(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】バルーンカテーテルのシャフト
(51)【国際特許分類】
A61M 25/14 20060101AFI20231017BHJP
A61M 25/10 20130101ALI20231017BHJP
【FI】
A61M25/14 500
A61M25/14 512
A61M25/14 514
A61M25/10
(21)【出願番号】P 2019127757
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】591245624
【氏名又は名称】株式会社東海メディカルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(72)【発明者】
【氏名】岡田 駿吾
(72)【発明者】
【氏名】粂野 孝志
(72)【発明者】
【氏名】立川 浩一
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-503249(JP,A)
【文献】国際公開第1997/029800(WO,A1)
【文献】米国特許第05324269(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/14
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺なシャフトと、バルーンと、を有するバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、
手元側に形成されてなり、バルーン拡張流体の流路を形成する拡張流体ルーメンと、内挿器具の挿通路を形成する挿通用ルーメンとが並列に配置される並列管構造部と、
先端側に形成されてなり、内管と外管とで二重管構造を有し、前記内管と前記外管との間に形成されバルーン拡張流体の流路となる前記拡張流体ルーメンと、前記内管に形成され前記内挿器具の挿通路を形成する前記挿通用ルーメンと、を有する二重管構造部と、
を有し、
前記シャフトは、
前記並列管構造部と前記並列管構造部から先端側に延設された前記二重管構造部の前記内管を構成する内管形成管状部とを有する手元側シャフトと、
前記二重管構造部の外管からなる先端側シャフトと、
を接合してなることを特徴とするバルーンカテーテルのシャフト。
【請求項2】
長尺なシャフトと、バルーンと、を有するバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、
手元側に形成されてなり、バルーン拡張流体の流路を形成する拡張流体ルーメンと、内挿器具の挿通路を形成する挿通用ルーメンとが並列に配置される並列管構造部と、
先端側に形成されてなり、内管と外管とで二重管構造を有し、前記内管と前記外管との間に形成されバルーン拡張流体の流路となる前記拡張流体ルーメンと、前記内管に形成され前記内挿器具の挿通路を形成する前記挿通用ルーメンと、を有する二重管構造部と、
を有し、
前記シャフトの前記並列管構造部は、全長において二重管構造に作製されたシャフトの内管と外管の一部を全長に渡って接合又は溶着して形成されていることを特徴とするバルーンカテーテルのシャフト。
【請求項3】
長尺なシャフトと、バルーンと、を有するバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、
手元側に形成されてなり、バルーン拡張流体の流路を形成する拡張流体ルーメンと、内挿器具の挿通路を形成する挿通用ルーメンとが並列に配置される並列管構造部と、
先端側に形成されてなり、内管と外管とで二重管構造を有し、前記内管と前記外管との間に形成されバルーン拡張流体の流路となる前記拡張流体ルーメンと、前記内管に形成され前記内挿器具の挿通路を形成する前記挿通用ルーメンと、を有する二重管構造部と、
を有し、
前記シャフトの前記並列管構造部は、全長において二重管構造に作製されたシャフトの内管と外管の手元側の一部を接着剤又は樹脂等の充填剤を充填することにより形成されていることを特徴とするバルーンカテーテルのシャフト。
【請求項4】
前記二重管構造部は、前記並列管構造部と前記二重管構造部のそれぞれの構造が変換される構造変換位置の近傍において、前記内管と前記外管が部分的に溶着されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルのシャフト。
【請求項5】
前記二重管構造部は、前記並列管構造部と前記二重管構造部のそれぞれの構造が変換される構造変換位置の近傍において、前記内管と前記外管が螺旋状に溶着されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルのシャフト。
【請求項6】
