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特許7367955車両共用サービス円滑化システム及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】車両共用サービス円滑化システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20231017BHJP
   G06Q 30/0207 20230101ALI20231017BHJP
   G06Q 30/08 20120101ALI20231017BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/0207
G06Q30/08
G08G1/00 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019106532
(22)【出願日】2019-06-06
(65)【公開番号】P2020201602
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504143441
【氏名又は名称】国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000822
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル知財
(72)【発明者】
【氏名】畑 秀明
(72)【発明者】
【氏名】松本 健一
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-148910(JP,A)
【文献】特開2019-020162(JP,A)
【文献】特開2002-312698(JP,A)
【文献】特開2018-173977(JP,A)
【文献】特開2002-279580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両と、車両共用サービスのユーザが使用するユーザ端末と、車両共用サービスのサービス提供者が管理するサーバとが、ネットワークを介して接続されデータを送受信するシステムにおいて、
前記車両は、
前記車両の位置情報及び使用状態から成る返却データを前記サーバへ送信可能な通信手段、を備え、
前記ユーザ端末は、
特定の時間、場所及び希望価格を指定して入力された入札データを前記サーバに送信することにより入札を行う入札手段と、
前記入札に対応して車両を返却して前記入札データと前記返却データに基づくマッチング成立後に、前記サーバに報酬受取手続要求を送信し、前記サーバから報酬データを受信することにより、報酬受取を行う報酬受取手段と、
前記サーバに対して入札データの閲覧要求を送信し、前記サーバから前記入札データを受信することにより、現在の前記入札に関する情報を取得し表示する入札情報取得手段、を備え、
前記サーバは、
前記入札データを記憶し、前記入札に関する情報を管理し、前記ユーザ端末から前記報酬受取手続要求を受信し、報酬額を算出して生成された前記報酬データを記憶することにより、前記報酬受取に関する情報を管理する情報管理手段と、
前記入札データ及び前記位置情報に基づき、前記入札において指定された特定の場所に車両が存在しない場合に、
前記入札データ及び前記返却データに基づき、前記入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザと、前記入札において指定された時間の経過前に最も早く車両を返却した第2のユーザとを、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させるマッチング手段、を備え、車両が返却されるまで、第2のユーザは返却するか否かを自由に決定できることを特徴とする車両共用サービス円滑化システム。
【請求項2】
前記マッチング手段は、
前記入札において指定された特定の場所に車両が存在する場合に、
前記入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザと、前記入札において指定された時間以前の一定時間内に最も早く車両を返却した第2のユーザとを、前記入札のタイミングでマッチングを成立させることを特徴とする請求項1に記載の車両共用サービス円滑化システム。
【請求項3】
前記マッチング手段は、
前記第1のユーザに劣後する希望価格で入札した第3のユーザと、前記第2のユーザより遅く車両を返却した第4のユーザとを、第3のユーザの内、希望価格が高額であるユーザを優先し、かつ、第4のユーザの内、車両返却時期がより早期であるユーザを優先して、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両共用サービス円滑化システム。
【請求項4】
前記入札情報取得手段は、前記入札に関する情報として、前記入札において指定された時間の経過前に車両を返却した際に得られる報酬の期待値を表示することを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の車両共用サービス円滑化システム。
【請求項5】
前記サーバは、
前記入札が行われた場合に、より長時間の使用を行っているユーザに対して、使用時間に応じて追加料金を徴収する追加料金徴収手段を更に備えることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の車両共用サービス円滑化システム。
【請求項6】
前記マッチングの成立後は、前記第1のユーザが指定した希望価格の一部又は全部をペナルティとして前記入札を撤回し得ることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の車両共用サービス円滑化システム。
【請求項7】
前記サーバは、
特定の場所から指定場所へ指定時間経過前に、車両を移動するユーザを募るオークションを行うオークション手段と、
前記オークションにおける指定された特定の場所に車両が存在する場合に、
特定の場所に存在する車両を使用し、指定場所へ指定時間経過前に、車両が返却されたタイミングで、前記オークション手段により予め提示された報酬額又は前記入札手段により入札された最低報酬額に基づき、車両を移動したユーザへの報酬付与を決定する報酬付与決定手段、
