(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】測定方法、測定装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 13/04 20190101AFI20231017BHJP
F16C 19/52 20060101ALI20231017BHJP
G01N 27/02 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01M13/04
F16C19/52
G01N27/02
(21)【出願番号】P 2023538089
(86)(22)【出願日】2023-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2023008683
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2022039415
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】相川 文明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 泰右
(72)【発明者】
【氏名】江波 翔
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-211317(JP,A)
【文献】特開2020-193968(JP,A)
【文献】特開2018-180004(JP,A)
【文献】特開2004-245635(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0142392(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109002610(CN,A)
【文献】MARUYAMA Taisuke,In Situ Quantification of Oil Film Formation and Breakdown in EHD Contacts,Tribology Transactions,Volume 61, Issue 6,2018年07月03日,pp.1057-1066,<https://doi.org/10.1080/10402004.2018.1468519>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/04
G01N 27/02
F16C 19/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑剤による部品間の潤滑が行われる装置の状態を測定する測定方法であって、
前記潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、
前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出し、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とする測定方法。
【請求項2】
前記接触域の静電容量C
1を導出するための前記算出式は、
【数1】
S
1:Hertzian接触面積(Hertzian接触域)
α:油膜の破断率(金属接触割合)(0≦α<1)
ε:油膜(潤滑剤)の誘電率
h(F):油膜厚さ分布
F:累積分布確率(0~1)
であることを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
前記算出式は、前記部品間の表面粗さをガウス分布にて定義した算出式である、ことを特徴とする請求項1に記載の測定方法。
【請求項4】
前記接触域の静電容量C
1を導出するための前記算出式は、
【数2】
S
1:Hertzian接触面積(Hertzian接触域)
α:油膜の破断率(金属接触割合)(0≦α<1)
ε:油膜(潤滑剤)の誘電率
F:累積分布確率(0~1)
μ:油膜厚さ
σ:表面粗さ
であることを特徴とする請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記油膜厚さμを導出するための算出式は、
【数3】
h
1:油膜厚さ
であることを特徴とする請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
更に、前記油膜厚さおよび前記金属接触割合を用いて前記装置の状態を診断することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の測定方法。
【請求項7】
潤滑剤による部品間の潤滑が行われる装置の状態を測定する測定装置であって、
前記潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を取得する取得手段と、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出する導出手段と、