前記シャフトは、構造変換位置の近傍の前記並列管構造部と前記二重管構造部とのいずれか又は両方を手元側から先端部にかけて、いくつかのセグメントに分けて材料を選択することによって、前記シャフトの硬度を徐々に先端に行くにしたがって柔らかくなるようにされていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルのシャフト。
【請求項7】
長尺なシャフトと、バルーンと、を有するバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、
手元側に形成されてなり、バルーン拡張流体の流路を形成する拡張流体ルーメンと、内挿器具の挿通路を形成する挿通用ルーメンとが並列に配置される並列管構造部と、
先端側に形成されてなり、内管と外管とで二重管構造を有し、前記内管と前記外管との間に形成されバルーン拡張流体の流路となる前記拡張流体ルーメンと、前記内管に形成され前記内挿器具の挿通路を形成する前記挿通用ルーメンと、を有する二重管構造部と、
を有し、
前記シャフトは、手元側シャフトと先端側シャフトとが構造変換位置において、シャフトの長手方向に対して斜めとなるように接合されていることを特徴とするバルーンカテーテルのシャフト。
【請求項8】
前記シャフトは、構造変換位置近傍の並列管構造部又は前記二重管構造部のいずれか又は両方が先端側に向かって徐々に細くなるようにテーパーを設けてあることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のバルーンカテーテルのシャフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルーンカテーテルのシャフトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バルーンカテーテルのシャフトには、一般的に内管と外管が同心円状に配置される二重管構造と、ルーメンが並列して配置される並列管構造とがある。二重管構造は、ある管の中に別の管を通し、内側の管のルーメンがガイドワイヤ等の挿通路となり、内側の管と外側の管の隙間がバルーン拡張流体の流路となる構造である。一方、並列管構造は、二つの並列したルーメンを有し、片方のルーメンはバルーン拡張流体の流路をなし、もう片方のルーメンはガイドワイヤ等の挿通路を形成する構造である。
【0003】
バルーンカテーテルは、人体の血管や消化管等の複雑に屈曲した内腔の中で進行方向を決定するため、先端側は柔軟であることが望ましい。一方で、先端部分に挿入する力を伝達したり、ルーメンを挿通するガイドワイヤやマイクロカテーテル等の内挿器具をサポートしたりするために、手元側は剛性を高くすることが好ましい。
【0004】
こうした二重管構造及び並列管構造には、それぞれの利点及び欠点を有する。二重管構造は、一般に二つの管が互いに接合等によって拘束されておらず、柔軟な性質を持たせやすい反面、剛性を確保するのが困難であるという問題点があった。並列管構造は、一般に二つの並列したルーメン以外の領域は、主に樹脂等で充実されており、剛性を確保しやすい反面、柔軟性を持たせにくいという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、二重管構造の利点と並列管構造の利点を利用し、従来の製品と比較して、先端側は柔軟に形成でき、手元側は高い剛性を有するバルーンカテーテルのシャフトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトは、
長尺なシャフトと、バルーンと、を有するバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、
手元側に形成されてなり、バルーン拡張流体の流路を形成する拡張流体ルーメンと、内挿器具の挿通路を形成する挿通用ルーメンとが並列に配置される並列管構造部と、
先端側に形成されてなり、内管と外管とで二重管構造を有し、前記内管と前記外管との間に形成されバルーン拡張流体の流路となる前記拡張流体ルーメンと、前記内管に形成され前記内挿器具の挿通路を形成する前記挿通用ルーメンと、を有する二重管構造部と、
を有することを特徴とする。
【0008】
本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトは、シャフトの先端側を二重管構造とし、手元側を並列管構造とすることによって、先端側は、二重管構造の利点である柔軟性を付与し、手元側は、並列管構造の利点である剛性を確保したものである。
【0009】
また、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、前記並列管構造部を有する手元側シャフトと、前記二重管構造部を有する先端側シャフトが接合されていることを特徴とするものであってもよい。
【0010】
並列管構造と二重管構造とを、それぞれ手元側シャフトと先端側シャフトを作製した後接合することで作製することとしたものである。
