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特許7367941ターゲット群装置およびこれを用いた点群データ計測方法
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  • 特許-ターゲット群装置およびこれを用いた点群データ計測方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ターゲット群装置およびこれを用いた点群データ計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/06 20060101AFI20231017BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20231017BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G01C15/06 T
G01C15/00 103A
E01D21/00 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022123749
(22)【出願日】2022-08-03
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500584985
【氏名又は名称】株式会社岩崎
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】奈良 久
(72)【発明者】
【氏名】中田 清博
(72)【発明者】
【氏名】北原 剛
(72)【発明者】
【氏名】大島 邦裕
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103307999(CN,A)
【文献】国際公開第2017/033692(WO,A1)
【文献】特開2007-046952(JP,A)
【文献】特開2020-154434(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 15/06
G01C 15/00
E01D 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛体によって形成され、構造物の近傍に固定可能な形状を有する本体フレームと、
前記本体フレームに対して異なる位置に設けられ、相対位置関係が固定されているとともに、任意の座標系における複数箇所から前記構造物とともに点群データとして計測される位置に配置され、前記点群データを合成する際の基準点として用いられる3つ以上のターゲットと、
を有する、ターゲット群装置。
【請求項2】
前記本体フレームにおける前記ターゲットは、前記任意の座標系における複数箇所のいずれの箇所からも3つ以上が前記構造物とともに点群データとして計測される位置に配置されている、請求項1に記載のターゲット群装置。
【請求項3】
前記本体フレームには、
前記本体フレームの所定位置から略水平方向に延出された水平フレームと、
前記水平フレームの先端部から略鉛直方向に延出された鉛直フレームと、
前記鉛直フレームの先端部に固定された略コの字状の支持フレームとが設けられており、
前記ターゲットは、前記支持フレームの両端に設けられた回転支持軸によって回動自在に支持されている、請求項1に記載のターゲット群装置。
【請求項4】
点群データを計測する点群データ計測装置と、請求項1から請求項3のいずれかに記載のターゲット群装置とを用いて前記構造物の点群データを計測する方法であって、
前記構造物の近傍に前記ターゲット群装置を固定するターゲット群装置固定工程と、
前記点群データ計測装置の計測範囲内に少なくとも3つの前記ターゲットが含まれる適正位置に前記点群データ計測装置を設置する点群データ計測装置設置工程と、
前記適正位置に設置された前記点群データ計測装置によって前記構造物の点群データを計測する点群データ計測工程と、
必要な点群データが全て計測されていない場合、前記ターゲット群装置を固定したまま、前記点群データ計測装置を異なる計測位置に移動する点群データ計測装置移動工程と、
を有する、点群データ計測方法。
【請求項5】
前記構造物が張出し架設工法によって施工中の橋梁であって、前記橋梁の断面の点群データを計測する場合、前記点群データ計測装置移動工程では、既設の橋梁上を移動する移動作業車に設けられ、前記橋梁の断面と対向する適正位置に前記点群データ計測装置を昇降させる昇降装置を用いて前記点群データ計測装置を移動させる、請求項4に記載の点群データ計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データを合成する際の基準点として用いるのに好適なターゲット群装置およびこれを用いた点群データ計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、構造物の出来形等を計測する技術として、3次元スキャナ等によって計測される点群データが利用されている。