を有し、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とする測定装置。
【請求項8】
コンピュータを、
潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を取得する取得手段、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出する導出手段、
として機能させ、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、測定方法、測定装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受装置などの転動装置では、潤滑剤(例えば、潤滑油やグリース)を用いて、その回転を潤滑する構成が広く普及している。一方、軸受装置などの回転部品に対しては、定期的に状態診断を行うことで、損傷や摩耗を早期に検知して回転部品の故障などの発生を抑制することが行われている。
【0003】
潤滑剤を用いた転動装置では、その動作状態を診断するために、内部の状態を適切に検知することが求められる。例えば、特許文献1では、転動装置において、表面粗さを有する接触面の油膜の静電容量が、平滑面の静電容量と等しいものと仮定し、金属接触していない接触面の油膜厚さが平均油膜厚さで一様であるものとして、接触面の静電容量を算出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、静電容量は油膜厚さに反比例するため、実際には薄膜部の影響が大きくなり、静電容量は平均油膜厚さで一様と仮定した場合よりも大きくなり得る。特許文献1の方法では、平均油膜厚さを用いて静電容量を算出しているため、接触面の油膜厚さが平均油膜厚さから乖離した場合には、その静電容量の算出結果の精度が低下してしまう。特に、接触面の表面粗さによっても油膜厚さに影響が生じ、結果として静電容量の算出結果の精度が低下してしまうことが想定される。
【0006】
上記課題を鑑み、本願発明は、従来の手法よりも精度の高い、装置内の油膜厚さおよび部品間の金属接触割合の検出を行う測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本願発明は以下の構成を有する。すなわち、潤滑剤による部品間の潤滑が行われる装置の状態を測定する測定方法であって、
前記潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、
前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出し、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とする測定方法。
【0008】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、潤滑剤による部品間の潤滑が行われる装置の状態を測定する測定装置であって、
前記潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を取得する取得手段と、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出する導出手段と、
を有し、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とする測定装置。
【0009】
また、本願発明の別の形態は以下の構成を有する。すなわち、コンピュータを、
潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を取得する取得手段、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出する導出手段、
として機能させ、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とするプログラム。
【発明の効果】
【0010】
本願発明により、従来の手法よりも精度の高い、装置内の油膜厚さおよび部品間の金属接触割合の検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る軸受装置の物理モデルを示すグラフ図。
【
図2】本発明に係る軸受装置の物理モデルを示すグラフ図。
【
図3】本発明に係る接触域周りの等価回路を説明するための回路図。
【
図4】従来の手法による解析結果を説明するためのグラフ図。
【
図5】従来の手法による解析結果を説明するためのグラフ図。
【
図6】本発明に係る接触域周りの状態を説明するための概念図。
【
図7】本発明に係る接触域の接触分布を説明するための概念図。
【
図8】本発明の一実施形態に係る診断方法を適用可能な装置の構成例を示す概略図。
【
図9】本発明の一実施形態に係る診断時の処理のフローチャート。
【