【0011】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、
前記並列管構造部と前記並列管構造部から先端側に延設された前記二重管構造部の前記内管を構成する内管形成管状部とを有する手元側シャフトと、
前記二重管構造部の外管からなる先端側シャフトと、
を接合してなることを特徴とするものであってもよい。
【0012】
手元側シャフトに並列管構造と二重管構造の内管をあらかじめ作製しておくことによって、内管の接合を省略し、二重管構造の外管のみを接続するようにしたものである。かかる構成を採用することによって、内管に接合部が発生することを防止することができ、内挿器具を挿入する際に、接合部によって引っかかったりすることを防止することができる。
【0013】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトの前記並列管構造部は、全長において二重管構造に作製されたシャフトの内管と外管の一部を全長に渡って接合又は溶着して形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0014】
本発明は、先端の二重管構造部と、並列管構造部とを接続するのではなく、全長を二重管構造に作製し、手元側のみ二重管構造内管と外管の一部を接合又は溶着することによって並列管構造にしたものである。かかる構成を採用することによって、手元側シャフトと、先端側シャフトを接合するという工程を省くことができ、より容易かつ迅速に本発明にかかるシャフトを作製することができる。
【0015】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルにおいて、
前記シャフトの前記並列管構造部は、全長において二重管構造に作製されたシャフトの内管と外管の手元側の一部を接着剤又は樹脂等の充填剤を充填することにより形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0016】
本発明は、先端の二重管構造部と、並列管構造部とを接続するのではなく、全長を二重管構造に作製し、手元側のみ二重管構造内管と外管との間に接着剤や樹脂等の充填剤を充填することによって、並列管構造にしたものである。かかる構成を採用することによって、手元側シャフトと、先端側シャフトを接合するという工程を省くことができ、より容易かつ迅速に本発明にかかるシャフトを作製することができる。
【0017】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記二重管構造部は、前記並列管構造部と前記二重管構造部の構造はそれぞれの構造が変換される構造変換位置の近傍において、前記内管と前記外管が部分的に溶着されていることを特徴とするものであってもよい。
【0018】
構造変換位置の近傍において、二重構造部の内管と外管とを一部溶着することによって、構造変換位置において急激に変化する剛性の差によってキンクが発生することを低減したものである。
【0019】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記二重管構造部は、前記並列管構造部と前記二重管構造部の構造はそれぞれの構造が変換される構造変換位置の近傍において、前記内管と前記外管が螺旋状に溶着されていることを特徴とするものであってもよい。
【0020】
構造変換位置の近傍において、二重管構造部の内管と外管とを螺旋状に溶着することによって、構造変換位置において急激に変化する剛性の差によってキンクが発生することを低減したものである。
【0021】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、構造変換位置の近傍の並列管構造部と二重管構造部とのいずれか又は両方を手元側から先端部にかけて、いくつかのセグメントに分けて材料を選択することによって、シャフトの硬度を徐々に先端に行くにしたがって柔らかくなるようにされていることを特徴とするものであってもよい。
【0022】
シャフトの構造変換位置近傍の並列管構造部と二重管構造部を徐々に剛性が弱くなるように形成することによって、構造変換位置において緩やかに剛性を変化させることで、キンクが発生することを低減したものである。
【0023】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、手元側シャフトと先端側シャフトとが構造変換位置において、シャフトの長手方向に対して斜めとなるように接合されていることを特徴とするものであってもよい。
【0024】
手元側シャフトと先端側シャフトの接合を斜めにすることによって、構造変換位置にある程度の幅をもたせることができるので、構造変換位置において緩やかに剛性を変化させることで、キンクが発生することを低減したものである。
【0025】
