(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】手摺装置
(51)【国際特許分類】
A61G 7/053 20060101AFI20231017BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
A61G7/053
A61H3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019075194
(22)【出願日】2019-04-10
【審査請求日】2022-03-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会名 第45回国際福祉機器展 主催者名 一般財団法人 保健福祉広報協会 開催日 平成30年10月10日から12日まで
(73)【特許権者】
【識別番号】599117255
【氏名又は名称】株式会社 シコク
(74)【代理人】
【識別番号】100144509
【氏名又は名称】山本 洋三
(72)【発明者】
【氏名】古瀬 圭一朗
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-051175(JP,A)
【文献】特開2010-005077(JP,A)
【文献】特開2008-092972(JP,A)
【文献】登録実用新案第3142684(JP,U)
【文献】特開2018-178606(JP,A)
【文献】特開2014-201941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 7/053
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形の平面形体をもつ台座であって、該台座の短辺側の側縁がベッドの一側縁に近接して略平行に載置される台座と、該台座の一側縁寄り位置に離間して立設固定される第1固定脚と第2固定脚をもつ手摺ユニットを備えて構成される手摺装置であって、
上記手摺ユニットは、その平面視において上記第1固定脚の中心と上記第2固定脚の中心を結ぶ直線に沿う軸線が、上記台座の一側縁の上記第1固定脚寄りの一端側から上記第2固定脚寄りの他端側に向けて、該台座の一側縁からこれに対向する他側縁に近づくように該台座の内方へ所定の傾斜角をもって固定される一方
、ポータブルトイレ又は車椅子は、その前縁部を、上記台座の長辺側の一側縁と略平行に配置されることを特徴とする手摺装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記手摺ユニットの上記傾斜角は、6°~30°の 範囲であることを特徴とする手摺装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記手摺ユニットは、その側面視において、上記第1固定脚に支持された第1支柱の上端側には上記軸線方向に延びる第1把持部が設けられる一方、
上記第2固定脚に支持される第2支柱の上端側には、略U字形に屈曲形成された第2把持部が、上記第1把持部よりも上方側で且つ上記第2支柱よりも上記軸線方向前方側へ延出するようにして設けられていることを特徴とする手摺装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、例えば、ベッド脇などに載置される可搬式の手摺装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可搬式の手摺装置としては、例えば、特許文献1、2に開示される如きものが知られている。
【0003】
特許文献1に示される手摺装置は、略矩形の平面形体をもつベースの短辺側の一側縁寄りに、略梯子状形体をもつ手摺部を、上記一側縁に略平行に立設して構成される。そして、この手摺装置は、例えば、その
図5に示すように、上記ベースの長辺側の側縁が、ベッドの長辺側の側縁と略平行に延出するような方向に向けて載置され、人がベッドの縁部に座った状態から立ち上がる場合とか、ベッドの前方からベッド脇まで移動して該ベッドの縁部に腰を下すような場合に、上記手摺部を把持することでその動作を支援するものである。
【0004】
特許文献2に示される手摺装置は、その
