラッド部の屈折率n1と等しいか、屈折率n1と近い値になる。その結果、導波コア部14を介したY軸方向の両側における屈折率差のずれは小さくなる。このため、屈折率差のずれに伴って導波コア部14の伝送損失が増加するという課題が解消される。その結果、複数の導波コア部14、すなわち複数のチャンネルにおいて、チャンネル間における伝送損失のバラつきが抑制された光導波路1を実現することができる。
【0138】
なお、図2に示す切り取り線CLを設定する場合、コア部形成領域130の外縁から、好ましくはコア部2本分以上、より好ましくはコア部3本分以上内側に設定するのが好ましい。これにより、照射領域301と非照射領域302との境界線が高密度に配置されることになるため、「屈折率差の漸減」の影響が特に抑制された光導波路1を製造することができる。なお、図2では、一例として、コア部形成領域130の外縁からコア部2本分、内側に切り取り線CLを設定している。コア部形成領域130は、要件(b)を満たしているため、このような設定を確実に行うことができる。その結果、「屈折率差の漸減」の影響が特に抑制された光導波路1を確実に製造することができる。
【0139】
以上のように、本実施形態に係る光導波路の製造方法は、ワーク準備工程S106と、切断工程S108と、を有する。ワーク準備工程S106では、コア部形成領域130を含むコア層13を備え、シート状をなしているワーク100を準備する。切断工程S108では、ワーク100のうち、コア部形成領域130の内側から光導波路1を切り出す。
そして、コア層13は、以下の要件(a)、(b)および(c)の全てを満たしている。
【0140】
(a)コア層13は、ポリマー131およびモノマー132を含み、モノマー132の濃度差またはモノマー132由来の構造の濃度差に基づく屈折率の分布を有する。
【0141】
(b)コア部形成領域130は、複数の導波コア部14(第1コア部)と、導波コア部14の両側に設けられているダミーコア部16(第2コア部)と、導波コア部14とダミーコア部16との間に設けられている第1側面クラッド部15と、を備え、かつ、コア部形成領域130は、コア部形成領域130の外縁に複数のダミーコア部16(第2コア部)が位置付けられるように、画定される。
【0142】
(c)コア部形成領域130は、1mm角の範囲において導波コア部14およびダミーコア部16が占める合計の面積比率が50%以上となる領域である。
【0143】
このような構成によれば、ワーク100のうち、コア部形成領域130の内側から光導波路1を切り出すため、前述した屈折率差の漸減の影響が光導波路1に及びにくい。このため、導波コア部14と第1側面クラッド部15との間で屈折率差が十分に確保された光導波路1が得られる。その結果、チャンネル間における伝送損失のバラつきが少ない光導波路1を製造することができる。
【0144】
また、図2に示すコア層13は、互いに離間している複数のコア部形成領域130と、余白領域135と、を含む。余白領域135は、隣り合うコア部形成領域130の間に位置し、上記(c)を満たさない領域である。つまり、余白領域135は、導波コア部14やダミーコア部16を有していてもよいが、その合計の面積比率は50%未満である領域である。
【0145】
このように複数のコア部形成領域130を含むことにより、1つのワーク100から複数の光導波路1を切り出すことができる。
【0146】
また、図2に示す余白領域135は、導波コア部14やダミーコア部16が設けられていない領域であるため、コア層形成工程S102において照射領域301に対応し、モノマー132の重合が進んでいる領域である。したがって、照射領域301に対応する余白領域135では、モノマー132の減少に伴う体積減少が抑えられる。これに対し、非照射領域302に対応するコア部形成領域130では、モノマー132の減少に伴う体積減少が生じやすい。よって、コア部形成領域130同士の間に余白領域135を設けることにより、ワーク100全体の変形(反り)を抑制することができる。
【0147】
また、図2に示す余白領域135は、さらに、コア部形成領域130を取り囲む位置にも設けられている。
【0148】
このような位置にも余白領域135を設けることにより、余白領域135によってワーク100が支持されることになるため、ワーク100全体の変形を特に抑制することができる。また、コア部形成領域130の縁部の全体が余白領域135に隣接することになる。このため、コア部形成領域130内に対して余白領域135が及ぼす影響が均一になり、チャンネル間における伝送損失のバラつきが特に少なくなる。