図10】本発明の診断手法による解析結果を説明するためのグラフ図。
【
図11】本発明の診断手法による解析結果を説明するためのグラフ図。
【
図12】本発明の診断手法による解析結果を説明するためのグラフ図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本願発明を実施するための形態について図面などを参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本願発明を説明するための一実施形態であり、本願発明を限定して解釈されることを意図するものではなく、また、各実施形態で説明されている全ての構成が本願発明の課題を解決するために必須の構成であるとは限らない。また、各図面において、同じ構成要素については、同じ参照番号を付すことにより対応関係を示す。
【0013】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態について説明を行う。なお、本発明に係る測定方法は、一定の粗さを有する金属表面が潤滑されながら転がり接触または摺動する装置を対象として適用可能である。このような装置の例としては、転がり軸受、歯車、滑り軸受、カム、トラクションドライブ装置、CVT(Continuously Variable Transmission)などが挙げられる。具体的な適用例については、後述するが、これに限定するものではなく、本発明は上記のような特性を有する装置全般に適用可能である。例えば、本発明に係る診断方法が適用可能な転がり軸受の種類としては、深溝玉軸受、アンギュラ玉軸受、円錐ころ軸受、円筒ころ軸受、自動調心ころ軸受なども挙げられる。
【0014】
[物理モデル]
図1、
図2を用いて本実施形態に係る診断方法を適用する装置における構成部品間の接触状態について説明する。
図1は、円形接触を行う場合の物理モデルを示す。また、
図2は、楕円接触を行う場合の物理モデルを示す。基本的な概念は同様であるため、ここでは
図1を用いて説明する。
【0015】
図1は、装置内においてボール片とディスク片とが転がり接触した際の物理モデルを示すグラフである。図の上側にx軸方向から見たグラフを示し、図の右側にy軸方向から見たグラフを示している。なお、ここでは説明を簡単にするために、接触する部品において、一方(ボール片)が曲面形状を有し、もう一方(ディスク片)が平面形状を有し、これらが接触する例を示している。しかし、両方が曲面形状を有して接触するような構成であってもよい。このような構成の場合には、
図2に示す物理モデルがより近似したモデルとなる。
【0016】
h軸は、油膜厚さ方向を示し、x軸およびy軸それぞれは油膜厚さ方向と直交する方向を示す。また、
図1に示す各変数はそれぞれ以下の通りである。
S
1:Hertzian接触面積(Hertzian接触域)
c:Hertzian接触円半径(=√(S
1/π))
α:油膜の破断率(金属接触割合)(0≦α<1)
r
b:ボール片の半径
αS
1:実接触域(油膜の破断領域)
h:油膜厚さ(x軸方向、y軸方向それぞれ)
h
1:Hertzian接触域における油膜厚さ
h
2:接触域周辺の最大油膜厚さ
【0017】
Hertzian接触域において、金属が接触している面積と接触していない面積の割合はα:(1-α)となる。また、ボール片とディスク片とが接触していない理想状態ではα=0である。このとき、y=0の場合にh>0となる。同様に、x=0の場合にh>0となる。
【0018】
図1に示す上側のグラフにおいて、油膜厚さhは、例えば、以下の式にて表される。
h=0 (-αS
1/2≦y≦αS
1/2)
h=h
1 (-c≦y<-αS
1/2、または、αS
1/2<y≦c)
h=h
1+√(r
b
2-c
2)-√(r
b
2-y
2) (-r
b≦y<-c、または、c<y≦r
b) …(1)
【0019】
同様に、
図1に示す右側のグラフにおいて、油膜厚さhは以下の式にて表される。
h=0 (-αS
1/2≦x≦αS
1/2)
h=h
1 (-c≦x<-αS
1/2、または、αS
1/2<x≦c)
h=h
1+√(r
b
2-c
2)-√(r
b
2-x
2) (-r
b≦x<-c、または、c<x≦r
b) …(2)
【0020】
なお、
図2における各変数は以下の通りである。
a’:y軸方向におけるHertzian接触楕円半径
b’:x軸方向におけるHertzian接触楕円半径
r
x
 ̄:x軸方向におけるボール片の楕円半径
r
y
 ̄:y軸方向におけるボール片の楕円半径
h
2:接触域周辺の最大油膜厚さの中間に位置する厚さ
h
3:接触域周辺の最大油膜厚さ
【0021】
なお、
図2の物理モデルを用いる場合には、ボール片は楕円形状となるため、それに応じて一部数式が置き換えられる。つまり、ここでは説明を省略するが、
図2のモデルを利用する場合には楕円の式を適用すればよい。したがって、想定する物理モデルや対象とする軸受装置の構成などに応じて、他の算出式を用いてもよい。また、上記では、2次元的な算出式を例に挙げたが、3次元的な算出式を用いてよい。