例えば、特開2020-24094号公報には、複数の計測ポイントで取得された点群を合成し、その合成した点群に基づいて構造物の寸法を計測する出来形計測方法が開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-24094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された発明を含め、従来、複数箇所から計測された点群データを合成するには、計測箇所を変えるたびに、計測対象物上に複数の基準点(ターゲット)を設置し、各基準点の公共座標系における座標値を測量する必要がある。このため、それらの作業に多大な労力や時間がかかるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データを合成するのに必要な作業を省力化し、現場での作業に要する時間やコストを低減することができるターゲット群装置およびこれを用いた点群データ計測方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るターゲット群装置は、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データを合成するのに必要な作業を省力化し、現場での作業に要する時間やコストを低減するという課題を解決するために、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データを合成する際の基準点として用いられるターゲット群装置であって、剛体によって形成された本体フレームと、前記本体フレームに対して異なる位置に設けられ、相対位置関係が固定された3つ以上のターゲットと、を有する。
【0007】
また、本発明の一態様として、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データに、3つ以上のターゲットを確実に含めるという課題を解決するために、前記本体フレームにおける前記ターゲットは、前記任意の座標系における複数箇所のいずれの箇所からも3つ以上が前記計測対象物とともに点群データとして計測される位置に配置されていることが好ましい。
【0008】
さらに、本発明の一態様として、各ターゲットの任意座標系における座標を特定しやすくするとともに、本体フレームに対して各ターゲットを計測され易い位置および角度で固定するという課題を解決するために、前記本体フレームは、前記本体フレームの所定位置から略水平方向に延出された水平フレームと、前記水平フレームの先端部から略鉛直方向に延出された鉛直フレームと、前記鉛直フレームの先端部に固定された略コの字状の支持フレームと、を有しており、前記ターゲットは、前記支持フレームの両端に設けられた回転支持軸によって回動自在に支持されていてもよい。
【0009】
本発明に係る点群データ計測方法は、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データを合成するのに必要な作業を省力化し、現場での作業に要する時間やコストを低減するという課題を解決するために、点群データを計測する点群データ計測装置と、上述したいずれかのターゲット群装置とを用いて計測対象物の点群データを計測する方法であって、前記計測対象物の近傍に前記ターゲット群装置を固定するターゲット群装置固定工程と、前記点群データ計測装置の計測範囲内に少なくとも3つの前記ターゲットが含まれる適正位置に前記点群データ計測装置を設置する点群データ計測装置設置工程と、前記適正位置に設置された前記点群データ計測装置によって前記計測対象物の点群データを計測する点群データ計測工程と、必要な点群データが全て計測されていない場合、前記ターゲット群装置を固定したまま、前記点群データ計測装置を異なる計測位置に移動する点群データ計測装置移動工程と、を有する。
【0010】
また、本発明の一態様として、橋梁の断面を計測し易い位置に点群データ計測装置を配置するという課題を解決するために、前記計測対象物が張出し架設工法によって施工中の橋梁であって、前記橋梁の断面の点群データを計測する場合、前記点群データ計測装置移動工程では、既設の橋梁上を移動する移動作業車に設けられ、前記橋梁の断面と対向する適正位置に前記点群データ計測装置を昇降させる昇降装置を用いて前記点群データ計測装置を移動させてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データを合成するのに必要な作業を省力化し、現場での作業に要する時間やコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るターゲット群装置の一実施形態を上方から見た斜視図である。
図2】本実施形態のターゲット群装置を下方から見た斜視図である。
図3】本実施形態における、本体フレームに支持されたターゲットを(a)上方かつ外方から見た斜視図、および(b)下方かつ内方から見た斜視図である。