を更に備えることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載の車両共用サービス円滑化システム。
【請求項8】
前記車両は、
前記車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記車両が使用中又は返却済みであるかを判別する使用状態判別手段
を更に備えることを特徴とする請求項1~7の何れかに記載の車両共用サービス円滑化システム。
【請求項9】
請求項1~8の何れかの車両共用サービス円滑化システムにおける前記ユーザ端末。
【請求項10】
請求項1~8の何れかの車両共用サービス円滑化システムにおける前記サーバ。
【請求項11】
車両と、車両共用サービスのユーザが使用するユーザ端末と、車両共用サービスのサービス提供者が管理するサーバとが、ネットワークを介して接続されデータを送受信する方法において、
前記車両の通信手段が、前記車両の位置情報及び使用状態から成る返却データを前記サーバへ送信する通信ステップと、
前記ユーザ端末の入札手段が、特定の時間、場所及び希望価格を指定して入力された入札データを前記サーバに送信することにより入札を行う入札ステップと、
前記ユーザ端末の報酬受取手段が、前記入札に対応して車両を返却して前記入札データと前記返却データに基づくマッチング成立後に、前記サーバに報酬受取手続要求を送信し、前記サーバから報酬データを受信することにより、報酬受取を行う報酬受取ステップと、
前記ユーザ端末の入札情報取得手段が、前記サーバに対して入札データの閲覧要求を送信し、前記サーバから前記入札データを受信することにより、現在の前記入札に関する情報を取得し表示する入札情報取得ステップと、
前記サーバの情報管理手段が、前記入札データを記憶し、前記入札に関する情報を管理し、前記ユーザ端末から前記報酬受取手続要求を受信し、報酬額を算出して生成された前記報酬データを記憶することにより、前記報酬受取に関する情報を管理する情報管理ステップと、
前記サーバのマッチング手段が、前記入札データ及び前記位置情報に基づき、前記入札において指定された特定の場所に車両が存在しない場合に、前記入札データ及び前記返却データに基づき、前記入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザと、前記入札において指定された時間の経過前に最も早く車両を返却した第2のユーザとを、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させるマッチングステップ、
を備え、車両が返却されるまで、第2のユーザは返却するか否かを自由に決定できることを特徴とする車両共用サービス円滑化方法。
【請求項12】
請求項11の車両共用サービス円滑化方法における前記入札ステップ、前記報酬受取ステップおよび前記入札情報取得ステップをコンピュータに実行させるためのユーザ端末プログラム。
【請求項13】
請求項11の車両共用サービス円滑化方法における前記情報管理ステップおよび前記マッチングステップをコンピュータに実行させるためのサーバプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のユーザによって車両を共用するサービスを円滑化する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車や自転車などの車両を共用するサービスが多く利用されている。特に、カーシェアリングは、自家用車を所有することなく、低コストで利用できることから、利便性の高いサービスとして認知されている。カーシェアリングの中でも、ワンウェイ方式のカーシェアリングは、決められた貸出・返却ステーション間で乗り捨て利用可能なカーシェアリングである。
しかしながら、ワンウェイ方式のカーシェアリングは、車両の偏在による利用機会喪失が問題となっている。
【0003】
そこで、理論的解析からオークションに基づくワンウェイ方式のカーシェアリングにおける利用権取引方法が提案されている(非特許文献1を参照)。
しかしながら、上記方法では、各時間帯への明確な価値表明や、利用時間枠の確実な履行など、利用者に求める要件が厳しく実用的でない。
【0004】
また、各時間帯への明確な価値表明について緩和する技術も提案されている(非特許文献2を参照)。しかしながら、非特許文献2において提案された手法においても、利用時間枠の確実な履行を利用者に求め、要件が厳しく実用的でないという問題は解決されていない。
【0005】
さらに、ユーザが車両の使用を望むステーションが貸出不可である場合には、車両を使用中の他のユーザとの間で返却を促す交渉をし得るとする共用車両管理装置が知られている(特許文献1を参照)。しかしながら、特許文献1に開示された共用車両管理装置では、交渉相手とされたユーザに対して、返却に関する心理的なプレッシャーを与えることにもなりかねず、ユーザの自由な利用が阻害される恐れがあるという問題がある。
【0006】
また、車両を借りる場所と乗り捨てる場所を予約することができる宅配レンタカー予約システムが知られている(特許文献2を参照)。しかしながら、かかる技術についても、やはり予約を行うものであることから、ユーザを拘束する度合いが強く、実用的ではないという問題がある。
【0007】
そもそも、ワンウェイ方式のカーシェアリングの利点は、利用者が好きな時に好きなだけ利用でき、かつ、好きな場所に乗り捨てできる点にある。
しかしながら従来技術のように、利用を予約するシステムでは、マッチングが成立すると、車両を使用中のユーザには確実な返却が求められ、車両を必要とするユーザには確実な使用が求められてしまい、上記利点が十分に得られなくなる。
したがって、上記利点を損なわないようなシステムとすることが望ましいといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2016-148910号公報
【文献】特開2019-16205号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】原祐輔, 羽藤英二, 乗捨て型共同利用交通システムに対する利用権取引制度の設計とその解法の提案, 土木学会論文集D3, Vol.70, No.4, pp.198-210, 2014.(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/70/4/70_198/_pdf)