【0022】
[等価電気回路]
図3は、
図1に示した物理モデルを電気的に等価な電気回路(等価回路)にて示した図である。なお、
図2の物理モデルでも同様の構成となる。等価回路E1は、抵抗R
1、コンデンサC
1、およびコンデンサC
2から構成される。抵抗R
1は、破断領域(=αS
1)における抵抗に相当する。コンデンサC
1は、Hertzian接触域における油膜により形成されるコンデンサに相当し、静電容量C
1とする。コンデンサC
2は、Hertzian接触域の周辺(
図1の-r
b≦y<-cおよびc<y≦r
b、-r
b≦x<-cおよびc<x≦r
b)における油膜により形成されるコンデンサに相当し、静電容量C
2とする。Hertzian接触域(=S
1)が、
図3の等価回路E1における抵抗R
1とコンデンサC
1の並列回路を形成する。また、Hertizain接触域周辺が、
図3の等価回路E1におけるコンデンサC
2の回路を形成する。更に、これらの並列回路が並列に接続されることで、等価回路E1が形成される。このとき、Hertzian接触域の周辺(
図1の-r
b≦y<-cおよびc<y≦r
b、-r
b≦x<-cおよびc<x≦r
b)では、潤滑剤が充填されているものとする。
【0023】
等価回路E1のインピーダンスをZにて示す。ここで、等価回路E1に印加される交流電圧V、等価回路E1を流れる電流I、および、等価回路E1全体の複素インピーダンスZは以下の式(3)~(5)にて示される。
V=|V|exp(jωt) …(3)
I=|I|exp(j(ωt-θ)) …(4)
Z=V/I=|V/I|exp(jθ)=|Z|exp(jθ) …(5)
j:虚数
ω:交流電圧の角周波数
t:時間
θ:位相角(電圧と電流の位相のずれ)
【0024】
[インピーダンス法の概要]
まず、本実施形態に係る診断手法を説明する前に、比較対象としての従来のインピーダンス法について簡単に説明する。特許文献1などで用いられているインピーダンス法においても上記の物理モデルおよび等価回路を前提とした手法である。
【0025】
従来のインピーダンス法においては、測定対象に電圧を負荷することで得られる複素インピーダンス(Z,θ)から油膜厚さhおよび金属接触割合αを算出する。油膜厚さhおよび金属接触割合αは以下の式にて算出した値を用いることができる。以下の式では、油膜厚さとして、接触域S1における平均油膜厚さを用いている。
【0026】
【0027】
【0028】
R10:静止時(すなわち、α=1)における抵抗値
θ:位相角
|Z|:動的接触状態における等価回路全体のインピーダンス
h ̄:平均油膜厚さ
c:接触域の半径
rb:ボール片の半径
W():ランベルトW関数
exp():指数関数
π:円周率
ε:油膜(潤滑剤)の誘電率
ω:交流電圧の角周波数
【0029】
図4は、
図8を用いて後述する装置による2円筒による試験を行い、従来のインピーダンス法を用いて測定を行った結果と、試験後の実粗さを用いて、公知のμEHL(Elasto-Hydrodynamic Lubrication)解析による解析結果を示す片対数グラフの図である。ここでの試験条件、測定条件、および解析条件は以下の通りとする。
【0030】
(試験条件)
潤滑剤粘度(ISO粘度分類):VG320
面圧:2.25[GPa]
引き込み速度:0.785[m/s]
すべり速度:0[m/s]
温度:50~100[℃]
合成粗さ(σ):40、120、260[nm]
(インピーダンス測定条件)
印加電圧:0.5[V]
交流周波数:1[MHz]
(解析条件)
入力粗さ:2.9×1.6[mm](Δx≒1.6μm)
メッシュサイズ:512×512(Δx≒3μm)
計算領域:-2.5a~1.5a、-1.75b~1.75b
【0031】
図4において、横軸は温度T[℃]を示し、縦軸は油膜厚さh[nm]を示す。また、比較例として、公知のHamroc & Dowsonの膜厚計算式(以下、H-D式)による算出結果を実線にて示す。上記の通り、ここでは、3つの表面粗さ(σ=40、120、260[nm])を用いて試験を行った。ここでの表面粗さは、接触面それぞれの合成粗さを用いている。
【0032】
まず、従来のインピーダンス法による測定結果に着目すると、温度が高くなるに従って、H-Dの式の計算結果よりも測定値が小さくなる傾向があり、これは、表面が粗いほど顕著となる。更には、温度が高いほど、従来のインピーダンス法の測定結果とH-Dの式の計算結果とが乖離している。
【0033】
次に、粗さの影響について検討する。ここで、H-Dの式により得られた計算油膜厚さh
H-Dと粗さσの比をΛ(=h
H-D/σ)とする。
図5は、
図4の算出結果を別の観点から示したものである。
図5において、横軸はΛを示し、縦軸は従来のインピーダンス法にて算出した油膜厚さhと計算油膜厚さh
H-Dとの比を示す。
図5によると、3≦Λの範囲では、いずれの粗さでも同等の算出結果が得られていることから、粗さの影響が小さく、従来のインピーダンス法により算出した油膜厚さhとh