図5に記載のように、略矩形の平面形体をもつベースの短辺側の一側縁寄りに、略梯子状形体をもつ手摺部を、上記一側縁に略平行に立設して構成される。そして、この手摺装置は、そのベースをベッドの下側に差し入れた状態でベッド脇に設置され、人がベッドの縁部に座った状態から立ち上がる場合とか、ベッドの前方からベッド脇まで移動して該ベッドの縁部に腰を下すような場合に、人が上記手摺部を把持することでそれぞれの動作を支援するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-57732号公報
【文献】特開2018-178606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、これら従来の手摺装置のように、略矩形の平面形体をもつベースの一側縁寄り位置に該一側縁と略平行に手摺部が配置された構成であると、例えば、上記手摺部に対向する側に人が位置しているような場合には、該手摺部の全体が人から一様の距離に存在することになる。このため、例えば、人が上記手摺部に対向する現在の姿勢から、右前方にある他の場所へ移動すべく体方向を右側へ変化させながら移動する姿勢をとる場合には、左手側が上記手摺部から遠ざかることになり、該手摺部を掴みにくくなる。
【0007】
また逆に、例えば、人がその体方向を上記手摺部の延出方向と略平行とした姿勢にある時、即ち、上記手摺部が人の右手側あるいは左手側において体方向と略平行に位置している場合には、該手摺部の手前側から前方側へ向かうに伴って該手摺部と人との距離が遠くなる。このため、例えば、人が現在の姿勢から、上記手摺部から遠ざかる側(即ち、手摺部が人の右側に位置している場合には左側、手摺部が人の左側に位置している場合には右側へ移動すべく体方向を変化させながら移動する姿勢をとる場合、手摺部の前方側部分が人から次第に離れていく状態となり、該手摺部を掴みにくくなる。
【0008】
このような状況から、人との相対関係の変化に拘らず、常に良好な把持性を実現できる手摺装置の開発が要請されるところであるが、現時点では斯かる観点からの有効な提案はなされていない。
【0009】
そこで本願発明は、人との相対関係の変化に拘らず、常に良好な把持性を実現できる手摺装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0011】
本願の第1の発明では、略矩形の平面形体をもつ台座であって、該台座の短辺側の側縁がベッドの一側縁に近接して略平行に載置される台座と、該台座の一側縁寄り位置に離間して立設固定される第1固定脚と第2固定脚をもつ手摺ユニットを備えて構成される手摺装置において、上記手摺ユニットは、その平面視において上記第1固定脚の中心と上記第2固定脚の中心を結ぶ直線に沿う軸線を、上記台座の一側縁の上記第1固定脚寄りの一端側から上記第2固定脚寄りの他端側に向けて、該台座の一側縁からこれに対向する他側縁に近づくように該台座の内方へ所定の傾斜角をもって固定する一方、ポータブルトイレ又は車椅子は、その前縁部を、上記台座の長辺側の一側縁と略平行に配置することを特徴としている。
【0012】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る手摺装置において、上記手摺ユニットの上記傾斜角が、6°~30°の範囲であることを特徴としている。
【0013】
本願の3の発明では、上記第1又は第2の発明に係る手摺装置において、上記手摺ユニットが、その側面視において、上記第1固定脚に支持された第1支柱の上端側には上記軸線方向に延びる第1把持部が設けられる一方、上記第2固定脚に支持された第2支柱の上端側には、略U字形に屈曲形成された第2把持部が、上記第1把持部よりも上方側で且つ上記第2支柱よりも上記軸線方向前方側へ延出するようにして設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0015】
(a)本願の第1の発明