【文献】原祐輔,選好誘出メカニズムがオークションの効率性に与える影響分析のための実験的アプローチ,土木学会論文集 D3,Vol.73,pp.1119-1128,2017.(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejipm/73/5/73_I_1119/_pdf/-char/ja)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
かかる状況に鑑みて、本発明は、車両を使用中のユーザに経済的なインセンティブを与え、かつ、需要を可視化することで、返却時間及び場所の事前申告が不要で、かつ、自律的な運用を促進する、車両共用サービスの利用円滑化システム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく、本発明の車両共用サービス円滑化システムは、車両共用サービスのユーザが使用するユーザ端末と、車両共用サービスのサービス提供者が管理するサーバとが、ネットワークを介して接続されデータを送受信するシステムにおいて、ユーザ端末は、特定の時間、場所及び希望価格を指定して入札を行う入札手段と、入札に対応して車両を返却して報酬受取を行う報酬受取手段と、現在の入札に関する情報を取得し表示する入札情報取得手段を備え、サーバは、入札に関する情報及び報酬受取に関する情報を管理する情報管理手段と、入札において指定された特定の場所に車両が存在しない場合に、入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザと、入札において指定された時間の経過前に最も早く車両を返却した第2のユーザとを、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させるマッチング手段を備え、車両が返却されるまで、第2のユーザは返却するか否かを自由に決定できる。
【0012】
車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させることにより、車両を使用するユーザは、返却するか否かを自由に決めることができ、サービスの利便性が向上する。入札を行うユーザは、希望価格を高額とすることで、優先的に車両の割当てを受けることができ、また、車両を返却するユーザは、より早く返却することで、報酬が得られやすくなるため、マッチングが成立しやすくなり、ユーザ間での自律的な運用が促進される。入札に対応した車両の返却とは、入札を認識して返却することまでは必要ではなく、事実上、車両の返却が入札に対応していればよい。したがって、報酬の受け取りが可能であることを、サーバからユーザ端末に通知する構成としてもよい。
ここで、車両とは、電気自動車やハイブリッド自動車等の自動車であることが好ましいが、自転車やその他の移動体を広く含む。なお、入札及び報酬には、金銭が用いられることが好ましいが、例えば、当該サービス内で利用可能なポイント、仮想通貨等でもよい。また、本明細書において時間とは、特定の時刻に限られない意味で用いている。したがって例えば、「15:00」を開始希望時間とした場合、「14時50分から15時05分までに車両の使用を開始できる」というように、ある程度の時間的な幅を持たせた仕様とすることができる。
【0013】
本発明の車両共用サービス円滑化システムにおいて、マッチング手段は、入札において指定された特定の場所に車両が存在する場合に、入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザと、入札において指定された時間以前の一定時間内に最も早く車両を返却した第2のユーザとを、入札のタイミングでマッチングを成立させることが好ましい。
車両の使用を希望するユーザが入札を行ったが、既に車両が返却されている場合も存在する。そこで、かかる場合にも、入札において指定された時間以前の一定時間内に返却された車両については、報酬の受け取りを可能としたものである。ここで、一定時間については、ニーズや運営状況に応じて、サーバにおいて任意に設定することが可能である。例えば、一定時間が3時間であり、入札において指定された時間が、15時からの使用希望である場合、11時に返却したユーザには報酬は支払われないが、13時に返却したユーザには支払われることになる。このように、一定時間を設けることにより、入札の存在を意識しないユーザに対しても報酬の支払いが可能となり、また入札と関連性の低い車両の返却については、報酬を支払わない仕様とすることができる。
【0014】
本発明の車両共用サービス円滑化システムにおいて、マッチング手段は、第1のユーザに劣後する希望価格で入札した第3のユーザと、第2のユーザより遅く車両を返却した第4のユーザとを、第3のユーザの内、希望価格が高額であるユーザを優先し、かつ、第4のユーザの内、車両返却時期がより早期であるユーザを優先して、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させることが好ましい。
第3のユーザの入札において希望価格が高額であるユーザから順にマッチングが行われることにより、車両の使用を希望するユーザは、希望価格を高く設定することで、より優先的に車両の割当てを受けることができ、ユーザのニーズに応じた割当てが可能となる。また、第4のユーザについても早期に返却することで、より高い報酬を受けられる可能性が高まるため、返却に対するモチベーションを高めることができる。なお、劣後する希望価格とは、より低額の希望価格のことである。
【0015】
第3のユーザと第4のユーザは複数人存在し得るので、複数組のマッチングが可能である。例えば、入札を行ったユーザが高額の希望価格を設定した順にA、B、Cと存在し、返却したユーザが返却順にD、E、Fと存在した場合には、Aが第1のユーザ、Dが第2のユーザとなり、まずAとBのマッチングが成立する。次に、B及びCは第3のユーザ、E及びFは第4のユーザとなり、先にBとEのマッチングが成立し、その後CとFのマッチングが成立する。
【0016】
本発明の車両共用サービス円滑化システムにおいて、入札情報取得手段は、入札に関する情報として、入札において指定された時間の経過前に車両を返却した際に得られる報酬の期待値を表示することが好ましい。