H-Dとの比が概ね1となっている。しかし、Λが小さくなるに従って粗さの影響が大きくなる。つまり、計算油膜厚さh
H-Dよりも算出される膜厚hの方が小さくなる(h/h
H-Dが小さくなっている)。
【0034】
そこで、本発明では、接触域の粗さに着目する。特に、
図5に示すようにΛの値が一定の値以下であるような粗さの影響が大きい場合を想定し、従来のインピーダンス法を改良した手法を提案する。
【0035】
[粗さの扱い]
まず、従来のインピーダンス法における、接触域S
1の粗さの扱いについて説明する。
図6は、従来のインピーダンス法における表面粗さを説明するための接触域周りの模式図である。
図1を用いて示したように接触域S1では、2つの部材(ここでは、ボール片とディスク片)が接触し、その周辺には潤滑剤が充填されている。
図6(a)は、実際の混合潤滑状態を示す。ここでは、説明を簡略化するために、合成粗さにて示し、ボール片の表面は粗く、ディスク片は平滑なものとして説明する。
【0036】
図6(a)の状態に対し、
図6(b)は従来のインピーダンス法において用いられる幾何学モデルを示す。従来のインピーダンス法では、
図6(a)の状態を
図6(b)に示すような幾何学モデルと等価な状態として扱うことで測定を行う。つまり、接触域S
1における油膜厚さhの平均である平均油膜厚さh
 ̄が用いられる。
【0037】
図6(a)のモデルに対応する静電容量C
aは以下の式にて算出できる。
【0038】
【0039】
図6(b)の幾何学モデルに対応する静電容量C
bは以下の式にて算出できる。
【0040】
【0041】
実際のCaとCbの値は異なり、Ca>Cbとなる。また、従来のインピーダンス法では、以下の式(10)、式(11)により、油膜厚さh1および平均油膜厚さh ̄を算出している。
【0042】
【0043】
【0044】
Ca>Cbとなる場合、Cbに代えて、Caを用いてh1を算出すると、当然ながら算出される油膜厚さは異なる。そのため、粗さの影響により、CaとCbの値が乖離するほど、算出される油膜厚さの精度が低下してしまう。
【0045】
そこで、本実施形態では以下のように扱うことで、接触域周りの表面粗さを考慮する。
図7は、本発明のインピーダンス法における表面粗さを説明するための接触域周りの模式図である。
図1を用いて示したように接触域S
1では、2つの部材(ここでは、ボール片とディスク片)が接触し、その周辺には潤滑剤が充填されている。
図7(a)は、実際の混合潤滑状態を示す。ここでは、説明を簡略化するために、合成粗さにて示し、ボール片の表面は粗であり、ディスク片は平滑なものとして説明する。
【0046】
図6(a)の状態に対し、本実施形態では、表面粗さが正規分布であると仮定して、表面粗さを考慮した式を定義する。つまり、ガウス分布を仮定した場合の2面間の間隔の確率密度は以下の式にて算出される。
【0047】
【0048】
図7(b)は、表面粗さが正規分布していると仮定した場合の膜厚と発生確率の関係を示すグラフ図である。
図7(b)において縦軸は膜厚hを示し、横軸は発生確率を示す。また、αは、
図1を用いて説明したように、油膜の破断率に対応する。ここで、表面粗さ、すなわち、油膜厚さ分布は、以下の累積分布関数の逆関数で表される。
【0049】
【0050】
F:累積分布確率(0~1)
【0051】
油膜が存在する領域は、h>0の領域であり、この領域について、ε/hを面積分することで、接触面の静電容量C1が以下の式(14)により以下の式により算出できる。
【0052】
【0053】
ここで、上記式(14)のままでは取り扱いが容易ではない。そこで、本実施形態では、上記の式を以下のように近似、変換することで、油膜厚さμについて一定の測定精度を実現しつつ、計算負荷を抑制する。式(15)は、テイラー展開による近似式を示す。また、式(16)は、式(15)に基づいて式(14)を変換したC1の近似式である。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
このとき、以下の式(19)により、式(18)は、以下の式(20)となる。
【0059】
【0060】
【0061】
よって、本実施形態では、式(17)および式(20)を用いて、接触域S1における油膜厚さμを求める。
【0062】
なお、上述したように、本実施形態では、平滑面と粗面の接触とし、粗面の表面粗さの標準偏差、すなわち、二乗平均粗さRqをσとして用いている。接触する両面が粗面の場合、合成した粗さを持つ粗面と平滑面の接触としてとらえることができる。この場合、2つの粗面それぞれの粗さをσ1、σ2とした場合、合成表面粗さは以下の式にて算出できる。
【0063】
【0064】
なお、上記では、線粗さRqを例に挙げているが面粗さSqも同様の考え方に基づいて適用することが可能である。
【0065】
また、本実施形態では、表面粗さがガウス分布であると想定して確率密度関数を定義した。しかし、これに限定するものではなく、表面粗さの分布が定義できれば、ガウス分布以外の分布を前提として定義を行い、それを適用してもよい。ガウス分布以外の場合には、以下の式(22)を用いて、静電容量C1を算出することができる。