本願の第1の発明に係る手摺装置によれば、上記手摺ユニットを、その平面視において上記第1固定脚の中心と上記第2固定脚の中心を結ぶ直線に沿う軸線が、上記台座の一側縁の上記第1固定脚寄りの一端側から上記第2固定脚寄りの他端側に向けて、該台座の一側縁からこれに対向する他側縁に近づくように該台座の内方へ所定の傾斜角をもって固定する一方、ポータブルトイレ又は車椅子は、その前縁部が、上記台座の長辺側の一側縁と略平行に配置されることから、上記台座の上記手摺ユニットが配置された一側縁に隣接する他の側縁で且つ上記第1支柱寄り側縁側から上記第2支柱までの距離、あるいは上記一側縁に対向する他の側縁側から上記第2支柱までの距離が、例えば、従来のように台座の側縁に平行な方向に向けて手摺ユニットを固定した場合に比して、短くなる。このため、例えば、上記一側縁に隣接する他の側縁側から上記手摺ユニットを掴む場合も、上記一側縁に対向する他の側縁側から該手摺ユニットを掴む場合も、その把持作用が容易となり、延いては上記手摺装置による人に対する介助機能が向上する。
【0016】
また、特に、上記一側縁に隣接する他の側縁側に人が居た場合、上記手摺ユニットは人の右手側に位置することになる。このため、例えば、従来のように上記手摺ユニットが上記台座の一側縁に平行に配置されていると、この手摺ユニットの各把持部を人が右手で掴もうとする場合、当然ながら右腕を体前方よりも右側へ開いた姿勢となり、手の甲側が上記把持部側に向くことから、該第把持部を掴みにくくなる。しかし、この発明のように上記手摺ユニットが上記台座の中心寄りに傾斜されていると、右手で上記手摺ユニットの把持部を掴む場合、右腕を体前方よりも体中心寄りへ傾けた姿勢となり、その掌側から上記把持部を掴むことができることから、該把持部に対する把持性が向上し、延いては手摺装置の介助性能が向上する。
【0017】
(b)本願の第2の発明
本願の第2の発明に係る手摺装置によれば、上記手摺ユニットの上記傾斜角を6°~30°の範囲としていることから、上記手摺ユニットを上記台座の中心寄りへ過度に延出させることなく、上記第1の部位側と第2の部位側の何れからも、上記手摺ユニットまでの距離を短くしてその把持性を高めることができ、上記(a)に記載の効果がより確実となる。
【0018】
(c)本願の第3の発明
本願の第3の発明に係る手摺装置によれば、上記(a)又は(b)に記載の効果に加えて、以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明の手摺装置では、上記手摺ユニットが、その側面視において、上記第1固定脚に支持された第1支柱の上端側には上記軸線方向に延びる第1把持部が設けられる一方、上記第2固定脚に支持された第2支柱の上端側には、略U字形に屈曲形成された第2把持部が、上記第1把持部よりも上方側で且つ上記第2支柱よりも上記軸線方向前方側へ延出するようにして設けられている。
【0019】
したがって、上記第1把持部の上方側で且つ上記第2把持部の手前側には第1の空スペースが、また上記第2把持部の下方側で且つ上記第2支柱より前方側には第2の空スペースが、それぞれ形成されることになる。そして、上記第1の空スペースの存在によって、上記第1支柱の後方側から腕を差し出して上記第1把持部あるいは上記第2把持部を把持する場合おいて腕が手摺ユニットに当たるのが回避され、的確な把持動作が担保されるとともに、上記第2の空スペースの存在によって、上記第1把持部あるいは第2把持部を把持する動作時に人の脚部が手摺ユニットに当たるのが回避され身体移動の自由度が高められることから、これらの相乗効果として、上記手摺装置の介助機能の更なる向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明の実施形態に係る手摺装置に全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1~
図4には、本願発明の実施形態に係る手摺装置Zを示している。この手摺装置Zは、次述にとおり、台座1と手摺ユニット2を備えて構成される。
【0022】
A:台座1の構成
上記台座1は、長矩形の平面形体をもつ略平板体であって、床面上に載置される。この台座1の短辺側の一側縁1a寄りには、次述の手摺ユニット2を取り付けるための直管体でなる第1固定脚3と第2固定脚4が立設状態で取り付けられている。この場合、上記第1固定脚3と上記第2固定脚4は、従来のように上記台座1の一側縁1aに平行な方向に列設されるのではなく、該一側縁1aに対して傾斜状態で取り付けられている。即ち、