図4】本実施形態のターゲット群装置を用いて、橋梁の断面の点群データを計測する様子を示す側面図である。
図5図3の(a)一部平面図および(b)正面図である。
図6】本実施形態のターゲット群装置を用いた点群データ計測方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るターゲット群装置およびこれを用いた点群データ計測方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0014】
本発明に係るターゲット群装置1は、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物10の点群データを合成する際の基準点として用いられるものである。本実施形態において、ターゲット群装置1は、図1および図2に示すように、主として、本体フレーム2と、この本体フレーム2に対して異なる位置に設けられるターゲット3とを有している。以下、各構成について説明する。
【0015】
本体フレーム2は、ターゲット群装置1の本体となるものである。本実施形態において、本体フレーム2は、H形鋼等の剛体によって形成されており、図1および図2に示すように、本体フレーム2の上面から略水平方向に延出された10本の水平フレーム4と、各水平フレーム4の先端部から略鉛直方向下方に延出された鉛直フレーム5と、各鉛直フレーム5の先端部に固定された略コの字状の支持フレーム6とを有している。
【0016】
なお、本実施形態では、本体フレーム2が一直線状に形成されているが、この構成に限定されるものではなく、現場の状況に応じて屈曲した形状や、湾曲した形状であってもよい。また、本実施形態では、長さの異なる10本の水平フレーム4が、ほぼ互い違いとなるように本体フレーム2の上面に固定されているが、この構成に限定されるものではなく、3本以上の水平フレーム4が本体フレーム2の所定位置に固定されていればよい。
【0017】
さらに、本実施形態では、後述するとおり、ターゲット群装置1を計測対象物10の上方に設置するため、鉛直フレーム5が水平フレーム4の先端部から略鉛直方向下方に延出されているが、ターゲット群装置1を計測対象物10の下方に設置する場合には、鉛直フレーム5を水平フレーム4の先端部から略鉛直方向上方に延出してもよい。また、本実施形態では、鉛直フレーム5が伸縮自在に構成されており、ターゲット3の高さ位置を調節しうるようになっている。
【0018】
なお、本体フレーム2に対して各ターゲット3を取り付けるための構成は、上述した水平フレーム4、鉛直フレーム5および支持フレーム6による構成に限定されるものではない。剛体によって形成された部材によって、任意の座標系における複数箇所のいずれの計測箇所からも3つ以上のターゲット3が計測対象物10とともに点群データとして計測される位置に配置されていればよい。
【0019】
また、本発明において、剛体とは、厳密な意味での剛体(大きな力を加えても形状・体積が変わらないと仮想された物体)ではなく、工事現場における通常の使用環境において、剛体とみなして差し支えない物体をいうものとする。これにより、各ターゲット3の相対位置関係は、風などの外力によって変化することなく、常に固定された状態で保持される。
【0020】
また、本実施形態において、本体フレーム2、水平フレーム4、鉛直フレーム5および支持フレーム6のそれぞれは、剛体であり、かつ、工事現場における通常の使用環境において温度収縮率が無視できる部材であることが好ましい。これにより、各ターゲット3の相対位置関係は、気温によって変化することもなく、常に固定された状態で保持される。
【0021】
ターゲット3は、点群データを合成する際の目印となるものである。本実施形態では、図1および図2に示すように、10個のターゲット3が、本体フレーム2に対して異なる位置に設けられており、各ターゲット3の相対位置関係が固定されている。なお、ターゲット3の個数は、上記構成に限定されるものではなく、3次元スキャナ等によって計測する際、いずれの計測箇所からも、相対位置関係が固定された3つ以上のターゲット3が計測されるように設けられていればよい。
【0022】
また、本実施形態において、各ターゲット3は、図3(a),(b)に示すように、円形の平板状に形成されており、その片面には、4象限に区分した各領域を白黒に塗り分けた市松模様が施されている。これにより、各領域の反射率が大きく異なるため、その反射強度に基づいて各領域の境界端としての中心点が検出されるようになっている。
【0023】
具体的には、3次元スキャナ等の点群データ計測装置によって計測された点群データにターゲット3の点群が含まれている場合、「Leica Cyclone FIELDWORX(ライカ ジオシステムズ社)」等のターゲット自動検出ソフトウェアによる処理を実行すると、上述した反射強度に基づいてターゲット3の中心点が検出され、当該中心点の座標が算出されるようになっている。
【0024】