さらに、本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトにおいて、
前記シャフトは、構造変換位置近傍の並列管構造部又は前記二重管構造部のいずれか又は両方が先端側に向かって徐々に細くなるようにテーパーを設けてあることを特徴とするものであってもよい。
【0026】
構造変換位置近傍の並列管構造部が先端側に向かって徐々に細くなるようにテーパーを設けることによって、並列管構造部側を徐々に二重管構造部の剛性に近づけることによって、構造変換位置において急激に剛性が変化することを防止することができ、キンクが発生することを低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかるバルーンカテーテルのシャフトによれば、二重管構造の利点と並列管構造の利点を利用し、従来の製品と比較して、先端側は柔軟に形成でき、手元側は高い剛性を有するバルーンカテーテルのシャフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施例にかかるバルーンカテーテル100の模式図である。
【
図2】
図2は、実施例にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の断面を表す模式図である。
【
図4】
図4は、実施例1にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の模式図である。
【
図5】
図5は、実施例1にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の応用例1を示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施例1にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の応用例2を示す模式図である。
【
図7】
図7Aは、実施例1にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の応用例3を示す模式図であり、
図7Bは、応用例4を示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施例1にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の応用例5を示す模式図である。
【
図9】
図9は、実施例1にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の応用例6を示す模式図である。
【
図10】
図10は、実施例2にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の模式図である。
【
図11】
図11は、実施例3にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の模式図である。
【
図12】
図12は、実施例4にかかるバルーンカテーテル100のシャフト10の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明にかかるバルーンカテーテル100の実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0030】
第1実施形態にかかるバルーンカテーテル100は、主として、
図1に示すように、長尺なシャフト10と、シャフト10の遠位端側に設けられたバルーン20と、を備えている。
【0031】
シャフト10は、
図2に示すように、全長を通じて、バルーンを拡張させる流体が通過する拡張流体ルーメン11と、ガイドワイヤ、マイクロカテーテル又はステント等の内挿器具を通過させるのに使用される挿通用ルーメン12とを有している。本発明にかかるシャフト10は、
図2に示したように、途中で構造変換がされており、構造変換位置αの先端側では、内管15と外管16とで二重管構造(A-A断面図参照)からなる二重管構造部βを有し、構造変換位置αの手元側では、二つの並列したルーメンからなる並列管構造(B-B断面図参照)を有する並列管構造部γを有する。二重管構造は、外管16の中に別の内管15を通し、内管15のルーメンがガイドワイヤ等の挿通路となり、内管15と外管16の隙間がバルーン拡張流体の流路となる構造である。一方、並列管構造は、二つの並列したルーメンを有し、片方のルーメンはバルーン拡張流体の流路をなし、もう片方のルーメンはガイドワイヤ等の挿通路を形成する構造である。かかる構造を採用することによって、二重管構造と並列管構造の利点を発揮して、先端側が柔軟であり、手元側は、剛性が高いカテーテルとすることができる。なお、二重管構造部βと並列管構造部γの構造変換位置αは特に限定するものではない。好ましくは、遠位端から5cm~30cm程度の位置に構造変換位置を形成するとよい。