報酬の期待値の表示は、希望価格の明確な表示ではなく、絵柄、図形等によるイメージの表示であることが好ましい。入札に応じて、車両を返却したとしても報酬が必ず得られるとは限らないので、報酬の期待値がイメージで表示されることにより、ユーザに対する過度な期待を抱かせることを防止することができる。なお、ここでの表示とは、視覚的な表示だけではなく、音声による聴覚的な表示や、振動などによる触覚的な表示を含む。
【0017】
本発明の車両共用サービス円滑化システムにおいて、サーバは、入札が行われた場合に、より長時間の使用を行っているユーザに対して、使用時間に応じて追加料金を徴収する追加料金徴収手段を更に備えることが好ましい。
車両の使用を希望するユーザがいない場合は、車両の使用者は、当該車両を乗り続けていても、他のユーザの利用を妨げることはないので、長時間の使用を行っていても追加料金を徴収する必要はない。これに対して、車両の使用を希望するユーザがいる場合は、車両の使用者は、当該車両を乗り続けることで、他のユーザの利用を妨げる恐れがあるため、追加料金の徴収を可能とし、円滑な利用を促進したものである。
【0018】
本発明の車両共用サービス円滑化システムにおいて、マッチングの成立後は、第1のユーザが指定した希望価格の一部又は全部をペナルティとして入札を撤回し得ることが好ましい。
マッチングの成立後には、第2のユーザに報酬を支払う必要があるため、ペナルティを設けたものである。
【0019】
本発明の車両共用サービス円滑化システムにおいて、サーバは、特定の場所から指定場所へ指定時間経過前に、車両を移動するユーザを募るオークションを行うオークション手段と、オークションにおける指定された特定の場所に車両が存在する場合に、特定の場所に存在する車両を使用し、指定場所へ指定時間経過前に、車両が返却されたタイミングで、オークション手段により予め提示された報酬額又は入札手段により入札された最低報酬額に基づき、車両を移動したユーザへの報酬付与を決定する報酬付与決定手段を更に備えることでもよい。
サーバにオークション手段及び報酬付与決定手段が設けられることにより、ユーザの自律的な運用によっても、なお車両の偏在が発生する場合に、偏在を緩和するためのオークションをサービス提供者が開催することができ、サービスの円滑化を促進する。ここで、特定の場所とは、1つの場所に限られず、複数の場所でもよい。指定場所についても、1つの場所に限られず、複数の場所でもよい。したがって、指定場所として指定した場所以外で、当該車両共用サービスにおいて利用可能な全ての貸出・返却ステーションを特定の場所としてもよいし、特定の場所として指定した場所以外で、当該車両共用サービスにおいて利用可能な全ての貸出・返却ステーションを指定場所としてもよい。
【0020】
本発明の車両共用サービス円滑化システムにおいて、車両は、車両の位置情報を取得する位置情報取得手段と、車両が使用中又は返却済みであるかを判別する使用状態判別手段と、位置情報及び使用状態をサーバへ送信可能な通信手段を備えることが好ましい。
位置情報取得手段及び使用状態判別手段が車両に設けられることにより、当該車両が、どのステーションから使用され、どのステーションへ返却されたかについての情報を取得することが可能となる。また、通信手段が設けられることにより、取得した情報をサーバに記憶し、管理することが可能となる。通信手段は、サーバへデータを送信するだけではなく、サーバからデータを受信することも可能であることが好ましい。
【0021】
本発明のユーザ端末は、上記の何れかの車両共用サービス円滑化システムにおけるものである。また、本発明のサーバは、上記の何れかの車両共用サービス円滑化システムにおけるものである。
【0022】
本発明の車両共用サービス円滑化方法は、車両共用サービスのユーザが使用するユーザ端末と、車両共用サービスのサービス提供者が管理するサーバとが、ネットワークを介して接続されデータを送受信する方法において、ユーザ端末の入札手段が、特定の時間、場所及び希望価格を指定して入札を行う入札ステップと、ユーザ端末の報酬受取手段が、入札に対応して車両を返却して報酬受取を行う報酬受取ステップと、ユーザ端末の入札情報取得手段が、現在の入札に関する情報を取得し表示する入札情報取得ステップと、サーバの情報管理手段が、入札に関する情報及び報酬受取に関する情報を管理する情報管理ステップと、サーバのマッチング手段が、入札において指定された特定の場所に車両が存在しない場合に、入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザと、入札において指定された時間の経過前に最も早く車両を返却した第2のユーザとを、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させるマッチングステップを備え、車両が返却されるまで、第2のユーザは返却するか否かを自由に決定できる。
【0023】
本発明の車両共用サービス円滑化方法において、マッチングステップは、入札において指定された特定の場所に車両が存在する場合に、入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザと、入札において指定された時間以前の一定時間内に最も早く車両を返却した第2のユーザとを、入札のタイミングでマッチングを成立させることが好ましい。
【0024】
本発明の車両共用サービス円滑化方法において、マッチングステップは、第1のユーザに劣後する希望価格で入札した第3のユーザと、第2のユーザより遅く車両を返却した第4のユーザとを、第3のユーザの内、希望価格が高額であるユーザを優先し、かつ、第4のユーザの内、車両返却時期がより早期であるユーザを優先して、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させることが好ましい。
【0025】
本発明の車両共用サービス円滑化方法において、入札情報取得ステップは、入札に関する情報として、入札において指定された時間の経過前に車両を返却した際に得られる報酬の期待値を表示することが好ましい。
【0026】
本発明の車両共用サービス円滑化方法は、サーバの追加料金徴収手段が、入札が行われた場合に、より長時間の使用を行っているユーザに対して、使用時間に応じて追加料金を徴収する追加料金徴収ステップを更に備えることが好ましい。
【0027】