【0149】
4.変形例
次に、変形例に係る光導波路の製造方法について説明する。
【0150】
図16は、変形例に係る光導波路の製造方法で製造された光導波路1Bを示す平面図である。
【0151】
以下、変形例について説明するが、以下の説明では、前記実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。なお、各図では、前記実施形態と同様の構成について同一の符号を付している。
【0152】
図16に示す光導波路1Bは、ダミーコア部16の形状が異なるとともに、第1マーク801を有すること以外、図2に示す光導波路1と同様である。
【0153】
光導波路1Bでは、ダミーコア部16(第2コア部)の少なくとも一方の端部の幅が、導波コア部14と異なっている。図16の例では、X軸方向の両端部において、ダミーコア部16の幅が導波コア部14の幅の半分程度になっている。具体的には、図16に示すダミーコア部16は、図2に示すダミーコア部16の幅の中央に、新たな第1側面クラッド部15を追加することによって、2つに分割されてなる部位である。
【0154】
このような構成によれば、一方の端部を端面から見たとき、幅が異なることから、導波コア部14をダミーコア部16と区別しやすくなる。このため、導波コア部14と光学部品とを光学的に接続するとき、接続作業が容易になる。
【0155】
5.マーク
図16に示す光導波路1Bは、コア部形成領域130と重なる位置に設けられている第1マーク801を有する。具体的には、光導波路1Bのうち、X軸方向の両端部以外には、ダミーコア部16の幅と導波コア部14の幅とが等しくなっている部位がある。そして、この部位に、第1マーク801が設けられている。
【0156】
第1マーク801は、コア部形成領域130と重なる位置に設けられているため、光導波路1に含まれる可能性が高くなる。このため、第1マーク801は、例えば、光導波路1に光コネクターを取り付けるとき、光導波路1と光コネクターとの位置合わせを行うときの位置基準として用いることができる。その結果、位置合わせの精度を高めることができる。なお、第1マーク801の利用方法は、これに限定されない。例えば、光導波路1にミラー等の光路変換部を形成する場合、光導波路1に光学部品を組み付ける場合等にも、第1マーク801を位置基準として利用することができる。
【0157】
また、第1マーク801は、例えば印刷や転写等の方法で付与されてもよい。なお、本変形例では、第1マーク801の構成材料が、コア層13Bが含む側面クラッド部と同じ材料になっている。つまり、図16に示す第1マーク801は、ダミーコア部16(第2コア部)を背景として設けられており、ダミーコア部16よりも屈折率が低い低屈折率部802を有する。具体的には、図2に示す第1マーク801は、ダミーコア部16を横切る低屈折率部802で構成されている。
【0158】
このような構成によれば、ダミーコア部16を背景にしたときの第1マーク801の見え方、例えば光の通り方を異ならせることができる。これにより、第1マーク801の視認性を高めることができる。
【0159】
また、低屈折率部802は、側面クラッド部と同じ材料で構成されているため、側面クラッド部と同時に製造することが可能である。このため、低屈折率部802を有する第1マーク801は、製造が容易である。
【0160】
さらに、低屈折率部802は、活性放射線Rの照射領域301に応じて形成可能である。一方、導波コア部14やダミーコア部16も、活性放射線Rの非照射領域302に対応して形成される。したがって、導波コア部14やダミーコア部16に対する第1マーク801の位置精度は、照射領域301の位置精度と同等であり、非常に高くなる。
【0161】
なお、第1マーク801の形状は、図示した形状に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0162】
また、上述した光導波路の製造方法では、活性放射線Rの照射やワーク100の切断において、ワーク100と装置との位置合わせが必要となる。図1に示すワーク100は、この位置合わせに用いる各種マークを有している。
【0163】
図2に示すワーク100は、余白領域135と重なる位置に設けられている第2マーク803を有する。
【0164】