【0032】
シャフト10の素材は、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、フッ素樹脂(PTFE、FEP,PFA等)、シリコーン、ラテックス等のうち柔軟性を有する樹脂が使用される。これら樹脂には、適宜、色素や造影剤などの添加剤を混合しても構わない。また、
図3Aに示すように、二重管構造部βには、拡張流体ルーメン11又は挿通用ルーメン12のいずれか又は両方の外周面又は外周面近傍には、金属線又は樹脂線からなる編組又はコイルで補強を施した補強部17を設けても良い。また、並列管構造部γにおいても、拡張流体ルーメン11又は挿通用ルーメン12のいずれか又は両方の外周面又は外周面近傍には、金属線又は樹脂線からなる編組又はコイルで補強を施した補強部17を設けても良い。また、全長を通じて、カテーテルの最外周の近傍に補強部を設けても良い。補強に使用される金属線としては、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti合金、タングステン等が挙げられる。補強に使用される樹脂としては、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、アラミド、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン又はポリイミド等が挙げられる。また、シャフト10の先端は、親水性コーティングにより潤滑性を付与した潤滑層18を形成してもよい。潤滑性を付与するコーティング剤としては、ポリビニルピロリドン(PVP)、アクリルアミド、ポリエチレンオキシド、無水マレイン酸、ヒアルロン酸、MPC-co-アリルアミン等が挙げられる。さらに、並列管構造部γの拡張流体ルーメン11の外周面又は外周面近傍には、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド等の硬質樹脂チューブ19を使用してもよい。
【0033】
バルーン20は、樹脂製のフィルム状の中空体で形成されており、内部に気体又は液体からなる拡張用流体を供給することにより、圧力により拡張し、吸引することにより収縮可能に形成されている。バルーン20を構成する材料としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、フッ素樹脂(PTFE、FEP,PFA等)、シリコーン、ラテックス等のうち柔軟性を有する樹脂が挙げられる。
【0034】
以上のシャフト10とバルーン20は、先端側の二重管構造部βに取り付けられる。具体的には、内管15は、バルーン20の遠位端側まで延びており、遠位端又は遠位端近傍でバルーン20遠位端側と直接又は取付用リング(スリーブ等)を介して間接的に液密に接合され、外管16は、バルーン20の近位端側まで延びており、外管16の遠位端又は遠位端近傍とバルーン20の近位端が直接又は取付リング(スリーブ等)を介して間接的に液密に接合されている。
【0035】
次に、シャフト10の二重管構造部βと、並列管構造部γの接続形態及び接続方法について説明する。
【0036】
(実施例1)
実施例1にかかるシャフト10の二重管構造部β側を構成する先端側シャフト10aと、並列管構造部γ側を構成する手元側シャフト10bとの接続形態が
図4に示されている。実施例1にかかる先端側シャフト10aは、
図4Aに示すように内管15と外管16とを有する二重管構造に形成されており、内管15の内側が二重管側挿通用ルーメン12aをなし、内管15と外管16との間が二重管側拡張流体ルーメン11aをなす。手元側シャフト10bは、
図4Bに示すように、断面が略円形の並列管側挿通用ルーメン12bがシャフトの中心から外周面側にずれて配置されており、並列管側拡張流体ルーメン11bが空いたスペースに断面が並列管側挿通用ルーメン12bの直径より小さい略円形となるように配置されている。なお、本実施形態においては、断面が円形のものを例示しているが、断面形状は、楕円形、四角形、三日月型等特に限定するものではない。先端側シャフト10aの外管16の外周は、手元側シャフト10bの外周と同形状に形成されている。それぞれの端部は、垂直面に作製される。こうして作製された先端側シャフト10aと手元側シャフト10bは、
図4Bに示すように、溶接、溶着又は接着剤によって接合される。
【0037】
こうして、二重管構造部βと並列管構造部γとの接合部は、二重管構造部βの二重管側拡張流体ルーメン11aの少なくとも一部が並列構造部の並列管側拡張流体ルーメン11bと連通するように接合される。好ましくは、