図4に示すように、上記第1固定脚3と第2固定脚4のうち、上記第1固定脚3は、上記一側縁1aとこれに隣接する長辺側の一側縁1cとの隅部近傍にその下端部3aを該台座1に固定することでここに立設されている。一方、上記第2固定脚4は、上記第1固定脚3の固定部の中心を通って上記一側縁1aに平行
に延びる直線L
0から、上記台座1の中心側へ角度18°だけ回転した直線L
2上で且つ上記第1固定脚3の位置から距離Sだけ離間した位置にその下端部4aを固定することでここに立設されている。
【0023】
なお、この実施形態においては、上記第1固定脚3と上記第2固定脚4を上記直線L2上に取付けているが、本願発明はこれに限定されるものではなく、所期の目的を達成し得る角度範囲として、上記直線L0から角度6°傾斜した直線L1から、角度30°傾斜した直線L3までの角度範囲を想定しており、この角度範囲内の任意の角度位置に上記第1固定脚3と第2固定脚4を立設することができる。なお、この角度範囲の最小角度と最大角度の臨界意義については、後述する。
【0024】
B:手摺ユニット2の構成
上記手摺ユニット2は、上記台座1側の第1固定脚3に支持される第1支柱5と上記第2固定脚4に支持される第2支柱6と、上記第2支柱6の上部に連結されるU形杆7と、該U形杆7の下側に接続されるJ形杆8を備えて構成される。
【0025】
上記第1支柱5は、所定径の管体を略L字形に折曲してなり、その下端部5aを上記第1固定脚3内にその上端部3b側から挿入することで該第1固定脚3側に固定される。また、この第1支柱5の上端部5bは、略水平に延出してその端部5cは次述する第2支柱6の上端部6bに連結固定され、該第2支柱6と一体化されている。なお、この水平に延出する上端部5bは、特許請求の範囲でいう「第1把持部11」とされる。
【0026】
上記第2支柱6は、所定径の直管体でなり、その下端部6aを上記第2固定脚4内にその上端部4b側から挿入することで該第2固定脚4側に固定されている。また、この場合における上記第1支柱5と上記第2支柱6の間隔S(
図4参照)は、上記第1把持部11によって規定され、且つ保持される。
【0027】
上記U形杆7は、所定径の管体をU形に湾曲成形してなり、その一端7aは上記第2支柱6の上端6b側に接続される一方、他端7bには次述のJ形杆8の上端8aが接続されている。また、このU形杆7の上下方向の中段位置には、つなぎ材9が設けられてその剛性が確保されている。なお、このU形杆7は、特許請求の範囲にいう「第2把持部12」とされる。
【0028】
上記J形杆8は、所定径の管体をJ形に湾曲成形してなり、その一端8aは上記U形杆7の他端7bに接続される一方、他端8bは上記第2支柱6に接続されている。また、このJ形杆8の上端部8aと上記第2支柱6に間には、つなぎ材10が設けられ、これによって該J形杆8及び上記U形杆7の剛性が確保されている。
【0029】
そして、この手摺ユニット2は、
図4に示すように、上記各構成要素の全てが同一の鉛直面上に位置した扁平枠体状に形成されており、上記第1支柱5と第2支柱6を上記台座1側の上記第1固定脚3と第2固定脚4にそれぞれ嵌挿固定することで、該台座1と一体化され、手摺装置Zを構成している。
【0030】
なお、この手摺装置Zにおいては、
図1、
図2に示すように、上記第1把持部11の上側で且つ上記第2把持部12の手前側には第1の空スペース15が形成され、また、上記第2把持部12の下側で且つ上記第2支柱6の前方側には第2の空スペース16が形成されている。これら各空スペース15,16は、後述するように、人が上記第1把持部11及び第2把持部12を把持する場合に、その把持性を高めるように機能する。
【0031】
C:手摺装置Zの設置例
この実施形態では、上記手摺装置Zの設置構造の一例として、
図4及び
図5、
図6にそれぞれ示すように、室内に設置されたベッド21の長辺側の一側縁21aと、該一側縁21aの近傍で且つその延出方向と平行な方向に指向して設置されたポータブルトイレ22の前縁部22aとによって形成された入隅状のスペース内に設置した場合を示している。
【0032】
この手摺装置Zは、人が上記ベッド21とポータブルトイレ22の間を移動する場合においてその体勢と動作を介助することを主目的とするものであることから、その設置に際しては上記手摺ユニット2を上記ポータブルトイレ22の右側部よりも右側に位置させて、該手摺ユニット2と上記ベッド21と上記ポータブルトイレ22の三者間に移動スペースを確保することを基本思想としている。