【0066】
【0067】
なお、上記のように表面粗さの分布は、近似を用いて表現されてもよい。また、式(17)や式(20)、もしくは、式(22)など、いずれの式を用いるかは、診断対象となる転動装置の構成に応じて切り替えてもよい。つまり、転動装置の構成や診断の目的によっては、許容できる精度や処理負荷が異なり得るため、上記の式を使い分けてよい。
【0068】
[適用例]
以下、本実施形態に係る診断方法を用いた適用例について説明する。
【0069】
[装置構成]
図8は、本実施形態に係る診断方法を適用する際の全体構成の例を示す概略構成図である。
図8(a)は、転動装置800をy軸方向に沿って見た図であり、ここでは、転動装置800を構成する連結部810の内部の概略を示している。
図8(b)は、転動装置800をy軸方向に直交するz軸方向に沿って見た図である。
図8には、診断対象である転動装置800、LCRメータ830、および、診断を行う診断装置840が設けられる。なお、
図8に示す構成は一例であり、転動装置800の構成などに応じて、異なる構成が用いられてよい。
【0070】
転動装置800は、一部に絶縁継手を含んで構成される2本の円筒状の軸からなる回転軸822を備える。回転軸822には、複数の転がり軸受821を含んで構成される軸受部820が備えられる。
図8の例では、回転軸822それぞれに3つの転がり軸受821(ここでは、玉軸受)が転動可能に設けられている。軸受部820には、一定の方向から荷重がかかるものとする。また、回転軸822は、連結部810に挿入され、その内部にて互いに連動して回転する。
図8では示していないが、回転軸822の動力源となる駆動用のモータが2本の円筒の一方または両方に接続される。
図8(a)の例では、右側の円筒は反時計回りに回転し、左側の円筒は時計周りに回転する。回転軸822が挿入される部分には、連結部810内に充填された潤滑剤813の漏れやゴミの侵入を防止するためのシール816が設けられる。
【0071】
連結部810内には、回転軸822の先端部に設けられた接触部材811が位置Aにて接触する。連結部810内にはサーモカップル812が設けられ、位置Aの周辺温度を測定可能に構成される。チャンバ815内には潤滑剤813が充填され、位置Aにおける接領域の摩擦を軽減するように構成される。潤滑方式は特に限定するものではないが、例えば、グリース潤滑や油潤滑などが用いられる。潤滑剤の種類についても特に限定するものではない。また、チャンバ815内の温度を調整可能なヒータ814が設けられる。
【0072】
回転軸822は、不図示の回転コネクタを介してLCRメータ830に接続される。なお、回転コネクタの構成は特に限定するものではない。LCRメータ830は更に、接触部材811にも電気的に接続され、接触部材811に対する交流電源としても機能する。
【0073】
診断装置840は、本実施形態に係る検出方法を実行可能な検出装置として動作する。診断装置840は、診断の際に、LCRメータ830に対して交流電源の角周波数ω、および交流電圧Vを入力として指示し、それに対する出力としてLCRメータ830から転動装置800のインピーダンス|Z|(|Z|は、Zの絶対値を示す)、および位相角θを取得する。そして、診断装置840はこれらの値を用いて転動装置800に対する診断を行う。
【0074】
診断装置840は、例えば、不図示の制御装置、記憶装置、および出力装置を含んで構成される情報処理装置にて実現されてよい。制御装置は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Single Processor)、または専用回路などから構成されてよい。記憶装置は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の揮発性および不揮発性の記憶媒体により構成され、制御装置からの指示により各種情報の入出力が可能である。出力装置は、スピーカやライト、或いは液晶ディスプレイ等の表示デバイス等から構成され、制御装置からの指示により、作業者への報知を行う。出力装置による報知方法は特に限定するものではないが、例えば、音声による聴覚的な報知であってもよいし、画面出力による視覚的な報知であってもよい。また、出力装置は、通信機能を備えたネットワークインターフェースであってもよく、ネットワーク(不図示)を介した外部装置(不図示)へのデータ送信により報知動作を行ってもよい。ここでの報知内容は、例えば、検出結果に基づいて、異常診断を行った場合、異常が検出された際の報知に限定するものではなく、転動装置800が正常である旨の報知を含んでもよい。
【0075】
[処理フロー]
図9は、本実施形態に係る診断処理のフローチャートである。本処理は、診断装置840により実行され、例えば、診断装置840が備える制御装置(不図示)が本実施形態に係る処理を実現するためのプログラムを記憶装置(不図示)から読み出して実行することにより実現されてよい。