図4Bに示すように、二重管構造部βの二重管側拡張流体ルーメン11aが並列管側拡張流体ルーメン11bの端部開口全体を含むように形成することが好ましい。一方、挿通用ルーメン12も二重管側挿通用ルーメン12aと並列管側挿通用ルーメン12bとは、内挿器具が通過可能な程度の孔径を保った状態で連通するように接合される。好ましくは、二重管側挿通用ルーメン12aが並列管側挿通用ルーメン12bの端部開口をすべて含むように形成することが好ましい。より好ましくは、二重管側挿通用ルーメン12aと並列管側挿通用ルーメン12bとの断面が同じであり、開口同士が重なるように作製することが好ましい。
【0038】
このように作製されたシャフト10は、先端側が二重管構造を有し、手元側が並列管構造を有しているので、先端側は柔軟性を有し、手元側が剛性の高いシャフト10とすることができる。
【0039】
なお、実施例1における接続形態において、さらに、以下の構成を追加してもよい。
(応用例1)
応用例1にかかるシャフト10が
図5Aに示されている。この応用例1は、構造変換位置αの近傍であって、二重管構造部β側の内管15と外管16とを部分的に接合した接合部30を設けたものである。接合方法としては溶着により、接合することが好ましい。このように部分的に溶着することによって、二重管構造部βと並列管構造部γとの構造変換位置αにおいて、極端な硬度差又は剛性差が生じてキンクの起点となることを低減することができる。部分的に溶着する位置については特に限定するものではなく、
図5Aに示すように、外周に数箇所溶着する部分を設けてもよいし、
図5Bに示すように、内管15を一方に寄せて溶着してもよい。
【0040】
(応用例2)
応用例2にかかるシャフト10が
図6に示されている。この応用例2は、構造変換位置αの近傍であって、二重管構造部β側に、内管15に対して外管16を螺旋状に溶着したものである。このように螺旋状に溶着することによって、応用例1と同様に、二重管構造部βと並列管構造部γとの構造変換位置αにおいて、極端な硬度差が生じてキンクの起点となることを低減することができる。
【0041】
(応用例3)
応用例3にかかるシャフト10が
図7Aに示されている。この応用例3は、構造変換位置αにおいて、先端側シャフト10aと手元側シャフト10bの接続端面を長手方向に対して垂直ではなく、長手方向に対して斜めに形成して接合したものである。特に、並列管構造の並列管側拡張流体ルーメン11bの部分が最も手元側になるように斜めに接合されている。このように接合することによって、二重管構造部βと並列管構造部γとの構造変換位置αも斜めに形成されることになる。そのため、二重管構造部βと並列管構造部γへの移行するにあたり垂直面で急減に硬度差が生じることが防止でき、キンクの起点となることを低減することができる。また、バルーン20を膨らませるときに送出したバルーン拡張流体を吸引する際に、
図7Aの矢印δに示すように、バルーン拡張流体を並列管構造部γの並列管側拡張流体ルーメン11bに導きやすくなり、構造変換位置αにバルーン拡張流体が滞留することなくスムーズに吸引することができるようになる。
【0042】
(応用例4)
応用例4にかかるシャフト10が
図7Bに示されている。この応用例4は、構造変換位置α近傍の並列管構造部γが先端側に向かって徐々に細くなるようにテーパーが設けられている。テーパーを設けることによって、細くなるにしたがって剛性が低くなるので、構造変換位置αにおいて、極端な硬度差が生じることを防止することができ、キンクの起点となることを低減することができる。
【0043】
(応用例5)
応用例5にかかるシャフト10が
図8に示されている。この応用例5は、構造変換位置αの近傍の二重管構造部β又は/及び並列管構造部γを手元側から先端部にかけて、いくつかのセグメントに分けて材料を選択することによって、シャフトの硬度を徐々に先端に行くにしたがって柔らかくなるように構成したものである。なお、
図8における格子の密度が高いほど剛性が高いことを示している。この場合、構造変換位置αにおいては、二重管構造の方が柔軟性が高くなるので、構造変換位置αに隣接する二重管構造部βは、並列管構造部γの素材よりも剛性の高い素材を使用するとよい。かかる構成を採用することによって、構造変換位置α近傍において、徐々に先端側が柔らかくなるようにして極端に硬度差が生じることを低減することで、キンクの発生を防止することができる。
【0044】
(応用例6)
応用例6は、応用例3と応用例5を組み合わせたものであり、構造変換位置αの近傍の二重管構造部β又は/及び並列管構造部γを手元側から先端部にかけて、いくつかのセグメントに分けて材料を選択することによって、シャフトの硬度を徐々に先端に行くにしたがって柔らかくなるように構成するとともに、構造変換位置αにおいて、先端側シャフト10aと手元側シャフト10bの接続端面を長手方向に対して垂直ではなく、長手方向に対して斜めに形成して接合したものである。特に、並列管構造の並列管側拡張流体ルーメン11bの部分が最も手元側になるように斜めに接合されている。このように接合することによって、二重管構造部βと並列管構造部γとの構造変換位置αも斜めに形成されることになる。そのため、二重管構造部βと並列管構造部γへの移行するにあたり垂直面で急減に硬度差が生じることが防止でき、キンクの起点となることを低減することができる。また、バルーン20を膨らませるときに送出したバルーン拡張流体を吸引する際に、