第2マーク803は、余白領域135と重なる位置に設けられているため、ワーク100から光導波路1を切り出すときの位置基準として利用することができる。なお、第2マーク803の利用方法は、これに限定されない。例えば、切り出される前に、ワーク100に対してミラー等の光路変換部を形成する場合、光導波路1に光学部品を組み付ける場合等にも、第2マーク803を位置基準として利用することができる。
【0165】
図17は、図2のE部拡大図である。図2または図17には、第2マーク803の様々な例を示している。
【0166】
例えば、図2に示すワーク100のうち、ユニット200の外側には、図17に示すように、第2マーク803としての+字状のマークが設けられている。また、図2に示すユニット200の内側には、図17に示すように、第2マーク803としての同心円状のマークが設けられている。さらに、図2に示すユニット200の内側で、かつ、ピース300の幅の中心には、図17に示すように、第2マーク803としての円形のマークが設けられている。
【0167】
なお、第2マーク803の形状は、図示した形状に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0168】
図2に示す余白領域135は、第1側面クラッド部15と一体になっている第2側面クラッド部17を備えている。このとき、余白領域135と重なる位置に設けられている第2マーク803は、図17に示すように、第2側面クラッド部17よりも屈折率が高い高屈折率部804を有する。
【0169】
このような構成によれば、第2側面クラッド部17を背景としたときの第2マーク803の見え方、例えば光の通り方を異ならせることができる。これにより、第2マーク803の視認性を高めることができる。
【0170】
また、本実施形態では、この高屈折率部804の構成材料が、導波コア部14やダミーコア部16と同じ材料になっている。これにより、高屈折率部804を導波コア部14やダミーコア部16と同時に製造することが可能になる。このため、高屈折率部804を有する第2マーク803は、製造が容易である。
【0171】
さらに、高屈折率部804は、活性放射線Rの非照射領域302に応じて形成可能である。一方、導波コア部14やダミーコア部16も、活性放射線Rの非照射領域302に対応して形成される。したがって、導波コア部14やダミーコア部16に対する第2マーク803の位置精度は、非照射領域302の位置精度と同等であり、非常に高くなる。
【0172】
また、図1に示すワーク100におけるユニット200やピース300の数や配置は、これに限定されない。
【0173】
以上、本発明の光導波路の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。
【0174】
例えば、本発明の光導波路の製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程を追加した製造方法であってもよい。
【実施例
【0175】
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
6.評価用光導波路の製造
図18は、評価用光導波路1Dが有するコア部を示す平面図である。図19は、図18のF部拡大図である。
【0176】
図18に示す評価用光導波路1Dには、図19に示すように、16本のコア部14Dが並列するように配置されている。なお、以下の説明では、16本のコア部14Dを「コア部群140D」ともいい、各コア部14Dを「チャンネル」ともいう。また、16本のチャンネルには、ch1~ch16の名称を付している。
【0177】
また、評価用光導波路1DのX軸方向の全長は70mm、コア部14DのY軸方向の幅は45μm、コア部14DのY軸方向のピッチは62.5μmである。したがって、コア部14D同士の間に位置する第1側面クラッド部15DのY軸方向の幅は17.5μmである。そして、コア部群140DのY軸方向の両側には、Y軸方向の幅が450μmである第2側面クラッド部17Dが設けられている。
【0178】
さらに、コア部群140Dは、X軸方向の途中で湾曲している。湾曲部の曲げ半径rは10mmとした。
【0179】
以上のような評価用光導波路1Dを、前記実施形態に係る光導波路の製造方法により製造した。ただし、切断工程は省略した。評価用光導波路1Dにおいて、コア部群140Dが占める範囲では、コア部の面積比率が50%以上になっている。また、コア部群140Dの両端に、複数のコア部14D(ダミーコアとして使用され得る複数のコア部)が位置している。したがって、この範囲が、前記実施形態における「コア部形成領域」に相当する。