【0076】
S901にて、診断装置840は、転動装置800に対して、所定の方向に荷重が与えられるように制御する。本例では、軸受部820に対し、
図8の矢印にて示す方向に荷重が加えられるように制御する。なお、荷重を与える制御は、診断装置840とは別の装置により行われてもよい。この時、静的接触状態における位相とインピーダンスを測定する。
【0077】
S902にて、診断装置840は、モータ(不図示)により回転軸822の回転を開始させる。なお、モータの制御は、診断装置840とは別の装置により行われてもよい。
【0078】
S903にて、診断装置840は、LCRメータ830に対し、LCRメータ830が備える交流電源(不図示)を用いて角周波数ωの交流電圧Vを転動装置800に与えるように制御する。これにより、転動装置800には、角周波数ωの交流電圧Vが印加されることとなる。
【0079】
S904にて、診断装置840は、S903の入力に対する出力として、LCRメータ830からインピーダンス|Z|および位相角θを取得する。つまり、LCRメータ830は、入力である交流電圧Vおよび交流電圧の角周波数ωに対する転動装置800の検出結果として、インピーダンス|Z|および位相角θを診断装置840に出力する。
【0080】
S905にて、診断装置840は、S904にて取得したインピーダンス|Z|および位相角θ、S903にて用いた交流電圧の角周波数ωを、上記の各式に適用することで油膜厚さhおよび破断率αを導出する。
【0081】
S906にて、診断装置840は、S905にて導出した油膜厚さhおよび破断率αを用いて転動装置800の潤滑状態を診断する。なお、ここでの診断方法は、例えば、油膜厚さhや破断率αに対して閾値を設け、その閾値との比較により潤滑状態を判断してよい。そして、本処理フローを終了する。
【0082】
[測定結果]
以下、本実施形態に係る測定方法による測定結果について、
図10~
図12を用いて説明する。
図10は、本実施形態に係る測定方法を用いて試験を行った測定結果とH-Dの式の算出結果を示す片対数グラフである。試験条件については、
図4および
図5を用いて説明したものと同様であるとする。
図10において、横軸は温度T[℃]を示し、縦軸は油膜厚さhを示す。
図4と同様、ここでは、3つの合成粗さσの例を用いている(σ=40、120、260[nm])。
【0083】
図10を参照すると、合成粗さがσ=40、およびσ=120の場合には、いずれの温度であっても概ねH-Dの式による計算油膜厚さと同等の値を導くことができている。また、合成粗さがσ=260の場合には、計算油膜厚さとりも高い値が導出されているが、約300nm程度の値に収束し、σと同程度の値となっている。これは、粗さが存在する場合には、表面の粗さに起因した突起の接触により粗さよりも油膜が小さくならないことを示していると考えられる。そのため、本実施形態に係る手法による測定結果は、妥当なものであると考えられる。
【0084】
図12は、
図10の算出結果を別の観点から示したものであり、
図5に対応する。ここで、
図5のグラフを
図12のスケール(縦軸)に合わせたものを
図11に示す。
図12において、横軸はΛを示し、縦軸は本実施形態に係る測定方法にて算出した油膜厚さhと計算油膜厚さh
H-Dとの比を示す。従来手法による
図11(および、
図5)と本手法による
図12を参照すると、従来の手法では、Λが小さい領域(Λ<3)では、油膜厚さを小さく算出する結果となっていた。これは、粗さの影響により接触面の静電容量が上昇することを考慮できていなかったためと考えられる。一方、本実施形態に係る手法では、従来手法よりも広い領域(より具体的には、1<Λ<3)にて計算油膜厚さに近い値を算出することができている。
【0085】
なお、
図12に示すようにΛ<1の領域においては、h/h
H-Dの値が1よりも大きくなっている。これは、粗さの影響により、それ以上油膜厚さ(すなわち、二面間の間隔)が小さくならず、平滑面での計算結果であるh
H-Dよりも実際の油膜厚さが大きくなっていると考えられる。そのため、本実施形態に係る手法による測定結果は、妥当なものであると考えられる。
【0086】
以上、本実施形態により、従来の手法よりも精度の高い、装置の油膜厚さおよび部品間の金属接触割合の検出を行うことが可能となる。
【0087】
<その他の実施形態>
また、本願発明において、上述した1以上の実施形態の機能を実現するためのプログラムやアプリケーションを、ネットワーク又は記憶媒体等を用いてシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0088】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0089】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0090】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 潤滑剤による部品間の潤滑が行われる装置の状態を測定する測定方法であって、