図9の矢印δに示すように、バルーン拡張流体を並列管構造部γの並列管側拡張流体ルーメン11bに導きやすくなり、構造変換位置αにバルーン拡張流体が滞留することなくスムーズに吸引することができるようになる。
(実施例2)
実施例2にかかるシャフト10の二重管構造部βと並列管構造部γとの接続形態が
図10に示されている。実施例2にかかるシャフト10は、並列管構造部γを主として形成する手元側シャフト10bは、構造変換位置αよりも手元側は、実施例1の並列構造部と同様の形態に形成され、構造変換位置αよりも先端側は、二重管構造部βの内管15を構成する断面円形の内管形成管状部15dが先端側に延びている。この際に、内管形成管状部15aのルーメンは、二重管側挿通用ルーメン12aを形成することになるので、内径形状は並列管構造部γの並列管側挿通用ルーメン12bと同一の断面となるように形成するとよい。また、内管形成管状部15aは、少なくともバルーン20の遠位端側の接続部まで延びていることが好ましい。一方、先端側シャフト10aは、二重管構造の外管16からなる。外管16の外周は、並列管構造部γの外周と同様の形態に形成することが好ましい。また、外管16は、バルーンカテーテル100の近傍に構造変換位置αに設ける場合には、バルーン20を固定するスリーブをそのまま外管として利用してもよい。
【0045】
こうして作製された先端側シャフト10aと手元側シャフト10bとは、
図10Bに示すように外周が一致するようにして接合する。このように、実施例2によるシャフト10の二重管構造部βと並列管構造部γの接続形態よれば、接合するのは二重管構造の外管16のみであり、内管15側を接合する必要がないのでより容易かつ迅速に接合することが可能となる。また、挿通用ルーメン12に接合部がないので、挿通用ルーメン12の構造変換位置αに段差ができることがなくなり、内挿器具の挿入時に構造変換位置αで引っかかったりすることを防止することができる。
【0046】
なお、実施例1に記載した応用例1~6は、実施例2に適用可能な範囲において応用することができる。
【0047】
(実施例3)
実施例3にかかるシャフト10の二重管構造部βと並列管構造部γとの接続形態が
図11に示されている。実施例3にかかるシャフト10は、全長において二重管構造に作製しておき、この二重管構造の内管15を並列管構造部γにおいて、一方側に寄せて溶着したものである。
【0048】
このようにして並列管構造部γを作製することによって、通常の二重管構造のシャフト10を作製すればよいので、従来の方法で容易に作製することができる。また、内管15及び外管16ともに接合による段差ができないので、拡張流体ルーメン11及び挿通用ルーメン12のいずれも段差が発生せず、バルーン拡張帳流体をスムーズにバルーン20に送ることができ、かつ内挿器具の挿入時に構造変換位置αで引っかかったりすることを防止することができる。
【0049】
なお、実施例1に記載した応用例1~6は、実施例3に適用可能な範囲において応用することができる。
【0050】
(実施例4)
実施例4にかかるシャフト10の二重管構造部βと並列管構造部γとの接続形態が
図12に示されている。実施例4にかかるシャフト10は、全長において二重管構造に作製しておき、構造変換位置αより手元側の拡張流体ルーメン11の一部に接着剤又は樹脂等の充填剤40を充填したものである。
【0051】
このようにして並列管構造部γを作製することによって、はじめに通常の二重管構造のシャフト10を作製すればよいので、従来の方法で容易に作製することができる。また、内管15及び外管16ともに段差ができないので、拡張流体ルーメン11及び挿通用ルーメン12のいずれも段差が発生せず、バルーン拡張帳流体をスムーズにバルーンに送ることができ、かつ内挿器具の挿入時に構造変換位置αで引っかかったりすることを防止することができる。
【0052】
なお、実施例1に記載した応用例1~6は、実施例4に適用可能な範囲において応用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上述した実施の形態で示すように、手術用のバルーンカテーテルのシャフトとして産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10…シャフト、10a…先端側シャフト、10b…手元側シャフト、11a…二重管側拡張流体ルーメン、11b…並列管側拡張流体ルーメン、11…拡張流体ルーメン、12…挿通用ルーメン、12a…二重管側挿通用ルーメン、12b…並列管側挿通用ルーメン、15…内管、15a…内管形成管状部、16…外管、17…補強部、18…潤滑層、20…バルーン、30…接合部、100…バルーンカテーテル