【0033】
そして、この基本思想を前提とし、具体的には、上記手摺装置Zは、その台座1の短辺側の側縁1bが上記ベッド21の一側縁21aに近接してこれと略平行となり、また上記台座1の長辺側の一側縁1cが上記ポータブルトイレ22の前縁部22aと略平行で且つその脚部22bの前縁部が上記台座1の一側縁1cに乗り上げた状態となっている。なお、これは一つの設置例であって、例えば、他の設置例では、上記台座1の短辺側の縁部1bを上記ベッド21の下面側に進入させるとか、上記台座1の長辺側の一側縁1cを上記ポータブルトイレ22の脚部22bの前縁部から外れてその前側に位置させるなど、必要に応じて適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0034】
図5は、人が上記ポータブルトイレ22の座部22cに着座して用を足しているときに、上記手摺ユニット2の第2把持部12部分を両手で把持して自身の姿勢を保持している状態を示している。以下、この手摺装置Zの使用状態を「第1の使用状態」という。
【0035】
図6は、上記ポータブルトイレ22の座部22cへの着座状態から上記ベッド21側へ向かうべく体を起こし始めた立上り状態、あるいは上記ベッド21側から上記ポータブルトイレ22側に移動し、該ポータブルトイレ22の座部22cに着座すべく両手で上記手摺ユニット2の第2把持部12を把持しながら腰を下し始めた状態を示している。以下、これら二つの手摺装置の使用状態を「第2の使用状態」という。
【0036】
D:第1の使用状態における作用効果
図5に示す第1の使用状態においては、人20が上記ポータブルトイレ22の座部22cに着座した姿勢で上記手摺ユニット2の第2把持部12を両手で把持して姿勢を保持しているが、この場合、上記手摺ユニット2が人20の右体前に位置していることから、例えば、従来のように上記手摺ユニット2が上記台座1の一側縁1aと平行に延びている場合には、特に上記第2把持部12の前方寄りを把持する左手は、その把持位置までの距離が長くなることから、左腕を大きく伸ばして把持しなければならず、その把持が難しく、また体を捩る動作が必要なことから身体的負担も大きくなる。
【0037】
しかし、この実施形態の手摺装置Zでは、上記手摺ユニット2が、
図4に示すように、上記台座1の一側縁1aに対して側台座1の中心寄りに角度18°傾斜する直線L
2上に配置されているため、この手摺ユニット2の傾斜分に相当する分だけ上記第2把持部12の前方部分が人20に近付くこととなり、それだけ大きく右側へ体を捩ることなく容易に左手で上記第2把持部12の前方部分を把持することができる。
【0038】
また、上記手摺ユニット2の上記第2把持部12が上記台座1の中心寄りに位置するということは、該第2把持部12が、上記ポータブルトイレ22の座部22cに着座した人20の右側寄り位置から体前位置側へ移動したということである。したがって、第2把持部12の体前位置側への移動によって、人20の右手は上記第2把持部12に対して手の甲側ではなく、掌側がこれに臨むこととなり、該第2把持部12に対する把持がより容易且つ確実となる。
【0039】
E:第2の使用状態における作用効果
図6に示す第2の使用状態においては、上記ポータブルトイレ22の座部22cに着座した人20が、例えば、該ポータブルトイレ22側から上記ベッド21側へ移動すべく、右手で上記手摺ユニット2の第1把持部11を把持するととみに、左手で上記第2把持部12を把持し、腰を浮かせた状態である。
【0040】
この場合、この実施形態では、上記手摺ユニット2が上記直線L2上にあって、その第2把持部12が、該手摺ユニット2を上記台座1に一側縁1aと平行に配置した場合よりも人20に近付いていることから、左腕を体前から斜め方向に差し出して上記第2把持部12を把持する場合、これを容易且つ確実に把持することができる。
【0041】
また、人20は、その右手で上記手摺ユニット2の第1把持部11部分を把持するが、その場合、上記第1把持部11の上側で、且つ上記第2把持部12の手前側に上記第1の空スペース15が形成されているため、人20が右手で上記第1把持部11を把持する場合、該右腕が上記手摺ユニット2と干渉することが確実に防止され右手による上記第1把持部11の把持が容易且つ確実となり、把持性が向上する。