本発明の車両共用サービス円滑化方法において、マッチングの成立後は、第1のユーザが指定した希望価格の一部又は全部をペナルティとして入札を撤回し得ることが好ましい。
【0028】
本発明の車両共用サービス円滑化方法は、サーバのオークション手段が、特定の場所から指定場所へ指定時間経過前に、車両を移動するユーザを募るオークションを行うオークションステップと、サーバの報酬付与決定手段が、オークションにおける指定された特定の場所に車両が存在する場合に、特定の場所に存在する車両を使用し、指定場所へ指定時間経過前に、車両が返却されたタイミングで、車両を移動したユーザへの報酬付与を決定する報酬付与決定ステップを更に備えることでもよい。
【0029】
本発明の車両共用サービス円滑化方法は、車両の位置情報取得手段が、車両の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、車両の使用状態判別手段が、車両が使用中又は返却済みであるかを判別する使用状態判別ステップと、車両の通信手段が、位置情報及び使用状態をサーバへ送信する通信ステップを備えることが好ましい。
【0030】
本発明のユーザ端末プログラムは、上記の何れかの車両共用サービス円滑化方法における入札ステップ、報酬受取ステップおよび入札情報取得ステップをコンピュータに実行させるためのものである。また、本発明のサーバプログラムは、上記の何れかの車両共用サービス円滑化方法における情報管理ステップおよびマッチングステップをコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明の車両共用サービス円滑化システム及び方法によれば、車両を使用中のユーザに経済的なインセンティブを与え、かつ、需要を可視化することで、返却時間及び場所の事前申告が不要で、かつ、自律的な運用が促進されるといった効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1の車両共用サービス円滑化システムの機能ブロック図
図2】実施例1の車両共用サービス円滑化システムのシステム構成図
図3】実施例1の車両共用サービス円滑化システムの利用フロー図
図4】実施例1の車両共用サービス円滑化システムのデータフロー図
図5】希望価格設定時のユーザ端末画面イメージ図
図6】報酬の期待値の表示イメージ図1
図7】報酬の期待値の表示イメージ図2
図8】実施例1の車両共用サービス円滑化システムの利用イメージ図1
図9】実施例1の車両共用サービス円滑化システムの利用イメージ図2
図10】実施例1の車両共用サービス円滑化システムの利用イメージ図3
図11】マッチング成立後の利用フロー図
図12】実施例2の車両共用サービス円滑化システムの機能ブロック図
図13】実施例2の車両共用サービス円滑化システムの利用フロー図
図14】実施例2の車両共用サービス円滑化システムの利用イメージ図
図15】実施例3の車両共用サービス円滑化システムの機能ブロック図
図16】長時間使用時の追加料金徴収フロー図
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しながら詳細に説明していく。なお、本発明の範囲は、以下の実施例や図示例に限定されるものではなく、幾多の変更及び変形が可能である。
【実施例1】
【0034】
図1は、実施例1の車両共用サービス円滑化システムの機能ブロック図を示している。図1に示すように、車両共用サービス円滑化システム1は、ユーザ端末2、サーバ3及び車両4から成る。ユーザ端末2には、入札手段21、報酬受取手段22及び入札情報取得手段23が設けられている。サーバ3には、情報管理手段31及びマッチング手段32が設けられている。また、車両4には、位置情報取得手段41、使用状態判別手段42及び通信手段43が設けられている。
ユーザ(図示せず)は、車両4の使用を望む場合には、ユーザ端末2の入札手段21を用いて希望価格の入札を行うことができる。また、車両4の返却を望む場合には、ユーザ端末2の入札情報取得手段23を用いて入札の有無等を確認することができる。入札に応じて車両4を返却した場合には、報酬受取手段22を用いて報酬の受け取りを行うことができる。
【0035】
車両共用サービスのサービス提供者(図示せず)が管理するサーバ3は、入札に関する情報及び報酬受取に関する情報を管理するものである。マッチング手段32は、入札において最も高額の希望価格で入札した第1のユーザ(図示せず)と、入札において指定された時間の経過前に最も早く車両を返却した第2のユーザ(図示せず)とを、車両が返却されたタイミングでマッチングを成立させるものである。
車両4をステーション(図示せず)に駐車すると、位置情報取得手段41により、車両4が駐車したステーションの位置情報を取得する(位置情報取得ステップ)。かかる場所で、車両4の鍵をかけると、使用状態判別手段42により車両4が返却されたと判別される(使用状態判別ステップ)。同様に、車両4を解錠して起動すると、位置情報取得手段41により、車両4が起動したステーションの位置情報を取得すると共に、使用状態判別手段42により車両4の使用が開始されたと判別される。車両の返却及び使用開始に関する情報は通信手段43によりサーバ3へと送られる(通信ステップ)。
【0036】
図2は、実施例1の車両共用サービス円滑化システムのシステム構成図を示している。また、図3は、実施例1の車両共用サービス円滑化システムの利用フロー図を示している。図2に示すように、車両共用サービス円滑化システム1は、ユーザ端末(2a,2b)、サーバ3、車両4及びステーション5から成り、ユーザ端末(2a,2b)、サーバ3及び車両4はインターネット6によりデータの送受信が可能となっている。
なお、ここでは説明の都合上、ユーザ端末は、ユーザ81が操作するユーザ端末2aとユーザ82が操作するユーザ端末2bの2台、車両は車両4の1台、ステーション5は1箇所のみを図示しているが、実際には、多数のユーザ端末や車両が用いられ、ステーションも多数存在する。
図2及び図3に示すように、ステーション5において車両の使用を希望するユーザ81は、ユーザ端末2aを操作し、特定の時間、場所及び希望価格を指定して入札を行うことができる(ステップS01)。入札に関する情報はサーバ3において記憶・管理される(ステップS02)。車両を使用するユーザ82は、ユーザ端末2bを操作して、入札に関する情報を取得し(ステップS03)、ディスプレイ24b上に表示して、入札状況を確認できる。ユーザ82は、上記入札に応じて車両を返却すると(ステップS04)、返却されたタイミングでマッチングが成立する(ステップS05)。マッチング成立後に、ユーザ82は、ユーザ端末2bを操作して報酬の受取手続を行う(ステップS06)。