前記潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、
前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出し、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とする測定方法。
この構成によれば、従来の手法よりも精度の高い、装置の油膜厚さおよび部品間の金属接触割合の検出を行うことが可能となる。
【0091】
(2) 前記接触域の静電容量C1を導出するための前記算出式は、
【0092】
【数18】
であることを特徴とする(1)に記載の測定方法。
この構成によれば、接触域の粗さの分布に基づいて、精度良く接触域の静電容量を算出することが可能となる。
【0093】
(3) 前記算出式は、前記部品間の表面粗さをガウス分布にて定義した算出式である、ことを特徴とする(1)に記載の測定方法。
この構成によれば、接触域の粗さの分布としてガウス分布を用いて、精度良く接触域の静電容量を算出することが可能となる。
【0094】
(4) 前記接触域の静電容量C1を導出するための前記算出式は、
【0095】
【0096】
であることを特徴とする(3)に記載の測定方法。
この構成によれば、接触域の粗さの分布としてガウス分布を用いて、精度良く接触域の静電容量を算出することが可能となる。
【0097】
前記油膜厚さμを導出するための算出式は、
【0098】
【0099】
【0100】
であることを特徴とする(4)に記載の測定方法。
この構成によれば、接触域の粗さの分布としてガウス分布を用いて、精度良く接触域の静電容量を算出することが可能となる。
【0101】
(6) 更に、前記油膜厚さおよび前記金属接触割合を用いて前記装置の状態を診断することを特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の測定方法。
この構成によれば、従来よりも精度の高い油膜厚さおよび金属接触割合を用いた装置の診断が可能となる。
【0102】
(7) 潤滑剤による部品間の潤滑が行われる装置の状態を測定する測定装置であって、
前記潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を取得する取得手段と、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出する導出手段と、
を有し、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とする測定装置。
この構成によれば、従来の手法よりも精度の高い、装置の油膜厚さおよび部品間の金属接触割合の検出を行うことが可能となる。
【0103】
(8) コンピュータを、
潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を取得する取得手段、
前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出する導出手段、
として機能させ、
前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される、ことを特徴とするプログラム。
この構成によれば、従来の手法よりも精度の高い、装置の油膜厚さおよび部品間の金属接触割合の検出を行うことが可能となる。
【0104】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0105】
以上、各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0106】
なお、本出願は、2022年3月14日出願の日本特許出願(特願2022-039415)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0107】
800 転動装置
810 連結部
811 接触部材
812 サーモカップル
813 潤滑剤
814 ヒータ
815 チャンバ
816 シール
820 軸受部
821 転がり軸受
822 回転軸
830 LCRメータ
840 診断装置
【要約】
潤滑剤による部品間の潤滑が行われる装置の状態を測定する測定方法は、前記潤滑剤により潤滑される部品から構成される電気回路に交流電圧を印加し、前記交流電圧の印加時の前記電気回路のインピーダンスおよび位相角を測定し、前記インピーダンスおよび前記位相角に基づき、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合を導出し、前記部品間における油膜厚さおよび金属接触割合は、前記部品間の接触域における前記部品間の表面粗さを確率密度関数により、前記接触域の静電容量を定義した算出式を用いて導出される。