また、本実施形態において、各ターゲット3は、図3(a),(b)に示すように、支持フレーム6の両端に設けられた回転支持軸61によって回動自在に支持されており、所望の傾斜角度で固定しうるようになっている。
【0025】
なお、ターゲット3の構成は、上記構成に限定されるものではなく、中心点を検出可能な市松模様を有するものであれば、四角形状等であってもよい。あるいは、市松模様を有するものに限定されるものではなく、高い拡散反射率を有する球体状のターゲット等であってもよい。この球体状ターゲットによれば、表面に照射された複数のスキャンポイントから輪郭が形状認識され、球体の中心点が検出されるようになっている。
【0026】
つぎに、本実施形態のターゲット群装置1による作用およびターゲット群装置1を用いた点群データ計測方法について説明する。
【0027】
なお、本実施形態では、図4および図5に示すように、張出し架設工法によって施工中の橋梁を計測対象物10とし、点群データを計測する3次元スキャナ等の点群データ計測装置11と、本実施形態のターゲット群装置1とを用いて、任意の座標系における複数箇所から橋梁の断面の点群データを計測する場合について説明する。
【0028】
まず、図6に示すように、計測対象物10の近傍にターゲット群装置1を固定する(ステップS1:ターゲット群装置固定工程)。本実施形態では、図4および図5に示すように、既設の橋梁上を移動する移動作業車12によって、橋梁の軸線方向前方における斜め上方に支持された取付架台13にターゲット群装置1を取り付けて固定している。これにより、相対位置関係が既知のターゲット3が簡単に設置されるため、従来、行われていたターゲット3の設置作業や測量作業が省力化される。また、ターゲット群装置1は、計測対象である橋梁の断面にできるだけ正対する位置であって、3次元スキャナの計測範囲内に設置される。
【0029】
また、本実施形態において、各ターゲット3は、本体フレーム2に対して、水平フレーム4、鉛直フレーム5および支持フレーム6によって固定されている。このため、本体フレーム2の中心をX軸とすると、水平フレーム4を取り付けた位置がX座標値となり、水平フレーム4の長さがY座標値となり、鉛直フレーム5の長さがZ座標値となる。よって、各ターゲット3の任意座標系(基準点座標系)における座標を特定しやすい。また、各ターゲット3は、本体フレーム2に対して計測され易い位置および角度で固定される。
【0030】
なお、移動作業車12は、橋梁の施工に必要な型枠等を移動・支持するためのものであり、張出し架設工法によって施工される橋梁には必ず設けられている。また、移動作業車12は、橋梁が1ブロック完成するたびに、次ブロックの施工準備のために軸線方向前方に移動され、最終ブロックが完成するまで存在する。このため、ターゲット群装置1は、移動作業車12を移動させるだけで同時に移動するため、1ブロック完成するたびに設置し直す必要がなく、橋梁の施工に邪魔にならない位置に設置される。
【0031】
つぎに、任意の座標系における適正位置に点群データ計測装置11を設置する(ステップS2:点群データ計測装置設置工程)。本実施形態において、適正位置とは、点群データ計測装置11の計測範囲内に少なくとも3つのターゲット3が含まれる位置をいうものとする。この点、橋梁の施工現場には、様々な障害物(足場や機械等)が存在するため、点群データ計測装置11を設置可能な箇所には制限がある。
【0032】
そこで、本実施形態では、点群データ計測装置11を設置可能な箇所や、当該箇所からの計測範囲を考慮し、適切なターゲット3の位置や向きを事前に特定する。そして、任意の座標系における複数箇所のいずれの箇所からも3つ以上のターゲット3が計測対象物10とともに点群データとして計測される位置および向きに配置されている。
【0033】
なお、本実施形態では、図4および図5(b)に示すように、移動作業車12に設けられた取付架台13の下方に、橋梁の軸線に略直交する方向に沿って水平レール14が吊り下げられている。そして、この水平レール14に沿って左右方向に移動可能であり、かつ、上下方向に伸縮可能な昇降装置15が設けられている。このため、昇降装置15に3次元スキャナを搭載することにより、障害物がなく橋梁の断面を計測し易い位置に点群データ計測装置11を配置することが可能となる。また、昇降装置15の移動を自動制御することにより、全自動で計測対象物10の点群データが計測される。
【0034】
つづいて、適正位置に設置された点群データ計測装置11によって計測対象物10の点群データを計測する(ステップS3:点群データ計測工程)。これにより、点群データ中には、相対位置関係が固定された3つ以上のターゲット3も点群として含まれる。このため、ターゲット自動検出ソフトウェアを用いれば、点群データを合成する際の基準点が簡単に特定される。
【0035】