【0037】
ここで、車両共用サービス円滑化システムにおける具体的なデータフローについて説明する。図4は、実施例1の車両共用サービス円滑化システムのデータフロー図を示している。図4に示すように、車両の使用を希望するユーザ81は、ユーザ端末2aにおいて、乗車位置、開始希望時間及び入札額を入力する(ステップS101)。入力されたデータをサーバ3へ送信する(ステップS102)。ユーザ端末2aから送信されたデータをサーバ3において受信する(ステップS103)。サーバ3において受信したデータを、情報管理手段31において記憶する(ステップS104)。
【0038】
車両4を使用するユーザ82は、入札データを閲覧したい場合には、ユーザ端末2bから、サーバ3に対して、入札データ閲覧要求を送信する(ステップS105)。サーバ3は、入札データ閲覧要求を受信する(ステップS106)。サーバ3は、ユーザ82からの入札データ閲覧要求に応じて、入札データをユーザ端末2bへ送信する(ステップS107)。ユーザ端末2bは入札データを受信する(ステップS108)。車両4を使用するユーザ82は、入札データを閲覧した結果、入札があるステーション5への返却を望む場合には、車両4をステーション5まで移動させ、返却する。車両4が返却されると、車両4に設けられた通信手段43により、サーバ3へ返却データを送信する(ステップS109)。返却データをサーバ3において受信する(ステップS110)。サーバ3は、入札データと返却データによりマッチングを行う(ステップS111)。ユーザ82は、マッチング成立後、ユーザ端末2bからサーバ3に対して、報酬受取手続要求を送信する(ステップS112)。サーバ3において、報酬受取手続要求を受信し(ステップS113)、報酬額を算出して情報管理手段31において記憶する(ステップS114)。算出された報酬データをサーバ3からユーザ端末2bへ送信する(ステップS115)。報酬データをユーザ端末2bにおいて受信する(ステップS116)。
【0039】
図5は、希望価格設定時のユーザ端末画面イメージ図を示している。図5に示すように、車両4の使用を希望するユーザ81が操作するユーザ端末2aのディスプレイ24a上には、乗車位置、開始希望時間及び入札額のそれぞれにつき入力欄(25a~25c)が設けられている。具体的には、乗車位置の項目については、入力欄25aに「ステーション5」と入力され、開始希望時間の項目については、入力欄25bに「16:00」と入力され、入札額の項目については、入力欄25cに「300」と入力されている。なお、本実施例では、入札は金銭で行うため、300とは300円のことである。
入力欄(25a~25c)は、いずれも提示された選択肢からいずれかを選択することで入力し得る構造となっている。このように、簡単な操作で入札を行うことができるため、円滑な利用を促進できる。
【0040】
図6及び図7は、報酬の期待値の表示イメージ図であり、図6は、ディスプレイ上にマップ表示された例、図7は、ディスプレイ上にグラフ表示された例を示している。
図6に示すように、車両4を使用するユーザ82が操作するユーザ端末2bのディスプレイ24b上には、マップ上にステーション(5a~5c)が表示されている。ステーション5aの近くには期待値表示手段7aが表示され、ステーション5bの近くには期待値表示手段7bが表示され、また、ステーション5cの近くには期待値表示手段7cが表示されている。期待値表示手段(7a~7c)はいずれも円錐状を呈しており、円錐の高さが最高入札額、円錐の幅が入札人数を表している。これにより、車両4を使用するユーザ82が、マップを一目見ただけで、どのステーションにどれくらい多くの入札がなされているか等を確認できる。ここでは、円錐の形状のみで、最高入札額や入札人数を表しており、具体的な数値は示していない。これにより、車両4を使用するユーザ82に対し、報酬に対して過度の期待を与えることを防止できる。
なお、ディスプレイ24bの右上には、上下にスライドすることで時間帯の切換えが可能な開始希望時間表示手段27aが設けられている。
【0041】
また、図7では、ディスプレイ上にグラフ表示することで、時間帯毎の入札人数、最高入札額及び最低入札額が一目で把握できる仕様となっている。具体的には、ディスプレイ24b上には、希望ユーザ表示部26、開始希望時間表示部27及び入札額表示部28が設けられ、希望ユーザ表示部26には、希望ユーザ表示手段26aが人数の多さに応じて配置されている。また、開始希望時間表示部27には、15:00から15分刻みで時間が表示されている。
入札額表示部28は、時間帯毎に、最低入札額表示手段28a及び最高入札額表示手段28bが表示されている。最低入札額表示手段28aと最高入札額表示手段28bについては、「16:00」における最低入札額表示手段28aと最高入札額表示手段28bについて示すように、幅Wが最低入札額表示手段28aの範囲、幅Wが最高入札額表示手段28bの範囲となっている。これにより、最高入札額及び最低入札額を一目で把握することが可能となっている。
【0042】
次に、実施例1の車両共用サービス円滑化システムの具体的な利用例につき、図8~10を参照しながら説明する。図8~10は、実施例1の車両共用サービス円滑化システムの利用イメージ図であり、図8は、入札前に車両が返却された場合、図9は、複数人から入札及び返却があった場合を示している。また、図10は、入札前に車両の返却があり、かつ、複数人から入札及び返却があった場合を示している。なお、本実施例においては、入札において指定された時間以前の3時間内に返却された車両のみをマッチング対象とするものとする。車両を返却したユーザに与えられる報酬は、希望価格の1/2とし、残りの1/2はサービス提供者が回収するものとする。また、入札や車両の使用・返却等は全てマッチングと同日に行われたものとする。
【0043】