【0180】
7.評価用光導波路の評価
得られた評価用光導波路1Dについて、挿入損失を測定した。挿入損失は、JPCA(社団法人 日本電子回路工業会)の規格である「高分子光導波路の試験方法(JPCA-PE02-05-01S-2008)」に規定された挿入損失の測定方法に準じて、チャンネルごとに測定した。そして、測定された挿入損失のうち、16個のチャンネルの中で最も低かった損失に対する、各チャンネルの相対損失を算出した。また、同じ測定および計算を3回行い、3回の計算結果を#1、#2、#3とした。計算結果を図20に示す。
【0181】
図20は、評価用光導波路についてチャンネルごとの相対損失を示すグラフである。
図20から明らかなように、16個のチャンネルで相対損失を比較すると、コア部群140Dの端、つまりch1やch16から、コア部群140Dの中央、つまりch8やch9に向かうにつれて、相対損失が減少する傾向が読み取れる。したがって、コア部群140Dにおける相対損失の分布は、全体としてU字状になっているといえる。よって、コア部群140Dの両端を避け、内側から光導波路を切り出すようにすれば、各チャンネルの挿入損失が少なく、かつ、チャンネル間で挿入損失のバラつきが少ない光導波路を製造可能であることがわかった。
【0182】
特に、ch3~ch14の範囲では、相対損失が0.20dB以下に抑えられている。この結果から、コア部群140Dの端からチャンネル2個分は、コア部群140Dの外側の影響を受けて、伝送損失が悪化する傾向があるといえる。コア部群140Dの外側の影響としては、例えば、前述した「屈折率差の漸減」が考えられる。
【0183】
さらに、ch4~ch13の範囲では、相対損失が0.15dB以下に抑えられている。一方、ch1~ch3およびch14~ch16では、相対損失が0.15dB超になっている。
【0184】
以上の結果から、図2に示す切り取り線CLを設定する場合、コア部形成領域130の外縁から、好ましくはコア部2本分以上、より好ましくはコア部3本分以上内側に設定することの優位性が裏付けられた。このような位置に切り取り線CLを設定することにより、「屈折率差の漸減」の影響が抑制された光導波路を製造することができる。換言すれば、一部のコア部をワーク側に残すように切り出すことで、屈折率差の漸減の影響が抑えられ、伝送損失のバラつきが少ない光導波路を得ることができる。一方、切り取り線CLをコア部形成領域130の外縁よりも外側に設定した場合、切り出された光導波路では、屈折率差の漸減の影響を受けやすくなる。前述したコア部形成領域130におけるコア部の面積比率は、このような効果の差が生じるか否かのしきい値であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0185】
本発明によれば、チャンネル間における伝送損失のバラつきが少ない光導波路を製造することができる。したがって、本発明は、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0186】
1 光導波路
1B 光導波路
1D 評価用光導波路
1X 光導波路
11 第1クラッド層
12 第2クラッド層
13 コア層
13B コア層
13X コア層
14 導波コア部
14D コア部
15 第1側面クラッド部
15D 第1側面クラッド部
16 ダミーコア部
17 第2側面クラッド部
17D 第2側面クラッド部
18 第1カバー層
19 第2カバー層
100 ワーク
100X ワーク
130 コア部形成領域
130X 比較用コア部形成領域
131 ポリマー
132 モノマー
135 余白領域
140D コア部群
160 コア形成層
170 クラッド形成層
200 ユニット
300 ピース
301 照射領域
302 非照射領域
303 フォトマスク
304 直描露光機
500 基材
600 コアフィルム
701 クラッドフィルム
702 クラッドフィルム
801 第1マーク
802 低屈折率部
803 第2マーク
804 高屈折率部
CL 切り取り線
DB ダイシングブレード
R 活性放射線
S100 部材準備工程
S102 コア層形成工程
S104 クラッド層形成工程
S106 ワーク準備工程
S108 切断工程
n 屈折率
n1 屈折率
n2 屈折率
r 曲げ半径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20