つぎに、必要な点群データが全て計測されていない場合(ステップS4:NO)、ターゲット群装置1を固定したまま、点群データ計測装置11を異なる計測位置に移動する(ステップS5:点群データ計測装置11移動工程)。このとき、昇降装置15が、障害物がなく橋梁の断面を計測し易い計測位置に点群データ計測装置11を簡単かつ迅速に配置する。また、計測箇所を変えるたびに、計測対象物10上に複数のターゲット3を設置する作業や、各ターゲット3の座標値を測量する作業が不要となるため、現場の作業が省力化する。
【0036】
そして、ステップS3へ戻って上述した工程を繰り返し、必要な点群データが全て計測されると(ステップS4:YES)、点群データの計測を終了する。これにより、計測された全ての点群データには、既知の相対位置関係を有する3つ以上のターゲット3群が含まれるため、合成する際の基準点として使用することが可能となる。
【0037】
具体的には、本実施形態のターゲット群装置1を用いた点群データ計測方法によって、複数箇所で計測された点群データは、下記工程(1)~(5)を実行することにより合成される。
(1)ターゲット群装置1における、各ターゲット3P1~Pnの任意座標系(基準点座標系)における座標Pn(Xn,Yn,Zn)を特定する。
(2)複数箇所で計測された点群データのそれぞれをターゲット自動検出ソフトウェアによって処理し、ターゲット3に相当する点群部分を自動検出するとともに、その点群部分から各ターゲット3の中心点P1m~PNmの座標PNm(Xmn,Ymn,Zmn)を自動算出する。なお、中心点の座標は、3次元スキャナが固有に持つ任意座標系(機械点座標系)の座標である。
(3)ターゲット群装置1における各ターゲット3間の相対距離と、上記工程(2)で特定された各ターゲット3間の相対距離とは、それぞれの座標系において同じである。このため、各ターゲット3の任意座標系(基準点座標系)における座標Pnと、中心点の座標PNmとの間で同じ相対位置関係を持つ組み合わせを抽出し、各計測箇所における点群データ内で少なくとも3点以上のPnとPNmとの対応を特定する。
(4)特定したPnとPNmとの関係に基づいて、上記工程(2)で算出した機械点座標系における点群データの座標値を基準点座標系にマッピングするための「座標変換係数」を算出する。
(5)「座標変換係数」を用いて各計測箇所における機械点座標系の点群データを基準点座標系の点群データに変換し、変換後の点群データを合算する。これにより、複数箇所で計測された点群データが合成される。
【0038】
以上のような本実施形態のターゲット群装置1およびこれを用いた点群データ計測方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物10の点群データを合成するのに必要な作業を省力化し、現場での作業に要する時間やコストを低減することができる。
2.任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物10の点群データに、3つ以上のターゲット3を確実に含めることができる。
3.各ターゲット3の任意座標系における座標を特定しやすくするとともに、本体フレーム2に対して各ターゲット3を計測され易い位置および角度で固定することができる。
4.橋梁の断面を計測し易い位置に点群データ計測装置11を配置することができる。
5.特願2021-110218号に係る自動採寸技術に適用することで、橋梁等の大きな断面の出来形を実用的かつ効率的に計測することができる。
【0039】
なお、本発明に係るターゲット群装置1およびこれを用いた点群データ計測方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0040】
例えば、上述した本実施形態では、張出し架設工法によって略水平方向に沿って施工される橋梁を計測対象物10としているが、これに限定されるものではなく、略鉛直方向に沿って施工される構造物等を計測対象物10としてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ターゲット群装置
2 本体フレーム
3 ターゲット
4 水平フレーム
5 鉛直フレーム
6 支持フレーム
10 計測対象物
11 点群データ計測装置
12 移動作業車
13 取付架台
14 水平レール
15 昇降装置
61 回転支持軸
【要約】
【課題】 任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物の点群データを合成するのに必要な作業を省力化し、現場での作業に要する時間やコストを低減することができるターゲット群装置およびこれを用いた点群データ計測方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るターゲット群装置1は、任意の座標系における複数箇所から計測された計測対象物10の点群データを合成する際の基準点として用いられるターゲット群装置1であって、剛体によって形成された本体フレーム2と、本体フレーム2に対して異なる位置に設けられ、相対位置関係が固定された3つ以上のターゲット3と、を有する。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6