まず、入札前に車両が返却された場合について説明する。図8に示す例は、ユーザ81は、ステーション5において、15時からの車両の使用を希望する入札を希望価格500円で、14時に行ったものである。これに対して、ステーション5には、13時に既に、ユーザ82が使用する車両4が返却されている。かかる場合は、車両4は、使用開始希望時間15時より2時間前にユーザ82によって返却されているので、ユーザ82はマッチングの対象となる。そして、車両4の返却より後に入札が行われているため、入札時点で、マッチングが成立することになり、ユーザ82は、希望価格500円の1/2である250円を受け取ることができる。
【0044】
次に、複数人から入札及び返却があった場合について説明する。図9に示す例では、ユーザ(81a~81c)の3名が車両の使用を希望しており、ユーザ(82a~82c)の3名が車両を使用している。図9に示すように、ステーション50には駐車スペース(50a~50c)が設けられ、3台の車両が駐車可能となっている。ユーザ(81a~81c)は、いずれもステーション50において、15時から車両の使用を希望している。ユーザ81aは、14時に希望価格1000円で入札を行った。ユーザ81bは、13時に希望価格500円で入札を行った。また、ユーザ81cは、14時30分に希望価格300円で入札を行った。これに対して、ユーザ82aは、14時45分に車両4aを駐車スペース50aへ返却した。ユーザ82bは、14時50分に車両4bを駐車スペース50bへ返却した。また、ユーザ82cは、14時55分に車両4cを駐車スペース50cへ返却した。
【0045】
かかる状態において、マッチングがどのように行われるかを説明する。まずユーザ(81a~81c)の内、ユーザ81aは14時、ユーザ81bは13時、また、ユーザ81cは14時30分に入札を行っており、ユーザ81bが最も早く入札を行ってはいるが、入札を行った順序ではなく、希望価格の多寡により車両の割当てが決定される。すなわち、最も高額の希望価格を設定して入札を行ったユーザ81aが優先的に車両の割当てを受け、2番目に高額の希望価格を設定したユーザ82b、最も低額の希望価格を設定したユーザ82cの順に割当てを受ける。
これに対して、車両を返却するユーザについては、車両(4a~4c)を使用するユーザ(82a~82c)の内、最も早く車両を返却したユーザ82aは、最も高額の希望価格を設定したユーザ81aとマッチングされ、希望価格1000円の1/2である500円を受け取ることができる。次に車両を返却したユーザ82bは、2番目に高額の希望価格を設定したユーザ81bとマッチングされ、希望価格500円の1/2である250円を受け取ることができる。最も遅く車両を返却したユーザ82cは、最も低額の希望価格を設定したユーザ81cとマッチングされ、希望価格300円の1/2である150円を受け取ることができる。
【0046】
次に、入札前に車両の返却があり、かつ、複数人から入札及び返却があった場合について説明する。図10に示す例では、ユーザ(81a,81b)の2名が車両の使用を希望しており、ユーザ(82a~82c)の3名が車両を使用している。図10に示すように、ステーション50には駐車スペース(50a~50c)が設けられ、3台の車両が駐車可能となっている。ユーザ(81a,81b)は、いずれもステーション50において、15時から車両の使用を希望している。ユーザ81aは、14時に希望価格1000円で入札を行った。また、ユーザ81bは、14時に希望価格500円で入札を行った。これに対して、ユーザ82aは、13時に車両4aを駐車スペース50aへ返却した。ユーザ82bは、14時50分に車両4bを駐車スペース50bへ返却した。また、ユーザ82cは、14時55分に車両4cを駐車スペース50cへ返却した。
【0047】
かかる状態において、マッチングがどのように行われるかを説明する。まずユーザ(81a,81b)の内、より高額の希望価格を設定して入札を行ったユーザ81aが優先的に車両の割当てを受け、次に、より低額の希望価格を設定したユーザ82bが車両の割当てを受ける。
これに対して、車両を返却するユーザについては、車両(4a~4c)を使用するユーザ(82a~82c)の内、ユーザ82aは、ユーザ(81a,81b)の入札前に既に車両4aを返却している。返却は、ユーザ(81a,81b)の使用開始希望時間15時より2時間前になされているので、ユーザ82aはマッチングの対象となる。したがって、ユーザ82aは、より高額の希望価格を設定して入札を行ったユーザ81aとマッチングが成立し、希望価格1000円の1/2である500円を受け取ることができる。次に車両を返却したユーザ82bは、より低額の希望価格を設定したユーザ81bとマッチングされ、希望価格500円の1/2である250円を受け取ることができる。これに対して、最も遅く車両を返却したユーザ82cは、マッチングを受けられないこととなる。
【0048】
このように、希望価格の多寡と返却順によりマッチングを行うことで、ユーザのニーズに応じた割当てが可能となり、かつ、返却に対するモチベーションを高めることができる。しかも、車両(4a~4c)を使用するユーザ(82a~82c)は、必ずしも入札に応じる必要はないため、ユーザ(82a~82c)の自由な利用を維持しつつ、サービスの円滑化を図ることができる。また、入札を行ったユーザ(81a~81c)についても、必ずしも車両の使用が強制されるわけではない。
【0049】
図11は、マッチング成立後の利用フロー図を示している。図11に示すように、マッチングが成立(ステップS11)した後、入札を行ったユーザ(81a~81c)が車両を使用した場合(ステップS12)には、希望価格の一部又は全部を報酬としてユーザに支払う(ステップS13)。本実施例では、車両を返却したユーザ(82a~82c)に与えられる報酬は、希望価格の1/2となっている。これに対して、マッチングは成立(ステップS11)したが、入札を行ったユーザ(81a~81c)が車両を使用しなかった場合(ステップS12)には、希望価格をペナルティとして徴収することができる(ステップS14)。これにより、入札を行ったユーザ(81a~81c)に対して、車両の使用を促すことができ、また、使用する必要がなくなった場合には、希望価格をペナルティとして支払うことで、事実上入札を撤回することができる。また、マッチングが成立しなかった場合(ステップS11)には、希望価格の全額をユーザに返還する(ステップS15)。これにより、ユーザ(81a~81c)は、気軽に入札を行うことができる。
【実施例2】
【0050】