【0042】
さらに、人20は立ち上がりに備えてその両足を幾分前方側へ踏み出すが、この場合、上記第2把持部12の下側で且つ上記第2支柱6の前方側には上記第2の空スペース16が形成されているため、人20はその右足を上記第2の空スペース16内に踏む出すことで、該右足を上記手摺ユニット2に干渉させることなく前方側に位置させることができ、その結果、上記ポータブルトイレ22からの立ち上がりが容易となり、安全性が担保される。
【0043】
一方、図示はしていないが、上記第2の使用状態のうち、人20が上記ベッド21側から上記ポータブルトイレ22側に移動して該ポータブルトイレ22の座部22cに着座すべく移動する場合であるが、この場合には、人20はベッド2から立上ったあと、その右手前方にある上記ポータブルトイレ22に向かうべく必然的にその体前方向が右側寄りに変化し、それに伴って左手も体前位置よりも右側へ変化することになる。この結果、例えば、従来のように上記手摺ユニット2が上記台座1の一側縁1aと平行になっている場合には、左手が上記手摺ユニット2の第2把持部12から遠ざかることでこれを把持しにくくなる。しかし、この実施形態では、上記手摺ユニット2は、上記台座1の一側縁1aよりも中央寄りに傾斜して配置されていることから、該第2把持部12と左手との距離が短くなり、人20はその左手で上記第2把持部12を的確に掴むことができる。
【0044】
F:上記手摺ユニット2の上記台座1に対する取付角度の臨界的意義
本願発明では、上述のように上記手摺ユニット2の上記台座1に対する取付角度を、該台座1の一側縁1aの方向から、該台座1の中央寄りに角度6°だけ傾斜した位置(
図4の直線L
1の位置)と、角度30°だけ傾斜した位置(
図4の直線L
3の位置)の範囲に設定している。
【0045】
ここで、上記角度範囲の最小角度「6°」は、上記手摺ユニット2の第2把持部12が上記台座1の中心寄りに移動することによる効果が得られる限界の角度として設定したものであり、これより低角度側(即ち、上記台座1の一側縁1aに方向に近い側)においては上記効果が小さくなり、殆ど効果を実感できないことから、限界角度として上記「角度6°」を設定したものである。
【0046】
一方、上記角度範囲の最大角度「30°」は、上記手摺ユニット2の前方側に位置する上記第2支柱6による上記台座1の上面側におけるスペースの角の狭小化を防ぐことと、上記第2把持部12を台座1の中心寄りに変化させることの効果を比較勘案して設定したものである。即ち、上記手摺ユニット2の上記台座1に対する取付角度は、これが大きいほど上記第2把持部12が台座1の中心寄りに変位することから、該第2把持部12に対する把持性という点では該角度は大きいほど好ましいと言える。しかし、この角度が大きくなるということは、それだけ上記第2把持部12が台座1の中央寄りに移動して該台座1の上面側のスペース(即ち、人20の移動スペース)が狭められるということであり、人20の移動性という点において好ましくない状態となる。
【0047】
そこで、上記手摺ユニット2を傾斜配置することによる第2把持部12に対する把持性の向上というメリットと、上記手摺ユニット2が上記台座1の中心寄りに変化することによる上記台座1側のスペースの狭小化というデメリットを比較勘案し、上記第2把持部12の把持性の確保と上記台座1側のスペースの確保という、相反する要求が両立できる角度として上記「角度30°」を設定したものである。
【0048】
なお、この実施形態では、上記手摺装置Zを利用するための機材として、上記ベッド21とポータブルトイレ22を例にとって説明したが、この他に、例えば、上記ポータブルトイレ22に代えて車椅子を備えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明に係る手摺装置は、主として介護・看護分野において広く利用できるものである。
【符号の説明】
【0050】
1 ・・台座
2 ・・手摺ユニット
3、4 ・・固定脚
5、6 ・・支柱
7 ・・U形杆
8 ・・J形杆
9 ・・つなぎ材
10 ・・つなぎ材
11 ・・第1把持部
12 ・・第2把持部
15,16・・空スペース
20 ・・人
21 ・・ベッド
22 ・・ポータブルトイレ
Z ・・手摺装置