図12は、実施例2の車両共用サービス円滑化システムの機能ブロック図を示している。図12に示すように、車両共用サービス円滑化システム11は、実施例1の車両共用サービス円滑化システム1とは異なり、サーバ3には、情報管理手段31とマッチング手段32以外にオークション手段33及び報酬付与決定手段34が設けられている。
オークション手段33は、特定の場所から指定場所へ指定時間経過前に、車両を移動するユーザを募るオークションを行うものである。また、報酬付与決定手段34は、オークションにおける指定された特定の場所に車両が存在する場合に、特定の場所に存在する車両を使用し、指定場所へ指定時間経過前に、車両が返却されたタイミングで、車両を移動したユーザへの報酬付与を決定するものである。オークション手段33及び報酬付与決定手段34が設けられることにより、ユーザの自律的な運用によっても、なお車両の偏在が発生する場合に、偏在を緩和するためのオークションをサービス提供者が開催することができ、サービスの円滑化を促進する。
【0051】
サービス提供者によるオークション開催について、図13及び14を参照しながら説明する。図13は、実施例2の車両共用サービス円滑化システムの利用フロー図を示している。また、図14は、実施例2の車両共用サービス円滑化システムの利用イメージ図を示している。
図14に示すように、ステーション51においては、駐車スペース(51a~51c)に車両(4a~4c)が駐車しており、他の車両が駐車できない状態となっている。一方、ステーション52においては、駐車スペース(52a~52c)には、車両は1台も駐車しておらず、ステーション52において車両の使用を希望するユーザがいたとしても使用できない状態となっている。仮に、ステーション51からステーション52へ車両(4a~4c)を1台移動させることができれば、ステーション51において他の車両が駐車でき、ステーション52において車両の使用が可能となる。
【0052】
そこで、かかる場合には、図13に示すように、サービス提供者は、特定の時間、場所及び指定場所を指定してオークションを開催する(ステップS21)。具体的には、特定の場所としてはステーション51を指定し、指定場所としてはステーション52を指定する。開催されたオークションに関する情報は、サーバ3に記憶され、管理される(ステップS22)。入札情報取得手段23は、入札情報だけではなくオークション情報についても取得可能であり、ユーザ83は、入札情報取得手段23を用いて、オークション情報を取得する(ステップS23)。ユーザ83は、オークションに応じて、ステーション51に駐車された車両4cを使用して移動し(ステップS24)、ステーション52の駐車スペース52aに駐車して返却する(ステップS25)。なお、ここでユーザ83が選択する車両は車両(4a~4c)のいずれでもよいし、ステーション52において駐車する駐車スペースについても、駐車スペース(52a~52c)のいずれでもよい。
車両が返却された後、車両を移動したユーザ83への報酬付与が決定される(ステップS26)。報酬額については、予めサービス提供者が提示してもよいし、ユーザに入札させて、最低額を提示したユーザを落札者としてもよい。報酬付与が決定された後、ユーザ83は報酬を受け取ることができる(ステップS27)。
【実施例3】
【0053】
図15は、実施例3の車両共用サービス円滑化システムの機能ブロック図を示している。図15に示すように、車両共用サービス円滑化システム12は、実施例1の車両共用サービス円滑化システム1とは異なり、サーバ3には、情報管理手段31とマッチング手段32以外に追加料金徴収手段35が設けられている。追加料金徴収手段35は、入札が行われた場合に、より長時間の使用を行っているユーザに対して、使用時間に応じて追加料金を徴収するものである。
【0054】
図16は、長時間使用時の追加料金徴収フロー図を示している。図16に示すように、入札が行われた場合(ステップS31)に、一定時間以上使用しているユーザが存在するとき(ステップS32)は、そのユーザに対して追加料金を徴収する(ステップS33)。これに対して、入札が行われない場合(ステップS31)や、入札が行われても一定時間以上使用しているユーザが存在しないとき(ステップS32)は、追加料金は徴収されない。
【0055】
(その他の実施例)
(1)図6とは異なり、マップ上に希望価格は表示されるが、現在の駐車台数等、その他の情報についても詳細に閲覧できる構成とし、ユーザ82が返却した場合に受け取ることのできる報酬額をユーザ82自身で予測し得るシステムとしてもよい。
(2)入札において指定された時間以前の一定時間内よりも前に、返却したユーザについては、所定の割引を受けた報酬額を受け取ることができる構成としてもよい。
(3)サーバ3に、情報管理手段31、マッチング手段32、オークション手段33、報酬付与決定手段34及び追加料金徴収手段35が設けられた構成でもよい。
(4)実施例2の車両共用サービス円滑化システムについては、特定の場所から車両を移動させることのみを目的として、特定の場所だけを指定するオークションを開催することでもよいし、指定場所に車両を返却させることのみを目的として、指定場所だけを指定するオークションを開催することでもよい。また、指定時間を指定しないオークションを開催することでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、自動車のシェアリングのシステムとして有用である。
【符号の説明】
【0057】
1,11,12 車両共用サービス円滑化システム
2,2a,2b ユーザ端末
3 サーバ
4,4a~4c 車両
5,5a~5c,50~52 ステーション
6 インターネット
7a~7c 期待値表示手段
21 入札手段
22 報酬受取手段
23 入札情報取得手段
24a,24b ディスプレイ
25a~25c 入力欄
26 希望ユーザ表示部
26a 希望ユーザ表示手段
27 開始希望時間表示部
27a 開始希望時間表示手段
28 入札額表示部
28a 最低入札額表示手段
28b 最高入札額表示手段
31 情報管理手段
32 マッチング手段
33 オークション手段
34 報酬付与決定手段
35 追加料金徴収手段
41 位置情報取得手段
42 使用状態判別手段
43 通信手段
50a~50c,51a~51c,52a~52c 駐車スペース
81~83,81a~81c,82a~82c ユーザ
W 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16